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特許7322028新規ターポリマー及び医薬剤形におけるそれらの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】新規ターポリマー及び医薬剤形におけるそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/18 20060101AFI20230731BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20230731BHJP
   C08F 220/04 20060101ALI20230731BHJP
   C08F 220/26 20060101ALI20230731BHJP
   C08F 220/30 20060101ALI20230731BHJP
   C08F 226/06 20060101ALI20230731BHJP
   C08F 226/10 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
C08F220/18
A61K47/32
C08F220/04
C08F220/26
C08F220/30
C08F226/06
C08F226/10
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020533762
(86)(22)【出願日】2018-12-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-22
(86)【国際出願番号】 EP2018083901
(87)【国際公開番号】W WO2019121051
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-12-03
(31)【優先権主張番号】17209070.6
(32)【優先日】2017-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブランドル,フェルディナンド ポール
(72)【発明者】
【氏名】スミット,テオ
(72)【発明者】
【氏名】グス,フェリシタス
(72)【発明者】
【氏名】コルター,カール
(72)【発明者】
【氏名】アンゲル,マクシミリアン
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,フランク
【審査官】谷合 正光
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-273612(JP,A)
【文献】特開平06-340721(JP,A)
【文献】特表2007-514031(JP,A)
【文献】特開2010-059333(JP,A)
【文献】特開昭63-048315(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 220/18
A61K 47/32
C08F 220/04
C08F 220/26
C08F 220/30
C08F 226/06
C08F 226/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造単位の20~35重量%が、アクリル酸に由来し、構造単位の45~60重量%が、メタクリル酸tert-ブチルから選択される疎水性メタクリレートに由来し、構造単位の15~35重量%が、N-ビニルラクタム、メタクリル酸ヒドロキシエチル及びアクリル酸フェノキシエチルからなる群から選択される第3のオレフィンモノマーに由来し、但し、3つのモノマー群に由来する構造単位の総量が100重量%になる、ターポリマー。
【請求項2】
標準条件下での6.8のpHのリン酸塩緩衝液への溶解度が、ターポリマーの0.3重量%水性調製物が8μmの平均孔径を有する膜フィルターでろ過された場合に、フィルター上に残存する不溶性物質の含有量が水性調製物中のターポリマーの量の25重量%以下であるようなものである、請求項1に記載のターポリマー。
【請求項3】
N-ビニルラクタムが、N-ビニルピロリドンである、請求項1~のいずれか一項に記載のターポリマー。
【請求項4】
N-ビニルラクタムが、N-ビニルカプロラクタムである、請求項1~のいずれか一項に記載のターポリマー。
【請求項5】
80~150℃の範囲の計算されたガラス転移温度を有する、請求項1~のいずれか一項に記載のターポリマー。
【請求項6】
100~150℃の範囲の計算されたガラス転移温度を有する、請求項1~のいずれか一項に記載のターポリマー。
【請求項7】
メタクリル酸tert-ブチル由来の構造単位の量が、45~55重量%の範囲にある、請求項1~のいずれか一項に記載のターポリマー。
【請求項8】
アクリル酸由来の構造単位の量が、20~30重量%の範囲にある、請求項1~のいずれか一項に記載のターポリマー。
【請求項9】
第3のオレフィンモノマー由来の構造単位の量が、20~35重量%の範囲にある、請求項1~のいずれか一項に記載のターポリマー。
【請求項10】
7,000~100,000g/molの範囲の重量平均分子量を有する、請求項1~のいずれか一項に記載のターポリマー。
【請求項11】
水に溶解すると5~9の範囲のpHをもたらすように、部分的に中和されている、請求項1~10のいずれか一項に記載のターポリマー。
【請求項12】
フリーラジカル開始剤の存在下でのモノマーのラジカル重合によって、請求項1~11のいずれか一項に記載のターポリマーを製造する方法。
【請求項13】
重合が、溶液重合である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
