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特許7322699ディスプレイ基板用樹脂組成物、ディスプレイ基板用樹脂膜およびそれを含む積層体、画像表示装置、有機ELディスプレイ、並びに、それらの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】ディスプレイ基板用樹脂組成物、ディスプレイ基板用樹脂膜およびそれを含む積層体、画像表示装置、有機ELディスプレイ、並びに、それらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 79/08 20060101AFI20230801BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20230801BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20230801BHJP
   H10K 59/00 20230101ALI20230801BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20230801BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20230801BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
C08L79/08
C08G73/10
H05B33/14 A
H10K59/00
H05B33/02
H05B33/10
G09F9/30 310
G09F9/30 365
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019501734
(86)(22)【出願日】2019-01-09
(86)【国際出願番号】 JP2019000303
(87)【国際公開番号】W WO2019142703
(87)【国際公開日】2019-07-25
【審査請求日】2021-12-20
(31)【優先権主張番号】P 2018006115
(32)【優先日】2018-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】芦部 友樹
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 大地
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-299871(JP,A)
【文献】特開2013-079345(JP,A)
【文献】特開2010-155895(JP,A)
【文献】国際公開第2011/122199(WO,A1)
【文献】特表2016-531997(JP,A)
【文献】特開2014-187091(JP,A)
【文献】特表2015-507503(JP,A)
【文献】国際公開第2013/047451(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 - 101/14
H05B 33/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の樹脂(a)、溶剤(b)、および溶剤(c)を含む、
ことを特徴とするディスプレイ基板用樹脂組成物。
樹脂(a):化学式(1)で表される繰り返し単位を主成分とする樹脂であって、当該樹脂に含まれるAおよびBの合計を100質量%とした場合、SP値が15以上17以下であるテトラカルボン酸残基とSP値が11以上13以下であるジアミン残基とが、合計で95質量%以上含まれる樹脂
溶剤(b):SP値が7.5以上9.5未満であり、化学式(2)で表される構造を有する溶剤
溶剤(c):SP値が9.5以上14.0以下である溶剤
【化1】
(化学式(1)中、Aは炭素数2以上の4価のテトラカルボン酸残基を示し、Bは炭素数2以上の2価のジアミン残基を示す。R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10の炭化水素基、炭素数1~10のアルキルシリル基、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオンまたはピリジニウムイオンを示す。)
【化2】
(化学式(2)中、mおよびnは、それぞれ独立して、1~5の正の整数を示す。R 3 ~R 6 は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10の炭化水素基、または炭素数1~10のアシル基を示す。)
【請求項2】
下記の樹脂(a)、溶剤(b)、および溶剤(c)を含む、
ことを特徴とするディスプレイ基板用樹脂組成物。
樹脂(a):化学式(1)で表される繰り返し単位を主成分として含み、かつ化学式(3)で表される繰り返し単位および化学式(4)で表される繰り返し単位のうち少なくとも一つをさらに含む樹脂であって、当該樹脂に含まれるAおよびBの合計を100質量%とした場合、SP値が15以上17以下であるテトラカルボン酸残基とSP値が11以上13以下であるジアミン残基とが、合計で95質量%以上含まれ、前記化学式(1)で表される繰り返し単位のモル比、前記化学式(3)で表される繰り返し単位のモル比および前記化学式(4)で表される繰り返し単位のモル比をそれぞれp、q、rとしたとき、0.05≦(2r+q)/(2p+2q+2r)≦0.3を満たす樹脂
溶剤(b):SP値が7.5以上9.5未満である溶剤
溶剤(c):SP値が9.5以上14.0以下である溶剤
【化3】
(化学式(1)中、Aは炭素数2以上の4価のテトラカルボン酸残基を示し、Bは炭素数2以上の2価のジアミン残基を示す。R 1 およびR 2 は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10の炭化水素基、炭素数1~10のアルキルシリル基、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオンまたはピリジニウムイオンを示す。)
【化4】
(化学式(3)および化学式(4)中、Aは炭素数2以上の4価のテトラカルボン酸残基を示し、Bは炭素数2以上の2価のジアミン残基を示す。R 1 は、水素原子、炭素数1~10の炭化水素基、炭素数1~10のアルキルシリル基、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオンまたはピリジニウムイオンを示す。)
【請求項3】
前記溶剤(b)が、化学式(2)で表される構造を有する溶剤である、
ことを特徴とする請求項に記載のディスプレイ基板用樹脂組成物。
【化5】
(化学式(2)中、mおよびnは、それぞれ独立して、1~5の正の整数を示す。R3~R6は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10の炭化水素基、または炭素数1~10のアシル基を示す。)
【請求項4】
前記溶剤(c)のうち最も沸点が低い溶剤の沸点が、前記溶剤(b)のうち最も沸点が高い溶剤の沸点より10℃以上高い、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載のディスプレイ基板用樹脂組成物。
【請求項5】
含有される前記溶剤(b)および前記溶剤(c)を含む全溶剤の100質量%に対し、前記溶剤(b)が5~60質量%含まれ、前記溶剤(c)が40~95質量%含まれる、
ことを特徴とする請求項1~のいずれか一つに記載のディスプレイ基板用樹脂組成物。
【請求項6】
前記化学式(1)、前記化学式(3)および前記化学式(4)中、Aが、化学式(5)で表される構造または化学式(6)で表される構造を有し、Bが、化学式(7)で表される構造を有する、
ことを特徴とする請求項2または3に記載のディスプレイ基板用樹脂組成物。
【化6】
【請求項7】
前記樹脂(a)は、イミド化したときのイミド基濃度が35~45質量%となる樹脂である、
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一つに記載のディスプレイ基板用樹脂組成物。
【請求項8】
前記樹脂(a)が、化学式(8)で表される構造を有する、
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一つに記載のディスプレイ基板用樹脂組成物。
【化7】
(化学式(8)中、Aは炭素数2以上の4価のテトラカルボン酸残基を示し、Bは炭素数2以上の2価のジアミン残基を示す。Zは、化学式(9)で表される構造を示す。R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10の炭化水素基、炭素数1~10のアルキルシリル基、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオンまたはピリジニウムイオンを示す。)
(化学式(9)中、αは、炭素数2以上の1価の炭化水素基を示す。βおよびγは、それぞれ独立して、酸素原子または硫黄原子を示す。)
【請求項9】
支持体に、請求項1~8のいずれか一つに記載のディスプレイ基板用樹脂組成物の塗布膜を形成する膜形成工程と、
前記塗布膜を220℃以上の温度で加熱して、ディスプレイ基板用樹脂膜を製造する加熱工程と、
を含むことを特徴とするディスプレイ基板用樹脂膜の製造方法。
【請求項10】
支持体に、請求項1~8のいずれか一つに記載のディスプレイ基板用樹脂組成物の塗布膜を形成する膜形成工程と、
前記塗布膜を220℃以上の温度で加熱して、ディスプレイ基板用樹脂膜を製造する加熱工程と、
前記ディスプレイ基板用樹脂膜の上に画像表示素子を形成する素子形成工程と、
を含むことを特徴とする画像表示装置の製造方法。
【請求項11】
支持体に、請求項1~8のいずれか一つに記載のディスプレイ基板用樹脂組成物の塗布膜を形成する膜形成工程と、
前記塗布膜を220℃以上の温度で加熱して、ディスプレイ基板用樹脂膜を製造する加熱工程と、
前記ディスプレイ基板用樹脂膜の上に有機EL素子を形成する素子形成工程と、
を含むことを特徴とする有機ELディスプレイの製造方法。
【請求項12】
化学式(4)で表される繰り返し単位を主成分とするディスプレイ基板用樹脂膜であって、
当該ディスプレイ基板用樹脂膜に含まれるAおよびBの合計を100質量%とした場合、SP値が15以上17以下であるテトラカルボン酸残基とSP値が11以上13以下であるジアミン残基とが、合計で95質量%以上含まれ、
当該ディスプレイ基板用樹脂膜の膜厚方向における一方の面からエッチングして膜厚を半減させた第1の樹脂膜の線熱膨張係数(A)と、他方の面からエッチングして膜厚を半減させた第2の樹脂膜の線熱膨張係数(B)との比が、(A):(B)=1.0:1.3~1.0:2.0である、
ことを特徴とするディスプレイ基板用樹脂膜。
【化8】
(化学式(4)中、Aは炭素数2以上の4価のテトラカルボン酸残基を示し、Bは炭素数2以上の2価のジアミン残基を示す。)
【請求項13】
請求項1~8のいずれか一つに記載のディスプレイ基板用樹脂組成物から得られるディスプレイ基板用樹脂膜であって、
当該ディスプレイ基板用樹脂膜の膜厚方向における一方の面からエッチングして膜厚を半減させた第1の樹脂膜の線熱膨張係数(A)と、他方の面からエッチングして膜厚を半減させた第2の樹脂膜の線熱膨張係数(B)との比が、(A):(B)=1.0:1.3~1.0:2.0である、
ことを特徴とするディスプレイ基板用樹脂膜。
【請求項14】
請求項12または13に記載のディスプレイ基板用樹脂膜と、無機膜とからなる積層体であって、
前記ディスプレイ基板用樹脂膜が前記無機膜に接する面は、前記ディスプレイ基板用樹脂膜の膜厚方向における一方の面からエッチングして膜厚を半減させた第1の樹脂膜と、他方の面からエッチングして膜厚を半減させた第2の樹脂膜とのうち、線熱膨張係数が小さい方の樹脂膜を得るためにエッチングされた側の面である、
ことを特徴とする積層体。
【請求項15】
請求項12または13に記載のディスプレイ基板用樹脂膜を備える、
ことを特徴とする画像表示装置。
【請求項16】
請求項14に記載の積層体を備える、
ことを特徴とする画像表示装置。
【請求項17】
請求項12または13に記載のディスプレイ基板用樹脂膜を備える、
ことを特徴とする有機ELディスプレイ。
【請求項18】
請求項14に記載の積層体を備える、
ことを特徴とする有機ELディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイ基板用樹脂組成物、ディスプレイ基板用樹脂膜およびそれを含む積層体、画像表示装置、有機ELディスプレイ、並びに、それらの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドは、その優れた電気絶縁性、耐熱性、機械特性により、半導体、ディスプレイ用途といった、様々な電子デバイスの材料として使用されている。最近では、有機ELディスプレイ、電子ペーパー、カラーフィルターなどの画像表示装置の基板にポリイミドの耐熱性樹脂膜を用いることで、衝撃に強く、フレキシブルな画像表示装置を製造することができる。ポリイミドを電子デバイスの材料として使用するには、通常、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸を含む溶液を利用する。典型的には、ポリアミド酸を含む溶液を支持体に塗布し、塗布膜を焼成してイミド化することにより、ポリイミドが得られる。
【0003】
同様に、ポリイミドをディスプレイ基板の材料として使用する場合、ポリアミド酸溶液(以下、ワニスと適宜いう)を支持体に塗布し、塗布膜を焼成することにより、ポリイミドの樹脂膜が成膜される。ディスプレイ基板用のポリイミドは、特に、優れた機械特性や、製造時の基板の反りを抑制するために線熱膨張係数(以下、CTEと適宜いう)は小さいことが求められる。例えば、特許文献1では、末端に特定構造を有するポリアミド酸を含むワニスを使用して、機械強度に優れたポリイミドを製造する例、並びに、これを用いてディスプレイ基板を製造する例が報告されている。また、ワニスの溶剤にはポリアミド酸の溶解性に優れるN-メチルピロリドンなどの極性溶剤を用いる例が、同文献にて報告されている。
【0004】
ディスプレイ基板にポリイミドフィルムを使用する場合、バリア性が低く水分や酸素がディスプレイ内部に侵入しやすいという課題がある。特に、有機ELディスプレイでは、水分の浸入により発光素子が失活しやすいため、ディスプレイ基板には高いバリア性が求められている。これに対し、例えば、特許文献2では、樹脂膜および無機膜を積層したフィルムをディスプレイ基板に用いる例が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2017/099183号
【文献】特開2005-246716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の樹脂組成物は、機械強度に優れる樹脂膜が得られるものの、ディスプレイ基板に使用した場合、屈曲時のディスプレイの信頼性が不十分であるという課題があった。特許文献2に記載のディスプレイ基板は、有機膜と無機膜とを積層した構造を有しているものの、特に、基板の反りを抑制するために低CTEの樹脂膜を用いた場合は、無機膜にクラックが入りやすいという課題があった。以下、ディスプレイ基板に用いられる樹脂組成物、すなわち、ディスプレイ基板用樹脂組成物は、「樹脂組成物」と適宜略記する。同様に、ディスプレイ基板に用いられる樹脂膜、すなわち、ディスプレイ基板用樹脂膜は、「樹脂膜」と適宜略記する。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、耐屈曲性および信頼性に優れたディスプレイ基板として適用可能な樹脂膜であって、機械強度に優れ、無機膜を積層したときにその無機膜にクラックが入りにくいディスプレイ基板用樹脂膜、およびそれを製造可能な保存安定性に優れたディスプレイ基板用樹脂組成物を提供することを第1の目的とする。また、本発明は、これらのディスプレイ基板用樹脂膜またはディスプレイ基板用樹脂組成物を含み、耐屈曲性および信頼性に優れた積層体、画像表示装置および有機ELディスプレイを提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るディスプレイ基板用樹脂組成物は、下記の樹脂(a)、溶剤(b)、および溶剤(c)を含む、ことを特徴とする。
樹脂(a):化学式(1)で表される繰り返し単位を主成分とする樹脂であって、当該樹脂に含まれるAおよびBの合計を100質量%とした場合、SP値が15以上17以下であるテトラカルボン酸残基とSP値が11以上13以下であるジアミン残基とが、合計で95質量%以上含まれる樹脂
溶剤(b):SP値が7.5以上9.5未満である溶剤
溶剤(c):SP値が9.5以上14.0以下である溶剤
【0009】
【化1】
(化学式(1)中、Aは炭素数2以上の4価のテトラカルボン酸残基を示し、Bは炭素数2以上の2価のジアミン残基を示す。RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10の炭化水素基、炭素数1~10のアルキルシリル基、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオンまたはピリジニウムイオンを示す。)
【0010】
また、本発明に係るディスプレイ基板用樹脂組成物は、上記の発明において、前記溶剤(c)のうち最も沸点が低い溶剤の沸点が、前記溶剤(b)のうち最も沸点が高い溶剤の沸点より10℃以上高い、ことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係るディスプレイ基板用樹脂組成物は、上記の発明において、前記溶剤(b)が、化学式(2)で表される構造を有する溶剤である、ことを特徴とする。
【0012】
【化2】
(化学式(2)中、mおよびnは、それぞれ独立して、1~5の正の整数を示す。R~Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10の炭化水素基、または炭素数1~10のアシル基を示す。)
【0013】
また、本発明に係るディスプレイ基板用樹脂組成物は、上記の発明において、含有される前記溶剤(b)および前記溶剤(c)を含む全溶剤の100質量%に対し、前記溶剤(b)が5~60質量%含まれ、前記溶剤(c)が40~95質量%含まれる、ことを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係るディスプレイ基板用樹脂組成物は、上記の発明において、前記化学式(1)で表される繰り返し単位を含み、かつ化学式(3)で表される繰り返し単位および化学式(4)で表される繰り返し単位のうち少なくとも一つを含む樹脂において、前記化学式(1)で表される繰り返し単位のモル比、前記化学式(3)で表される繰り返し単位のモル比および前記化学式(4)で表される繰り返し単位のモル比をそれぞれp、q、rとしたとき、前記樹脂(a)は、前記化学式(3)で表される繰り返し単位および前記化学式(4)で表される繰り返し単位のうち少なくとも一つをさらに含み、かつ0.05≦(2r+q)/(2p+2q+2r)≦0.3を満たす樹脂である、ことを特徴とする。
