(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】油中水型乳化化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/37 20060101AFI20230801BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20230801BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20230801BHJP
A61K 8/29 20060101ALI20230801BHJP
A61K 8/891 20060101ALI20230801BHJP
A61Q 1/02 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
A61K8/37
A61K8/06
A61K8/19
A61K8/29
A61K8/891
A61Q1/02
(21)【出願番号】P 2019121620
(22)【出願日】2019-06-28
【審査請求日】2022-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野村 睦子
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 美香子
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-210440(JP,A)
【文献】特開平08-104613(JP,A)
【文献】特開2010-111625(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)、(C)及び(D):
(A)不揮発性のフェニル変性シリコーン 0.05~15質量%、
(B)25℃で液状のペンタエリスリトール脂肪酸エステル及びジペンタエリスリトール脂肪酸エステルから選ばれるエステル油、
(C)
アルキルアルコキシシランで表面処理された微粒子酸化チタン 0.1~15質量%、
(D)疎水化処理された着色顔料 1~20質量%
を含有
し、
成分(C)に対する成分(B)の質量割合(B)/(C)が、0.005~0.25である油中水型乳化化粧料。
【請求項2】
成分(B)の含有量が、0.01~5質量%である請求項1記載の油中水型乳化化粧料。
【請求項3】
さらに、(E)架橋型オルガノポリシロキサンを含有する請求項1又は2記載の油中水型乳化化粧料。
【請求項4】
成分(B)に対する成分(A)の質量割合(A)/(B)が、0.1~80である請求項1~
3のいずれか1項記載の油中水型乳化化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油中水型乳化化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ツヤなどの仕上がりが良好で、化粧持続性に優れた化粧料が検討されている。
例えば、特許文献1には、フェニル変性シリコーン等の油剤と、エチルセルロース、液状アルコール、デキストリン脂肪酸エステル等を含有する油中水型口唇化粧料が、塗布膜の弾力と復元性によるツヤの持続、経時安定性に優れることが記載されている。
ここで用いられるフェニル変性シリコーンは、一般に、艶出しの目的で使用されるものである(例えば、特許文献2、段落「0045」)。
また、特許文献3には、シリコーン化多糖化合物、特定のエステル油及び疎水化処理された着色顔料を含有する油中水型乳化化粧料が、塗布後の肌に皮膜感がなく、塗布後の肌の仕上がりが均一で、艶やかに見え、粉っぽく見えないことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-162224号公報
【文献】特開2018-2664号公報
【文献】特開2018-35092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の化粧料において、特に、仕上がりのツヤを得るために、フェニル変性シリコーンを用いた場合には、塗布後の肌がべたついたり、粉っぽく見える場合があり、シミに対するカバー力も十分ではなかった。また、ファンデーションを重ね塗りした場合には、ムラ付きしたり、取れやすいという課題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、不揮発性のフェニル変性シリコーンと、特定のエステル油、微粒子酸化チタン及び疎水化処理された着色顔料を組合わせて用いることにより、上記課題を解決した油中水型乳化化粧料が得られることを見出した。
【0006】
