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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-01
(45)【発行日】2023-08-09
(54)【発明の名称】包装袋
(51)【国際特許分類】
   B65D 33/00 20060101AFI20230802BHJP
   B41M 3/00 20060101ALI20230802BHJP
   B65D 77/00 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
B65D33/00 A BRH
B41M3/00 Z
B65D77/00 Z BSF
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019166668
(22)【出願日】2019-09-12
(65)【公開番号】P2021041983
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大竹 洋平
(72)【発明者】
【氏名】藤田 実智昭
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 雅安
(72)【発明者】
【氏名】岩坪 貢
(72)【発明者】
【氏名】澁谷 玲
【審査官】吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-168293(JP,A)
【文献】登録実用新案第3108826(JP,U)
【文献】特開2007-015703(JP,A)
【文献】特開2002-019789(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 33/00
B41M 3/00
B65D 77/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
商品を内部に収容した状態でユーザーに配送される包装袋であって、
前記包装袋は、前記商品に関する情報、前記ユーザーの配送情報、及び該包装袋の構成樹脂に関する情報の何れか1以上を含む表示情報が表示されており、
前記包装袋は、合成樹脂製であり
前記表示情報は、所定温度以上の溶媒によって前記包装袋から除去可能であり、
前記表示情報として、第1表示情報及び第2表示情報を含んでおり、
第1表示情報は、第2表示情報よりも前記包装袋から除去可能な前記溶媒の温度が低く、且つ該溶媒の温度が40℃以上である、包装袋。
【請求項2】
第2表示情報は、前記包装袋から除去されるときの前記溶媒の温度が50℃以上である、請求項に記載の包装袋。
【請求項3】
第1表示情報は、前記配送情報を含む、請求項又はに記載の包装袋。
【請求項4】
第2表示情報は、前記包装袋の構成樹脂に関する情報を含む、請求項の何れか1項に記載の包装袋。
【請求項5】
前記表示情報は、所定温度以上の溶媒によって溶解する水溶性印刷プライマー層上に印字されたインクによって表示されている、請求項1~の何れか1項に記載の包装袋。
【請求項6】
前記包装袋は、外面を形成する外袋と、内面を形成する内袋とを含んで構成されている、請求項1~の何れか1項に記載の包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
商品を梱包する梱包資材には、一般的に段ボールが使用されているが、これに代えて、気密性等の機能性を有する梱包資材が提案されている。例えば、特許文献1には、凸部を有するフィルムと平坦なフィルムとを有する気泡シートからなる容器本体と、該容器本体内を密封可能な開口部とを具備した包装容器が開示されている。斯かる包装容器は、緩衝性を有し、容器内を減圧又は加圧した状態で密封可能である。また、特許文献2には、糸及び面ファスナーが、不織布シートの素材と同じポリオレフィン素材からなり、該糸を用いて不織布シートを袋状にし、これに面ファスナーを取り付けた配送品収納袋が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-255229号公報
【文献】特開2011-168293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の包装容器及び特許文献2に記載の配送品収納袋は、樹脂製の素材で構成されている。斯かる包装容器及び配送品収納袋に、インクを用いた印刷によってデザインが施されたり、配送情報等の情報が表示されたりすると、該包装容器及び配送品収納袋のリサイクル時に、樹脂製の素材からインクを除去することが必要となる。樹脂製の資材に印刷等が直接施された場合、通常、当該資材のほとんどは廃棄される。また、インターネット上のECサイトを通じて商品を販売するECサイト業者等を通じた通販に、前記包装容器及び前記配送品収納袋を用いた場合、これらの外面に配送情報等の個人情報が表示された状態でユーザーに配送されることが想定される。個人情報を保護する観点から、リサイクルするための回収前に、前記包装容器及び前記配送品収納袋から前記個人情報を消去することが必要となる。以上の点から、特許文献1に記載の包装容器及び特許文献2に記載の配送品収納袋は、円滑にリサイクルに供される資材ではなかった。
【0005】
本発明の課題は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得る包装袋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、商品を内部に収容した状態でユーザーに配送される包装袋であって、
前記包装袋は、前記商品に関する情報、前記ユーザーの配送情報、及び該包装袋の構成樹脂に関する情報の何れか1以上を含む表示情報が表示されており、
前記包装袋は、合成樹脂製であり、
前記表示情報は、所定温度以上の溶媒によって前記包装袋から除去可能である、包装袋を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、商品の梱包に用いられる梱包資材に関し、円滑にリサイクルに供される包装袋を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の一実施形態である包装袋を用いた梱包体を示す斜視図である。
図2図2は、図1に示す梱包体の平面図である。
図3図3は、図1のII-II線断面図である。
図4図4は、図1のIII-III線断面図である。
図5図5は、包装袋の他の実施形態を用いた梱包体を示す図1相当図である。
図6図6(a)~(d)は、包装袋の延出部における取手貫通孔のバリエーションを示す平面図である。
図7図7(a)~(d)は、包装袋の延出部における取手突出部のバリエーションを示す平面図である。
図8図8は、図7(a)のIV-IV線断面図である。
図9図9は、図1に示す包装袋がリユース又はリサイクルに供される一連の流れを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の包装袋を、その好ましい一実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。本実施形態の包装袋3は、ネットショッピング等の通販に用いられる梱包資材であって、商品2を内部に収容した状態でユーザーに配送されるものである。ユーザーは、前述のECサイト業者等を通じて、商品2を購入した購入者である。図1及び2には、商品2を包装袋3の内部に収容した梱包体1が示されている。
【0010】