【0015】
【化3】
(化学式(3)および化学式(4)中、Aは炭素数2以上の4価のテトラカルボン酸残基を示し、Bは炭素数2以上の2価のジアミン残基を示す。Rは、水素原子、炭素数1~10の炭化水素基、炭素数1~10のアルキルシリル基、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオンまたはピリジニウムイオンを示す。)
【0016】
また、本発明に係るディスプレイ基板用樹脂組成物は、上記の発明において、前記化学式(1)、前記化学式(3)および前記化学式(4)中、Aが、化学式(5)で表される構造または化学式(6)で表される構造を有し、Bが、化学式(7)で表される構造を有する、ことを特徴とする。
【0017】
【化4】
【0018】
また、本発明に係るディスプレイ基板用樹脂組成物は、上記の発明において、前記樹脂(a)は、イミド化したときのイミド基濃度が35~45質量%となる樹脂である、ことを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係るディスプレイ基板用樹脂組成物は、上記の発明において、前記樹脂(a)が、化学式(8)で表される構造を有する、ことを特徴とする。
【0020】
【化5】
(化学式(8)中、Aは炭素数2以上の4価のテトラカルボン酸残基を示し、Bは炭素数2以上の2価のジアミン残基を示す。Zは、化学式(9)で表される構造を示す。RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10の炭化水素基、炭素数1~10のアルキルシリル基、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオンまたはピリジニウムイオンを示す。)
(化学式(9)中、αは、炭素数2以上の1価の炭化水素基を示す。βおよびγは、それぞれ独立して、酸素原子または硫黄原子を示す。)
【0021】
また、本発明に係るディスプレイ基板用樹脂膜の製造方法は、支持体に、上記の発明のうちのいずれか一つに記載のディスプレイ基板用樹脂組成物の塗布膜を形成する膜形成工程と、前記塗布膜を220℃以上の温度で加熱して、ディスプレイ基板用樹脂膜を製造する加熱工程と、を含むことを特徴とする。
【0022】
また、本発明に係る画像表示装置の製造方法は、支持体に、上記の発明のうちのいずれか一つに記載のディスプレイ基板用樹脂組成物の塗布膜を形成する膜形成工程と、前記塗布膜を220℃以上の温度で加熱して、ディスプレイ基板用樹脂膜を製造する加熱工程と、前記ディスプレイ基板用樹脂膜の上に画像表示素子を形成する素子形成工程と、を含むことを特徴とする。
【0023】
また、本発明に係る有機ELディスプレイの製造方法は、支持体に、上記の発明のうちのいずれか一つに記載のディスプレイ基板用樹脂組成物の塗布膜を形成する膜形成工程と、前記塗布膜を220℃以上の温度で加熱して、ディスプレイ基板用樹脂膜を製造する加熱工程と、前記ディスプレイ基板用樹脂膜の上に有機EL素子を形成する素子形成工程と、を含むことを特徴とする。
【0024】
また、本発明に係るディスプレイ基板用樹脂膜は、化学式(4)で表される繰り返し単位を主成分とするディスプレイ基板用樹脂膜であって、当該ディスプレイ基板用樹脂膜の膜厚方向における一方の面からエッチングして膜厚を半減させた第1の樹脂膜の線熱膨張係数(A)と、他方の面からエッチングして膜厚を半減させた第2の樹脂膜の線熱膨張係数(B)との比が、(A):(B)=1.0:1.3~1.0:2.0である、ことを特徴とする。
【0025】
【化6】
(化学式(4)中、Aは炭素数2以上の4価のテトラカルボン酸残基を示し、Bは炭素数2以上の2価のジアミン残基を示す。)
【0026】
また、本発明に係るディスプレイ基板用樹脂膜は、上記の発明のうちのいずれか一つに記載のディスプレイ基板用樹脂組成物から得られるディスプレイ基板用樹脂膜であって、当該ディスプレイ基板用樹脂膜の膜厚方向における一方の面からエッチングして膜厚を半減させた第1の樹脂膜の線熱膨張係数(A)と、他方の面からエッチングして膜厚を半減させた第2の樹脂膜の線熱膨張係数(B)との比が、(A):(B)=1.0:1.3~1.0:2.0である、ことを特徴とする。
【0027】
また、本発明に係る積層体は、上記の発明のうちのいずれか一つに記載のディスプレイ基板用樹脂膜と、無機膜とからなる積層体であって、前記ディスプレイ基板用樹脂膜が前記無機膜に接する面は、前記ディスプレイ基板用樹脂膜の膜厚方向における一方の面からエッチングして膜厚を半減させた第1の樹脂膜と、他方の面からエッチングして膜厚を半減させた第2の樹脂膜とのうち、線熱膨張係数が小さい方の樹脂膜を得るためにエッチングされた側の面である、ことを特徴とする。
【0028】
また、本発明に係る画像表示装置は、上記の発明のうちのいずれか一つに記載のディスプレイ基板用樹脂膜を備える、ことを特徴とする。
【0029】
また、本発明に係る画像表示装置は、上記の発明に記載の積層体を備える、ことを特徴とする。
【0030】
また、本発明に係る有機ELディスプレイは、上記の発明のうちのいずれか一つに記載のディスプレイ基板用樹脂膜を備える、ことを特徴とする。
【0031】
また、本発明に係る有機ELディスプレイは、上記の発明に記載の積層体を備える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、耐屈曲性および信頼性に優れたディスプレイ基板として適用可能な樹脂膜であって、機械強度に優れ、無機膜を積層したときにその無機膜にクラックが入りにくいディスプレイ基板用樹脂膜、およびそれを製造可能な保存安定性に優れたディスプレイ基板用樹脂組成物を提供することができる。また、これらのディスプレイ基板用樹脂膜またはディスプレイ基板用樹脂組成物を用いることにより、耐屈曲性および信頼性に優れた積層体、画像表示装置および有機ELディスプレイを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、目的や用途に応じて種々に変更して実施することができる。
【0034】
<ディスプレイ基板用樹脂組成物>
本発明に係る実施の形態の一つは、下記の樹脂(a)、溶剤(b)、および溶剤(c)を含むディスプレイ基板用樹脂組成物である。
樹脂(a):化学式(1)で表される繰り返し単位を主成分とする樹脂であって、当該樹脂に含まれるAおよびBの合計を100質量%とした場合、SP値が15以上17以下であるテトラカルボン酸残基とSP値が11以上13以下であるジアミン残基とが、合計で95質量%以上含まれる樹脂
溶剤(b):SP値が7.5以上9.5未満である溶剤
溶剤(c):SP値が9.5以上14.0以下である溶剤
【0035】
【化7】
【0036】
化学式(1)中、Aは炭素数2以上の4価のテトラカルボン酸残基を示し、Bは炭素数2以上の2価のジアミン残基を示す。RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10の炭化水素基、炭素数1~10のアルキルシリル基、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオンまたはピリジニウムイオンを示す。
【0037】
本発明の実施の形態に係る樹脂組成物を用いることにより、機械強度に優れた樹脂膜を製造することができる。更には、無機膜にクラックが入りにくく、耐屈曲性および信頼性に優れたディスプレイ基板を製造することができる。
【0038】
本発明の実施の形態に係る樹脂組成物が上記効果を発現する理由として、以下のように推定している。本発明の実施の形態に係る樹脂組成物は、樹脂を構成するテトラカルボン酸残基およびジアミン残基の95質量%以上が、SP値が特定の範囲内である構造を含んでいる。一方、溶剤には、SP値がこれよりも低い範囲内であるものを一部含んでいる。SP値とは、溶解度パラメータとも呼ばれ、溶解性や相溶性の指標となるようなパラメータである。本発明の実施の形態に係る樹脂組成物は、樹脂と一部の溶剤とのSP値の差が大きいため、樹脂組成物中に樹脂の溶解性が低い溶剤が含まれることとなる。
【0039】
一般的に、ポリイミドは、その前駆体溶液であるポリアミド酸溶液を支持体に塗布し、塗布膜を焼成することにより成膜する。この焼成プロセスにおいて、ポリアミド酸は、イミド化反応が起こると同時に、樹脂末端が結合し、分子量が増加することが知られている。この際、焼成中の樹脂の運動性が大きいほど、樹脂末端同士の結合確率が高まるため、得られるポリイミド膜の分子量がより大きくなると考えられる。本発明の実施の形態に係る樹脂組成物は、樹脂の溶解性が低い溶剤を含むため、溶剤が乾燥する際に膜表面で被膜が形成され、焼成中に膜内部に溶剤が残りやすくなる。したがって、焼成中の樹脂の流動性が大きくなり、樹脂末端同士の結合確率が増加し、より分子量の大きな樹脂が得られる。これにより、得られるポリイミドフィルム(樹脂膜)は、機械特性に優れたものとなる。
【0040】
また、一般に、ディスプレイ基板用のポリイミド膜(ディスプレイ基板用樹脂膜の一例)は、水分等の透過を防ぐために、ガスバリア性を有する無機膜を積層して用いられる。さらに、ディスプレイ基板用樹脂膜は、基板の反りを抑制するため、低CTEであることが求められる。しかし、CTEが小さいポリイミド膜上に成膜した無機膜には、引張り応力がかかることから、クラックが生じやすいことが本発明者の検討により明らかとなった。本発明の実施の形態に係る樹脂組成物は、先述の通り溶剤が乾燥する際に膜表面に被膜が形成される。この時、膜表面の樹脂は十分に配向することができないため、膜表面のCTEが大きくなる。したがって、膜全体では低CTEであったとしても、膜表面のCTEは大きく、この膜表面上に積層した無機膜に生じる引張り応力が小さくなるから、無機膜のクラックの発生を抑制することができると推測される。
【0041】
また、本発明に係る実施の形態の一つは、化学式(4)で表される繰り返し単位を主成分とする樹脂膜であって、当該樹脂膜の膜厚方向における一方の面からエッチングして膜厚を半減させた第1の樹脂膜のCTE(A)と、他方の面からエッチングして膜厚を半減させた第2の樹脂膜のCTE(B)との比が、(A):(B)=1.0:1.3~1.0:2.0である、ディスプレイ基板用樹脂膜である。
【0042】
【化8】
【0043】
化学式(4)中、Aは、炭素数2以上の4価のテトラカルボン酸残基を示す。Bは、炭素数2以上の2価のジアミン残基を示す。
【0044】
本発明の実施の形態に係る樹脂膜は、膜全体のCTEが小さい場合であっても、膜表面のCTEが大きくなるため、膜表面上の無機膜に圧縮応力がかかりやすい。このため、無機膜のクラックの発生を抑制する事ができる。このような樹脂膜を材料として用いることにより、耐屈曲性および信頼性に優れたディスプレイ基板を製造することができる。また、本発明の実施の形態に係る樹脂膜は、上記化学式(4)で表される繰り返し単位を主成分とする樹脂膜に限定されず、上記CTE(A)とCTE(B)との比の条件を満たすものであれば、本発明における樹脂組成物から得られる樹脂膜であってもよい。
【0045】
(樹脂)
本発明の実施の形態に係るディスプレイ基板用樹脂組成物に含まれる樹脂(a)は、化学式(1)で表される繰り返し単位を主成分とする樹脂であり、以下に示すような特性および量のテトラカルボン酸残基とジアミン残基とを含む。詳細には、樹脂(a)に含まれるAおよびB(化学式(1)中のAおよびB)において、AおよびBの合計を100質量%とした場合、樹脂(a)には、SP値が15以上17以下であるテトラカルボン酸残基と、SP値が11以上13以下であるジアミン残基とが、合計で95質量%以上含まれる。ここでいう「主成分」とは、樹脂を構成する全ての繰り返し単位のうち、50モル%以上を占める成分を指す。
【0046】
【化9】
【0047】
化学式(1)中、Aは炭素数2以上の4価のテトラカルボン酸残基を示し、Bは炭素数2以上の2価のジアミン残基を示す。RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10の炭化水素基、炭素数1~10のアルキルシリル基、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオンまたはピリジニウムイオンを示す。
【0048】
後述の通り、樹脂(a)は、加熱処理や化学処理等によりポリイミドへと変換可能である。すなわち、樹脂(a)は、ポリイミド前駆体であるといえる。
【0049】
AおよびBの合計100質量%のうち、SP値が15以上17以下であるテトラカルボン酸残基、およびSP値が11以上13以下であるジアミン残基の含有量は、合計で95質量%以上である。これらのテトラカルボン酸残基およびジアミン残基の含有量は、96質量%以上であることが好ましく、97質量%以上であることがより好ましく、98質量%以上であることが更に好ましい。また、これらのテトラカルボン酸残基およびジアミン残基の含有量は、100質量%であってもかまわない。
【0050】
SP値の算出方法には、一般的に、蒸発熱等の物性から溶解度パラメータの値を算出する方法と、分子構造から溶解度パラメータの値を推算する方法とがある。ここでは、「Polymer Handbook (4th ed.);edited by J.Brandrup,E.H.Immergut,E.A.Grulke」のp.VII/675,Solubility Parameter Valuesに記載されたFedorsの方法に基づき、分子構造から算出した値を用いた。SP値の単位は、(cal/cm1/2を用いた。
【0051】
本発明において、Aの質量は、Aを含むテトラカルボン酸から4つのカルボキシル基を除いた残りの部分の質量を指す。Bの質量は、Bを含むジアミンから2つのアミノ基を除いた残りの部分の質量を指す。例えば、Aがピロメリット酸残基の場合、Aの質量は、ピロメリット酸から4つのカルボキシル基を除いたCの質量である。Bがパラフェニレンジアミン残基の場合、Bの質量は、パラフェニレンジアミンから2つのアミノ基を除いたCの質量である。
【0052】
化学式(1)中、Aは、炭素数2~80の4価の炭化水素基であることが好ましい。また、Aは、水素および炭素を必須成分とし、ホウ素、酸素、硫黄、窒素、リン、ケイ素およびハロゲンの中から選ばれる1以上の原子を含む、炭素数2~80の4価の有機基であってもよい。Aに含まれるホウ素、酸素、硫黄、窒素、リン、ケイ素およびハロゲンの各原子の数は、それぞれ独立に、20以下の範囲であることが好ましく、10以下の範囲であることがより好ましい。
【0053】
Aを与えるテトラカルボン酸の例を以下に記載する。芳香族テトラカルボン酸としては、単環芳香族テトラカルボン酸化合物、ビフェニルテトラカルボン酸の各種異性体、ビス(ジカルボキシフェニル)化合物、ビス(ジカルボキシフェノキシフェニル)化合物、ナフタレンまたは縮合多環芳香族テトラカルボン酸の各種異性体、ビス(トリメリット酸モノエステル)化合物、などを挙げることができる。また、脂肪族テトラカルボン酸としては、鎖状脂肪族テトラカルボン酸化合物、脂環式テトラカルボン酸化合物、などを挙げることができる。
【0054】
Aを与えるテトラカルボン酸のうち、SP値が15以上17以下であるテトラカルボン酸の具体例を以下に記載する。例えば、ピロメリット酸(SP値:16.3)、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸(SP値:15.2)、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸(SP値:15.2)、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸(SP値:15.2)、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸(SP値:15.5)、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸(SP値:15.5)、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル(SP値:15.2)、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸(SP値:15.9)、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸(SP値:15.9)、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸(SP値:15.9)、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸(SP値:15.5)、などが挙げられる。
【0055】
Aを与えるテトラカルボン酸のうち、SP値が15未満または17より大きいテトラカルボン酸の具体例を以下に記載する。例えば、2,3,5,6-ピリジンテトラカルボン酸(SP値:17.3)、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(SP値:13.4)、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(SP値:13.4)、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン(SP値:13.9)、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン(SP値:13.9)、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン(SP値:14.3)、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン(SP値:14.3)、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン(SP値:14.8)、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン(SP値:14.8)、2,2-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(SP値:13.1)、2,2-ビス[4-(2,3-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(SP値:13.1)、2,2-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン(SP値:13.4)、2,2-ビス[4-(2,3-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン(SP値:13.4)、2,2-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]エーテル(SP値:14.1)、p-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル)(SP値:14.7)、p-ビフェニレンビス(トリメリット酸モノエステル)(SP値:14.3)、エチレンビス(トリメリット酸モノエステル)(SP値:14.5)、ビスフェノールAビス(トリメリット酸モノエステル)(SP値:13.6)、などが挙げられる。
