IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友化学株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-光検出素子 図1
  • 特許-光検出素子 図2
  • 特許-光検出素子 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】光検出素子
(51)【国際特許分類】
   H10K 30/60 20230101AFI20230731BHJP
   H10K 30/30 20230101ALI20230731BHJP
   H10K 39/32 20230101ALI20230731BHJP
   H10K 85/10 20230101ALI20230731BHJP
   H10K 85/60 20230101ALI20230731BHJP
   H10K 101/30 20230101ALN20230731BHJP
【FI】
H10K30/60
H10K30/30
H10K39/32
H10K85/10
H10K85/60
H10K101:30
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020063539
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021163848
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-08-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フェララ ジョバンニ
(72)【発明者】
【氏名】荒木 貴史
(72)【発明者】
【氏名】大関 美保
【審査官】原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110128633(CN,A)
【文献】国際公開第2019/193331(WO,A2)
【文献】国際公開第2017/126401(WO,A1)
【文献】特開2015-220331(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0057962(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第109456465(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110066387(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 30/00-99/00
H01L 31/08-31/119
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と、陰極と、該陽極と該陰極との間に設けられており、p型半導体材料及びn型半導体材料を含む活性層とを備え、
前記n型半導体材料のHOMOのエネルギーレベルの絶対値から前記p型半導体材料のHOMOのエネルギーレベルの絶対値を減じた値(ΔEA)と、前記n型半導体材料のLUMOのエネルギーレベルの絶対値から前記p型半導体材料のLUMOのエネルギーレベルの絶対値を減じた値(ΔEB)との和の値(ΔEA+ΔEB)が0.20~0.67の範囲であ
前記n型半導体材料が、下記式(VIII)で表される化合物である、光検出素子。

-B 10 -A (VIII)

(式(VIII)中、
及びA は、それぞれ独立して、電子求引性の基を表し、
10 は、π共役系を含む基を表す。)
【請求項2】
前記p型半導体材料が、下記式(I)で表される構成単位を含む高分子化合物である、請求項1に記載の光検出素子。
【化1】
(式(I)中、Ar及びArは、置換基を有していてもよい3価の芳香族複素環基又は置換基を有していてもよい3価の芳香族炭素環基を表し、Zは下記式(Z-1)~式(Z-7)で表される基を表す。)
【化2】
(式(Z-1)~(Z-7)中、
Rは、それぞれ独立して、
水素原子、
ハロゲン原子、
置換基を有していてもよいアルキル基、
置換基を有していてもよいアリール基、
置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、
置換基を有していてもよいシクロアルキルオキシ基、
置換基を有していてもよいアリールオキシ基、
置換基を有していてもよいアルキルチオ基、
置換基を有していてもよいシクロアルキルチオ基、
置換基を有していてもよいアリールチオ基、
置換基を有していてもよい1価の複素環基、
置換基を有していてもよい置換アミノ基、
置換基を有していてもよいイミン残基、
置換基を有していてもよいアミド基、
置換基を有していてもよい酸イミド基、
置換基を有していてもよい置換オキシカルボニル基、
置換基を有していてもよいアルケニル基、
置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、
置換基を有していてもよいアルキニル基、
置換基を有していてもよいシクロアルキニル基、
シアノ基、
ニトロ基、
-C(=O)-Rで表される基、又は
-SO-Rで表される基を表し、
及びRは、それぞれ独立して、
水素原子、
置換基を有していてもよいアルキル基、
置換基を有していてもよいアリール基、
置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、
置換基を有していてもよいアリールオキシ基、又は
置換基を有していてもよい1価の複素環基を表す。
式(Z-1)~式(Z-7)中、Rが2つある場合、2つのRは同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項3】
前記p型半導体材料が、下記式(II)又は下記式(III)で表される構成単位を含む高分子化合物である、請求項1又は2に記載の光検出素子。
【化3】
(式(II)及び式(III)中、
Ar及びArは、置換基を有していてもよい3価の芳香族複素環基又は置換基を有していてもよい3価の芳香族炭素環基を表し、
Rは、それぞれ独立して、
水素原子、
ハロゲン原子、
置換基を有していてもよいアルキル基、
置換基を有していてもよいアリール基、
置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、
置換基を有していてもよいシクロアルキルオキシ基、
置換基を有していてもよいアリールオキシ基、
置換基を有していてもよいアルキルチオ基、
置換基を有していてもよいシクロアルキルチオ基、
置換基を有していてもよいアリールチオ基、
置換基を有していてもよい1価の複素環基、
置換基を有していてもよい置換アミノ基、
置換基を有していてもよいイミン残基、
置換基を有していてもよいアミド基、
置換基を有していてもよい酸イミド基、
置換基を有していてもよい置換オキシカルボニル基、
置換基を有していてもよいアルケニル基、
置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、
置換基を有していてもよいアルキニル基、
置換基を有していてもよいシクロアルキニル基、
シアノ基、
ニトロ基、
-C(=O)-Rで表される基、又は
-SO-Rで表される基を表し、
及びRは、それぞれ独立して、
水素原子、
置換基を有していてもよいアルキル基、
置換基を有していてもよいアリール基、
置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、
置換基を有していてもよいアリールオキシ基、又は
置換基を有していてもよい1価の複素環基を表す。)
【請求項4】
前記p型半導体材料が、下記式(IV)で表される構成単位を含む高分子化合物である、請求項3に記載の光検出素子。
【化4】
(式(IV)中、
及びXは、それぞれ独立して、硫黄原子又は酸素原子であり、
及びZは、それぞれ独立して、=C(R)-で表される基又は窒素原子であり、
Rは、前記定義のとおりである。)
【請求項5】
前記式(IV)中、X及びXが硫黄原子であり、Z及びZが=C(R)-で表される基である、請求項4に記載の光検出素子。
【請求項6】
前記p型半導体材料が、下記式(VI-1)~式(VI-7)で表される構成単位を含む高分子化合物である、請求項1~5のいずれか1項に記載の光検出素子。
【化5】
(式(VI-1)~式(VI-7)中、
及びXは、それぞれ独立して、硫黄原子又は酸素原子であり、
及びZは、それぞれ独立して、=C(R)-で表される基又は窒素原子であり、
Rは、それぞれ独立して、
水素原子、
ハロゲン原子、
置換基を有していてもよいアルキル基、
置換基を有していてもよいアリール基、
置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、
置換基を有していてもよいシクロアルキルオキシ基、
置換基を有していてもよいアリールオキシ基、
置換基を有していてもよいアルキルチオ基、
置換基を有していてもよいシクロアルキルチオ基、
置換基を有していてもよいアリールチオ基、
置換基を有していてもよい1価の複素環基、
置換基を有していてもよい置換アミノ基、
置換基を有していてもよいイミン残基、
置換基を有していてもよいアミド基、
置換基を有していてもよい酸イミド基、
置換基を有していてもよい置換オキシカルボニル基、
置換基を有していてもよいアルケニル基、
置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、
置換基を有していてもよいアルキニル基、
置換基を有していてもよいシクロアルキニル基、
シアノ基、
ニトロ基、
-C(=O)-Rで表される基、又は
-SO-Rで表される基を表し、
及びRは、それぞれ独立して、
水素原子、
置換基を有していてもよいアルキル基、
置換基を有していてもよいアリール基、
置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、
置換基を有していてもよいアリールオキシ基、又は
置換基を有していてもよい1価の複素環基を表す。
Rが2つある場合、2つあるRは、同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項7】
前記n型半導体材料が、下記式(IX)で表される化合物である、請求項に記載の光検出素子。

-(Sn1-B11-(Sn2-A (IX)

(式(IX)中、
及びAは、前記定義のとおりであり、
及びSは、それぞれ独立して、
置換基を有していてもよい2価の炭素環基、
置換基を有していてもよい2価の複素環基、
-C(Rs1)=C(Rs2)-で表される基、又は
-C≡C-で表される基を表し、
s1及びRs2は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換基を表し、
11は、炭素環及び複素環からなる群から選択される2以上の環構造が縮合した縮合環を含む2価の基であって、オルト-ペリ縮合構造を含まず、かつ置換基を有していてもよい2価の基を表し、
n1及びn2は、それぞれ独立して、0以上の整数を表す。)
【請求項8】
11が、下記式(Cy1)~(Cy9)で表される構造からなる群から選択される2以上の環構造が縮合した縮合環を含む2価の基であって、かつ置換基を有していてもよい2価の基である、請求項に記載の光検出素子。
【化6】
(式中、Rは、それぞれ独立して、
水素原子、
ハロゲン原子、
置換基を有していてもよいアルキル基、
置換基を有していてもよいアリール基、
置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、
置換基を有していてもよいシクロアルキルオキシ基、
置換基を有していてもよいアリールオキシ基、
置換基を有していてもよいアルキルチオ基、
置換基を有していてもよいシクロアルキルチオ基、
置換基を有していてもよいアリールチオ基、
置換基を有していてもよい1価の複素環基、
置換基を有していてもよい置換アミノ基、
置換基を有していてもよいイミン残基、
置換基を有していてもよいアミド基、
置換基を有していてもよい酸イミド基、
置換基を有していてもよい置換オキシカルボニル基、
置換基を有していてもよいアルケニル基、
置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、
置換基を有していてもよいアルキニル基、
置換基を有していてもよいシクロアルキニル基、
シアノ基、
ニトロ基、
-C(=O)-Rで表される基、又は
-SO-Rで表される基を表し、
及びRは、それぞれ独立して、
水素原子、
置換基を有していてもよいアルキル基、
置換基を有していてもよいアリール基、
置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、
置換基を有していてもよいアリールオキシ基、又は
置換基を有していてもよい1価の複素環基を表す。
Rが2つある場合、2つのRは同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項9】
及びSが、それぞれ独立して、下記式(s-1)で表される基又は式(s-2)で表される基である、請求項又はに記載の光検出素子。
【化7】
(式(s-1)及び式(s-2)中、
は、酸素原子又は硫黄原子を表す。
a10は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、又はアルキル基を表す。)
【請求項10】
及びAが、それぞれ独立して、-CH=C(-CN)で表される基、及び下記式(a-1)~式(a-9)からなる群から選択される基である、請求項のいずれか1項に記載の光検出素子。
【化8】
(式(a-1)~(a-7)中、
Tは、
置換基を有していてもよい炭素環、又は
置換基を有していてもよい複素環を表し、
、X、及びXは、それぞれ独立して、酸素原子、硫黄原子、アルキリデン基、又は=C(-CN)で表される基を表し、
は、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよい1価の複素環基を表し、
a1、Ra2、Ra3、Ra4、及びRa5は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、置換基を有していてもよいアリール基又は1価の複素環基を表す。)
【化9】
(式(a-8)及び式(a-9)中、
a6及びRa7は、それぞれ独立して、
水素原子、
ハロゲン原子、
置換基を有していてもよいアルキル基、
置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、
置換基を有していてもよいシクロアルキルオキシ基、
置換基を有していてもよい1価の芳香族炭素環基、又は
置換基を有していてもよい1価の芳香族複素環基を表し、複数あるRa6及びRa7は同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の光検出素子を含むセンサー。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか1項に記載の光検出素子を含む生体認証装置。
【請求項13】
請求項1~10のいずれか1項に記載の光検出素子を含むX線センサー。
【請求項14】
請求項1~10のいずれか1項に記載の光検出素子を含む近赤外線センサー。
【請求項15】
n型半導体材料と、p型半導体材料とを含み、
前記n型半導体材料のHOMOのエネルギーレベルの絶対値から前記p型半導体材料のHOMOのエネルギーレベルの絶対値を減じた値(ΔEA)と、前記n型半導体材料のLUMOのエネルギーレベルの絶対値から前記p型半導体材料のLUMOのエネルギーレベルの絶対値を減じた値(ΔEB)との和の値(ΔEA+ΔEB)が0.20~0.67の範囲であ
前記n型半導体材料が、下記式(VIII)で表される化合物である、組成物。

-B 10 -A (VIII)

(式(VIII)中、
及びA は、それぞれ独立して、電子求引性の基を表し、
10 は、π共役系を含む基を表す。)
【請求項16】
請求項15に記載の組成物と、溶媒とを含む、インク組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光検出素子に関する。
【背景技術】
【0002】
光検出素子を含む光電変換素子は、例えば、省エネルギー、二酸化炭素の排出量の低減の観点から極めて有用なデバイスであり、注目されている。
【0003】
光電変換素子は、陽極及び陰極からなる一対の電極と、該一対の電極間に設けられ、有機半導体材料を含む活性層とを少なくとも備える電子素子である。光電変換素子においては、いずれかの電極を光透過性を有する材料により構成し、光透過性を有する電極側から活性層に光を入射させる。すると、活性層に入射した光のエネルギー(hν)によって、活性層において電荷(正孔及び電子)が生成する。生成した正孔は陽極に向かって移動し、電子は陰極に向かって移動する。そして、陽極及び陰極に到達した電荷は、光電変換素子の外部に取り出される。