包装袋3に収容されている商品2は特に制限されず、例えば、食器用洗剤、洗濯用洗剤、柔軟剤、加工食品、紙おむつ、生理用品、シャンプー等のヘアケア製品、化粧品、加工食品、飲料、調味料、菓子類、玩具、書籍、音楽又は映像が記録されたCDやDVD、工具、カー用品、スマートフォン等の電子情報端末、電子部品、電化製品等を商品とすることができる。本実施形態の梱包体1は、図1及び2に示すように、商品2として、液体が内部に収容されているスタンディングパウチを含んでいる。斯かる商品は、シャンプーや洗剤等、通常、容器に収容された状態で販売されている商品であり、その容器も含めて商品である。また、包装袋3に収容されている商品の数は、単数であってもよく、2個以上の複数個であってもよい。
【0011】
包装袋3は、図1及び2に示すように、商品2を収容する収容部10と、開封状態において収容部10と連通する開口部16とを有している。梱包体1において包装袋3は、収容部10に商品2を収容した状態で開口部16が封止される。この状態で、梱包体1はユーザーに配送される。本実施形態の包装袋3は、図3及び図4に示すように、該包装袋3の外面を形成する合成樹脂製の外袋11と、該包装袋3の内面を形成する合成樹脂製の内袋12とを有している。内袋12は、外袋11内に配されており、梱包体1において商品2と直接対向している。「直接対向する」とは、商品2と内袋12との間に何らの部材も介在しない状態下に両者が対向することをいう。外袋11と内袋12とを有する包装袋3は、例えば段ボールの代替となり得る程度の強度を有するので、商品2の梱包資材として好適に用いられる。包装袋3は、本実施形態のように、外袋11及び内袋12のみを有していてもよく、外袋11、内袋12及び、これら両袋11,12間に配された合成樹脂製の中間袋(不図示)を有していてもよい。中間袋は、1袋であってもよく、2袋以上の複数の袋であってもよい。即ち、包装袋3を構成する複数の袋からなる多重構造は、2重であってもよく、3重以上であってもよい。本実施液体の包装袋3は、外袋11を形成するシートと、内袋12を形成するシートが積層した積層構造を有していたが、1枚のシートからなる単層構造を有していてもよい。
【0012】
本実施形態の包装袋3は、梱包体1において商品2を収容部10から取り出す、取り出し方向Xと、これと直交する直交方向Yとを有している。包装袋3は、外袋11を形成するシートと、内袋12を形成するシートとが重なってなる多重シートが、所定の箇所において相対向した状態で接合又は結合されていることにより、外袋11及び内袋12からなる二重袋が形成されている。具体的には、収容部10において、取り出し方向Xの一方の端部に直交方向Yに延びる開口部16が形成されており、取り出し方向Xの他方の端部に直交方向Yに延びる底部シール部17が形成されている。開口部16においては、相対向する多重シールが互いに再結合可能に結合されており、該相対向する多重シールどうしの結合が解除されることによって、開口部16が開口状態となる。これにより、収容部10は、開口部16において再封止可能に構成されている。また、収容部10において、直交方向Yの両端部それぞれに取り出し方向Xに延びた側部シール部15,15が形成されている。底部シール部17及び側部シール部15,15では、相対向する多重シートどうしが接合されている。即ち、包装袋3は、図2に示す平面視において、収容部10の四方に開口部16、側部シール部15,15、及び底部シール部17が形成されている。包装袋3は、これら開口部16、側部シール部15,15、及び底部シール部17に囲まれた領域に内部空間3aを有し、該内部空間3aに商品2を収容可能に構成されている。内部空間3aは、内袋12によって画成されている。
【0013】
前述した開口部16は、例えば特開2005-231677号公報に記載のチャックテープを取り付けることで、相対向する多重シールどうしを再結合可能に構成することができる。特開2005-231677号公報に記載のチャックテープは、互いに嵌合可能な、凸条の雄型嵌合部を設けた合成樹脂からなる雄型テープ体と、凹条の雌型嵌合部を設けた合成樹脂からなる雌型テープ体とで構成され、前後一対の正面部の各内側面に、雄型テープ体や雌型テープ体を各々接着接合して用いられるものである。
また、開口部16においては、相対向する外袋11を形成するシートと、内袋12を形成するシートとがシール部によって接合されており、該シール部どうしが相対向する部分に前記チャックテープを取り付けることができる。
【0014】
本実施形態の包装袋3は、収容部10の外面に、商品2に関する情報、ユーザーの配送情報、及び包装袋3の構成樹脂に関する情報の何れか1以上を含む表示情報が表示されている。
商品2に関する情報としては、例えば商品名、ブランド名、商品2の製造業者名、商品2の管理情報等の商品2を特定可能な情報が挙げられる。商品2の管理情報としては、商品2の製造番号、製造ロット、製造日時等の商品2の識別情報等が挙げられる。
ユーザーの配送情報としては、ユーザー名、住所、配送予定日時等が挙げられる。
包装袋3の構成樹脂に関する情報は、包装袋3を構成するシートの構成樹脂に関する情報である。包装袋3の構成樹脂に関する情報は、当該情報に関連付けられた情報であってもよい。包装袋3の構成樹脂に関する情報に関連付けられた情報としては、個々の包装袋3を特定する識別子等の識別情報、包装袋3の製造日、製造ロット、製造場所、製造工場、包装仕様等が挙げられる。識別子は、個々の包装袋3を特定するための文字列や数字である。
表示情報は、商品2に関する情報、ユーザーの配送情報、及び包装袋3の構成樹脂に関する情報以外の他の情報を含んでいてもよい。他の情報としては、包装袋3をリユースに供する場合、該包装袋3のリユース回数の情報や、包装袋3を回収に提供したユーザーの情報、これら情報に関連付けられた情報等が挙げられる。前記「これら情報に関連付けられた情報」としては、例えば、包装袋3のリユース回数と関連付けられた包装袋3の識別子等が挙げられる。
【0015】
本実施形態の表示情報は、図1に示すように、後述する第1プライマー層上に表示された第1表示情報5と、後述する第2プライマー層上に表示された第2表示情報4とを含んでいる。第1表示情報5は、ユーザーの配送情報として、ユーザー名と該ユーザーの住所を含んでいる。第2表示情報4は、包装袋3の構成樹脂に関する情報に関連付けられた情報として、包装袋3を特定する識別情報(識別子)を含んでいる。
【0016】
表示情報は、所定温度以上の溶媒によって包装袋3から除去可能である。本実施形態の表示情報は、後述する水溶性印刷プライマー層上にインクからなる印刷層を形成することによって、除去可能に構成されている。また、本実施形態の第1表示情報及び第2表示情報は、包装袋3から除去可能な溶媒の温度が相互に異なっている。具体的には第1表示情報は、第2表示情報よりも前記溶媒の温度が低い。本実施形態において表示情報を除去し得る溶媒は、後述する中性水である。
【0017】
