(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
F25B 1/00 20060101AFI20230731BHJP
【FI】
F25B1/00 341Q
(21)【出願番号】P 2022505675
(86)(22)【出願日】2020-03-12
(86)【国際出願番号】 JP2020010956
(87)【国際公開番号】W WO2021181640
(87)【国際公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-04-18
(73)【特許権者】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 裕章
(72)【発明者】
【氏名】森本 敏行
(72)【発明者】
【氏名】早坂 康晴
【審査官】森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-198152(JP,A)
【文献】特開2019-176554(JP,A)
【文献】特開2019-062726(JP,A)
【文献】国際公開第2019/021448(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、凝縮器、減圧器、蒸発器を接続して冷媒を循環させる冷凍サイクルと、
互いに非接続状態の複数の相巻線を有し、前記圧縮機を駆動するモータと、
前記各相巻線の一端への通電を制御する第1インバータと、
前記各相巻線の他端への通電を制御する第2インバータと、
前記各相巻線の他端の相互間に接続された開閉器と、
前記開閉器の開放により前記各相巻線の他端を非接続状態とし前記第1および第2インバータを互いに連係してスイッチングするオープン巻線モード、及び前記開閉器の閉成により前記各相巻線の他端を相互接続して前記第1インバータをスイッチングするスター結線モードを、選択的に設定するモータコントローラと、
を備え、
前記モータコントローラは、
前記モータの起動に際し、前記オープン巻線モードを設定
し、その起動後、前記オープン巻線モードおよび前記スター結線モードのいずれかを選択する、
ことを特徴とする冷凍サイクル装置。
【請求項2】
前記モータコントローラは、
前記起動に際して前記オープン巻線モードのスイッチングにより前記モータの回転数
を所定回転数まで上昇させた後、前記冷凍サイクル装置の負荷に基づいて設定される目標回転数が高回転数域にあれば前記オープン巻線モードを設定し低回転数域にあれば前記スター結線モードを設定し、そのオープン巻線モードまたは
スター結線モードのスイッチングを
前記モータの回転数が前記目標回転数となるよう制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項3】
前記モータコントローラは、
前記起動に際して前記オープン巻線モードのスイッチングにより前記モータの回転数
を所定回転数まで上昇させた後、前記モータの回転数が高回転数域にあれば前記オープン巻線モードを設定し低回転数域にあれば前記スター結線モードを設定し、そのオープン巻線モードまたは
スター結線モードのスイッチングを前記モータの回転数が前記冷凍サイクル装置の負荷に基づいて設定される目標回転数となるよう制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項4】
前記所定回転数は、前記高回転数域にあることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項5】
前記モータの電流を検出する電流検出部をさらに備え、
前記モータコントローラは、
前記起動に際して前記オープン巻線モードのスイッチングにより前記モータの回転数
を所定回転数まで上昇させた後、前記電流検出部の検出電流が設定値以上の場合に前記オープン巻線モードを設定しその設定値未満の場合に前記スター結線モードを設定し、そのオープン巻線モードまたは
スター結線モードのスイッチングを前記モータの回転数が前記冷凍サイクル装置の負荷に基づいて設定される目標回転数となるよう制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項6】
前記開閉器は常開型である
ことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項7】
前記モータコントローラは、
前記オープン巻線モードから前記スター結線モードへの切換え及び前記スター結線モードから前記オープン巻線モードへの切換えを、
前記モータの運転中に実行可能である
ことを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項8】
前記圧縮機、前記蒸発器又は前記凝縮器として機能する室外熱交換器、前記減圧器を有する少なくとも1つの室外機と、
それぞれが前記凝縮器又は蒸発器として機能する室内熱交換器を有する複数の室内機と、
を備えた空気調和装置である
ことを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに非接続状態の複数の相巻線を有するモータを圧縮機の駆動モータとして備える冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機等の冷凍サイクル装置に搭載される圧縮機の駆動モータとして、複数の相巻線を有する永久磁石同期モータが使用される。また、永久磁石同期モータ(DCブラシレスモータともいう)の一例として、複数の相巻線を互いに非接続状態とした構成のオープン巻線モータ(Open-Windings Motor)が知られている。
