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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】スライド装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/07 20060101AFI20230801BHJP
【FI】
B60N2/07
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020074202
(22)【出願日】2020-04-17
(65)【公開番号】P2021172092
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】久米 将
【審査官】細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-30527(JP,A)
【文献】特開昭57-142211(JP,A)
【文献】特開2002-283888(JP,A)
【文献】特開平10-100752(JP,A)
【文献】米国特許第4272048(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物に設置されたシートに取り付けられるように構成された第1可動レール及び第2可動レールと、
前記第1可動レールをスライド可能に支持する第1固定レールと、
前記第2可動レールをスライド可能に支持する第2固定レールと、
前記第1可動レール及び前記第2可動レールを同じ方向にスライドさせるように構成された駆動ユニットと、
を備え、
前記第1固定レール及び前記第2固定レールは、それぞれ、前記第1可動レール及び前記第2可動レールのスライド方向に並んで配置された複数の開口を有し、
前記駆動ユニットは、
前記第1可動レールを前記第1固定レールに対して送るように構成された第1送り機構と、
前記第1送り機構に動力を供給するように構成された第1駆動部と、
解除状態と、前記第1可動レールと前記第1固定レールとの間の摩擦力を前記解除状態よりも大きくする制動状態とに変位するように構成された第1制動機構と、
前記第1制動機構を前記解除状態に変位させるように構成された第1伝達機構と、
前記第1制動機構を前記制動状態に向けて付勢する第1付勢機構と、
前記第2可動レールを前記第2固定レールに対して送るように構成された第2送り機構と、
前記第2送り機構に動力を供給するように構成された第2駆動部と、
解除状態と、前記第2可動レールと前記第2固定レールとの間の摩擦力を前記解除状態よりも大きくする制動状態とに変位するように構成された第2制動機構と、
前記第2制動機構を前記解除状態に変位させるように構成された第2伝達機構と、
前記第2制動機構を前記制動状態に向けて付勢する第2付勢機構と、
を有し、
前記第1送り機構及び前記第2送り機構は、それぞれ、
複数の突起部を有すると共に、前記複数の突起部が前記複数の開口への嵌まり込みと前記複数の開口からの離脱とを順に行うように回転するように構成された回転体と、
前記第1駆動部又は前記第2駆動部の動力を前記回転体に伝達するように構成されたねじ歯車と、
を有し、
前記第1伝達機構及び前記第2伝達機構は、それぞれ、前記ねじ歯車の軸方向の運動を、前記第1制動機構又は前記第2制動機構が前記解除状態に変位する運動に変換するように構成される、スライド装置。
【請求項2】
請求項1に記載のスライド装置であって、
前記第1制動機構及び前記第2制動機構は、それぞれ、
前記第1可動レール又は前記第2可動レールと共にスライドすると共に、前記スライド方向と交差する方向に対向するように配置された第1シュー及び第2シューと、
前記制動状態において前記第1シューと前記第2シューとの間隔を広げて前記第1シュー及び前記第2シューをそれぞれ前記第1固定レール又は前記第2固定レールに向けて押圧するように構成された押圧部材と、
を有する、スライド装置。
【請求項3】
請求項2に記載のスライド装置であって、
前記第1伝達機構及び前記第2伝達機構は、それぞれ、
前記押圧部材に押し当てられることで前記押圧部材を前記第1シューと前記第2シューとの間隔を狭める方向に変位させるように構成された第1ピン及び第2ピンと、
前記ねじ歯車の第1方向への移動に伴って前記第1ピンを前記押圧部材に押し当てると共に、前記ねじ歯車の前記第1方向とは反対の第2方向への移動に伴って前記第2ピンを前記押圧部材に押し当てるように構成されたリンク機構と、
を有する、スライド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スライド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等に設置される乗物用シートをスライドさせるためのスライド装置において、固定レールに設けられた複数の開口に、回転体に設けられた突起を着脱自在に嵌まり込ませることで可動レールをスライドさせる送り機構が考案されている(特許文献1参照)。
【0003】