【0056】
樹脂(a)においてSP値が15未満のテトラカルボン酸の残基の含有量が多くなると、得られる樹脂膜の機械特性が不十分となる。また、樹脂(a)においてSP値が17より大きいテトラカルボン酸の残基の含有量が多くなると、樹脂組成物の保存安定性が悪化する。
【0057】
基板の反り抑制の観点から、Aを与えるテトラカルボン酸として、芳香族テトラカルボン酸をテトラカルボン酸全体の50モル%以上使用することが好ましい。中でも、Aは、化学式(5)または化学式(6)で表される4価のテトラカルボン酸残基を主成分とすることが好ましい。
【0058】
【化10】
【0059】
すなわち、ピロメリット酸または3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸をAの主成分として用いることが好ましい。ここでいう「主成分」とは、テトラカルボン酸全体の50モル%以上使用する成分を指す。より好ましくは、Aの主成分は、テトラカルボン酸全体の80モル%以上使用する成分である。これらのテトラカルボン酸から得られるポリイミドであれば、樹脂膜にした時のCTEが小さいため、基板上に成膜したときの基板の反りが小さく、この結果、基板搬送時の吸着エラーの発生を防ぐことができる。
【0060】
また、Aを与えるテトラカルボン酸としては、支持体に対する塗布性や、洗浄などに用いられる酸素プラズマ、UVオゾン処理に対する耐性を高めるため、ジメチルシランジフタル酸、1,3-ビス(フタル酸)テトラメチルジシロキサンなどのケイ素含有テトラカルボン酸を用いてもよい。これらケイ素含有テトラカルボン酸を用いる場合、テトラカルボン酸全体の1~30モル%用いることが好ましい。
【0061】
上記のように例示したテトラカルボン酸において、テトラカルボン酸の残基に含まれる水素の一部は、メチル基、エチル基などの炭素数1~10の炭化水素基、トリフルオロメチル基などの炭素数1~10のフルオロアルキル基、F、Cl、Br、Iなどの基で置換されていてもよい。さらには、当該残基に含まれる水素の一部がOH、COOH、SOH、CONH、SONHなどの酸性基で置換されていると、樹脂およびその前駆体のアルカリ水溶液に対する溶解性が向上することから、後述の感光性樹脂組成物として用いる場合に好ましい。
【0062】
化学式(1)中、Bは、炭素数2~80の4価の炭化水素基であることが好ましい。また、Bは、水素および炭素を必須成分とし、ホウ素、酸素、硫黄、窒素、リン、ケイ素およびハロゲンの中から選ばれる1以上の原子を含む、炭素数2~80の4価の有機基であってもよい。Bに含まれるホウ素、酸素、硫黄、窒素、リン、ケイ素およびハロゲンの各原子の数は、それぞれ独立に、20以下の範囲であることが好ましく、10以下の範囲であることがより好ましい。
【0063】
Bを与えるジアミンの例を以下に記載する。芳香族環を含むジアミン化合物として、単環芳香族ジアミン化合物、ナフタレンまたは縮合多環芳香族ジアミン化合物、ビス(ジアミノフェニル)化合物またはそれらの各種誘導体、4,4’-ジアミノビフェニルまたはその各種誘導体、ビス(アミノフェノキシ)化合物、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)化合物、ビス(アミノベンゾイル)化合物、複素環含有ジアミン化合物、あるいはこれらのジアミン化合物に含まれる芳香族環に結合する水素の一部を炭化水素やハロゲンで置換した化合物など、が挙げられる。また、脂肪族ジアミン化合物としては、直鎖状ジアミン化合物、脂環式ジアミン化合物、などを挙げることができる。
【0064】
Bを与えるジアミンのうち、SP値が11以上13以下であるジアミンの具体例を以下に記載する。例えば、m-フェニレンジアミン(SP値:12.3)、p-フェニレンジアミン(SP値:12.3)、1,5-ナフタレンジアミン(SP値:12.6)、2,6-ナフタレンジアミン(SP値:12.6)、9,10-アントラセンジアミン(SP値:12.8)、2,7-ジアミノフルオレン(SP値:12.9)、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル(SP値:12.3)、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(SP値:12.3)、3,4’-ジアミノジフェニルメタン(SP値:11.9)、4,4’-ジアミノジフェニルメタン(SP値:11.9)、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド(SP値:12.6)、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド(SP値:12.6)、4-アミノ安息香酸4-アミノフェニルエステル(SP値:12.6)、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン(SP値:12.3)、4,4’-ジアミノビフェニル(SP値:12.2)、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル(SP値:11.7)、2,2’-ジエチル-4,4’-ジアミノビフェニル(SP値:11.3)、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル(SP値:11.7)、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノビフェニル(SP値:11.3)、2,2’,3,3’-テトラメチル-4,4’-ジアミノビフェニル(SP値:11.3)、3,3’,4,4’-テトラメチル-4,4’-ジアミノビフェニル(SP値:11.3)、2,2’-ジ(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル(SP値:11.3)、ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル(SP値:12.2)、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル(SP値:12.2)、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(SP値:11.6)、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(SP値:11.3)、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(SP値:12.2)、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(SP値:12.2)、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(SP値:12.2)、2-(4-アミノフェニル)-5-アミノベンゾオキサゾール(SP値:12.9)、2-(3-アミノフェニル)-5-アミノベンゾオキサゾール(SP値:12.9)、2-(4-アミノフェニル)-6-アミノベンゾオキサゾール(SP値:12.9)、2-(3-アミノフェニル)-6-アミノベンゾオキサゾール(SP値:12.9)、2,2’-ビス[(3-アミノフェニル)-5-ベンゾオキサゾリル]ヘキサフルオロプロパン(SP値:12.0)、2,2’-ビス[(4-アミノフェニル)-5-ベンゾオキサゾリル]ヘキサフルオロプロパン(SP値:12.0)、ビス[(3-アミノフェニル)-5-ベンゾオキサゾリル](SP値:12.9)、ビス[(4-アミノフェニル)-5-ベンゾオキサゾリル](SP値:12.9)、ビス[(3-アミノフェニル)-6-ベンゾオキサゾリル](SP値:12.9)、ビス[(4-アミノフェニル)-6-ベンゾオキサゾリル](SP値:12.9)、などが挙げられる。
【0065】
Bを与えるジアミンのうち、SP値が11未満または13より大きいジアミンの具体例を以下に記載する。例えば、3,5-ジアミノ安息香酸(SP値:14.2)、4,4’-ジアミノベンズアニリド(SP値:13.8)、3-カルボキシ-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(SP値:13.5)、1,3-ビス(4-アニリノ)テトラメチルジシロキサン(SP値:10.0)、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(SP値:13.2)、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン(SP値:13.8)、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)メチレン(SP値:14.9)、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)エーテル(SP値:15.5)、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシ)ビフェニル(SP値:15.5)、9,9-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)フルオレン(SP値:14.3)、2,2’-ビス[N-(3-アミノベンゾイル)-3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル]ヘキサフルオロプロパン(SP値:14.3)、2,2’-ビス[N-(4-アミノベンゾイル)-3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル]ヘキサフルオロプロパン(SP値:14.3)、2,2’-ビス[N-(3-アミノベンゾイル)-3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル]プロパン(SP値:14.7)、2,2’-ビス[N-(4-アミノベンゾイル)-3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル]プロパン(SP値:14.7)、9,9-ビス[N-(3-アミノベンゾイル)-3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル]フルオレン(SP値:14.9)、9,9-ビス[N-(4-アミノベンゾイル)-3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル]フルオレン(SP値:14.9)、N、N’-ビス(3-アミノベンゾイル)-2,5-ジアミノ-1,4-ジヒドロキシベンゼン(SP値:16.5)、N、N’-ビス(4-アミノベンゾイル)-2,5-ジアミノ-1,4-ジヒドロキシベンゼン(SP値:16.5)、N、N’-ビス(3-アミノベンゾイル)-4,4’-ジアミノ-3,3-ジヒドロキシビフェニル(SP値:15.7)、N、N’-ビス(4-アミノベンゾイル)-4,4’-ジアミノ-3,3-ジヒドロキシビフェニル(SP値:15.7)、N、N’-ビス(3-アミノベンゾイル)-3,3’-ジアミノ-4,4-ジヒドロキシビフェニル(SP値:15.7)、N、N’-ビス(4-アミノベンゾイル)-3,3’-ジアミノ-4,4-ジヒドロキシビフェニル(SP値:15.7)、1,4-ビス(5-アミノ-2-ベンゾオキサゾリル)ベンゼン(SP値:13.2)、1,4-ビス(6-アミノ-2-ベンゾオキサゾリル)ベンゼン(SP値:13.2)、1,3-ビス(5-アミノ-2-ベンゾオキサゾリル)ベンゼン(SP値:13.2)、1,3-ビス(6-アミノ-2-ベンゾオキサゾリル)ベンゼン(SP値:13.2)、2,6-ビス(4-アミノフェニル)ベンゾビスオキサゾール(SP値:13.6)、2,6-ビス(3-アミノフェニル)ベンゾビスオキサゾール(SP値:13.6)、エチレンジアミン(SP値:10.9)、プロピレンジアミン(SP値:10.5)、ブタンジアミン(SP値:10.2)、ペンタンジアミン(SP値:10.0)、ヘキサンジアミン(SP値:9.8)、オクタンジアミン(SP値:9.6)、ノナンジアミン(SP値:9.5)、デカンジアミン(SP値:9.4)、ウンデカンジアミン(SP値:9.4)、ドデカンジアミン(SP値:9.3)、1,12-(4,9-ジオキサ)ドデカンジアミン(SP値:9.7)、1,8-(3,6-ジオキサ)オクタンジアミン(SP値:10.1)、1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(SP値:8.6)、シクロヘキサンジアミン(SP値:10.4)、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)(SP値:9.8)、イソホロンジアミン(SP値:9.4)、などが挙げられる。
【0066】
これらのジアミンは、Bを与えるジアミンとして、そのまま使用でき、あるいは、対応するトリメチルシリル化ジアミンとしても使用できる。また、これらを2種以上用いてもよい。
【0067】
樹脂(a)においてSP値が11未満のジアミンの残基の含有量が多くなると、得られる樹脂膜の機械特性が不十分となる。また、樹脂(a)においてSP値が13より大きいジアミンの残基の含有量が多くなると、樹脂組成物の保存安定性が悪化する。
【0068】
基板の反り抑制の観点から、Bを与えるジアミンとして、芳香族ジアミン化合物をジアミン化合物全体の50モル%以上使用することが好ましい。中でも、Bは、化学式(7)で表される2価のジアミン残基を主成分とすることが好ましい。
【0069】
【化11】
【0070】
すなわち、p-フェニレンジアミンをBの主成分として用いることが好ましい。ここでいう「主成分」とは、ジアミン化合物全体の50モル%以上使用する成分を指す。より好ましくは、Bの主成分は、ジアミン化合物全体の80モル%以上使用する成分である。p-フェニレンジアミンを用いて得られるポリイミドであれば、樹脂膜にした時のCTEが小さいため、基板上に成膜したときの基板の反りが小さく、この結果、基板搬送時の吸着エラーの発生を防ぐことができる。
【0071】
特に好ましいのは、化学式(1)中のAが化学式(5)または化学式(6)で表される4価のテトラカルボン酸残基を主成分とし、Bが化学式(7)で表される2価のジアミン残基を主成分とすることである。そのような構造のポリイミドであれば、樹脂膜にした時のCTEがより小さいため、基板上に成膜したときの基板の反りがより小さく、この結果、基板搬送時の吸着エラーの発生をより安定して防ぐことができる。
【0072】
また、Bを与えるジアミンとしては、支持体に対する塗布性や、洗浄などに用いられる酸素プラズマ、UVオゾン処理に対する耐性を高めるために、1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3-ビス(4-アニリノ)テトラメチルジシロキサンなどのケイ素含有ジアミンを用いてもよい。これらケイ素含有ジアミン化合物を用いる場合、ジアミン化合物全体の1~30モル%用いることが好ましい。
【0073】
上記のように例示したジアミン化合物において、ジアミン化合物に含まれる水素の一部は、メチル基、エチル基などの炭素数1~10の炭化水素基、トリフルオロメチル基などの炭素数1~10のフルオロアルキル基、F、Cl、Br、Iなどの基で置換されていてもよい。さらには、当該ジアミン化合物に含まれる水素の一部がOH、COOH、SOH、CONH、SONHなどの酸性基で置換されていると、樹脂およびその前駆体のアルカリ水溶液に対する溶解性が向上することから、後述の感光性樹脂組成物として用いる場合に好ましい。
【0074】
また、本発明において、樹脂(a)は、上述した化学式(1)で表される繰り返し単位に加え、化学式(3)で表される繰り返し単位および化学式(4)で表される繰り返し単位のうち少なくとも一つをさらに含んでいてもよい。
【0075】
【化12】
【0076】
化学式(3)および化学式(4)中、Aは炭素数2以上の4価のテトラカルボン酸残基を示し、Bは炭素数2以上の2価のジアミン残基を示す。Rは、水素原子、炭素数1~10の炭化水素基、炭素数1~10のアルキルシリル基、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオンまたはピリジニウムイオンを示す。特に、上述した化学式(1)、化学式(3)および化学式(4)中、Aは、化学式(5)で表される構造または化学式(6)で表される構造を有することが好ましい。Bは、化学式(7)で表される構造を有することが好ましい。
【0077】
化学式(3)で表される繰り返し単位および化学式(4)で表される繰り返し単位は、各々、化学式(1)で表される繰り返し単位を熱処理や化学処理等によりイミド閉環した構造とみなすこともできる。すなわち、化学式(1)で表される繰り返し単位を含み、かつ化学式(3)で表される繰り返し単位および化学式(4)で表される繰り返し単位のうち少なくとも一つを含む樹脂は、樹脂の一部がイミド化されたポリイミド前駆体と捉えることもできる。
【0078】
上記のような樹脂に含まれる、化学式(1)で表される繰り返し単位、化学式(3)で表される繰り返し単位および化学式(4)で表される繰り返し単位の各モル比を、それぞれp、q、rとする。pは1以上の整数を示し、q及びrは、各々独立に0又は1以上の整数を示す。この場合、樹脂(a)は、0.05≦(2r+q)/(2p+2q+2r)≦0.3の関係を満たすことが好ましい。樹脂(a)は、樹脂膜の機械特性の観点から、0.10≦(2r+q)/(2p+2q+2r)の関係を満たすことがより好ましく、0.13≦(2r+q)/(2p+2q+2r)の関係を満たすことが更に好ましい。また、樹脂(a)は、樹脂組成物の保存安定性の観点から、(2r+q)/(2p+2q+2r)≦0.27の関係を満たすことがより好ましく、(2r+q)/(2p+2q+2r)≦0.25の関係を満たすことが更に好ましい。なお、これらの上限値および下限値をそれぞれ任意に組み合わせた範囲も好ましい例である。したがって、樹脂(a)は、0.10≦(2r+q)/(2p+2q+2r)≦0.27の関係を満たすことなども好ましい。
【0079】
ここで、「(2r+q)/(2p+2q+2r)」は、ポリイミド前駆体の結合部(テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との反応部)において、イミド閉環している結合部数(2r+q)の全結合部数(2p+2q+2r)に対する割合を示している。つまり、「(2r+q)/(2p+2q+2r)×100」は、ポリイミド前駆体のイミド化率を示している。したがって、「(2r+q)/(2p+2q+2r)」の値は、ポリイミド前駆体のイミド化率を測定し、下記式を用いて求めることができる。
(2r+q)/(2p+2q+2r)=イミド化率/100