【0003】
このオープン巻線モータ(モータと略称する)を備えた冷凍サイクル装置は、モータの各相巻線の一端への通電を制御する第1インバータ、モータの各相巻線の他端への通電を制御する第2インバータ、各相巻線の他端の相互間に接続される開閉器を備え、この開閉器の閉成により各相巻線をスター結線(星形結線ともいう)して第1インバータを単独でスイッチングするスター結線モード、及び開閉器の開放により各相巻線を非接続状態として第1および第2インバータを互いに連係してスイッチングするオープン巻線モードを、選択的に設定する。
【0004】
オープン巻線モードでは、スター結線モード時の約2倍の電圧を各相巻線に印加することができる。この点を考慮し、冷凍サイクル装置は、モータの回転数(速度)が閾値未満の低回転数域(低・中回転数域ともいう)では開閉器を閉成してスター結線モードを設定し、モータの回転数が負荷に応じた目標回転数となるよう第1インバータの単独スイッチングを制御する。モータの回転数が閾値以上の高回転数域では開閉器を開放してオープン巻線モードを設定し、モータの回転数が負荷に応じた目標回転数となるよう第1および第2インバータの連係スイッチングを制御する。モータの運転中に、スター結線モードとオープン巻線モードとをモータを停止させることなく切換えることで、低回転数域から高回転数域まで幅広い回転数範囲で高効率の運転を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
スター結線モードとオープン巻線モードを切換えるためのリレー等の開閉器には、作動の回数に応じた寿命がある。この寿命はスター結線モードとオープン巻線モードの切換え回数が多いほど短くなる。また、スター結線モードとオープン巻線モードをモータの運転中に切換える際には、第1インバータの単独スイッチングと、第1インバータと第2インバータの連係スイッチングを適切なタイミングで切換える必要もあり、モータの負荷変動や電源状態によっては、切換えの際に不安定な状態が生じる可能性もあるので、スター結線モードとオープン巻線モードの切換えは、できれば少ない方が好ましい。
【0007】
本発明の実施形態の目的は、開閉器の作動回数をできるだけ少なくすることができ、これにより開閉器の寿命向上が図れる、また安定したモータ駆動ができる冷凍サイクル装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の冷凍サイクル装置は、圧縮機、凝縮器、減圧器、蒸発器を接続して冷媒を循環させる冷凍サイクルと;互いに非接続状態の複数の相巻線を有し、前記圧縮機を駆動するモータと;前記各相巻線の一端への通電を制御する第1インバータと;前記各相巻線の他端への通電を制御する第2インバータと;前記各相巻線の他端の相互間に接続された開閉器と;この開閉器の開放により前記各相巻線の他端を非接続状態とし前記第1および第2インバータを互いに連係してスイッチングするオープン巻線モード、及び前記開閉器の閉成により前記各相巻線の他端を相互接続して前記第1インバータをスイッチングするスター結線モードを、選択的に設定するモータコントローラと;を備える。このモータコントローラは、 前記モータの起動に際し、前記オープン巻線モードを設定し、その起動後、前記オープン巻線モードおよび前記スター結線モードのいずれかを選択する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】各実施形態に関わる空気調和装置の構成を示すブロック図。
【
図3】第1実施形態におけるモータが起動する際の回転数変化およびモータの通常運転中のモード選択条件を示す図。
【
図4】第1実施形態におけるモータコントローラの制御を示すフローチャート。
【
図5】第2実施形態におけるモータコントローラの制御を示すフローチャート。
【
図6】第3実施形態におけるモータコントローラの制御を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[1]第1実施形態
第1実施形態の冷凍サイクル装置の構成について図面を参照しながら説明する。この実施形態では、複数の室外機および複数の室内機を互いに並列接続したいわゆるマルチタイプの空気調和機を例として説明するが、これに限らず、ヒートポンプ式チラーユニットや冷凍機等でもよい。
【0011】
図1に示すように、複数の室外機(第1,第2,第3室外機)A1~A3が冷媒管により互いに並列に接続され、その室外機A1~A3に液側管C1およびガス側管C2を介して複数の室内機B1~Bnが互いに並列状態で接続されている。そして、室外機A1~A3および室内機B1~Bn相互間にデータ伝送用および制御用の信号ラインDが接続されている。これら室外機A1~A3および室内機B1~Bnの接続により、冷暖房を行うとともに空調用冷温水の供給を行うマルチタイプの空気調和装置が構成される。この冷凍サイクルでは、室外機A1が全体制御用の親機として機能し、残りの室外機A2,A3および室内機B1~Bnが親機からの指示に従って動作する子機として機能する。
