(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】車両、及び、車両の生産方法
(51)【国際特許分類】
B60K 15/05 20060101AFI20230801BHJP
B60L 53/16 20190101ALI20230801BHJP
【FI】
B60K15/05 B
B60L53/16
(21)【出願番号】P 2021053871
(22)【出願日】2021-03-26
【審査請求日】2022-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】篠田 佳典
【審査官】宇佐美 琴
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-125188(JP,A)
【文献】特開2019-148160(JP,A)
【文献】特開2017-212133(JP,A)
【文献】特開2013-113059(JP,A)
【文献】特開2012-215055(JP,A)
【文献】特開2017-155520(JP,A)
【文献】特開2014-118694(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0200210(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 15/00-15/10
B62D 17/00-25/08,
25/14-29/04
B60L 1/00- 3/12,
7/00-13/00,
15/00-58/40
E05B 77/00-85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両であって、
車体と、
インレットと、
前記インレットを覆うリッドと、
前記インレットまたは前記リッドをロックする給電部電子ロック装置と、
前記給電部電子ロック装置の手動解除部に接続されているケーブルモジュール、
を有し、
前記ケーブルモジュールが、
ベース部と、ガイド部と、取付部とを有する保持部材と、
前記ベース部上に配置されており、把持部と前記把持部に接続されているケーブルとを有するケーブル部材と、
を有し、
前記保持部材が、前記車体に固定されており、
前記ケーブルが、前記給電部電子ロック装置の前記手動解除部に接続されており、
前記ガイド部が、前記ベース部の上面に設けられており、前記ケーブルの長手方向に沿って前記ケーブル部材が前記ベース部に対してスライドできるように前記ケーブルをガイドし、
前記取付部が、前記ベース部から上方に伸びており、
前記保持部材が、前記ケーブル部材を、第1位置と第2位置とに保持することが可能であり、
前記第2位置では、前記第1位置よりも、前記ケーブルのうちの前記ガイド部と前記把持部の間に位置する中間部の長さが長く、
前記第2位置では、前記中間部が曲がった状態で前記把持部が前記取付部上に取り付けら
れ、
前記保持部材が、前記ケーブル部材を前記第2位置に保持している、
車両。
【請求項2】
前記ベース部の前記上面に、一対の突出部が設けられており、
前記ケーブル部材が前記第2位置にあるときに、曲がった状態の前記中間部が前記一対の突出部の間に配置される、
請求項1に記載の
車両。
【請求項3】
前記
一対の突出部のそれぞれが、前記ガイド部に近づくに従って前記ベース部の前記上面に近づくように傾斜した傾斜面を有し、
前記第1位置では、前記把持部が前記
一対の突出部のぞれぞれの前記傾斜面に接触した状態で前記ケーブル部材が前記保持部材に保持される、
請求項2に記載の
車両。
【請求項4】
前記ガイド部が、前記ケーブルの上面に対向する対向部を有しており、
前記ケーブルの前記上面が、前記ガイド部を通過可能な第1凸部を有する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の
車両。
【請求項5】
前記ケーブルの前記上面が、前記第1凸部よりも前記ケーブルの先端に近い側に配置されており、前記ガイド部を通過不可能な第2凸部を有する、請求項4に記載の
車両。
【請求項6】
請求項1に記載の車両の生産方法であって、
前記保持部材を前記車体に固定する工程と、
前記保持部材が前記ケーブル部材を前記第1位置に保持している状態で、前記ケーブルを前記給電部電子ロック装置の前記手動解除部に接続する工程と、
前記ケーブルを前記給電部電子ロック装置の前記手動解除部に接続する前記工程を実施した後に、前記把持部を引っ張ることによって前記ケーブル部材を前記第1位置から前記第2位置へ移動させる工程、
を有する生産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、ケーブルモジュールに関する。
【0002】
