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特許7323601監視装置、表示装置、監視方法及び監視プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】監視装置、表示装置、監視方法及び監視プログラム
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20230801BHJP
【FI】
G05B23/02 301Q
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021507322
(86)(22)【出願日】2020-03-13
(86)【国際出願番号】 JP2020011282
(87)【国際公開番号】W WO2020189585
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-08-10
(31)【優先権主張番号】P 2019048584
(32)【優先日】2019-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】門脇 正法
【審査官】田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-503012(JP,A)
【文献】特開平4-372046(JP,A)
【文献】特開平7-121230(JP,A)
【文献】特開2001-216003(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントに関するプロセスデータの入力を受け付ける入力部と、
入力された前記プロセスデータに基づいて、前記プロセスデータの関係性を表すモデルを生成するモデル生成部と、
実測されていない前記プロセスデータに相当する値に基づき生成された前記モデルを用いる第1判定モード又は前記プロセスデータの実測値に基づき生成された前記モデルを用いる第2判定モードで、前記プラントの運転状態を判定する判定部と、
前記判定部による判定結果を表示する表示部と、
を備え
前記判定部は、前記実測値の数が所定の数よりも少ない場合は、前記第1判定モードで判定する監視装置。
【請求項2】
前記判定部は、実測された前記プロセスデータに基づいて、前記第1判定モード又は前記第2判定モードで、前記プラントの運転状態の異常度を算出し、前記異常度に基づいて前記プラントの運転状態を判定する、
をさらに備える請求項1に記載の監視装置。
【請求項3】
前記モデルは、前記プロセスデータの関係性を表すグラフを含み、
前記表示部は、前記グラフを表示する、
請求項1又は2に記載の監視装置。
【請求項4】
前記モデルは、実測されていない前記プロセスデータに相当する値として、人によって入力された値を利用して、前記モデルを生成する
請求項1からのいずれか一項に記載の監視装置。
【請求項5】
前記モデル生成部は、実測されていない前記プロセスデータに相当する値として、前記プロセスデータの設計値を利用して、前記モデルを生成する、
請求項1からのいずれか一項に記載の監視装置。
【請求項6】
前記入力部は、前記プロセスデータが描画される描画領域への手書きグラフの入力を受け付け、
前記手書きグラフを代表するデータ点を前記描画領域にプロットするプロット部をさらに備え、
前記モデル生成部は、前記データ点に基づいて、前記モデルを生成する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の監視装置。
【請求項7】
前記入力部は、前記描画領域に前記手書きグラフを含む手書き範囲の入力を受け付け、
前記プロット部は、前記手書きグラフ及び前記手書き範囲を代表するデータ点を前記描画領域にプロットする、
請求項6に記載の監視装置。
【請求項8】
プラントに関するプロセスデータの入力を受け付け、入力された前記プロセスデータに基づいて、前記プロセスデータの関係性を表すモデルを生成し、実測されていない前記プロセスデータに相当する値に基づき生成された前記モデルを用いる第1判定モード又は前記プロセスデータの実測値に基づき生成された前記モデルを用いる第2判定モードで、前記プラントの運転状態を判定し、判定結果を表示ここで、前記実測値の数が所定の数よりも少ない場合は、前記第1判定モードで判定した結果を表示する表示装置。
【請求項9】
プラントを監視する監視装置に、
プラントに関するプロセスデータの入力を受け付けることと、