溶液重合が、有機溶媒中で実施される、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
有機溶媒が、イソプロパノールである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ラジカル開始剤が、過酸化物である、請求項1215のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
請求項1~11のいずれか一項に記載のターポリマー、及び0.1重量%未満の標準条件での水への溶解度を有する活性医薬成分を含む医薬製剤であって、活性成分が非晶質形態で存在する、医薬製剤
【請求項18】
0.1重量%未満の標準条件での水への溶解度を有する活性成分の、ヒト又は動物の身体の水性環境における再結晶化を阻害するための医薬製剤中の再結晶化阻害剤としての、請求項1~11のいずれか一項に記載のターポリマーの使用であって、活性成分が該医薬製剤中に非晶質形態で存在する、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル酸、疎水性メタクリレート及び第3のオレフィンモノマーに基づく新規ターポリマー、胃腸吸着を改善するための医薬賦形剤としてのそれらの使用、それぞれの医薬剤形、及びターポリマーを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
難水溶性薬物(BCSクラスII及びIV)の腸管吸収は、胃腸管腔で達成可能な最大濃度によって制限される。したがって、製剤開発における様々なアプローチは、胃腸管における溶解速度の増加及び薬物溶解度の改善を目的とする。薬物を溶液として投与することは、難水溶性薬物の腸管吸収を増強するための一般的なアプローチである。この目的のために、疎水性薬物は、共溶媒、界面活性剤、錯化剤(例えば、シクロデキストリン)及び/又は油の混合物を使用して製剤化される。経口投与後、これらの製剤は、溶液中に存在する薬物の総濃度を増加させる; しかし、このアプローチは、必ずしも改善されたバイオアベイラビリティをもたらすわけではない。薬物の親油性に応じて、薬物分子の大部分は、コロイド種(例えば、乳化油、ミセルなど)の混合物中に可溶化される。薬物の遊離分子種のみが腸バリアに浸透することができるため、この部分は吸収に利用できない。さらに、胃腸管における製剤の希釈及び分散は、可溶化能力を減少させる。結果として、準安定過飽和状態が生成され、これは、最終的には薬物の沈殿をもたらす。
【0003】
溶液中での投与の他に、固体形態における難水溶性薬物の送達を可能にするいくつかの製剤戦略が存在する。これらのアプローチは、胃腸管において過飽和を誘導する高エネルギーの又は急速に溶解する形態の薬物を生成すること(例えば、破砕(milling)、共粉砕(co-grinding)、溶媒蒸発、溶融又は結晶工学によって)を目的とする。例えば、適切なポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマー、ポリエチレングリコール、ポリメタクリレート、セルロース誘導体など)及び/又は界面活性剤と組み合わせて、難水溶性薬物を、固体分散体に製造することができる(例えば、噴霧乾燥又は熱溶融押出によって)。これらは、ガラス化、特定の薬物-ポリマー相互作用、及び/又は移動度の低減によって非晶質状態を安定化させるポリマーマトリックス中に埋め込まれた非晶質薬物粒子を含有する。埋め込まれた薬物分子の放出は、しばしば、ポリマーマトリックスの溶解速度に依存する。胃腸管における剤形の溶解後、溶液中の薬物の濃度は、飽和溶解度を上回る。この過飽和状態は、熱力学的に不安定であり、系は、薬物の沈殿によって平衡状態に戻る傾向がある。
【0004】
増加した濃度から恩恵を受けるために、吸収に十分な時間、胃腸管腔における過飽和状態を安定化させることが必要である。例えば、セルロース誘導体(例えば、HPMC又はHPMCAS)及びビニルポリマー(例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン又はビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマー)は、核形成及び/又は結晶成長を妨げることによって薬物の沈殿を阻害することが記載されている。このタイプの安定化は、適用前の剤形における非晶質状態の安定化とは異なることに留意することが重要である。
【0005】
WO2014/159748は、アクリレートベースの結晶化阻害剤、好ましくは、1:2:1の重量比のメタクリル酸ブチル、メタクリル酸2-ジメチルアミノエチル及びメタクリル酸メチルのコポリマーの使用に言及する。
【0006】
WO 2005/058383は、アクリル酸オクチルなどのアルキルアクリレート並びにアクリル酸及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートに基づくコポリマーである、接着特性を有する水溶性生体適合性ポリマーを含む体壁修復用の接着性インプラントを記載する。
【0007】
WO 2014/182713は、アルキル(メタ)アクリレート、カルバルコキシアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート及びアルキルアセチルアクリレートなどの少なくとも3つの異なるアクリレートモノマーから作製された統計コポリマー、並びに薬物結晶化及び過飽和維持を阻害するためのそれらの使用に関する。WO 2014/182710は、糖部分でさらに置換された同様のコポリマーに言及する。これらのコポリマーは、いくつかの不利な点を示す。まず、全てのモノマー群は、容易に利用可能なわけではなく、特に合成する必要がある。別の問題は、コポリマーがかなり低いガラス転移温度を有し、それが噴霧乾燥を困難にすることである。より低いガラス転移温度は、剤形がいわゆる「コールドフロー(cold flow)」する傾向があるため、貯蔵安定性に関しても不利である。また、糖置換コポリマーは、溶融押出によって処理される場合、不安定性を示す。