本実施形態の包装袋3は、ネットショッピング等の通販に用いられる梱包資材として用いられた後、リユース又はリサイクルに供することができる。この点を、図9を用いて詳述する。図9には、本実施形態の包装袋3を梱包資材として用いた後、該包装袋3をリユース又はリサイクルに供する一連のルートが例示されている。前記一連のルートは、ネットショッピング等の通販によって、商品2が包装袋3に内包されている梱包体1をユーザーDに配送する流通ルートと、該包装袋3を回収して、該包装袋3をリユース又はリサイクルに供する資源活用ルートとから構成される。流通ルートでは、図9に示すように、製造業者Aが、製造した商品を包装袋3に梱包して、梱包体1を製造する。次に、ECサイト業者Bが、製造業者Aが製造した梱包体1の包装袋3に、ユーザーDの配送情報(第1表示情報)を付与する。なお、製造業者AがユーザーDの配送情報を直接付与しても良い。そして、配送業者Cが、ECサイト業者Bから委託されて、梱包体1をユーザーDに配送する。このように、包装袋3は、流通ルートにおいて商品の製造業者A、ECサイト業者B、及び配送業者Cを経て、商品の購入者であるユーザーDに渡る。資源活用ルートでは、図9に示すように、ユーザーDが梱包体1から商品2を取り出し、包装袋3が回収業者Eに渡す。次に、回収業者Eは、包装袋3を回収し、分別業者Fに輸送する。次に、分別業者Fは、回収された包装袋3をリユース用及びリサイクル用の何れかに分別する。そして、製造業者Aは、リユース用に分別された包装袋3を、再び商品2の梱包資材として使用する。また、製造業者Aは、リサイクル用に分別された包装袋3から新たに製造された包装袋を、商品の梱包資材として使用する。このように、ユーザーから回収された包装袋3は、資源活用ルートにおいてユーザーD、回収業者E、及び分別業者Fを経て、商品の製造業者Aに戻る。
【0018】
本明細書において「リサイクル」は、使用済みの包装袋3を粉砕して得られた破砕片や該破砕片を溶融してペレット状としたものを用いて、包装袋3を製造することを意味する。また、「リユース」は、使用済みの包装袋3をそのまま加工しないで梱包資材として再利用することを意味する。
【0019】
前記流通ルートにおいて、本実施形態の包装袋3を具備する梱包体1は、該包装袋3に表示されたユーザーの配送情報に基づき、当該ユーザーに配送される。梱包体1がユーザーに配送されると、包装袋3から商品2が取り出され、該包装袋3は梱包資材としての役割を終える。本実施形態の包装袋3は、前述したように、配送情報等の表示情報が所定温度以上の溶媒によって除去可能であるので、ユーザーの個人情報となる配送情報を、ユーザー自身が包装袋3から消去することができる。これにより、ユーザーが安心して包装袋3をリユース用又はリサイクル用に提供でき、該包装袋3の回収効率を向上させることができる。また包装袋3は、表示情報が前記の溶媒によって消去可能であるので、該包装袋3をリサイクルに供した場合に、合成樹脂等の素材を効率的に分離することができる。以上のように、本実施形態の包装袋3は円滑にリサイクルに供される。さらに、前記インクによって、雨天時の輸送や他の梱包体の接触等、梱包体1の輸送時における意図しない表示情報の消去を抑制できる。
【0020】
本実施形態の包装袋3は、前述したように、包装袋3の識別子を含む第2表示情報4が表示されている。この識別子は、包装袋3の構成樹脂に関する情報に関連付けられており、該識別子を読み取ることで、包装袋3の構成樹脂に関する情報を取得することができる。斯かる構成により、ユーザーから回収した包装袋3を適正に分別することができ、該包装袋3をより円滑にリサイクルに供することができる。また、第2表示情報4は、配送情報等の第1表示情報と同様に、所定温度以上の溶媒によって除去できるので、リサイクル時に合成樹脂等の素材を効率的に分離することができる。例えば、第2表示情報4は、加熱した温水などの溶媒を用いて除去することができる。図9に示す一連のルートにおいて、分別業者Fは、第2表示情報4に基づいて、包装袋3を分別する。この分別後、第2表示情報4は、分別業者Fによって消去され、リサイクルに供される。
【0021】
包装袋3を円滑にリユースに供する観点から、第2表示情報4は、包装袋3のリユース回数を含んでいることが好ましい。本実施形態においては、第2表示情報4である識別子が、包装袋3のリユース回数の情報に関連付けられており、該識別子を読み取ることで、包装袋3のリユース回数の情報を取得することができる。斯かる構成により、包装袋3のリユース回数に応じて、ユーザーから回収した包装袋3を適正にリユースに供することができる。図9に示す一連のルートにおいて、分別業者Fは、第2表示情報4である前記リユース回数に基づいて、機械的に又は人為的に、包装袋3をリユース用とリサイクル用とに分別する。リユース用に分別された包装袋3はリユースに供され、リサイクル用に分別された包装袋3はリサイクルに供される。
【0022】
第2表示情報4は、包装袋3の構成樹脂に関する情報、及び包装袋3のリユース回数に関する情報以外のリサイクル情報を含んでいてもよい。リサイクル情報は、包装袋3のリユース又はリサイクルを決定する指標となる情報である。リサイクル情報としては、包装袋3の構成樹脂に関する情報、包装袋3のリユース回数の情報、包装袋3の劣化情報、包装材質、包装袋の傷、包装袋の光学特性等が挙げられる。前記光学特性としては、可視光に対する包装袋の透過率やヘイズ値等が挙げられる。第2表示情報4は、包装袋の識別情報等、リサイクル情報と関連付けられた情報を含んでいてもよい。
【0023】
包装袋3のリユース又はリサイクルをより円滑に行う観点から、第2表示情報4は、ユーザーに対し、包装袋3をリユース又はリサイクルに供する資源活用のインセンティブになり得る情報を含むことが好ましい。斯かる情報として、例えば、ユーザーが包装袋3を回収に提供した回数に応じて加算される回収ポイントの情報が挙げられる。回収ポイントは、例えばユーザーDに提供されるポイントサービスのポイントである。回収ポイントは、図9に示す一連のルートに関与する事業者A~CがユーザーDに対して行う優遇サービス等の対価であって、例えば、所定の回収ポイントと、製造業者Aの商品又はECサイトの商品とを交換できるものである。
【0024】
第2表示情報4は、ヒトが視覚的に読み取り可能に表示されていてもよく、電子的に読み取り可能に表示されていてもよい。ヒトが視覚的に読み取り可能に第2表示情報4が表示されている場合、第2表示情報4は、例えば文字、数字、記号やこれらの組み合わせによって表示されている。リサイクル情報に基づく機械的な処理によって、より容易に包装袋3をリユース用又はリサイクル用に分別する観点から、第2表示情報4は、電子的に読み取り可能に表示されていることが好ましい。このような表示方式として、例えば、バーコードやQRコード(登録商標)等の2次元コード、RFID(Radio Frequency Identification)タグ等の電子情報媒体等が用いられる。RFIDタグは、RFIDリーダー(RFIDアンテナ)によって読み取ることができる。
【0025】
本実施形態における表示情報は、所定温度以上の溶媒によって溶解する水溶性印刷プライマー層上に印字されたインクによって表示されている。この水溶性印刷プライマー層上に印字されることにより、前記インクは、所定温度以上の溶媒によって除去可能に構成されている。水溶性印刷プライマー層上に印字されるインクとしては、通常、印刷に用いられるインクが用いられる。表示情報が、RFIDタグ等の電子情報媒体によって表示されている場合、水溶性印刷プライマー層上に印字されるインクとして導電性インクが用いられる。
前記水溶性印刷プライマー層は、所定温度以上の溶媒、具体的には所定温度以上の中性水と接触することで溶解し、これに起因して該プライマー層上のインクが包装袋3から除去される。中性水は、後に詳述する。
【0026】
<印刷プライマー用水溶性樹脂(成分α)>
水溶性印刷プライマー層を形成する印刷プライマー用水溶性樹脂(以下、「成分α」ともいう)を、その好ましい実施形態に基づいて説明する。印刷プライマー用水溶性樹脂は、前記樹脂の生成に係る重合を構成する親水基以外の親水性基(以下、単に親水性基とも称する。)を有するモノマーユニットA、及び親水性基を有さないモノマーユニットBを有し、全モノマーユニットの合計に対する前記モノマーユニットAの割合が5~35mol%である。以下、水溶性印刷プライマー層を単に「プライマー層」ともいい、印刷プライマー用水溶性樹脂を、単に「水溶性樹脂」ともいう。
