(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、遮光層及びタッチセンサーパネル
(51)【国際特許分類】
G03F 7/023 20060101AFI20230801BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20230801BHJP
G06F 3/041 20060101ALI20230801BHJP
C08F 220/18 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
G03F7/023
G03F7/004 505
G03F7/004 504
G06F3/041 495
G06F3/041 400
C08F220/18
(21)【出願番号】P 2020035546
(22)【出願日】2020-03-03
【審査請求日】2022-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】池田 龍太郎
(72)【発明者】
【氏名】兒玉 年矢
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 皓平
【審査官】川口 真隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/152277(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/023
G03F 7/004
G06F 3/041
C08F 220/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)顔料、(b)ノボラック樹脂、(c)カルボキシ基を有するアクリル樹脂、(d)光酸発生剤、アミン価が20mgKOH/g以上であり、酸価が5mgKOH/g以下である(e)アミン系分散剤を含
み、(b)ノボラック樹脂と(c)カルボキシ基を有するアクリル樹脂の質量比率が(b):(c)=15:1~20:1である、感光性樹脂組成物。
【請求項2】
(e)アミン系分散剤のアミン価が40~200mgKOH/gである、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
(f)ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンを含む、請求項1または2記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(a)顔料の割合が固形分中、5~15質量%である、請求項1~3いずれか記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4いずれか記載の感光性樹脂組成物を用いて形成される、遮光層。
【請求項6】
請求項5記載の遮光層を具備する、タッチセンサーパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、遮光層及びタッチセンサーパネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、入力手段としてタッチパネルが広く用いられている。タッチパネルは、液晶パネルなどの表示部と、特定の位置に入力された情報を検出するタッチパネルセンサー等から構成される。タッチパネルの方式は、入力位置の検出方法により、抵抗膜方式、静電容量方式、光学方式、電磁誘導方式、超音波方式などに大別される。中でも、光学的に明るいこと、意匠性に優れること、構造が簡易であることおよび機能的に優れること等の理由により、静電容量方式のタッチパネルが広く用いられている。
【0003】
静電容量方式のタッチパネルセンサーは、第一電極と絶縁層を介して直交する第二電極を有し、タッチパネル面の電極に電圧をかけて、指などの導電体が触れた際の静電容量変化を検知することにより得られた接触位置を信号として出力する。静電容量方式に用いられるタッチパネルセンサーとしては、例えば、一対の対向する透明基板上に電極および外部接続端子を形成した構造や、一枚の透明基板の両面に電極および外部接続端子をそれぞれ形成した構造などが知られている。
【0004】
タッチパネルセンサーに用いられる配線電極としては、配線電極を見えにくくする観点から透明配線電極が用いられることが一般的であったが、近年、高感度化や画面の大型化により、金属材料を用いた不透明配線電極が広まっている。金属材料を用いた不透明配線電極を有するタッチパネルセンサーは、不透明配線電極の金属光沢により不透明配線電極が視認される課題があった。不透明配線電極を視認されにくくする方法として、透明基板上に不透明配線電極を形成した後、黒色のポジ型感光性組成物を塗布し、不透明配線電極をマスクとして、ポジ型感光性組成物を露光及び現像することにより、不透明配線電極上に遮光層を形成する方法が提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、顔料を含む感光性樹脂組成物の感光性樹脂としてノボラック樹脂のみを用いると顔料の分散が安定せず、形成した遮光層の遮光性が不十分であった。