【0008】
従来技術によれば、HPMCASなどのセルロース誘導体は、しばしば、薬物の沈殿を阻害するために選択される賦形剤と見なされる[J. Brouwers, M.E. Brewster, P. Augustijns, Supersaturating drug delivery systems: The answer to solubility-limited oral bioavailability? Journal of Pharmaceutical Sciences, 98 (2008) 2549-2572; D.B. Warren, H. Benameur, C.J.H. Porter, C.W. Pouton, Using polymeric precipitation inhibitors to improve the absorption of poorly water-soluble drugs: A mechanistic basis for utility, Journal of Drug Targeting, 18 (2010) 704-731; S. Baghel, H. Cathcart, N.J. O'Reilly, Polymeric amorphous solid dispersions: A review of amorphization, crystallization, stabilization, solid-state characterization, and aqueous solubilization of biopharmaceutical classification system class II drugs, Journal of Pharmaceutical Sciences, 105 (2016) 2527-2544]。しかし、HPMCAS及び他の公知のポリマーの有効性は、しばしば理想的ではない。なぜならば、これらのポリマーは、元々は他の用途(例えば、コーティング又は増粘剤)のために最適化されているからである。これまでのところ、変動性、長期安定性、加工性及び性能に関する全ての要件を満たす賦形剤は利用可能ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明によって解決されるべき課題は、十分なバイオアベイラビリティを保証するために、ヒト又は動物の身体の水性環境における難水溶性活性成分のインビボ(in vivo)放出後の過飽和状態からの再結晶化及び沈殿に対する安全で効率的な安定化を可能にする医薬製剤用の賦形剤を開発することであった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、i)構造単位の20~35重量%が、アクリル酸に由来し、ii)構造単位の45~60重量%が、疎水性メタクリレートに由来し、iii)構造単位の15~40重量%が、N-ビニルラクタム、メタクリル酸ヒドロキシエチル及びアクリル酸フェノキシエチルからなる群から選択される第3のオレフィンモノマーに由来し、但し、i)、ii)及びiii)の総量が100重量%に一致する、ターポリマーを見出すことによって解決された。
【発明を実施するための形態】
【0011】
好ましい実施形態によれば、本発明は、i)構造単位の20~35重量%が、アクリル酸に由来し、ii)構造単位の45~60重量%が、疎水性メタクリレートに由来し、iii)構造単位の15~40重量%が、N-ビニルラクタム、メタクリル酸ヒドロキシエチル及びアクリル酸フェノキシエチルからなる群から選択される第3のオレフィンモノマーに由来し、但し、i)、ii)及びiii)の総量が100重量%に一致し、標準条件下での6.8のpHのリン酸塩緩衝液への溶解度が、ターポリマーの0.3重量%水性調製物が8μmの平均孔径を有する膜フィルターでろ過された場合に、フィルター上に残存する不溶性物質の含有量が水性調製物中のターポリマーの量の25重量%以下であるようなものである、ターポリマーに関する。
【0012】
本発明はさらに、ターポリマーをもたらすための3つの異なるモノマーのモノマー混合物のフリーラジカル開始重合によって、本発明のターポリマーを製造する方法に関する。
【0013】
本発明の全ての実施形態では、アクリル酸は、遊離酸の形態で、又はアクリル酸ナトリウム若しくはアクリル酸カリウム(アクリル酸として計算される)、又はそれらの混合物としてのいずれでも重合を受けることができる。
【0014】
N-ビニルラクタムは、N-ビニルピロリドン又はN-ビニルカプロラクタム、好ましくはN-ビニルピロリドン、最も好ましくはN-ビニルカプロラクタムであってもよい。
【0015】
本発明の別の態様は、ヒト又は動物の身体の水性環境への剤形からの放出後の活性成分のインビボ(in vivo)再結晶化を阻害するためのターポリマーの使用であって、それぞれの剤形は、ターポリマー及び活性成分を含み、活性成分は、0.1重量%未満の標準条件下での水への溶解度を有する、使用である。好ましくは、標準条件下での活性成分の水への溶解度は、0.05重量%未満であり、活性成分は、そのような剤形中に非晶質状態で存在するか、又は分子的に分散されている。非晶質は、5重量%未満が結晶であることを意味する。結晶の比率は、X線回折法によって測定することができる。
【0016】
本発明において、溶解度(水、リン酸塩緩衝液又は他の適切な生物学的に関連する系へのいずれでも)は、常に標準条件、すなわち、23℃の温度及び0.101325MPaの圧力での溶解度である。
【0017】