【0027】
[モノマーユニットA]
前記モノマーユニットAは親水性基を有する。また、当該モノマーユニットAを誘導するためのモノマーをモノマーAと称する。
【0028】
前記モノマーユニットAは、前記親水性基を有するモノマーユニットであれば特に限定されないが、前記水溶性樹脂の中性水への溶解性及び耐水性を向上させる観点から、前記親水性基を有するジカルボン酸モノマーユニット(以下、親水性ジカルボン酸モノマーユニットAとも称する。)が好ましい。
【0029】
前記モノマーAは、前記水溶性樹脂の中性水への溶解性及び耐水性を向上させる観点、並びに水溶性樹脂製造時における重合反応の容易さの観点から、前記親水基を有するカルボン酸、アミン、アミノ酸からなる群より選ばれる1種以上が好ましく、前記親水基を有するカルボン酸がより好ましい。当該カルボン酸の中でも、同様の観点から、前記親水基を有する芳香族カルボン酸が好ましく、ヒドロキシ基含有芳香族ジカルボン酸、第1級アミノ基含有芳香族ジカルボン酸、スルホン酸基含有芳香族ジカルボン酸、及びスルホン酸塩基含有芳香族ジカルボン酸からなる群より選ばれる1種以上がより好ましく、スルホン酸塩基含有芳香族ジカルボン酸からなる群より選ばれる1種以上がより好ましい。これらの中でも同様の観点からスルホフタル酸、及びスルホナフタレンジカルボン酸からなる群より選ばれる1種以上が好ましく、スルホフタル酸からなる群より選ばれる1種以上が更に好ましく、スルホイソフタル酸及びスルホテレフタル酸からなる群より選ばれる1種以上が更に好ましく、5-スルホイソフタル酸が更に好ましい。
【0030】
前記親水性基としては、前記水溶性樹脂の中性水への溶解性を向上させる観点、及び水溶性樹脂製造時における重合反応の容易さの観点から、第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基、第4級アンモニウム塩基、オキシアルキレン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボキシル塩基、リン酸基、リン酸塩基、スルホン酸基、及びスルホン酸塩基からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。これらの中でも前記水溶性樹脂の耐熱性を向上させる観点から、第4級アンモニウム塩基、オキシアルキレン基、カルボキシル塩基、リン酸塩基、及びスルホン酸塩基からなる群より選ばれる1種以上が好ましく、第4級アンモニウム塩基、オキシアルキレン基、及びスルホン酸塩基からなる群より選ばれる1種以上がより好ましく、スルホン酸塩基が更に好ましい。
【0031】
前記スルホン酸塩基は、前記水溶性樹脂の中性水への溶解性を向上させる観点、及び水溶性樹脂製造時の重合反応の容易さの観点から、-SO(ただし、Mはスルホン酸塩基を構成するスルホン酸基の対イオンを示し、前記水溶性樹脂の中性水への溶解性を向上させる観点から金属イオン及びアンモニウムイオンからなる群より選ばれる1種以上が好ましく、金属イオンからなる群より選ばれる1種以上がより好ましく、アルカリ金属イオン及びアルカリ土類金属イオンからなる群より選ばれる1種以上が更に好ましく、アルカリ金属イオンからなる群より選ばれる1種以上が更に好ましく、ナトリウムイオン及びカリウムイオンからなる群より選ばれる1種以上が更に好ましく、ナトリウムイオンが更に好ましい。)で表されるスルホン酸塩基が好ましい。
【0032】
前記水溶性樹脂中の前記親水性基の含有量は、前記水溶性樹脂の中性水への溶解性を向上させる観点から、0.5mmol/g以上が好ましく、0.6mmol/g以上がより好ましく、0.7mmol/g以上が更に好ましく、前記水溶性樹脂の耐水性を向上させる観点から、3.0mmol/g以下が好ましく、2.0mmol/g以下がより好ましく、1.5mmol/g以下が更に好ましい。また、前記水溶性樹脂中の前記親水性基の含有量は、前記水溶性樹脂の中性水への溶解性及び耐水性を向上させる観点から、0.5~3.0mmol/gが好ましく、0.6~2.0mmol/gがより好ましく、0.7~1.5mmol/gが更に好ましい。
【0033】
前記水溶性樹脂の全モノマーユニットの合計に対する前記モノマーユニットAの割合は、前記水溶性樹脂の中性水への溶解性を向上させる観点から、5mol%以上であり、7mol%以上が好ましく、10mol%以上がより好ましく、12mol%以上が更に好ましく、前記水溶性樹脂の耐水性を向上させる観点から、35mol%以下であり、30mol%以下が好ましく、20mol%以下がより好ましく、15mol%以下が更に好ましく、13mol%以下が更に好ましい。また、前記水溶性樹脂の全モノマーユニットの合計に対する前記モノマーユニットAの割合は、前記水溶性樹脂の中性水への溶解性及び耐水性を向上させる観点から、5~35mol%であり、7~30mol%が好ましく、10~20mol%がより好ましく、12~15mol%が更に好ましい。
【0034】
[モノマーユニットB]
前記モノマーユニットBは前記親水性基を有さない。前記モノマーユニットBは、前記親水基を有さないモノマーユニットであれば特に限定されないが、前記水溶性樹脂の中性水への溶解性及び耐水性を向上させる観点から、前記親水基を有さないジカルボン酸モノマーユニット(以下、疎水性ジカルボン酸モノマーユニットBとも称する)が好ましい。
【0035】
前記疎水性ジカルボン酸モノマーユニットBを誘導するためのジカルボン酸は、前記水溶性樹脂の中性水への溶解性及び耐水性を向上させる観点、並びに水溶性樹脂製造時における重合反応の容易さの観点から、前記親水基を有さない芳香族ジカルボン酸及び前記親水基を有さない脂肪族ジカルボン酸からなる群より選ばれる1種以上がより好ましい。これらの中でも、同様の観点から、テレフタル酸、イソフタル酸、2,5-フランジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、及び1,3-アダマンタンジカルボン酸からなる群より選ばれる1種以上が更に好ましく、テレフタル酸、2,5-フランジカルボン酸、及び2,6-ナフタレンジカルボン酸からなる群より選ばれる1種以上が更に好ましく、2,6-ナフタレンジカルボン酸が更に好ましい。
【0036】
前記水溶性樹脂中の全モノマーユニットの物質量の合計に対する、前記モノマーユニットBの物質量の割合は、前記水溶性樹脂の耐水性を向上させる観点から、15mol%以上が好ましく、25mol%以上がより好ましく、30mol%以上が更に好ましく、前記水溶性樹脂の中性水への溶解性を向上させる観点から、45mol%以下が好ましく、42mol%以下がより好ましく、40mol%以下が更に好ましい。また、前記水溶性樹脂中の全モノマーユニットの物質量の合計に対する、前記モノマーユニットBの物質量の割合は、前記水溶性樹脂の中性水への溶解性及び耐水性を向上させる観点から、15~45mol%が好ましく、25~42mol%がより好ましく、30~40mol%が更に好ましい。
【0037】
前記水溶性樹脂中の前記モノマーユニットAと前記モノマーユニットBのmol比(前記モノマーユニットA/前記モノマーユニットB)は、前記水溶性樹脂の中性水への溶解性及び耐水性を向上させる観点から、10/90以上が好ましく、15/85以上がより好ましく、18/82以上が更に好ましく、20/80以上が更に好ましく、同様の観点から70/30以下が好ましく、65/35以下がより好ましく、60/40以下が更に好ましく、40/60以下が更に好ましく、30/70以下が更に好ましい。
【0038】