【0004】
光電変換素子は、例えば、光検出素子として用いられる。光検出素子は、通常、光の照射によって生じる起電力とは逆方向の電圧(逆バイアス電圧)を印加した状態で使用され、入射した光が電流に変換されて検出される。しかしながら、光検出素子においては光が入射していない状態であっても、微弱な電流が流れてしまう。このような電流は暗電流として知られており、光検出の精度を低下させる要因となっている。
【0005】
光検出素子の比検出能(Detectivity:D*)を向上させる試みとして、電荷注入層を用いる態様が知られており(非特許文献1参照。)、さらには製造工程の工夫により活性層の最適化を図る態様が知られている(非特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Scientific Reports | 6:39201 | DOI: 10.1038/srep39201
【文献】Adv. Mater. 2015, 27, 6411-6417
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の光検出素子においては比検出能が未だ十分ではないという課題を抱えている。そして、光検出素子における比検出能のさらなる向上が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を進めたところ、活性層に含まれるp型半導体材料のHOMO(Highest Occupied Molecular Orbital)のエネルギーレベルとn型半導体材料のHOMOのエネルギーレベルとの関係及びp型半導体材料のLUMO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital)のエネルギーレベルとn型半導体材料のHOMOのエネルギーレベルとの関係を調節することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
よって、本発明は、下記[1]~[20]を提供する。
[1] 陽極と、陰極と、該陽極と該陰極との間に設けられており、p型半導体材料及びn型半導体材料を含む活性層とを備え、
前記n型半導体材料のHOMOのエネルギーレベルの絶対値から前記p型半導体材料のHOMOのエネルギーレベルの絶対値を減じた値(ΔEA)と、前記n型半導体材料のLUMOのエネルギーレベルの絶対値から前記p型半導体材料のLUMOのエネルギーレベルの絶対値を減じた値(ΔEB)との和の値(ΔEA+ΔEB)が0を超えて0.88未満の範囲である、光検出素子。
[2] 前記和の値(ΔEA+ΔEB)が、0.20~0.67の範囲である、[1]に記載の光検出素子。
[3] 前記p型半導体材料が、下記式(I)で表される構成単位を含む高分子化合物である、[1]又は[2]に記載の光検出素子。
【化1】
(式(I)中、Ar及びArは、置換基を有していてもよい3価の芳香族複素環基又は置換基を有していてもよい3価の芳香族炭素環基を表し、Zは下記式(Z-1)~式(Z-7)で表される基を表す。)
【化2】
(式(Z-1)~(Z-7)中、
Rは、それぞれ独立して、
水素原子、
ハロゲン原子、
置換基を有していてもよいアルキル基、
置換基を有していてもよいアリール基、
置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、
置換基を有していてもよいシクロアルキルオキシ基、
置換基を有していてもよいアリールオキシ基、
置換基を有していてもよいアルキルチオ基、
置換基を有していてもよいシクロアルキルチオ基、
置換基を有していてもよいアリールチオ基、
置換基を有していてもよい1価の複素環基、
置換基を有していてもよい置換アミノ基、
置換基を有していてもよいイミン残基、
置換基を有していてもよいアミド基、
置換基を有していてもよい酸イミド基、
置換基を有していてもよい置換オキシカルボニル基、
置換基を有していてもよいアルケニル基、
置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、
置換基を有していてもよいアルキニル基、
置換基を有していてもよいシクロアルキニル基、
シアノ基、
ニトロ基、
-C(=O)-Rで表される基、又は
-SO-Rで表される基を表し、
及びRは、それぞれ独立して、
水素原子、
置換基を有していてもよいアルキル基、
置換基を有していてもよいアリール基、
置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、
置換基を有していてもよいアリールオキシ基、又は
置換基を有していてもよい1価の複素環基を表す。
式(Z-1)~式(Z-7)中、Rが2つある場合、2つのRは同一であっても異なっていてもよい。)
[4] 前記p型半導体材料が、下記式(II)又は下記式(III)で表される構成単位を含む高分子化合物である、[1]~[3]のいずれか1つに記載の光検出素子。
【化3】
(式(II)及び式(III)中、Ar、Ar及びRは、前記定義のとおりである。)
[5] 前記p型半導体材料が、下記式(IV)で表される構成単位を含む高分子化合物である、[4]に記載の光検出素子。
【化4】
(式(IV)中、
及びXは、それぞれ独立して、硫黄原子又は酸素原子であり、
及びZは、それぞれ独立して、=C(R)-で表される基又は窒素原子であり、
Rは、前記定義のとおりである。)
[6] 前記式(IV)中、X及びXが硫黄原子であり、Z及びZが=C(R)-で表される基である、[5]に記載の光検出素子。
[7] 前記p型半導体材料が、下記式(VI-1)~式(VI-7)で表される構成単位を含む高分子化合物である、[1]~[6]のいずれか1つに記載の光検出素子。
【化5】
(式(VI-1)~式(VI-7)中、X、X、Z、Z及びRは前記定義のとおりである。Rが2つある場合、2つあるRは、同一であっても異なっていてもよい。)
[8] 前記n型半導体材料が、下記式(VIII)で表される化合物である、[1]~[7]のいずれか1つに記載の光検出素子。

-B10-A (VIII)

(式(VIII)中、
及びAは、それぞれ独立して、電子求引性の基を表し、
10は、π共役系を含む基を表す。)
[9] 前記n型半導体材料が、下記式(IX)で表される化合物である、[8]に記載の光検出素子。

-(Sn1-B11-(Sn2-A (IX)

(式(IX)中、
及びAは、前記定義のとおりであり、
及びSは、それぞれ独立して、
置換基を有していてもよい2価の炭素環基、
置換基を有していてもよい2価の複素環基、
-C(Rs1)=C(Rs2)-で表される基、又は
-C≡C-で表される基を表し、
s1及びRs2は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換基を表し、
11は、炭素環及び複素環からなる群から選択される2以上の環構造が縮合した縮合環を含む2価の基であって、オルト-ペリ縮合構造を含まず、かつ置換基を有していてもよい2価の基を表し、
n1及びn2は、それぞれ独立して、0以上の整数を表す。)
[10] B11が、下記式(Cy1)~(Cy9)で表される構造からなる群から選択される2以上の環構造が縮合した縮合環を含む2価の基であって、かつ置換基を有していてもよい2価の基である、[9]に記載の光検出素子。
【化6】
(式中、Rは、前記定義のとおりである。)
[11] S及びSが、それぞれ独立して、下記式(s-1)で表される基又は式(s-2)で表される基である、[9]又は[10]に記載の光検出素子。
【化7】
(式(s-1)及び式(s-2)中、
は、酸素原子又は硫黄原子を表す。
a10は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、又はアルキル基を表す。)
[12] A及びAが、それぞれ独立して、-CH=C(-CN)で表される基、及び下記式(a-1)~式(a-9)からなる群から選択される基である、[8]~[11]のいずれか1つに記載の光検出素子。
【化8】
(式(a-1)~(a-7)中、
Tは、
置換基を有していてもよい炭素環、又は
置換基を有していてもよい複素環を表し、
、X、及びXは、それぞれ独立して、酸素原子、硫黄原子、アルキリデン基、又は=C(-CN)で表される基を表し、
は、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよい1価の複素環基を表し、
a1、Ra2、Ra3、Ra4、及びRa5は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、置換基を有していてもよいアリール基又は1価の複素環基を表す。)
【化9】
(式(a-8)及び式(a-9)中、
a6及びRa7は、それぞれ独立して、
水素原子、
ハロゲン原子、
置換基を有していてもよいアルキル基、
置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、
置換基を有していてもよいシクロアルキルオキシ基、
置換基を有していてもよい1価の芳香族炭素環基、又は
置換基を有していてもよい1価の芳香族複素環基を表し、複数あるRa6及びRa7は同一であっても異なっていてもよい。)
[13] 前記n型半導体材料が、下記式(X)又は式(XI)で表される化合物である、[1]~[7]のいずれか1つに記載の光検出素子。
【化10】
(式X)及び式(XI)中、
a8及びRa9は、それぞれ独立して、
水素原子、
ハロゲン原子、
置換基を有していてもよいアルキル基、
置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、
置換基を有していてもよいシクロアルキルオキシ基、
置換基を有していてもよい1価の芳香族炭素環基、又は
置換基を有していてもよい1価の芳香族複素環基を表し、複数あるRa8及びRa9は互いに同一であっても異なっていてもよい。)
[14] 前記n型半導体材料が、下記式N-5で表される化合物である、[13]に記載の光検出素子。
【化11】
[15] [1]~[14]のいずれか1つに記載の光検出素子を含むセンサー。
[16] [1]~[14]のいずれか1つに記載の光検出素子を含む生体認証装置。
[17] [1]~[14]のいずれか1つに記載の光検出素子を含むX線センサー。
[18] [1]~[14]のいずれか1つに記載の光検出素子を含む近赤外線センサー。
[19] n型半導体材料と、p型半導体材料とを含み、
前記n型半導体材料のHOMOのエネルギーレベルの絶対値から前記p型半導体材料のHOMOのエネルギーレベルの絶対値を減じた値(ΔEA)と、前記n型半導体材料のLUMOのエネルギーレベルの絶対値から前記p型半導体材料のLUMOのエネルギーレベルの絶対値を減じた値(ΔEB)との和の値(ΔEA+ΔEB)が0を超えて0.88未満の範囲である、組成物。
[20] [19]に記載の組成物と、溶媒とを含む、インク組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかる光検出素子によれば、比検出能をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、光検出素子の構成例を模式的に示す図である。
図2図2は、イメージ検出部の構成例を模式的に示す図である。
図3図3は、指紋検出部の構成例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態にかかる光検出素子について説明する。なお、図面は、発明が理解できる程度に、構成要素の形状、大きさ及び配置が概略的に示されているに過ぎない。本発明は以下の記述によって限定されるものではなく、各構成要素は本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、本発明の実施形態にかかる構成は、必ずしも図面に示された配置で、製造されたり、使用されたりするとは限らない。
【0013】
1.共通する用語の説明
まず、本明細書において、共通の意味として用いられる用語について説明する。
「高分子化合物」とは、分子量分布を有し、ポリスチレン換算の数平均分子量が、1×10以上1×10以下である重合体を意味する。高分子化合物に含まれる構成単位は、合計100モル%である。
【0014】
「構成単位」は、高分子化合物中に1個以上存在する単位を意味する。
【0015】
「水素原子」は、軽水素原子であっても、重水素原子であってもよい。
【0016】
「ハロゲン原子」には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が含まれる。
【0017】
「置換基を有していてもよい」態様には、化合物又は基を構成するすべての水素原子が無置換の場合、及び1個以上の水素原子の一部又は全部が置換基によって置換されている場合の両方の態様が含まれる。
【0018】
「置換基」の例としては、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、1価の複素環基、置換アミノ基、アシル基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、置換オキシカルボニル基、シアノ基、アルキルスルホニル基、及びニトロ基が挙げられる。
【0019】
本明細書において、別に断らない限り、「アルキル基」は、直鎖状、分岐状、及び環状のいずれであってもよい。直鎖状のアルキル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常1~50であり、好ましくは1~30であり、より好ましくは1~20である。分岐状又は環状であるアルキル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3~50であり、好ましくは3~30であり、より好ましくは4~20である。
【0020】
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソアミル基、2-エチルブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、3-n-プロピルヘプチル基、アダマンチル基、n-デシル基、3,7-ジメチルオクチル基、2-エチルオクチル基、2-n-ヘキシル-デシル基、n-ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル墓、オクタデシル基、イコシル基が挙げられる。
【0021】
アルキル基は、置換基を有していてもよい。置換基を有するアルキル基は、例えば、上記例示のアルキル基における水素原子が、アルキルオキシ基、アリール基、フッ素原子等の置換基で置換された基である。
【0022】
置換基を有するアルキルの具体例としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基、3-フェニルプロピル基、3-(4-メチルフェニル)プロピル基、3-(3,5-ジヘキシルフェニル)プロピル基、6-エチルオキシヘキシル基が挙げられる。
【0023】
「シクロアルキル基」は、単環の基であってもよく、多環の基であってもよい。シクロアルキル基は、置換基を有していてもよい。シクロアルキル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3~30であり、好ましくは12~19である。
【0024】
シクロアルキル基の例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、アダマンチル基などの置換基を有しないアルキル基、及びこれらの基における水素原子が、アルキル基、アルキルオキシ基、アリール基、フッ素原子などの置換基で置換された基が挙げられる。
【0025】
置換基を有するシクロアルキル基の具体例としては、メチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基が挙げられる。
【0026】
「p価の芳香族炭素環基」とは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素から環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子p個を除いた残りの原子団を意味する。p価の芳香族炭素環基は、置換基をさらに有していてもよい。
【0027】
「アリール基」は、1価の芳香族炭素環基であって、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素から環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子1つを除いた残りの原子団を意味する。