本発明は、次の成分(A)、(B)、(C)及び(D):
(A)不揮発性のフェニル変性シリコーン 0.05~15質量%、
(B)25℃で液状のペンタエリスリトール脂肪酸エステル及びジペンタエリスリトール脂肪酸エステルから選ばれるエステル油、
(C)微粒子酸化チタン 0.1~15質量%、
(D)疎水化処理された着色顔料 1~20質量%
を含有する油中水型乳化化粧料に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の油中水型乳化化粧料は、仕上がりのツヤに優れるとともに、塗布後の肌がべたつかず、粉っぽさが低減され、さらに、シミに対して十分なカバー力が得られるものである。また、ファンデーションを重ね塗りした場合には、ムラ付きせず、取れにくいものである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
成分(A)のフェニル変性シリコーンは、不揮発性のものである。ここで、不揮発性とは、油剤1gを直径48mmのガラスシャーレに広げ、25℃、常圧で24時間放置した後の質量減少率が1%以下のものを言う。
また、成分(A)は、ツヤのある均一な仕上がりを向上させる観点から、25℃で、5mm2/s以上の粘度を有するものが好ましく、500mm2/s以下の粘度を有するものが好ましい。
成分(A)としては、例えば、フェニルトリメチコン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、トリメチルシロキシフェニルジメチコン、ジフェニルジメチコン、トリメチルペンタフェニルトリシロキサン等が挙げられる。
これらのうち、ツヤのある均一な仕上がりを向上させる観点から、フェニルトリメチコン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコンから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコンがより好ましい。
【0009】
成分(A)は、1種又は2種以上を用いることができ、含有量は、塗布後の肌のべたつき、粉感を低減し、ツヤ感、シミに対するカバー力を向上させ、重ね塗りしたファンデーションのムラ付き、取れにくさを低減させる観点から、全組成中に0.05~15質量%であり、0.15~8質量%が好ましく、0.5~4質量%がより好ましい。
【0010】
成分(B)のエステル油は、25℃で液状のペンタエリスリトール脂肪酸エステル及びジペンタエリスリトール脂肪酸エステルから選ばれるものである。
液状とは、流動性を有し、25℃で液体のものである。また、成分(B)の融点は、20℃以下が好ましい。
【0011】
成分(B)を構成する脂肪酸としては、飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸のいずれでも良く、重ね塗りしたファンデーションのムラ付き、取れにくさを低減させる観点から、飽和脂肪酸が好ましい。また、直鎖脂肪酸又は分岐鎖脂肪酸のいずれでも良く、重ね塗りしたファンデーションのムラ付き、取れにくさを低減させる観点から、分岐鎖脂肪酸が好ましい。また、これらの脂肪酸は、ヒドロキシ基を有していても良い。
このような脂肪酸としては、例えば、カプロン酸、カプリル酸、2-エチルヘキサン酸、イソノナン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸等が挙げられる。また、上記脂肪酸の中でも、炭素数16~28の飽和脂肪酸が好ましい。このような脂肪酸としては、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸等が挙げられる。また、炭素数16~22の飽和脂肪酸がより好ましく、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸等が挙げられる。
【0012】
成分(B)を構成するアルコールは、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールであり、なかでも、重ね塗りしたファンデーションのムラ付き、取れにくさを低減させる観点から、ジペンタエリスリトールが好ましい。
成分(B)としては、ペンタエリルリトール脂肪酸エステルとして、例えば、(ベヘン酸/ポリヒドロキシステアリン酸)ペンタエリスリチル等が挙げられ、ジペンタエリルリトール脂肪酸エステルとして、例えば、トリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、ペンタイソステアリン酸ジペンタエリスリチル、テトライソステアリン酸ジペンタエリスリチル等が挙げられる。