【0012】
室外機A1~A3は、それぞれ、圧縮機1、四方弁2、室外熱交換器3、膨張弁(減圧器)4、アキュームレータ5、室外ファン6、室外温度センサ7、室外コントローラ8、および本実施形態のモータ駆動装置9を有する。冷房運転時、実線矢印で示すように、室内機B1~Bnからガス側管C2に流れるガス冷媒が四方弁2およびアキュームレータ5を通って圧縮機1に吸込まれ、その圧縮機1で圧縮され吐出されるガス冷媒が四方弁2を通って室外熱交換器3に流れ、その室外熱交換器3で外気と熱交換して凝縮する冷媒が膨張弁4および液側管C1を通って室内機B1~Bnへ流れる。暖房運転時、室内機B1~Bnから液側管C1に流れる液冷媒が膨張弁4を通って室外熱交換器3に流れ、その室外熱交換器3で外気と熱交換して気化する冷媒が四方弁2およびアキュームレータ5を通って圧縮機1に吸込まれ、その圧縮機1で圧縮され吐出されるガス冷媒が四方弁2およびガス側管C2を通って室内機B1~Bnへ流れる。
【0013】
室内機B1,B2…は、それぞれ、流量調整弁11、室内熱交換器12、室内ファン13、室内温度センサ14、および室内コントローラ15を含む。冷房運転時、実線矢印で示すように、室外機A1~A3から液側管C1に流れる液冷媒が流量調整弁11を通って室内熱交換器12に流れ、その室内熱交換器12で室内空気と熱交換して気化する冷媒がガス側管C2を通って室外機A1~A3へ流れる。暖房運転時、室外機A1~A3からガス側管C2に流れるガス冷媒が室内熱交換器12に流れ、その室内熱交換器12で室内空気と熱交換して凝縮する冷媒が液側管C1を通って室外機A1~A3へ流れる。流量調整弁11は、供給される駆動電圧パルスの数に応じて開度が全閉から全開まで連続的に変化するパルスモータバルブ(PMV)である。室内ファン13は、室内空気を吸込みそれを室内熱交換器12に送る。室内温度センサ14は、室内ファン13により吸込まれる室内空気の流路に配置され、その室内空気の温度Taを検知する。室内コントローラ15は、室内温度センサ14の検知温度Taと予め設定される室内設定温度Tsとの差ΔTaを空調負荷として検出し、その空調負荷ΔTaに応じて流量調整弁11の開度を制御するとともに、その空調負荷ΔTaを信号ラインDにより室外機(親機)A1の室外コントローラ8に通知する。すなわち、冷房運転時は、室外熱交換器3は凝縮器として機能し、室内熱交換器12は蒸発器として機能する。暖房運転時は、室外熱交換器3は蒸発器として機能し、室内熱交換器12は凝縮器として機能する。
【0014】
室内機Bnは、流量調整弁21、水熱交換器22、水管23、ポンプ24、水管25、水温度センサ26、および水熱コントローラ27を含む。流量調整弁21は、供給される駆動電圧パルスの数に応じて開度が全閉から全開まで連続的に変化するパルスモータバルブ(PMV)である。水熱交換器22は、冷媒流路22aを通る冷媒と水流路22bを通る水との熱交換を行う。水流路22bの流入口は、水管23およびその水管23に配置されたポンプ24を介して負荷である例えば放熱器や給湯タンクの水流出口に接続されている。水流路21bの流出口は、水管25を介して上記放熱器や給湯タンクの水流入口に接続されている。ポンプ24の運転により、放熱器や給湯タンクの水が水管23、水流路22b、水管25を通って循環する。水流路22bから流出する水の温度Twが水温センサ26で検知される。冷水供給運転時、実線矢印で示すように、室外機A1~A3から液側管C1に流れる液冷媒が流量調整弁21を通って水熱交換器22の冷媒流路22aに流れ、その冷媒流路22aで水流路22bの水と熱交換して気化する冷媒がガス側管C2を通って室外機A1~A3へ流れる。温水供給運転時、室外機A1~A3からガス側管C2に流れるガス冷媒が水熱交換器22の冷媒流路22aに流れ、その冷媒流路22aで水流路22bの水と熱交換して凝縮する冷媒が流量調整弁21および液側管C1を通って室外機A1~A3へ流れる。水熱コントローラ27は、水温センサ26の検知温度Twと予め設定される水設定温度Twsとの差ΔTwを水温負荷として検出し、その水温負荷ΔTwに応じて流量調整弁21の開度を制御するとともに、その水温負荷ΔTwを信号ラインDにより室外機(親機)A1の室外コントローラ8に通知する。
【0015】
室外機A1の室外コントローラ8は、室内機B1~Bnから通知される空調負荷ΔTaおよび水温負荷ΔTwの合計負荷を当該空気調和機(冷凍サイクル装置)の負荷として捕らえ、その負荷に対応する能力を室外機A1~A3に按分して割当て、その割当て能力を当該室外機A1の室外コントローラ8で認識するとともに室外機A2,A3の各室外コントローラ8に通知する。
【0016】
室外機A1~A3の圧縮機1は、
図2に示すモータ1Mを駆動モータとして圧縮部と共に密閉ケースに収容した密閉型圧縮機である。モータ1Mは、永久磁石同期モータであって、かつ、互いに非接続状態の複数の相巻線Lu,Lv,Lwを有するいわゆるオープン巻線モータ(Open-Windings Motor)となっている。相巻線Lu,Lv,Lwは、低回転数域(低・中回転数域ともいう)で効率が向上するよう、細径の銅線を高い密度で多く巻回して構成される。ただし、このような高密度で多巻数の相巻線を用いると、モータ1Mの回転数(速度)の上昇に伴って相巻線Lu,Lv,Lwに誘起する電圧が早期に上昇し、その誘起電圧と後述のインバータから相巻線Lu,Lv,Lwに供給される電圧との差が早い段階で小さくなり、それ以上はモータ1Mの回転数を上昇させることができなくなる。そこで、後述のモータコントローラ9bは、低回転数域では相巻線Lu,Lv,Lwをスター結線(星形結線ともいう)して後述のインバータ30のみを単独でスイッチングするスター結線モードを設定し、高回転数域では相巻線Lu,Lv,Lwを非接続状態(オープン状態)としてインバータ30および後述のインバータ40を互いに連係(協調ともいう)してスイッチングするオープン巻線モードを設定する。この設定により、低回転数域で高効率の運転を可能としながら、高回転数域まで幅広い回転数範囲で高効率の運転を行うことが可能である。