特許文献1には、車両に搭載された充電用のインレットに充電コネクタを接続する接続機構が開示されている。この接続機構は、充電コネクタをインレットにロックする電子ロック装置を有している。この電子ロック装置は、通常は、モータの駆動力によってロック及びロック解除を実行する。また、この電子ロック装置は、解除操作部を有している。作業者が解除操作部を引っ張ると、電子ロック装置によるロックが解除され、充電コネクタをインレットから取り外すことが可能となる。このように、この電子ロック装置では、手動によるロックの解除が可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業者が解除操作部を引っ張ったときにロックが解除される電子ロック装置においては、解除操作部をケーブルによって構成することができる。解除操作部がケーブルによって構成されている場合、ケーブルの緩みを少なくする必要がある。ケーブルの緩みが大きいと、適切にロックを解除できない場合があるためである。他方、電子ロック装置を設置する際には、ケーブルの緩みが小さいと、ケーブルを電子ロック装置に接続する作業が困難となる。本明細書では、ケーブルの緩みを抑制しながらケーブルを電子ロック装置に接続可能なケーブルモジュールを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示するケーブルモジュールは、電子ロック装置の手動解除部に接続される。このケーブルモジュールは、保持部材とケーブル部材とを有する。前記保持部材は、ベース部と、ガイド部と、取付部とを有する。前記ケーブル部材は、前記ベース部上に配置されている。前記ケーブル部材は、把持部と前記把持部に接続されているケーブルとを有する。前記ガイド部が、前記ベース部の上面に設けられており、前記ケーブルの長手方向に沿って前記ケーブル部材が前記ベース部に対してスライドできるように前記ケーブルをガイドする。前記取付部が、前記ベース部から上方に伸びている。前記保持部材が、前記ケーブル部材を、第1位置と第2位置とに保持することが可能である。前記第2位置では、前記第1位置よりも、前記ケーブルのうちの前記ガイド部と前記把持部の間に位置する中間部の長さが長い。前記第2位置では、前記中間部が曲がった状態で前記把持部が前記取付部上に取り付けられる。
【0006】
なお、第1位置においては、中間部の長さがゼロであってもよい。
【0007】
このケーブルモジュールを電子ロック装置に接続するときには、まず、保持部材を固定する。例えば、車両に搭載された電子ロック装置にケーブルモジュールを接続する場合には、保持部材を車体に固定することができる。次に、保持部材がケーブル部材を第1位置に保持している状態で、ケーブルを電子ロック装置の手動解除部に接続する。第1位置では、ケーブルのうちのガイド部と把持部の間に位置する中間部の長さが短いので、ガイド部よりも先端側のケーブルの長さが長い。このため、ケーブルを電子ロック装置の手動解除部に容易に接続することができる。この段階では、手動解除部に接続されたケーブルは緩んでいる。次に、把持部を引っ張ることで、ケーブルの緩みを解消する。また、把持部を引っ張ると、ケーブルの中間部の長さが長くなる。次に、長さが長くなった中間部を曲げることによって、把持部を取付部上に取り付ける。これによって、ケーブル部材が第2位置に保持される。このようにケーブル部材を第2位置に保持することで、ケーブルの緩みが小さい状態でケーブル部材を固定することができる。また、第2位置では、ケーブル部材が曲がった状態で保持されるので、ケーブル部材が占有する横方向のスペースが小さい。このため、ケーブル部材と他の部材との干渉を抑制することができる。このため、このケーブルモジュールは、横方向の設置スペースに制限がある場合でも使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】ケーブル部材が第1位置にあるときのケーブルモジュールの斜視図。
【
図2】ケーブル部材が第1位置にあるときのケーブルモジュールの正面図。
【
図3】ケーブル部材が第1位置にあるときのケーブルモジュールの側面図。
【
図4】ケーブル部材が第1位置にあるときの把持部とその周辺部材の拡大斜視図。
【
図5】ケーブルの長手方向に沿う切断面における保持部材の断面図。
【
図7】ケーブル部材が第2位置にあるときの把持部とその周辺部材の拡大斜視図。
【
図8】ケーブル部材が第2位置にあるときのケーブルモジュールの斜視図。
【
図9】ケーブル部材が第2位置にあるときの把持部とその周辺部材の拡大側面図。
【