加えて、顔料の分散が不十分であるため、顔料が凝集して突起物となり、所望のパターン形状が得られにくいという問題があった。一方、顔料を含む感光性樹脂組成物の感光性樹脂としてカルボキシ基を有するアクリル樹脂のみを用いると、現像時間が長い場合に、パターンの線幅が細くなるという問題があった。そこで本発明は、顔料の分散性が良好で、遮光性及びパターニング性が高く、且つ、現像性が両立する、感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の感光性樹脂組成物は、(a)顔料、(b)ノボラック樹脂、(c)カルボキシ基を有するアクリル樹脂、(d)光酸発生剤、アミン価が20mgKOH/g以上であり、酸価が5mgKOH/g以下である(e)アミン系分散剤を含み、(b)ノボラック樹脂と(c)カルボキシ基を有するアクリル樹脂の質量比率が(b):(c)=15:1~20:1である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、顔料の分散性が良好で、遮光性及びパターニング性が高く、且つ、現像性が良好な感光性樹脂組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0010】
本発明の感光性樹脂組成物は、(a)顔料、(b)ノボラック樹脂、(c)カルボキシ基を有するアクリル樹脂、(d)光酸発生剤、アミン価が20mgKOH/g以上であり、酸価が5mgKOH/g以下である(e)アミン系分散剤を含む。ここで「感光性」とは、感光性ペーストが活性光線の照射を受けた場合に、光架橋、光重合、光解重合、光変性などの反応を通して感光性有機成分の化学構造が変化することを意味する。本発明における感光性樹脂組成物は、活性光線の照射によって化学構造の変化が生じ、現像液に対して可溶になるポジ型感光性樹脂組成物である必要がある。ここで言う活性光線とはこのような化学反応を起こす250~1100nmの波長領域の光線を指し、具体的な光源としては、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、LEDランプなどの紫外光線、ハロゲンランプなどの可視光線、ヘリウム-カドミウムレーザー、ヘリウム-ネオンレーザー、アルゴンイオンレーザー、半導体レーザー、YAGレーザー、炭酸ガスレーザーなどの特定波長のレーザー光線等を挙げることができる。本発明の感光性樹脂組成物においては波長が300~500nmの範囲である紫外線を好ましく用いることができる。
【0011】
本発明の感光性樹脂組成物は、(a)顔料を含有する。(a)顔料を含有することにより、形成した遮光層は遮光性を有する。
【0012】
(a)顔料としては有機顔料、無機顔料が挙げられ、これらの顔料を2種以上含有してもよい。
【0013】
有機顔料としては、例えば、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、金属錯塩アゾ顔料、フタロシアニン顔料、縮合多環顔料などが挙げられる。
【0014】
無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、グラファイトや、松煙、群青、又は、鉄黒、ヘマタイト、ゲーサイト、マグネタイトなどの酸化鉄、チタン、クロム、鉛、及びこれらの金属複合系などが挙げられる。
【0015】
本発明の感光性組成物における(a)顔料の割合は、固形分中、5~15質量%であることが好ましい。(a)顔料の割合が5質量%以上であることにより、遮光性をより向上させることができる。(a)顔料の割合が8質量%以上がより好ましい。一方で、(a)顔料の割合が15質量%以下であることにより、露光に対する感度が向上し、溶解性が向上する。ここで「溶解性」とは露光部の現像液に対する溶けやすさであり、溶解性が良好なほど露光部が現像液に短時間で溶ける。
【0016】
本発明の感光性樹脂組成物は、(b)ノボラック樹脂を含有する。(b)ノボラック樹脂を含有することにより、現像性が向上する。ここでいう「現像性」とは未露光部の現像液に対する溶解耐性をいい、現像性が良好なほど現像液に長時間浸漬してもパターンの線幅が細くなりにくい。(b)ノボラック樹脂は、フェノール類とアルデヒド類とを公知の方法で重縮合することによって得られる。2種以上のノボラック樹脂を含有してもよい。上記フェノール類の好ましい例としては、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、2,3-キシレノール、2,5-キシレノール、3,4-キシレノール、3,5-キシレノール、2,3,5-トリメチルフェノール、3,4,5-トリメチルフェノール等が挙げられる。これらのフェノール類を2種以上用いてもよい。また、上記アルデヒド類の好ましい例としては、ホルマリン、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、クロロアセトアルデヒド等が挙げられる。これらのアルデヒド類を2種以上用いてもよい。含有する(b)ノボラック樹脂の割合は、固形分中50~80質量%であることが好ましい。
【0017】