成分(B)としては、重ね塗りしたファンデーションのムラ付き、取れにくさを低減させる観点から、ジペンタエリルリトール脂肪酸エステルが好ましく、トリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、ペンタイソステアリン酸ジペンタエリスリチル、テトライソステアリン酸ジペンタエリスリチルから選ばれる1種または2種以上がより好ましく、トリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、テトライソステアリン酸ジペンタエリスリチルから選ばれる1種または2種以上がさらに好ましく、トリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチルがよりさらに好ましい。
【0013】
トリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチルとしては、サラコスWO-6(日清オイリオ社製)、ペンタイソステアリン酸ジペンタエリスリチルとしては、サラコスDP-518N(日清オイリオ社製)等の市販品を用いることができる。
また、テトライソステアリン酸ジペンタエリスリチル、(ベヘン酸/ポリヒドロキシステアリン酸)ペンタエリスリチルは、公知の方法に従って製造することができる。例えば、テトライソステアリン酸ジペンタエリスリチルは、後記製造例に記載された方法で製造することができる。
【0014】
成分(B)は、1種又は2種以上を用いることができ、塗布後の肌のべたつき、粉感を低減し、ツヤ感、シミに対するカバー力を向上させ、重ね塗りしたファンデーションのムラ付き、取れにくさを低減させる観点から、含有量は、全組成中に0.01~5質量%であるのが好ましく、0.07~3質量%がより好ましく、0.07~0.6質量%がさらに好ましい。
【0015】
本発明において、成分(B)に対する成分(A)の質量割合(A)/(B)は、塗布後の肌のべたつき、粉感を低減させ、ツヤ感、シミに対するカバー力を向上させ、重ね塗りしたファンデーションのムラ付き、取れにくさを低減させる観点から、0.1~80であるのが好ましく、0.5~50がより好ましく、1~30がさらに好ましい。
【0016】
成分(C)の微粒子酸化チタンは、塗布後の肌のべたつき、粉感を低減させ、シミに対するカバー力を向上させ、重ね塗りしたファンデーションのムラ付き、取れにくさを低減させる観点から、一次粒子径が0.1μm未満のものが好ましく、0.005~0.06μmのものがより好ましく、0.01~0.04μmのものがよりさらに好ましい。
ここで一次粒子径は、走査型電子顕微鏡により撮影した画像のFeret定方向接線径であり、その質量基準の粒度分布は画像解析装置を用いて測定できる。
なお、微粒子酸化チタンの形状は制限されず、板状、針状、球状等のいずれでも良い。
微粒子酸化チタンとしては、STR-100W(堺化学工業社製)等の市販品を用いることができる。
【0017】
成分(C)の微粒子酸化チタンは、そのまま用いることができるほか、疎水化処理して用いることもできる。
疎水化処理としては、シリコーン処理、フッ素処理、脂肪酸処理、N-アシルアミノ酸処理等が挙げられる。シリコーン処理としては、メチルハイドロジェンポリシロキサン処理、ジメチルポリシロキサン処理、アルキルアルコキシシラン処理等が挙げられ、フッ素処理としては、パーフルオロアルキルリン酸エステル処理、パーフルオロアルキルアルコキシシラン処理等が挙げられ、脂肪酸処理としては、ステアリン酸処理、ミリスチン酸処理等が挙げられ、N-アシルアミノ酸処理としては、ラウロイルリジン処理、ジラウロイルグルタミン酸リシンNa処理、ステアロイルグルタミン酸2Na処理、ラウロイルアスパラギン酸Na処理等が挙げられる。
疎水化処理としては、塗布後の肌のべたつき、粉感を低減させるツヤ感、シミに対するカバー力を向上させ、重ね塗りしたファンデーションのムラ付き、取れにくさを低減させる観点から、シリコーン処理、フッ素処理から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、メチルハイドロジェンポリシロキサン処理、ジメチルポリシロキサン処理、アルキルアルコキシシラン処理、パーフルオロアルキルアルコキシシラン処理から選ばれる1種又は2種以上がより好ましく、アルキルアルコキシシラン処理、パーフルオロアルキルアルコキシシラン処理から選ばれる1種又は2種以上がさらに好ましく、少なくともアルキルアルコキシシラン処理を含むものがよりさらに好ましい。