図13】車体への取り付け後のケーブルモジュールの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書が開示する一例のケーブルモジュールでは、前記ベース部の前記上面に、一対の突出部が設けられていてもよい。前記ケーブル部材が前記第2位置にあるときに、曲がった状態の前記中間部が前記一対の突出部の間に配置されてもよい。
【0010】
この構成では、曲がった状態の中間部と一対の突出部との位置関係によって、ケーブル部材が適正位置に配置されているか否かを判別することができる。
【0011】
本明細書が開示する一例のケーブルモジュールでは、前記各突出部が、前記ガイド部に近づくに従って前記ベース部の前記上面に近づくように傾斜した傾斜面を有していてもよい。前記第1位置では、前記把持部が前記各突出部の前記傾斜面に接触した状態で前記ケーブル部材が前記保持部材に保持されてもよい。
【0012】
この構成によれば、第1位置において把持部がベース部の上面に対して傾斜した状態で保持される。このため、把持部を引っ張り易い。
【0013】
本明細書が開示する一例のケーブルモジュールでは、前記ガイド部が、前記ケーブルの上面に対向する対向部を有していてもよい。前記ケーブルの前記上面が、前記ガイド部を通過可能な第1凸部を有していてもよい。
【0014】
この構成によれば、作業者が把持部を引っ張ることで第1凸部がガイド部を通過すると、作業者に振動が伝わる。これによって、作業者は、適切な作業を実施できていることを確認することができる。
【0015】
本明細書が開示する一例のケーブルモジュールでは、前記ケーブルの前記上面が、前記第1凸部よりも前記ケーブルの先端に近い側に配置されており、前記ガイド部を通過不可能な第2凸部を有していてもよい。
【0016】
この構成によれば、把持部が必要以上に引っ張られることを防止できる。
【0017】
また、本明細書は、ケーブルモジュールを有する車両を提案する。この車両は、車体と、インレットと、前記インレットを覆うリッドと、前記インレットまたは前記リッドをロックする給電部電子ロック装置と、を有する。前記保持部材が、前記車体に固定されている。前記ケーブルが、前記給電部電子ロック装置の手動解除部に接続されている。前記保持部材が、前記ケーブル部材を前記第2位置に保持している。
【0018】
この車両によれば、給電部電子ロック装置の手動解除部に緩みが少ない状態でケーブルが接続されているので、ケーブルを引っ張ることで容易に給電部電子ロック装置のロックを解除できる。
【0019】
また、本明細書は、車両の生産方法を提案する。この生産方法は、前記保持部材を前記車体に固定する工程と、前記保持部材が前記ケーブル部材を前記第1位置に保持している状態で前記ケーブルを前記給電部電子ロック装置の前記手動解除部に接続する工程と、前記ケーブルを前記給電部電子ロック装置の前記手動解除部に接続する前記工程を実施した後に前記把持部を引っ張ることによって前記ケーブル部材を前記第1位置から前記第2位置へ移動させる工程、を有する。
【0020】
この生産方法によれば、ケーブルに緩みがある状態で容易にケーブルを給電部電子ロック装置に接続することができる。また、ケーブルの接続後に、ケーブル部材を第2位置へ移動させることで、ケーブルの緩みを減少させることができる。
【0021】
図1~3に示す実施形態のケーブルモジュール10は、保持部材20とケーブル部材30を有している。ケーブル部材30は、全体が樹脂により構成された部材である。ケーブル部材30は、保持部材20によって保持されている。ケーブル部材30は保持部材20に対して移動することができる。
図1~3は、ケーブル部材30の第1位置を示している。
図8は、ケーブル部材30の第2位置を示している。ケーブル部材30は、第1位置と第2位置の間で移動することができる。
【0022】
図1~3に示すように、ケーブル部材30は、把持部32と係合部33とケーブル34を有している。把持部32は、人の指を挿入可能なリング形状を有している。係合部33は、把持部32から突出する一対の突出部によって構成されている。係合部33を構成する各突出部の先端には、爪部が設けられている。ケーブル部材30が第1位置にある状態では、係合部33を構成する各突出部は、把持部32から上方に向かって突出している。係合部33は、後述する取付部25と係合可能な形状を有している。ケーブル34は、把持部32に接続されている。ケーブル34は、柔軟性を有している。ケーブル34の先端34t(把持部32とは反対側のケーブル34の端部)には、他の部材を連結可能な連結部34cが設けられている。
【0023】
保持部材20は、ベース部24、第1ガイド部21、第2ガイド部22、及び、取付部25を有している。
【0024】