6.8のpHのリン酸塩緩衝液への溶解度は、水中のターポリマーの水性調製物を調製することによって、標準条件下で保有される。ターポリマーの0.3重量%水性調製物が8μmの平均孔径を有する膜フィルターでろ過された場合に、フィルター上に残存する不溶性物質の含有量は、水性調製物中のターポリマーの量の25重量%以下である。膜フィルターは、好ましくは、ポリカーボネートフィルター膜である。そのような膜は、市販されている。好ましくは、残留物は、10重量%未満である。
【0018】
本発明によれば、水に難溶性の活性成分は、標準条件で水への0.1重量%未満の溶解度を有するものである。
【0019】
すでに述べたように、水に難溶性の活性成分の水溶性製剤に適したターポリマーは、ターポリマーをもたらすための3つの異なるモノマーのモノマー混合物のフリーラジカル開始重合によって得られる、上に定義されるような6.8のpHのリン酸塩緩衝液への溶解度を有するターポリマーであって、i)構造単位の20~35重量%が、アクリル酸に由来し、ii)構造単位の45~60重量%が、疎水性メタクリレートに由来し、iii)構造単位の15~40重量%が、N-ビニルラクタム、メタクリル酸ヒドロキシエチル及びアクリル酸フェノキシエチルからなる群から選択される第3のオレフィンモノマーに由来し、但し、i)、ii)及びiii)の総量が100重量%に一致し、難水溶性活性成分が、水、人工腸液又は胃液への0.1重量%未満の溶解度を有する、ターポリマーである。N-ビニルラクタムは、N-ビニルピロリドン又はN-ビニルカプロラクタム、好ましくはN-ビニルピロリドン、最も好ましくはN-ビニルカプロラクタムであってもよい。
【0020】
上に定義されるような6.8のpHのリン酸塩緩衝液への溶解度を有し、ターポリマーをもたらすための3つの異なるモノマーのモノマー混合物のフリーラジカル開始重合によって得られるポリマーであって、i)構造単位の20~35重量%が、アクリル酸に由来し、ii)構造単位の45~55重量%が、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸tert-ブチル及びメタクリル酸シクロヘキシルからなる群から選択される疎水性メタクリレートに由来し、iii)構造単位の20~35重量%が、N-ビニルラクタム、メタクリル酸ヒドロキシエチル及びアクリル酸フェノキシエチルからなる群から選択される第3のオレフィンモノマーに由来し、但し、i)、ii)及びiii)の総量が100重量%に一致する、ポリマーが好ましい。N-ビニルラクタムは、N-ビニルピロリドン又はN-ビニルカプロラクタム、好ましくはN-ビニルピロリドン、最も好ましくはN-ビニルカプロラクタムであってもよい。
【0021】
本発明の全ての実施形態では、重量パーセントで示されるモノマー由来部分についての量は、±1重量%の偏差を含むことが意図される。
【0022】
ポリマーは、フリーラジカル重合によって、それ自体従来の方法で調製することができる。重合は、好ましくは、有機溶媒中、好ましくはアルコール、例えばメタノール又はエタノール中、特にイソプロパノール中の溶液重合として実施される。そのような方法は、それ自体当業者に公知である。適切な開始剤は、例えば、有機過酸化物、例えば、ジイソブチリルペルオキシド、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシネオデカノエート、tert-アミルペルオキシネオデカノエート、tert-ブチルペルオキシネオデカノエート、tert-ブチルペルオキシネオヘプタノエート、tert-ブチルペルオキシピバレート、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート及びジ-tert-ブチルペルオキシドである。tert-ブチルペルオキシピバレート、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート及びtert-ブチルペルオキシネオデカノエートが好ましい。あるいは、アルコール可溶性アゾ開始剤、特に、生理学的に重要な副産物を形成しないアゾ開始剤、例えば、ジメチル2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)を使用して、重合を開始させることができる。
【0023】
重合は、20~150℃、好ましくは50~130℃の温度で実施してもよい。重合は、大気圧下で、又は高圧下の密閉反応器中の両方で実施することができる。この場合、反応中に設定された圧力下で重合することが可能であり、又は圧力は、気体を注入する又は排気することによって調整することができる。
【0024】
連鎖移動剤、例えば、チオグリコール酸エチルヘキシルの存在下で重合を実施することも可能である。
【0025】
重合は、連続的に、半バッチで、又はバッチプロセスとして実施することができ、ポリマーは、好ましくは供給プロセスにより得られる。
【0026】
ポリマーは、典型的には、重合プロセス後にアルカリ性水溶液で部分的に中和される。中和度は、部分的に中和されたターポリマーの水溶液のpHが、5~9の範囲にあるように調整される。適切なアルカリ性水溶液は、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム溶液である。
【0027】
ポリマー溶液の固体形態への変換は、従来の乾燥プロセス、例えば、噴霧乾燥、凍結乾燥又はローラー乾燥によって実施してもよい。
【0028】
好ましい実施形態によれば、有機溶媒は、水蒸気蒸留によって除去されて、ポリマーの水溶液をもたらし、これは、その後に噴霧乾燥されてそれぞれの粉末となることができる。
【0029】
別の好ましい実施形態によれば、ポリマーの有機反応溶液は、活性成分で直接処理されて、固体分散体をもたらす。
【0030】
ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定されるターポリマーの重量平均分子量は、7,000~100,000g/mol、好ましくは7,000~70,000g/mol、最も好ましくは10,000~50,000g/molの範囲にある。
【0031】
フォックス(Fox)式に従って計算されるガラス転移温度は、>80℃の範囲であり、好ましくは100℃より高く、最大150℃である:
【0032】
【数1】
【0033】
ガラス転移温度はまた、20K/分の加熱速度で示差走査熱量測定によって測定してもよい。測定は、DIN EN ISO 11357-2に従って実施することができる。
【0034】
活性成分は、薬学、栄養学又は農薬の活性成分の群から選択することができる。
【0035】
ここで言及し得る例としては、抗高血圧薬、ビタミン、細胞増殖抑制剤、とりわけタキソール、麻酔薬、神経遮断薬、抗うつ薬、抗生物質、抗真菌薬、殺真菌剤、化学療法薬、泌尿器科薬、血小板凝集阻害剤、スルホンアミド、鎮痙薬、ホルモン、免疫グロブリン、血清、甲状腺治療薬、精神作用薬、パーキンソン病の薬物及び他の抗多動薬、眼科薬、神経障害調製物、カルシウム代謝調節剤、筋弛緩薬、麻薬、抗高脂血症薬、肝臓治療薬、冠状動脈薬、心臓薬、免疫療法薬、調節ペプチド及びそれらの阻害剤、催眠薬、鎮静薬、婦人科薬、痛風治療薬、線維素溶解薬、酵素調製物及び輸送タンパク質、酵素阻害剤、催吐剤、減量薬、灌流促進剤、利尿薬、診断薬、コルチコイド、コリン作用薬、胆道治療薬、抗喘息薬、気管支溶解薬(broncholytics)、ベータ受容体遮断薬、カルシウム拮抗薬、ACE阻害剤、動脈硬化治療薬、消炎薬、抗凝固薬、抗低血圧薬、抗低血糖薬、抗高血圧薬、抗線維素溶解薬、抗てんかん薬、制吐剤、解毒剤、抗糖尿病薬、抗不整脈薬、抗貧血薬、抗アレルギー薬、駆虫薬、鎮痛薬、興奮薬、アルドステロン拮抗薬、又は抗ウイルス活性成分、又はHIV感染症及びAID症候群の治療のための活性成分が挙げられる。
【0036】
水に難溶性の活性成分を有する製剤を調製するために、本発明のターポリマーを使用することが好ましい。
【0037】
製剤は、活性成分及び本発明のターポリマーの両方が適切な溶媒又は溶媒の混合物に溶解されている真の溶液、又は活性成分が非晶質形態で固体ポリマーマトリックス中に埋め込まれている固体分散体のいずれであってもよい。固体分散体は、固体ポリマーマトリックス中の1つ以上の活性成分の分散体である[W.L. Chiou, S. Riegelman, Pharmaceutical applications of solid dispersion systems, Journal of Pharmaceutical Sciences, 60 (1971) 1281-1302]。固体分散体は、活性成分及びポリマーの物理的混合物を、それが溶融するまで加熱し、続いて冷却及び固化させることによって調製することができる(溶融法)。あるいは、固体分散体は、活性成分及びポリマーの物理的混合物を一般的な溶媒に溶解し、続いて溶媒を蒸発させることによって調製することができる(溶媒法)。固体分散体は、結晶性マトリックス中に分子的に分散された活性成分を含有してもよい。あるいは、固体分散体は、非晶質担体からなってもよい; 活性成分は、担体中に分子的に分散されるか、又は非晶質沈殿物を形成することができる。いずれの場合も、活性成分は、非晶質形態である必要がある。「非晶質」は、活性成分の5重量%未満が結晶であることを意味する。
【0038】
本発明の一実施形態によれば、本発明による固体分散体は、溶媒法によって調製することができる。活性成分及びポリマーは、有機溶媒又は溶媒混合物に溶解され、次いで、溶液は乾燥される。溶解はまた、高温(30~150℃)及び加圧下で起こり得る。
【0039】
適切な有機溶媒は、ジメチルホルムアミド、メタノール若しくはそれらの混合物、並びにテトラヒドロフランとの混合物である。適切な有機溶媒としてはまた、エタノール、イソプロパノール、ジメチルアセトアミド、アセトン及び/又はジオキサンが挙げられる。これらの溶媒又は溶媒混合物は、最大20重量%の水をさらに含有してもよい。
【0040】
原則として、噴霧乾燥、流動床乾燥、ドラム乾燥、凍結乾燥、真空乾燥、ベルト乾燥、ローラー乾燥、キャリアガス乾燥、蒸発など、全てのタイプの乾燥が可能である。
【0041】
本発明の別の実施形態によれば、固体分散体は、溶融プロセスによって調製される。活性成分は、ポリマーと混合される。50~180℃の温度に加熱することによって、固体分散体の生成が行われる。ここで、ポリマーのガラス転移温度、又は活性成分の融点を超える温度が有利である。軟化助剤、例えば水、有機溶媒、慣用の有機軟化剤を添加することによって、対応して処理温度を低減することが可能である。後で非常に容易に再び蒸発させることができる、すなわち、180℃未満、好ましくは150℃未満の沸点を有する助剤が、特に有利である。
【0042】
好ましい実施形態によれば、このタイプの調製は、スクリュー押出機で実施される。ここでどのプロセスパラメーターを個別に調整しなければならないかは、当業者によって、従来の専門知識の範囲内で簡単な実験によって決定することができる。
【0043】
好ましい実施形態によれば、軟化剤は、溶融中に添加される。好ましい軟化剤は、クエン酸エステル、例えば、クエン酸トリエチル又はクエン酸アセチルトリブチル、グリコール誘導体、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール又はポロキサマー; ひまし油及び鉱油誘導体; セバシン酸エステル、例えば、セバシン酸ジブチル、トリアセチン、脂肪エステル、例えば、モノステアリン酸グリセロール、脂肪アルコール、例えば、ステアリルアルコール、脂肪酸、例えば、ステアリン酸、エトキシル化油、エトキシル化脂肪酸、エトキシル化脂肪アルコール又はビタミンE TPGS(トコフェロールポリエチレングリコールスクシネート)である。軟化剤は、ポリマーに基づき、0.1~40重量%、好ましくは1~20重量%の量で使用してもよい。