本発明の感光性樹脂組成物は、(c)カルボキシ基を有するアクリル樹脂を含有する。(c)カルボキシ基を有するアクリル樹脂を含有することにより、顔料の表面にコーティングされた(e)アミン系分散剤のアミンに、(c)カルボキシ基を有するアクリル樹脂のカルボキシ基が配位して立体障害となり、(a)顔料の分散性が向上する。含有する(c)カルボキシ基を有するアクリル樹脂の割合は、固形分中1~5質量%であることが好ましい。(c)カルボキシ基を有するアクリル樹脂とは、アクリル系モノマーと、カルボキシ基を有する不飽和酸との共重合体をいう。
【0018】
アクリル系モノマーとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-ブチルアクリレート、iso-ブチルアクリレート、iso-プロパンアクリレート、グリシジルアクリレート、ブトキシトリエチレングリコールアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、イソデキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、オクタフロロペンチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、トリフロロエチルアクリレート、アミノエチルアクリレート、フェニルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、1-ナフチルアクリレート、2-ナフチルアクリレート、チオフェノールアクリレート、ベンジルメルカプタンアクリレート、アリル化シクロヘキシルジアクリレート、メトキシ化シクロヘキシルジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,3-ブチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリグリセロールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アクリルアミド、N-メトキシメチルアクリルアミド、N-エトキシメチルアクリルアミド、N-n-ブトキシメチルアクリルアミド、N-イソブトキシメチルアクリルアミド、エポキシ基を不飽和酸で開環させた水酸基を有するエチレングリコールジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物、グリセリンジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物、ビスフェノールAジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物、ビスフェノールFのアクリル酸付加物、クレゾールノボラックのアクリル酸付加物等のエポキシアクリレートモノマー、γ-アクリロキシプロピルトリメトキシシランやそれらのアクリル基をメタクリル基に置換した化合物等が挙げられる。
【0019】
カルボキシ基を有する不飽和酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、酢酸ビニルなどが挙げられる。
【0020】
本発明の感光性樹脂組成物は、(d)光酸発生剤を含有する。(d)光酸発生剤は、露光時に酸を発生させ、(b)ノボラック樹脂がアルカリに可溶となる。これにより、露光部と未露光部のアルカリに対する溶解度に差が生じ、アルカリによる現像を行うことで、所望のパターニングが可能となる。
【0021】
(d)光酸発生剤としては、ジアゾニウム塩、ジアゾキノンスルホン酸アミド、ジアゾキノンスルホン酸エステル、ジアゾキノンスルホン酸塩、ニトロベンジルエステル、オニウム塩、ハロゲン化物、ハロゲン化イソシアネート、ハロゲン化トリアジン、ビスアリールスルホニルジアゾメタン、ジスルホン等があげられる。含有する(d)光酸発生剤の割合は、固形分中10~25質量%であることが好ましい。
【0022】
本発明の感光性樹脂組成物は、(e)アミン系分散剤を含有する。(e)アミン系分散剤を含有することにより、アミン系分散剤が顔料の表面にコーティングされ、(a)顔料の分散性を向上させることができる。ここでいう(e)アミン系分散剤とは、アミン価が20mgKOH/g以上であり、酸価が5mgKOH/g以下である分散剤のことをいう。ここでいうアミン価とは、試料1g当たりと反応する酸と当量の水酸化カリウムの重量をいい、単位はmgKOH/gである。試料1gを酸で中和させた後、水酸化カリウム水溶液で滴定することで求めることができる。また、ここでいう酸価とは、試料1g当たりと反応する水酸化カリウムの重量をいい、単位はmgKOH/gである。試料1gを水酸化カリウム水溶液で滴定することで求めることができる。含有する(e)アミン系分散剤の割合は、固形分中1~10質量%であることが好ましい。アミン価が20mgKOH/g以上であり、酸価が5mgKOH/g以下である(e)アミン系分散剤としては、例えば、BYK-LP21116、DISPERBYK-109、DISPERBYK-2050、DISPERBYK-130、BYK-9007(以上、いずれもビックケミー社製)等が挙げられる。
【0023】
(e)アミン系分散剤のアミン価は40~200mgKOH/gであることが好ましい。アミン価が40mgKOH/g以上であることにより、分散性がより向上する。一方で、アミン価が200mgKOH/g以下であることにより、溶解性が向上する。