アルキルアルコキシシランとしては、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、カプリリルトリメトキシシラン、カプリリルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン等が挙げられ、塗布後の肌のべたつき、粉感を低減させ、シミに対するカバー力を向上させ、重ね塗りしたファンデーションのムラ付き、取れにくさを低減させる観点から、カプリリルトリエトキシシランが好ましい。
【0018】
微粒子酸化チタンを疎水化処理するには、通常の方法により、乾式処理、湿式処理等を行えばよい。
処理量は、塗布後の肌のべたつき、粉感を低減させ、シミに対するカバー力を向上させ、重ね塗りしたファンデーションのムラ付き、取れにくさを低減させる観点から、微粒子酸化チタンの質量に対して、0.1~20質量%であるのが好ましく、1~18質量%がより好ましく、3~15質量%がさらに好ましく、5~12質量%がよりさらに好ましい。
【0019】
成分(C)は、1種又は2種以上を用いることができ、含有量は、塗布後の肌のべたつき、粉感を低減させ、シミに対するカバー力を向上させ、重ね塗りしたファンデーションのムラ付き、取れにくさを低減させる観点から、全組成中に0.1~15質量%であり、0.8~11質量%が好ましく、2~7質量%がより好ましい。
なお、成分(C)として、疎水化処理したものを用いる場合、成分(C)の含有量は、疎水化処理した剤を含めての質量を意味する。
【0020】
本発明において、成分(C)に対する成分(A)の質量割合(A)/(C)は、塗布後の肌のべたつき、粉感を低減し、ツヤ感、シミに対するカバー力を向上させ、重ね塗りしたファンデーションのムラ付き、取れにくさを低減させる観点から、0.01~10であるのが好ましく、0.05~5がより好ましく、0.15~3がさらに好ましく、0.3~1がよりさらに好ましい。
【0021】
本発明において、成分(C)に対する成分(B)の質量割合(B)/(C)は、塗布後の肌のべたつき、粉感を低減し、ツヤ感、シミに対するカバー力を向上させ、重ね塗りしたファンデーションのムラ付き、取れにくさを低減させる観点から、0.005~0.5であるのが好ましく、0.011~0.2がより好ましく、0.018~0.07がさらに好ましい。
【0022】
本発明で用いる成分(D)は、疎水化処理された着色顔料である。
着色顔料としては、通常の化粧料に用いられるもので、例えば、成分(C)以外の酸化チタン、酸化亜鉛、微粒子酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化アルミニウム、黄酸化鉄、黒酸化鉄、ベンガラ、紺青、群青、酸化クロム、水酸化クロム等の金属酸化物、マンガンバイオレット、チタン酸コバルト等の金属錯体、更にカーボンブラック等の無機顔料;タール系色素、レーキ顔料等の有機顔料、カルミン等の天然色素などが挙げられる。なお、成分(C)以外の酸化チタンは、一次粒子径が0.1μm以上のものが好ましく、0.2μm以上のものがより好ましい。
着色顔料としては、シミに対するカバー力を向上させ、肌をきれいなメイクアップ効果で仕上げる観点から、酸化チタン、黄酸化鉄、黒酸化鉄、ベンガラ、微粒子酸化亜鉛から選ばれる少なくとも1種又は2種以上を含むのが好ましく、酸化チタン、黄酸化鉄、黒酸化鉄、ベンガラ、微粒子酸化亜鉛から選ばれる少なくとも1種又は2種以上を含むのがより好ましく、酸化チタン、黄酸化鉄、黒酸化鉄、ベンガラから選ばれる少なくとも1種又は2種以上を含むのがさらに好ましい。
【0023】
これらの着色顔料の疎水化処理としては、成分(C)と同様のものが挙げられる。
疎水化処理としては、塗布後の肌の粉感を低減し、シミに対するカバー力を向上させる観点から、シリコーン処理、N-アシルアミノ酸処理から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、シリコーン処理から選ばれる1種又は2種以上がより好ましく、メチルハイドロジェンポリシロキサン処理、ジメチルポリシロキサン処理、アルキルアルコキシシラン処理から選ばれる1種又は2種以上がさらに好ましく、メチルハイドロジェンポリシロキサン処理、ジメチルポリシロキサン処理がよりさらに好ましく、ジメチルポリシロキサン処理がことさら好ましい。
【0024】
着色顔料を疎水化処理するには、通常の方法により、乾式処理、湿式処理等を行えばよい。
処理量は、塗布後の肌の粉感を低減し、シミに対するカバー力を向上させる観点から着色顔料の質量に対して、0.1~20質量%であるのが好ましく、0.5~10質量%がより好ましく、1~7質量%がさらに好ましい。
なお、成分(D)の含有量は、疎水化処理した剤を含めての質量を意味する。
【0025】
成分(D)は、1種又は2種以上を用いることができ、塗布後の肌の粉感を低減し、シミに対するカバー力を向上させる観点から、含有量は、全組成中に1~20質量%であり、3~18質量%が好ましく、8~17質量%がより好ましい。
