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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】茶飲料
(51)【国際特許分類】
   A23F 3/16 20060101AFI20230801BHJP
   A23F 3/14 20060101ALI20230801BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20230801BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20230801BHJP
   A23L 2/38 20210101ALN20230801BHJP
【FI】
A23F3/16
A23F3/14
A23L2/52
A23L2/00 B
A23L2/38 J
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018209851
(22)【出願日】2018-11-07
(65)【公開番号】P2020005626
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-10-20
(31)【優先権主張番号】P 2018123139
(32)【優先日】2018-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石原 健司
(72)【発明者】
【氏名】小林 由典
(72)【発明者】
【氏名】白幡 登
(72)【発明者】
【氏名】岡村 雄介
【審査官】澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/025504(WO,A1)
【文献】特開昭62-262942(JP,A)
【文献】特開2001-190241(JP,A)
【文献】野菜茶業研究所研究報告,2016年,15,pp.49-56
【文献】Food Science and Technology Research,2015年,21(3),pp.333-340
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23F,A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAPLUS/FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)及び(B);
(A)クロロゲン酸類 0.01~0.4質量%、及び
(B)ケンフェロール配糖体及びその誘導体から選択される少なくとも1種
を含有する茶飲料であって、
成分(B)がポプルニン、アストラガリン及びエピメドシドCから選択される少なくとも1種であり、
成分(B)として、(B’)外部から添加されたポプルニン、アストラガリン及びエピメドシドCから選択される少なくとも1種を含み、当該成分(B’)と成分(A)との質量比[(B’)/(A)]が0.001~0.4である、
茶飲料。
【請求項2】
茶飲料の原料がCamellia属の茶葉及び穀物から選択される少なくとも1種である、請求項1記載の茶飲料
【請求項3】
成分(B’)の含有量が0.0001~0.05質量%である、請求項1又は2記載の茶飲料。
【請求項4】
pHが4~7である、請求項1~のいずれか1項に記載の茶飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、茶飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
消費者の嗜好の多様化により多種多様の飲料が上市されている。中でも、健康志向の高揚からポリフェノールによる生活習慣病予防に関連した様々な生理機能が注目されており、茶飲料の需要が拡大している。
【0003】
一方、クロロゲン酸類は、ポリフェノールの一種であり、抗酸化作用や血圧降下作用等の優れた生理活性を有することが知られており、クロロゲン酸類を高含有したコーヒー飲料が上市されている。