入力された前記プロセスデータに基づいて、前記プロセスデータの関係性を表すモデルを生成することと、
実測されていない前記プロセスデータに相当する値に基づき生成された前記モデルを用いる第1判定モード又は前記プロセスデータの実測値に基づき生成された前記モデルを用いる第2判定モードで、前記プラントの運転状態を判定することと、
前記判定することによる判定結果を表示することを実行し、
前記実測値の数が所定の数よりも少ない場合は、前記第1判定モードで判定した結果を表示する監視方法。
【請求項10】
プラントを監視する監視装置に、
プラントに関するプロセスデータの入力を受け付けることと、
入力された前記プロセスデータに基づいて、前記プロセスデータの関係性を表すモデルを生成することと、
実測されていない前記プロセスデータに相当する値に基づき生成された前記モデルを用いる第1判定モード又は前記プロセスデータの実測値に基づき生成された前記モデルを用いる第2判定モードで、前記プラントの運転状態を判定することと、
前記判定することによる判定結果を表示することを実行し、
前記実測値の数が所定の数よりも少ない場合は、前記第1判定モードで判定した結果を表示する監視プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視装置、表示装置、監視方法及び監視プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラントの運転状態に関する時系列データであるプロセスデータを測定し、過去のプロセスデータを学習データとして用いて、プロセスデータの関係性を表すモデルを生成することがある。生成したモデルは、プラントが正常に動作しているか判定するために用いられることがある。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、制御装置が制御対象を制御する際の目標値と、制御対象に関する過去の実測値とを比較して、学習知識が適正か否かを判断する学習知識の評価装置が記載されている。
【0004】
また、下記特許文献2には、過去の需要量の実績データに基づいて、需要量を予測するための予測モデルを作成し、実績データと、未来の気象予測データと、予測された需要量とに基づいて、需要量を補正する需要予測装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平7-219604号公報
【文献】特開2018-73214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
過去のプロセスデータを学習データとして用いて、プロセスデータの関係性を表すモデルを生成する場合、実測したプロセスデータがある程度蓄積されていることが前提となる。しかしながら、プラントを始動した直後のように、実測したプロセスデータのデータ量が限られている場合、モデルを生成することが困難となり、プラントの運転状態を判定することができない期間が生じることがある。
【0007】
そこで、本発明は、実測したプロセスデータのデータ量が限られている場合であっても、プラントの運転状態を判定することができる監視装置、表示装置、監視方法及び監視プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る監視装置は、プラントに関するプロセスデータの入力を受け付ける入力部と、入力されたプロセスデータに基づいて、プロセスデータの関係性を表すモデルを生成するモデル生成部と、人によって入力されたプロセスデータの予測値に基づき生成されたモデルを用いる第1判定モード又はプロセスデータの実測値に基づき生成されたモデルを用いる第2判定モードで、プラントの運転状態を判定する判定部と、判定部による判定結果を表示する表示部と、を備える。
【0009】
この態様によれば、実測されていないプロセスデータの予測値に基づき生成されたモデルを用いる第1判定モードでプラントの運転状態を判定することで、実測したプロセスデータのデータ量が限られている場合であっても、プロセスデータの関係性を表すモデルを生成して、プラントの運転状態を判定することができる。これにより、プラントを始動した直後から運転状態の判定を行うことができ、ダウンタイムを減らすことができる。
【0010】
本発明の他の態様に係る表示装置は、プラントに関するプロセスデータの入力を受け付け、入力されたプロセスデータに基づいて、プロセスデータの関係性を表すモデルを生成し、人によって入力されたプロセスデータの予測値に基づき生成されたモデルを用いる第1判定モード又はプロセスデータの実測値に基づき生成されたモデルを用いる第2判定モードで、プラントの運転状態を判定し、判定結果を表示する。