【0024】
(b)ノボラック樹脂と(c)カルボキシ基を有するアクリル樹脂の質量比率は(b):(c)=15:1~20:1であることが好ましい。(c)カルボキシ基を有するアクリル樹脂の質量に対する、(b)ノボラック樹脂の質量を15倍以上とすることで、現像性をより向上させることができる。(c)に対する、(b)の質量は、より好ましくは16倍以上である。また、(c)カルボキシ基を有するアクリル樹脂の質量に対する、(b)ノボラック樹脂の質量を20倍以下とすることで、顔料の分散性がより向上し、遮光性及びパターニング性がより向上する。ここで「パターニング性」とは所望のパターン形状の得られやすさをいい、パターニング性が良好なほど顔料が凝集して突起物として付着することなく、フォトマスクのラインパターンが得られやすくなる。(c)に対する、(b)の質量は、より好ましくは18倍以下である。
【0025】
本発明の感光性樹脂組成物は、膜均一性を向上させるため、レベリング剤を含有してもよい。レベリング剤としては、例えば、ラウリル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミンなどの陰イオン界面活性剤、ステアリルアミンアセテート、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライドなどの陽イオン界面活性剤、ラウリルジメチルアミンオキサイド、ラウリルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリウムベタインなどの両性界面活性剤、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ソルビタンモノステアレートなどの非イオン界面活性剤、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルアルキルシロキサンなどを主骨格とするシリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、アクリル系界面活性剤が挙げることができる。ポリメチルアルキルシロキサンはアラキル変性ポリメチルアルキルシロキサンであってもよい。この中でも、ポリジメチルシロキサンなどを主骨格とするシリコーン系界面活性剤、又はアクリル系界面活性剤であることが好ましい。さらに、ポリジメチルシロキサンなどを主骨格とするシリコーン系界面活性剤は、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンであることがより好ましい。含有するレベリング剤の割合は、溶剤を含む感光性樹脂組成物に対して0.01~0.5質量%であることが好ましい。
【0026】
本発明の感光性樹脂組成物は、その所望の特性を損なわない範囲であれば、ポリマー、可塑剤、界面活性剤、シランカップリング剤、架橋剤、消泡剤又は顔料等の添加剤を配合しても構わない。
【0027】
本発明の感光性樹脂組成物は、溶剤を含有しても構わない。溶剤としては、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン、乳酸エチル、3-メトキシ-3-メチルブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、エチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジアセトンアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、「PGMEA」)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルなどが挙げられる。
【0028】
次に本発明の感光性樹脂組成物の製造方法について説明する。本発明の感光性樹脂組成物は、(a)顔料、(b)ノボラック樹脂、(c)カルボキシ基を有するアクリル樹脂、(d)光酸発生剤、アミン価が20mgKOH/g以上であり、酸価が5mgKOH/g以下である(e)アミン系分散剤を混合した後、例えば、ジェットミル、ビーズミル、ボールミル若しくは遊星式ボールミル等の分散機又は混練機を用いて調製することができる。
【0029】
次に本発明の遮光層の製造方法について説明する。本発明の遮光層は、本発明の感光性樹脂組成物を配線電極付き基板上に塗布して塗布膜を得る、塗布工程と、上記塗布膜を露光及び現像してパターンを得る、フォトリソ工程と、上記パターンを100~300℃で加熱して遮光パターンを得る、キュア工程により製造される。
【0030】
塗布工程は、本発明の感光性樹脂組成物を配線電極付き基板上に塗布して、塗布膜を得る工程である。本発明の感光性樹脂組成物を塗布する配線電極付き基板とは、少なくとも片面に不透明配線電極を有する透明基板である。配線電極付き基板は、透明基板の表面の不透明配線電極上に、絶縁層を有してもよい。透明基板としては、可撓性を有しない透明基板や可撓性を有する透明基板が挙げられる。可撓性を有しない透明基板としては、例えば、石英ガラス、ソーダガラス、化学強化ガラス、“パイレックス(登録商標)”ガラス、合成石英板、エポキシ樹脂基板、ポリエーテルイミド樹脂基板、ポリエーテルケトン樹脂基板、ポリサルフォン系樹脂基板等が挙げられる。可撓性を有する透明基板としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム、ポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム、アラミドフィルム等の樹脂からなる透明フィルムや光学用樹脂板等が挙げられる。これらを複数重ねて使用してもよく、例えば、粘着層により複数の透明基板を用いて貼り合せて使用することができる。