【0004】
また、ケンフェロール配糖体は、アグリコンであるケンフェロールの水酸基に糖が付加した化合物である。例えば、ケンフェロール配糖体の一種であるアストラガリンは、柿の葉や桑の葉に含まれ、抗アレルギー作用を有することが知られている。このような生理作用に着目し、アストラガリンの飲食品への応用が検討されており、例えば、アストラガリンに、果糖、ガラクトース、乳糖及びブドウ糖からなる群から選ばれる糖の1種又は2種以上を配合することで、アストラガリンの吸収性が向上するとの報告がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-291441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
消費者の様々な嗜好性に対応するため、茶飲料においてもクロロゲン酸類を摂取できるようにすることが期待されている。本発明者らは、茶飲料にクロロゲン酸類を添加したところ、クロロゲン酸類由来のエグ味が生じ、茶本来のすっきりした味わいが損なわれることが判明した。
本発明の課題は、クロロゲン酸類を高含有する茶飲料でありながら、クロロゲン酸類由来のエグ味が抑制された茶飲料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、ポリフェノールの1種であり、本来苦味物質であるケンフェロール配糖体又はその誘導体を、クロロゲン酸類に対して一定の量比で含有させると、驚くべきことに、クロロゲン酸類由来のエグ味が抑制されたクロロゲン酸類強化茶飲料が得られることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、次の成分(A)及び(B);
(A)クロロゲン酸類
(B)ケンフェロール配糖体及びその誘導体から選択される少なくとも1種
を含有し、
成分(A)と成分(B)との質量比[(B)/(A)]が0.001~0.4である、
茶飲料を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、クロロゲン酸類を高含有する茶飲料でありながら、クロロゲン酸類由来のエグ味が抑制された茶飲料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において「茶飲料」とは、植物抽出物を茶原料として含み、液体として飲用に供されるものをいう。
植物抽出物の原料としては特に限定されないが、例えば、Camellia属の茶葉、穀物、Camellia属以外の茎葉、根を挙げることができる。なお、植物抽出物の抽出方法及び抽出条件は特に限定されず、植物の種類に応じて公知の方法を採用することができる。
【0011】
Camellia属の茶葉としては、例えば、C.sinensis.var.sinensis(やぶきた種を含む)、C.sinensis.var.assamica及びそれらの雑種から選択される茶葉(Camellia sinensis)が挙げられる。茶葉は、その加工方法により、不発酵茶、半発酵茶、発酵茶に分類することができ、1種又は2種以上を使用することができる。なお、茶葉の茶品種及び採取時期は特に限定されず、また茶葉は火入れ加工が施されていてもよい。不発酵茶としては、例えば、煎茶、深蒸し煎茶、焙じ茶、番茶、玉露、かぶせ茶、碾茶、釜入り茶、茎茶、棒茶、芽茶等の緑茶が挙げられる。また、半発酵茶としては、例えば、鉄観音、色種、黄金桂、武夷岩茶等の烏龍茶が挙げられる。更に、発酵茶としては、ダージリン、アッサム、スリランカ等の紅茶が挙げられる。
穀物としては、例えば、大麦、小麦、ハト麦、ライ麦、燕麦、裸麦等の麦;玄米等の米;大豆、黒大豆、ソラマメ、インゲン豆、小豆、エビスクサ、ササゲ、ラッカセイ、エンドウ、リョクトウ等の豆;ソバ、トウモロコシ、白ゴマ、黒ゴマ、粟、稗、黍、キヌワ等の雑穀を挙げることができる。穀物は、1種又は2種以上を使用することができる。