【0011】
本発明の他の態様に係る監視方法は、プラントを監視する監視装置に、プラントに関するプロセスデータの入力を受け付けることと、入力されたプロセスデータに基づいて、プロセスデータの関係性を表すモデルを生成することと、人によって入力されたプロセスデータの予測値に基づき生成されたモデルを用いる第1判定モード又はプロセスデータの実測値に基づき生成されたモデルを用いる第2判定モードで、プラントの運転状態を判定することと、判定することによる判定結果を表示することと、を実行させる。
【0012】
本発明の他の態様に係る監視プログラムは、プラントに関するプロセスデータの入力を受け付けることと、入力されたプロセスデータに基づいて、プロセスデータの関係性を表すモデルを生成することと、人によって入力されたプロセスデータの予測値に基づき生成されたモデルを用いる第1判定モード又はプロセスデータの実測値に基づき生成されたモデルを用いる第2判定モードで、プラントの運転状態を判定することと、判定することによる判定結果を表示することと、を実行させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、実測したプロセスデータのデータ量が限られている場合であっても、プロセスデータの関係性を表すモデルを生成することができる監視装置、表示装置、監視方法及び監視プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る監視装置の機能ブロックを示す図である。
図2】本実施形態に係る監視装置の物理的構成を示す図である。
図3】本実施形態に係る監視装置によって生成される、プロセスデータの関係性を表すモデルを示す図である。
図4】本実施形態に係る監視装置によって算出される異常度を示す図である。
図5】本実施形態に係る監視装置によって実行される判定処理のフローチャートである。
図6】本実施形態に係る監視装置によってプロットされるデータ点を示す図である。
図7】本実施形態に係る監視装置によって実行されるモデル生成処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る監視装置10の機能ブロックを示す図である。監視装置10は、プラント100の運転状態を監視する装置であり、取得部11、モデル生成部12、判定部13、プロット部14、入力部10e及び表示部10fを備える。
【0017】
取得部11は、プラント100に関するプロセスデータを取得する。ここで、プラント100は、任意のプラントであってよいが、例えば、ボイラを含む発電プラントや焼却プラントや、化学プラント、排水処理プラント等、プロセスデータが取得できるものを対象としている。また、プロセスデータは、プラント100に関する任意のデータであってよいが、例えば、プラント100の状態をセンサで測定したデータであってよく、より具体的には、プラント100の温度、圧力及び流量等の測定値を含んでよい。取得部11は、所定の時間間隔でプロセスデータを取得したり、連続的にプロセスデータを取得したりして、プラント100に関する時系列データを取得してよい。
【0018】
取得部11は、プラント100に関する複数種類のプロセスデータを取得してよい。取得部11は、プラント100に設置された複数のセンサにより測定された複数種類のプロセスデータを取得してよい。ここで、複数種類のプロセスデータは、例えば、温度と圧力のように異なる物理量を表すデータであったり、プラント100の異なる箇所で測定された温度のように同じ物理量を表すデータであったりしてよい。
【0019】
入力部10eは、プロセスデータの入力を受け付ける。入力部10eは、タッチパネル、マウス等のポインティングデバイス又はキーボードで構成されてよく、人が予測したプロセスデータの予測値の入力を受け付けてよい。入力部10eは、プロセスデータが描画される描画領域への手書きグラフの入力を受け付けたり、手書きグラフを含む手書き範囲の入力を受け付けたりしてよい。入力部10eにより入力されるプロセスデータについては、後に図面を用いて詳細に説明する。
【0020】
表示部10fは、プロセスデータが描画される描画領域を表示する。表示部10fは、プラント100の運転状態を監視するために用いられ、監視装置10によるプラント100の運転状態の判定結果を表示してよい。表示部10fに表示される内容については、後に図面を用いて詳細に説明する。
【0021】