この送り機構では、開口にロック用の爪を挿入することによって可動レールのスライドを規制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-119386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のスライド装置では、突起を固定レールの開口から円滑に着脱するために、突起と開口との間には隙間(つまりバックラッシ)が設けられている。そのため、可動レールが停止した状態において、この隙間によって突起がスライド方向に移動することで、可動レールにスライド方向のガタツキが生じる。
【0006】
このようなガタツキを抑えるには、ロック用の爪を完全に開口に挿入する必要がある。しかし、固定レールの開口の大きさ及びピッチの制限によって、このような完全なロックが可能な可動レールの停止位置は限られる。
【0007】
本開示の一局面は、停止している可動レールのガタツキを抑制できるスライド装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様は、乗物に設置されたシート(11)に取り付けられるように構成された第1可動レール(2A)及び第2可動レール(2B)と、第1可動レール(2A)をスライド可能に支持する第1固定レール(3A)と、第2可動レール(2B)をスライド可能に支持する第2固定レール(3B)と、第1可動レール(2A)及び第2可動レール(2B)を同じ方向にスライドさせるように構成された駆動ユニット(4)と、を備えるスライド装置(1)である。
【0009】
第1固定レール(3A)及び第2固定レール(3B)は、それぞれ、第1可動レール(2A)及び第2可動レール(2B)のスライド方向に並んで配置された複数の開口(36)を有する。
【0010】
駆動ユニット(4)は、第1可動レール(2A)を第1固定レール(3A)に対して送るように構成された第1送り機構(41A)と、第1送り機構(41A)に動力を供給するように構成された第1駆動部(42A)と、解除状態と、第1可動レール(2A)と第1固定レール(3A)との間の摩擦力を解除状態よりも大きくする制動状態とに変位するように構成された第1制動機構(43A)と、第1制動機構(43A)を解除状態に変位させるように構成された第1伝達機構(44A)と、第1制動機構(43A)を制動状態に向けて付勢する第1付勢機構(45A)と、第2可動レール(2B)を第2固定レール(3B)に対して送るように構成された第2送り機構(41B)と、第2送り機構(41B)に動力を供給するように構成された第2駆動部(42B)と、解除状態と、第2可動レール(2B)と第2固定レール(3B)との間の摩擦力を解除状態よりも大きくする制動状態とに変位するように構成された第2制動機構(43B)と、第2制動機構(43B)を解除状態に変位させるように構成された第2伝達機構(44B)と、第2制動機構(43B)を制動状態に向けて付勢する第2付勢機構(45B)と、を有する。
【0011】
第1送り機構(41A)及び第2送り機構(41B)は、それぞれ、複数の突起部(411C)を有すると共に、複数の突起部(411C)が複数の開口(36)への嵌まり込みと複数の開口(36)からの離脱とを順に行うように回転するように構成された回転体(411)と、第1駆動部(42A)又は第2駆動部(42B)の動力を回転体(411)に伝達するように構成されたねじ歯車(412)と、を有する。
【0012】
第1伝達機構(44A)及び第2伝達機構(44B)は、それぞれ、ねじ歯車(412)の軸方向の運動を、第1制動機構(43A)又は第2制動機構(43B)が解除状態に変位する運動に変換するように構成される。
【0013】
このような構成によれば、回転体(411)を用いた駆動ユニット(4)を備えるスライド装置(1)において、制動機構(43A,43B)と付勢機構(45A,45B)とによって、スライド方向の位置に関わらず、停止している可動レール(2A,2B)のガタツキを抑制できる。
【0014】
また、可動レール(2A,2B)のスライド時に、駆動部(42A,42B)からの動力伝達によるスラスト荷重によってねじ歯車(412)が軸方向に移動することを利用して、回転体(411)の回転時に制動機構(43A,43B)を解除状態に変位させることができる。そのため、可動レール(2A,2B)の制動解除を、自動で行うことができる。
【0015】
本開示の一態様では、第1制動機構(43A)及び第2制動機構(43B)は、それぞれ、第1可動レール(2A)又は第2可動レール(2B)と共にスライドすると共に、スライド方向と交差する方向に対向するように配置された第1シュー(431)及び第2シュー(432)と、制動状態において第1シュー(431)と第2シュー(432)との間隔を広げて第1シュー(431)及び第2シュー(432)をそれぞれ第1固定レール(3A)又は第2固定レール(3B)に向けて押圧するように構成された押圧部材(433)と、を有してもよい。このような構成によれば、比較的簡潔な構成で、可動レール(2A,2B)と固定レール(3A,3B)との間の摩擦力を増減することができる。その結果、制動機構(43A,43B)の信頼性が向上する。また、レール幅方向のガタツキも抑制できる。
【0016】