Camellia属以外の茎葉、根としては、例えば、イチョウの葉、柿の葉、ビワの葉、桑の葉、ゴボウ、チコリの葉、タンポポの葉又は根、クコの葉、杜仲の葉、エゴマの葉、小松菜、ルイボス、クマザサ、ヨモギ、ドクダミ、アマチャヅル、スイカズラ、ツキミソウ、カキドオシ、カワラケツメイ、ギムネマ・シルベスタ、黄杞茶(クルミ科)、甜茶(バラ科)、キダチアロエ等が挙げられる。更に、カモミール、ハイビスカス、ペパーミント、レモングラス、レモンピール、レモンバーム、ローズヒップ、ローズマリー等のハーブも用いることができる。Camellia属以外の茎葉、根は、1種又は2種以上を使用することができる。
【0012】
中でも、本発明の効果を享受しやすい点から、Camellia属の茶葉及び穀物から選択される少なくとも1種を原料とすることが好ましい。
【0013】
本発明の茶飲料の種類としては、例えば、緑茶飲料、焙じ茶飲料、烏龍茶飲料、紅茶飲料、穀物茶飲料、ブレンド茶飲料等を挙げることができる。ここで、本明細書において「ブレンド茶飲料」とは、2以上の異種の茶原料を使用する茶飲料をいう。
【0014】
本発明の茶飲料は、成分(A)としてクロロゲン酸類を含有する。ここで、本明細書において「クロロゲン酸類」とは、3-カフェオイルキナ酸、4-カフェオイルキナ酸及び5-カフェオイルキナ酸のモノカフェオイルキナ酸と、3-フェルオイルキナ酸、4-フェルオイルキナ酸及び5-フェルオイルキナ酸のモノフェルオイルキナ酸を併せての総称である。本発明においては上記6種のうち少なくとも1種を含有すればよい。
成分(A)は、塩や水和物の形態であってもよい。塩としては生理学的に許容されるものであれば特に限定されないが、例えば、アルカリ金属塩を挙げることができる。
【0015】
成分(A)としては、市販の試薬を用いてもよいが、成分(A)を豊富に含む植物の抽出物を使用することもできる。なお、成分(A)として植物抽出物を用いる場合、植物抽出物の抽出方法及び抽出条件は特に限定されず、公知の方法を採用することができる。
植物としては、成分(A)が含まれていれば特に限定されないが、例えば、ヒマワリ種子、リンゴ未熟果、コーヒー豆、シモン葉、マツ科植物の球果、マツ科植物の種子殻、サトウキビ、南天の葉、ゴボウ、ナスの皮、ウメの果実、フキタンポポ、ブドウ科植物等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。中でも、クロロゲン酸類含量等の観点から、コーヒー豆が好ましい。コーヒー豆は、生コーヒー豆でも、焙煎コーヒー豆でもよく、これらを併用することもできる。なお、コーヒー豆の豆種及び産地は、特に限定されない。
【0016】
本発明の茶飲料は、成分(A)の含有量が、生理活性の観点から、0.01質量%以上が好ましく、0.03質量%以上がより好ましく、0.05質量%以上が更に好ましく、0.1質量%以上が殊更に好ましく、また成分(A)由来のエグ味抑制の観点から、0.4質量%以下が好ましく、0.35質量%以下がより好ましく、0.3質量%以下が更に好ましい。かかる成分(A)の範囲としては、茶飲料中に、好ましくは0.01~0.4質量%、より好ましくは0.03~0.35質量%、更に好ましくは0.05~0.3質量%、殊更に好ましくは0.1~0.3質量%である。ここで、本明細書において、成分(A)の含有量は上記6種の合計量に基づいて定義される。なお、成分(A)が塩又は水和物の形態である場合、成分(A)の含有量は、遊離酸であるクロロゲン酸類に換算した値とする。成分(A)の分析は、例えば、通常知られている測定法のうち測定試料の状況に適した分析法により測定することが可能であり、例えば、後掲の実施例に記載の分析法を挙げることができる。
【0017】
本発明の茶飲料は、成分(B)としてケンフェロール配糖体及びその誘導体から選択される少なくとも1種を含有する。ここで、本明細書において「ケンフェロール配糖体」とは、下記式(1)に示すケンフェロールの3位又は7位の水酸基に糖が付加した化合物をいう。また、本明細書において「ケンフェロール配糖体の誘導体」とは、ケンフェロールの3位の水酸基にグルコースが付加した化合物に、8位の水素原子に官能基が付加したエピメドシドC及びアムレンシンである。