モデル生成部12は、入力されたプロセスデータに基づいて、プロセスデータの関係性を表すモデルを生成する。プロセスデータの関係性を表すモデルは、プラント100の運転状態が正常である場合にプロセスデータが収まる範囲を示すモデルであったり、プラント100の運転状態が異常である場合にプロセスデータが示す特徴を抽出するモデルであったりしてよい。
【0022】
モデル生成部12は、プロセスデータの設計値に基づいて、モデルを生成してもよい。ここで、プロセスデータの設計値とは、プラント設計時の目標値又は設定値を意味する。より具体的には、プロセスデータの設計値は、プラント100の設計上測定されるはずであるプロセスデータの値であり、プラント100が正常に運転している場合に測定されるプロセスデータの値である。モデル生成部12は、プラント100が正常に運転している場合に測定されるべきプロセスデータの設計値を参照し、プロセスデータの関係性を表すモデルを生成してよい。プロセスデータの設計値に基づいて、プロセスデータの関係性を表すモデルを生成することで、実測したプロセスデータのデータ量が限られている場合であっても、プロセスデータの関係性を表すモデルを生成して、プラント100の運転状態を判定することができる。
【0023】
判定部13は、人によって入力されたプロセスデータの予測値に基づき生成されたモデルを用いる第1判定モード又はプロセスデータの実測値に基づき生成されたモデルを用いる第2判定モードで、プラント100の運転状態を判定する。また、判定部13は、プロセスデータの設計値に基づいて生成されたモデルを用いて、プラント100の運転状態を判定してもよい。人によって入力されたプロセスデータの予測値に基づき生成されたモデルと、プロセスデータの実測値に基づき生成されたモデルとは、モデル生成に用いるデータが異なる同一のモデルであってよいが、異なるモデルであってもよい。また、第2判定モードは、人によって入力されたプロセスデータの予測値に基づき生成されたモデルを、プロセスデータの実測値に基づいて更新したモデルを用いるモードであってもよい。第2判定モードで用いられるモデルは、第1判定モードで用いられるモデルと独立して生成されたものであってもよいし、第1判定モードで用いられるモデルを修正したモデルであってもよい。
【0024】
本実施形態に係る監視装置10は、実測されていないプロセスデータに基づき生成されたモデルを用いる第1判定モードでプラント100の運転状態を判定することで、実測したプロセスデータのデータ量が限られている場合であっても、プロセスデータの関係性を表すモデルを生成して、プラント100の運転状態を判定することができる。これにより、プラント100を始動した直後から運転状態の判定を行うことができ、プラント100を新設した場合の立ち上げ時間を短縮したり、プラント100を一時停止した場合のダウンタイムを減らしたりすることができる。
【0025】
判定部13は、実測されたプロセスデータに基づいて、第1判定モード又は第2判定モードで、プラント100の運転状態の異常度を算出し、異常度に基づいてプラント100の運転状態を判定してもよい。判定部13により算出される異常度の例については、後に図面を用いて詳細に説明する。
【0026】
プロット部14は、入力部10eにより受け付けた手書きグラフを代表するデータ点を描画領域にプロットする。また、プロット部14は、入力部10eにより受け付けた手書きグラフ及び手書き範囲を代表するデータ点を描画領域にプロットしてもよい。プロット部14による処理については、後に図面を用いて詳細に説明する。
【0027】
図2は、本実施形態に係る監視装置10の物理的構成を示す図である。監視装置10は、演算部に相当するCPU(Central Processing Unit)10aと、記憶部に相当するRAM(Random Access Memory)10bと、記憶部に相当するROM(Read only Memory)10cと、通信部10dと、入力部10eと、表示部10fと、を有する。これらの各構成は、バスを介して相互にデータ送受信可能に接続される。なお、本例では監視装置10が一台のコンピュータで構成される場合について説明するが、監視装置10は、複数のコンピュータが組み合わされて実現されてもよい。また、図2で示す構成は一例であり、監視装置10はこれら以外の構成を有してもよいし、これらの構成のうち一部を有さなくてもよい。
【0028】