前記水溶性樹脂の重量平均分子量は、プライマー層の強度の観点から、1000以上が好ましく、5000以上がより好ましく、10000以上が更に好ましく、15000以上が更に好ましく、前記水溶性樹脂の中性水への溶解性を向上させる観点から、80000以下が好ましく、50000以下がより好ましく、30000以下が更に好ましく、20000以下が更に好ましい。なお、本明細書において重量平均分子量は実施例に記載の方法によって測定する。
【0039】
前記水溶性樹脂の例としては、水溶性ポリエステル樹脂、水溶性ポリアミド樹脂、水溶性ポリイミド樹脂、水溶性アクリル樹脂、水溶性ポリウレタン樹脂、水溶性ポリアリルアミン樹脂、水溶性フェノール樹脂、水溶性エポキシ樹脂、水溶性フェノキシ樹脂、水溶性尿素樹脂、水溶性メラミン樹脂、及びポリビニルアルコール樹脂、並びにこれらの樹脂の変性物が挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、中性水への溶解性の観点から、水溶性ポリエステル樹脂及び水溶性ポリアミド樹脂、水溶性アクリル樹脂からなる群より選ばれる1種以上が好ましく、水溶性ポリエステル樹脂がより好ましい。
【0040】
(ジオールモノマーユニットC)
前記水溶性樹脂が水溶性ポリエステル樹脂の場合は、前記モノマーユニットA及び前記モノマーユニットB以外のジオールモノマーユニットCを有する。前記ジオールモノマーユニットCを誘導するためのジオールを、ジオールCとも称する。
【0041】
前記ジオールCとしては、脂肪族ジオール、芳香族ジオール等を用いることができるが、水溶性ポリエステル樹脂の製造コストの観点から、脂肪族ジオールが好ましい。
【0042】
前記ジオールCの炭素数は、前記水溶性ポリエステル樹脂の中性水への溶解性及び耐水性を向上させる観点から、2以上が好ましく、同様の観点から、31以下が好ましく、25以下がより好ましく、20以下が更に好ましく、15以下が更に好ましい。
【0043】
前記脂肪族ジオールとしては、鎖式ジオール、及び環式ジオールからなる群より選ばれる1種以上が挙げられるが、前記水溶性ポリエステル樹脂の中性水への溶解性及び耐水性を向上させる観点から、鎖式ジオールが好ましい。
【0044】
前記鎖式ジオールの炭素数は、前記水溶性ポリエステル樹脂の中性水への溶解性及び耐水性を向上させる観点から、2以上が好ましく、同様の観点から、6以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下が更に好ましく、2が更に好ましい。
【0045】
前記ジオールCは、エーテル酸素を有していても良いが、前記ジオールCが鎖式脂肪族のジオールの場合は、前記水溶性ポリエステル樹脂の中性水への溶解性及び耐水性を向上させる観点から、エーテル酸素の数は1以下が好ましく、前記ジオールCが環式脂肪族のジオールの場合は、同様の観点から、エーテル酸素の数は2以下が好ましい。
【0046】
前記鎖式ジオールは、前記水溶性樹脂の中性水への溶解性及び耐水性を向上させる観点から、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールからなる群より選ばれる1種以上が好ましく、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、及び1,3-プロパンジオールからなる群より選ばれる1種以上がより好ましく、エチレングリコールが更に好ましい。
【0047】
前記ジオールCがエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ジエチレングリコール、及びジプロピレングリコールからなる群より選ばれる1種以上を含有する場合、前記水溶性ポリエステル樹脂中の全ジオールモノマーユニットの合計に対する、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ジエチレングリコール、及びジプロピレングリコールの合計の割合は、前記水溶性樹脂の中性水への溶解性及び耐水性を向上させる観点から、10mol%以上が好ましく、50mol%以上がより好ましく、80mol%以上が更に好ましく、90mol%以上が更に好ましく、95mol%以上が更に好ましく、98mol%以上が更に好ましく、実質的に100mol%が更に好ましく、100mol%が更に好ましい。なお、実質的に100mol%とは、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ジエチレングリコール、及びジプロピレングリコール以外の物質が不可避的に混入する場合を含む意味である。
【0048】
(水溶性ポリエステル樹脂)
前記水溶性ポリエステル樹脂は、前記水溶性樹脂の中性水への溶解性及び耐水性を向上させる観点から、前記水溶性ポリエステル樹脂中の全ジカルボン酸モノマーユニットの合計に対する、前記親水性ジカルボン酸モノマーユニットAの割合、及び前記疎水性ジカルボン酸モノマーユニットBの割合が、それぞれ10~70mol%、及び30~90mol%であり、前記疎水性ジカルボン酸モノマーユニットBを誘導するための前記親水性基を有さないジカルボン酸が2,6-ナフタレンジカルボン酸である水溶性ポリエステル樹脂が好ましい。
【0049】
前記水溶性ポリエステル樹脂は、以下の一般式(1)で例示できる。
【0050】
【化1】

(前記化学式(1)中、p1はエチレン2,6-ナフタレンジカルボキシレートの重合度、q1はエチレン5-スルホイソフタレートの重合度の数を表す。ただし、エチレン2,6-ナフタレンジカルボキシレートとエチレン5-スルホイソフタレートはブロック結合又はランダム結合であり、前記水溶性樹脂組成物の中性水への溶解性を向上させる観点からランダム結合がより好ましい。)
【0051】
前記水溶性ポリエステル樹脂は、中性水への溶解性の効果を損なわない範囲で、前記親水性ジカルボン酸モノマーユニットA、前記疎水性ジカルボン酸モノマーユニットB、及び前記ジオールモノマーユニットC以外のモノマーユニットを有していても良い。
【0052】
前記水溶性ポリエステル樹脂の製造方法には特に限定はなく、従来公知のポリエステル樹脂の製造方法を適用できる。
【0053】
<印刷プライマー用水溶性樹脂組成物>
前記印刷プライマー用水溶性樹脂は、成分αとともに他の成分を含有させた印刷プライマー用水溶性樹脂組成物としてもよい。
【0054】
前記印刷プライマー用水溶性樹脂組成物の前記水溶性樹脂の含有量は、前記水溶性樹脂の中性水への溶解性及び耐水性を向上させる観点から、30質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましく、100質量%以下が好ましく、98質量%がより好ましく、96質量%以下が更に好ましい。
【0055】
(前記水溶性樹脂以外の塩(成分β))
前記水溶性樹脂組成物は、前記水溶性樹脂以外の塩(以下、「成分β」ともいう)を含有してもよい。当該成分βとしては、前記水溶性樹脂組成物の中性水への溶解性、耐水性及び耐熱性を向上させる観点から、下記一般式(2)で示される有機塩化合物が好ましい。
(R-SO-)n+ (2)
(前記一般式(2)中、Rは置換基を有していてもよい炭素数1~30の炭化水素基を示し、nは1又は2の数を示し、nが1のとき、Xn+はナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、アンモニウムイオン、又はホスホニウムイオンを示し、nが2のとき、Xn+はマグネシウムイオン、カルシウムイオン、バリウムイオン、又は亜鉛イオンを示す。)
【0056】