【0080】
ポリイミド前駆体のイミド化率(「(2r+q)/(2p+2q+2r)×100」の値)は、次の通り測定される。
【0081】
まず、ポリイミド前駆体のH―NMRスペクトルを測定する。つづいて、アミド基のHのピークの積分値(εとする)と、ポリイミド前駆体に含まれる化学式(1)、化学式(3)および化学式(4)の各々で表される各繰り返し単位のモル比が100:0:0であった場合の、アミド基のHのピークの積分値(βとする)とを求める。すなわち、樹脂がイミド化されていない完全なポリアミド酸の状態であると仮定した場合のアミド基のHのピークの積分値を求める。これらのβおよびεを用いて、下式によってイミド化率を求めることができる。
イミド化率=(β-ε)/β×100
【0082】
なお、βは、下式によって求めることができる。下式において、αは、化学式(1)、化学式(3)および化学式(4)中のAおよびBに含まれる全てのHまたは特定のHのピークの積分値である。ωは、αを求めたときの対象とした水素原子の数である。
β=α/ω×2
【0083】
H―NMRの測定試料は、ポリイミド前駆体単独であることが好ましいが、他の樹脂成分や溶剤を含んでいてもよい。ただし、他の成分に含まれるHのピークが、イミド化率を算出するための指標となるHのピークと重ならないことが好ましい。
【0084】
樹脂(a)は、イミド化したときのイミド基濃度が35~45質量%であることが好ましい。イミド基濃度が35質量%以上であれば、樹脂膜上に積層した無機膜のクラック抑制効果が強まる。イミド基濃度が45質量%以下であれば、樹脂組成物の保存安定性が良好となる。
【0085】
ここでいう「イミド基濃度」とは、ポリイミド前駆体を熱処理や化学処理等により完全にイミド化したポリイミドにおいて、ポリイミド全体を100質量%としたときのイミド基が占める質量割合を示す。具体的には、ポリイミドの繰り返し単位を構成する全原子の合計原子量(xとする)と、繰り返し単位中のイミド基を構成する原子の合計原子量(yとする)とを用いて、以下の式で表すことができる。なお、ポリイミド前駆体が複数種のテトラカルボン酸残基または複数種のジアミン残基を含む場合、xは、各テトラカルボン酸残基および各ジアミン残基の原子量に、それぞれの含有モル比を乗じた値を用いて計算することができる。
イミド基濃度=y/x×100
【0086】
例えば、テトラカルボン酸残基の100モル%のうち、60モル%がピロメリット酸(PMDA)残基であり、40モル%が3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸(BPDA)残基であり、また、ジアミン残基のの100モル%のうち、60モル%がp-フェニレンジアミン(PDA)残基であり、40モル%が4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(DAE)残基である場合、イミド基濃度は、以下の通り求められる。すなわち、xは、PMDA残基のC、BPDA残基のC12、PDA残基のC、およびDAE残基のC12Oの各原子量(それぞれ74.08、150.18、76.1、168.2)と、イミド基を構成するCの原子量(140.06)とを用いて、74.08×0.6+150.18×0.4+76.1×0.6+168.2×0.4+140.06=357.52と求めることができる。yは、イミド基を構成するCの原子量(140.06)である。したがって、イミド基濃度は、140.06/357.52×100=39%となる。
【0087】
樹脂(a)は、末端が末端封止剤により封止されたものであってもよい。樹脂(a)の末端に末端封止剤を反応させることで、ポリイミド前駆体の分子量を好ましい範囲に調整できる。
【0088】
ポリイミド前駆体の末端のモノマーがジアミン化合物である場合は、そのアミノ基を封止するために、ジカルボン酸無水物、モノカルボン酸、モノカルボン酸クロリド化合物、モノカルボン酸活性エステル化合物、二炭酸ジアルキルエステルなどを末端封止剤として用いることができる。また、ポリイミド前駆体の末端のモノマーが酸二無水物である場合は、その酸無水物基を封止するために、モノアミン、モノアルコールなどを末端封止剤として用いることができる。
【0089】
ポリイミド前駆体が末端を封止したものである場合、そのポリイミド前駆体(樹脂(a)の一例)は、化学式(8)で表される構造を有することが好ましい。
【0090】
【化13】
【0091】
化学式(8)中、Aは炭素数2以上の4価のテトラカルボン酸残基を示し、Bは炭素数2以上の2価のジアミン残基を示す。Zは、樹脂の末端構造を示し、具体的には、化学式(9)で表される構造を示す。RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10の炭化水素基、炭素数1~10のアルキルシリル基、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオンまたはピリジニウムイオンを示す。
【0092】
化学式(9)中、αは、炭素数2以上の1価の炭化水素基を示す。αは、炭素数2~10の1価の炭化水素基であることが好ましい。より好ましくは、αは、脂肪族炭化水素基である。この脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれのものであってもよい。また、化学式(9)中、βおよびγは、それぞれ独立して、酸素原子または硫黄原子を示す。βおよびγとして好ましくは、酸素原子である。
【0093】
このような炭化水素基としては、例えば、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基などの直鎖状炭化水素基、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、イソヘキシル基、sec- ヘキシル基などの分岐鎖状炭化水素基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基などの環状炭化水素基が挙げられる。
【0094】
これらの炭化水素基のうち、炭素数2~10の1価の分岐鎖状炭化水素基および環状炭化水素基が好ましく、イソプロピル基、シクロヘキシル基、tert-ブチル基、tert-ペンチル基がより好ましく、tert-ブチル基が最も好ましい。
【0095】
化学式(8)で表される構造を有する樹脂を加熱すると、Zが熱分解して樹脂の末端にアミノ基が発生する。末端に発生したアミノ基は、テトラカルボン酸を末端に有する他の樹脂と反応することができる。このため、化学式(8)で表される構造を有する樹脂を加熱すると、高分子量のポリイミド樹脂が得られる。
【0096】
樹脂(a)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用い、ポリスチレン換算で、200,000以下であることが好ましく、150,000以下であることがより好ましく、100,000以下であることが特に好ましい。樹脂(a)の重量平均分子量が上記の範囲であれば、高濃度の樹脂組成物であっても、粘度が増大するのをより抑制することができる。また、樹脂(a)の重量平均分子量は、2,000以上であることが好ましく、3,000以上であることがより好ましく、5,000以上であることが特に好ましい。樹脂(a)の重量平均分子量が2,000以上であれば、樹脂組成物としたときの粘度が低下しすぎることがなく、より良好な塗布性を保つことができる。
【0097】
化学式(1)で表される繰り返し単位、化学式(3)で表される繰り返し単位および化学式(4)で表される繰り返し単位の各繰り返し数は、上述の重量平均分子量を満たす範囲であればよい。これらの各繰り返し数の下限は、それぞれ、5以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましい。また、これらの各繰り返し数の上限は、1000以下であることが好ましく、500以下であることがより好ましい。
【0098】
(溶剤)
本発明の実施の形態に係る樹脂組成物は、上述したように、溶剤(b)および溶剤(c)を含む。溶剤(b)は、SP値が7.5以上9.5未満の溶剤である。溶剤(c)は、SP値が9.5以上14.0以下の溶剤である。
【0099】
溶剤(b)および溶剤(c)の各SP値が上記範囲内であれば、得られる樹脂膜は、機械特性に優れ、樹脂膜上に積層した無機膜のクラック発生を抑制できる。また、得られる樹脂組成物は、保存安定性に優れる。
【0100】
本発明の実施の形態に係る樹脂組成物に含まれる溶剤(b)は、得られる樹脂膜の面内均一性の観点から、化学式(2)で表される構造の化合物を有する溶剤であることが好ましい。
【0101】
【化14】
【0102】
化学式(2)中、mおよびnは、それぞれ独立して、1~5の正の整数を示す。R~Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10の炭化水素基、または炭素数1~10のアシル基を示す。
【0103】
溶剤(b)の具体例を以下に示す。溶剤(b)を構成する、化学式(2)で表される構造の化合物として、例えば、ジメチルグリコール(SP値:7.6)、ジメチルジグリコール(SP値:8.1)、ジメチルトリグリコール(SP値:8.4)、メチルエチルジグリコール(SP値:8.1)、ジエチルジグリコール(SP値:8.2)、ジブチルジグリコール(SP値:8.3)、エチレングリコールジエチルエーテル(SP値:7.9)、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(SP値:8.9)、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(SP値:8.9)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(SP値:9.0)、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(SP値:8.8)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(SP値:7.9)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(SP値:8.7)、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(SP値:8.7)、ジプロピレングリコールメチルプロピルエーテル(SP値:8.0)、ジプロピレングリコールブチルエーテル(SP値:9.4)、トリプロピレングリコールメチルエーテル(SP値:9.4)、トリプロピレングリコールブチルエーテル(SP値:9.3)、3-メトキシブチルアセテート(SP値:8.7)、3-メトキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート(SP値:8.5)、などが挙げられる。
【0104】
化学式(2)で表される構造の化合物以外の化合物(溶剤(b)を構成するもの)として、例えば、メチルアセテート(SP値:8.8)、エチルアセテート(SP値:8.7)、イソプロピルアセテート(SP値:8.5)、n-プロピルアセテート(SP値:8.7)、ブチルアセテート(SP値:8.7)、シクロヘキシルアセテート(SP値:9.2)、メチルエチルケトン(SP値:9.0)、アセトン(SP値:9.1)、ジイソブチルケトン(SP値:8.5)、トルエン(SP値:9.1)、キシレン(SP値:9.1)、テトラヒドロフラン(SP値:8.3)、2-メチルテトラヒドロフラン(SP値:8.1)、1,4-ジオキサン(SP値:8.6)、アニソール(SP値:9.4)、などが挙げられる。
【0105】
溶剤(b)のSP値は7.5以上9.5未満であるが、保存安定性の観点からは、このSP値は、7.7以上であることが好ましく、8.0以上であることがより好ましく、8.2以上であることが更に好ましい。また、無機膜のクラック抑制の観点からは、このSP値は、9.3以下であることが好ましく、9.1以下であることがより好ましく、8.9以下であることが更に好ましい。なお、これらの上限値および下限値をそれぞれ任意に組み合わせた範囲も好ましい例である。したがって、SP値が8.0以上8.9以下なども好ましい範囲である。
【0106】
溶剤(c)の具体例を以下に示す。例えば、N-メチルピロリドン(SP値:11.5)、N-エチルピロリドン(SP値:11.1)、N,N-ジメチルアセトアミド(SP値:10.6)、N,N-ジメチルホルムアミド(SP値:10.6)、N,N-ジエチルアセトアミド(SP値:10.1)、N,N-ジエチルホルムアミド(SP値:10.1)、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド(SP値:10.3)、3-n-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド(SP値:9.8)、N,N-ジメチルイソブチルアミド(SP値:9.9)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(SP値:9.9)、N,N-ジメチルプロピレン尿素(SP値:9.7)、ジメチルスルホキシド(SP値:13.2)、N-メチル-2-オキサゾリジノン(SP値:12.2)、δ-バレロラクトン(SP値:9.7)、γ-バレロラクトン(SP値:9.5)、γ-ブチロラクトン(SP値:9.9)、シクロヘキサノン(SP値:9.8)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(SP値:10.1)、エチレングリコールモノエチルエーテル(SP値:10.4)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(SP値:9.9)、エチレングリコールモノブチルエーテル(SP値:10.0)、プロピレングリコールジアセテート(SP値:9.6)、プロピレングリコールメチルエーテル(SP値:10.2)、プロピレングリコールプロピルエーテル(SP値:9.8)、プロピレングリコールブチルエーテル(SP値:9.7)、プロピレングリコールフェニルエーテル(SP値:11.1)、ジプロピレングリコールメテルエーテル(SP値:9.7)、ジプロピレングリコールプロピルエーテル(SP値:9.5)、1,4-ブタンジオールジアセテート(SP値:9.6)、1,3-ブチレングリコールジアセテート(SP値:9.5)、1,6-ヘキサンジオールジアセテート(SP値:9.5)、3-メトキシブタノール(SP値:10.0)、1,3-ブチレングリコール(SP値:12.8)、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(SP値:9.6)、メタノール(SP値:11.7)、エタノール(SP値:11.0)、n-プロピルアルコール(SP値:10.5)、イソプロピルアルコール(SP値:10.2)、乳酸エチル(SP値:11.0)、乳酸ブチル(SP値:10.8)、安息香酸ブチル(SP値:9.8)、ジアセトンアルコール(SP値:10.9)、等があげられる。
【0107】
溶剤(c)のSP値は9.5以上14.0未満であるが、樹脂組成物の保存安定性の観点から、このSP値は、9.7以上であることが好ましく、10.0以上であることがより好ましく、10.3以上であることが更に好ましい。また、このSP値は、13.7以下であることが好ましく、13.5以下であることがより好ましく、13.2以下であることが更に好ましい。なお、これらの上限値および下限値をそれぞれ任意に組み合わせた範囲も好ましい例である。したがって、SP値が9.7以上13.2以下なども好ましい範囲である。
【0108】
本発明の実施の形態に係る樹脂組成物に含まれる溶剤(b)および溶剤(c)は、以下に示す特徴のものであることが好ましい。詳細には、溶剤(c)のうち最も沸点が低い溶剤の沸点が、溶剤(b)のうち最も沸点が高い溶剤の沸点より10℃以上高いことが好ましく、15℃以上高いことがより好ましい。これらの沸点の差が10℃以上であれば、樹脂の溶解性の低い溶剤(c)は溶剤(b)よりも先に乾燥が進むため、樹脂の凝集による面内均一性の悪化を防ぐことができる。
【0109】
本発明の実施の形態に係る樹脂組成物に含まれる溶剤(b)の含有量は、この樹脂組成物に含有される全溶剤(具体的には溶剤(b)および溶剤(c)を含む全溶剤)の100質量%に対し、5~60質量%であることが好ましく、10~50質量%であることがより好ましく、15~40質量%であることがさらに好ましい。溶剤(b)の含有量が5質量%以上であれば、被膜が十分に形成され、機械特性に優れる樹脂膜が得られる。溶剤(b)の含有量が60質量%以下であれば、この樹脂組成物は、保存安定性に優れるものとなる。
【0110】
本発明の実施の形態に係る樹脂組成物に含まれる溶剤(c)の含有量は、この樹脂組成物に含有される全溶剤の100質量%に対し、40~95質量%であることが好ましく、50~90質量%であることがより好ましく、60~85質量%であることがさらに好ましい。溶剤(c)の含有量が40質量%以上であれば、樹脂組成物は、保存安定性に優れるものとなる。溶剤(c)の含有量が95質量%以下であれば、被膜が十分に形成され、機械特性に優れる樹脂膜が得られる。
【0111】
本発明の実施の形態に係る樹脂組成物における樹脂(a)の濃度は、この樹脂組成物の100質量%に対し、3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。また、樹脂(a)の濃度は、40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。樹脂(a)の濃度が3質量%以上であれば、樹脂膜の厚膜化が容易となる。樹脂(a)の濃度が40質量%以下であれば、樹脂(a)が十分に溶解するため、均質な樹脂膜が得られやすい。
【0112】
本発明の実施の形態に係る樹脂組成物の粘度は、20~13,000mPa・sであることが好ましく、50~8,000mPa・sであることがより好ましい。樹脂組成物の粘度が20mPa・s未満であると、十分な膜厚の樹脂膜が得られなくなる。樹脂組成物の粘度が13,000mPa・sより大きいと、ワニスの塗布が困難となる。
【0113】
(添加剤)
本発明の実施の形態に係る樹脂組成物は、光酸発生剤(d)、熱架橋剤(e)、熱酸発生剤(f)、フェノール性水酸基を含む化合物(g)、密着改良剤(h)、無機粒子(i)および界面活性剤(j)の中から選ばれる少なくとも一つの添加剤を含んでもよい。
【0114】
(光酸発生剤(d))
本発明の実施の形態に係る樹脂組成物は、光酸発生剤(d)を含有することで感光性樹脂組成物とすることができる。この光酸発生剤(d)の含有により、樹脂組成物の光照射部に酸が発生して、この光照射部のアルカリ水溶液に対する溶解性が増大し、この光照射部が溶解するポジ型のレリーフパターンを得ることができる。また、光酸発生剤(d)とエポキシ化合物または後述する熱架橋剤(e)とを樹脂組成物に含有することで、この光照射部に発生した酸がエポキシ化合物や熱架橋剤(e)の架橋反応を促進し、この光照射部が不溶化するネガ型のレリーフパターンを得ることができる。