【0028】
アリール基は、置換基を有していてもよい。アリール基の具体例としては、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アントラセニル基、2-アントラセニル基、9-アントラセニル基、1-ピレニル基、2-ピレニル基、4-ピレニル基、2-フルオレニル基、3-フルオレニル基、4-フルオレニル基、2-フェニルフェニル基、3-フェニルフェニル基、4-フェニルフェニル基、及び、これらの基における水素原子が、アルキル基、アルキルオキシ基、アリール基、フッ素原子などの置換基で置換された基が挙げられる。
【0029】
「アルキルオキシ基」は、直鎖状、分岐状、及び環状のいずれであってもよい。直鎖状のアルキルオキシ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常1~40であり、好ましくは1~10である。分岐状又は環状のアルキルオキシ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3~40であり、好ましくは4~10である。
【0030】
アルキルオキシ基は、置換基を有していてもよい。アルキルオキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、3,7-ジメチルオクチルオキシ基、3-ヘプチルドデシルオキシ基、ラウリルオキシ基、及びこれらの基における水素原子が、アルキルオキシ基、アリール基、フッ素原子で置換された基が挙げられる。
【0031】
「シクロアルキルオキシ基」が有するシクロアルキル基は、単環の基であってもよく、多環の基であってもよい。シクロアルキルオキシ基は、置換基を有していてもよい。シクロアルキルオキシ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3~30であり、好ましくは12~19である。
【0032】
シクロアルキルオキシ基の例としては、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基などの、置換基を有しないシクロアルキルオキシ基、及びこれらの基における水素原子が、フッ素原子、アルキル基で置換された基が挙げられる。
【0033】
「アリールオキシ基」の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常6~60であり、好ましくは6~48である。
【0034】
アリールオキシ基は、置換基を有していてもよい。アリールオキシ基の具体例としては、フェノキシ基、1-ナフチルオキシ基、2-ナフチルオキシ基、1-アントラセニルオキシ基、9-アントラセニルオキシ基、1-ピレニルオキシ基、及び、これらの基における水素原子が、アルキル基、アルキルオキシ基、フッ素原子などの置換基で置換された基が挙げられる。
【0035】
「アルキルチオ基」は、直鎖状、分岐状、及び環状のいずれであってもよい。直鎖状のアルキルチオ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常1~40であり、好ましくは1~10である。分岐状及び環状のアルキルチオ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3~40であり、好ましくは4~10である。
【0036】
アルキルチオ基は、置換基を有していてもよい。アルキルチオ基の具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、ブチルチオ基、イソブチルチオ基、tert-ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、2-エチルヘキシルチオ基、ノニルチオ基、デシルチオ基、3,7-ジメチルオクチルチオ基、ラウリルチオ基、及びトリフルオロメチルチオ基が挙げられる。
【0037】
「シクロアルキルチオ基」が有するシクロアルキル基は、単環の基であってもよく、多環の基であってもよい。シクロアルキルチオ基は、置換基を有していてもよい。シクロアルキルチオ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含まないで、通常3~30であり、好ましくは12~19である。
【0038】
置換基を有していてもよいシクロアルキルチオ基の例としては、シクロヘキシルチオ基が挙げられる。
【0039】
「アリールチオ基」の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常6~60であり、好ましくは6~48である。
【0040】
アリールチオ基は、置換基を有していてもよい。アリールチオ基の例としては、フェニルチオ基、C1~C12アルキルオキシフェニルチオ基(C1~C12は、その直後に記載された基の炭素原子数が1~12であることを示す。以下も同様である。)、C1~C12アルキルフェニルチオ基、1-ナフチルチオ基、2-ナフチルチオ基、及びペンタフルオロフェニルチオ基が挙げられる。
【0041】
「p価の複素環基」(pは、1以上の整数を表す。)とは、置換基を有していてもよい複素環式化合物から、環を構成する炭素原子又はヘテロ原子に直接結合している水素原子のうちp個の水素原子を除いた残りの原子団を意味する。
【0042】
p価の複素環基は、置換基をさらに有していてもよい。p価の複素環基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含まないで、通常2~30であり、好ましくは2~6である。
【0043】
複素環式化合物が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、1価の複素環基、置換アミノ基、アシル基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、置換オキシカルボニル基、アルケニル基、アルキニル基、シアノ基、及びニトロ基が挙げられる。p価の複素環基には、「p価の芳香族複素環基」が含まれる。
【0044】
「p価の芳香族複素環基」は、置換基を有していてもよい芳香族複素環式化合物から、環を構成する炭素原子又はヘテロ原子に直接結合している水素原子のうちp個の水素原子を除いた残りの原子団を意味する。p価の芳香族複素環基は、置換基をさらに有していてもよい。
【0045】
芳香族複素環式化合物には、複素環自体が芳香族性を示す化合物に加えて、複素環自体は芳香族性を示さなくとも、複素環に芳香環が縮環している化合物が包含される。
【0046】
芳香族複素環式化合物のうち、複素環自体が芳香族性を示す化合物の具体例としては、オキサジアゾール、チアジアゾール、チアゾール、オキサゾール、チオフェン、ピロール、ホスホール、フラン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、トリアジン、ピリダジン、キノリン、イソキノリン、カルバゾール、及びジベンゾホスホールが挙げられる。
【0047】
芳香族複素環式化合物のうち、芳香族複素環自体が芳香族性を示さず、複素環に芳香環が縮環している化合物の具体例としては、フェノキサジン、フェノチアジン、ジベンゾボロール、ジベンゾシロール、及びベンゾピランが挙げられる。
【0048】
1価の複素環基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常2~60であり、好ましくは4~20である。
【0049】
1価の複素環基は、置換基を有していてもよく、1価の複素環基の具体例としては、例えば、チエニル基、ピロリル基、フリル基、ピリジル基、ピペリジル基、キノリル基、イソキノリル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、及び、これらの基における水素原子が、アルキル基、アルキルオキシ基等で置換された基が挙げられる。
【0050】
「置換アミノ基」は、置換基を有するアミノ基を意味する。アミノ基が有する置換基の例としては、アルキル基、アリール基、及び1価の複素環基が挙げられ、アルキル基、アリール基、又は1価の複素環基が好ましい。置換アミノ基の炭素原子数は、通常2~30である。
【0051】
置換アミノ基の例としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ基、ビス(4-メチルフェニル)アミノ基、ビス(4-tert-ブチルフェニル)アミノ基、ビス(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)アミノ基等のジアリールアミノ基が挙げられる。
【0052】
「アシル基」は、置換基を修していてもよい。アシル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常2~20であり、好ましくは2~18である。アシル基の具体例としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、トリフルオロアセチル基、及びペンタフルオロベンゾイル基が挙げられる。
【0053】
「イミン残基」とは、イミン化合物から、炭素原子-窒素原子二重結合を構成する炭素原子又は窒素原子に直接結合する水素原子1つを除いた残りの原子団を意味する。「イミン化合物」とは、分子内に、炭素原子-窒素原子二重結合を有する有機化合物を意味する。イミン化合物の例として、アルジミン、ケチミン、及びアルジミン中の炭素原子-窒素原子二重結合を構成する窒素原子に結合している水素原子が、アルキル基等で置換された化合物が挙げられる。
【0054】
イミン残基は、通常、炭素原子数が2~20であり、好ましくは炭素原子数が2~18である。イミン残基の例としては、下記の構造式で表される基が挙げられる。
【0055】
【化12】
【0056】
「アミド基」は、アミドから窒素原子に結合した水素原子1つを除いた残りの原子団を意味する。アミド基の炭素原子数は、通常1~20であり、好ましくは1~18である。アミド基の具体例としては、ホルムアミド基、アセトアミド基、プロピオアミド基、ブチロアミド基、ベンズアミド基、トリフルオロアセトアミド基、ペンタフルオロベンズアミド基、ジホルムアミド基、ジアセトアミド基、ジプロピオアミド基、ジブチロアミド基、ジベンズアミド基、ジトリフルオロアセトアミド基、及びジペンタフルオロベンズアミド基が挙げられる。
【0057】
「酸イミド基」とは、酸イミドから窒素原子に結合した水素原子1つを除いた残りの原子団を意味する。酸イミド基の炭素原子数は、通常4~20である。酸イミド基の具体例としては、下記の構造式で表される基が挙げられる。
【0058】
【化13】
【0059】
「置換オキシカルボニル基」とは、R’-O-(C=O)-で表される基を意味する。ここで、R’は、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、又は1価の複素環基を表す。
置換オキシカルボニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常2~60であり、好ましくは2~48である。
【0060】
置換オキシカルボニル基の具体例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、2-エチルヘキシルオキシカルボニル基、ノニルオキシカルボニル基、デシルオキシカルボニル基、3,7-ジメチルオクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基、トリフルオロメトキシカルボニル基、ペンタフルオロエトキシカルボニル基、パーフルオロブトキシカルボニル基、パーフルオロヘキシルオキシカルボニル基、パーフルオロオクチルオキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、ナフトキシカルボニル基、及びピリジルオキシカルボニル基が挙げられる。
【0061】
「アルケニル基」は、直鎖状、分岐状、及び環状のいずれであってもよい。直鎖状のアルケニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常2~30であり、好ましくは3~20である。分岐状又は環状のアルケニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含まないで、通常3~30であり、好ましくは4~20である。
【0062】
アルケニル基は、置換基を有していてもよい。アルケニル基の具体例としては、ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、1-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、7-オクテニル基、及び、これらの基における水素原子がアルキル基、アルキルオキシ基、アリール基、フッ素原子で置換された基が挙げられる。
【0063】
「シクロアルケニル基」は、単環の基であってもよく、多環の基であってもよい。シクロアルケニル基は、置換基を有していてもよい。シクロアルケニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3~30であり、好ましくは12~19である。
【0064】
シクロアルケニル基の例としては、シクロヘキセニル基などの、置換基を有しないシクロアルケニル基、及びこれらの基における水素原子が、アルキル基、アルキルオキシ基、アリール基、フッ素原子で置換された基が挙げられる。
【0065】
置換基を有するシクロアルケニル基の例としては、メチルシクロヘキセニル基、及びエチルシクロヘキセニル基が挙げられる。
【0066】
「アルキニル基」は、直鎖状、分岐状、及び環状のいずれであってもよい。直鎖状のアルケニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常2~20であり、好ましくは3~20である。分岐状又は環状のアルケニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常4~30であり、好ましくは4~20である。
【0067】
アルキニル基は置換基を有していてもよい。アルキニル基の具体例としては、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、3-ペンチニル基、4-ペンチニル基、1-ヘキシニル基、5-ヘキシニル基、及び、これらの基における水素原子がアルキルオキシ基、アリール基、フッ素原子で置換された基が挙げられる。
【0068】
「シクロアルキニル基」は、単環の基であってもよく、多環の基であってもよい。シクロアルキニル基は、置換基を有していてもよい。シクロアルキニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常4~30であり、好ましくは12~19である。
【0069】
シクロアルキニル基の例としては、シクロヘキシニル基などの置換基を有しないシクロアルキニル基、及びこれらの基における水素原子が、アルキル基、アルキルオキシ基、アリール基、フッ素原子で置換された基が挙げられる。
【0070】
置換基を有するシクロアルキニル基の例としては、メチルシクロヘキシニル基、及びエチルシクロヘキシニル基が挙げられる。
【0071】
「アルキルスルホニル基」は、直鎖状でもあってもよく、分岐状であってもよい。アルキルスルホニル基は、置換基を有していてもよい。アルキルスルホニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常1~30である。アルキルスルホニル基の具体例としては、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、及びドデシルスルホニル基が挙げられる。
【0072】
化学式に付される符合「*」は、結合手を表す。
【0073】
「インク組成物」は、塗布法に用いられる液状の組成物を意味しており、着色した液に限定されない。また、「塗布法」は、液状物質を用いて膜(層)を形成する方法を包含し、例えば、スロットダイコート法、スリットコート法、ナイフコート法、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットコート法、ディスペンサー印刷法、ノズルコート法、及びキャピラリーコート法が挙げられる。
【0074】
インク組成物は、溶液であってもよく、分散液、エマルション(乳濁液)、サスペンション(懸濁液)などの分散液であってもよい。
【0075】
「吸収ピーク波長」とは、所定の波長範囲で測定された吸収スペクトルの吸収ピークに基づいて特定されるパラメータであり、吸収スペクトルの吸収ピークのうちの吸光度が最も大きい吸収ピークの波長である。