前記一般式(2)中、Rは、前記水溶性樹脂組成物の中性水への溶解性及び耐熱性を向上させる観点から、置換基を有していてもよい、置換基を含めた炭素数が1~30の炭化水素基を示す。当該炭化水素基は、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基のいずれであってもよい。当該炭化水素基が芳香族炭化水素基の場合、当該炭化水素基の炭素数は、前記水溶性樹脂組成物の中性水への溶解性及び耐熱性を向上させる観点から、6以上が好ましく、8以上がより好ましく、10以上が更に好ましく、30以下が好ましく、25以下がより好ましい。
【0057】
また、前記置換基としては、前記水溶性樹脂組成物の中性水への溶解性及び耐熱性を向上させる観点から、炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子、及びケイ素原子、並びにハロゲン原子からなる群より選ばれる1種以上を含むものが好ましく、中でも炭素数1~22の炭化水素基又は炭素数1~22のハロゲン化アルキル基が好ましく、炭素数1~16の炭化水素基がより好ましく、炭素数1~12の炭化水素基が更に好ましい。
【0058】
前記一般式(2)中、Xn+は、前記水溶性樹脂組成物の中性水への溶解性及び耐熱性を向上させる観点から、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、バリウムイオン、亜鉛イオン、又はホスホニウムイオンを示し、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、アンモニウムイオン、又はホスホニウムイオンが好ましく、ホスホニウムイオンがより更に好ましい。ホスホニウムイオンの中でも、前記水溶性樹脂組成物の中性水への溶解性及び耐熱性を向上させる観点から、テトラアルキルホスホニウムイオンが好ましく、テトラブチルホスホニウムイオンがより好ましい。
【0059】
前記一般式(2)中、nは、前記水溶性樹脂組成物の中性水への溶解性及び耐熱性を向上させる観点から、1が好ましい。
【0060】
前記水溶性樹脂組成物中の前記有機塩化合物の含有量は、前記水溶性樹脂組成物の中性水への溶解性を向上させる観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは4質量%以上であり、前記水溶性樹脂組成物の耐熱性を向上させる観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
【0061】
前記水溶性樹脂組成物中の前記有機塩化合物の含有量は、前記水溶性樹脂組成物の中性水への溶解性を向上させる観点から、前記有機塩化合物のアルキルスルホン酸イオン(R-SO-)の物質量(mol)と、前記水溶性樹脂の親水性基の物質量(mol)とスルホン酸塩基の物質量(mol)との合計の比(前記有機塩化合物のアルキルスルホン酸イオンの物質量/前記水溶性樹脂の親水性基の物質量とスルホン酸塩基の物質量の合計)が、0.005以上が好ましく、0.01以上がより好ましく、0.02以上が更に好ましく、0.03以上が更に好ましく、前記水溶性樹脂組成物の耐熱性を向上させる観点から、0.35以下が好ましく、0.25以下がより好ましく、0.2以下が更に好ましい。
【0062】
(相溶化剤(成分γ))
前記水溶性樹脂組成物は、プライマー層及び基材、並びにプライマー層及び印刷層との間の接着性を向上させる観点から、相溶化剤(以下、「成分γ」ともいう)を含有してもよい。当該相溶化剤としてはBondfast(登録商標)7B、Bondfast 7M(以上、住友化学社製)、ロタダー(登録商標)AX8840(アルケマ社製)、JONCRYL(登録商標)ADR4370S、JONCRYL ADR4368CS、JONCRYL ADR4368F、JONCRYL ADR4300S(以上、BASF社製)、ARUFON(登録商標)UG4035、ARUFON UG4040、ARUFON UG4070(以上、東亜合成社製)が例示できる。酸無水物基を有する反応性相溶化剤としては、ユーメックス(登録商標)1010(三洋化成社製)、アドマー(登録商標)(三井化学社製)、モディパー(登録商標)A8200(日本油脂社製)、OREVAC(登録商標)(アルケマ社製)、FG1901、FG1924(以上、クレイトンポリマー社)、タフテック(登録商標)M1911、タフテックM1913、タフテックM1943(以上、旭化成ケミカルズ社製)が例示できる。イソシアネート基を有する反応性相溶化剤としてはカルボジライトLA-1(登録商標)日清紡社製が例示できる。
【0063】
前記水溶性樹脂組成物の前記成分α100質量部に対する前記成分γの含有量は、印刷プライマー層の強度の観点から、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、3質量部以上が更に好ましく、同様の観点から、20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。
【0064】
前記水溶性樹脂組成物は、中性水への溶解性の効果を損なわない範囲で前述した成分以外の他の成分を含有していても良い。当該他の成分の例としては、前記成分α以外の樹脂、安息香酸ポリアルキレングリコールジエステル等の可塑剤、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ガラス球、黒鉛、カーボンブラック、カーボン繊維、ガラス繊維、タルク、ウォラストナイト、マイカ、アルミナ、シリカ、カオリン、ウィスカー、炭化珪素等の充填材、エラストマー等が挙げられる。
【0065】
前記エラストマーとしては、アクリル系エラストマー、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、及びシリコーン系エラストマーが例示できる。これらの中でもアクリル系エラストマー、及びスチレン系エラストマーからなる群より選ばれる1種以上が好ましく、アクリル系エラストマーがより好ましい。スチレン系エラストマーとしては、スチレン-ブタジエン共重合体、及びスチレン-ブタジエン-エチレン共重合体からなる群より選ばれる1種以上が好ましい。アクリル系エラストマーとしてはメタクリル酸-アクリル酸アルキル共重合体が好ましい。前記エラストマーの市販品としては、クラリティ(登録商標)LA2250、クラリティLA2140、クラリティLA4285(以上、クラレ社製)が例示できる。前記オレフィン系エラストマーとしては、Kraton(登録商標)ERSポリマー(クレイトンポリマー社製)、Kraton Aポリマー、Kraton Gポリマー(以上、クレイトンポリマー社製)、「タフテックH」シリーズ、「タフテックP」シリーズ(旭化成ケミカルズ社製)、セプトン(登録商標)、ハイブラー(登録商標)(以上、クラレプラスチックス社)が例示できる。
【0066】
前記成分α100質量部に対する前記水溶性樹脂組成物の前記エラストマーの含有量は、印刷プライマー層の強度向上の観点から、0.1質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、10質量部以上が更に好ましく、同様の観点から、100質量部以下が好ましく、60質量部以下がより好ましく、40質量部以下が更に好ましく、20質量部以下が更に好ましい。
【0067】
その他必要に応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤、シリコン系添加剤、フッ素系添加剤、帯電防止剤、シランカップリング剤、密着助剤、レオロジーコントロール剤、防曇剤、着色剤、架橋剤、pH調整剤、皮膜形成剤、レベリング剤、増粘剤、撥水剤、消泡剤等の公知のものを適宜添加してもよい。