【0017】
室外機A1~A3のモータ駆動装置9は、
図2に示す駆動回路9aおよびモータコントローラ9bを含む。モータ駆動回路9aは、三相交流電源50の交流電圧を全波整流して平滑し出力する直流電源部55、この直流電源部55の出力端とオープン巻線モータ1Mの相巻線Lu,Lv,Lwの一端との間の通電を制御するインバータ(第1インバータまたはマスタインバータともいう)30、および上記直流電源部55の出力端とオープン巻線モータ1Mの相巻線Lu,Lv,Lwの他端との間の通電を制御するインバータ(第2インバータまたはスレーブインバータともいう)40を含む。直流電源55をインバータ30,40の共通の直流電源とする電源共通方式を採用している。
【0018】
インバータ30は、スイッチング素子たとえばIGBT31,32を直列接続しそのIGBT31,32の相互接続点がオープン巻線モータ1Mの相巻線Luの一端に接続されるU相直列回路、IGBT33,34を直列接続しそのIGBT33,34の相互接続点がオープン巻線モータ1Mの相巻線Lvの一端に接続されるV相直列回路、IGBT35,36を直列接続しそのIGBT35,36の相互接続点がオープン巻線モータ1Mの相巻線Lwの一端に接続されるW相直列回路を含み、直流電源55の正側出力端から相巻線Lu,Lv,Lwの一端への通電および相巻線Lu,Lv,Lwの一端から直流電源55の負側出力端への通電をIGBT31~36のスイッチングにより制御する。IGBT31~36には、回生用ダイオード(フリー・ホイール・ダイオードともいう)31a~36aが逆並列接続されている。
【0019】
インバータ40は、IGBT41,42を直列接続しそのIGBT41,42の相互接続点がオープン巻線モータ1Mの相巻線Luの他端に接続されるU相直列回路、IGBT43,44を直列接続しそのIGBT43,44の相互接続点がモータ1Mの相巻線Lvの他端に接続されるV相直列回路、IGBT45,46を直列接続しそのIGBT45,46の相互接続点がオープン巻線モータ1Mの相巻線Lwの他端に接続されるW相直列回路を互いに並列接続し、直流電源55の正側出力端から相巻線Lu,Lv,Lwの他端への通電および相巻線Lu,Lv,Lwの他端から直流電源55の負側出力端への通電をIGBT41~46のスイッチングにより制御する。IGBT41~46には、回生用ダイオード41a~46aが逆並列接続されている。
【0020】
なお、インバータ30は、実際には、U相・V相・W相の上記3つの直列回路を互いに並列接続してなる主回路と、この主回路のIGBT31~36を駆動する駆動回路などの周辺回路とを、単一のパッケージに収納したモジュールいわゆるIPM(Intelligent Power Module)である。インバータ40も、同様の構成のIPMが使用される。
【0021】
モータ1Mの相巻線Luの他端と相巻線Lvの他端との相互間に、開閉器たとえばリレー51の常開形接点(リレー接点という)51aが接続されている。モータ1Mの相巻線Lvの他端と相巻線Lwの他端との相互間に、開閉器たとえばリレー52の常開形接点(リレー接点という)52aが接続されている。リレー51,52は、モータコントローラ9bにより、互いに同期した状態で付勢(通電オン)と消勢(通電オフ)が制御される。リレー51,52が付勢されるとリレー接点51a,52aが閉成し、相巻線Lu,Lv,Lwの他端が相互接続されて相巻線Lu,Lv,Lwがスター結線状態となる。リレー51,52が消勢されるとリレー接点51a,52aが開放し、相巻線Lu,Lv,Lwが非接続状態つまり電気的に分離したオープン巻線状態となる。
【0022】
インバータ30と相巻線Lu,Lv,Lwの一端との間の3つの通電ラインに電流センサ53u,53v,53wが配置され、これら電流センサ53u,53v,53wの出力信号がモータコントローラ9bに送られる。電流センサ53u,53v,53wは、相巻線Lu,Lv,Lwに流れる電流(モータ電流という)Iu,Iv,Iwを検知する。
【0023】
モータコントローラ9bは、室外コントローラ8からの指令に応じて駆動回路9aを制御するもので、制御の中枢となる主制御部60、電流検出部61、リレー駆動部62、表示部63、リレー51,52などを含む。電流検出部61は、電流センサ53,53v,53wで検知されるモータ電流Iu,Iv,Iwのそれぞれのピーク値および実効値を検出する。リレー駆動部62は、主制御部60からの指令に応じてリレー51,52を付勢および消勢する。主制御部60は、マイクロコンピュータおよびその周辺回路により構成され、室外コントローラ8からの指令および電流検出部62の検出結果などに応じてリレー接点51a,52aの開閉およびインバータ30,40のスイッチングを制御する。