【0026】
本発明の油中水型乳化化粧料は、さらに、(E)架橋型オルガノポリシロキサンを含有することができ、塗布後の肌のべたつき、重ね塗りしたファンデーションのムラ付き低減させることができる。
成分(E)の架橋型オルガノポリシロキサンは、ポリオキシアルキレンで修飾されていてもよく、具体的には、架橋型ジメチルポリシロキサン、架橋型アルキルポリシロキサン、ポリオキシアルキレンで修飾された架橋型ジメチルポリシロキサン、ポリオキシアルキレンで修飾された架橋型アルキルポリシロキサンなどが挙げられる。なお、架橋型ジメチルポリシロキサンは、シロキサン骨格を三次元架橋させた架橋構造を有する重合物であり、架橋型アルキルポリシロキサンは、さらに、炭素数6~20のアルキル基を有するものである。
【0027】
架橋型ジメチルポリシロキサンとしては、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ジメチコン/フェニルビニルジメチコン)クロスポリマー等が挙げられ、塗布後の肌のべたつき、重ね塗りしたファンデーションのムラ付き低減させる観点から、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ジメチコン/フェニルビニルジメチコン)クロスポリマーから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマーがより好ましい。
【0028】
(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマーとしては、デカメチルシクロペンタシロキサンとの混合物であるKSG-15、低粘度ジメチルポリシロキサンとの混合物であるKSG-16(以上、信越化学工業社製)などの市販品を用いることができる。
(ジメチコン/フェニルビニルジメチコン)クロスポリマーとしては、メチルフェニルポリシロキサンとの混合物であるKSG-18(信越化学工業社製)などの市販品を用いることができる。
【0029】
架橋型アルキルポリシロキサンとしては、(ビニルジメチコン/ラウリルジメチコン)クロスポリマー等が挙げられる。
(ビニルジメチコン/ラウリルジメチコン)クロスポリマーとしては、流動パラフィンとの混合物であるKSG-41、軽質イソパラフィンとの混合物であるKSG-42、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリルとの混合物であるKSG-43、スクワランとの混合物であるKSG-44(以上、信越化学工業社製)などの市販品を用いることができる。
【0030】
ポリオキシアルキレンで修飾された架橋型ジメチルポリシロキサンとしては、(ジメチコン/(PEG-10/15))クロスポリマー等が挙げられる。
(ジメチコン/(PEG-10/15))クロスポリマーとしては、低粘度ジメチルポリシロキサンとの混合物であるKSG-210、デカメチルシクロペンタシロキサンとの混合物であるKSG-240(以上、信越化学工業社製)などの市販品を用いることができる。
【0031】
ポリオキシアルキレンで修飾された架橋型アルキルポリシロキサンとしては、(PEG-15/ラウリルジメチコン)クロスポリマー、(PEG-10/ラウリルジメチコン)クロスポリマー等が挙げられ、塗布後の肌のべたつき、重ね塗りしたファンデーションのムラ付き低減させる観点から、(PEG-15/ラウリルジメチコン)クロスポリマー、(PEG-10/ラウリルジメチコン)クロスポリマーから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、(PEG-15/ラウリルジメチコン)クロスポリマーと(PEG-10/ラウリルジメチコン)クロスポリマーを同時に含むことがより好ましい。
【0032】
(PEG-15/ラウリルジメチコン)クロスポリマーとしては、流動パラフィンとの混合物であるKSG-310、軽質イソパラフィンとの混合物であるKSG-320、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリルとの混合物であるKSG-330(以上、信越化学工業社製)などの市販品を用いることができる。
(PEG-15/ラウリルジメチコン)クロスポリマーと(PEG-10/ラウリルジメチコン)クロスポリマーの混合物としては、スクワランとの混合物であるKSG-340(信越化学工業社製)などの市販品を用いることができる。
【0033】