【0018】
【化1】
【0019】
ケンフェロール配糖体の構成糖としては特に限定されないが、例えば、グルコース、ガラクトース、ラムノース、キシロース、アラビノース、アピオース等の単糖、ルチノース、ネオヘスペリドース、ソフォロース、サンブビオース、ラミナリビオース等の二糖、ゲンチオトリオース、グルコシルルチノース、グルコシルネオヘスペリドース等の三糖、又はこれらの混合物等を挙げることができる。中でも、かかる構成糖としては、本発明の効果を享受しやすい点から、グルコースが好ましい。
【0020】
成分(B)としては、本発明の効果を享受しやすい点から、ケンフェロールモノ配糖体及びその誘導体から選択される少なくとも1種が好ましく、ケンフェロールモノグルコシド及びその誘導体から選択される少なくとも1種がより好ましく、ポプルニン、アストラガリン及びエピメドシドCから選択される少なくとも1種が更に好ましい。ここで、本明細書において「ケンフェロールモノ配糖体」とは、ケンフェロールの3位又は7位の水酸基に糖が1個付加した化合物であり、また「ケンフェロールモノグルコシド」とは、ケンフェロールの3位又は7位の水酸基にグルコースが1個付加した化合物である。
【0021】
本発明の茶飲料は、成分(B)の含有量が、成分(A)由来のエグ味の抑制の観点から、0.0001質量%以上が好ましく、0.001質量%以上がより好ましく、0.002質量%以上が更に好ましく、0.003質量%以上がより更に好ましく、0.005質量%以上が殊更に好ましく、また成分(B)由来の金属的な異味の抑制の観点から、0.05質量%以下が好ましく、0.04質量%以下がより好ましく、0.03質量%以下が更に好ましく、0.02質量%以下がより更に好ましく、0.018質量%以下が殊更に好ましい。成分(B)の含有量の範囲としては、茶飲料中に、好ましくは0.0001~0.05質量%、より好ましくは0.001~0.04質量%、更に好ましくは0.002~0.03質量%、より更に好ましくは0.003~0.02質量%、殊更に好ましくは0.005~0.018質量%である。なお、成分(B)の含有量は、通常知られている測定法のうち測定試料の状況に適した分析法により測定することが可能であり、例えば、液体クロマトグラフで分析することが可能である。具体的には、後掲の実施例に記載の方法が挙げられる。なお、測定の際には装置の検出域に適合させるため、試料を凍結乾燥したり、装置の分離能に適合させるため試料中の夾雑物を除去したりする等、必要に応じて適宜処理を施してもよい。
【0022】
本発明の茶飲料は、成分(A)と成分(B)との質量比[(B)/(A)]が0.001~0.4であるが、成分(A)由来のエグ味の抑制の観点から、0.005以上が好ましく、0.01以上がより好ましく、0.05以上が更に好ましく、0.1以上が殊更に好ましく、また成分(B)由来の金属的な異味の抑制の観点から、0.35以下が好ましく、0.3以下がより好ましく、0.25以下が更に好ましく、0.2以下が殊更に好ましい。かかる質量比[(B)/(A)]の範囲としては、好ましくは0.005~0.35、より好ましくは0.01~0.3、更に好ましくは0.05~0.25、殊更に好ましくは0.1~0.2である。
【0023】
本発明の茶飲料は、所望により、酸味料、甘味料、アミノ酸、たんぱく質、ビタミン、ミネラル、香料、果汁、植物エキス、エステル、色素、乳化剤、乳成分、ココアパウダー、調味料、植物油脂、酸化防止剤、保存料、pH調整剤、品質安定剤、花蜜エキス等の添加剤を1種又は2種以上を含有することができる。添加剤の含有量は、本発明の目的を損なわない範囲内で適宜設定することができる。
【0024】
本発明の茶飲料のpH(20℃)は、茶本来のすっきりした味わい付与の観点から、4以上が好ましく、4.5以上がより好ましく、5以上が更に好ましく、そして7以下が好ましく、6.8以下がより好ましく、6.5以下が更に好ましい。かかるpHの範囲としては、好ましくは4~7であり、より好ましくは4.5~6.8であり、更に好ましくは5~6.5である。なお、pHは、茶飲料約100mLを300mLのビーカーに量り取り、温度調整をして測定するものとする。