CPU10aは、RAM10b又はROM10cに記憶されたプログラムの実行に関する制御やデータの演算、加工を行う制御部である。CPU10aは、人から入力されたプロセスデータの予測値に基づいて、プロセスデータの関係性を表すモデルを生成し、当該モデルを用いてプラントを監視するプログラム(監視プログラム)を実行する演算部である。CPU10aは、入力部10eや通信部10dから種々のデータを受け取り、データの演算結果を表示部10fに表示したり、RAM10bやROM10cに格納したりする。
【0029】
RAM10bは、記憶部のうちデータの書き換えが可能なものであり、例えば半導体記憶素子で構成されてよい。RAM10bは、CPU10aが実行するプログラム、人から入力されたプロセスデータ及びプロセスデータの設計値といったデータを記憶してよい。なお、これらは例示であって、RAM10bには、これら以外のデータが記憶されていてもよいし、これらの一部が記憶されていなくてもよい。
【0030】
ROM10cは、記憶部のうちデータの読み出しが可能なものであり、例えば半導体記憶素子で構成されてよい。ROM10cは、例えば監視プログラムや、書き換えが行われないデータを記憶してよい。
【0031】
通信部10dは、監視装置10を他の機器に接続するインターフェースである。通信部10dは、インターネット等の通信ネットワークNに接続されてよい。
【0032】
入力部10eは、ユーザからデータの入力を受け付けるものであり、例えば、キーボード及びタッチパネルを含んでよい。
【0033】
表示部10fは、CPU10aによる演算結果を視覚的に表示するものであり、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)により構成されてよい。表示部10fは、プロセスデータが描画される描画領域を表示し、プロセスデータ及び生成したモデルを描画領域に表示してよい。
【0034】
監視プログラムは、RAM10bやROM10c等のコンピュータによって読み取り可能な記憶媒体に記憶されて提供されてもよいし、通信部10dにより接続される通信ネットワークを介して提供されてもよい。監視装置10では、CPU10aが監視プログラムを実行することにより、図1を用いて説明した取得部11、モデル生成部12、判定部13及びプロット部14が実現される。なお、これらの物理的な構成は例示であって、必ずしも独立した構成でなくてもよい。例えば、監視装置10は、CPU10aとRAM10bやROM10cが一体化したLSI(Large-Scale Integration)を備えていてもよい。
【0035】
図3は、本実施形態に係る監視装置10によって生成される、プロセスデータの関係性を表すモデルを示す図である。同図では、人からプロセスデータの予測値の入力を受け付け、入力されたプロセスデータの予測値(実測されていないプロセスデータ)に基づいてモデルを生成する例を示している。
【0036】
監視装置10の表示部10fは、プロセスデータが描画される描画領域DAを表示する。監視装置10のユーザは、入力部10eを用いて、第1プロセスデータ及び第2プロセスデータの関係性として予想されるデータ点D1を描画領域DAにプロットする。なお、データ点D1は、タッチパネルやポインティングデバイスにより入力されてよいが、RAM10b等の監視装置10に内蔵された記憶部や外部記憶装置から取得されてもよい。例えば、データ点D1は、第1プロセスデータ及び第2プロセスデータの設計値であってもよい。
【0037】
モデル生成部12は、入力されたデータ点D1に基づいて、第1プロセスデータ及び第2プロセスデータの関係性を表すモデルを生成する。モデルは、第1プロセスデータ及び第2プロセスデータの関係性を表すグラフM1を含んでよく、表示部10fは、グラフM1を描画領域DAに表示してよい。モデル生成部12は、例えば、第1プロセスデータ及び第2プロセスデータの関係性を表す所定の関数を仮定し、当該関数がデータ点D1に適合するように、最小二乗法によって当該関数のパラメータを決定してよい。このように、プロセスデータの関係性を表すグラフM1を表示することで、生成されたモデルが妥当なものであるか一目で把握することができる。
【0038】
モデルは、プロセスデータが所定の確率でグラフM1の近傍に収まる範囲M2を含んでよく、表示部10fは、範囲M2を描画領域DAに表示してよい。モデル生成部12は、例えば、入力されたデータ点D1の標準偏差σを算出し、グラフM1を中心として±σを範囲M2としたり、グラフM1を中心として±2σを範囲M2としたりしてよい。プロセスデータのばらつきが正規分布に従う場合、±σの範囲は、プロセスデータが68.27%の確率でグラフM1の近傍に収まる範囲であり、±2σの範囲は、プロセスデータが95.45%の確率でグラフM1の近傍に収まる範囲となる。このように、プロセスデータが所定の確率でグラフM1の近傍に収まる範囲M2を表示することで、新たに取得されるプロセスデータが正常範囲内であるか一目で把握することができる。