【0068】
上述した水溶性樹脂を用いて、プライマー層を形成し、該プライマー層上にインクを印字する方法を説明する。斯かる方法を、以下、プライマー層上表示方法ともいう。
〔プライマー層上表示方法〕
本表示方法は、包装袋3の表面上にプライマー層を形成するプライマー層形成工程、及び該プライマー層上に印刷層を形成する印刷層形成工程をこの順で有する。本表示方法によって包装袋3には、表示情報が表示された情報表示部(不図示)が形成される。本実施形態において情報表示部は、包装袋3の表面上に形成され、プライマー層及び印刷層を具備する。
【0069】
プライマー層形成工程は、包装袋3の表面上にプライマー層を形成する工程である。プライマー層は、上述した水溶性樹脂を含んでいる。包装袋3上にプライマー層を形成する方法は特に限定されず、例えば、印刷プライマー用水溶性樹脂又は印刷プライマー用水溶性樹脂組成物を含有する塗布液を調整し、当該塗布液をグラビア方式、凸版(フレキソ)方式、オフセット方式、ロールコーター方式(転写方式)、スプレー方式、刷毛塗り方式、インクジェット方式、スクリーン方式、ダイコート方式、スピンコート方式、ディップ方式、メイヤーバー方式、エアナイフ方式等の従来の塗布方法で塗布した後、乾燥させる方法が挙げられる。
【0070】
前記塗布液中のプライマー用水溶性樹脂の濃度としては、塗布の効率性、及びプライマー層の均一性向上の観点から、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましく、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましい。
前記塗布液の調製に用いられる溶剤は、溶剤として用いることができるものであれば特に限定なく用いることができる。
【0071】
包装袋3上に塗布した塗布液を乾燥させる方法は、特に限定なく従来の乾燥方法を適用することができる。
【0072】
プライマー層の厚さは、プライマー層上に形成される印刷に係るインク等が該プライマー層を透過して包装袋3に付着するのを防ぐ観点、及びコスト低減の観点から、0.1μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましく、1μm以上がさらに好ましく、プライマー層の柔軟性、並びに生産性の向上、及びコスト低減の観点から、50μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましく、20μm以下がさらに好ましく、10μm以下がさらに好ましい。
【0073】
印刷層形成工程は、プライマー層上に印刷層を形成する工程である。当該印刷層形成工程で用いられる印刷方法としては特に限定されず、例えば、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法、電子写真印刷法、レーザー印刷法、凸版印刷法、凹版印刷法、平板印刷法、孔版印刷法等を用いることができる。なお、プライマー層の形成と印刷層の形成は連続式(インライン)で行ってもよく、プライマー層の形成と印刷層の形成(印刷)とを別々に行ってもよい。
【0074】
上述した方法により表示された表示情報は、所定温度以上の中性水で処理することにより、包装袋3から消去することができる。中性水としては、pH6~8の水又は水溶液が挙げられる。具体的には、脱イオン水、純水、水道水、工業用水が挙げられ、入手容易性の観点から脱イオン水又は水道水が好ましい。また、前記中性水は水溶性有機溶媒、界面活性剤などの他の成分を含んでいてもよい。前記水溶性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、2-プロパノールなどの低級アルコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノターシャリーブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールエーテル類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類が挙げられる。前記界面活性剤としては、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、オレフィンスルホン酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩等のアニオン界面活性剤、アルキルトリメチルアンモニウム塩等のカチオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、アルキルグリコシド等のノニオン界面活性剤が挙げられる。
【0075】
表示情報を中性水で消去する方法としては特に制限されず、例えば、包装袋3を中性水に浸漬する浸漬方法、包装袋3に流水を当てる流水方法、電解洗浄、スプレー洗浄、スクラブ洗浄、超音波洗浄等を採用することができる。
【0076】
表示情報の消去作業の容易性を向上させる観点から、表示情報の消去に用いられる中性水の温度は、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、さらに好ましくは55℃以上、さらに一層好ましくは60℃以上である。表示情報の消去に用いられる中性水の温度は、表示情報が包装袋3から除去可能な中性水の最低温度を意味する。斯かる温度を、単に「消去温度」ともいう。本実施形態のように、消去温度が相異なる表示情報を表示する場合、各表示情報の消去温度が前述した範囲内であることが好ましい。
【0077】
本実施形態における表示情報は、消去温度が互いに異なる第1表示情報及び第2表示情報を含んでいる。具体的には、第1表示情報及び第2表示情報は、消去温度が相異なるプライマー層上にインクを印字することで表示されている。第1表示情報は、消去温度が第2表示情報よりも低い。このように、消去温度が異なる複数種類の表示情報が表示されている場合、配送情報等の個人情報は、該複数種類の表示情報のうち、消去温度の低い表示情報に含まれていることが好ましい。斯かる構成により、ユーザーが配送情報の消去作業をより容易に行うことができる。
【0078】
本実施形態において第1表示情報は、配送情報を含んでいる。梱包体1の輸送時において第1表示情報の意図しない消去をより抑制するとともに、第1表示情報の消去作業をより容易にする観点から、第1表示情報の消去温度は、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、さらに好ましくは55℃以上、さらに一層好ましくは60℃以上である。
【0079】
表示情報は、その消去温度に応じて、上述した水溶性樹脂中の親水性基を有するモノマーユニットの親水性基の種類を適宜変更できる。あるいは、消去温度に応じて、前記水溶性樹脂を構成するモノマーユニットの組成を適宜変更できる。例えば、消去温度を低くする場合、前記水溶性樹脂の全モノマーユニットの合計に対する前記モノマーユニットAの割合を増加させる。また、消去温度を高くする場合、前記水溶性樹脂の全モノマーユニットの合計に対する前記モノマーユニットAの割合を減少させる。
【0080】
また、積層構造を有する包装袋3では、各層で包装袋3の外から伝わる温度が異なることがある。これを利用して、第1表示情報と第2表示情報とで印刷プライマー用水溶性樹脂の組成を同じにし、且つ第1表示情報を包装袋3の外面に、さらに第2表示情報を包装袋3の内側に配されるシート(例えば内袋)の外面に付与してもよい。斯かる形態の包装袋3を所定温度以上の中性水(溶媒)で処理すると、前記水溶性樹脂が第1表示情報と第2表示情報とで同じ組成であっても、包装袋3の外側に比して内側は温度が伝わり難くなるので、包装袋3の外面側(外側)に付与された第1表示情報は除去されるが、該包装袋3の内面側(内側)に付与された第2表示情報は除去されない。