ベース部24の上面は、略水平に伸びる水平面24aと、傾斜して伸びる傾斜面24bを有している。傾斜面24bは、水平面24aから斜め下方向に伸びている。ケーブル部材30は、ベース部24上に配置されている。ケーブル部材30が第1位置にある状態では、把持部32が水平面24a上に配置されており、把持部32から伸びるケーブル34が水平面24a上から傾斜面24b上に伸びている。ケーブル34は傾斜面24bの下端24xよりも下側まで伸びている。したがって、ケーブル34の先端34t側の部分が傾斜面24bの下端24xから下側に垂れ下がっている。
図1に示すように、ケーブル部材30が第1位置にある状態では、ケーブル34のうちの下端24xよりも下側に位置する部分の長さLが長い。
【0025】
第1ガイド部21は、水平面24a上に設けられている。第1ガイド部21は、ケーブル34の両側に設けられた突起によって構成されている。すなわち、第1ガイド部21を構成する一対の突起の間にケーブル34が挿通されている。第1ガイド部21を構成する各突起の先端は、ケーブル34の中心側に折り曲げられており、ケーブル34の上面に対向している。第2ガイド部22は、傾斜面24b上に設けられている。第2ガイド部22は、ケーブル34の両側に設けられた突起によって構成されている。すなわち、第2ガイド部22を構成する一対の突起の間にケーブル34が挿通されている。第2ガイド部22を構成する各突起の先端は、ケーブル34の中心側に折り曲げられており、ケーブル34の上面に対向している。第1ガイド部21と第2ガイド部22は、ケーブル34がその長手方向に沿ってスライドすることを許容する一方で、ケーブル34の横方向及び上下方向への移動を制限する。
【0026】
図4、5に示すように、ケーブル34の上面には、第1凸部38aと第2凸部38bが設けられている。第1凸部38aは第2凸部38bよりも把持部32に近い位置に配置されている。第2凸部38bの突出量は、第1凸部38aの突出量よりも大きい。ケーブル部材30が第1位置にある状態では、第1凸部38aと第2凸部38bは、第1ガイド部21と第2ガイド部22の間に配置されている。
【0027】
図1~3に示すように、取付部25は、水平面24a上に設けられている。取付部25は、ケーブル34の両側に設けられた凸部によって構成されている。取付部25を構成する各凸部は、第1ガイド部21に隣接する位置に配置されている。取付部25を構成する各凸部は、水平面24aから第1ガイド部21よりも上側まで伸びている。取付部25を構成する各凸部の上端には、爪部が設けられている。取付部25は、ケーブル部材30の係合部33と係合可能な形状を有している。ケーブル部材30が第1位置にある状態では、把持部32が取付部25の側面25aに接している。言い換えると、把持部32が取付部25の側面25aに接することで、ケーブル部材30が第1位置に位置決めされる。このように、把持部32が取付部25の側面25aに接することで、ケーブル部材30が第1位置に安定して保持される。
【0028】
図4に示すように、水平面24a上に一対の壁部26が立設されている。一対の壁部26は、第1ガイド部21及び取付部25よりも把持部32側(より詳細には、第1位置にあるときの把持部32側)の水平面24a上に設けられている。一対の壁部26は、ケーブル34の延長線上に設けられた間隔部28の両側に設けられている。
図4、5に示すように、各壁部26は、第1ガイド部21に近づくに従って水平面24aに近づくように傾斜した傾斜面26aを有している。ケーブル部材30が第1位置にあるときに、把持部32の下面が各壁部26の傾斜面26aに接触する。このため、把持部32は、水平面24a上に斜めに保持される。これによって、把持部32と水平面24aの間に隙間が確保される。
【0029】
図4、5に示すように、ケーブル部材30が第1位置にある状態では、ケーブル34のうちの把持部32と第1ガイド部21の間に位置する部分(以下、中間部35)の長さが極めて短い。
【0030】
上述したように、ケーブル部材30は、第1位置と第2位置の間で移動することができる。第1位置から第2位置にケーブル部材30を移動させる動作について説明する。ケーブル部材30を第1位置から移動させるときには、作業者は、まず、リング形状の把持部32に指を引っ掛ける。このとき、把持部32が水平面24aに対して傾斜しており、把持部32と水平面24aの間に隙間が存在するので、作業者は把持部32に容易に指を引っ掛けることができる。次に、作業者は、
図1、3の矢印100に示す方向に把持部32を引っ張る。すると、第1ガイド部21及び第2ガイド部22によってガイドされることで、ケーブル部材30がケーブル34の長手方向に沿って移動する。その結果、
図6に示すように、ケーブル部材30全体が把持部32側に移動する。なお、一対の壁部26の間の間隔部28がケーブル34の延長線上に配置されているので、
図6のようにケーブル部材30を移動させるときに、ケーブル34と壁部26との干渉を防止できる。したがって、容易にケーブル部材30を移動させることができる。