成分(E)の架橋型オルガノポリシロキサンとしては、塗布後の肌のべたつき、重ね塗りしたファンデーションのムラ付き低減させる観点から、架橋型ジメチルポリシロキサン、ポリオキシアルキレンで修飾された架橋型ジメチルポリシロキサン、ポリオキシアルキレンで修飾された架橋型アルキルポリシロキサンから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、架橋型ジメチルポリシロキサンから選ばれる1種又は2種以上がより好ましく、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマーがさらに好ましい。
【0034】
成分(E)の架橋型オルガノポリシロキサンは、固体状のまま使用しても良く、液状油と均一に混合したものを使用しても良い。なかでも、化粧料中への分散性、作業性の点から、液状油によって希釈された分散液として用いるのが好ましく、シリコーン油、炭化水素油、エステル油から選ばれる1種又は2種以上を用いるのがより好ましく、シリコーン油、炭化水素油から選ばれる1種又は2種以上を用いるのがさらに好ましく、シリコーン油がよりさらに好ましい。
【0035】
成分(E)は、1種又は2種以上を用いることができ、塗布後の肌のべたつき、重ね塗りしたファンデーションのムラ付き低減させる観点から、含有量は、全組成中に0.1~3質量%であるのが好ましく、0.5~2.4質量%がより好ましく、0.8~1.8質量%がさらに好ましい。
【0036】
本発明の油中水型乳化化粧料は、さらに、板状粉体を含有することができ、塗布後の肌のシミに対するカバー力を向上させ、重ね塗りしたファンデーションのムラ付き、取れにくさを低減させることができる。
ここで、板状とは、形状が狭義の板状の他、薄片状、鱗状等の形状の粉体も含まれる。
板状粉体は、塗布後の肌のシミに対するカバー力を向上させ、重ね塗りしたファンデーションのムラ付き、取れにくさを低減させる観点から、体積平均粒子径1~100μmであるのが好ましく、5~60μmがより好ましく、8~50μmがさらに好ましい。また、アスペクト比は、10~100が好ましく、30~90がより好ましい。
【0037】
本発明において、体積平均粒子径は、レーザー回折散乱粒度分布測定器(セイシン企業社製、LMS-350)により測定される。また、本発明において、体積平均粒子径とは、体積基準の平均粒子径であり、50%メジアン径とする。
また、アスペクト比は、体積平均粒子径と粒子の平均厚さとの比により計算されるものであり、アスペクト比=(体積平均粒子径/平均厚さ)で定義される。
なお、粒子の平均厚さは、走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡により観察して測定した10~50個の母粒子の厚さを数平均して求められる。
【0038】
板状粉体としては、例えば、板状酸化セリウム、板状硫酸バリウム、タルク、マイカ、板状カオリン、セリサイト、白雲母、板状合成雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、リチア雲母、板状無水ケイ酸、板状ヒドロキシアパタイト、ベントナイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、板状セラミックスパウダー、板状アルミナ、板状窒化ホウ素、板状酸化鉄、酸化チタン被覆雲母、酸化チタン処理マイカ、オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆タルク、魚鱗箔、酸化チタン被覆着色雲母、アルミニウム、板状ガラス末等が挙げられる。
板状粉体としては、塗布後の肌のシミに対するカバー力を向上させ、重ね塗りしたファンデーションのムラ付き、取れにくさを低減させる観点から、タルク、マイカ、板状合成雲母、板状窒化ホウ素、板状ガラス末から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、タルク、板状合成雲母、板状窒化ホウ素から選ばれる1種又は2種以上がより好ましく、タルク、板状合成雲母から選ばれる1種又は2種以上がさらに好ましく、タルクがよりさらに好ましい。
【0039】
また、板状粉体は、そのまま用いることができるほか、必要に応じて、成分(C)と同様に、疎水化処理したものを用いることもできる。
なお、板状粉体を疎水化処理した場合、その含有量、体積平均粒子径、粒子の厚さは、疎水化処理した剤を含めての含有量、体積平均粒子径、粒子の厚さを意味する。
【0040】
板状粉体は、1種又は2種以上を用いることができ、含有量は、塗布後の肌のシミに対するカバー力を向上させ、重ね塗りしたファンデーションのムラ付き、取れにくさを低減させる観点から、全組成中に1~30質量%が好ましく、1.5~20質量%がより好ましく、2~10質量%がさらに好ましい。
【0041】