【0115】
光酸発生剤(d)としては、例えば、キノンジアジド化合物、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩などが挙げられる。樹脂組成物は、これらを2種以上含有してもよく、これにより、高感度な感光性樹脂組成物を得ることができる。
【0116】
光酸発生剤(d)のうち、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩は、露光によって発生した酸成分を適度に安定化させるため、好ましい。中でも、スルホニウム塩が好ましい。樹脂組成物は、光酸発生剤(d)に加え、さらに増感剤などを必要に応じて含有することもできる。
【0117】
本発明において、光酸発生剤(d)の含有量は、高感度化の観点から、樹脂(a)の100質量部対して、0.01~50質量部であることが好ましい。このうち、キノンジアジド化合物の含有量は、3~40質量部であることが好ましい。また、スルホニウム塩、ホスホニウム塩およびジアゾニウム塩の総含有量は、0.5~20質量部であることが好ましい。
【0118】
(熱架橋剤(e))
本発明の実施の形態に係る樹脂組成物は、下記化学式(31)で表される熱架橋剤または下記化学式(32)で表される構造を含む熱架橋剤(以下、これらを総称して熱架橋剤(e)という)を含有してもよい。熱架橋剤(e)は、ポリイミドまたはその前駆体、その他の添加成分を架橋し、得られる樹脂膜の耐薬品性および硬度を高めることができる。
【0119】
【化15】
【0120】
上記化学式(31)中、R31は、2~4価の連結基を示す。R32は、炭素数1~20の1価の炭化水素基、Cl、Br、IまたはFを示す。R33およびR34は、それぞれ独立してCHOR36(R36は水素または炭素数1~6の1価の炭化水素基)を示す。R35は、水素原子、メチル基またはエチル基を示す。sは0~2の整数、tは2~4の整数を示す。複数のR32は、それぞれ同じでも異なってもよい。複数のR33およびR34は、それぞれ同じでも異なってもよい。複数のR35は、それぞれ同じでも異なってもよい。連結基R31の例を下に示す。
【0121】
【化16】
【0122】
上記化学式中、R41~R60は、水素原子、炭素数1~20の1価の炭化水素基またはこれらの炭化水素基の一部の水素原子がCl、Br、IもしくはFで置換された炭化水素基を示す。*は、熱架橋剤(e)が化学式(31)で表される熱架橋剤である場合、化学式(31)におけるR31の結合点を示す。
【0123】
【化17】
【0124】
上記化学式(32)中、R37は、水素原子または炭素数1~6の1価の炭化水素基を示す。uは1または2の整数を示し、vは0または1の整数を示す。ただし、u+vは、1または2である。上記化学式中の*は、熱架橋剤(e)が化学式(32)で表される構造を含む熱架橋剤である場合、化学式(32)中の窒素原子と他の原子との結合点を示す。
【0125】
上記化学式(31)中、R33およびR34は、熱架橋性基であるCHOR36を表している。上記化学式(31)で表される熱架橋剤に適度な反応性を残し、保存安定性に優れることから、R36は、炭素数1~4の1価の炭化水素基であることが好ましく、メチル基またはエチル基であることがより好ましい。化学式(31)で表される構造を含む熱架橋剤の好ましい例を下記に示す。
【0126】
【化18】
【0127】
上記化学式(32)中、R37は、炭素数1~4の1価の炭化水素基であることが好ましい。また、化合物の安定性や感光性樹脂組成物における保存安定性の観点から、R37は、メチル基またはエチル基であることが好ましく、化合物中に含まれる(CHOR37)基の数が8以下であることがより好ましい。上記化学式(32)で表される基を含む熱架橋剤の好ましい例を下記に示す。
【0128】
【化19】
【0129】
本発明において、熱架橋剤(e)の含有量は、樹脂(a)の100質量部に対して、10質量部以上100質量部以下であることが好ましい。熱架橋剤(e)の含有量が10質量部以上100質量部以下であれば、得られる樹脂膜の強度が高く、樹脂組成物の保存安定性にも優れる。
【0130】
(熱酸発生剤(f))
本発明の実施の形態に係る樹脂組成物は、さらに熱酸発生剤(f)を含有してもよい。熱酸発生剤(f)は、後述する現像後加熱により酸を発生し、ポリイミドまたはその前駆体と熱架橋剤(e)との架橋反応を促進するほか、硬化反応を促進する。このため、得られる樹脂膜の耐薬品性が向上し、膜減りを低減することができる。熱酸発生剤(f)から発生する酸は、強酸であることが好ましく、例えば、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸などのアリールスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ブタンスルホン酸などのアルキルスルホン酸などが好ましい。本発明において、熱酸発生剤(f)は、化学式(33)または化学式(34)で表される脂肪族スルホン酸化合物を含有することが好ましく、これらを2種以上含有してもよい。
【0131】
【化20】
【0132】
上記化学式(33)および化学式(34)中、R61~R63は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、炭素数1~20の有機基を示す。R61~R63は、炭素数1~20の炭化水素基であることが好ましい。また、R61~R63は、水素原子および炭素原子を必須成分とし、ホウ素、酸素、硫黄、窒素、リン、ケイ素およびハロゲンの中から選ばれる1以上の原子を含む炭素数1~20の有機基であってもよい。
【0133】
化学式(33)で表される化合物の具体例としては、以下の化合物を挙げることができる。
【0134】
【化21】
【0135】
化学式(34)で表される化合物の具体例としては、以下の化合物を挙げることができる。
【0136】
【化22】
【0137】
本発明において、熱酸発生剤(f)の含有量は、架橋反応をより促進するという観点から、樹脂(a)の100質量部に対して、0.5質量部以上であることが好ましく、10質量部以下であることが好ましい。
【0138】
(フェノール性水酸基を含む化合物(g))
本発明の実施の形態に係る樹脂組成物は、必要に応じて、感光性樹脂組成物のアルカリ現像性を補う目的で、フェノール性水酸基を含む化合物(g)を含有してもよい。フェノール性水酸基を含む化合物(g)としては、例えば、本州化学工業社製の以下の商品名のもの(Bis-Z、BisOC-Z、BisOPP-Z、BisP-CP、Bis26X-Z、BisOTBP-Z、BisOCHP-Z、BisOCR-CP、BisP-MZ、BisP-EZ、Bis26X-CP、BisP-PZ、BisP-IPZ、BisCR-IPZ、BisOCP-IPZ、BisOIPP-CP、Bis26X-IPZ、BisOTBP-CP、TekP-4HBPA(テトラキスP-DO-BPA)、TrisP-HAP、TrisP-PA、TrisP-PHBA、TrisP-SA、TrisOCR-PA、BisOFP-Z、BisRS-2P、BisPG-26X、BisRS-3P、BisOC-OCHP、BisPC-OCHP、Bis25X-OCHP、Bis26X-OCHP、BisOCHP-OC、Bis236T-OCHP、メチレントリス-FR-CR、BisRS-26X、BisRS-OCHP)、旭有機材工業社製の以下の商品名のもの(BIR-OC、BIP-PC、BIR-PC、BIR-PTBP、BIR-PCHP、BIP-BIOC-F、4PC、BIR-BIPC-F、TEP-BIP-A)、1,4-ジヒドロキシナフタレン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、2,4-ジヒドロキシキノリン、2,6-ジヒドロキシキノリン、2,3-ジヒドロキシキノキサリン、アントラセン-1,2,10-トリオール、アントラセン-1,8,9-トリオール、8-キノリノールなどが挙げられる。これらのフェノール性水酸基を含む化合物(g)を含有することで、得られる感光性樹脂組成物は、露光前はアルカリ現像液にほとんど溶解せず、露光すると容易にアルカリ現像液に溶解するため、現像による膜減りが少なく、かつ短時間で、容易に現像が行えるようになる。そのため、感度が向上しやすくなる。
【0139】
本発明において、このようなフェノール性水酸基を含む化合物(g)の含有量は、樹脂(a)の100質量部に対して、好ましくは3質量部以上40質量部以下である。
【0140】
(密着改良剤(h))
本発明の実施の形態に係る樹脂組成物は、密着改良剤(h)を含有してもよい。密着改良剤(h)としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルメトキシジエトキシシラン、3-ウレイドプロピルジメトキシエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物などのシランカップリング剤があげられる。また、密着改良剤(h)は、アルコキシ基、アミノ基、エポキシ基、ウレイド基等の官能基を有するシロキサンオリゴマーや、アルコシシシリル基、アミノ基、エポキシ基、ウレイド基等の官能基を有する有機ポリマーを含有しても良い。あるいは、密着改良剤(h)は、下記に示すようなアルコキシシラン含有芳香族アミン化合物、アルコキシシラン含有芳香族アミド化合物を含有してもよい。
【0141】
【化23】
【0142】
また、密着改良剤(h)としては、芳香族アミン化合物とアルコキシ基含有ケイ素化合物とを反応させて得られる化合物を用いることもできる。そのような化合物として、例えば、芳香族アミン化合物と、エポキシ基、クロロメチル基などのアミノ基と反応する基を含むアルコキシシラン化合物とを反応させて得られる化合物などが挙げられる。本発明の実施の形態に係る樹脂組成物は、以上に挙げた密着改良剤(h)を2種以上含有してもよい。これらの密着改良剤(h)を含有することにより、感光性樹脂膜を現像する場合などに、シリコンウェハ、ITO、SiO、窒化ケイ素などの下地基材との密着性を高めることができる。また、樹脂膜と下地の基材との密着性を高めることにより、洗浄などに用いられる酸素プラズマやUVオゾン処理に対する耐性を高めることもできる。また、焼成時やディスプレイ製造時の真空プロセスで樹脂膜が基板から浮く膜浮き現象を抑制することができる。本発明において、密着改良剤(h)の含有量は、樹脂(a)の100質量%に対して、0.005~10質量%であることが好ましい。
【0143】
(無機粒子(i))
本発明の実施の形態に係る樹脂組成物は、耐熱性向上を目的として無機粒子(i)を含有することができる。かかる目的に用いられる無機粒子(i)としては、例えば、白金、金、パラジウム、銀、銅、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、鉄、コバルト、ロジウム、ルテニウム、スズ、鉛、ビスマス、タングステンなどの金属無機粒子や、酸化ケイ素(シリカ)、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウムなどの金属酸化物無機粒子などが挙げられる。無機粒子(i)の形状は、特に限定されず、球状、楕円形状、偏平状、ロット状、繊維状などが挙げられる。また、無機粒子(i)を含有した樹脂膜の表面粗さが増大するのを抑制するため、無機粒子(i)の平均粒径は、1nm以上100nm以下であることが好ましく、1nm以上50nm以下であることがより好ましく、1nm以上30nm以下であることがさらに好ましい。
【0144】
本発明において、無機粒子(i)の含有量は、樹脂(a)の100質量部に対し、3質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましく、10質量部以上であることがさらに好ましい。また、この無機粒子(i)の含有量は、100質量部以下であることが好ましく、80質量部以下であることがより好ましく、50質量部以下であることがさらに好ましい。無機粒子(i)の含有量が3質量部以上であれば、樹脂組成物の耐熱性が十分向上する。無機粒子(i)の含有量が100質量部以下であれば、樹脂膜の靭性が低下しにくくなる。
【0145】
(界面活性剤(j))
本発明の実施の形態に係る樹脂組成物は、塗布性を向上させるために界面活性剤(j)を含有してもよい。界面活性剤(j)としては、例えば、住友3M社製の“フロラード”(登録商標)、DIC社製の“メガファック”(登録商標)、旭硝子社製の“スルフロン”(登録商標)などのフッ素系界面活性剤、信越化学工業社製のKP341、チッソ社製のDBE、共栄社化学社製の“ポリフロー”(登録商標)、“グラノール”(登録商標)、ビック・ケミー社製のBYKなどの有機シロキサン界面活性剤、共栄社化学社製のポリフローなどのアクリル重合物界面活性剤が挙げられる。界面活性剤(j)は、樹脂(a)の100質量部に対し、0.01~10質量部含有することが好ましい。
【0146】
(樹脂組成物の製造方法)
次に、本発明の実施の形態に係る樹脂組成物を製造する方法について説明する。樹脂組成物の製造方法では、ポリイミド前駆体(樹脂(a)の一例)、必要に応じて光酸発生剤(d)、熱架橋剤(e)、熱酸発生剤(f)、フェノール性水酸基を含む化合物(g)、密着改良剤(h)、無機粒子(i)および界面活性剤(j)などを溶剤(溶剤(b)および溶剤(c)を含む溶剤)に溶解させる。これにより、本発明の実施の形態に係る樹脂組成物の一つであるワニスを得ることができる。溶解方法としては、撹拌や加熱が挙げられる。光酸発生剤(d)を含む場合、加熱温度は、感光性樹脂組成物としての性能を損なわない範囲で設定することが好ましく、通常、室温~80℃である。また、各成分の溶解順序は特に限定されず、例えば、溶解性の低い化合物から順次溶解させる方法がある。また、界面活性剤など、撹拌溶解時に気泡を発生しやすい成分については、他の成分を溶解してから最後に添加することで、気泡の発生による他成分の溶解不良を防ぐことができる。
【0147】
なお、ポリイミド前駆体は、既知の方法によって重合することができる。例えば、テトラカルボン酸、あるいは対応する酸二無水物、活性エステル、活性アミドなどを酸成分とし、ジアミンあるいは対応するトリメチルシリル化ジアミンなどをジアミン成分として、反応溶剤中で重合させることにより、ポリアミド酸を得ることができる。また、ポリアミド酸は、カルボキシ基がアルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオンと塩を形成したり、炭素数1~10の炭化水素基または炭素数1~10のアルキルシリル基でエステル化されたものであってもよい。
【0148】
反応溶剤としては、例えば、溶剤(b)および溶剤(c)の具体例として記載した溶剤などを単独、または2種以上混合して使用することができる。反応溶剤の使用量は、テトラカルボン酸およびジアミン化合物の合計量が、反応溶液の全体の0.1~50質量%となるように調整することが好ましい。また、反応温度は、-20℃~150℃であることが好ましく、0~100℃であることがより好ましい。さらに、反応時間は、0.1~24時間であることが好ましく、0.5~12時間であることがより好ましい。また、反応で使用するジアミン化合物のモル数とテトラカルボン酸のモル数とは、等しいことが好ましい。これらが互いに等しければ、樹脂組成物から高い機械特性の樹脂膜が得られやすい。
【0149】
得られたポリアミド酸溶液は、そのまま本発明の実施の形態に係る樹脂組成物として使用してもよい。この場合、反応溶剤として樹脂組成物に使用する溶剤と同じものを用いたり、反応終了後に溶剤を添加したりすることで、樹脂を単離することなく目的の樹脂組成物を得ることができる。
【0150】
また、得られたポリアミド酸は、更にポリアミド酸の繰り返し単位の一部をイミド化させたり、エステル化させたりしてもよい。この場合、ポリアミド酸の重合で得られたポリアミド酸溶液をそのまま次の反応に用いてもよく、ポリアミド酸を単離したうえで、次の反応に用いてもよい。
【0151】
ポリアミド酸のエステル化反応およびイミド化反応においても、反応溶剤として樹脂組成物に使用する溶剤と同じものを用いたり、反応終了後に溶剤を添加したりすることで、樹脂を単離することなく、目的の樹脂組成物を得ることができる。
【0152】
イミド化する方法は、ポリアミド酸を加熱する方法、もしくは、脱水剤およびイミド化触媒を添加して必要に応じて加熱する方法であることが好ましい。後者の方法の場合、脱水剤の反応物やイミド化触媒などを除去する工程が必要になるため、前者の方法がより好ましい。
【0153】
脱水剤としては、例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸などの酸無水物を用いることができる。イミド化触媒としては、例えば、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、ピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミン等の3級アミンを用いることができる。
【0154】
脱水剤およびイミド化触媒の使用量は、イミド化させる割合に応じて適切に調整することが好ましい。イミド化に用いられる反応溶剤としては、重合反応で例示した反応溶剤を挙げることができる。
【0155】
イミド化反応の反応温度は、好しくは0℃~180℃であり、より好ましくは10℃~150℃である。反応時間は、好ましくは1.0時間~120時間であり、より好ましくは2.0時間~30時間である。反応温度や反応時間をこのような範囲で適宜調整することで、ポリアミド酸のうち所望の割合をイミド化させることができる。
【0156】
エステル化する方法は、エステル化剤を反応させる方法、もしくは、脱水縮合剤の存在下、sec-ヘキシルアルコール、シクロプロピルアルコール、シクロブチルアルコール、シクロペンチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、シクロヘプチルアルコール、シクロオクチルアルコール、ノルボルニルアルコール、アダマンチルアルコールなどを用いる方法であることが好ましい。エステル化に用いられる反応溶剤としては、重合反応で例示した反応溶剤を挙げることができる。
【0157】
エステル化反応の反応温度は、好しくは0℃~80℃であり、より好ましくは10℃~60℃である。反応時間は、好ましくは0.1時間~20時間であり、より好ましくは0.5時間~5時間である。反応温度や反応時間をこのような範囲で適宜調整することで、ポリアミド酸のうち所望の割合をエステル化させることができる。
【0158】
末端が封止された樹脂(a)を製造する場合は、末端封止剤を重合前のモノマーと反応させたり、重合中および重合後の樹脂(a)と反応させたりすることで製造することができる。例えば、前述の化学式(8)で表される構造を有する樹脂(a)は、以下の2通りの方法によって製造することができる。
【0159】