図6のようにケーブル部材30を移動させると、ケーブル34のうちの把持部32と第1ガイド部21の間の中間部35が、移動前に比べて長くなる。
【0031】
なお、ケーブル34の上面に設けられた第1凸部38aの突出量が小さいので、第1凸部38aは第1ガイド部21を通過することができる。第1凸部38aが第1ガイド部21を通過するときに、作業者に振動が伝わる。これによって、作業者は、ケーブル部材30の移動作業が適切であることを確認することができる。また、ケーブル34の上面に設けられた第2凸部38bの突出量が大きいので、第2凸部38bは第1ガイド部21を通過できない。これによって、ケーブル部材30が過剰に移動することが防止される。
【0032】
次に、作業者は、
図6の矢印102に示すように、中間部35を湾曲させながら把持部32を取付部25の上部へ移動させる。より詳細には、把持部32から突出する係合部33が下側を向く向きで、把持部32を取付部25の上部へ移動させる。次に、把持部32を取付部25へ向かって押し付ける。すると、
図7に示すように、係合部33が取付部25と係合する。より詳細には、係合部33の各爪部が取付部25の各爪部と係合する。これにより、把持部32が取付部25に固定される。把持部32は、第1ガイド部21の真上に固定される。このように把持部32が取付部25に固定されることで、ケーブル部材30が
図8に示す第2位置に保持される。ケーブル部材30が第2位置にある状態では、ケーブル34のうちの傾斜面24bの下端24xよりも下側に位置する部分の長さLが短い。すなわち、
図8では、
図1よりも長さLが短い。このように、第1位置から第2位置へケーブル部材30を移動させることで、長さLが短くなる。
【0033】
なお、第2位置では、ケーブル34の中間部35のループが壁部26の間に配置される。第2位置におけるケーブル部材30の適正位置は、
図9に示すように、ケーブル34の中間部35のループが壁部26からはみ出さない位置に設定されている。したがって、
図9の破線106で示すように中間部35のループが壁部26からはみ出している場合には、ケーブル部材30が第2位置の適正位置に配置されていない。作業者は、壁部26と中間部35のループとの位置関係を視認することで、ケーブル部材30が第2位置の適正位置に配置されているか否かを判断することができる。また、破線106のように中間部35のループが壁部26からはみ出している場合には、作業者は、矢印108に示すように中間部35のループを外側から指で押すことで、ケーブル部材30を適正位置に移動させることができる。
【0034】
次に、ケーブルモジュール10が取り付けられる車両について説明する。ケーブルモジュール10は、バッテリを内蔵しており、バッテリの電力を利用して走行する車両に取り付けられる。車両は、電気自動車であってもよいし、ハイブリッド車であってもよい。
図10に示すように、車両のフロントフェンダー50には、給電口54が設けられている。給電口54内には、給電用のインレットが設けられている。給電口54は、リッド60によって覆われている。リッド60は、フロントフェンダー50に対して回動可能に取り付けられている。リッド60によって、給電口54を開閉することができる。リッド60を開き、インレットに外部から充電コネクタを接続することで、車両のバッテリを充電することができる。
【0035】
図11は、リッド60を裏側から見た図である。リッド60には、電子ロック装置62が設置されている。電子ロック装置62は、内蔵するアクチュエータ(例えば、モータ)を作動させることで、リッド60のロック及びアンロックを行う。リッド60を閉じると、自動的に電子ロック装置62が作動して、リッド60がロックされる。すなわち、リッド60を開くことが禁止される。車両で所定の操作を行うと、電子ロック装置62によるロックが解除され、リッド60が開く。電子ロック装置62は、ワイヤ64を有している。電子ロック装置62がロックしている状態においてワイヤ64を引っ張ると、アクチュエータを作動させることなく電子ロック装置62のロックを解除することができる。すなわち、ワイヤ64は、電子ロック装置62のロックを手動で解除するための手動解除部である。何等かの原因で電子ロック装置62のアクチュエータでアンロックができなくなった場合であっても、ワイヤ64が引っ張られると電子ロック装置62のロックが解除される。
【0036】
次に、ケーブルモジュール10を車体に取り付ける方法について説明する。
図10に示すように、フロントフェンダー50の内側には、車両のボディを構成するフロントインサイドパネル70が存在する。