【0031】
本発明の感光性樹脂組成物を基板に塗布する方法としては、例えば、スピナーを用いた回転塗布、スプレー塗布、ロールコーティング、スクリーン印刷、又は、スリットコーター、ブレードコーター、ダイコーター、カレンダーコーター、メニスカスコーター若しくはバーコーターを用いた塗布が挙げられる。
【0032】
本発明の感光性樹脂組成物が溶剤を含有する場合には、得られた塗布膜を乾燥して、溶剤を除去しても構わない。塗布膜を乾燥する方法としては、例えば、オーブン、ホットプレート若しくは赤外線照射による加熱乾燥又は真空乾燥が挙げられる。加熱乾燥温度は50~120℃、加熱乾燥時間は1分~数時間が一般的である。
【0033】
フォトリソ工程は、塗布工程で得られた塗布膜を露光及び現像して、パターンを得る工程である。塗布膜の露光に用いる光源としては、水銀灯又はLEDランプのi線(365nm)、h線(405nm)又はg線(436nm)が好ましい。配線電極付き基板上の感光性樹脂組成物を塗布した面と反対の面から不透明配線電極をマスクとして露光し、現像液で露光部を除去することによって、不透明配線電極と同様のパターンが得られる。
【0034】
アルカリ現像を行う場合の現像液としては、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム、ジエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ジエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、酢酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエチルメタクリレート、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン又はヘキサメチレンジアミンの水溶液が挙げられるが、これらの水溶液に、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド若しくはγ-ブチロラクトン等の極性溶剤、メタノール、エタノール若しくはイソプロパノール等のアルコール類、乳酸エチル若しくはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、イソブチルケトン若しくはメチルイソブチルケトン等のケトン類又は界面活性剤を添加しても構わない。
【0035】
有機現像を行う場合の現像液としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、N-アセチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド若しくはヘキサメチルホスホルトリアミド等の極性溶剤又はこれら極性溶媒とメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、キシレン、水、メチルカルビトール若しくはエチルカルビトールとの混合溶液が挙げられる。
【0036】
現像の方法としては、例えば、基板を静置又は回転させながら現像液を塗布膜の表面にスプレーする方法、基板を現像液中に浸漬する方法、又は、基材を現像液中に浸漬しながら超音波をかける方法が挙げられる。
【0037】
現像工程で得られたパターンは、リンス液によるリンス処理を施しても構わない。ここでリンス液としては、例えば、水あるいは水にエタノール若しくはイソプロピルアルコール等のアルコール類又は乳酸エチル若しくはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類若しくは界面活性剤を加えた水溶液が挙げられる。
【0038】
本発明の遮光層の製造方法が備えるキュア工程は、フォトリソ工程で得られたパターンを100~300℃で加熱して、遮光層を得る工程である。キュアの方法としては、例えば、オーブン、イナートオーブン若しくはホットプレートによる加熱乾燥、赤外線ヒーター等の電磁波による加熱乾燥、又は、真空乾燥が挙げられる。
【0039】
本発明の感光性樹脂組成物を用いて形成される遮光層は、例えば、タッチセンサーパネルにおいて、透明電極上に形成された不透明配線電極の上部に形成される。該不透明配線電極を視認されにくくするための遮光層などに、好適に用いられる。
【実施例】
【0040】
以下に本発明を実施例及び比較例を挙げて詳細に説明するが、本発明の態様はこれらに限定されるものではない。各実施例及び比較例で用いた材料は、以下のとおりである。なお、実施例2および実施例5はそれぞれ比較例5および比較例6と読み替えるものとする。
【0041】
[(a)顔料]
カーボンブラック(三菱化学(株)製MA100)。
【0042】