1つ目の製造方法は、以下に示す2段階の方法によって、化学式(8)で表される構造を有する樹脂を製造する方法である。具体的には、この製造方法において、1段階目では、ジアミン化合物と、ジアミン化合物のアミノ基と反応して化学式(41)で表される化合物を生成する化合物(以下、末端アミノ基封止剤と記す)とを反応させて、化学式(41)で表される化合物を生成させる。続く2段階目では、化学式(41)で表される化合物、ジアミン化合物およびテトラカルボン酸を反応させて、化学式(8)で表される構造を有する樹脂を製造する。
【0160】
【化24】
【0161】
化学式(41)中、Bは、炭素数2以上の2価のジアミン残基を示す。Zは、化学式(9)で表される構造を示す。
【0162】
2つ目の製造方法は、以下に示す2段階の方法によって、化学式(8)で表される構造を有する樹脂を製造する方法である。具体的には、この製造方法において、1段階目では、ジアミン化合物とテトラカルボン酸とを反応させて、化学式(42)で表される構造を有する樹脂を生成させる。2段階目では、化学式(42)で表される構造を有する樹脂と末端アミノ基封止剤とを反応させて、化学式(8)で表される構造を有する樹脂を製造する。
【0163】
【化25】
【0164】
化学式(42)中、Aは炭素数2以上の4価のテトラカルボン酸残基を示し、Bは炭素数2以上の2価のジアミン残基を示す。RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10の炭化水素基、炭素数1~10のアルキルシリル基、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオンまたはピリジニウムイオンを示す。
【0165】
これらの製造方法により得られたワニスは、濾過フィルターを用いて濾過し、ゴミなどの異物を除去することが好ましい。フィルター孔径は、例えば、10μm、3μm、1μm、0.5μm、0.2μm、0.1μm、0.07μm、0.05μmなどがあるが、これらに限定されない。濾過フィルターの材質には、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ナイロン(NY)、ポリテトラフルオロエチエレン(PTFE)などがあるが、ポリエチレンやナイロンが好ましい。
【0166】
(樹脂膜およびその製造方法)
次に、本発明の実施の形態に係る樹脂膜について説明する。本発明の実施の形態に係る樹脂膜は、化学式(4)で表される繰り返し単位を主成分とする樹脂膜であって、前記樹脂膜の膜厚方向における一方の面からエッチングして膜厚を半減させた第1の樹脂膜のCTE(A)と、他方の面からエッチングして膜厚を半減させた第2の樹脂膜のCTE(B)との比が、(A):(B)=1.0:1.3~1.0:2.0である、ディスプレイ基板用樹脂膜である。ここでいう「主成分」とは、樹脂を構成する全ての繰り返し単位のうち、50モル%以上を占める成分を指す。
【0167】
【化26】
【0168】
化学式(4)中、Aは、炭素数2以上の4価のテトラカルボン酸残基を示す。Bは、炭素数2以上の2価のジアミン残基を示す。
【0169】
CTE(A)とCTE(B)との比が上記範囲内であれば、樹脂膜は機械特性に優れ、樹脂膜上に積層した無機膜のクラック発生を抑制でき、耐屈曲性および信頼性に優れたディスプレイ基板を得る事ができる。
【0170】
CTE(A)およびCTE(B)は、以下の方法で求められる。まず、樹脂膜をガラス基板上に張り合わせ、樹脂膜側から酸素ガスを用いたプラズマエッチング処理を行う。エッチング処理は、前記樹脂膜の膜厚が初期値から半減するまで行う。エッチング処理後、前記樹脂膜を支持体から剥離し、後述の方法でCTEを測定する。また、ガラス基板への張り合わせ面を反対にした樹脂膜についても、同様のエッチング処理とCTE測定とを行う。測定したCTEのうち、値が小さい方をCTE(A)とし、値が大きい方をCTE(B)とする。
【0171】
なお、ここでいうCTEとは、樹脂膜の面内方向の線熱膨張係数を指し、以下の方法で求めることができる。すなわち、熱機械分析装置(例えばエスアイアイ・ナノテクノロジー社製 EXSTAR6000TMA/SS6000など)を用いて測定し、第1段階において、昇温レート5℃/minで150℃まで昇温して試料の吸着水を除去し、第2段階において降温レート5℃/minで室温まで空冷し、3段階において、昇温レート5℃/minで本測定を行った際の、50℃~150℃の温度範囲で求めた値をCTEとする。
【0172】
前記樹脂膜は、例えば、本発明の実施の形態に係る樹脂組成物、すなわち前述の樹脂(a)、溶剤(b)、および溶剤(c)を含む樹脂組成物を用いることで得る事ができる。この場合、前記樹脂膜は、化学式(4)で表される繰り返し単位を主成分とする樹脂膜であって、樹脂膜に含まれるAおよびBの合計を100質量%とした場合、SP値が15以上17以下であるテトラカルボン酸残基と、SP値が11以上13以下であるジアミン残基とが合計で95質量%以上含まれる樹脂膜である。
【0173】
以下では、本発明の実施の形態に係る樹脂膜を製造する方法について説明する。この樹脂膜の製造方法は、樹脂組成物の塗布膜を形成する膜形成工程と、この塗布膜を220℃以上の温度で加熱する加熱工程とを含む。
【0174】
膜厚形成工程では、まず、本発明の実施形態に係る樹脂組成物の一つであるワニスを支持体上に塗布する。これにより、支持体上にワニスの塗布膜を形成する。支持体としては、シリコン、ガリウムヒ素などのウェハ基板、サファイアガラス、ソーダ石灰硝子、無アルカリガラスなどのガラス基板、ステンレス、銅などの金属基板あるいは金属箔、セラミックス基板、などが挙げられる。中でも、表面平滑性、加熱時の寸法安定性の観点から、無アルカリガラスが好ましい。
【0175】
ワニスの塗布方法としては、スピン塗布法、スリット塗布法、ディップ塗布法、スプレー塗布法、印刷法などが挙げられ、これらを組み合わせてもよい。樹脂膜をディスプレイ用基板として用いる場合には、大型サイズの支持体上に塗布する必要があるため、特にスリット塗布法が好ましく用いられる。
【0176】
塗布に先立ち、支持体を予め前処理してもよい。この前処理の方法としては、例えば、前処理剤をイソプロパノール、エタノール、メタノール、水、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチル、アジピン酸ジエチルなどの溶媒に0.5~20質量%溶解させた溶液を用いて、スピンコート、スリットダイコート、バーコート、ディップコート、スプレーコート、蒸気処理などの方法で支持体表面を処理する方法が挙げられる。また、必要に応じて、減圧乾燥処理を施し、その後、50℃~300℃の熱処理により支持体と前処理剤との反応を進行させることができる。
【0177】
塗布後は、ワニスの塗布膜を乾燥させることが一般的である。乾燥方法としては、減圧乾燥や加熱乾燥、あるいはこれらを組み合わせて用いることができる。減圧乾燥の方法としては、例えば、真空チャンバー内に塗布膜を形成した支持体を置き、真空チャンバー内を減圧することで行なう。また、加熱乾燥は、ホットプレート、オーブン、赤外線などを使用して行なう。ホットプレートを用いる場合、プレート上に直接、もしくは、プレート上に設置したプロキシピン等の治具上に塗布膜を保持して加熱乾燥する。加熱温度は、ワニスに用いられる溶剤の種類や目的により様々であり、室温から180℃の範囲で1分間~数時間、加熱を行うことが好ましい。
【0178】
本発明の実施の形態に係る樹脂組成物に光酸発生剤が含まれる場合、次に説明する方法により、乾燥後の塗布膜からパターンを形成することができる。例えば、この方法では、塗布膜上に所望のパターンを有するマスクを通して化学線を照射し、露光する。露光に用いられる化学線としては、紫外線、可視光線、電子線、X線などがあるが、本発明では水銀灯のi線(365nm)、h線(405nm)、g線(436nm)を用いることが好ましい。ポジ型の感光性を有する場合、露光部が現像液に溶解する。ネガ型の感光性を有する場合、露光部が硬化し、現像液に不溶化する。
【0179】
露光後、現像液を用いて、ポジ型の場合は露光部を除去し、また、ネガ型の場合は非露光部を除去することにより、塗布膜に所望のパターンを形成する。現像液としては、ポジ型およびネガ型のいずれの場合も、テトラメチルアンモニウムなどのアルカリ性を示す化合物の水溶液が好ましい。また、場合によっては、これらのアルカリ水溶液にN-メチル-2-ピロリドンなどの極性溶媒、アルコール類、エステル類、ケトン類などを単独あるいは数種を組み合わせたものを添加してもよい。
【0180】
最後に、支持体上の塗布膜を加熱処理して樹脂膜を製造する加熱工程が行われる。この加熱工程では、180℃以上600℃以下、好ましくは220℃以上600℃以下の範囲で塗布膜を加熱処理し、この塗布膜を焼成する。これにより、樹脂膜を製造することができる。加熱温度が220℃以上であれば、イミド化が十分に進行し、機械特性に優れた樹脂膜が得られる。
【0181】
以上の膜形成工程および加熱工程を経て得られた樹脂膜は、支持体から剥離して用いることができるし、あるいは、支持体から剥離せずに、そのまま用いることもできる。
【0182】
剥離方法の例としては、機械的な剥離方法、水に浸漬する方法、塩酸やフッ酸などの薬液に浸漬する方法、紫外光から赤外光の波長範囲のレーザー光をポリイミド樹脂組成物の膜状物と基板の界面に照射する方法などが挙げられる。特に、ポリイミド樹脂組成物の膜状物(樹脂膜)の上にデバイスを作成してから剥離を行う場合は、デバイスへ損傷を与えることなく剥離を行う必要があるため、紫外光のレーザーを用いた剥離が好ましい。なお、剥離を容易にするために、ワニス等の樹脂組成物を支持体へ塗布する前に、支持体に離型剤を塗布したり犠牲層を製膜したりしておいてもよい。離型剤としては、シリコーン系、フッ素系、芳香族高分子系、アルコキシシラン系等が挙げられる。犠牲層としては、金属膜、金属酸化物膜、アモルファスシリコン膜等が挙げられる。
【0183】
本発明の実施の形態に係る樹脂膜は、有機ELディスプレイ用基板、液晶ディスプレイ用基板、マイクロLEDディスプレイ用基板、フレキシブルカラーフィルタ用基板、フレキシブル電子ペーパー用基板、フレキシブルタッチパネル用基板などのディスプレイ用基板として好適に用いられる。これらの用途において、樹脂膜の好ましい引張り伸度および引張り最大応力は、それぞれ20%以上、200MPa以上である。
【0184】
本発明における樹脂膜の膜厚は、特に限定されるものではないが、3μm以上であることが好ましい。より好ましくは5μm以上であり、さらに好ましくは7μm以上である。また、樹脂膜の膜厚は、30μm以下であることが好ましい。より好ましくは25μm以下であり、さらに好ましくは20μm以下である。樹脂膜の膜厚が3μm以上であれば、ディスプレイ用基板として十分な機械特性が得られる。また、樹脂膜の膜厚が30μm以下であれば、ディスプレイ用基板として十分な靭性が得られる。
【0185】
(積層体およびその製造方法)
次に、本発明の実施の形態に係る積層体について説明する。本発明の実施の形態に係る積層体は、本発明の実施の形態に係る樹脂膜と、無機膜とからなる積層体である。この積層体は、以下に示す構成を有することが好ましい。すなわち、この積層体において、前記樹脂膜が前記無機膜に接する面は、前記樹脂膜の膜厚方向における一方の面からエッチングして膜厚を半減させた第1の樹脂膜と、他方の面からエッチングして膜厚を半減させた第2の樹脂膜とのうち、CTEが小さい方の樹脂膜を得るためにエッチングされた側の面(以下、面Eと呼ぶ)である。この積層体は、樹脂膜と無機膜とが積層されているため、ディスプレイ基板の外部から水分や酸素が樹脂膜を通過して画素駆動素子や発光素子の劣化を引き起こすのを防ぐことができる。また、無機膜にクラックが入りにくいため、耐屈曲性および信頼性に優れたディスプレイ基板を得る事ができる。この積層体に含まれる樹脂膜は、本発明の実施の形態に係る樹脂組成物から得られた樹脂膜であることが好ましい。以下、本発明の実施の形態に係る積層体は、「積層体」と適宜略記される。
【0186】
以下では、本発明の実施の形態に係る積層体を製造する方法を説明する。この積層体の製造方法では、まず、前述の樹脂膜の製造方法に従って膜形成工程および加熱工程を行い、これにより、本発明の実施の形態に係る樹脂膜を支持体上に製造する。このとき、前述の面Eは、樹脂膜の表面側となる。つづいて、樹脂膜の上に無機膜を設けることで、本発明の実施の形態に係る積層体が得られる。前記無機膜としては、例えば、ケイ素酸化物(SiOx)、ケイ素窒化物(SiNy)、ケイ素酸窒化物(SiOxNy)などが挙げられる。これらは、単層、あるいは複数の種類を積層して用いることができる。また、これらの無機膜は、例えば、ポリビニルアルコールなどの有機膜と交互に積層して用いることもできる。これらの無機膜の成膜方法は、化学気相成長法(CVD)や物理気相成長法(PVD)などの蒸着法を用いて行われることが好ましい。
【0187】
また、積層体の製造方法では、必要に応じて、前記無機膜の上に、更に樹脂膜と無機膜とからなる積層体を形成してもよい。積層体を複数層形成することで、より信頼性に優れたディスプレイ基板を得る事ができる。積層体を複数層形成する場合、これら複数層の積層体のうち少なくとも一つの積層体が、本発明の実施の形態に係る積層体であれば良い。なお、プロセスの簡略化の観点から、これら複数層の積層体に含まれる各樹脂膜は、同一の樹脂膜であることがより好ましい。
【0188】
(画像表示装置およびその製造方法)
次に、本発明の実施の形態に係る画像表示装置について説明する。本発明の実施の形態に係る画像表示装置は、本発明の実施の形態に係る樹脂膜または積層体を備える。
【0189】
以下では、本発明の実施の形態に係る画像表示装置を製造する方法を説明する。この画像表示装置の製造方法は、少なくとも上述の膜形成工程と加熱工程とを含み、さらに、ディスプレイ基板用樹脂膜の上に画像表示素子を形成する素子形成工程を含むものである。この画像表示装置の製造方法では、まず、前述の樹脂膜または積層体の製造方法に従って膜形成工程および加熱工程等を行い、これにより、本発明の実施の形態に係る樹脂膜または積層体を支持体上に製造する。
【0190】
つづいて、素子形成工程では、上記のように得られた樹脂膜または積層体上に、目的の画像表示装置に応じた画像表示素子を形成する。例えば、画像表示装置が有機ELディスプレイである場合、画像駆動素子であるTFT、第一電極、発光素子、第二電極、封止膜を順に形成することにより、目的の画像表示素子として有機EL素子が形成される。画像表示装置が液晶ディスプレイである場合、画像駆動素子であるTFT、第一電極、第一配向膜を形成した第一基板と、第二電極、第二配向膜を形成した第二基板を用いて液晶セルを形成し、液晶を注入することにより、目的の画像表示素子が形成される。カラーフィルターの場合、必要に応じてブラックマトリックスを形成した後、赤、緑、青などの着色画素を形成することにより、目的の画像表示素子が形成される。タッチパネル用基板の場合、配線層と絶縁層とが樹脂膜または積層体上に形成される。
【0191】
最後に、支持体から樹脂膜または積層体を剥離し、剥離した樹脂膜または積層体(いずれも目的の画像表示素子が形成されたもの)を用いることにより、樹脂膜または積層体を備える画像表示装置または有機ELディスプレイが得られる。支持体と樹脂膜または積層体との界面で剥離する方法には、レーザーを用いる方法、機械的な剥離方法、支持体をエッチングする方法などが挙げられる。レーザーを用いる方法では、ガラス基板などの支持体に対し、素子が形成されていない側からレーザーを照射することで、素子にダメージを与えることなく、剥離を行うことができる。また、剥離しやすくするためのプライマー層を、支持体と樹脂膜または積層体との間に設けても構わない。
【実施例
【0192】
以下、実施例等をあげて本発明を説明するが、本発明は、下記の実施例等によって限定されるものではない。まず、下記の実施例および比較例で行った測定、評価および試験等について説明する。
【0193】
(第1項目:樹脂組成物の粘度変化率の測定)
第1項目では、樹脂組成物の粘度変化率の測定について説明する。樹脂組成物の粘度変化率の測定では、後述する各合成例で得られたワニスを、クリーンボトル(アイセロ社製)に入れて、23℃で60日間保管した。保管前後のワニスを用いて、粘度の測定を行い、下式に従って粘度変化率を求めた。なお、粘度は、粘度計(東機産業社製、TVE-22H)を用いて、25℃における値を測定した。
粘度変化率(%)=(保管後の粘度-保管前の粘度)/保管前の粘度×100
【0194】
(第2項目:樹脂膜の引張り伸度、引張り最大応力の測定)
第2項目では、樹脂膜の引張り伸度および引張り最大応力の測定について説明する。樹脂膜の引張り伸度および引張り最大応力の測定では、後述する各実施例で得られた樹脂膜を用いて、テンシロン万能材料試験機(オリエンテック社製 RTM-100)を用い、日本工業規格(JIS K 7127:1999)に従って測定を行った。測定条件としては、試験片の幅を10mmとし、チャック間隔を50mmとし、試験速度を50mm/minとし、測定数n=10とした。
【0195】
(第3項目:樹脂膜のCTEの測定)
第3項目では、樹脂膜のCTEの測定について説明する。樹脂膜のCTEの測定では、後述する各実施例で得られた樹脂膜を用いて、熱機械分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製 EXSTAR6000TMA/SS6000)を用い、測定を実施した。第1段階で昇温レート5℃/minで150℃まで昇温して試料の吸着水を除去し、第2段階で降温レート5℃/minで室温まで空冷した。第3段階で、昇温レート5℃/minで本測定を行った。目的とする樹脂膜のCTEは、本測定の50℃~150℃の温度範囲で求めた。
【0196】
(第4項目:樹脂膜のCTE(A)およびCTE(B)の測定)
第4項目では、樹脂膜のCTE(A)およびCTE(B)の測定について説明する。CTE(A)およびCTE(B)の測定では、後述する各実施例で得られた樹脂膜をガラス基板に張り合わせ、プラズマエッチング処理により膜厚を半減させた樹脂膜のCTEと、他方の面から同様の処理を行った樹脂膜のCTEとを、上記第3項目の方法で測定した。得られた各CTEの測定値のうち、値が小さいものをCTE(A)とし、値が大きいものをCTE(B)とした。なお、全ての実施例において、成膜時の表面側からエッチングした樹脂膜のCTEがCTE(A)であった。
【0197】
(第5項目:樹脂膜の面内均一性の測定)
第5項目では、樹脂膜の面内均一性の測定について説明する。樹脂膜の面内均一性の測定では、後述する各実施例で得られた、ガラス基板(縦350mm×横300mm)の上に焼成後の膜厚が10μmになるように形成した樹脂膜について、樹脂膜の端から10mm以上内側のエリアの部分を、膜厚測定装置(スクリーン社製、RE-8000)を用いて、縦方向は30mmおきに、横方向は20mmおきに、合計180ヶ所の樹脂膜の膜厚を測定した。測定した膜厚から、膜厚の相加平均を求め、膜厚の平均値とした。さらに、下式に従って、樹脂膜の面内均一性を求めた。
面内均一性(%)=(膜厚の最大値-膜厚の最小値)/(膜厚の平均値)×100
【0198】
(第6項目:樹脂膜と無機膜との積層体の折り曲げ試験)