【0076】
2.光検出素子
比検出能は、後述する通り、EQEをJの平方根で除算した値に比例するため、EQEを大きくしつつJを低減することで比検出能を向上することができるが、一般的にはEQEの向上とJの低減とはトレードオフの関係にある。本発明では、n型半導体材料とp型半導体材料のHOMO、LUMOエネルギーを所定の範囲に設定することで、EQEを大きくしつつJdを低減することができる。すなわち、ΔEA+ΔEBを小さい範囲に設定することで、光が照射されていない状態において、p型半導体材料からn型半導体材料への電子の移動、およびn型半導体材料からp型半導体材料へのホールの移動を最小限に抑えことができるため、Jdが低減されるものと考えられる。
さらに、ΔEA+ΔEBを小さい範囲に設定することで、p型半導体材料のLUMOとn型半導体材料のLUMOの差が小さい範囲に設定され、光吸収時にp/n界面で効率的に電荷分離が生じ、EQEが向上するものと考えられる。
【0077】
ここで、本実施形態の光検出素子が取りうる構成例について説明する。図1は、本実施形態の光検出素子の構成を模式的に示す図である。
【0078】
図1に示されるように、光検出素子10は、支持基板11に設けられている。光検出素子10は、支持基板11に接するように設けられている第1の電極12と、第1の電極12に接するように設けられている電子輸送層13と、電子輸送層13に接するように設けられている活性層14と、活性層14に接するように設けられている正孔輸送層15と、正孔輸送層15に接するように設けられている第2の電極16とを備えている。
【0079】
この構成例では、第2の電極16に接するように封止部材17が更に設けられている。第1の電極12では、外部回路に電子が送出される。第2の電極16では、外部回路から電子が流入する。
以下、本実施形態の光検出素子に含まれうる構成要素について具体的に説明する。
【0080】
(基板)
光検出素子は、通常、基板(支持基板)上に形成される。また、更に基板(封止基板)により封止される場合もある。基板には、通常、一対の電極のうちの一方が形成される。基板の材料は、特に有機化合物を含む層を形成する際に化学的に変化しない材料であれば特に限定されない。
【0081】
基板の材料としては、例えば、ガラス、プラスチック、高分子フィルム、シリコンが挙げられる。不透明な基板が用いられる場合には、不透明な基板側に設けられる電極とは反対側の電極(換言すると、不透明な基板から遠い側の電極)が透明又は半透明の電極とされることが好ましい。
【0082】
(電極)
光検出素子は、一対の電極である第1の電極及び第2の電極を含んでいる。一対の電極のうち、少なくとも一方の電極は、光を入射させるために、透明又は半透明の電極とすることが好ましい。
【0083】
透明又は半透明の電極の材料の例としては、導電性の金属酸化物膜、半透明の金属薄膜が挙げられる。具体的には、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、及びそれらの複合体であるインジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、NESA等の導電性材料、金、白金、銀、銅が挙げられる。透明又は半透明である電極の材料としては、ITO、IZO、酸化スズが好ましい。また、電極として、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体などの有機化合物が材料として用いられる透明導電膜を用いてもよい。透明又は半透明の電極は、第1の電極であっても第2の電極であってもよい。
【0084】
一対の電極のうちの一方の電極が透明又は半透明であれば、他方の電極は光透過性の低い電極であってもよい。光透過性の低い電極の材料の例としては、金属、及び導電性高分子が挙げられる。光透過性の低い電極の材料の具体例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウム等の金属、及びこれらのうちの2種以上の合金、又は、これらのうちの1種以上の金属と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン及び錫からなる群から選ばれる1種以上の金属との合金、グラファイト、グラファイト層間化合物、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体が挙げられる。合金としては、マグネシウム-銀合金、マグネシウム-インジウム合金、マグネシウム-アルミニウム合金、インジウム-銀合金、リチウム-アルミニウム合金、リチウム-マグネシウム合金、リチウム-インジウム合金、及びカルシウム-アルミニウム合金が挙げられる。以下、第1の電極が陽極であり、第2の電極が陰極であるものとして説明する。
【0085】
(活性層)
活性層は、p型半導体材料(電子供与性化合物)とn型半導体材料(電子受容性化合物)とを含む。
【0086】
本実施形態の光検出素子の活性層の厚さは、特に暗電流をより低減する観点から、好ましくは200nm以上であり、より好ましくは250nm以上であり、さらに好ましくは350nm以上である。また、活性層の厚さは、好ましくは10μm以下であり、より好ましくは5μm以下であり、さらに好ましくは1μm以下である。
【0087】
なお、活性層中において、p型半導体材料及びn型半導体材料のうちのいずれとして機能するかは、選択された化合物(重合体)のHOMOのエネルギーレベルの値又はLUMOのエネルギーレベルの値から相対的に決定することができる。活性層に含まれるp型半導体材料のHOMO及びLUMOのエネルギーレベルの値と、n型半導体材料のHOMO及びLUMOのエネルギーレベルの値との関係は、光検出素子が動作する範囲に適宜設定することができる。
【0088】
本実施形態において、活性層に含まれるp型半導体材料及びn型半導体材料は、上記のとおり、n型半導体材料のHOMOのエネルギーレベルの絶対値からp型半導体材料のHOMOのエネルギーレベルの絶対値を減じた値(ΔEA)と、n型半導体材料のLUMOのエネルギーレベルの絶対値からp型半導体材料のLUMOのエネルギーレベルの絶対値を減じた値(ΔEB)との和の値(ΔEA+ΔEB)が0を超えて0.88未満である(0<ΔEA+ΔEB<0.88)との関係を満たす。当該和の値(ΔEA+ΔEB)は、0.20~0.67の範囲であることが好ましい。
【0089】
p型半導体材料及びn型半導体材料のHOMO及びLUMOのエネルギーレベルの値は通常マイナスの値である。本実施形態においては、ΔEA、ΔEB及びΔEA+ΔEBを算出するにあたり、HOMO及びLUMOのエネルギーレベルの値の絶対値を用いている。
【0090】
重合体におけるHOMOのエネルギーレベルの値としては、紫外線光電子分光法(UPS法)により測定された値を用いうる。ここで、UPS法とは、測定対象の固体表面に紫外線を照射し、照射される紫外線のエネルギーに対し放出される光電子数を測定し、光電子が発生する最小エネルギーを算出し、この最小エネルギーから、金属の場合は仕事関数を、半導体の場合はHOMOのエネルギーレベルの値を見積もる方法をいう。紫外線光電子分光法は、大気中、光電子分光装置を用いて実施しうる。
【0091】
本実施形態において、好適に用いることができるp型半導体材料及びn型半導体材料の例について以下にそれぞれ説明する。
【0092】
(1)p型半導体材料
本実施形態の光検出素子に用いられるp型半導体材料は、所定のポリスチレン換算の重量平均分子量を有する高分子化合物であることが好ましい。
【0093】
ここで、ポリスチレン換算の重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用い、ポリスチレンの標準試料を用いて算出した重量平均分子量を意味する。
【0094】
p型半導体材料のポリスチレン換算の重量平均分子量は、特に溶媒に対する溶解性を向上させる観点から、3000以上500000以下であることが好ましい。
【0095】
本実施形態において、p型半導体材料は、ドナー構成単位(D構成単位ともいう。)とアクセプター構成単位(A構成単位ともいう。)とを含むπ共役高分子化合物(D-A型共役高分子化合物ともいう。)であることが好ましい。なお、いずれがA構成単位又はD構成単位であるかは、HOMO又はLUMOのエネルギーレベルから相対的に決定しうる。
【0096】
ここで、ドナー構成単位はπ電子が過剰である構成単位であり、アクセプター構成単位はπ電子が欠乏している構成単位である。
【0097】
本実施形態において、p型半導体材料を構成しうる構成単位には、ドナー構成単位とアクセプター構成単位とが直接的に結合した構成単位、さらにはドナー構成単位とアクセプター構成単位とが、任意好適なスペーサー(基又は構成単位)を介して結合した構成単位も含まれる。
【0098】
高分子化合物であるp型半導体材料としては、具体的には、例えば、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミン構造を含むポリシロキサン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体等が挙げられる。
【0099】
本実施形態のp型半導体材料は、下記式(I)で表される構成単位を含む高分子化合物であることが好ましい。下記式(I)で表される構成単位は、本実施形態においては、通常、ドナー構成単位である。
【0100】
【化14】
【0101】
式(I)中、
Ar及びArは、置換基を有していてもよい3価の芳香族複素環基又は置換基を有していてもよい3価の芳香族炭素環基を表し、
Zは下記式(Z-1)~式(Z-7)で表される基を表す。
【0102】
【化15】
【0103】
式(Z-1)~式(Z-7)中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、置換基を有していてもよいシクロアルキルオキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、置換基を有していてもよいアルキルチオ基、置換基を有していてもよいシクロアルキルチオ基、置換基を有していてもよいアリールチオ基、置換基を有していてもよい1価の複素環基、置換基を有していてもよい置換アミノ基、置換基を有していてもよいイミン残基、置換基を有していてもよいアミド基、置換基を有していてもよい酸イミド基、置換基を有していてもよい置換オキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいシクロアルキニル基、シアノ基、ニトロ基、-C(=O)-Rで表される基、又は-SO-Rで表される基を表す。ここで、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、又は置換基を有していてもよい1価の複素環基を表す。
【0104】
Ar及びArを構成しうる芳香族炭素環及び芳香族複素環は、それぞれ単環であってもよく、縮合環であってもよい。芳香族炭素環又は芳香族複素環が縮合環である場合、縮合環を構成する環の全部が芳香族性を有する縮合環であってもよく、一部のみが芳香族性を有する縮合環であってもよい。これらの環が複数の置換基を有する場合、これらの置換基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0105】
Ar及びArを構成しうる芳香族炭素環の具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、テトラセン環、ペンタセン環、ピレン環、及びフェナントレン環が挙げられ、好ましくはベンゼン環及びナフタレン環であり、より好ましくはベンゼン環及びナフタレン環であり、さらに好ましくはベンゼン環である。これらの環は、置換基を有していてもよい。
【0106】
Ar及びArを構成しうる芳香族複素環には、複素環自体が芳香族性を示す単環及び縮合環に加えて、環を構成する複素環自体は芳香族性を示さなくとも、複素環に芳香環が縮合している環が包含される。
【0107】
芳香族複素環の具体例としては、芳香族複素環式化合物として前記した化合物が有する環構造が挙げられ、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、チオフェン環、ピロール環、ホスホール環、フラン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、トリアジン環、ピリダジン環、キノリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、及びジベンゾホスホール環、並びに、フェノキサジン環、フェノチアジン環、ジベンゾボロール環、ジベンゾシロール環、及びベンゾピラン環が挙げられる。これらの環は、置換基を有していてもよい。
【0108】
Ar及びArの組み合わせとしては、好ましくは、Ar及びArの両方が、置換基を有していてもよい芳香族炭素環であるか(例、ベンゼン環)、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環(例、チオフェン環)である。
【0109】
式(I)で表される構成単位は、下記式(II)又は(III)で表される構成単位であることが好ましい。換言すると、本実施形態のp型半導体材料は、下記式(II)又は下記式(III)で表される構成単位を含む高分子化合物であることが好ましい。
【0110】
【化16】
【0111】
式(II)及び式(III)中、Ar、Ar及びRは、前記定義のとおりである。
【0112】
式(I)及び(III)で表される好適な構成単位の例としては、下記式(097)~式(100)で表される構成単位が挙げられる。
【0113】
【化17】
【0114】
式(097)~式(100)中、Rは前記定義のとおりである。Rが2つある場合、2つあるRは同一であっても異なっていてもよい。
【0115】
また、式(II)で表される構成単位は、下記式(IV)で表される構成単位であることが好ましい。換言すると、本実施形態のp型半導体材料は、下記式(IV)で表される構成単位を含む高分子化合物であることが好ましい。
【0116】
【化18】
【0117】
式(IV)中、X及びXは、それぞれ独立して、硫黄原子又は酸素原子であり、Z及びZは、それぞれ独立して、=C(R)-で表される基又は窒素原子であり、Rは、前記定義のとおりである。
【0118】
式(IV)で表される構成単位としては、X及びXが硫黄原子であり、Z及びZが=C(R)-で表される基である構成単位が好ましい。
【0119】
式(IV)で表される好適な構成単位の例としては、下記式(IV-1)~式(IV-16)で表される構成単位が挙げられる。
【0120】
【化19】
【0121】
式(IV)で表される構成単位としては、X及びXが硫黄原子であり、Z及びZが=C(R)-で表される基である構成単位が好ましい。
【0122】
式(III)で表される構成単位は、下記式(V)で表される構成単位であってもよい。
【0123】
【化20】
【0124】
式(V)中、Rは、前記定義のとおりである。
【0125】
本実施形態のp型半導体材料は、下記式(VI)で表される構成単位を含むことが好ましい。下記式(VI)で表される構成単位は、本実施形態においては、通常、アクセプター構成単位である。
【0126】
【化21】
【0127】
式(V)中、Arは2価の芳香族複素環基を表す。
【0128】
Arで表される2価の芳香族複素環基の炭素原子数は、通常2~60であり、好ましくは4~60であり、より好ましくは4~20である。Arで表される2価の芳香族複素環基は置換基を有していてもよい。Arで表される2価の芳香族複素環基が有していてもよい置換基の例としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、1価の複素環基、置換アミノ基、アシル基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、置換オキシカルボニル基、アルケニル基、アルキニル基、シアノ基、及びニトロ基が挙げられる。
【0129】
式(VI)で表される構成単位としては、下記式(VI-1)~式(VI-7)で表される構成単位が好ましい。
【0130】
【化22】
【0131】
式(VI-1)~式(VI-7)中、X、X、Z、Z及びRは前記定義のとおりである。Rが2つある場合、2つあるRは、同一であっても異なっていてもよい。
【0132】
原料化合物の入手性の観点から、式(VI-1)~式(VI-7)中のX及びXは、いずれも硫黄原子であることが好ましい。
【0133】
p型半導体材料は、チオフェン骨格を含む構成単位を含み、π共役系を含むπ共役高分子化合物であることが好ましい。
【0134】