【0044】
生成される固体分散体は、非晶質である。非晶質状態は、X線回折によって確立することができる。固体分散体のいわゆる「X線非晶質」状態は、結晶の比率が、5重量%未満であることを意味する。
【0045】
非晶質状態はまた、DSCサーモグラム(示差走査熱量測定)を用いて調査することができる。本発明による固体分散体は、溶融ピークを有さず、ガラス転移温度のみを有し、これは、本発明による固体分散体で使用される活性成分のタイプにも依存する。ガラス転移温度は、20K/分の加熱速度で測定される。
【0046】
本発明による剤形の調製の過程で、慣用の医薬助剤が、場合により、同時に処理されてもよい。これらは、吸着剤、結合剤、崩壊剤、染料、充填剤、香味剤又は甘味剤、流動促進剤、滑沢剤、防腐剤、軟化剤、可溶化剤、溶媒又は共溶媒、安定剤(例えば、抗酸化剤)、界面活性剤、又は湿潤剤のクラスから選択される。
【0047】
新規ターポリマーは、活性成分が、新規ターポリマーのポリマーマトリックス中の活性成分の非晶質固体分散体の形態で、又は適切な溶媒ビヒクル系中の活性成分及び本発明のターポリマーの液体溶液の形態で存在する剤形からの活性成分の放出後に、胃腸管の水性媒体中の活性医薬成分の再結晶化を阻害することを可能にする。
【実施例
【0048】
略語
VP: N-ビニルピロリドン
HEMA: メタクリル酸2-ヒドロキシエチル
POEA: アクリル酸フェノキシエチル
tBMA: メタクリル酸tert-ブチル
CHMA: メタクリル酸シクロヘキシル
IPMA: メタクリル酸イソプロピル
VC: N-ビニルカプロラクタム
AA: アクリル酸
【0049】
GPC法の説明
ポリマーの分子量は、溶離液として1重量%トリフルオロ酢酸及び0.5重量%臭化リチウムを含有するジメチルアセトアミド、狭い分子量分布のポリ(メタクリル酸メチル)標準(PSS Polymer Standard Solutions GmbHから市販され、M=800~M=2,200,000の範囲の分子量を有する)及びDRI Wyatt Optilab DSPからの示差屈折率(DRI)検出器を使用して、35℃でサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって決定した。
【0050】
リン酸塩緩衝液への溶解度: 試験方法の説明
300mgの乾燥ポリマーを、150mLのガラス製ねじ蓋瓶中の100mLのリン酸塩緩衝液(pH6.8)に添加した。混合物を、マグネチックスターラー及び長さ3~5cmのマグネチックスターラーバーを使用して、23℃で15分間、300rpmで撹拌した。その後、混合物を、47mmの直径及び8μmの平均孔径を有する乾燥させて秤量したポリカーボネートフィルター(Whatmanから入手可能)でろ過した。残留物を有するフィルターを、0.02MPaの真空オーブン中で75℃で一晩乾燥させた。フィルター上の残留物の量は、残留物を含有する乾燥フィルターの重量から乾燥フィルターの重量を差し引くことによって決定した。残留物の量は、ポリマーの総量(300mg)のパーセンテージとして示される。
【0051】
ガラス転移温度は、表1に示されるホモポリマーTg値を使用して、フォックス(Fox)式に従って計算した。
【0052】
【数2】
【0053】
【表1】
【0054】
残留モノマー量
VP、AA及びVCの含有量は、VPについて235nm、AA及びVCについて205nmの吸収波長でのUV検出を使用する逆相液体クロマトグラフィーによって決定した。定量は、外部較正によって実施した。サンプルのアリコートを、メタノールに溶解し、直接注入した。クロマトグラフィー分離を、勾配溶出を使用することによって達成した。
【0055】
HEMA、tBMA、POEA、CHMA及びIPMAの含有量は、炎イオン化検出器(FID)を使用するキャピラリーガスクロマトグラフィーによって決定した。定量は、標準添加によって実施した。サンプルのアリコートを、2-プロパノールに溶解し、ジメチルポリシロキサンの固定相でコーティングされた非極性キャピラリーカラムに注入した。
【0056】
ポリマー合成
ポリマーA1
メカニカルスターラー、コンデンサー、窒素スイープ、温度計、並びにモノマー及び開始剤を徐々に添加するための注入口を備えた2リットルのガラス製反応器に、240グラムのイソプロパノールを投入した。モノマー溶液を、266グラムのイソプロパノールに75グラムのアクリル酸、165グラムのメタクリル酸tert-ブチル、及び60グラムのN-ビニルピロリドンを溶解することによって調製した。開始剤溶液を、200グラムのイソプロパノールに3.84グラムのtert-ブチルペルオキシピバレート溶液(ミネラルスピリット中で75重量%)を溶解することによって調製した。合計10重量%のモノマー溶液を反応器投入物に添加し、得られた溶液を100rpmで撹拌しながら75℃まで加熱した。その後、合計10重量%の開始剤溶液を添加し、温度を80℃まで上昇させた。次いで、残りの90重量%のモノマー及び開始剤溶液を、それぞれ4時間及び5時間にわたって撹拌反応器投入物に一定の供給速度で別々に添加した。これらの添加の間、反応混合物の温度を、80℃に維持した。添加が完了した後、反応混合物を80℃でさらに1時間撹拌し、次いで、周囲温度まで放冷した。サンプルを混合物から採取し、SEC測定のために乾燥させた。別のサンプルを残留モノマー含有量測定のために採取した。およそ150mlの水を添加し、その後、反応混合物のpHを、25重量%の水酸化ナトリウム水溶液を添加することによって設定した。揮発性物質を除去し、生成物を、0.02MPaで75℃で真空オーブン中で一晩乾燥させた。
【0057】
ポリマーB1及びC1を、ポリマーA1と同様に調製した。