本開示の一態様では、第1伝達機構(44A)及び第2伝達機構(44B)は、それぞれ、押圧部材(433)に押し当てられることで押圧部材(433)を第1シュー(431)と第2シュー(432)との間隔を狭める方向に変位させるように構成された第1ピン(441)及び第2ピン(442)と、ねじ歯車(412)の第1方向への移動に伴って第1ピン(441)を押圧部材(433)に押し当てると共に、ねじ歯車(412)の第1方向とは反対の第2方向への移動に伴って第2ピン(442)を押圧部材(433)に押し当てるように構成されたリンク機構(443)と、を有してもよい。このような構成によれば、ねじ歯車(412)の回転方向(つまりスライド方向)に関わらず、可動レール(2A,2B)の制動解除を行うことができる。そのため、制動解除用の動力源が不要となる。
【0017】
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、実施形態における乗物用シートの模式的な斜視図である。
図2図2は、図1のスライド装置の模式的な斜視図である。
図3図3は、図2のIII-III線での模式的な切断部端面図である。
図4図4Aは、図2のスライド装置における第1送り機構、第1制動機構及び第1伝達機構の模式的な斜視図であり、図4Bは、第1送り機構を構成するギアと第1伝達機構とを示す模式的な斜視図である。
図5図5は、図2のスライド装置における第1送り機構の動作を説明する模式図である。
図6図6は、図2のスライド装置における第1制動機構の模式的な分解斜視図である。
図7図7Aは、図2のスライド装置における第1制動機構の解除状態を説明する模式図であり、図7Bは、第1制動機構の制動状態を説明する模式図である。
図8図8Aは、第1伝達機構におけるリンク機構の動作を説明する模式図であり、図8Bは、第1伝達機構におけるリンク機構の図8Aとは逆向きの動作を説明する模式図である。
図9図9Aは、第1送り機構におけるねじ歯車の移動を説明する模式図であり、図9Bは、第1送り機構におけるねじ歯車の図9Aとは逆向きの移動を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1に示す乗物用シート10は、シート11と、スライド装置1とを備える。
【0020】
本実施形態のシート11は、乗用車の座席シートとして使用される。なお、以下の説明及び各図面における方向は、シート11を乗物(つまり乗用車)に組み付けた状態における方向を意味する。また、本実施形態では、シート幅方向は、乗物の左右方向に一致し、シート前方は、乗物の前方に一致する。
【0021】
スライド装置1は、シート11をシート前後方向にスライド可能に支持している。スライド装置1は、図2に示すように、第1可動レール2A及び第2可動レール2Bと、第1固定レール3A及び第2固定レール3Bと、駆動ユニット4とを備える。
【0022】
<可動レール>
第1可動レール2A及び第2可動レール2Bは、いわゆるアッパレールであり、それぞれ、乗物に設置されたシート11に図示しないブラケット等によって取り付けられている。第1可動レール2Aと第2可動レール2Bとは、シート幅方向に互いに離間して配置されている。第1可動レール2Aは、第2可動レール2Bよりも右側に配置されている。
【0023】
第1可動レール2Aは、シート前後方向に延伸し、第1固定レール3Aに対しシート前後方向にスライド可能に構成されている。図3に示すように、第1可動レール2Aは、中央部21と、第1内壁22Aと、第2内壁22Bとを有する。
【0024】
中央部21は、下部が第1固定レール3Aの内部に配置されると共に、上部が第1固定レール3Aよりも上方に突出している。中央部21には、後述する駆動ユニット4の第1送り機構41A、第1制動機構43A及び第1伝達機構44Aが取り付けられている。
【0025】
第1内壁22Aは、中央部21の下端部からレール幅方向外側(つまり右側)かつ上方に向かって折り返すように延伸している。第1内壁22Aは、第1固定レール3A内に配置されている。
【0026】
ここで、「レール幅方向」とは、上下方向と第1可動レール2Aのスライド方向とに直交する方向を意味する。なお、本実施形態では、レール幅方向はシート幅方向に一致している。
【0027】
第2内壁22Bは、中央部21の下端部からレール幅方向外側(つまり左側)かつ上方に向かって折り返すように延伸している。第2内壁22Bは、第1固定レール3A内に配置されている。
【0028】
図2に示す第2可動レール2Bは、シート前後方向に延伸し、第2固定レール3Bに対しシート前後方向にスライド可能に構成されている。第2可動レール2Bは、レール幅方向と垂直な面に対して第1可動レール2Aと対称な形状である。
【0029】
<固定レール>
第1固定レール3A及び第2固定レール3Bは、いわゆるロアレールであり、それぞれ、乗物用シート10が配置された乗物のフロアに直接又は間接的に固定されている。
【0030】
第1固定レール3Aは、シート前後方向に延伸し、第1可動レール2Aを上下方向と直交する方向にスライド可能に支持している。第1固定レール3Aは、図2に示すように、底壁31と、第1外側壁32Aと、第2外側壁32Bと、第1天壁33Aと、第2天壁33Bと、第1内壁34Aと、第2内壁34Bと、複数の開口36とを有する。
【0031】
底壁31は、第1可動レール2Aのスライド方向に延伸している。第1外側壁32Aは、底壁31の右端部から上方に延伸している。第2外側壁32Bは、底壁31の左端部から上方に延伸している。
【0032】