Arで表される2価の芳香族複素環基の例としては、下記式(101)~式(186)で表される基が挙げられる。
【0135】
【化23】
【0136】
【化24】
【0137】
【化25】
【0138】
【化26】
【0139】
式(101)~式(186)中、Rは前記と同じ意味を表す。Rが複数ある場合、複数あるRは、同一であっても異なっていてもよい。
【0140】
本実施形態のp型半導体材料である高分子化合物は、ドナー構成単位として式(I)で表される構成単位を含み、かつアクセプター構成単位として式(VI)で表される構成単位を含むπ共役高分子化合物であることが好ましい。
【0141】
p型半導体材料である高分子化合物は、2種以上の式(I)で表される構成単位を含んでいてもよく、2種以上の式(VI)で表される構成単位を含んでいてもよい。
【0142】
例えば、溶媒に対する溶解性を向上させるため、p型半導体材料である高分子化合物は、下記式(VII)で表される構成単位を含んでいてもよい。
【0143】
【化27】
【0144】
式(VII)中、Arはアリーレン基を表す。
【0145】
Arで表されるアリーレン基とは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素から、水素原子を2個除いた残りの原子団を意味する。芳香族炭化水素には、縮合環を有する化合物、独立したベンゼン環及び縮合環からなる群から選ばれる2個以上が、直接又はビニレン基等の2価の基を介して結合した化合物も含まれる。
【0146】
芳香族炭化水素が有していてもよい置換基の例としては、複素環式化合物が有していてもよい置換基として例示された置換基と同様の置換基が挙げられる。
【0147】
アリーレン基における、置換基を除いた部分の炭素原子数は、通常6~60であり、好ましくは6~20である。置換基を含めたアリーレン基の炭素原子数は、通常6~100である。
【0148】
アリーレン基の例としては、フェニレン基(例えば、下記式1~式3)、ナフタレン-ジイル基(例えば、下記式4~式13)、アントラセン-ジイル基(例えば、下記式14~式19)、ビフェニル-ジイル基(例えば、下記式20~式25)、ターフェニル-ジイル基(例えば、下記式26~式28)、縮合環化合物基(例えば、下記式29~式35)、フルオレン-ジイル基(例えば、下記式36~式38)、及びベンゾフルオレン-ジイル基(例えば、下記式39~式46)が挙げられる。
【0149】
【化28】
【0150】
【化29】
【0151】
【化30】
【0152】
【化31】
【0153】
【化32】
【0154】
【化33】
【0155】
【化34】
【0156】
【化35】
【0157】
式中、Rは前記定義のとおりである。Rが複数ある場合、複数あるRは、同一であっても異なっていてもよい。
【0158】
p型半導体材料である高分子化合物を構成する構成単位は、上記の構成単位から選択される2種以上の構成単位が2つ以上組み合わされて連結された構成単位であってもよい。
【0159】
2種以上の構成単位が2つ以上組み合わされて連結された構成単位としては、下記式(VI-8)で表される構成単位が好ましい。
【0160】
【化36】
【0161】
式(VI-8)中、X、X、Z、Z及びRは前記定義のとおりである。2つあるRは、同一であっても異なっていてもよい。
【0162】
式(VI-8)で表される構成単位としては、具体的には、例えば下記式(VI-8-1)で表される構成単位が挙げられる。
【0163】
【化37】
【0164】
p型半導体材料としての高分子化合物が、式(I)で表される構成単位及び/又は式(VI)で表される構成単位を含む場合、式(I)で表される構成単位及び式(VI)で表される構成単位の合計量は、高分子化合物が含むすべての構成単位の量を100モル%とすると、通常20モル%~100モル%であり、p型半導体材料としての電荷輸送性を向上させることができるので、好ましくは40モル%~100モル%であり、より好ましくは50モル%~100モル%である。
【0165】
本実施形態におけるp型半導体材料である高分子化合物のより具体的な例としては、下記式P-1~P-7で表される高分子化合物が挙げられる。
【0166】
【化38】
【0167】
【化39】
【0168】
活性層は、p型半導体材料を1種のみ含んでいてもよく、2種以上を任意好適な割合の組み合わせとして含んでいてもよい。
【0169】
(2)n型半導体材料
本実施形態のn型半導体材料は、低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。
【0170】
活性層は、n型半導体材料を1種のみ含んでいてもよく、2種以上の任意の割合の組み合せとして含んでいてもよい。
【0171】
低分子化合物であるn型半導体材料(電子受容性化合物)の例としては、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアントラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8-ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、並びに、バソクプロイン等のフェナントレン誘導体が挙げられる。
【0172】
高分子化合物であるn型半導体材料の例としては、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミン構造を有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、並びに、ポリフルオレン及びその誘導体が挙げられる。
【0173】
本実施形態の活性層に含まれうるn型半導体材料は、上記のとおりフラーレン及びフラーレン誘導体のいずれでもない化合物を含む。このような化合物としては、多数の化合物が公知であり、市販されており入手可能である。
【0174】
本実施形態のn型半導体材料は、好ましくは電子供与性を有する部分DPと、電子受容性を有する部分APとを含む化合物である。
【0175】
n型半導体材料である、部分DPと部分APとを含む化合物(以下、DP-AP化合物という。)は、より好ましくは、DP-AP化合物中の部分DPが、互いにπ結合している、一対以上の原子を含む。
【0176】
このような化合物中のケトン構造、スルホキシド構造、及びスルホン構造のいずれも含まない部分は、部分DPとなりうる。部分APの例としては、ケトン構造を含む部分が挙げられる。
【0177】
本実施形態のn型半導体材料は、好ましくは下記式(VIII)で表される化合物である。
-B10-A (VIII)
【0178】
式(VIII)中、A及びAは、それぞれ独立して、電子求引性の基を表し、B10は、π共役系を含む基を表す。なお、A及びAは、電子受容性を有する部分APに相当し、B10は、電子供与性を有する部分DPに相当する。
【0179】
「π共役系」とは、π電子が複数の結合に非局在化している系を意味している。
【0180】
及びAである電子求引性の基の例としては、-CH=C(-CN)で表される基、及び下記式(a-1)~式(a-9)で表される基が挙げられる。
【0181】
【化40】
【0182】
式(a-1)~式(a-7)中、
Tは、置換基を有していてもよい炭素環、又は置換基を有していてもよい複素環を表す。炭素環及び複素環は、単環であってもよく、縮合環であってもよい。これらの環が置換基を複数有する場合、複数ある置換基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0183】
Tである置換基を有していてもよい炭素環の例としては、芳香族炭素環が挙げられ、好ましくは芳香族炭素環である。Tである置換基を有していてもよい炭素環の具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、テトラセン環、ペンタセン環、ピレン環、及びフェナントレン環が挙げられ、好ましくはベンゼン環、ナフタレン環、及びフェナントレン環であり、より好ましくはベンゼン環及びナフタレン環であり、さらに好ましくはベンゼン環である。これらの環は、置換基を有していてもよい。
【0184】
Tである置換基を有していてもよい複素環の例としては、芳香族複素環が挙げられ、好ましくは芳香族炭素環である。Tである置換基を有していてもよい複素環の具体例としては、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、及びチエノチオフェン環が挙げられ、好ましくはチオフェン環、及びピリジン環、ピラジン環、チアゾール環、及びチオフェン環であり、より好ましくはチオフェン環である。これらの環は、置換基を有していてもよい。
【0185】
Tである炭素環又は複素環が有しうる置換基の例としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルキルオキシ基、アリール基、及び1価の複素環基が挙げられ、好ましくはフッ素原子、及び/又は炭素原子数1~6のアルキル基である。
【0186】
、X、及びXは、それぞれ独立して、酸素原子、硫黄原子、アルキリデン基、又は=C(-CN)で表される基を表し、好ましくは、酸素原子、硫黄原子、又は=C(-CN)で表される基である。
【0187】
は、水素原子又はハロゲン原子、シアノ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、置換基を有していてもよいアリール基又は1価の複素環基を表す。
【0188】
a1、Ra2、Ra3、Ra4、及びRa5は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、置換基を有していてもよいアリール基又は1価の複素環基を表し、好ましくは、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基である。
【0189】
【化41】
【0190】
式(a-8)及び式(a-9)中、
a6及びRa7は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、置換基を有していてもよいシクロアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい1価の芳香族炭素環基、又は置換基を有していてもよい1価の芳香族複素環基を表し、複数あるRa6及びRa7は、同一であっても異なっていてもよい。
【0191】
式(a-8)又は式(a-9)で表される基は、電子受容性を有する部分AP及び電子供与性を有する部分DPを有する。式(a-8)及び式(a-9)で表される基における部分AP及び部分DPを、以下に示す。
【0192】
【化42】
【0193】
及びAである電子求引性の基としては、下記の式(a-1-1)~式(a-1-4)並びに式(a-6-1)及び式(a-7-1)で表される基が好ましい。ここで、複数あるRa10は、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を表し、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、又はアルキル基を表す。Ra3、Ra4、及びRa5は、それぞれ独立して、前記と同義であり、好ましくは置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。
【0194】
【化43】
【0195】
10であるπ共役系を含む基の例としては、後述する式(IX)で表される化合物における、-(Sn1-B11-(Sn2-で表される基が挙げられる。
【0196】
n型半導体材料であるDP-AP化合物は、好ましくは、下記式(IX)で表される化合物である。
-(Sn1-B11-(Sn2-A (IX)
【0197】
式(IX)中、
及びAは、それぞれ独立して、電子求引性の基を表す。A及びAの例及び好ましい例は、前記式(VIII)におけるA及びAについて説明した例及び好ましい例と同様である。
【0198】
及びSは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい2価の炭素環基、置換基を有していてもよい2価の複素環基、-C(Rs1)=C(Rs2)-で表される基(ここで、Rs1及びRs2は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換基(好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよい1価の複素環基を表す。)、又は-C≡C-で表される基を表す。
【0199】
及びSである、置換基を有していてもよい2価の炭素環基及び置換基を有していてもよい2価の複素環基は、縮合環であってもよい。2価の炭素環基又は2価の複素環基が、複数の置換基を有する場合、複数ある置換基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0200】
上記のとおり、式(IX)で表されるDP-AP化合物は、スペーサー(基、構成単位)であるS及びSにより、部分DP、部分APが連結された構造を有している。
【0201】
2価の炭素環基の例としては、2価の芳香族炭素環基が挙げられる。
2価の複素環基の例としては、2価の芳香族複素環基が挙げられる。
2価の芳香族炭素環基又は2価の芳香族複素環基が縮合環である場合、縮合環を構成する環の全部が芳香族性を有する縮合環であってもよく、一部のみが芳香族性を有する縮合環であってもよい。
【0202】
及びSの例としては、Arで表される2価の芳香族複素環基の例として挙げられた、式(101)~(172)、(178)~(185)のいずれかで表される基、及びこれらの基における水素原子が置換基で置換された基が挙げられる。
【0203】
及びSは、好ましくは、それぞれ独立して、下記式(s-1)及び(s-2)のいずれかで表される基を表す。
【0204】
【化44】
【0205】
式(s-1)及び(s-2)中、
は、酸素原子又は硫黄原子を表す。
Ra10は、前記定義のとおりである。
【0206】
及びSは、好ましくは、それぞれ独立して、式(142)、式(148)、式(184)で表される基、又はこれらの基における水素原子が置換基で置換された基であり、より好ましくは、前記式(142)若しくは式(184)で表される基、又は式(184)で表される基における1つの水素原子が、アルキルオキシ基で置換された基である。
【0207】
11は、炭素環構造及び複素環構造からなる群から選択された2以上の構造の縮合環基であり、かつオルト-ペリ縮合構造を含まない縮合環基であり、かつ置換基を有していてもよい縮合環基を表す。
【0208】
11である縮合環基は、互いに同一である2以上の構造を縮合した構造を含んでいてもよい。
【0209】
11である縮合環基が複数の置換基を有する場合、複数ある置換基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0210】
11である縮合環基を構成しうる炭素環構造の例としては、下記式(Cy1)及び式(Cy2)で表される環構造が挙げられる。
【0211】
【化45】
【0212】
11である縮合環基を構成しうる複素環構造の例としては、下記式(Cy3)~式(Cy9)で表される環構造が挙げられる。
【0213】
【化46】
【0214】
式中、Rは、前記定義のとおりである。
11は、好ましくは、前記式(Cy1)~式(Cy9)で表される構造からなる群から選択された2以上の構造が縮合してなる縮合環基であって、オルト-ペリ縮合構造を含まない縮合環基であり、かつ置換基を有していてもよい縮合環基である。B11は、前記式(Cy1)~式(Cy9)で表される構造のうち、2以上の同一の構造が縮合した構造を含んでいてもよい。
【0215】
11は、より好ましくは、前記式(Cy1)~式(Cy5)及び 式(Cy7)で表される構造からなる群から選択された2以上の構造が縮合してなる縮合環基であって、オルト-ペリ縮合構造を含まない縮合環基であり、かつ置換基を有していてもよい縮合環基である。
【0216】
11である縮合環基が有していてもよい置換基は、好ましくは置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、及び置換基を有していてもよい1価の複素環基である。B11により表される縮合環基が有していてもよいアリール基は、例えば、アルキル基により置換されていてもよい。
【0217】
11である縮合環基の例としては、下記式(b-1)~式(b-14)で表される基、及びこれらの基における水素原子が、置換基(好ましくは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、又は置換基を有していてもよい1価の複素環基)で置換された基が挙げられる。