【0058】
バリエーションを表1に示す。
【0059】
【表2】
【0060】
ポリマーA3
メカニカルスターラー、コンデンサー、窒素スイープ、温度計、並びにモノマー及び開始剤を徐々に添加するための注入口を備えた2リットルのガラス製反応器に、150グラムのイソプロパノール中の60グラムのN-ビニルピロリドンの溶液を投入した。モノマー溶液を、152グラムのイソプロパノールに75グラムのアクリル酸及び165グラムのメタクリル酸tert-ブチルを溶解することによって調製し、開始剤溶液を、150グラムのイソプロパノールに4.0グラムのtert-ブチルペルオキシピバレート溶液(ミネラルスピリット中で75重量%)を溶解することによって調製した。合計10重量%のモノマー溶液を反応器投入物に添加し、得られた溶液を100rpmで撹拌しながら70℃まで加熱した。その後、合計10重量%の開始剤溶液を添加し、温度を75℃まで上昇させた。次いで、残りの90重量%のモノマー及び開始剤溶液を、それぞれ4時間及び6時間にわたって撹拌反応器投入物に一定の供給速度で別々に添加した。これらの添加の間、反応混合物の温度を、75℃に維持した。添加が完了した後、反応混合物を75℃でさらに1時間撹拌し、次いで、周囲温度まで放冷した。サンプルを混合物から採取し、SEC測定のために乾燥させた。別のサンプルを残留モノマー含有量測定のために採取した。およそ150mlの水を添加し、その後、反応混合物のpHを、25重量%の水酸化ナトリウム水溶液を添加することによって設定した。反応混合物のpHを、25重量%の水酸化ナトリウム水溶液を添加することによって設定した。揮発性物質を減圧下で除去し、生成物を、0.02MPaで75℃で真空オーブン中で一晩乾燥させた。
【0061】
ポリマーA2及びA4~A8を、ポリマーA3と同様に調製した。ポリマーA8は、4.0グラムのtert-ブチルペルオキシピバレート溶液の代わりに、4.0gのジメチル2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)を使用して調製した。バリエーションを表3に示す。
【0062】
【表3】
【0063】
ポリマーC2、C3、C4、D1、E1及びF1を、ポリマーA3と同様に調製した。ポリマーC3は、供給前投入物中にVPなしで、モノマー供給物中に60gのPOEAを含めて調製した。ポリマーD1は、モノマー供給物中に165gのtBMAの代わりに165gのCHMAを用いて調製した。ポリマーE1は、モノマー供給物中に165gのtBMAの代わりに165gのIPMAを用いて調製した。ポリマーF1は、VPの代わりにVCを使用して調製した。VPと同様に、VCは供給前投入物中に含まれた。ポリマーF1は、供給前投入物中に150gの代わりに300gのイソプロパノールを用いて、モノマー供給物中に152gの代わりに255gのイソプロパノールを用いて合成した。バリエーションを表4にまとめる。
【0064】
【表4】
【0065】
残留物の量は、記載される溶解度試験に使用されるポリマーの総量のパーセンテージとして示される。結果を表5に列挙する。
【0066】
【表5】
【0067】
噴霧乾燥による非晶質固体分散体の調製
セレコキシブ(celecoxib)-ポリマー製剤(10重量%薬物負荷):
固体分散体は、セレコキシブ(celecoxib)及びポリマーA7で構成された。製剤を調製するために、3.0gのセレコキシブ(celecoxib)及び27.0gのポリマーを、570gのメタノールに溶解した(5重量%固形分)。噴霧乾燥は、0.7mmの二流体ノズルを備えたBuchiミニスプレードライヤーB-290で、次の条件下で実施した:
窒素流速 35m3/h
入口温度 85~105℃
出口温度 50~70℃
噴霧圧力 0.7MPa
液体流速 300g/h
【0068】
生成物は、サイクロンを使用して収集した。噴霧乾燥製剤の薬物含有量は、252nmでのUV吸収を測定することによって決定した; 固体状態特性は、粉末X線回折(PXRD)を使用して分析した:
薬物含有量(UV分光法) 10.3~10.7重量%
固体状態特性(PXRD) X線非晶質
【0069】
セレコキシブ(celecoxib)-ポリマー製剤(25重量%薬物負荷):
固体分散体は、セレコキシブ(celecoxib)と、ポリマーA1、ポリマーA2、ポリマーA3、ポリマーA4、ポリマーA5、ポリマーA6、ポリマーA7、ポリマーA8、ポリマーB1、ポリマーC1、ポリマーC2、ポリマーC3、ポリマーC4、ポリマーD1、ポリマーE1、ポリマーF1、HPMCAS-LF、HPMCAS-MF又はHPMCAS-HFとで構成された。製剤を調製するために、2.5gのセレコキシブ(celecoxib)及び7.5gのポリマーを、190gのメタノール、又はメタノール及びテトラヒドロフランの1:1混合物に溶解した(5重量%固形分)。噴霧乾燥は、0.7mmの二流体ノズルを備えたBuchiミニスプレードライヤーB-290で、次の条件下で実施した:
窒素流速 35m3/h
入口温度 85~105℃
出口温度 50~70℃
噴霧圧力 0.7MPa
液体流速 300g/h
【0070】
生成物は、サイクロンを使用して収集した。噴霧乾燥製剤の薬物含有量は、252nmでのUV吸収を測定することによって決定した; 固体状態特性は、粉末X線回折(PXRD)を使用して分析した:
薬物含有量(UV分光法) 24.2~27.6重量%
固体状態特性(PXRD) X線非晶質
【0071】
ダナゾール(danazol)-ポリマー製剤(10重量%薬物負荷):