【0025】
本発明の茶飲料は、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるPETボトル)、金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと複合された紙容器、瓶等の通常の包装容器に充填して容器詰茶飲料とすることができる。
【0026】
本発明の茶飲料は、加熱殺菌済でもよい。殺菌方法としては、適用されるべき法規(日本にあっては食品衛生法)に定められた条件に適合するものであれば特に限定されるものではない。例えば、レトルト殺菌法、高温短時間殺菌法(HTST法)、超高温殺菌法(UHT法)、充填後殺菌法(パストリゼーション)等を挙げることができる。また、容器詰茶飲料の容器の種類に応じて加熱殺菌法を適宜選択することも可能であり、例えば、金属缶、瓶のように、飲料を容器に充填後、容器ごと加熱殺菌できる場合にあってはレトルト殺菌や充填後殺菌法(パストリゼーション)を採用することができる。また、PETボトル、紙容器のようにレトルト殺菌できないものについては、飲料をあらかじめ上記と同等の殺菌条件で加熱殺菌し、無菌環境下で殺菌処理した容器に充填するアセプティック充填や、ホットパック充填等を採用することができる。
【0027】
本発明の茶飲料は適宜の方法で製造することができるが、例えば、植物抽出物に、成分(A)及び(B)、必要により他の成分を配合し、成分(A)と成分(B)との質量比[(B)/(A)]を調整して製造することができる。なお、植物抽出物の配合量は、本発明の目的を損なわない範囲内で、植物抽出物の種類に応じて適宜設定することができる。また、得られた茶飲料を濃縮又は乾燥して、濃縮飲料又は粉末飲料とすることもできる。
【実施例
【0028】
1.クロロゲン酸類の分析
試料溶液をフィルター(0.45μm)で濾過し、高速液体クロマトグラフ(型式LC-20 Prominence,島津製作所製)を用い、カラム〔Cadenza CD-C18(3μm,4.6mmφ×150mm,Imtakt)〕を装着し、カラム温度35℃にてグラディエント法により行った。移動相A液は酢酸を0.05mol/L、酢酸ナトリウムを0.01mol/L、及びHEDPOを0.1mmol/L含有する5%アセトニトリル溶液、B液はアセトニトリル溶液とし、流速は1mL/分、試料注入量は10μL、UV検出器波長は325nmの条件で行った。なお、グラディエントの条件は、以下のとおりである。
【0029】
濃度勾配条件
時間(分) A液濃度(体積%) B液濃度(体積%)
0 100% 0%
10 100% 0%
15 95% 5%
20 95% 5%
22 92% 8%
50 92% 8%
52 10% 90%
60 10% 90%
60.1 100% 0%
70 100% 0%
【0030】
標準品を用いてクロロゲン酸類の保持時間を確認したところ、以下の通りであった。
・3-カフェオイルキナ酸 : 5.3分
・5-カフェオイルキナ酸 : 8.8分
・4-カフェオイルキナ酸 :11.6分
・3-フェルオイルキナ酸 :13.0分
・5-フェルオイルキナ酸 :19.9分
・4-フェルオイルキナ酸 :21.0分
上記保持時間と一致したピークの面積値から、クロロゲン酸類の定量を行った。
【0031】
2.ケンフェロール配糖体及びその誘導体の分析
試料溶液をフィルター(0.45μm)で濾過し、高速液体クロマトグラフ―質量分析装置(Waters, Acquity/Xevo G2-XS QTOF-MS)を用い、カラム〔Waters, AcQuity UPLC BEH Shield RP18(2.lmmφ ×10011Hl,1.7μm〕を装着し、カラム温度40℃にてグラディエント法により行う。移動相C液はギ酸を0.1質量%含有する水溶液、D液はアセトニトリル溶液とし、流速は0.2mL/分、試料注入量は50μLの条件で行う。なお、質量分析装置及び溶離液のグラディエントの条件は、以下のとおりである。
【0032】