式(b-1)~式(b-14)中、Ra10は、前記定義のとおりである。式(b-1)~式(b-14)中、複数のRa10は、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を表し、好ましくは置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。
【0218】
【化47】
【0219】
【化48】
【0220】
式(IX)中、n1及びn2は、それぞれ独立して、0以上の整数を表し、好ましくはそれぞれ独立して、0又は1を表し、より好ましくは、同時に0又は1を表す。
【0221】
式(VIII)又は式(IX)で表される化合物の例としては、下記式で表される化合物が挙げられる。
【0222】
【化49】
【0223】
【化50】
【0224】
【化51】
【0225】
【化52】
【0226】
【化53】
【0227】
【化54】
【0228】
【化55】
【0229】
【化56】
【0230】
上記式中、Rは水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよいアルキルオキシ基を表し、Xは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基又は置換基を有していてもよいアルキル基を表す。
【0231】
式(VIII)又は式(IX)で表される化合物における部分AP及び部分DPの例を、以下に示す。
【0232】
【化57】
【0233】
式(VIII)又は式(IX)で表される化合物としては、下記式N-1~式N-4で表される化合物が好ましい。
【0234】
【化58】
【0235】
【化59】
【0236】
n型半導体材料である上記のDP-AP化合物は、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド構造を含む化合物であってもよい。DP-AP化合物としてのペリレンテトラカルボン酸ジイミド構造を含む化合物の例としては、下記式で表される化合物が挙げられる。
【0237】
【化60】
【0238】
【化61】
【0239】
【化62】
【0240】
【化63】
【0241】
【化64】
【0242】
【化65】
【0243】
【化66】
【0244】
式中、Rは、前記定義のとおりである。複数あるRは、同一であっても異なっていてもよい。
【0245】
n型半導体材料であるDP-AP化合物は、好ましくは、下記式(X)又は(XI)で表される化合物であり、より好ましくは下記式(X)で表される化合物である。下記式(X)又は式(XI)で表される化合物は、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド構造を含む化合物である。
【0246】
【化67】
【0247】
式(X)及び(XI)中、Ra8及びRa9は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、置換基を有していてもよいシクロアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい1価の芳香族炭素環基、又は置換基を有していてもよい1価の芳香族複素環基を表す。複数あるRa8及びRa9は、同一であっても異なっていてもよい。
【0248】
a8は、好ましくは置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基であり、より好ましくは置換基を有していてもよいアルキル基であり、さらに好ましくは置換基を有していてもよい炭素原子数6~20のアルキル基である。該炭素原子数に、置換基の炭素原子数は含まれない。
【0249】
a9は、好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよい1価の複素環基であり、より好ましくは、水素原子である。
【0250】
式(X)で表される化合物の例としては、下記式N-5で表される化合物が挙げられる。
【0251】
【化68】
【0252】
ここで、p型半導体材料とn型半導体材料との関係については、p型半導体材料のHOMOのエネルギーレベルの絶対値を|HOMOp|とし、かつLUMOのエネルギーレベルの絶対値を|LUMOp|とし、及びn型半導体材料のHOMOのエネルギーレベルの絶対値を|HOMOn|とし、かつLUMOのエネルギーレベルの絶対値を|LUMOn|としたときに、ΔEA=|HOMOn|-|HOMOp|の値は、好ましくは-0.5eVより大きく、より好ましくは0.01eVより大きく、さらに好ましくは3eV未満、さらにまた好ましくは2eV未満であり、特に好ましくは-0.5eVより大きく3eV未満であり、とりわけ好ましくは0.01eVより大きく2eV未満である。
【0253】
また、ΔEB=|LUMOn|-|LUMOp|の値は、好ましくは-0.5eVより大きく、より好ましくは0.01eVより大きく、さらに好ましくは2eV未満であり、さらにまた好ましくは-0.5eVより大きく2eV未満であり、特に好ましくは0.01eVより大きく2eV未満である。
【0254】
(中間層)
図1に示されるとおり、本実施形態の光検出素子は、特性を向上させるための構成要素として、例えば、電荷輸送層(電子輸送層、正孔輸送層、電子注入層、正孔注入層)などの中間層(バッファー層)を備えていることが好ましい。
【0255】
また、中間層に用いられる材料の例としては、カルシウムなどの金属、酸化モリブデン、酸化亜鉛などの無機酸化物半導体、及びPEDOT(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン))とPSS(ポリ(4-スチレンスルホネート))との混合物(PEDOT:PSS)が挙げられる。
【0256】
中間層は、従来公知の任意好適な形成方法により形成することができる。中間層は、真空蒸着法や塗布法などにより形成することができる。
【0257】
図1に示されるように、光検出素子は、陰極である第2の電極と活性層との間に、中間層として、電子輸送層を備えることが好ましい。電子輸送層は、活性層から第2の電極へと電子を輸送する機能を有する。
【0258】
第2の電極に接して設けられる電子輸送層を、特に電子注入層という場合がある。第2の電極に接して設けられる電子輸送層(電子注入層)は、活性層で発生した電子の第2の電極への注入を促進する機能を有する。
【0259】
電子輸送層は、電子輸送性材料を含む。電子輸送性材料の例としては、エトキシ化ポリエチレンイミン(PEIE)、フルオレン構造を含む高分子化合物、カルシウムなどの金属、金属酸化物が挙げられる。
【0260】
フルオレン構造を含む高分子化合物の例としては、ポリ[(9,9-ビス(3’-(N,N-ジメチルアミノ)プロピル)-2,7-フルオレン)-オルト-2,7-(9,9’-ジオクチルフルオレン)](PFN)及びPFN-P2が挙げられる。
【0261】
金属酸化物の例としては、酸化亜鉛、ガリウムドープ酸化亜鉛、アルミニウムドープ酸化亜鉛、酸化チタン及び酸化ニオブが挙げられる。金属酸化物としては、亜鉛を含む金属酸化物が好ましく、中でも酸化亜鉛が好ましい。
【0262】
その他の電子輸送性材料の例としては、ポリ(4-ビニルフェノール)、ペリレンジイミドが挙げられる。
【0263】
図1に示されるように、本実施形態の光検出素子は、第1の電極と活性層との間に、中間層として正孔輸送層を備えていることが好ましい。正孔輸送層は、活性層から第1の電極へと正孔を輸送する機能を有する。正孔輸送層は、第1の電極に接していてもよい。正孔輸送層は活性層に接していてもよい。
【0264】
第1の電極に接して設けられる正孔輸送層を、特に正孔注入層という場合がある。第1の電極に接して設けられる正孔輸送層(正孔注入層)は、第1の電極への正孔の注入を促進する機能を有する。正孔輸送層(正孔注入層)は、活性層に接していてもよい。
【0265】
正孔輸送層は、正孔輸送性材料を含む。正孔輸送性材料の例としては、ポリチオフェン及びその誘導体、芳香族アミン化合物、芳香族アミン残基を有する構成単位を含む高分子化合物、CuSCN、CuI、NiO、酸化タングステン(WO)及び酸化モリブデン(MoO)が挙げられる。
【0266】
本実施形態の光検出素子は、中間層が電子輸送層及び正孔輸送層であって、基板(支持基板)、第1の電極、正孔輸送層、活性層、電子輸送層、第2の電極がこの順に互いに接するように積層された構成を有することが好ましい。
【0267】
(封止部材)
本実施形態の光検出素子は、封止部材をさらに含み、かかる封止部材により封止された封止体とすることが好ましい。
【0268】
封止部材は任意好適な従来公知の部材を用いることができる。封止部材の例としては、基板(封止基板)であるガラス基板とUV硬化性樹脂などの封止材(接着剤)との組み合わせが挙げられる。
【0269】
封止部材は、1層以上の層構造である封止層であってもよい。封止層を構成する層の例としては、ガスバリア層、ガスバリア性フィルムが挙げられる。
【0270】
封止層は、水分を遮断する性質(水蒸気バリア性)又は酸素を遮断する性質(酸素バリア性)を有する材料により形成することが好ましい。封止層の材料として好適な材料の例としては、三フッ化ポリエチレン、ポリ三フッ化塩化エチレン(PCTFE)、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、脂環式ポリオレフィン、エチレン-ビニルアルコール共重合体などの有機材料、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、ダイヤモンドライクカーボンなどの無機材料などが挙げられる。
【0271】
封止部材は、通常、光検出素子が適用される、例えば下記適用例のデバイスに組み込まれる際において実施される加熱処理に耐えうる材料により構成される。
【0272】
3.光検出素子の製造方法
本実施形態の光検出素子の製造方法は、特に限定されない。光検出素子は、各構成要素を形成するにあたり選択された材料に好適な形成方法を組み合わせることにより製造することができる。
【0273】
本実施形態の光検出素子の構成要素は、塗布液であるインク組成物を用いる塗布法により製造することができる。
【0274】
本実施形態の光検出素子の製造方法は、陽極と、陰極と、該陽極と該陰極との間に設けられる活性層と、該陰極と該活性層との間に設けられた電子輸送層とを備え、活性層は、n型半導体材料と、p型半導体材料とを含み、n型半導体材料のHOMOのエネルギーレベルの絶対値からp型半導体材料のHOMOのエネルギーレベルの絶対値を減じた値(ΔEA)と、n型半導体材料のLUMOのエネルギーレベルの絶対値からp型半導体材料のLUMOのエネルギーレベルの絶対値を減じた値(ΔEB)との和の値(ΔEA+ΔEB)が0を超えて0.88未満の範囲(0<ΔEA+ΔEB<0.88)である光検出素子の製造方法である。
【0275】
かかる製造方法においては、少なくとも活性層については塗布液を用いる塗布法により形成することが好ましい。以下、本実施形態の光検出素子の製造方法について具体的に説明する。
【0276】
(基板を用意する工程)
本工程では、陽極が設けられた支持基板を用意する。
支持基板に陽極を設ける方法は特に限定されない。陽極は、例えば、電極の材料として例示した材料を、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、めっき法等によって、既に説明した材料によって構成される支持基板上に形成することができる。
【0277】
また、例えば、既に説明した電極の材料により形成された導電性の薄膜が設けられた基板を市場より入手し、必要に応じて、導電性の薄膜をパターニングすることにより陽極を形成することによって、陽極が設けられた支持基板を用意することもできる。
【0278】
(正孔輸送層の形成工程)
必要に応じて、陽極上には正孔輸送層が形成される。
正孔輸送層の形成方法は特に限定されない。正孔輸送層の形成工程をより簡便にする観点からは、塗布法によって正孔輸送層を形成することが好ましい。正孔輸送層は、例えば、既に説明した正孔輸送性材料と溶媒とを含む塗布液を、正孔輸送層が形成されるべき層上に塗布することにより形成することができる。
【0279】
正孔輸送層を形成するための塗布法において用いられる塗布液を構成する溶媒としては、例えば、水、アルコール、ケトン、及び炭化水素等が挙げられる。アルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブトキシエタノール、及びメトキシブタノール等が挙げられる。ケトンの具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2-ヘプタノン、及びシクロヘキサノン等が挙げられる。炭化水素の具体例としては、n-ペンタン、シクロヘキサン、n-ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラリン、クロロベンゼン、及びオルトジクロロベンゼン等が挙げられる。塗布液は、1種類単独の溶媒を含んでいてもよく、2種類以上の溶媒を含んでいてもよく、上記で例示した溶媒を2種類以上含んでいてもよい。塗布液における溶媒の量は、正孔輸送層の材料1重量部に対し、1重量部以上10000重量部以下であることが好ましく、10重量部以上1000重量部以下であることがより好ましい。
【0280】
正孔輸送層の材料と溶媒とを含む塗布液を塗布する方法(塗布法)としては、例えば、スロットダイコート法、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法、ノズルコート法、およびキャピラリーコート法等が挙げられる。これらの中でも、スロットダイコート法、スピンコート法、フレキソ印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法が好ましい。
【0281】
正孔輸送層の材料と溶媒とを含む塗布液を塗布して得られる塗膜を、加熱処理、風乾処理、減圧処理等に供することにより、溶媒を除く工程を実施することが好ましい。
【0282】
(活性層の形成工程)
本実施形態の活性層を形成する工程は、バルクヘテロジャンクション型の活性層を形成する工程である。塗布液であるインク組成物は、n型半導体材料と、p型半導体材料とを含み、n型半導体材料のHOMOのエネルギーレベルの絶対値からp型半導体材料のHOMOのエネルギーレベルの絶対値を減じた値(ΔEA)と、n型半導体材料のLUMOのエネルギーレベルの絶対値からp型半導体材料のLUMOのエネルギーレベルの絶対値を減じた値(ΔEB)との和の値(ΔEA+ΔEB)が0を超えて0.88未満の範囲(0<ΔEA+ΔEB<0.88)である組成物と、溶媒とを含む。
【0283】
本実施形態の活性層を形成する工程は、塗布液を塗布対象に塗布して塗膜を得る工程(i)と、該塗膜から溶媒を除去する工程(ii)とを含む。
【0284】
以下、本実施形態の光検出素子の活性層の形成方法が含む工程(i)及び工程(ii)について説明する。
【0285】
工程(i)
塗布液を塗布対象に塗布する方法としては、任意好適な塗布法を用いることができる。
【0286】
活性層形成用の塗布液は、光検出素子及びその製造方法に応じて選択された塗布対象に塗布される。活性層形成用の塗布液は、光検出素子の製造工程において、光検出素子が有する機能層であって、活性層が存在しうる機能層に塗布され得る。したがって、活性層形成用の塗布液の塗布対象は、製造される光検出素子の層構成および層形成の順序によって異なる。例えば、光検出素子が、基板/陽極/正孔輸送層/活性層/電子輸送層/陰極の層構成を有しており、より左(前)側に記載された層が先に形成される場合、塗布液の塗布対象は、正孔輸送層となる。また、例えば、光検出素子が、基板/陰極/電子輸送層/活性層/正孔輸送層/陽極の層構成を有しており、より左(前)側に記載された層が先に形成される場合、塗布液の塗布対象は、電子輸送層となる。本実施形態では、活性層は、陽極上に形成される。
【0287】
工程(ii)
塗布液の塗膜から、溶媒を除去する方法、すなわち塗膜から溶媒を除去して固化膜とする方法としては、任意好適な方法を用いることができる。溶媒を除去する方法の例としては、ホットプレートを用いて直接的に加熱する方法、熱風乾燥法、赤外線加熱乾燥法、フラッシュランプアニール乾燥法、減圧乾燥法などの乾燥法が挙げられる。
【0288】
活性層を形成する工程は、前記工程(i)及び工程(ii)以外に、本発明の目的および効果を損なわないことを条件としてその他の工程を含んでいてもよい。
【0289】
光検出素子の製造方法は、複数の活性層を含む光検出素子を製造する方法であってもよく、工程(i)及び工程(ii)が複数回繰り返される方法であってもよい。
【0290】