図11に示すように、ケーブルモジュール10のベース部24の下面には、2つの突起29が設けられている。各突起29は、スナップフィット構造を備えている。ケーブルモジュール10を車体に取り付ける工程では、突起29をフロントインサイドパネル70に設けられた孔に挿入することで、保持部材20をフロントインサイドパネル70上に固定する。なお、この段階では、ケーブル部材30は第1位置に保持されている。
【0037】
次に、ケーブル部材30が第1位置にセットされた状態で、ワイヤ64をケーブル34に接続する。
図12に示すように、ワイヤ64の先端には、球体部64aが設けられている。球体部64aをケーブル34の連結部34c内に挿入することで、ワイヤ64をケーブル34に接続することができる。上述したようにケーブル部材30が第1位置にセットされているので、ケーブル34のうちのベース部24の下端24xから外側に伸びる部分の長さL(
図1参照)が長い。したがって、ケーブル34の長さに余裕があり、作業者は容易にワイヤ64をケーブル34に接続することができる。
【0038】
次に、ケーブル部材30を第2位置へ移動させることで、ケーブル34の緩みを減少させる。すなわち、上述した方法によって、ケーブル部材30を第1位置(すなわち、
図1に示す位置)から第2位置(すなわち、
図8に示す位置)まで移動させる。すると、ケーブル34のうちのベース部24の下端24xから外側に伸びる部分の長さL(
図8参照)が短くなる。このため、ケーブル34及びワイヤ64の緩みが減少する。
【0039】
以上に説明したように、上記の生産方法によれば、ケーブル34に余裕がある状態でケーブル34をワイヤ64に接続することができるので、作業者は接続作業を容易に行うことができる。また、その後、ケーブル部材30を第2位置へ移動させることで、ケーブル34の緩みを減少させることができる。したがって、ケーブル34の緩みが少ない状態で車両を出荷することができる。
【0040】
車両の使用中に何らかの異常によって電子ロック装置62によるロックを電気的に解除できなくなった場合には、手動操作によってロックの緊急解除を行うことができる。手動操作によって電子ロック装置62によるロック(すなわち、リッド60のロック)を解除する場合には、手動操作の作業者は、ケーブル部材30の把持部32を取付部25から取り外し、把持部32を引っ張ることができる。把持部32を引っ張ると、ケーブル34を介してワイヤ64が引っ張られて、電子ロック装置62によるロックが解除される。このとき、ケーブル34及びワイヤ64の緩みが大きいと、手動操作の作業者は、把持部32を引っ張るときに張力を感じることができず、正しく作業を行えているか否か判断し難い。これに対し、上記の生産方法により生産された車両では、ケーブル34及びワイヤ64の緩みが少ないので、手動操作の作業者は把持部32を引っ張るときに張力を感じることができる。また、ケーブル34及びワイヤ64の緩みが少ないので、把持部32を少量引っぱった段階でロックが解除される。このため、作業者が判断に迷うことが防止される。作業者は、正しく電子ロック装置62によるロックを解除することができる。
【0041】
図13は、車体に取り付けた後のケーブルモジュール10を示している。
図13に示すように、フロントインサイドパネル70の周辺には、配線80等を含む車両部品が配置されており、ケーブルモジュール10の設置スペースが少ない。しかしながら、このケーブルモジュール10では、中間部35でケーブル部材30が折り曲げられた状態で固定されるので、ケーブルモジュール10が横方向において占有するスペースが少ない。このため、ケーブルモジュール10を他の車両部品と干渉させないで、ケーブルモジュール10を車体に取り付けることができる。
【0042】
なお、上述した実施形態では、リッド60をロックする電子ロック装置の手動解除部にケーブル34を接続した。しかしながら、インレットと充電コネクタとの接続部をロックする電子ロック装置を車両が搭載している場合には、当該電子ロック装置の手動解除部にケーブル34を接続してもよい。
【0043】
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの1つの目的を達成すること自体で技術有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0044】
10:ケーブルモジュール
20:保持部材
21:第1ガイド部
22:第2ガイド部
24:ベース部
25:取付部
24a:水平面
24b:傾斜面
26:壁部
26a:傾斜面
28:間隔部
30:ケーブル部材
32:把持部
33:係合部
34:ケーブル
35:中間部
38a:第1凸部
38b:第2凸部
50:フロントフェンダー
54:給電口
60:リッド
62:電子ロック装置
64:ワイヤ
70:フロントインサイドパネル