第1天壁33Aは、第1外側壁32Aの上端部からレール幅方向内側(つまり左側)に延伸している。第1天壁33Aは、第1可動レール2Aの第1内壁22Aを上方から覆っている。
【0033】
第2天壁33Bは、第2外側壁32Bの上端部からレール幅方向内側(つまり右側)に延伸している。第2天壁33Bは、第1可動レール2Aの第2内壁22Bを上方から覆っている。
【0034】
第1内壁34Aは、第1天壁33Aの左端部から下方に延伸している。第1内壁34Aは、レール幅方向において第1可動レール2Aの中央部21の下部と第1内壁22Aとの間に配置されている。第1内壁34Aは、第1可動レール2Aの中央部21と対向している。
【0035】
第2内壁34Bは、第2天壁33Bの右端部から下方に延伸している。第2内壁34Bは、レール幅方向において第1可動レール2Aの中央部21の下部と第2内壁22Bとの間に配置されている。第2内壁34Bは、第1可動レール2Aの中央部21と対向している。
【0036】
外側壁32A,32Bと天壁33A,33Bと内壁34A,34Bとにより、下側が開放され、かつスライド方向に延伸する溝状の2つの空間が形成されている。第1可動レール2Aにおける内壁22A,22Bの上端部は、第1固定レール3Aに形成された上記溝状の空間に挿入されている。
【0037】
複数の開口36は、第1内壁34Aに、第1可動レール2Aのスライド方向に並んで配置されている。本実施形態では、複数の開口36のスライド方向の長さ、間隔、及び、上下方向の位置は全て等しい。
【0038】
第2固定レール3Bは、シート前後方向に延伸し、第2可動レール2Bを上下方向と直交する方向にスライド可能に支持している。第2固定レール3Bは、レール幅方向と垂直な面に対して第1固定レール3Aと対称な形状である。
【0039】
つまり、第2固定レール3Bは、第1固定レール3Aと同様に、底壁31と、第1外側壁32Aと、第2外側壁32Bと、第1天壁33Aと、第2天壁33Bと、第1内壁34Aと、第2内壁34Bと、複数の開口36とを有する。
【0040】
<駆動ユニット>
駆動ユニット4は、第1可動レール2A及び第2可動レール2Bを同じ方向にスライドさせるように構成されている。
【0041】
駆動ユニット4は、第1送り機構41Aと、第2送り機構41Bと、第1駆動部42Aと、第2駆動部42Bと、第1制動機構43Aと、第2制動機構43Bと、第1伝達機構44Aと、第2伝達機構44Bと、第1付勢機構45Aと、第2付勢機構45Bとを有する。
【0042】
(送り機構)
第1送り機構41Aは、第1可動レール2Aを第1固定レール3Aに対して送るように構成されている。
【0043】
第1送り機構41Aは、第1可動レール2Aに取り付けられている。第1送り機構41Aは、図4A,4Bに示すように、回転体411と、ねじ歯車412と、連結歯車413と、ハウジング414とを有する。
【0044】
回転体411は、上下方向と平行な軸を中心に回転する複合歯車である。回転体411は、ピニオン411Aと、第1ヘリカルギア411Bとを有する。ピニオン411Aと第1ヘリカルギア411Bとは軸方向に連結されている。ピニオン411Aの中心軸と第1ヘリカルギア411Bの中心軸とは一致する。
【0045】
ピニオン411Aは、複数の突起部411Cを有する。複数の突起部411Cは、ピニオン411Aの歯を構成しており、ピニオン411Aの周方向に等間隔で配置されている。また、複数の突起部411Cの形状は同一である。なお、本実施形態では、回転体411は7つの突起部411Cを有しているが、突起部411Cの数は7に限定されない。
【0046】
回転体411は、複数の突起部411Cが第1固定レール3Aの複数の開口36への嵌まり込みと複数の開口36からの離脱とを順に行うように回転する。図5に示すように、突起部411Cは、ピニオン411Aの回転に伴って、シート幅方向内側(つまり左側)から開口36に着脱自在に嵌まり込んだ後、開口36から離脱する。
【0047】
回転体411は、常に少なくとも1つの突起部411Cが少なくとも1つの開口36の縁に当接するように回転する。これにより、第1送り機構41Aは、少なくとも1つの突起部411Cを介して、第1固定レール3Aから反力を受ける。その結果、回転体411の回転によって、第1送り機構41Aが取り付けられた第1可動レール2Aが第1固定レール3Aに対して送られる。
【0048】
回転体411は、第1可動レール2Aをシート前方にスライドさせる際に上方から視て時計回りに回転し、第1可動レール2Aをシート後方にスライドさせる際に上方から視て反時計回りに回転する。
【0049】
図4Bに示すように、第1ヘリカルギア411Bは、ねじ歯車412と噛み合っており、ねじ歯車412から伝達される回転をピニオン411Aに伝達する。
【0050】
ねじ歯車412は、第1駆動部42Aの動力を回転体411に伝達する。ねじ歯車412は、スライド方向と平行な軸を中心に回転する複合歯車である。ねじ歯車412は、第2ヘリカルギア412Aと、ウォームギア412Bと、軸棒412Cとを有する。
【0051】
第2ヘリカルギア412Aとウォームギア412Bとは、軸方向に連結されている。第2ヘリカルギア412Aの中心軸とウォームギア412Bの中心軸とは一致する。軸棒412Cは、ウォームギア412Bの後端からシート後方に突出しており、第2ヘリカルギア412Aとウォームギア412Bと共に軸回転する。