活性層の厚さは、活性層の形成工程において、例えば、塗布液の総量における溶媒の量を変更することにより調節することができる。具体的には、例えば、活性層の厚さをより厚くする方向に調節する場合には塗布液中の溶媒の量をより低減し、活性層の厚さをより薄くする方向に調節する場合には塗布液中の溶媒の量をより増加させることによって、活性層の厚さを好適な厚さに調節することができる。
【0291】
また、特に活性層がスピンコート法により形成される場合には、回転速度(所定時間あたりの回転数)を変更することにより、活性層の厚さを適宜調節することができる。具体的には、回転速度をより大きくすることにより、活性層の厚さがより薄くなる方向に調整することができ、回転速度をより小さくすることにより、活性層の厚さがより厚くなる方向に調整することができる。
【0292】
(塗布液)
本実施形態の塗布液であるインク組成物は、活性層形成用の塗布液であって、p型半導体材料と、n型半導体材料と、溶媒として第1溶媒とを含み、さらに所望により第2溶媒を含み得る。以下、塗布液の成分について説明する。
【0293】
塗布液は、n型半導体材料を1種のみ含んでいてもよく、2種以上の任意の割合の組み合わせとして含んでいてもよい。
【0294】
(p型半導体材料及びn型半導体材料の重量比(p/n比))
塗布液中のp型半導体材料およびn型半導体材料の重量比(p型半導体材料/n型半導体材料)は、9/1~1/9の範囲とすることが好ましく、5/1~1/5の範囲とすることがより好ましく、3/1~1/3の範囲とすることが特に好ましい。
【0295】
(第1溶媒)
溶媒は、選択されたp型半導体材料及びn型半導体材料に対する溶解性、活性層を形成する際の乾燥条件に対応するための特性(沸点など)を考慮して選択すればよい。
【0296】
第1溶媒は、置換基(例えば、アルキル基、ハロゲン原子)を有していてもよい芳香族炭化水素(以下、単に芳香族炭化水素という。)またはハロゲン化アルキル溶媒であることが好ましい。第1溶媒は、選択されたp型半導体材料及びn型半導体材料の溶解性を考慮して選択することが好ましい。
【0297】
第1溶媒である芳香族炭化水素としては、例えば、トルエン、キシレン(例、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン)、トリメチルベンゼン(例、メシチレン、1,2,4-トリメチルベンゼン(プソイドクメン))、ブチルベンゼン(例、n-ブチルベンゼン、sec-ブチルベンゼン、tert-ブチルベンゼン)、メチルナフタレン(例、1-メチルナフタレン)、テトラリン、インダン、クロロベンゼン及びジクロロベンゼン(1,2-ジクロロベンゼン)が挙げられる。
【0298】
第1溶媒であるハロゲン化アルキル溶媒としては、例えば、クロロホルムが挙げられる。
【0299】
第1溶媒は1種のみの芳香族炭化水素から構成されていても、2種以上の芳香族炭化水素から構成されていてもよい。第1溶媒は、1種のみの芳香族炭化水素から構成されることが好ましい。
【0300】
第1溶媒は、好ましくは、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、メシチレン、プソイドクメン、n-ブチルベンゼン、sec-ブチルベンゼン、tert-ブチルベンゼン、メチルナフタレン、テトラリン、インダン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン及びクロロホルムからなる群から選択される1種以上を含む。
【0301】
(第2溶媒)
第2溶媒は、特にn型半導体材料の溶解性を高め、暗電流の低減の観点から選択される溶媒であることが好ましい。第2溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン、プロピオフェノン等のケトン溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸フェニル、エチルセルソルブアセテート、安息香酸メチル、安息香酸ブチル、安息香酸ベンジル等のエステル溶媒、o-ジクロロベンゼン等の芳香族炭素溶媒が挙げられる。
【0302】
(第1溶媒及び第2溶媒の重量比)
第1溶媒の第2溶媒に対する重量比(第1溶媒/第2溶媒)は、p型半導体材料及びn型半導体材料の溶解性をより向上させる観点から、85/15~99/1の範囲とすることが好ましい。
【0303】
(塗布液における第1溶媒及び第2溶媒の合計の重量百分率)
塗布液に含まれる第1溶媒及び第2溶媒の総重量は、塗布液の全重量を100重量%としたときに、p型半導体材料及びn型半導体材料の溶解性をより向上させる観点から、好ましくは90重量%以上、より好ましくは92重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上であり、塗布液中のp型半導体材料及びn型半導体材料の濃度を高くして一定の厚さ以上の層を形成し易くする観点から、好ましくは99.9重量%以下である。
【0304】
(任意の溶媒)
塗布液は、第1溶媒及び第2溶媒以外の任意の溶媒を含んでいてもよい。塗布液に含まれる全溶媒の合計重量を100重量%とした場合に、任意の溶媒の含有率は、好ましくは5重量%以下であり、より好ましくは3重量%以下であり、さらに好ましくは1重量%以下である。任意の溶媒としては、第2溶媒より沸点が高い溶媒が好ましい。
【0305】
(任意の成分)
塗布液には、第1の溶媒(及び第2の溶媒)、p型半導体材料、及びn型半導体材料の他に、本発明の目的及び効果を損なわない限度において、紫外線吸収剤、酸化防止剤、吸収した光により電荷を発生させる機能を増感するためのため増感剤、紫外線からの安定性を増すための光安定剤といった任意の成分が含まれていてもよい。
【0306】
(塗布液におけるp型半導体材料及びn型半導体材料の濃度)
塗布液における、p型半導体材料およびn型半導体材料の合計の濃度は、必要とされる活性層の厚さに応じて、任意好適な濃度とすることができる。p型半導体材料及びn型半導体材料の合計の濃度は、0.01重量%以上20重量%以下であることが好ましく、0.01重量%以上10重量%以下であることがより好ましく、0.01重量%以上5重量%以下であることがさらに好ましく、0.1重量%以上5重量%以下であることが特に好ましい。
【0307】
塗布液中、p型半導体材料及びn型半導体材料は溶解していても分散していてもよい。p型半導体材料及びn型半導体材料は、好ましくは少なくとも一部が溶解しているか、又は全部が溶解していることがより好ましい。
【0308】
(塗布液の調製)
塗布液は、従来公知の方法により調製することができる。例えば、第1溶媒及び第2溶媒を混合して混合溶媒を調製し、混合溶媒にp型半導体材料及びn型半導体材料を添加する方法、第1溶媒にp型半導体材料を添加し、第2溶媒にn型半導体材料を添加してから、各材料が添加された第1溶媒及び第2溶媒を混合する方法などにより、調製することができる。
【0309】
第1溶媒(及び第2溶媒)とp型半導体材料及びn型半導体材料とを、溶媒の沸点以下の温度まで加温して混合してもよい。
【0310】
第1溶媒及び第2溶媒とp型半導体材料及びn型半導体材料とを混合した後、得られた混合物をフィルターを用いて濾過し、得られた濾液を塗布液として用いてもよい。フィルターとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂で形成されたフィルターを用いることができる。
【0311】
(電子輸送層の形成工程)
本実施形態の光検出素子の製造方法は、活性層と陰極との間に設けられた電子輸送層(電子注入層)を形成する工程を含む。
【0312】
具体的には、本実施形態の光検出素子の製造方法は、活性層を形成する工程の後に、電子輸送層を形成する工程をさらに含む。
【0313】
電子輸送層の形成方法は特に限定されない。電子輸送層の形成工程をより簡便にする観点からは、既に説明した活性層の形成工程と同様の塗布法によって電子輸送層を形成することが好ましい。すなわち、活性層の形成後に、後述する電子輸送性材料と溶媒とを含む塗布液を活性層上に塗布し、必要に応じて乾燥処理(加熱処理)を行うなどして溶媒を除くことによって電子輸送層を形成することが好ましい。
【0314】
電子輸送層を形成するための電子輸送性材料は、有機化合物であっても無機化合物であってもよい。
有機化合物である電子輸送性材料は、低分子有機化合物であっても、高分子有機化合物であってもよい。
【0315】
低分子有機化合物である電子輸送性材料としては、例えば、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアントラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8-ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体、C60フラーレン等のフラーレン類及びその誘導体、並びに、バソクプロイン等のフェナントレン誘導体等が挙げられる。
【0316】
高分子有機化合物である電子輸送性材料としては、例えば、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミン構造を有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体、並びに、ポリフルオレン及びその誘導体等が挙げられる。
【0317】
無機化合物である電子輸送性材料としては、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム、GZO(ガリウムドープ酸化亜鉛)、ATO(アンチモンドープ酸化スズ)、AZO(アルミニウムドープ酸化亜鉛)が挙げられる。これらの中でも、酸化亜鉛、ガリウムドープ酸化亜鉛又はアルミニウムドープ酸化亜鉛が好ましい。電子輸送層を形成する際には、粒子状の酸化亜鉛、ガリウムドープ酸化亜鉛又はアルミニウムドープ酸化亜鉛を含む塗布液を用いて、電子輸送層を形成することが好ましい。このような電子輸送性材料としては、酸化亜鉛のナノ粒子、ガリウムドープ酸化亜鉛のナノ粒子又はアルミニウムドープ酸化亜鉛のナノ粒子を用いることが好ましく、酸化亜鉛のナノ粒子、ガリウムドープ酸化亜鉛のナノ粒子又はアルミニウムドープ酸化亜鉛のナノ粒子のみからなる電子輸送性材料を用いて、電子輸送層を形成することがより好ましい。
【0318】
酸化亜鉛のナノ粒子、ガリウムドープ酸化亜鉛のナノ粒子及びアルミニウムドープ酸化亜鉛のナノ粒子の球相当の平均粒子径は、1nm~1000nmであることが好ましく、10nm~100nmであることがより好ましい。平均粒子径は、例えば、レーザー光散乱法、X線回折法等によって測定することができる。
【0319】
電子輸送性材料を含む塗布液に含まれる溶媒としては、例えば、水、アルコール、ケトン、炭化水素が挙げられる。アルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブトキシエタノール、メトキシブタノール等が挙げられる。ケトンの具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2-ヘプタノン、シクロヘキサノン等が挙げられる。炭化水素の具体例としては、n-ペンタン、シクロヘキサン、n-ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラリン、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン等が挙げられる。塗布液は、1種類単独の溶媒を含んでいてもよく、2種類以上の溶媒を含んでいてもよく、前記溶媒を2種類以上含んでいてもよい。
【0320】
塗布液は、塗布液が塗布される層(活性層等)に与える損傷が少ない塗布液であることが好ましく、具体的には、塗布液が塗布される層(活性層等)を溶解し難い塗布液とすることが好ましい。
【0321】
(陰極の形成工程)
本実施形態では、電子輸送層上に陰極が形成される。
【0322】
陰極の形成方法は特に限定されない。陰極は、既に説明した陰極の材料を、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、めっき法、塗布法等によって、陰極を形成すべき層(例、活性層、電子輸送層)上に形成することができる。
【0323】
陰極の材料が、ポリアニリンおよびその誘導体、ポリチオフェンおよびその誘導体、導電性物質のナノ粒子、導電性物質のナノワイヤーまたは導電性物質のナノチューブである場合には、これらの材料と、溶媒とを含むエマルション(乳濁液)、サスペンション(懸濁液)等を用いて、塗布法によって陰極を形成することができる。
【0324】
また、陰極の材料が、導電性物質を含む場合、導電性物質を含む塗布液、金属インク、金属ペースト、溶融状態の低融点金属等を用いて、塗布法によって陰極を形成してもよい。陰極の材料と溶媒とを含む塗布液を用いる塗布法としては、既に説明した活性層の形成工程と同様の方法が挙げられる。
【0325】
陰極を塗布法により形成する際に用いる塗布液に含まれる溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、デカリン、ビシクロヘキシル、n-ブチルベンゼン、sec-ブチルベンゼン、tert-ブチルベンゼン等の炭化水素溶媒;四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、ブロモペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサン等のハロゲン化飽和炭化水素溶媒;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素溶媒;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル溶媒;水、アルコール等が挙げられる。アルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブトキシエタノール、メトキシブタノール等が挙げられる。塗布液は、1種類単独の溶媒を含んでいてもよく、2種類以上の溶媒を含んでいてもよく、上記溶媒を2種類以上含んでいてもよい。
【0326】
4.光検出素子の適用例
本実施形態の光検出素子は、ワークステーション、パーソナルコンピュータ、携帯情報端末、入退室管理システム、デジタルカメラ、及び医療機器などの種々の電子装置が備える検出部(センサー)に適用することができる。
特に、本実施形態にかかる光検出素子は、イメージセンサー及び生体認証装置に適用されうる。
【0327】
本実施形態の光検出素子は、上記例示の電子装置が備える、例えば、X線撮像装置及びCMOSイメージセンサーなどの固体撮像装置用のイメージ検出部(例えば、X線センサーなどのイメージセンサー)、指紋検出部、顔検出部、静脈検出部及び虹彩検出部などの生体の一部分の所定の特徴を検出する検出部(例えば、近赤外線センサー)、パルスオキシメータなどの光学バイオセンサーの検出部などに好適に適用することができる。
【0328】
以下、本実施形態の光検出素子が好適に適用されうる検出部のうち、固体撮像装置用のイメージ検出部、生体認証装置(例えば指紋認証装置など)のための指紋検出部の構成例について、図面を参照して説明する。
【0329】
(イメージ検出部)
図2は、固体撮像装置用のイメージ検出部の構成例を模式的に示す図である。
【0330】
イメージ検出部1は、CMOSトランジスタ基板20と、CMOSトランジスタ基板20を覆うように設けられている層間絶縁膜30と、層間絶縁膜30上に設けられている、本発明の実施形態の光検出素子10と、層間絶縁膜30を貫通するように設けられており、CMOSトランジスタ基板20と光検出素子10とを電気的に接続する層間配線部32と、光検出素子10を覆うように設けられている封止層40と、封止層40上に設けられているカラーフィルター50とを備えている。
【0331】
CMOSトランジスタ基板20は、従来公知の任意好適な構成を設計に応じた態様で備えている。
【0332】
CMOSトランジスタ基板20は、基板の厚さ内に形成されたトランジスタ、コンデンサなどを含み、種々の機能を実現するためのCMOSトランジスタ回路(MOSトランジスタ回路)などの機能素子を備えている。
【0333】
機能素子としては、例えば、フローティングディフュージョン、リセットトランジスタ、出力トランジスタ、選択トランジスタが挙げられる。
【0334】
このような機能素子、配線などにより、CMOSトランジスタ基板20には、信号読み出し回路などが作り込まれている。
【0335】
層間絶縁膜30は、例えば酸化シリコン、絶縁性樹脂などの従来公知の任意好適な絶縁性材料により構成することができる。層間配線部32は、例えば、銅、タングステンなどの従来公知の任意好適な導電性材料(配線材料)により構成することができる。層間配線部32は、例えば、配線層の形成と同時に形成されるホール内配線であっても、配線層とは別途形成される埋込みプラグであってもよい。