[(b)ノボラック樹脂]
フェノールノボラック(DIC(株)製WR-101)。
【0043】
[(c)カルボキシ基を有するアクリル樹脂]
(合成例1):アクリル系共重合体(C-1)
窒素雰囲気の反応容器中に、150gのジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート(以下、「DMEA」)を仕込み、オイルバスを用いて80℃まで昇温した。これに、20gのエチルアクリレート(以下、「EA」)、40gのメタクリル酸2-エチルへキシル(以下、「2-EHMA」)、20gのスチレン(以下、「St」)、15gのアクリル酸(以下、「AA」)、0.8gの2,2’-アゾビスイソブチロニトリル及び10gのDMEAからなる混合物を、1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに6時間重合反応を行った。その後、1gのハイドロキノンモノメチルエーテルを添加して、重合反応を停止した。引き続き、5gのグリシジルメタクリレート(以下、「GMA」)、1gのトリエチルベンジルアンモニウムクロライド及び10gのDMEAからなる混合物を、0.5時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに2時間付加反応を行った。得られた反応溶液をメタノールで精製することで未反応不純物を除去し、さらに24時間真空乾燥することで、共重合比率(質量基準):EA/2-EHMA/St/GMA/AA=20/40/20/5/15のカルボキシ基含有アクリル系共重合体(C-1)を得た。得られたアクリル系共重合体(C-1)の酸価は103mgKOH/gであった。
【0044】
[(d)光酸発生剤]
(合成例2):キノンジアジド化合物
乾燥窒素気流下、α,α,-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-(4-ヒドロキシ-α,α-ジメチルジメチルベンジルエチルベンゼン(商品名TrisP-PA 本州化学工業(株)製)21.22g(0.05モル)と5-ナフトキノンジアジドスルホニル酸クロリド33.58g(0.125モル)を1,4-ジオキサン450gに溶解させ、室温にした。ここに、1,4-ジオキサン50gと混合したトリエチルアミン15.18gを、系内が35℃以上にならないように滴下した。滴下後30℃で2時間撹拌した。トリエチルアミン塩を濾過し、ろ液を水に投入した。その後、析出した沈殿をろ過で集めた。この沈殿を真空乾燥機で乾燥させ、キノンジアジド化合物を得た。
【0045】
[(e)アミン系分散剤]
BYK-LP21116(酸価1mgKOH/g以下、アミン価72mgKOH/g、ビックケミー社製)・DISPERBYK-109(酸価1mgKOH/g以下、アミン価140mgKOH/g、ビックケミー社製)・DISPERBYK-2050(酸価1mgKOH/g以下、アミン価30mgKOH/g、ビックケミー社製)・DISPERBYK-130(酸価3mgKOH/g以下、アミン価190mgKOH/g、ビックケミー社製)・BYK-9007(酸価1mgKOH/g以下、アミン価48mgKOH/g、ビックケミー社製)。
【0046】
[その他の分散剤]
DISPERBYK-2164(酸価1mgKOH/g以下、アミン価14mgKOH/g、ビックケミー社製)・DISPERBYK-102(酸価101mgKOH/g、アミン価1mgKOH/g以下、ビックケミー社製)。
【0047】
[レベリング剤]
BYK-331(主成分:ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ビックケミー社製)・BYK-322(主成分:アラキル変性ポリメチルアルキルシロキサン、ビックケミー社製)・BYK-323(主成分:アラキル変性ポリメチルアルキルシロキサン、ビックケミー社製)・BYK-333(主成分:ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ビックケミー社製)・BYK-392(主成分:アクリル系界面活性剤、ビックケミー社製)・BYK-394(主成分:アクリル系界面活性剤、ビックケミー社製)。
【0048】
[溶剤]
PGMEA(株式会社クラレ製)。
【0049】
(実施例1)
100mLクリーンボトルに、3.09gのWR-101、0.77gのキノンジアジド化合物、40.14gのPGMEAを入れ、自転-公転真空ミキサー「あわとり錬太郎ARE-310」((株)シンキー製)で混合して、44.0gの樹脂溶液を得た。44.0gの得られた樹脂溶液、0.6gのカーボンブラック、0.18gのアクリル系共重合体(C-1)及び0.36gのBYK-LP21116を混ぜ合わせ、0.05mmφジルコニアビーズ(東レ(株)製)を70体積%充填した遠心分離セパレーターを具備した、ウルトラアペックスミル(寿工業(株)製)を用いて混練し、50.0gの感光性樹脂組成物を得た。
【0050】
(実施例2~5、比較例1、2)
WR-101、アクリル系共重合体(C-1)の含有量を表1に記載の通りに変更した以外は実施例1と同様にして感光性樹脂組成物を作製した。
【0051】
(実施例6~9、比較例3、4)