【0039】
図4は、本実施形態に係る監視装置10によって算出される異常度を示す図である。同図では、縦軸に異常度の値を示し、横軸に時間を示して、異常度の時間変化を棒グラフで示している。
【0040】
監視装置10の判定部13は、実測されたプロセスデータに基づいて、第1判定モード又は第2判定モードで、プラント100の運転状態の異常度を算出し、表示部10fに表示してよい。判定部13は、公知の異常判定アルゴリズムによって異常度を算出してよく、例えば、過去に実測されたプロセスデータの平均μ及び分散σ2に基づいて、現在のプロセスデータxの異常度a(x)を、a(x)=(x-μ)2/σ2によって算出してよい。この場合、異常度の平方根は、現在のプロセスデータが、過去のプロセスデータの平均を基準として、標準偏差の何倍ずれているかを表す。例えば、異常度が25であれば、現在のプロセスデータは、過去のプロセスデータの平均を基準として、標準偏差の5倍ずれていることを表す。判定部13は、プラント100の運転状態の異常度を定期的に算出し、その値を棒グラフとして表示することで図4に示す表示を行ってもよいし、プラント100の運転状態の異常度を定期的に算出し、さらに長い期間における平均値を棒グラフとして表示することで図4に示す表示を行ってもよい。また、判定部13は、実測されたプロセスデータがグラフM1からどの程度乖離しているかに基づいて異常度を算出してよい。判定部13は、例えば、実測されたプロセスデータが範囲M2の内側にあるか外側にあるかを示す値と、データ点D1の標準偏差を基準とする実測されたプロセスデータの乖離量との少なくともいずれかに基づいて異常度を算出してよい。
【0041】
判定部13は、算出した異常度に基づいてプラント100の運転状態を判定してよい。判定部13は、例えば、異常度について設定された閾値と、新たに算出された異常度とを比較して、異常度が閾値未満であればプラント100の運転状態は正常であると判定し、異常度が閾値以上であればプラント100の運転状態は異常であると判定してよい。
【0042】
図4に示すように異常度を表示することで、プラント100の運転状態が正常であるか異常であるかを定量的な数値で表すことができ、プロセスデータを読み解くことに習熟していない作業者であっても、プラント100の運転状態について適切な判断を下すことができる。
【0043】
図5は、本実施形態に係る監視装置10によって実行される判定処理のフローチャートである。はじめに、監視装置10は、人からプロセスデータの予測値の入力を受け付ける(S10)。その後、監視装置10は、入力された予測値に基づいて、プロセスデータの関係性を表すモデルを生成する(S11)。当該モデルは、第1判定モードで使用される。
【0044】
監視装置10は、実測されたプロセスデータを取得し、記憶部に蓄積する(S12)。そして、監視装置10は、人によって入力されたプロセスデータの予測値に基づき生成されたモデルを用いる第1判定モードで、プラント100の異常度を算出し、プラント100の運転状態を判定する(S13)。監視装置10は、判定結果を表示部10fに表示する(S14)。ここで、監視装置10は、異常度を表示したり、実測されたプロセスデータをグラフM1及び範囲M2とともに表示したりしてもよい。
【0045】
その後、監視装置10は、実測されたプロセスデータのデータ蓄積量が所定量以上であるか判定する(S15)。ここで、所定量は、実測されたプロセスデータに基づいて、プロセスデータの関係性を表すモデルが生成できる程度の量であってよい。
【0046】
実測されたプロセスデータのデータ蓄積量が所定量以上でない場合(S15:NO)、監視装置10は、実測されたプロセスデータを新たに取得して蓄積し(S12)、第1判定モードで、プラント100の運転状態を判定し(S13)、判定結果を表示する(S14)。
【0047】
一方、実測されたプロセスデータのデータ蓄積量が所定量以上である場合(S15:YES)、監視装置10は、蓄積されたプロセスデータの実測値に基づいて、プロセスデータの関係性を表すモデルを生成する(S16)。ここで、監視装置10は、実測されていないプロセスデータの予測値に基づいて生成したモデルを、プロセスデータの実測値に応じて補正したり、プロセスデータの実測値のみを用いて新たなモデルを生成したりしてよい。