本発明の油中水型乳化化粧料は、さらに、揮発性油を含有することができ、塗布後の肌のべたつき、重ね塗りしたファンデーションのムラ付き、取れにくさを低減させることができる。
ここで、揮発性とは、35~100℃の引火点を有するものである。
揮発性油としては、通常の化粧料に用いられるものであればいずれでも良く、シリコーン油、炭化水素油、エーテル油等が挙げられる。
シリコーン油としては、鎖状ジメチルポリシロキサン、環状ジメチルポリシロキサンが挙げられる。鎖状ジメチルポリシロキサンとしては、直鎖、分岐鎖のいずれでもよく、直鎖のものとしては、ジメチルポリシロキサン(1.5cs)、ジメチルポリシロキサン(2cs)等が挙げられ、分岐鎖のもとしては、メチルトリメチコン、トリス(トリメチルシリル)メチルシラン、テトラキス(トリメチルシリル)シラン等が挙げられる。環状ジメチルポリシロキサンとしては、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等が挙げられる。
炭化水素としては、イソドデカン、イソトリデカン、イソヘキサデカン、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン等が挙げられ、エーテル油としては、エチルパーフルオロブチルエーテル等が挙げられる。
【0042】
これらのうち、塗布後の肌のべたつき、重ね塗りしたファンデーションのムラ付き、取れにくさを低減させる観点から、シリコーン油、炭化水素油から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、ジメチルポリシロキサン(2cs)、デカメチルシクロペンタシロキサン、イソドデカン、軽質イソパラフィンから選ばれる1種又は2種以上がより好ましく、ジメチルポリシロキサン(2cs)、デカメチルシクロペンタシロキサンから選ばれる1種又は2種以上がよりさらに好ましい。
【0043】
揮発性油は、1種又は2種以上を用いることができ、含有量は、塗布後の肌のべたつき、重ね塗りしたファンデーションのムラ付き、取れにくさを低減させること観点から、全組成中に5~40質量%であるのが好ましく、8~35質量%がより好ましく、10~30質量%がさらに好ましい。
【0044】
本発明の油中水型乳化化粧料において、水の含有量は、全組成中に10~70質量%であるのが好ましく、15~60質量%がより好ましく、20~50質量%がさらに好ましい。
【0045】
本発明の油中水型乳化化粧料は、前記成分以外に、通常化粧料に用いられる成分、例えば、前記以外の粉体、前記以外の油性成分、前記以外の高分子化合物、界面活性剤、酸化防止剤、香料、色素、防腐剤、pH調整剤、血行促進剤、冷感剤、制汗剤、殺菌剤、皮膚賦活剤、保湿剤、清涼剤等を含有することができる。
【0046】
本発明の油中水型乳化化粧料は、通常の方法に従って製造することができ、液状、乳液液、ペースト状、クリーム状、ジェル状等の剤型にすることができ、液状、乳液状、クリーム状が好ましい。
また、本発明の油中水型乳化化粧料は、化粧下地、ファンデーション、コンシーラー;ほお紅、アイシャドウ、マスカラ、アイライナー、アイブロウ、オーバーコート剤、口紅等のメイクアップ化粧料;日やけ止め乳液、日焼け止めクリーム等の紫外線防御化粧料などとして適用することができる。なかでも、化粧下地、ファンデーションがより好ましい。
本発明の油中水型乳化化粧料は、単品のみの使用においても、リキッドファンデーションやパウダーファンデーション・白粉等の粉体化粧料の重ね付けにおいても使用することができる。
【実施例】
【0047】
製造例1(テトライソステアリン酸ジペンタエリスリチルの製造):
攪拌機、温度計、窒素ガス吹込管及び水分離管を備えた3Lの4つロフラスコに、ジペンタエリスリトール〔商品名:ジ・ペンタリット、広栄化学工業社製〕58.4g(0.23モル)と2-(1,3,3-トリメチル)ブチル-5,7,7-トリメチルオクタン酸〔商品名:イソステアリン酸、日産化学工業社製〕293.9g(1.03モル)を仕込んだ(原料仕込み質量比=10:50.3)。その後、ジブチルチンオキサイド(触媒)を全仕込み量の0.05質量%、キシレン(還流溶剤)を全仕込み量の5質量%加え、攪拌しながら200~250℃で約21時間反応を行った。反応終了後、還流溶剤であるキシレンを減圧留去した。キシレンを除去した反応物を、活性白土により吸着処理し、次いで60℃程度まで冷却後ろ過し、常法にて脱臭・蒸留処理を行うことで、テトライソステアリン酸ジペンタエリスリチルを245g得た。
25℃における粘度は、35万mPa・sであり、25℃で液状であった。粘度は、ブルックフィールド型粘度計(BH型)を用い、25℃にてローターNo.6を用い、2rpmにて測定した。
【0048】
実施例1~8及び比較例1~2