【0052】
第2ヘリカルギア412Aは、連結歯車413と噛み合っている。ウォームギア412Bは、第1ヘリカルギア411Bと噛み合っている。ねじ歯車412は、連結歯車413から伝達される回転を回転体411に伝達する。
【0053】
連結歯車413は、レール幅方向と平行な軸を中心に回転するヘリカルギアである。連結歯車413には、第1駆動部42Aの回転を伝達する回転ロッド421(図2参照)が軸方向に連結される。連結歯車413は、第1駆動部42Aが発生させた回転をねじ歯車412に伝達する。
【0054】
回転体411、ねじ歯車412及び連結歯車413は、図4Aに示すハウジング414内に収納されている。ハウジング414には、ねじ歯車412がハウジング414内で回転軸と平行な方向(つまり、シート前後方向)に移動可能なクリアランスが設けられている。
【0055】
ねじ歯車412は、連結歯車413から伝達される回転(つまり第1駆動部42Aの駆動力)によって発生するスラスト荷重によって、回転体411及び連結歯車413との噛み合いを保ったまま、シート前後方向に移動する。
【0056】
第2送り機構41Bは、第2可動レール2Bを第2固定レール3Bに対して送るように構成されている。第2送り機構41Bは、第1送り機構41Aと同様の回転体411と、ねじ歯車412と、連結歯車413と、ハウジング414とを有する。第2送り機構41Bは、レール幅方向と垂直な面に対して第1送り機構41Aと対称な形状である。
【0057】
第2送り機構41Bの回転体411の突起部411Cは、ピニオン411Aの回転に伴って、右側から第2固定レール3Bの開口36に着脱自在に嵌まり込んだ後、開口36から離脱する。また、第2送り機構41Bの回転体411は、第2可動レール2Bをシート前方にスライドさせる際に上方から視て反時計回りに回転し、第2可動レール2Bをシート後方にスライドさせる際に上方から視て時計回りに回転する。
【0058】
(駆動部)
図2に示す第1駆動部42Aは、第1送り機構41Aに動力を供給することで第1送り機構41Aを駆動させる。第1駆動部42Aは、第1可動レール2Aに取り付けられている。第2駆動部42Bは、第2送り機構41Bに動力を供給することで第2送り機構41Bを駆動させる。第2駆動部42Bは、第2可動レール2Bに取り付けられている。
【0059】
第1駆動部42A及び第2駆動部42Bは、それぞれ、電動式、空気式又は油圧式のアクチュエータである。なお、第1駆動部42Aと第2駆動部42Bとは一体であってもよい。つまり、1つの駆動部によって、第1送り機構41Aと第2送り機構41Bとが同時に駆動されてもよい。
【0060】
(制動機構)
第1制動機構43Aは、解除状態と、第1可動レール2Aと第1固定レール3Aとの間の摩擦力を解除状態よりも大きくする制動状態とに変位するように構成されている。
【0061】
第1制動機構43Aは、図6に示すように、第1シュー431と、第2シュー432と、押圧部材433と、第1バネ435Aと、第2バネ435Bと、第1ハウジング436Aと、第2ハウジング436Bとを有する。
【0062】
第1シュー431及び第2シュー432は、それぞれ、第1ハウジング436Aと第2ハウジング436Bとによって保持されることで、第1可動レール2Aと共にスライドする。
【0063】
第1シュー431と第2シュー432とは、スライド方向と交差する方向(つまりレール幅方向)に対向するように配置されている。第1シュー431は、第2シュー432よりもシート幅方向外側(つまり右側)に配置されている。
【0064】
第1シュー431は、制動状態において第1固定レール3Aの第1内壁34Aに左側から押し当てられる制動面431Aと、後述する押圧部材433が当接する楔面431Bとを有する。制動面431Aは、第1シュー431の右側面を構成し、レール幅方向と直交する。楔面431Bは、第1シュー431の左側面を構成し、スライド方向と平行かつ、下方に向かうに連れて第2シュー432に近づくように傾斜している。
【0065】
第2シュー432は、制動状態において第1固定レール3Aの第2内壁34Bに右側から押し当てられる制動面432Aと、押圧部材433が当接する楔面432Bとを有する。第2シュー432は、レール幅方向と垂直な面に対して第1シュー431と対称な形状である。
【0066】
第1シュー431の楔面431Bと第2シュー432の楔面432Bとは、レール幅方向に対向し、下方に向かうに連れて間隔が狭くなる楔溝を構成している。また、第1シュー431及び第2シュー432は、レール幅方向に変位可能に保持されている。
【0067】
押圧部材433は、制動状態において第1シュー431と第2シュー432との間隔を広げて第1シュー431及び第2シュー432をそれぞれ第1固定レール3Aに向けて押圧するように構成されている。
【0068】
押圧部材433は、第1ハウジング436Aと第2ハウジング436Bとによって保持されることで、第1可動レール2Aと共にスライドする。また、押圧部材433は、上下方向に変位可能に保持されている。押圧部材433は、挿入部433Aと、受圧部433Bとを有する。
【0069】
挿入部433Aは、第1シュー431と第2シュー432との間に挿入される棒状の部位である。受圧部433Bは、後述する第1伝達機構44Aの第1ピン441及び第2ピン442と、第1付勢機構45Aの付勢ブラケット451とが当接する部位である。挿入部433Aは、受圧部433Bから下方に突出している。