【0048】
その後、監視装置10は、実測されたプロセスデータを取得し、記憶部に蓄積する(S17)。そして、監視装置10は、プロセスデータの実測値に基づき生成されたモデルを用いる第2判定モードで、プラント100の異常度を算出し、プラント100の運転状態を判定し(S18)、判定結果を表示する(S19)。この場合も、監視装置10は、異常度を表示したり、実測されたプロセスデータをモデルとともに表示したりしてもよい。なお、人によって入力されたプロセスデータの予測値に基づき生成されたモデルと、プロセスデータの実測値に基づき生成されたモデルとが使用可能である場合、監視装置10は、いずれのモデルを用いるか指定を受け付けてよい。また、監視装置10は、人によって入力されたプロセスデータの予測値に基づき生成されたモデルにより算出された異常度と、プロセスデータの実測値に基づき生成されたモデルにより算出された異常度とに基づいて、プラント100の運転状態を判定してもよい。
【0049】
図6は、本実施形態に係る監視装置10によってプロットされるデータ点を示す図である。同図では、人から手書きグラフG及び手書き範囲Rの入力を受け付け、入力された手書きグラフG及び手書き範囲Rを代表するデータ点D2を描画領域DAにプロットする例を示している。
【0050】
監視装置10の表示部10fは、プロセスデータが描画される描画領域DAを表示する。監視装置10のユーザは、入力部10eを用いて、第1プロセスデータ及び第2プロセスデータの関係性として予想されるグラフGを入力する。また、ユーザは、手書きグラフを含む手書き範囲Rを入力する。ここで、手書き範囲Rは、プロセスデータが所定の確率で手書きグラフGの近傍に収まると予想される範囲であってよい。
【0051】
監視装置10のプロット部14は、手書きグラフG及び手書き範囲Rを代表するデータ点D2を描画領域DAにプロットする。プロット部14は、例えば、手書きグラフGにより定められる平均と、手書き範囲Rにより定められる分散とを有する正規分布に従うように、データ点D2をプロットしたり、一様分布に従うように手書き範囲Rにデータ点D2をプロットしたりしてよい。データ点D2がプロットされた後、モデル生成部12は、データ点D2に基づいて、第1プロセスデータ及び第2プロセスデータの関係性を表すモデルを生成する。
【0052】
手書きグラフGの入力を受け付けて、手書きグラフGを代表するデータ点D2を描画領域DAにプロットすることで、プロセスデータのおおよその関係性を手書きで直感的に表現し、モデルを生成することができる。
【0053】
また、手書き範囲Rの入力を受け付けて、手書きグラフG及び手書き範囲Rを代表するデータ点D2を描画領域にプロットすることで、プロセスデータのおおよその関係性を手書きで直感的に表現し、モデルを生成することができる。
【0054】
図7は、本実施形態に係る監視装置10によって実行されるモデル生成処理のフローチャートである。はじめに、監視装置10は、人から手書きグラフ及び手書き範囲の入力を受け付ける(S20)。そして、監視装置10は、手書きグラフ及び手書き範囲を代表するデータ点を描画領域にプロットする(S21)。
【0055】
その後、監視装置10は、データ点に基づいて、プロセスデータの関係性を表すモデルを生成する(S22)。なお、監視装置10は、このようにして生成したモデルを用いる第1判定モードで、プラント100の運転状態を判定してよい。
【0056】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【0057】
監視装置10の表示部10fは、プラントに関するプロセスデータの入力を受け付け、入力されたプロセスデータに基づいて、プロセスデータの関係性を表すモデルを生成し、人によって入力されたプロセスデータの予測値に基づき生成されたモデルを用いる第1判定モード又はプロセスデータの実測値に基づき生成されたモデルを用いる第2判定モードで、プラントの運転状態を判定し、判定結果を表示する表示装置でもある。表示装置は、人から入力を受け付けたプロセスデータの予測値、生成したモデル及びプロセスデータの実測値の少なくともいずれかを、判定結果とあわせて表示してもよい。
【符号の説明】
【0058】
10…監視装置、10a…CPU、10b…RAM、10c…ROM、10d…通信部、10e…入力部、10f…表示部、11…取得部、12…モデル生成部、13…判定部、14…プロット部、100…プラント
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7