第6項目では、樹脂膜と無機膜との積層体の折り曲げ試験について説明する。この積層体の折り曲げ試験では、後述する各実施例で得られた樹脂膜と無機膜との積層体を用いて、以下の手法で試験を実施した。まず、ガラス基板から剥離した積層体を100mm×140mmにサンプリングし、直径10mmの金属円柱を、サンプルの樹脂膜面上の中央部に、サンプルの短辺と平行になるように固定した。この円柱に沿って、サンプルを円柱の抱き角0°(サンプルが平面の状態)の状態に置き、円柱への抱き角が180°(円柱で折り返した状態)となる範囲で、無機膜面が外側になるようにサンプルの10回折り曲げ動作を行った。曲げ動作後に、光学顕微鏡(Nikon社製、OPTIPHOT300)を用いて、サンプルの無機膜におけるクラック発生の有無を目視で観察した。折り曲げ回数が1回でクラックが発生したものを評価レベルDとし、2~3回で発生したものを評価レベルCとし、4~6回で発生したものを評価レベルBとし、7~9回で発生したものを評価レベルAとし、10回で発生しなかったものを評価レベルSとした。評価レベルS~Dは、折り曲げ試験結果の良好さを示すものである。評価レベルS~Dのうち、Sが「最良」を意味し、A、B、C、Dは、この順に折り曲げ試験結果の悪化を意味する。この評価レベルS~Dの意味は、他の評価結果および試験結果についても同様である。
【0199】
(第7項目:樹脂(a)のイミド化率の測定および「(2r+q)/(2p+2q+2r)」の値の算出)
第7項目では、樹脂(a)のイミド化率の測定および「(2r+q)/(2p+2q+2r)」の値の算出について説明する。これらの測定および算出では、後述する各合成例で得られた樹脂(a)について、核磁気共鳴装置(日本電子社製 EX-270)を用いてH-NMRスペクトルを測定した。測定試料は、各合成例で得られたワニスを重溶媒(重ジメチルスルホキシド)に希釈したものを用いた。次に、樹脂組成物成分のジアミン残基およびテトラカルボン酸残基に含まれる全てのHのピークの積分値(αとする)を求めた。つづいて、樹脂(a)のアミド基のHのピークの積分値(εとする)を求めた。これらの値を用いて、樹脂組成物成分に含まれる樹脂(a)のイミド化率を測定した。
イミド化率=(β-ε)/β×100
ただし、β=α/ω×2であり、ωはαを求めたときの対象とした水素原子の数である。
【0200】
次に、樹脂(a)に含まれる化学式(1)で表される繰り返し単位のモル数、化学式(3)で表される繰り返し単位のモル数および化学式(4)で表される繰り返し単位のモル数を各々p、q、rとしたときの、「(2r+q)/(2p+2q+2r)」の値を、前述の通り下記式で算出した。
(2r+q)/(2p+2q+2r)=イミド化率/100
【0201】
(第8項目:有機ELディスプレイの信頼性評価)
第8項目では、有機ELディスプレイの信頼性評価について説明する。有機ELディスプレイの信頼性評価では、後述する各実施例で得られた樹脂膜を含むディスプレイ基板を具備する有機ELディスプレイを、駆動回路を介して電圧を印加し発光させた。次に、有機ELディスプレイを、上記第6項目と同様の方法で、発光面が外側になるように1回折り曲げ動作を行った状態で再度発光させ、ダークスポットと呼ばれる非発光部の発生状況を観察した。この時、ダークスポットが発生したものを評価レベルDとした。ダークスポットが発生しなかった場合は、有機ELディスプレイを折り曲げた状態で85℃85%RHの環境下に数日間放置し、その後、この有機ELディスプレイを再度発光させ、ダークスポットの発生状況を観察した。85℃85%RHの環境下の放置日数が7日以上でもダークスポットが発生しなかったものを評価レベルSとし、4~6日で発生したものを評価レベルAとし、2~3日で発生したものを評価レベルBとし、1日で発生したものを評価レベルCとした。
【0202】
(化合物)
実施例および比較例では、下記に示す化合物が適宜使用される。実施例および比較例で適宜使用される化合物および略称は、以下に示す通りである。なお、テトラカルボン酸二無水物のSP値は、同一のテトラカルボン酸残基を有するテトラカルボン酸のSP値を記載する。
BPDA:3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(SP値:15.2)
PMDA:ピロメリット酸二無水物(SP値:16.3)
HPMDA:1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(SP値:14.3)
NTCDA:2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(SP値:15.9)
ODPA:ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物(SP値:15.2)
BTDA:3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(SP値:15.5)
PYDA:2,3,5,6-ピリジンテトラカルボン酸二無水物(SP値:17.3)
6FDA:2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(SP値:13.4)
BSAA:2,2-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物(SP値:13.4)
PDA:p-フェニレンジアミン(SP値:12.3)
TFMB:2,2’-ジ(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル(SP値:11.3)
DAE:4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(SP値:12.3)
mTB:2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル(SP値:11.7)
DABA:4,4’-ジアミノベンズアニリド(SP値:13.8)
CHDA:trans-1,4-シクロヘキサンジアミン(SP値:10.4)
HFHA:2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(SP値:14.3)
SiDA:ジ(アミノプロピルジメチル)シロキサン(SP値:8.6)
DIBOC:二炭酸ジ-tert-ブチル
DMSO:ジメチルスルホキシド(SP値:13.2、沸点:189℃)
DMPU:N,N’-ジメチルプロピレン尿素(SP値:9.7、沸点:220℃)
DMIB:N,N-ジメチルイソブチルアミド(SP値:9.9、沸点:175℃)
DMI:1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(SP値:9.9、沸点:204℃)
GBL:γ-ブチロラクトン(SP値:9.9、沸点:204℃)
EL:乳酸エチル(SP値:11.0、沸点:154℃)
MPA:3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド(SP値:10.3、沸点:216℃)
CHN:シクロヘキサノン(SP値:9.8、沸点:156℃)
NMP:N-メチル-2-ピロリドン(SP値:11.5、沸点:204℃)
PMA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(SP値:8,7、沸点:146℃)
DPMA:ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(SP値:8.7、沸点:213℃)
アニソール:(SP値:9.4、沸点:154℃)
MMBAc:3-メトキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート(SP値:8.5、沸点:188℃)
DPDM:ジプロピレングリコールジメチルエーテル(SP値:7.9、沸点:171℃)
EEA:エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(SP値:8.9、沸点:145℃)
トルエン:(SP値:9.1、沸点:111℃)
MBA:3-メトキシブチルアセテート(SP値:8.7、沸点:171℃)
TMSO:テトラメチレンスルホキシド(SP値:14.8、沸点:236℃)
ヘプタン:(SP値:7.4、沸点:98℃)
【0203】
(合成例1)
合成例1のワニスについて説明する。合成例1では、300mL4つ口フラスコに、温度計、撹拌羽根付き撹拌棒をセットした。次に、乾燥窒素気流下、DMSO(119g)と、PMA(51g)とを投入し、40℃に昇温した。昇温後、撹拌しながらPDA(8.01g(74.0mmol))を投入し、溶解したことを確認したのち、DIBOC(0.65g(3.0mmol))を投入した。1時間攪拌した後、BPDA(21.35g(72.6mmol))を投入し、60℃に昇温した。4時間攪拌した後、モレキュラーシーブ4A(10g)を加え、90℃に昇温して6時間攪拌した。反応溶液を室温まで冷却した後、粘度が約2000cPになるように、重合に使用した溶剤と同じ組成の溶剤で希釈し、フィルター孔径0.2μmのフィルターで濾過してワニスを得た。
【0204】
(合成例2)
合成例2のワニスについて説明する。合成例2では、300mL4つ口フラスコに、温度計、撹拌羽根付き撹拌棒をセットした。次に、乾燥窒素気流下、DMSO(119g)と、PMA(51g)とを投入し、60℃に昇温した。昇温後、撹拌しながらPDA(8.18g(75.7mmol))と、BPDA(21.82g(74.2mmol))とを投入した。4時間攪拌した後、モレキュラーシーブ4A(10g)を加え、90℃に昇温して6時間攪拌した。反応溶液を室温まで冷却した後、粘度が約2000cPになるように、重合に使用した溶剤と同じ組成の溶剤で希釈し、フィルター孔径0.2μmのフィルターで濾過してワニスを得た。
【0205】
(合成例3)
合成例3のワニスについて説明する。合成例3では、300mL4つ口フラスコに、温度計、撹拌羽根付き撹拌棒をセットした。次に、乾燥窒素気流下、DMSO(119g)と、PMA(51g)とを投入し、40℃に昇温した。昇温後、撹拌しながらPDA(9.81g(90.7mmol))を投入し、溶解したことを確認したのち、DIBOC(0.79g(3.6mmol))を投入した。1時間攪拌した後、PMDA(19.40g(88.9mmol))を投入し、60℃に昇温した。4時間攪拌した後、モレキュラーシーブ4A(10g)を加え、90℃に昇温して6時間攪拌した。反応溶液を室温まで冷却した後、粘度が約2000cPになるように、重合に使用した溶剤と同じ組成の溶剤で希釈し、フィルター孔径0.2μmのフィルターで濾過してワニスを得た。
【0206】
(合成例4)
合成例4のワニスについて説明する。合成例4では、300mL4つ口フラスコに、温度計、撹拌羽根付き撹拌棒をセットした。次に、乾燥窒素気流下、DMSO(119g)と、PMA(51g)とを投入し、40℃に昇温した。昇温後、撹拌しながらPDA(8.80g(81.4mmol))を投入し、溶解したことを確認したのち、DIBOC(0.71g(3.3mmol))を投入した。1時間攪拌した後、BPDA(11.97g(40.7mmol))と、PMDA(8.52g(39.1mmol))とを投入し、60℃に昇温した。4時間攪拌した後、モレキュラーシーブ4A(10g)を加え、90℃に昇温して6時間攪拌した。反応溶液を室温まで冷却した後、粘度が約2000cPになるように、重合に使用した溶剤と同じ組成の溶剤で希釈し、フィルター孔径0.2μmのフィルターで濾過してワニスを得た。
【0207】
(合成例5)
合成例5のワニスについて説明する。合成例5では、300mL4つ口フラスコに、温度計、撹拌羽根付き撹拌棒をセットした。次に、乾燥窒素気流下、DMSO(119g)と、PMA(51g)とを投入し、40℃に昇温した。昇温後、撹拌しながらPDA(5.80g(53.6mmol))と、TFMB(4.28g(13.4mmol))とを投入し、溶解したことを確認したのち、DIBOC(0.59g(2.7mmol))を投入した。1時間攪拌した後、BPDA(19.33g(65.7mmol))を投入し、60℃に昇温した。4時間攪拌した後、モレキュラーシーブ4A(10g)を加え、90℃に昇温して6時間攪拌した。反応溶液を室温まで冷却した後、粘度が約2000cPになるように、重合に使用した溶剤と同じ組成の溶剤で希釈し、フィルター孔径0.2μmのフィルターで濾過してワニスを得た。
【0208】
(合成例6)
合成例6のワニスについて説明する。合成例6では、300mL4つ口フラスコに、温度計、撹拌羽根付き撹拌棒をセットした。次に、乾燥窒素気流下、DMSO(119g)と、PMA(51g)とを投入し、40℃に昇温した。昇温後、撹拌しながらPDA(8.01g(74.0mmol))を投入し、溶解したことを確認したのち、DIBOC(0.65g(3.0mmol))を投入した。1時間攪拌した後、BPDA(21.35g(72.6mmol))を投入し、60℃に昇温した。4時間攪拌した後、モレキュラーシーブ4A(10g)を加え、110℃に昇温して6時間攪拌した。反応溶液を室温まで冷却した後、粘度が約2000cPになるように、重合に使用した溶剤と同じ組成の溶剤で希釈し、フィルター孔径0.2μmのフィルターで濾過してワニスを得た。
【0209】
(合成例7)
合成例7のワニスについて説明する。合成例7では、300mL4つ口フラスコに、温度計、撹拌羽根付き撹拌棒をセットした。次に、乾燥窒素気流下、DMSO(119g)と、PMA(51g)とを投入し、40℃に昇温した。昇温後、撹拌しながらPDA(8.01g(74.0mmol))を投入し、溶解したことを確認したのち、DIBOC(0.65g(3.0mmol))を投入した。1時間攪拌した後、BPDA(21.35g(72.6mmol))を投入し、60℃に昇温した。4時間攪拌した後、モレキュラーシーブ4A(10g)を加え、110℃に昇温して4時間攪拌した。反応溶液を室温まで冷却した後、粘度が約2000cPになるように、重合に使用した溶剤と同じ組成の溶剤で希釈し、フィルター孔径0.2μmのフィルターで濾過してワニスを得た。
【0210】
(合成例8)
合成例8のワニスについて説明する。合成例8では、300mL4つ口フラスコに、温度計、撹拌羽根付き撹拌棒をセットした。次に、乾燥窒素気流下、DMSO(119g)と、PMA(51g)とを投入し、40℃に昇温した。昇温後、撹拌しながらPDA(8.01g(74.0mmol))を投入し、溶解したことを確認したのち、DIBOC(0.65g(3.0mmol))を投入した。1時間攪拌した後、BPDA(21.35g(72.6mmol))を投入し、60℃に昇温した。10時間攪拌した後、反応溶液を室温まで冷却した後、粘度が約2000cPになるように、重合に使用した溶剤と同じ組成の溶剤で希釈し、フィルター孔径0.2μmのフィルターで濾過してワニスを得た。
【0211】
(合成例9)
合成例9のワニスについて説明する。合成例9では、300mL4つ口フラスコに、温度計、撹拌羽根付き撹拌棒をセットした。次に、乾燥窒素気流下、DMSO(119g)と、PMA(51g)とを投入し、40℃に昇温した。昇温後、撹拌しながらPDA(8.01g(74.0mmol))を投入し、溶解したことを確認したのち、DIBOC(0.65g(3.0mmol))を投入した。1時間攪拌した後、BPDA(21.35g(72.6mmol))を投入し、60℃に昇温した。4時間攪拌した後、モレキュラーシーブ4A(10g)を加え、70℃に昇温して6時間攪拌した。反応溶液を室温まで冷却した後、粘度が約2000cPになるように、重合に使用した溶剤と同じ組成の溶剤で希釈し、フィルター孔径0.2μmのフィルターで濾過してワニスを得た。
【0212】
(合成例10)
合成例10のワニスについて説明する。合成例10では、300mL4つ口フラスコに、温度計、撹拌羽根付き撹拌棒をセットした。次に、乾燥窒素気流下、DMSO(153g)と、DPMA(17g)とを投入し、40℃に昇温した。昇温後、撹拌しながらPDA(8.01g(74.0mmol))を投入し、溶解したことを確認したのち、DIBOC(0.65g(3.0mmol))を投入した。1時間攪拌した後、BPDA(21.35g(72.6mmol))を投入し、60℃に昇温した。4時間攪拌した後、モレキュラーシーブ4A(10g)を加え、90℃に昇温して6時間攪拌した。反応溶液を室温まで冷却した後、粘度が約2000cPになるように、重合に使用した溶剤と同じ組成の溶剤で希釈し、フィルター孔径0.2μmのフィルターで濾過してワニスを得た。
【0213】
(合成例11)
合成例11のワニスについて説明する。合成例11では、PMAをアニソールに変更したこと以外は、合成例1と同様にして、ワニスを得た。
【0214】
(合成例12)
合成例12のワニスについて説明する。合成例12では、DMSOをDMPUに変更したこと以外は、合成例1と同様にして、ワニスを得た。
【0215】
(合成例13)
合成例13のワニスについて説明する。合成例13では、DMSOの重量を165gに変更し且つPMAの重量を5gに変更したこと以外は、合成例1と同様にして、ワニスを得た。
【0216】
(合成例14)
合成例14のワニスについて説明する。合成例14では、DMSOの重量を153gに変更し且つPMAの重量を17gに変更したこと以外は、合成例1と同様にして、ワニスを得た。
【0217】
(合成例15)
合成例15のワニスについて説明する。合成例15では、DMSOの重量を60gに変更し且つPMAの重量を110gに変更したこと以外は、合成例1と同様にして、ワニスを得た。
【0218】
(合成例16)
合成例16のワニスについて説明する。合成例16では、DMSOの重量を85gに変更し且つPMAの重量を85gに変更したこと以外は、合成例1と同様にして、ワニスを得た。
【0219】
(合成例17)
合成例17のワニスについて説明する。合成例17では、PMAをMMBAcに変更したこと以外は、合成例1と同様にして、ワニスを得た。
【0220】
(合成例18)
合成例18のワニスについて説明する。合成例18では、PMAをDPDMに変更したこと以外は、合成例1と同様にして、ワニスを得た。
【0221】
(合成例19)
合成例19のワニスについて説明する。合成例19では、300mL4つ口フラスコに、温度計、撹拌羽根付き撹拌棒をセットした。次に、乾燥窒素気流下、DMSO(119g)と、PMA(51g)とを投入し、40℃に昇温した。昇温後、撹拌しながらPDA(8.15g(75.3mmol))を投入し、溶解したことを確認したのち、DIBOC(0.66g(3.0mmol))を投入した。1時間攪拌した後、BPDA(19.51g(66.3mmol))と、HPMDA(1.69g(7.5mmol))とを投入し、60℃に昇温した。4時間攪拌した後、モレキュラーシーブ4A(10g)を加え、90℃に昇温して6時間攪拌した。反応溶液を室温まで冷却した後、粘度が約2000cPになるように、重合に使用した溶剤と同じ組成の溶剤で希釈し、フィルター孔径0.2μmのフィルターで濾過してワニスを得た。
【0222】
(合成例20)