表1に示す組成の油中水型乳化化粧料(化粧下地)を製造し、塗布後の肌のべたつきのなさ、塗布後の肌の粉感のなさ、塗布後の肌のツヤ感、塗布後の肌のシミに対するカバー力、重ね塗りしたファンデーションのムラ付きのなさ、重ね塗りしたファンデーションの取れにくさを評価した。結果を表1に併せて示す。
【0049】
(製法)
粉体相成分を混合粉砕し、別途混合した油相成分に添加してディスパー(2000rpm)で10分間分散した。その後、水相成分を添加し、ディスパー(800rpm)で10分間撹拌して、油中水型乳化化粧料を得た。
【0050】
(評価方法)
(1)塗布後の肌のべたつきのなさ:
5名の専門評価者が、スポンジを用いて各油中水型乳化化粧料を、前腕内側の肌に2×3cm2の大きさに0.03g塗布し、塗布直後のべたつきのなさを、下記の5段階で官能評価した。結果を5名の合計点で示した。
5;べたつきがない。
4;べたつきがあまりない。
3;べたつきがややない。
2;べたつきが少しある。
1;べたつきがある。
【0051】
(2)塗布後の肌の粉感のなさ:
5名の専門評価者が、スポンジを用いて各油中水型乳化化粧料を、前腕内側の肌に2×3cm2の大きさに0.03g塗布し、塗布直後の粉感のなさを、下記の5段階で目視評価した。なお、粉感は、キメの溝の中の粉のたまり具合いを目視で評価し、粉がたまっていないように見える場合を、粉感を感じないとし、粉がたまったように見える場合を、粉感を感じるとした。結果を5名の合計点で示した。
5;粉感を感じない。
4;粉感をあまり感じない。
3;粉感をやや感じない。
2;粉感を少し感じる。
1;粉感を感じる。
【0052】
(3)塗布後の肌のツヤ感:
5名の専門評価者が、スポンジを用いて各油中水型乳化化粧料を、前腕内側の肌に2×3cm2の大きさに0.03g塗布し、塗布直後のツヤ感のなさを、下記の5段階で目視評価した。結果を5名の合計点で示した。
5;ツヤがかなりある。
4;ツヤがある。
3;ツヤがややある。
2;ツヤがあまりない。
1;ツヤがない。
【0053】
(4)塗布後の肌のシミに対するカバー力:
5名の専門評価者が、スポンジを用いて各油中水型乳化化粧料を、シミレプリカ(ビューラックス社製、バイオスキン)に、2×3cm2の大きさに0.03g塗布し、各油中水型乳化化粧料を塗布する前のシミレプリカの状態からシミの隠れ具合を下記の5段階で目視評価した。結果を5名の合計点で示した。
5;シミが目立たない。
4;シミがあまり目立たない。
3;シミがやや目立たない。
2;シミが少し目立つ。
1;シミが目立つ。
【0054】
(5)重ね塗りしたファンデーションのムラ付きのなさ:
5名の専門評価者が、スポンジを用いて各油中水型乳化化粧料を、前腕内側の肌に2×3cm2の大きさに0.03g塗布した。その後、各油中水型乳化化粧料を塗布した肌の上に、別のスポンジを用いてパウダーファンデーション(花王社製、アルブラン 潤白美肌パウダーファンデーション)を塗布し、塗布直後のムラの状態について下記の5段階で目視評価した。結果を5名の合計点で示した。
5;ムラ付きがない。
4;ムラ付きがあまりない。
3;ムラ付きがややない。
2;ムラ付きが少しある。
1;ムラ付きがある。
【0055】
(6)重ね塗りしたファンデーションの取れにくさ :
5名の専門評価者が、スポンジを用いて各油中水型乳化化粧料を、前腕内側の肌に2×3cm2の大きさに0.03g塗布した。その後、各油中水型乳化化粧料を塗布した肌の上に、別のスポンジを用いてパウダーファンデーション(花王社製、アルブラン 潤白美肌パウダーファンデーション)を塗布した。ファンデーションを塗布した肌の部分は、ファンデーションで覆われている。5分後、ファンデーションを塗布した肌を、指を用いて一定の力で5回擦り、擦った部分の状態を目視評価した。結果を5名の合計点で示した。
5;肌の表面が、ファンデーションで覆われて、塗布したファンデーションの色が変化していない。
4;肌の表面が、ファンデーションで覆われて、塗布したファンデーションの色が薄くなっている。
3;肌の表面が、ファンデーションで覆われていない部分がわずかにあり、塗布したファンデーションの色が薄くなっている。
2;肌の表面が、ファンデーションで覆われていない部分が一部あり、塗布したファンデーションの色が薄くなっている。
1;肌の表面が、ファンデーションで覆われていない部分がほとんどである。
【0056】
【0057】
処方例1
実施例1~8と同様にして、表2に示す組成の油中水型乳化化粧料を製造した。
得られた油中水型乳化化粧料は、塗布後の肌がべたつかず、粉感が低減され、仕上がりのツヤ感、シミに対するカバー力に優れ、ファンデーションを重ね塗りした場合には、ムラ付きせず、取れにくいものである。
【0058】