【0070】
図7Aに示すように、第1制動機構43Aが解除状態にあるとき、押圧部材433は、解除位置に存在する。この解除位置から、図7Bに示す制動位置に押圧部材433が変位することで、第1制動機構43Aが制動状態に移行する。
【0071】
制動位置は、解除位置よりも押圧部材433の挿入部433Aの先端が下方に存在する位置である。つまり、押圧部材433は、下方に移動することで、解除位置から制動位置に変位する。
【0072】
制動位置における第1シュー431と第2シュー432との間の楔溝への挿入部433Aの挿入量は、解除位置における挿入量よりも大きい。そのため、押圧部材433が制動位置にあるとき、第1シュー431と第2シュー432とのレール幅方向の間隔が解除位置よりも押し広げられる。
【0073】
これにより、制動状態では、第1シュー431及び第2シュー432の第1固定レール3Aに対する押圧力が解除状態よりも大きくなる。その結果、第1シュー431と第1固定レール3Aとの間の摩擦力と、第2シュー432と第1固定レール3Aとの間の摩擦力とが増大する。
【0074】
押圧部材433が制動位置から解除位置に変位すると、第1バネ435A及び第2バネ435Bの付勢力によって第1シュー431と第2シュー432とは、間隔が小さくなるように互いに近づくように変位する。その結果、第1シュー431及び第2シュー432と第1固定レール3Aとの間の摩擦力が減少する。
【0075】
なお、解除状態では、第1シュー431と第2シュー432とは、第1固定レール3Aから離れていてもよいし、当接していてもよい。つまり、解除状態において、スライドに支障しない摩擦力が第1シュー431及び第2シュー432と第1固定レール3Aとの間に発生してもよい。
【0076】
図6に示す第1バネ435A及び第2バネ435Bは、第1シュー431と第2シュー432とを互いに近づく向きにレール幅方向に付勢する。具体的には、第1バネ435A及び第2バネ435Bは、それぞれ、少なくとも制動状態において自然長よりも伸びるように、第1シュー431と第2シュー432とにレール幅方向に架け渡されている。
【0077】
第1バネ435A及び第2バネ435Bは、第1ハウジング436Aと第2ハウジング436Bとで構成されるケーシング内に格納されている。第1バネ435Aは、第2バネ435Bよりも上方に配置されている。
【0078】
第2制動機構43Bは、解除状態と、第2可動レール2Bと第2固定レール3Bとの間の摩擦力を解除状態よりも大きくする制動状態とに変位するように構成されている。第2制動機構43Bは、第1制動機構43Aと同様の第1シュー431と、第2シュー432と、押圧部材433と、第1バネ435Aと、第2バネ435Bと、第1ハウジング436Aと、第2ハウジング436Bとを有する。第2制動機構43Bは、レール幅方向と垂直な面に対して第1制動機構43Aと対称な形状である。
【0079】
(伝達機構)
第1伝達機構44Aは、第1制動機構43Aを制動状態から解除状態に変位させるように構成されている。
【0080】
第1伝達機構44Aは、図4A及び図4Bに示すように、第1ピン441と、第2ピン442と、リンク機構443と、受動部444と、連結棒445とを有する。
【0081】
第1ピン441及び第2ピン442は、それぞれシート幅方向に延伸している。第1ピン441及び第2ピン442は、押圧部材433の受圧部433Bの下方に配置されている。第1ピン441は、第2ピン442よりもシート前方に配置されている。
【0082】
リンク機構443は、第1ピン441及び第2ピン442を上下方向に移動可能に支持している。また、リンク機構443は、第1送り機構41Aのねじ歯車412の軸方向における運動を第1ピン441及び第2ピン442の上下方向の運動に変換する。
【0083】
リンク機構443は、主リンク443Aと、第1連結リンク443Bと、第2連結リンク443Cと、第1リンクピン443Dと、第2リンクピン443Eと、第3リンクピン443Fと、プレート443Gとを有する。
【0084】
主リンク443Aは、T字状のリンクである。主リンク443Aは、第1ピン441及び第2ピン442よりも下方に配置されている。主リンク443Aの前端部には、第1リンクピン443Dによって第1連結リンク443Bが回転可能に連結されている。主リンク443Aの後端部には、第2リンクピン443Eによって第2連結リンク443Cが回転可能に連結されている。
【0085】
主リンク443Aの中央部は、第3リンクピン443Fによって、プレート443Gに回転可能に連結されている。また、主リンク443Aの中央部から下方に突出した下端部Bには、連結棒445が固定されている。主リンク443Aは、連結棒445のシート前後方向の移動によって、第3リンクピン443Fを中心にシート前後方向に揺動する。
【0086】
第1連結リンク443Bの下端部は、主リンク443Aに回転可能に連結されている。第1連結リンク443Bの上端部には、第1ピン441が固定されている。第2連結リンク443Cの下端部は、主リンク443Aに回転可能に連結されている。第2連結リンク443Cの上端部には、第2ピン442が固定されている。
【0087】