固体分散体は、ダナゾール(danazol)と、ポリマーA1、ポリマーA2、ポリマーA3、ポリマーA4、ポリマーA5、ポリマーA6、ポリマーA7、ポリマーA8、ポリマーB1、ポリマーC1、ポリマーC3、ポリマーD1、ポリマーE1、ポリマーF1、HPMCAS-LF、HPMCAS-MF又はHPMCAS-HFとで構成された。製剤を調製するために、1.5gのダナゾール(danazol)及び13.5gのポリマーを、285gのメタノール、又はメタノール及びテトラヒドロフランの1:1混合物に溶解した(5重量%固形分)。噴霧乾燥は、0.7mmの二流体ノズルを備えたBuchiミニスプレードライヤーB-290で、次の条件下で実施した:
窒素流速 35m3/h
入口温度 85~105℃
出口温度 50~70℃
噴霧圧力 0.7MPa
液体流速 300g/h
【0072】
生成物は、サイクロンを使用して収集した。噴霧乾燥製剤の薬物含有量は、286nmでのUV吸収を測定することによって決定した; 固体状態特性は、粉末X線回折(PXRD)を使用して分析した:
薬物含有量(UV分光法) 9.4~11.7重量%
固体状態特性(PXRD) X線非晶質
【0073】
インビトロ(in vitro)放出実験
リン酸塩緩衝液pH6.8の調製
5Lのリン酸塩緩衝液pH6.8を調製するために、34.025gのリン酸二水素カリウムを、5リットルのメスフラスコに入れ、およそ1Lの水に溶解した。次いで、112mLの1M水酸化ナトリウム溶液を添加した; 溶液を水で5Lに希釈した。必要な場合、溶液のpHを6.8に調整した。
【0074】
リン酸塩緩衝液pH6.8における溶解試験
薬物放出を定量化し、過飽和の維持を測定するために、インビトロ(in vitro)溶解試験を行った。この目的のために、100mLのリン酸塩緩衝液pH6.8をエルレンマイヤー(Erlenmeyer)フラスコに入れ、多位置マグネチックスターラー(撹拌速度およそ300rpm)上に配置した。37℃の温度に達した後、規定量の噴霧乾燥製剤(0.14mg/mlの薬物濃度に相当)を添加した。1000μLのサンプルを、5分、15分、30分、60分、90分、120分、180分、240分、300分及び360分後に取り出した。サンプルを、微小遠心管にピペットで入れ、14,680rpmで3分間遠心分離して、沈殿物を除去した。透明な上清をメタノールで希釈した(薬物濃度に応じて1:4又は1:10); 溶液中の薬物の濃度を、メタノール中の純粋な薬物の検量線を使用してUV分光法によって決定した。ポリマーの性能を評価するために、濃度-時間曲線下の面積(AUC)を、次のように計算した:
【0075】
【数3】
【0076】
【表6】
【0077】
【表7】
(付記)
(付記1)
構造単位の20~35重量%が、アクリル酸に由来し、構造単位の45~60重量%が、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸tert-ブチル及びメタクリル酸シクロヘキシルからなる群から選択される疎水性メタクリレートに由来し、構造単位の15~40重量%が、N-ビニルラクタム、メタクリル酸ヒドロキシエチル及びアクリル酸フェノキシエチルからなる群から選択される第3のオレフィンモノマーに由来し、但し、3つのモノマー群に由来する構造単位の総量が100重量%になる、ターポリマー。
(付記2)
標準条件下での6.8のpHのリン酸塩緩衝液への溶解度が、ターポリマーの0.3重量%水性調製物が8μmの平均孔径を有する膜フィルターでろ過された場合に、フィルター上に残存する不溶性物質の含有量が水性調製物中のターポリマーの量の25重量%以下であるようなものである、付記1に記載のターポリマー。
(付記3)
疎水性メタクリレートが、メタクリル酸tert-ブチルである、付記1又は2に記載のターポリマー。
(付記4)
N-ビニルラクタムが、N-ビニルピロリドンである、付記1~3のいずれか一項に記載のターポリマー。
(付記5)
N-ビニルラクタムが、N-ビニルカプロラクタムである、付記1~3のいずれか一項に記載のターポリマー。
(付記6)
80~150℃の範囲の計算されたガラス転移温度を有する、付記1~5のいずれか一項に記載のターポリマー。
(付記7)
100~150℃の範囲の計算されたガラス転移温度を有する、付記1~5のいずれか一項に記載のターポリマー。
(付記8)
メタクリル酸tert-ブチル由来の構造単位の量が、45~55重量%の範囲にある、付記1~7のいずれか一項に記載のターポリマー。
(付記9)
アクリル酸由来の構造単位の量が、20~30重量%の範囲にある、付記1~8のいずれか一項に記載のターポリマー。
(付記10)
第3のオレフィンモノマー由来の構造単位の量が、20~35重量%の範囲にある、付記1~9のいずれか一項に記載のターポリマー。
(付記11)
7,000~100,000g/molの範囲の重量平均分子量を有する、付記1~10のいずれか一項に記載のターポリマー。
(付記12)
水に溶解すると5~9の範囲のpHをもたらすように、部分的に中和されている、付記1~11のいずれか一項に記載のターポリマー。
(付記13)
フリーラジカル開始剤の存在下でのモノマーのラジカル重合によって、付記1~12のいずれか一項に記載のターポリマーを製造する方法。
(付記14)
重合が、溶液重合である、付記13に記載の方法。
(付記15)
溶液重合が、有機溶媒中で実施される、付記13又は14に記載の方法。
(付記16)
有機溶媒が、イソプロパノールである、付記15に記載の方法。
(付記17)
ラジカル開始剤が、過酸化物である、付記13~16のいずれか一項に記載の方法。
(付記18)
付記1~17のいずれか一項に記載のターポリマー、及び0.1重量%未満の標準条件での水への溶解度を有する活性医薬成分を含む医薬剤形であって、活性成分が非晶質形態で存在する、医薬剤形。
(付記19)
0.1重量%未満の標準条件での水への溶解度を有する活性成分の、ヒト又は動物の身体の水性環境における再結晶化を阻害するための医薬剤形中の再結晶化阻害剤としての、付記1~17のいずれか一項に記載のターポリマーの使用であって、活性成分が該医薬剤形中に非晶質形態で存在する、使用。