【0024】
とくに、主制御部60は、リレー接点51a,52aの開放により相巻線Lu,Lv,Lwの他端を非接続状態としインバータ30,40を互いに連係してスイッチングするオープン巻線モード及びリレー接点51a,52aの閉成により相巻線Lu,Lv,Lwの他端を相互接続してインバータ30を単独でスイッチングするスター結線モードを選択的に設定する機能を有するもので、このスター結線モードおよびオープン巻線モードの設定に関わる主要な構成として回転数検出部60a,第1制御部60b,第2制御部60cを含む。
【0025】
回転数検出部60aは、インバータ30,40のスイッチング状態と電流検出部61で検出される“モータ電流Iu,Iv,Iwの瞬時値”に基づいてモータ1Mの回転数(速度)Nを検出(推定)する。
【0026】
第1制御部60bは、モータ1Mの起動に際し、オープン巻線モードを設定し、回転数検出部60aの検出回転数Nが
図3に示す高回転数域の所定回転数N3(例えば50rpsまたは60rps)まで上昇するよう、そのオープン巻線モードのスイッチング(インバータ30,40の連係スイッチング)を制御する。
【0027】
第2制御部60cは、第1制御部60bにより回転数検出部60aの検出回転数Nが上記高回転数域の所定回転数N3まで上昇した後、室外コントローラ8からの割当て能力(負荷)に基づいて目標回転数(目標速度)Ntを設定し、この目標回転数Ntが上記高回転数域にある場合はオープン巻線モードを設定して回転数検出部60aの検出回転数Nが目標回転数Ntとなるようそのオープン巻線モードのスイッチングを制御し、上記目標回転数Ntが
図3に示す低回転数域にある場合はスター結線モードを設定して回転数検出部60aの検出回転数Nが目標回転数Ntとなるようそのスター結線モードのスイッチング(インバータ30の単独スイッチング)を制御する。
【0028】
図3は、モータ1Mが起動する際の回転数Nの変化とモータ1Mの通常運転中のモード選択条件(第1モード選択条件)を示している。起動時を除くモータ1Mの通常運転状態において、モード選択条件は、目標回転数Ntに応じてオープン巻線モードおよびスター結線モードのいずれかの選択を指定するもので、目標回転数Ntの上昇方向の変化に際し、目標回転数Ntが第2閾値N2(例えば40rps)未満の低回転数域に存する場合にスター結線モードを指定し、目標回転数Ntが第2閾値N2以上の高回転数域に存する場合にオープン巻線モードを指定する。さらに、モード選択条件は、目標回転数Ntの下降方向の変化に際し、目標回転数Ntが第1閾値N1(<N2)以上の高回転数域に存する場合にオープン巻線モードを指定し、目標回転数Ntが第1閾値N1未満の低回転数域に存する場合にスター結線モードを指定する。低回転数域と高回転数域の境界に第2閾値N2と第1閾値N1によるヒステリシス幅を設けることにより、スター結線モードとオープン巻線モードの頻繁な切換えを防止している。
【0029】
なお、目標回転数Ntに基づいてモードを選択するだけでなく、負荷の大きさに応じて変動する“モータ電流Iu,Iv,Iwのピーク値または実効値”および目標回転数Ntに基づいてモードを選択する構成としてもよい。
【0030】
つぎに、モータコントローラ9bが実行する制御を
図3および
図4を参照しながら説明する。
図4のフローチャートにおけるステップS1,S2…については単にS1,S2…と略称する。
【0031】
[モータ1Mの起動時]
室外コントローラ8から運転開始指令を受けた場合(S1のYES)、モータコントローラ9bは、リレー接点51a,52aの開放により相巻線Lu,Lv,Lwの他端を非接続状態としインバータ30,40を互いに連係してスイッチングするオープン巻線モードを設定する(S2)。モータ1Mの停止時は、リレー51,52の消勢(通電オフ)により常開形のリレー接点51a,52aが開放していて相巻線Lu,Lv,Lwが互いに非接続状態となっているので、リレー接点51a,52aの作動を要することなくオープン巻線モードを設定することができる。
【0032】
続いて、モータコントローラ9bは、モータ1Mの回転数Nが例えば“1rps/s”の速度で上昇するようオープン巻線モードのスイッチングを制御しながら(S3)、回転数検出部60aの検出回転数Nと高回転数域の所定回転数N3とを比較する(S4)。検出回転数Nが所定回転数N3未満の場合(S4のNO)、モータコントローラ9bは、上記S4に戻り、オープン巻線モードのスイッチングを継続する(S4)。
【0033】
オープン巻線モード時に形成される電流経路の一部を