分散剤の種類を表1~3に記載の通りに変更した以外は実施例1と同様にして感光性樹脂組成物を作製した。
【0052】
(実施例10~15)
10gの(実施例1)で得られた感光性樹脂組成物1、0.003gの表2に記載のレベリング剤を混ぜ合わせ、自転-公転真空ミキサー「あわとり錬太郎ARE-310」((株)シンキー製)で混合して、50.0gの感光性樹脂組成物を作製した。
【0053】
(実施例16~18)
WR-101、アクリル系共重合体、カーボンブラックの添加量を表3に記載の通りに変更した以外は実施例1と同様にして感光性樹脂組成物を作製した。
【0054】
各実施例および比較例における評価方法は、以下のとおりである。
【0055】
<分散性の評価>
100mLクリーンボトルに、0.1gの実施例及び比較例より得られた感光性樹脂組成物、18.0gのPGMEAを入れ、60秒間超音波処理を行い、18.1gの感光性樹脂組成物希釈液を作成した。その後、粒度分布測定装置(マイクロトラックベル株式会社製Nanotrac WaveII)の試料室に3.0gの感光性樹脂組成物希釈液を投入し、粒度分布を測定し、累積分布に対して50%となる粒子径を平均粒子径とした。平均粒子径が80nm以上の場合をD、80nm未満70nm以上の場合をC、70nm未満65nm以上の場合をB、65nm未満の場合をAとそれぞれ判定した。
【0056】
<遮光性の評価>
厚さ1.1mmのソーダガラス上に、実施例及び比較例より得られた感光性樹脂組成物を乾燥後の塗布膜厚が1.2μmになるようにスピンコート法で塗布し、得られた塗布膜を80℃の乾燥オーブンで5分間乾燥し、得られた乾燥膜を140℃の乾燥オーブンで60分間キュアした。分光Hazeメーター(株式会社村上色彩技術研究所製HSP-150Vis)を使用し、得られたキュア膜の全光線透過率を測定した。全光線透過率が60%以上の場合をD、60%未満40%以上の場合をC、40%未満20%以上の場合をB、20%未満の場合をAとそれぞれ判定した。
【0057】
<現像性の評価>
厚さ1.1mmのソーダガラス上に、実施例及び比較例より得られた感光性樹脂組成物を乾燥後の塗布膜厚が1.2μmになるようにスピンコート法で塗布し、得られた塗布膜を80℃の乾燥オーブンで5分間乾燥した。線幅4μmのメッシュパターンを有するフォトマスクを介して、得られた乾燥膜の露光を行った。その後、2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を現像液として、露光部が溶解した時間(以下、「BT」)に対して、2倍、4倍の時間で現像を行い、メッシュパターンを得た。光学顕微鏡(株式会社キーエンス製VHX-6000)を使用し、得られたメッシュパターンについてそれぞれ線幅測定を行った。BTに対して2倍の時間で現像したメッシュパターンの線幅を100%とし、BTに対して4倍の時間で現像した時の線幅が30%未満の場合をD、30%以上60%未満の場合をC、60%以上70%未満の場合をB、70%以上の場合をAとそれぞれ判定した。
【0058】
<膜均一性の評価>
厚さ1.1mmのソーダガラス上に、実施例及び比較例より得られた感光性樹脂組成物を乾燥後の塗布膜厚が1.2μmになるようにスピンコート法で塗布し、得られた塗布膜を80℃の乾燥オーブンで5分間乾燥した。得られた乾燥膜について、膜厚測定装置(株式会社東京精密性surfcom1500A)を使用し、面内9点の膜厚を測定した。得られた膜厚の最大値と最小値の差を求めた。得られた膜厚の最大値と最小値の差が、0.5以上の場合をD、0.5μm未満0.3μm以上の場合をC、0.3μm未満0.2μm以上の場合をB、0.2μm未満の場合をAとそれぞれ判定した。
【0059】
<溶解性の評価>
厚さ1.1mmのソーダガラス上に、実施例及び比較例より得られた感光性樹脂組成物を乾燥後の塗布膜厚が1.2μmになるようにスピンコート法で塗布し、得られた塗布膜を80℃の乾燥オーブンで5分間乾燥し、得られた乾燥膜を露光した。その後、2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を現像液として、現像し、BTを計測した。BTが100秒以上であった場合をC、100秒未満50秒以上であった場合をB、50秒未満であった場合をAとそれぞれ判定した。
【0060】
<パターニング性の評価>
厚さ1.1mmのソーダガラス上に、実施例及び比較例より得られた感光性樹脂組成物を乾燥後の塗布膜厚が1.2μmになるようにスピンコート法で塗布し、得られた塗布膜を80℃の乾燥オーブンで5分間乾燥した。線幅4μm、長さ30mmのラインパターンを有するフォトマスクを介して、得られた乾燥膜の露光を行った。その後、2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を現像液として、BTに対して、2倍の時間で現像を行い、ラインパターンを得た。光学顕微鏡(株式会社キーエンス製VHX-6000)を使用し、得られたラインパターンについてそれぞれ直径1μm以上の突起物の数を計測した。突起物の数が30個以上の場合をD、30個未満15個以上の場合をC、15個未満5個以上の場合をB、5個未満の場合をAとそれぞれ判定した。また、ラインパターンが現像で剥がれた場合もDとした。
【0061】
【0062】
【0063】