プレート443Gは、第1可動レール2Aに固定されている。プレート443Gの厚み方向は、シート幅方向と平行である。プレート443Gは、第1ガイド孔443Hと、第2ガイド孔443Iとを有する。
【0088】
第1ガイド孔443Hには、第1ピン441がシート幅方向に挿通されている。第1ガイド孔443Hは、図8A及び図8Bに示すように、第1ピン441を上下方向と平行にガイドする上部と、上部から第1ピン441を下前方にガイドする下部とを有する。
【0089】
第2ガイド孔443Iには、第2ピン442がシート幅方向に挿通されている。第2ガイド孔443Iは、第2ピン442を上下方向と平行にガイドする上部と、上部から第2ピン442を下後方にガイドする下部とを有する。
【0090】
図4A及び図4Bに示す受動部444は、ねじ歯車412の軸棒412Cに連結されている。受動部444は、ねじ歯車412の回転を遮断する構造を有し、ねじ歯車412の回転によって回転しない。つまり、軸棒412Cは、受動部444に対し軸回転可能なように取り付けられている。
【0091】
連結棒445は、受動部444とリンク機構443の主リンク443Aとをシート幅方向に連結している。連結棒445は、ねじ歯車412の移動による受動部444のシート前後方向の移動に伴って、シート前後方向に移動する。さらに、この連結棒445の移動に伴って、主リンク443Aが第3リンクピン443Fを中心にシート前後方向に揺動する。
【0092】
図9Aに示すようにねじ歯車412がスラスト荷重によってシート前方に移動すると、受動部444及び連結棒445を介して軸棒412Cに連結された主リンク443Aの下端部Bが、図8Aに示すようにシート前方に移動する。
【0093】
これにより、主リンク443Aの前端(つまり第1連結リンク443Bとの連結部分)が上方に移動するように主リンク443Aが揺動し、第1連結リンク443Bを回転させながら第1ピン441が第1ガイド孔443H内を上方に移動する。その結果、第1ピン441によって押圧部材433の受圧部433Bが上方に押し上げられる。
【0094】
一方、図9Bに示すようにねじ歯車412が図9Aとは逆向きのスラスト荷重によってシート後方に移動すると、主リンク443Aの下端部Bが、図8Bに示すようにシート後方に移動する。
【0095】
これにより、主リンク443Aの後端(つまり第2連結リンク443Cとの連結部分)が上方に移動するように主リンク443Aが揺動し、第2連結リンク443Cを回転させながら第2ピン442が第2ガイド孔443I内を上方に移動する。その結果、第2ピン442によって押圧部材433の受圧部433Bが上方に押し上げられる。
【0096】
つまり、第1ピン441及び第2ピン442は、押圧部材433に押し当てられることで押圧部材433を第1シュー431と第2シュー432との間隔を狭める方向に(つまり解除位置に向かって上方に)変位させるように構成されている。
【0097】
また、リンク機構443は、ねじ歯車412のシート前方への移動に伴って第1ピン441を押圧部材433に押し当てると共に、ねじ歯車412のシート後方への移動に伴って第2ピン442を押圧部材433に押し当てるように構成されている。
【0098】
このように、ねじ歯車412がシート前方のスラスト荷重を受ける方向に回転する場合と、ねじ歯車412がシート後方のスラスト荷重を受ける方向に回転する場合との両方において、第1伝達機構44Aは、ねじ歯車412の軸方向の運動を、第1制動機構43Aが解除状態に変位する運動に変換する。
【0099】
第1駆動部42Aの駆動開始後、第1駆動部42Aのトルクが、シート11の荷重を受けるねじ歯車412及び回転体411を回転させる大きさに到達する前に、ねじ歯車412はスラスト荷重によって軸方向に移動する。そのため、第1可動レール2Aのシート前方へのスライド時と、シート後方へのスライド時との双方において、ねじ歯車412及び回転体411が回転する前に、第1制動機構43Aが解除状態となる。
【0100】
第2伝達機構44Bは、第2送り機構41Bのねじ歯車412の軸方向の運動を、第2制動機構43Bが解除状態に変位する運動に変換することで、第2制動機構43Bを解除状態に変位させるように構成されている。
【0101】
第2伝達機構44Bは、第1伝達機構44Aと同様の第1ピン441と、第2ピン442と、リンク機構443と、受動部444と、連結棒445とを有する。第2伝達機構44Bは、レール幅方向と垂直な面に対して第1伝達機構44Aと対称な形状である。
【0102】
(付勢機構)
図2に示す第1付勢機構45Aは、第1制動機構43Aを制動状態に向けて付勢している。第1付勢機構45Aは、付勢ブラケット451と、付勢バネ452と、ロッド453とを有する。
【0103】
付勢ブラケット451は、押圧部材433の受圧部433Bに上方から当接し、押圧部材433を第1シュー431と第2シュー432との間隔を広げる方向に(つまり制動位置に向かって下方に)押し込んでいる。
【0104】
付勢ブラケット451は、シート幅方向に延伸するロッド453によってシート前後方向に揺動可能に支持されている。付勢ブラケット451は、押圧部材433の上昇に伴ってシート前方に揺動する。ロッド453は、シート11又は第1可動レール2Aに固定されている。
【0105】