【0336】
封止層40は、光検出素子10を機能的に劣化させるおそれのある酸素、水などの有害物質の浸透を防止又は抑制できることを条件として、従来公知の任意好適な材料により構成することができる。封止層40は、既に説明した封止部材17と同様の構成とすることができる。
【0337】
カラーフィルター50としては、従来公知の任意好適な材料により構成され、かつイメージ検出部1の設計に対応した例えば原色カラーフィルターを用いることができる。また、カラーフィルター50としては、原色カラーフィルターと比較して、厚さを薄くすることができる補色カラーフィルターを用いることもできる。補色カラーフィルターとしては、例えば(イエロー、シアン、マゼンタ)の3種類、(イエロー、シアン、透明)の3種類、(イエロー、透明、マゼンタ)の3種類、及び(透明、シアン、マゼンタ)の3種類が組み合わされたカラーフィルターを用いることができる。これらは、カラー画像データを生成できることを条件として、光検出素子10及びCMOSトランジスタ基板20の設計に対応した任意好適な配置とすることができる。
【0338】
カラーフィルター50を介して光検出素子10が受光した光は、光検出素子10によって、受光量に応じた電気信号に変換され、電極を介して、光検出素子10外に受光信号、すなわち撮像対象に対応する電気信号として出力される。
【0339】
次いで、光検出素子10から出力された受光信号は、層間配線部32を介して、CMOSトランジスタ基板20に入力され、CMOSトランジスタ基板20に作り込まれた信号読み出し回路により読み出され、図示しないさらなる任意好適な従来公知の機能部によって信号処理されることにより、撮像対象に基づく画像情報が生成される。
【0340】
(指紋検出部)
図3は、表示装置に一体的に構成される指紋検出部の構成例を模式的に示す図である。
【0341】
携帯情報端末の表示装置2は、本実施形態の光検出素子10を主たる構成要素として含む指紋検出部100と、当該指紋検出部100上に設けられ、所定の画像を表示する表示パネル部200とを備えている。
【0342】
この構成例では、表示パネル部200の表示領域200aと略一致する領域に指紋検出部100が設けられている。換言すると、指紋検出部100の上方に、表示パネル部200が一体的に積層されている。
【0343】
表示領域200aのうちの一部の領域においてのみ指紋検出を行う場合には、当該一部の領域のみに対応させて指紋検出部100を設ければよい。
【0344】
指紋検出部100は、本実施形態の光検出素子10を本質的な機能を奏する機能部として含む。指紋検出部100は、図示されていない保護フィルム(protection film)、支持基板、封止基板、封止部材、バリアフィルム、バンドパスフィルター、赤外線カットフィルムなどの任意好適な従来公知の部材を所望の特性が得られるような設計に対応した態様で備えうる。指紋検出部100には、既に説明したイメージ検出部の構成を採用することもできる。
【0345】
光検出素子10は、表示領域200a内において、任意の態様で含まれうる。例えば、複数の光検出素子10が、マトリクス状に配置されていてもよい。
【0346】
光検出素子10は、既に説明したとおり、支持基板11に設けられており、支持基板11には、例えばマトリクス状に電極(陽極又は陰極)が設けられている。
【0347】
光検出素子10が受光した光は、光検出素子10によって、受光量に応じた電気信号に変換され、電極を介して、光検出素子10外に受光信号、すなわち撮像された指紋に対応する電気信号として出力される。
【0348】
表示パネル部200は、この構成例では、タッチセンサーパネルを含む有機エレクトロルミネッセンス表示パネル(有機EL表示パネル)として構成されている。表示パネル部200は、例えば有機EL表示パネルの代わりに、バックライトなどの光源を含む液晶表示パネルなどの任意好適な従来公知の構成を有する表示パネルにより構成されていてもよい。
【0349】
表示パネル部200は、既に説明した指紋検出部100上に設けられている。表示パネル部200は、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)220を本質的な機能を奏する機能部として含む。表示パネル部200は、さらに任意好適な従来公知のガラス基板といった基板(支持基板210又は封止基板240)、封止部材、バリアフィルム、円偏光板などの偏光板、タッチセンサーパネル230などの任意好適な従来公知の部材を所望の特性に対応した態様で備えうる。
【0350】
以上説明した構成例において、有機EL素子220は、表示領域200aにおける画素の光源として用いられるとともに、指紋検出部100における指紋の撮像のための光源としても用いられる。
【0351】
ここで、指紋検出部100の動作について簡単に説明する。
指紋認証の実行時には、表示パネル部200の有機EL素子220から放射される光を用いて指紋検出部100が指紋を検出する。具体的には、有機EL素子220から放射された光は、有機EL素子220と指紋検出部100の光検出素子10との間に存在する構成要素を透過して、表示領域200a内である表示パネル部200の表面に接するように載置された手指の指先の皮膚(指表面)によって反射される。指表面によって反射された光のうちの少なくとも一部は、間に存在する構成要素を透過して光検出素子10によって受光され、光検出素子10の受光量に応じた電気信号に変換される。そして、変換された電気信号から、指表面の指紋についての画像情報が構成される。
【0352】
表示装置2を備える携帯情報端末は、従来公知の任意好適なステップにより、得られた画像情報と、予め記録されていた指紋認証用の指紋データとを比較して、指紋認証を行う。
【0353】
[実施例]
以下、本発明をさらに詳細に説明するために実施例を示す。本発明は以下の実施例に限定されない。
【0354】
なお、実施例及び比較例で使用したp型半導体材料及びn型半導体材料は、下記のとおり入手して使用した。
【0355】
p型半導体材料である高分子化合物P-1は、国際公開第2014/31364号に記載の方法を参考にして合成し、使用した。
p型半導体材料である高分子化合物P-2は、国際公開第2014/31364号に記載の方法を参考にして合成し、使用した。
p型半導体材料である高分子化合物P-3は、国際公開第2013/051676号に記載の方法を参考にして合成し、使用した。
p型半導体材料である高分子化合物P-4は、PM6(商品名、1-material社製)を市場より入手して使用した。
p型半導体材料である高分子化合物P-5は、国際公開第2011/052709号に記載の方法を参考にして合成し、使用した。
p型半導体材料である高分子化合物P-6は、PTB7(商品名、1-material社製)を市場より入手して使用した。
p型半導体材料である高分子化合物P-7は、PCE10/PTB7-Th(商品名、1-material社製)を市場より入手して使用した。
n型半導体材料である化合物N-1は、ITIC(商品名、1-material社製)を市場より入手して使用した。
n型半導体材料である化合物N-2は、ITIC-4F(商品名、1-material社製)を市場より入手して使用した。
n型半導体材料である化合物N-3は、Y6(商品名、1-material社製)を市場より入手して使用した。
n型半導体材料である化合物N-4は、IEICO-4F(商品名、1-material社製)を市場より入手して使用した。
n型半導体材料である化合物N-5は、diPDI(商品名、1-material社製)を市場より入手して使用した。
n型半導体材料である化合物N-6(フラーレン誘導体)は、「[60]PCBM(phenyl C61-butyric acid methyl ester)」であるE100(商品名、フロンティアカーボン社製)を市場より入手して使用した。
【0356】
化合物N-6を除く、(高分子)化合物P-1~P-7及びN-1~N-5のHOMOのエネルギーレベル(eV)及びLUMOのエネルギーレベル(eV)は、紫外線光電子分光法(UPS法)により測定された値に基づいて算出した。以下、算出方法について具体的に説明する。
【0357】
(1)サンプル調製
まず、(高分子)化合物P-1~P-7及びN-1~N-5それぞれについて、オルトジクロロベンゼンに溶解させた溶液を得た。次に、得られた溶液それぞれを、ガラス基板上にスピンコート法により塗布して、塗布膜を形成し、70℃のホットプレートで乾燥して、厚さ100nmの層を形成してサンプルとした。
【0358】
(2)UPS法によるHOMOのエネルギーレベルの測定
得られたサンプルそれぞれについて、大気中、光電子分光装置(理研計器株式会社製、モデルAC-2)を用いるUPS法により測定された電子数に基づいて、(高分子)化合物P-1~P-7及びN-1~N-5それぞれのHOMOのエネルギーレベルを算出することができる。
【0359】
ここで、UPS法とは、固体表面に照射される紫外線のエネルギーに対し放出される光電子数を測定する方法である。光電子が発生する最小エネルギーから、サンプルが金属である場合には仕事関数が、半導体材料である場合には、HOMOのエネルギーレベルを見積もることができる。
【0360】
(高分子)化合物P-1~P-7及びN-1~N-5それぞれのLUMOのエネルギーレベルは、下記式により算出することができる。

式:LUMOのエネルギーレベル=バンドギャップ(Eg)―HOMOのエネルギーレベル
【0361】
ここで、バンドギャップ(Eg)は、p型半導体材料の吸収端波長に基づいて下記式により算出することができる。

式:バンドギャップ(Eg)=hc/吸収端波長

式中、hはプランク定数を表し(h=6.626×10-34Js)、cは光速を表す(c=3×10m/s)。
【0362】
吸収端波長の測定には、紫外光、可視光、近赤外光の波長領域において測定が可能である分光光度計(例えば、紫外可視近赤外分光光度計JASCO-V670、日本分光社製)を用いた。
【0363】
分光光度計により得られた吸収スペクトル、すなわち、縦軸を(高分子)化合物の吸光度(吸収強度)とし、横軸を波長としてプロットすることにより示された吸収スペクトルにおいて、吸収端波長は、ベースラインと吸収ピークの肩(高波長側)でフィッティングした直線との交点における波長の値を吸収端波長(nm)とした。
【0364】
化合物N-6のHOMOのエネルギーレベル及びLUMOのエネルギーレベルは、CV(サイクリックボルタンメトリー)測定により行うことができる。以下、具体的に説明する。
【0365】
CV測定は、例えば、Nanoscale Research Letters 2011, 6:545頁に記載の条件で行うことができる。
CV測定は、例えば、以下の機材を用いて行うことができる。
CV測定装置:3電極システム
支持電解質:ヘキサフルオロりん酸テトラブチルアンモニウム(BuNPF)を濃度0.1M含むアセトニトリル溶液
作用電極:グラッシーカーボン
対極:白金ワイヤ
参照電極:Ag/Ag
標準電位:フェロセン(E1/2=0.120V vs. Ag/Ag
スキャンレート:100mV/秒
【0366】
化合物N-6のHOMOのエネルギーレベルは、-6.20eVであった。また、化合物N-6のLUMOのエネルギーレベルは、-4.30eVであった。
【0367】
(高分子)化合物P-1~P-7及びN-1~N-6のHOMOのエネルギーレベル(eV)の絶対値、LUMOのエネルギーレベル(eV)の絶対値、及び吸収端波長(nm)は、下記表1のとおりである。
【0368】
【表1】
【0369】
<調製例1>(インク組成物I-1の調製)
下記表2にも示すとおり、溶媒である1,2-ジクロロベンゼンに対し、n型半導体材料である化合物N-1をインク組成物の全重量に対して2重量%の濃度となるように、また、p型半導体材料である高分子化合物P-1をインク組成物の全重量に対し2重量%の濃度となるように(n型半導体材料/p型半導体材料=1/1)混合し、75℃で3時間撹拌を行って得られた混合液をフィルターを用いてろ過し、インク組成物(I-1)を得た。
【0370】
<調製例2~7及び比較調製例1~13>
n型半導体材料及びp型半導体材料を下記表2に示す組み合わせで使用した以外は、調製例1と同様にして、インク組成物(I-2)~(I-7)及びインク組成物(C-1)~(C-13)の調製を行った。
【0371】
【表2】
【0372】
<実施例1>(光検出素子の製造及び評価)
(1)光検出素子及びその封止体の製造
以下のとおり、光検出素子及びその封止体を製造した。
【0373】
スパッタ法により50nmの厚さでITOの薄膜(陽極)が形成されたガラス基板を用意し、このガラス基板に対し、表面処理としてオゾンUV処理を行った。
【0374】
次に、インク組成物(I-1)を、ITOの薄膜上にスピンコート法により塗布して塗膜を形成した後、窒素ガス雰囲気下で100℃に加熱したホットプレートを用いて10分間加熱処理して乾燥させた。形成された活性層の厚さは約250nmであった。
【0375】
次に、抵抗加熱蒸着装置内にて、形成された活性層上にカルシウム(Ca)層を約5nmの厚さで形成し、電子輸送層とした。
【0376】
次いで、形成された電子輸送層上に、銀(Ag)層を約60nmの厚さで形成し、陰極とした。
以上の工程により、ガラス基板上に光検出素子が製造された。得られた構造体をサンプル1とした。
【0377】
次に、製造された光検出素子の周辺を囲むように、支持基板であるガラス基板上に封止材であるUV硬化性封止剤を塗布し、封止基板であるガラス基板を貼り合わせた後、UV光を照射することで光検出素子を、支持基板と封止基板との間隙に封止することにより光検出素子の封止体を得た。支持基板と封止基板との間隙に封止された光検出素子の厚さ方向から見たときの平面的な形状は2mm×2mmの正方形であった。
【0378】
(2)光検出素子の評価
製造された光検出素子の封止体に対し、-2Vの逆バイアス電圧を印加し、この印加電圧における外部量子効率(EQE)と暗電流とをそれぞれをソーラーシミュレーター(CEP-2000、分光計器社製)とソースメータ(KEITHLEY 2450 Source Meter、ケースレーインスツルメンツ社製)とを用いて測定して評価した。
【0379】
EQEについては、まず光検出素子の封止体に、-2Vの逆バイアス電圧を印加した状態で、300nmから1200nmの波長範囲において20nmごとに一定の光子数(1.0×1016)の光を照射したときに発生する電流の電流値を測定し、公知の手法により波長300nmから1200nmにおけるEQEのスペクトルを求めた。
【0380】
次いで、得られた20nmごとの複数の測定値のうち、p型半導体材料の吸収ピーク波長に最も近い波長(λmax)における測定値をEQEの値(%)とした。
【0381】
暗電流については、光が照射されない暗状態において、光検出素子の封止体に-10Vから2Vの電圧を印加し、公知の手法を用いて測定された-2Vの逆バイアス電圧印加時の電流値を暗電流の値として得た。
【0382】
次に、得られた測定値と、下記式で表される計算式とにより、印加電圧-2Vにおける比検出能(Detectivity)(D*)(Jones)を計算した。
【0383】
【数1】
【0384】
式中、EQEは外部量子効率であって、λmaxにおけるEQEを表し、Jは暗電流密度を表す。
【0385】
各実施例及び比較例において用いられた、n型半導体材料のHOMOのエネルギーレベルの絶対値からp型半導体材料のHOMOのエネルギーレベルの絶対値を減じた値(ΔEA)と、n型半導体材料のLUMOのエネルギーレベルの絶対値からp型半導体材料のLUMOのエネルギーレベルの絶対値を減じた値(ΔEB)との和の値(ΔEA+ΔEB)と併せて、結果を下記表3に示す。
【0386】
<実施例2~5及び比較例1~13>
インク組成物(I-1)の代わりに、実施例2~5についてはインク組成物(I-2)(実施例2)、(I-3)(実施例3)、(I-6)(実施例4)及び(I-7)(実施例5)を、比較例1~13についてはインク組成物(C-1)~(C-13)を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例2~5及び比較例1~13にかかる光検出素子及びその封止体を製造し、評価した。結果を下記表3に示す。
【0387】
【表3】
【符号の説明】
【0388】
1 イメージ検出部
2 表示装置
10 光検出素子
11、210 支持基板
12 第1の電極
13 電子輸送層
14 活性層
15 正孔輸送層
16 第2の電極
17 封止部材
20 CMOSトランジスタ基板
30 層間絶縁膜
32 層間配線部
40 封止層
50 カラーフィルター
100 指紋検出部
200 表示パネル部
200a 表示領域
220 有機EL素子
230 タッチセンサーパネル
240 封止基板
図1
図2
図3