図2に破線で示す。まず、インバータ30のIGBT31がオンしてインバータ40のIGBT42がオン,オフを繰返すとともに、インバータ40のIGBT43,45が共にオンしてインバータ30のIGBT34,36が互いに同期してオン,オフを繰返す。これにより、破線矢印で示すように、直流電源55の正側出力端からIGBT31を通って相巻線Luに電流が流れ、その相巻線Luを経た電流がIGBT42を通って直流電源55の負側出力端に流れるとともに、直流電源55の正側出力端からIGBT43,45を通って相巻線Lv,Lwに電流が流れ、その相巻線Lv,Lwを経た電流がIGBT34,36を通って直流電源55の負側出力端に流れる。次に、インバータ30のIGBT33がオンしてインバータ40のIGBT44がオン,オフを繰返すとともに、インバータ40のIGBT41,45が共にオンしてインバータ30のIGBT32,36が互いに同期してオン,オフを繰返す。これにより、直流電源55の正側出力端からIGBT33を通って相巻線Lvに電流が流れ、その相巻線Lvを経た電流がIGBT44を通って直流電源55の負側出力端に流れるとともに、直流電源55の正側出力端からIGBT41,45を通って相巻線Lu,Lwに電流が流れ、その相巻線Lu,Lwを経た電流がIGBT32,36を通って直流電源55の負側出力端に流れる。次に、インバータ30のIGBT35がオンしてインバータ40のIGBT46がオン,オフを繰返すとともに、インバータ40のIGBT41,43が共にオンしてインバータ30のIGBT32,34が互いに同期してオン,オフを繰返す。これにより、直流電源55の正側出力端からIGBT35を通って相巻線Lwに電流が流れ、その相巻線Lwを経た電流がIGBT46を通って直流電源55の負側出力端に流れるとともに、直流電源55の正側出力端からIGBT41,43を通って相巻線Lu,Lvに電流が流れ、その相巻線Lu,Lvを経た電流がIGBT32,34を通って直流電源55の負側出力端に流れる。これら3パターンの電流経路が順に切換わることにより、モータ1Mのロータが回転する。
【0034】
このオープン巻線モードの設定により、スター結線モード時の約√3倍の電圧を相巻線Lu,Lv,Lwに印加することができ、よって運転開始時の高空調負荷に対応する高回転数域へとモータ1Mの回転数Nを効率よく上昇させることが可能となる。とくに、空気調和装置の運転開始時は、空調負荷が高いだけでなく、室内ファン13が動き始めたばかりで新鮮な室内空気が室内温度センサ14にうまく流れないため室内温度検知が不安定な状態にあって、空調負荷を的確に捕らえることが難しい。このような運転開始時の状況では、リレー51,52を付勢せずリレー接点51a,52aを開放したままのオープン巻線モードを初めから設定してモータ1Mの回転数Nを高回転数域まで上昇させるほうが、リレー51,52を付勢してリレー接点51a,52aを閉成するスター結線モードを低回転数域で設定しその後の高回転数域でオープン巻線モードに移行する場合よりも、リレー接点51a,52aの作動回数を確実に1回は少なくすることができる。つまり、リレー接点51a,52aの作動回数を少なく抑えながら、不安定な高空調負荷に対処し得る十分な空調能力を発揮することが可能となる。
【0035】
なお、空気調和機の運転開始時は、圧縮機1の起動に伴い、圧縮機1内の潤滑油の一部が冷媒と混合した状態で冷凍サイクル中に流出し、流出した潤滑油が冷凍サイクルを巡って圧縮機1に徐々に戻るようになる。流出した潤滑油が圧縮機1に戻るまでの間、圧縮機1内の潤滑油が不足気味となるなど、冷凍サイクルの運転が不安定な状態となる。この点について、本実施形態では、圧縮機1の起動に際してモータ1Mの回転数Nを高回転数域の所定回転数N3まで連続的に上昇させるので、たとえ圧縮機1内の潤滑油の一部が冷凍サイクル中に流出しても、流出した潤滑油は冷凍サイクルを迅速に巡って圧縮機1に早期に戻るようになり、冷凍サイクルの運転を早期に安定化させることができる。
【0036】
[モータ1Mの起動完了]
回転数検出部60aの検出回転数Nが高回転数域の所定回転数N3に達した場合(S4のYES)、モータコントローラ9bは、モータ1Mの起動が完了したとの判断の下に、所定時間tにわたり、回転数検出部60aの検出回転数Nが所定回転数N3を保持するようオープン巻線モードのスイッチングを制御する(S5)。所定時間tは、圧縮機1が起動してから冷凍サイクルの運転が安定するまでの時間たとえば30秒程度である。所定時間tがあまり長過ぎると、所定時間tが経過した後の目標回転数Ntと実際の回転数Nとの差が拡がり、回転数Nが目標回転数Ntに到達するまでに時間がかかり過ぎてしまう。このような不具合が生じないよう、所定時間tとして一般的に10~60秒程度が選定される。
【0037】
所定時間tの経過後、モータコントローラ9bは、室外コントローラ8からの割当て能力(負荷)に見合う目標回転数Ntを設定する(S6)。そして、モータコントローラ9bは、上記設定した目標回転数Ntが高回転数域にあるか低回転数域にあるかを判定する(S7)。
【0038】
目標回転数Ntが高回転数域にある場合(S7のYES)、モータコントローラ9bは、オープン巻線モードの設定を継続し(S8)、回転数検出部60aの検出回転数Nが目標回転数Ntとなるようそのオープン巻線モードのスイッチングを制御する(S9)。続いて、モータコントローラ9bは、室外コントローラ8からの運転停止指令がなければ(S10のNO)、上記S6に戻り、目標回転数Ntを再設定する(S6)。
【0039】
一方、目標回転数Ntが低回転数域にある場合(S7のNO)、モータコントローラ9bは、スター結線モードを設定し(S11)、回転数検出部60aの検出回転数Nが目標回転数Ntとなるようそのスター結線モードのスイッチングを制御する(S9)。この場合の回転数Nの変化を
図3に破線で示している。なお、上記S11でのスター結線モードの設定に際し、それまでのモータ1Mの運転がオープン巻線モードであった場合、インバータ30,40のスイッチングパターンを制御することによりリレー接点51a,52aの相互間に電位差が生じないタイミングを作り、そのタイミングでリレー51,52を付勢することによりリレー接点51a,52aを閉成し、この状態でインバータ40のスイッチングを停止してインバータ30のみスイッチングするスター結線モードに移る。これによりモータ1Mの運転を停止させることなくことなく継続させる。