質量分析装置の条件
・イオン化方法:ESI(Negative)
・キャピラリー電圧: 2.O kV
・イオン源温度:150℃
【0033】
濃度勾配条件
時間(分) C液濃度(体積%) D液濃度(体積%)
0 90% 10%
10 5% 95%
25 5% 95%
【0034】
ポプルニン、アストラガリン、エピメシドCの標準品をメタノールで溶解させて、段階希釈し、標品を調製する。所定濃度の標品を上記記載の条件で測定し、リテンションタイムの測定を行う。定量は標準品の標品から各成分に起因するイオンのピーク強度で検量線を作成し、検量線と試料のピーク強度から算出する。なお、ポプルニン、アストラガリン、エピメシドCの定量には以下のm/zのイオンピークを用いる。
・ポプルニン :463
・アストラガリン :446
・エピメシドC :515
【0035】
3.pHの測定
茶飲料100mLを300mLのビーカーに量り取り、pHメータ(HORIBA コンパクトpHメータ、堀場製作所製)を用いて、20℃に温度調整をして測定した。
【0036】
製造例1
緑茶抽出液の製造
緑茶葉5gに90℃の熱水400gを注ぎ、1分間抽出した後、緑茶葉を濾して冷却し、緑茶抽出液を得た。
【0037】
製造例2
烏龍茶抽出液の製造
烏龍茶葉6gに90℃の熱水400gを注ぎ、3分間抽出した後、烏龍茶葉を濾して冷却し、烏龍茶抽出液を得た。
【0038】
実施例1~7、比較例1及び参考例1
表1に示す各成分を混合して緑茶飲料を得た。各緑茶飲料について分析及び官能評価を行った。その結果を表1に併せて示す。各緑茶飲料はいずれも、pH(20℃)が6.4であった。
【0039】
官能評価1
上記の各実施例、比較例及び参考例で得られた緑茶飲料を飲用したときの「クロロゲン酸類由来のエグ味」及び「金属的な異味」について、専門パネル5名が官能試験を行った。官能試験は、各パネリストが「クロロゲン酸類由来のエグ味」及び「金属的な異味」の評価基準を、下記の評価基準とすることに合意したうえで実施した。そして、専門パネルの評点の平均値を求めた。なお、評点の平均値は、小数第2位を四捨五入するものとする。
【0040】
クロロゲン酸類由来のエグ味の評価基準
クロロゲン酸類由来のエグ味は、飲用したときにクロロゲン酸類由来のエグ味が感じられるか否かを観点に、参考例1の緑茶飲料のクロロゲン酸類由来のエグ味の評点を「5」とし、比較例1の緑茶飲料のクロロゲン酸類由来のエグ味の評点を「1」として評価した。具体的な評価基準は以下のとおりである。
評点5:クロロゲン酸類由来のエグ味がない(参考例1相当)
4:クロロゲン酸類由来のエグ味がほとんど感じない
3:クロロゲン酸類由来のエグ味を少し感じる
2:クロロゲン酸類由来のエグ味を感じる
1:クロロゲン酸類由来のエグ味を強く感じる(比較例1相当)
【0041】
金属的な異味の評価基準
金属的な異味は、飲用したときに金属的な異味が感じられるか否かを観点に、参考例1の緑茶飲料の金属的な異味の評点を「5」として評価した。具体的な評価基準は以下のとおりである。なお、本明細書において「金属的な異味」とは、硬度120以上の硬水と同質又は近似した苦味であって、茶本来のすっきりした味わいを損ねる味をいう。
評点5:金属的な異味がない(参考例1相当)
4:金属的な異味をほとんど感じない
3:金属的な異味を少し感じる
2:金属的な異味を感じる
1:金属的な異味を強く感じる
【0042】
【表1】
【0043】
実施例8~10及び比較例2
表2に示す各成分を混合して緑茶飲料を得た。各緑茶飲料について分析及び官能評価を行った。その結果を、参考例1の結果とともに表2に併せて示す。なお、官能評価は、クロロゲン酸類由来のエグ味については、参考例1の緑茶飲料の評点を「5」とし、比較例2の緑茶飲料の評点を「1」として評価し、また金属的な異味については、参考例1の緑茶飲料の評点を「5」として評価し、官能評価1と同一の5段階で評価することを、専門パネル5名が合意したうえで実施した。そして、専門パネルの評点の平均値を求めた。なお、評点の平均値は、小数第2位を四捨五入するものとする。各緑茶飲料はいずれも、pH(20℃)が6.4であった。