合成例20のワニスについて説明する。合成例20では、300mL4つ口フラスコに、温度計、撹拌羽根付き撹拌棒をセットした。次に、乾燥窒素気流下、DMSO(119g)と、PMA(51g)とを投入し、40℃に昇温した。昇温後、撹拌しながらPDA(8.11g(75.0mmol))を投入し、溶解したことを確認したのち、DIBOC(0.66g(3.0mmol))を投入した。1時間攪拌した後、NTCDA(10.06g(37.5mmol))と、ODPA(11.17g(36.0mmol))とを投入し、60℃に昇温した。4時間攪拌した後、モレキュラーシーブ4A(10g)を加え、90℃に昇温して6時間攪拌した。反応溶液を室温まで冷却した後、粘度が約2000cPになるように、重合に使用した溶剤と同じ組成の溶剤で希釈し、フィルター孔径0.2μmのフィルターで濾過してワニスを得た。
【0223】
(合成例21)
合成例21のワニスについて説明する。合成例21では、300mL4つ口フラスコに、温度計、撹拌羽根付き撹拌棒をセットした。次に、乾燥窒素気流下、DMSO(119g)と、PMA(51g)とを投入し、40℃に昇温した。昇温後、撹拌しながらPDA(8.00g(74.0mmol))を投入し、溶解したことを確認したのち、DIBOC(0.65g(3.0mmol))を投入した。1時間攪拌した後、NTCDA(9.92g(37.0mmol))と、BTDA(11.44g(35.5mmol))とを投入し、60℃に昇温した。4時間攪拌した後、モレキュラーシーブ4A(10g)を加え、90℃に昇温して6時間攪拌した。反応溶液を室温まで冷却した後、粘度が約2000cPになるように、重合に使用した溶剤と同じ組成の溶剤で希釈し、フィルター孔径0.2μmのフィルターで濾過してワニスを得た。
【0224】
(合成例22)
合成例22のワニスについて説明する。合成例22では、300mL4つ口フラスコに、温度計、撹拌羽根付き撹拌棒をセットした。次に、乾燥窒素気流下、DMSO(119g)と、PMA(51g)とを投入し、40℃に昇温した。昇温後、撹拌しながらDAE(12.08g(60.3mmol))を投入し、溶解したことを確認したのち、DIBOC(0.53g(2.4mmol))を投入した。1時間攪拌した後、BPDA(17.39g(59.1mmol))を投入し、60℃に昇温した。4時間攪拌した後、モレキュラーシーブ4A(10g)を加え、90℃に昇温して6時間攪拌した。反応溶液を室温まで冷却した後、粘度が約2000cPになるように、重合に使用した溶剤と同じ組成の溶剤で希釈し、フィルター孔径0.2μmのフィルターで濾過してワニスを得た。
【0225】
(合成例23)
合成例23のワニスについて説明する。合成例23では、300mL4つ口フラスコに、温度計、撹拌羽根付き撹拌棒をセットした。次に、乾燥窒素気流下、DMSO(119g)と、PMA(51g)とを投入し、40℃に昇温した。昇温後、撹拌しながらmTB(12.50g(58.9mmol))を投入し、溶解したことを確認したのち、DIBOC(0.51g(2.4mmol))を投入した。1時間攪拌した後、BPDA(16.98g(57.7mmol))を投入し、60℃に昇温した。4時間攪拌した後、モレキュラーシーブ4A(10g)を加え、90℃に昇温して6時間攪拌した。反応溶液を室温まで冷却した後、粘度が約2000cPになるように、重合に使用した溶剤と同じ組成の溶剤で希釈し、フィルター孔径0.2μmのフィルターで濾過してワニスを得た。
【0226】
(合成例24)
合成例24のワニスについて説明する。合成例24では、300mL4つ口フラスコに、温度計、撹拌羽根付き撹拌棒をセットした。次に、乾燥窒素気流下、DMSO(119g)と、PMA(51g)とを投入し、40℃に昇温した。昇温後、撹拌しながらDAE(12.73g(63.6mmol))を投入し、溶解したことを確認したのち、DIBOC(0.56g(2.5mmol))を投入した。1時間攪拌した後、NTCDA(16.71g(62.3mmol))を投入し、60℃に昇温した。4時間攪拌した後、モレキュラーシーブ4A(10g)を加え、90℃に昇温して6時間攪拌した。反応溶液を室温まで冷却した後、粘度が約2000cPになるように、重合に使用した溶剤と同じ組成の溶剤で希釈し、フィルター孔径0.2μmのフィルターで濾過してワニスを得た。
【0227】
(合成例25)
合成例25のワニスについて説明する。合成例25では、DMSOをDMIBに変更したこと以外は、合成例1と同様にして、ワニスを得た。
【0228】
(合成例26)
合成例26のワニスについて説明する。合成例26では、DMSOをDMIに変更したこと以外は、合成例1と同様にして、ワニスを得た。
【0229】
(合成例27)
合成例27のワニスについて説明する。合成例27では、DMSO(119g)とPMA(51g)とを投入する代わりに、DMI(60g)と、GBL(20g)と、PMA(20g)とを投入したこと以外は、合成例1と同様にして、ワニスを得た。
【0230】
(合成例28)
合成例28のワニスについて説明する。合成例28では、GBLをELに変更したこと以外は、合成例27と同様にして、ワニスを得た。
【0231】
(合成例29)
合成例29のワニスについて説明する。合成例29では、GBLをMPAに変更したこと以外は、合成例27と同様にして、ワニスを得た。
【0232】
(合成例30)
合成例30のワニスについて説明する。合成例30では、GBLをCHNに変更したこと以外は、合成例27と同様にして、ワニスを得た。
【0233】
(合成例31)
合成例31のワニスについて説明する。合成例31では、PMAをEEAに変更したこと以外は、合成例1と同様にして、ワニスを得た。
【0234】
(合成例32)
合成例32のワニスについて説明する。合成例32では、PMAをトルエンに変更したこと以外は、合成例1と同様にして、ワニスを得た。
【0235】
(合成例33)
合成例33のワニスについて説明する。合成例33では、PMAをMBAに変更したこと以外は、合成例1と同様にして、ワニスを得た。
【0236】
(合成例34)
合成例34のワニスについて説明する。合成例34では、DMSOの重量を170gに変更し且つPMAの重量を0gに変更したこと以外は、合成例1と同様にして、ワニスを得た。
【0237】
(合成例35)
合成例35のワニスについて説明する。合成例35では、PMAをNMPに変更したこと以外は、合成例1と同様にして、ワニスを得た。
【0238】
(合成例36)
合成例36のワニスについて説明する。合成例36では、DMSOをPMAに変更したこと以外は、合成例34と同様にして、ワニスを得た。
【0239】
(合成例37)
合成例37のワニスについて説明する。合成例37では、DMSOをMMBAcに変更したこと以外は、合成例1と同様にして、ワニスを得た。
【0240】
(合成例38)
合成例38のワニスについて説明する。合成例38では、DMSOをTMSOに変更したこと以外は、合成例1と同様にして、ワニスを得た。
【0241】
(合成例39)
合成例39のワニスについて説明する。合成例39では、PMAをヘプタンに変更したこと以外は、合成例1と同様にして、ワニスを得た。
【0242】
(合成例40)
合成例40のワニスについて説明する。合成例40では、300mL4つ口フラスコに、温度計、撹拌羽根付き撹拌棒をセットした。次に、乾燥窒素気流下、DMSO(119g)と、PMA(51g)とを投入し、40℃に昇温した。昇温後、撹拌しながらPDA(8.31g(76.9mmol))を投入し、溶解したことを確認したのち、DIBOC(0.67g(3.1mmol))を投入した。1時間攪拌した後、BPDA(17.64g(60.0mmol))と、PYDA(3.37g(15.4mmol))とを投入し、60℃に昇温した。4時間攪拌した後、モレキュラーシーブ4A(10g)を加え、90℃に昇温して6時間攪拌した。反応溶液を室温まで冷却した後、粘度が約2000cPになるように、重合に使用した溶剤と同じ組成の溶剤で希釈し、フィルター孔径0.2μmのフィルターで濾過してワニスを得た。
【0243】
(合成例41)
合成例41のワニスについて説明する。合成例41では、300mL4つ口フラスコに、温度計、撹拌羽根付き撹拌棒をセットした。次に、乾燥窒素気流下、DMSO(119g)と、PMA(51g)とを投入し、40℃に昇温した。昇温後、撹拌しながらPDA(8.29g(76.7mmol))を投入し、溶解したことを確認したのち、DIBOC(0.67g(3.1mmol))を投入した。1時間攪拌した後、BPDA(17.60g(59.8mmol))と、HPMDA(3.44g(15.3mmol))とを投入し、60℃に昇温した。4時間攪拌した後、モレキュラーシーブ4A(10g)を加え、90℃に昇温して6時間攪拌した。反応溶液を室温まで冷却した後、粘度が約2000cPになるように、重合に使用した溶剤と同じ組成の溶剤で希釈し、フィルター孔径0.2μmのフィルターで濾過してワニスを得た。
【0244】
(合成例42)
合成例42のワニスについて説明する。合成例42では、300mL4つ口フラスコに、温度計、撹拌羽根付き撹拌棒をセットした。次に、乾燥窒素気流下、DMSO(119g)と、PMA(51g)とを投入し、40℃に昇温した。昇温後、撹拌しながらPDA(7.00g(64.7mmol))と、DABA(1.63g(7.2mmol))とを投入し、溶解したことを確認したのち、DIBOC(0.63g(2.9mmol))を投入した。1時間攪拌した後、BPDA(20.74g(70.5mmol))を投入し、60℃に昇温した。4時間攪拌した後、モレキュラーシーブ4A(10g)を加え、90℃に昇温して6時間攪拌した。反応溶液を室温まで冷却した後、粘度が約2000cPになるように、重合に使用した溶剤と同じ組成の溶剤で希釈し、フィルター孔径0.2μmのフィルターで濾過してワニスを得た。
【0245】
(合成例43)
合成例43のワニスについて説明する。合成例43では、300mL4つ口フラスコに、温度計、撹拌羽根付き撹拌棒をセットした。次に、乾燥窒素気流下、DMSO(119g)と、PMA(51g)とを投入し、40℃に昇温した。昇温後、撹拌しながらPDA(6.39g(59.1mmol))と、CHDA(1.69g(14.8mmol))とを投入し、溶解したことを確認したのち、DIBOC(0.64g(3.0mmol))を投入した。1時間攪拌した後、BPDA(21.28g(72.3mmol))を投入し、60℃に昇温した。4時間攪拌した後、モレキュラーシーブ4A(10g)を加え、90℃に昇温して6時間攪拌した。反応溶液を室温まで冷却した後、粘度が約2000cPになるように、重合に使用した溶剤と同じ組成の溶剤で希釈し、フィルター孔径0.2μmのフィルターで濾過してワニスを得た。
【0246】
(合成例44)
合成例44のワニスについて説明する。合成例44では、300mL4つ口フラスコに、温度計、撹拌羽根付き撹拌棒をセットした。次に、乾燥窒素気流下、DMSO(170g)を投入し、40℃に昇温した。昇温後、撹拌しながらDAE(12.73g(63.6mmol))を投入し、溶解したことを確認したのち、DIBOC(0.56g(2.5mmol))を投入した。1時間攪拌した後、NTCDA(16.71g(62.3mmol))を投入し、60℃に昇温した。4時間攪拌した後、モレキュラーシーブ4A(10g)を加え、90℃に昇温して6時間攪拌した。反応溶液を室温まで冷却した後、粘度が約2000cPになるように、重合に使用した溶剤と同じ組成の溶剤で希釈し、フィルター孔径0.2μmのフィルターで濾過してワニスを得た。
【0247】
(合成例45)
合成例45のワニスについて説明する。合成例45では、300mL4つ口フラスコに、温度計、撹拌羽根付き撹拌棒をセットした。次に、乾燥窒素気流下、DMSO(119g)と、PMA(51g)とを投入し、40℃に昇温した。昇温後、撹拌しながらPDA(7.82g(72.3mmol))を投入し、溶解したことを確認したのち、DIBOC(0.63g(2.9mmol))を投入した。1時間攪拌した後、NTCDA(15.13g(56.4mmol))と、6FDA(6.42g(14.5mmol))とを投入し、60℃に昇温した。4時間攪拌した後、モレキュラーシーブ4A(10g)を加え、90℃に昇温して6時間攪拌した。反応溶液を室温まで冷却した後、粘度が約2000cPになるように、重合に使用した溶剤と同じ組成の溶剤で希釈し、フィルター孔径0.2μmのフィルターで濾過してワニスを得た。
【0248】
(合成例46)
合成例46のワニスについて説明する。合成例46では、300mL4つ口フラスコに、温度計、撹拌羽根付き撹拌棒をセットした。次に、乾燥窒素気流下、DMSO(119g)と、PMA(51g)とを投入し、40℃に昇温した。昇温後、撹拌しながらPDA(7.54g(69.7mmol))を投入し、溶解したことを確認したのち、DIBOC(0.61g(2.8mmol))を投入した。1時間攪拌した後、NTCDA(14.59g(54.4mmol))と、BSAA(7.26g(13.9mmol))とを投入し、60℃に昇温した。4時間攪拌した後、モレキュラーシーブ4A(10g)を加え、90℃に昇温して6時間攪拌した。反応溶液を室温まで冷却した後、粘度が約2000cPになるように、重合に使用した溶剤と同じ組成の溶剤で希釈し、フィルター孔径0.2μmのフィルターで濾過してワニスを得た。
【0249】
(合成例47)
合成例47のワニスについて説明する。合成例47では、300mL4つ口フラスコに、温度計、撹拌羽根付き撹拌棒をセットした。次に、乾燥窒素気流下、DMSO(119g)と、PMA(51g)とを投入し、40℃に昇温した。昇温後、撹拌しながらDAE(8.31g(41.5mmol))と、HFHA(6.27g(10.4mmol))とを投入し、溶解したことを確認したのち、DIBOC(0.45g(2.1mmol))を投入した。1時間攪拌した後、BPDA(14.96g(50.9mmol))を投入し、60℃に昇温した。4時間攪拌した後、モレキュラーシーブ4A(10g)を加え、90℃に昇温して6時間攪拌した。反応溶液を室温まで冷却した後、粘度が約2000cPになるように、重合に使用した溶剤と同じ組成の溶剤で希釈し、フィルター孔径0.2μmのフィルターで濾過してワニスを得た。
【0250】
(合成例48)
合成例48のワニスについて説明する。合成例48では、300mL4つ口フラスコに、温度計、撹拌羽根付き撹拌棒をセットした。次に、乾燥窒素気流下、DMSO(119g)と、PMA(51g)とを投入し、40℃に昇温した。昇温後、撹拌しながらDAE(10.10g(50.4mmol))と、SiDA(2.28g(8.9mmol))とを投入し、溶解したことを確認したのち、DIBOC(0.52g(2.4mmol))を投入した。1時間攪拌した後、BPDA(17.10g(58.1mmol))を投入し、60℃に昇温した。4時間攪拌した後、モレキュラーシーブ4A(10g)を加え、90℃に昇温して6時間攪拌した。反応溶液を室温まで冷却した後、粘度が約2000cPになるように、重合に使用した溶剤と同じ組成の溶剤で希釈し、フィルター孔径0.2μmのフィルターで濾過してワニスを得た。
【0251】
合成例1~48において各々得られた各ワニスの組成については、表1~3に示す。
【0252】
【表1】
【0253】
【表2】
【0254】
【表3】
【0255】
(実施例1)
実施例1では、合成例1で得られたワニスを用いて、上記第1項目の方法によって樹脂組成物の粘度変化率を測定し、上記第7項目の方法によって樹脂(a)のイミド化率を測定した。
【0256】
つづいて、スリット塗布装置(東レエンジニアリング社製)を用いて、縦350mm×横300mm×厚さ0.5mmの無アルカリガラス基板(AN-100、旭硝子社製)上に、合成例1のワニスをガラス基板の端から5mm内側のエリアに塗布した。つづいて、同じ装置により、40℃の温度で加熱真空乾燥を行った。最後に、ガスオーブン(INH-21CD 光洋サーモシステム社製)を用いて、窒素雰囲気下(酸素濃度100ppm以下)、400℃で30分加熱して、ガラス基板上に膜厚10μmの樹脂膜を形成した。得られた基板上の樹脂膜について、上記第5項目の方法によって樹脂膜の面内均一性の測定を実施した。
【0257】
つづいて、ガラス基板をフッ酸に4分間浸漬して、樹脂膜をガラス基板から剥離し、風乾して樹脂膜を得た。得られた樹脂膜について、上記第2項目の方法によって引張り伸度および引張り最大応力を測定し、上記第3項目の方法によってCTEを測定し、上記第4項目の方法によってCTE(A)およびCTE(B)を測定した。
【0258】
つづいて、ガラス基板から剥離する前の樹脂膜上に、CVDにより膜厚100nmのSiO膜および膜厚100nmのSiN膜を成膜した。さらに、ガラス基板に対し、樹脂膜が成膜されていない側からレーザー(波長:308nm)を照射し、樹脂膜との界面で剥離を行った。得られた樹脂膜と無機膜との積層体を用いて、上記第6項目の方法によって折り曲げ試験を実施した。
【0259】
つづいて、ガラス基板から剥離する前の樹脂膜上にTFTを形成し、このTFTを覆う状態でSiNから成る絶縁膜を形成した。次に、この絶縁膜にコンタクトホールを形成した後、このコンタクトホールを介してTFTに接続される配線を形成した。
【0260】
さらに、配線の形成による凹凸を平坦化するために、平坦化膜を形成した。次に、得られた平坦化膜上に、ITOからなる第一電極を配線に接続させて形成した。その後、レジストを塗布、プリベークし、所望のパターンのマスクを介して露光し、現像した。このレジストパターンをマスクとして、ITOエッチャントを用いたウエットエッチングによりパターン加工を行った。その後、レジスト剥離液(モノエタノールアミンとジエチレングリコールモノブチルエーテルとの混合液)を用いて該レジストパターンを剥離した。剥離後の基板を水洗し、加熱脱水して平坦化膜付き電極基板を得た。次に、第一電極の周縁を覆う形状の絶縁膜を形成した。
【0261】
さらに、真空蒸着装置内で所望のパターンマスクを介して、正孔輸送層、有機発光層、電子輸送層を順次蒸着して設けた。次いで、基板上方の全面にAl/Mgから成る第二電極を形成した。さらにCVDによりSiO、SiNの積層から成る封止膜を形成した。最後に、ガラス基板に対し、樹脂膜が成膜されていない側からレーザー(波長:308nm)を照射し、樹脂膜との界面で剥離を行った。
【0262】
以上のようにして、樹脂膜を含むディスプレイ基板を具備する有機ELディスプレイが得られた。得られた有機ELディスプレイについて、上記第8項目の方法によって信頼性を評価した。
【0263】
(実施例2~33、比較例1~15)
実施例2~33および比較例1~15では、表1~3に記載される合成例2~48の各ワニスを用いて、実施例1と同様の評価を行った。ただし、合成例36および合成例37は合成段階で樹脂が析出して均一なワニスが得られなかったため、比較例3および比較例4では、樹脂膜を成膜することができなかった。
【0264】
実施例1~33および比較例1~15の各評価結果は、表4~6に示す。
【0265】
【表4】
【0266】
【表5】
【0267】
【表6】
【産業上の利用可能性】
【0268】
以上のように、本発明に係るディスプレイ基板用樹脂組成物、ディスプレイ基板用樹脂膜およびそれを含む積層体は、耐屈曲性および信頼性に優れたディスプレイ基板、これを用いた画像表示装置および有機ELディスプレイに適している。