【0040】
一方、上記S11でのスター結線モードの設定に際し、それまでのモータ1Mの運転がスター結線モードであれば、そのままスター結線モードによるモータ1Mの運転を継続する。
【0041】
また、スター結線モードによるモータ1Mの運転中に目標回転数Ntが高回転数域となった場合(S7のYES)、モータコントローラ9bは、スター結線モードに代えてオープン巻線モードを設定する(S8)。この際、インバータ40のスイッチングを開始し、インバータ30とインバータ40のスイッチングパターンを制御することによりリレー接点51a,52aの相互間に電位差が生じないタイミングを作り、そのタイミングでリレー51,52を消勢することによりリレー接点51a,52aを開放する。これにより、モータ1Mの運転を停止させることなくことなく継続させることができる。
【0042】
続いて、モータコントローラ9bは、室外コントローラ8からの運転停止指令がなければ(S10のNO)、上記S6に戻り、室外コントローラ8からの割当て能力に対応する目標回転数Ntを再び設定する(S6)。以後、モータコントローラ13は同様の制御を繰り返す。
【0043】
室外コントローラ8からの運転停止指令があれば(S10のYES)、モータコントローラ13は、リレー51,52を消勢してリレー接点51a,52aを開放するとともにインバータ30,40を停止する(S12)。
【0044】
[まとめ]
以上のように、モータ1Mの起動に際しては、リレー51,52を付勢せずリレー接点51a,52aを開放したままのオープン巻線モードを初めから設定してモータ1Mの回転数Nを上昇させることにより、リレー接点51a,52aの作動回数やオープン巻線モードとスター結線モードの切換回数をできるだけ少なく抑えることができる。そして、リレー接点51a,52aの作動回数が少なくなるので、リレー51,52の寿命向上や安定した運転が図れる。
【0045】
[2]第2実施形態
モータコントローラ9bにおける第2制御部60cの制御およびモード選択条件が第1実施形態と異なる例を第2実施形態として説明する。
【0046】
第2制御部60cは、第1制御部60bによるオープン巻線モードのスイッチングによりモータ1Mが起動して回転数検出部60aの検出回転数Nが所定回転数N3まで上昇した後、室外コントローラ8からの割当て能力(負荷)に基づいて目標回転数Ntを設定し、その後、回転数検出部60aの検出回転数Nが後述する第2モード選択条件の高回転数域にあればオープン巻線モードを設定してその検出回転数Nが目標回転数Ntとなるよう同オープン巻線モードのスイッチングを制御し、検出回転数Nが同第2モード選択条件の低回転数域にあればスター結線モードを設定してその検出回転数Nが目標回転数Ntとなるよう同オープン巻線モードのスイッチングを制御する。
【0047】
第2モード選択条件は、モータ1Mの実際の回転数(回転数検出部60aの検出回転数)Nに応じてオープン巻線モードおよびスター結線モードのいずれかの選択を指定するもので、回転数検出部60aの検出回転数Nの上昇方向の変化に際し、検出回転数Nが第2閾値N2未満の低回転数域にあるうちはスター結線モードを指定し、検出回転数Nが第2閾値N2以上の高回転数域にあるうちはオープン巻線モードを指定する。さらに、検出回転数Nの下降方向の変化に際し、検出回転数Nが第1閾値N1(<N2)以上の高回転数域にあるうちはオープン巻線モードを指定し、検出回転数Nが第1閾値N1未満の低回転数域にあるうちはスター結線モードを指定する。
【0048】
モータ1Mの実際の運転中は、若干の時間の遅れは生じる可能性があるものの回転数Nが目標回転数Ntへと速やかに移行するので、当該第2実施形態のように回転数Nに応じてモードの選択を指定する制御と、上記第1実施形態のように目標回転数Ntに応じてモードの選択を指定する制御との間に、実質的な差はない。なお、回転数Nだけでなく、負荷の大きさに応じて変動する“モータ電流Iu,Iv,Iwのピーク値または実効値”と回転数Nとに基づいてモードを選択する構成としてもよい。
【0049】
モータコントローラ9bが実行する制御を
図5のフローチャートに示す。この制御では、目標回転数Ntが高回転数域にあるか低回転数域にあるかを判定する
図4のS7の処理に代えて、モータ1Mの回転数(回転数検出部60aの検出回転数)Nが高回転数域にあるか低回転数域にあるかを判定するS7xの処理を実行する。
【0050】
すなわち、モータコントローラ9bは、モータ1Mの起動完了に伴い上記S6で目標回転数Ntを設定した後、回転数検出部60aの検出回転数Nが高回転数域にあるか低回転数域にあるかを判定する(S7x)。検出回転数Nが高回転数域にある場合(S7xのYES)、モータコントローラ9bは、オープン巻線モードを設定し(S8)、検出回転数Nが目標回転数Ntとなるようそのオープン巻線モードのスイッチングを制御する(S9)。検出回転数Nが低回転数域にある場合(S7xのNO)、モータコントローラ9bは、スター結線モードを設定し(S11)、検出回転数Nが目標回転数Ntとなるようそのスター結線モードのスイッチングを制御する(S9)。
【0051】