【0044】
【表2】
【0045】
実施例11、比較例3及び参考例2
表3に示す各成分を混合して烏龍茶飲料を得た。各烏龍茶飲料について分析及び官能評価を行った。各烏龍茶飲料はいずれも、pH(20℃)が5.9であった。なお、官能評価は、クロロゲン酸類由来のエグ味については、参考例2の烏龍茶飲料の評点を「5」とし、比較例3の烏龍茶飲料の評点を「1」として評価し、また金属的な異味については、参考例2の烏龍茶飲料の評点を「5」として評価し、官能評価1と同一の5段階で評価することを、専門パネル5名が合意したうえで実施した。そして、専門パネルの評点の平均値を求めた。なお、評点の平均値は、小数第2位を四捨五入するものとする。その結果を、実施例3、比較例1及び参考例1の緑茶飲料の結果とともに表3に示す。
【0046】
実施例12、比較例4及び参考例3
表3に示す各成分を混合してブレンド茶飲料を得た。各ブレンド茶飲料について分析及び官能評価を行った。各ブレンド茶飲料はいずれも、pH(20℃)が6.2であった。なお、官能評価は、クロロゲン酸類由来のエグ味については、参考例3のブレンド茶飲料の評点を「5」とし、比較例4のブレンド茶飲料の評点を「1」として評価し、また金属的な異味については、参考例3のブレンド茶飲料の評点を「5」として評価し、官能評価1と同一の5段階で評価することを、専門パネル5名が合意したうえで実施した。そして、専門パネルの評点の平均値を求めた。なお、評点の平均値は、小数第2位を四捨五入するものとする。その結果を、実施例3、比較例1及び参考例1の緑茶飲料の結果とともに表3に示す。
【0047】
実施例13、比較例5及び参考例4
表3に示す各成分を混合して黒豆茶飲料を得た。各黒豆茶飲料について分析及び官能評価を行った。各黒豆茶飲料はいずれも、pH(20℃)が6.1であった。なお、官能評価は、クロロゲン酸類由来のエグ味については、参考例4の黒豆茶飲料の評点を「5」とし、比較例5の黒豆茶飲料の評点を「1」として評価し、また金属的な異味については、参考例4の黒豆茶飲料の評点を「5」として評価し、官能評価1と同一の5段階で評価することを、専門パネル5名が合意したうえで実施した。そして、専門パネルの評点の平均値を求めた。なお、評点の平均値は、小数第2位を四捨五入するものとする。その結果を、実施例3、比較例1及び参考例1の緑茶飲料の結果とともに表3に示す。
【0048】
【表3】
【0049】
実施例14、比較例6及び参考例5
表4に示す各成分を混合して緑茶飲料を得た。各緑茶飲料について分析及び官能評価を行った。各緑茶飲料はいずれも、pH(20℃)が6.0であった。なお、官能評価は、クロロゲン酸類由来のエグ味については、参考例5の緑茶飲料の評点を「5」とし、比較例6の緑茶飲料の評点を「1」として評価し、また金属的な異味については、参考例5の緑茶飲料の評点を「5」として評価し、官能評価1と同一の5段階で評価することを、専門パネル5名が合意したうえで実施した。そして、専門パネルの評点の平均値を求めた。なお、評点の平均値は、小数第2位を四捨五入するものとする。その結果を表4に示す。
【0050】
実施例15、比較例7及び参考例6
表4に示す各成分を混合して烏龍茶飲料を得た。各烏龍茶飲料について分析及び官能評価を行った。各烏龍茶飲料はいずれも、pH(20℃)が5.2であった。なお、官能評価は、クロロゲン酸類由来のエグ味については、参考例6の烏龍茶飲料の評点を「5」とし、比較例7の烏龍茶飲料の評点を「1」として評価し、また金属的な異味については、参考例6の烏龍飲料の評点を「5」として評価し、官能評価1と同一の5段階で評価することを、専門パネル5名が合意したうえで実施した。そして、専門パネルの評点の平均値を求めた。なお、評点の平均値は、小数第2位を四捨五入するものとする。その結果を表4に示す。
【0051】
【表4】
【0052】
表1~4から、ケンフェロール配糖体をクロロゲン酸類に対して一定の量比で含有させることで、クロロゲン酸類由来のエグ味が抑制されたクロロゲン酸類強化茶飲料が得られることがわかる。