付勢バネ452は、付勢ブラケット451を押圧部材433に押し付ける方向に付勢している。また、付勢バネ452は、付勢ブラケット451及び押圧部材433を介して、第1伝達機構44Aの第1ピン441及び第2ピン442を下方に付勢している。
【0106】
そのため、第1送り機構41Aのねじ歯車412にスラスト荷重が発生しないとき(つまり、第1駆動部42Aが停止しているとき)は、第1ピン441及び第2ピン442が押圧部材433によって同じ高さに押し下げられる。
【0107】
第1駆動部42Aの停止によって第1ピン441及び第2ピン442が押し下げられると、図4Bに示すように、主リンク443Aは、下端部Bが第3リンクピン443Fの下方に位置する中立姿勢となる。これにより、ねじ歯車412は、ハウジング414内においてシート前方及びシート後方に移動可能な中立位置に復帰する。再び第1駆動部42Aが駆動すると、ねじ歯車412は、中立位置からシート前方又はシート後方に移動する。
【0108】
第2付勢機構45Bは、第2制動機構43Bを制動状態に向けて付勢している。第2付勢機構45Bは、第1付勢機構45Aと同様の付勢ブラケット451と、付勢バネ452と、ロッド453とを有する。本実施形態では、第2付勢機構45Bは、付勢バネ452及びロッド453を第1付勢機構45Aと共有している。
【0109】
[1-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)回転体411を用いた駆動ユニット4を備えるスライド装置1において、制動機構43A,43Bと付勢機構45A,45Bとによって、スライド方向の位置に関わらず、停止している可動レール2A,2Bのガタツキを抑制できる。
【0110】
(1b)可動レール2A,2Bのスライド時に、駆動部42A,42Bからの動力伝達によるスラスト荷重によってねじ歯車412が軸方向に移動することを利用して、回転体411の回転時に制動機構43A,43Bを解除状態に変位させることができる。そのため、可動レール2A,2Bの制動解除を自動で行うことができる。
【0111】
(1c)第1制動機構43A及び第2制動機構43Bがそれぞれ第1シュー431と第2シュー432と押圧部材433とを有することで、比較的簡潔な構成で、可動レール2A,2Bと固定レール3A,3Bとの間の摩擦力を増減することができる。その結果、第1制動機構43A及び第2制動機構43Bの信頼性が向上する。また、レール幅方向のガタツキも抑制できる。
【0112】
(1d)第1伝達機構44A及び第2伝達機構44Bがそれぞれ第1ピン441と第2ピン442とリンク機構443とを有することで、ねじ歯車412の回転方向(つまりスライド方向)に関わらず、可動レール2A,2Bの制動解除を行うことができる。そのため、制動解除用の動力源が不要となる。
【0113】
(1e)ウォームギアと複数のヘリカルギアとを組み合わせて回転体411を回転させることで、回転体411の逆転が防止される。そのため、可動レール2A,2Bの停止時に回転体411が回転することによるガタツキが抑制される。
【0114】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0115】
(2a)上記実施形態のスライド装置1において、押圧部材433は、スライド方向に変位することで、第1シュー431及び第2シュー432を固定レール3A,3Bに向けて押圧してもよい。つまり、第1シュー431及び第2シュー432によって形成される楔溝は、スライド方向に沿って幅が小さくなるように構成されてもよい。
【0116】
(2b)上記実施形態のスライド装置1において、第1シュー431及び第2シュー432は、固定レール3A,3Bのうち内壁34A,34B以外の部位に押し当てられてもよい。
【0117】
(2c)上記実施形態のスライド装置1において、伝達機構44A,44Bの構成は一例である。伝達機構44A,44Bは、リンク機構を用いずに制動機構43A,43Bを解除状態に変位させるように構成されてもよい。
【0118】
(2d)上記実施形態の乗物用シート10は、乗用車以外の自動車に用いられるシートや、自動車以外の例えば鉄道車両、船舶、航空機等の乗物に用いられるシートにも適用することができる。
【0119】
(2e)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0120】
1…スライド装置、2A,2B…可動レール、3A,3B…固定レール、
4…駆動ユニット、10…乗物用シート、11…シート、34A…第1内壁、
36…開口、41A,41B…送り機構、42A,42B…駆動部、
43A,43B…制動機構、44A,44B…伝達機構、45A,45B…付勢機構、
411…回転体、411C…突起部、412…ねじ歯車、413…連結歯車、
414…ハウジング、431,432…シュー、433…押圧部材、
441…第1ピン、442…第2ピン、443…リンク機構、443A…主リンク、
443B,443C…連結リンク、443D,443E,443F…リンクピン、
443G…プレート、443H,443I…ガイド孔、444…受動部、
445…連結棒、451…付勢ブラケット、452…付勢バネ、453…ロッド。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9