他の構成・制御・効果は第1実施形態と同じなので、その説明は省略する。
【0052】
[3]第3実施形態
モータ電流Iu,Iv,Iwのピーク値および実効値が負荷の大きさおよびモータ1Mの回転数Nに比例する点に着目した第3実施形態について説明する。モータ電流Iu,Iv,Iwのピーク値または実効値のことを、以下、電流検出部61の検出電流Iという。
【0053】
第2制御部60cは、第1制御部60bによるオープン巻線モードのスイッチングによりモータ1Mの起動が完了して回転数検出部60aの検出回転数Nが所定回転数N3まで上昇した後、室外コントローラ8からの割当て能力に対応する目標回転数Ntを設定し、電流検出部61の検出電流Iが設定値Is以上の場合は回転数Nが上記第2モード選択条件の高回転数域にあるとの判断の下にオープン巻線モードを設定して回転数検出部60aの検出回転数Nが目標回転数Ntとなるよう同オープン巻線モードのスイッチングを制御し、電流検出部61の検出電流Iが設定値Is未満の場合は回転数Nが上記第2モード選択条件の低回転数域にあるとの判断の下にスター結線モードを設定して回転数検出部60aの検出回転数Nが目標回転数Ntとなるよう同オープン巻線モードのスイッチングを制御する。
【0054】
モータコントローラ9bが実行する制御を
図6のフローチャートに示す。この制御では、回転数Nが高回転数域にあるか低回転数域にあるかを判定する
図5のS7xの処理に代えて、電流検出部61の検出電流Iが設定値Is以上であるか否かを判定するS7yの処理を実行する。
【0055】
すなわち、モータコントローラ9bは、モータ1Mの起動完了に伴い上記S6で目標回転数Ntを設定した後、電流検出部61の検出電流Iが設定値Is以上であるか設定値Is未満であるかを判定する(S7y)。検出電流Iが設定値Is以上の場合(S7yのYES)、モータコントローラ9bは、オープン巻線モードを設定し(S8)、回転数検出部60aの検出回転数Nが目標回転数Ntとなるようそのオープン巻線モードのスイッチングを制御する(S9)。検出電流Iが設定値Is未満の場合(S7yのNO)、モータコントローラ9bは、スター結線モードを設定し(S11)、検出回転数Nが目標回転数Ntとなるようそのスター結線モードのスイッチングを制御する(S9)。
【0056】
なお、上記S7yの設定値Isの判定では、具体的には、ヒステリシス幅を持たせるための2つの設定値Is2,Is1を選択的に用いる。設定値Is2は、回転数Nに置き換えると
図3のモード選択条件の閾値N2に対応するもので、検出電流Iが上昇方向に変化する際に用いる。設定値Is1(<Is2)は、回転数Nに置き換えると
図3のモード選択条件の閾値N1に対応するもので、検出電流Iが下降方向に変化する際に用いる。
【0057】
他の構成・制御・効果は第1および第2実施形態と同じなので、その説明は省略する。
【0058】
[4]変形例
上記各実施形態では、常開形のリレー接点51a,52aを開閉器として用いる場合を例に説明したが、半導体スイッチを開閉器として用いてもよい。
【0059】
モータ1Mの起動が完了した後の通常運転中において、オープン巻線モードおよびスター結線モードのいずれかを選択するための判定処理として、第1実施形態のS7の判定処理、第2実施形態のS7xの判定処理、第3実施形態のS7yの判定処理を適宜に組み合わせてもよい。例えば、第2実施形態のS7xの判定処理と第3実施形態のS7yの判定処理を組み合わせる場合、モータコントローラ9bは、検出回転数Nが低回転数域から高回転数域に入ったとき(S7xのYES)または検出電流Iが設定値Is未満の領域から設定値Is以上の領域に入ったとき(S7yのYES)にスター結線モードからオープン巻線モードへ切換えを実行し、検出回転数Nが高回転数域から低回転数域に移り(S7xのNO)かつ検出電流Iが設定値Is以上の領域から設定値Is未満の領域に移ったとき(S7yのNO)にオープン巻線モードからスター結線モードへの切換えを実行する。
【0060】
上記実施形態では、インバータ30,40を同じ直流電源55に接続する電源共通方式を採用したが、インバータ30,40を別々の直流電源に接続する電源絶縁方式においても、同様に実施できる。
【0061】
その他、上記各実施形態および変形例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な各実施形態および変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、書き換え、変更を行うことができる。これら実施形態や変形は、発明の範囲は要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0062】
1…圧縮機、1M…オープン巻線モータ、Lu,Lv,Lw…相巻線、2…四方弁、3…室外熱交換器(凝縮器または蒸発器)、4…膨張弁、8…室外コントローラ、9…モータ駆動装置、11…流量調整弁、12…室内熱交換器(蒸発器または凝縮器)、13…室内ファン、14…室内温度センサ、15…室内コントローラ、50…3相交流電源、55…直流電源部、30…インバータ(第1インバータ)、40…インバータ(第2インバータ)、51,52…リレー、51a,52a…リレー接点、60…主制御部、60a…回転数検出部、60b…第1制御部、60c…第2制御部、61…電流検出部、62…リレー駆動部