【0081】
さらに、表示情報が表示された情報表示部における、プライマー層の露出面積を調整することによって、前記消去温度を制御することができる。情報表示部においてプライマー層は、この上に印刷層が形成されているので、該プライマー層の表面を印刷層が被覆している。プライマー層は、印刷層から露出する面積が大きいほど、中性水との接触面積が大きくなるので、情報をより消去し易くなる。即ち、情報表示部における印刷層からの露出面積を大きくすることにより、消去温度を低くすることができ、逆に該露出面積を小さくすることにより、消去温度を高くすることができる。
【0082】
本実施形態のように、消去温度が異なる表示情報が表示されている場合、相対的に消去温度の高い表示情報が、分別業者F等が取得するリサイクル情報を含んでいることが好ましい。斯かる構成によって、より確実に分別時まで包装袋3にリサイクル情報の表示を残すことができる。
【0083】
本実施形態においては、第2表示情報が、包装袋3の構成樹脂に関する情報を含んでいる。包装袋3の構成樹脂に関する情報の意図しない消去をより抑制するとともに、第2表示情報4の消去作業をより容易にする観点から、第2表示情報の消去温度は、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上、さらに好ましくは80℃以上である。
【0084】
包装袋3の強度をより向上させる観点から、収容部10は、外袋11の内表面のほとんどが、内袋の外表面と接合されていないことが好ましい。内表面は、包装袋3の内部空間3a側の面であり、外表面は、包装袋3の外面側の面である。また、外袋11の外表面は、包装袋3の外面でもある。
【0085】
包装袋3の収容部10内に収容された商品を効果的に保護する観点から、包装袋3は、収容部10の内部空間3aに、空気が封入されていることが好ましい。斯かる構成により、梱包体1に荷重等の負荷が加わった際に、内部空間3a内の空気が緩衝材として機能する。本明細書において、気体(空気)が封入されているとは、包装袋3と商品2との間の空隙3cが気体で満たされており、その気体が外部に漏れ出さないように包装袋3が気密に封止されていることを意味する。したがって、本実施形態の包装袋3内を密封する前に、空気等の気体を包装袋内に送り込んだり、封止後に内圧を高めるために包装袋の内面どうしを接合したりする等の内圧を高める操作は必須ではない。前記気体は、空気であることが好ましいが、空気のほか、窒素と酸素とが通常の空気とは異なる比率で混合された混合気体、窒素、ヘリウム等であってもよい。
【0086】
包装袋3は、収容部10の内部空間3aに所定気圧の空気が封入されていると、該包装袋3を用いた梱包体1を複数積み重ねることができるので、輸送効率の向上の観点から好ましい。内部空間3a内の空気による緩衝材の機能をより向上させる観点、及び複数の梱包体1を輸送又は保管する際に、複数の梱包体1を容易に積み重ねる観点から、梱包体1の空隙率Gは、標準状態(20℃、1気圧)において好ましくは30%以上80%以下、より好ましくは32%以上70%以下であり、さらに好ましくは32%以上60%以下である。複数の梱包体を積層した状態で輸送又は保管することにより、商品の流通過程における輸送効率を向上させることができる。
【0087】
前記空隙率Gは、梱包体1の体積V1に対する包装袋3及び商品2間の空隙3cの体積V3の割合を100分率で示した値であり、標準状態、即ち、温度が20℃、気圧が1気圧(1atm=101.325kPa)の状態下に測定する。
梱包体1の体積V1及び空隙3cの体積V3は、両体積を測定し得る任意の方法で測定し得るが、好ましくは、以下の簡易測定法により測定する。
【0088】
〔簡易測定法〕
標準状態に維持した室内等の閉鎖空間内に、測定対象の梱包体を、体積が安定するまで十分な時間静置した後、該屋内に設置した、底面の内寸が直径330mm深さ500mmの円筒形の水槽(水温20℃)内に、測定対象の梱包体を、その全体が水面下に位置するまで沈める。そして、沈めた状態の水深と沈める前の水深との差(mm)に水槽の底面積を乗じて、梱包体1の体積V1とする。なお、水槽の大きさは、梱包体1より大きめのものであれば、上記寸法に限られないが、梱包体より数倍程度の大きさであることが好ましい。
また、梱包体に代えて梱包体から取り出した商品を、前記の水槽中の水に沈める以外は、梱包体の体積の測定方法と同様にして商品の体積V2を測定する。梱包体に複数の商品が含まれている場合は、全ての商品の合計体積を商品の体積V2とする。
そして、測定した梱包体の体積V1から測定した商品の体積V2を引いた値を空隙3cの体積V3とする。なお、商品が、その内部に水が入り込む孔や空間を有するものである場合、シールテープや耐水性の接着剤等で水が入らないようにして測定するか、商品の外形から、その孔や空間の体積を含む商品の体積を算出する等の方法で、当該商品の体積V2を求める。
そして、空隙3cの体積V3及び梱包体1の体積V1から、次式(3)により、空隙率G(%)を求める。
空隙率G(%)=(空隙3cの体積V3/梱包体1の体積V1)×100・・(3)
【0089】
梱包体1を積み重ねたときの安定性を向上させる観点から、前記標準状態における梱包体の体積V1は、包装袋の内圧を1.1気圧に高めた状態における該包装袋の体積V4に対する割合を百分率で示した値である膨れ率Hが、60%以上90%以下であることが好ましい。
60%以上とすることにより、梱包体を積み重ねたときに梱包体の商品に直接大きな荷重が加わることが防止され、梱包体を緩衝容器として十分に機能させることができる。また90%以下とすることにより、梱包体を積み重ねたときに包装袋の体積がある程度変化し、それにより、積み重ねた際の安定性が一層向上する。
斯かる観点から、前記膨れ率H(%)は、好ましくは65%以上、より好ましくは69%以上であり、また、好ましくは90%以下、より好ましくは88%以下であり、また好ましくは65%以上90%以下、さらに好ましくは69%以上90%以下であり、さらに好ましくは69%以上88%以下である。
【0090】
空隙3cの内圧を1.1気圧に高めた状態の梱包体の体積V4は、商品を内包させない状態の空の包装袋に、内圧計と空気注入管を取り付け、空気注入管を介して内圧が1.1気圧になるまで空気を注入した後、封止する。内圧が1.1気圧になった空の包装袋を、水槽内に包装袋が水中に全部隠れるまで沈め、排出される水の体積を計量する。梱包体や空の包装袋を水中に沈める際、なるべく梱包体や空の包装袋に水圧がかからないようにする。水圧がかからないようにする理由は、水圧による梱包体や空の包装袋の体積減がおこらないようにするためである。水中に沈める好ましい形態は、最も面積の大きな面、例えば、図1に示す梱包体の内部空間を形成するシート材の外面が、水面と平行になるような横置きである。
そして、次式により、前記膨れ率H(%)を求める。
前記膨れ率H(%)=(梱包体1の体積V1/内圧が1.1気圧の空の包装袋における体積V4)×100 ・・・(4)
【0091】
また、包装袋3の内部空間3aに封入された空気は、大気圧以上の圧力で封入されていてもよい。包装袋3内の圧力の測定は、圧力計を包装袋に接続することで直接知ることができる。圧力計はOMRON/E8F2-A01C(MAX100kPa)を用い、圧力計先端のネジ部を、包装袋に予め用意された接続口に、取り付けることによって、圧力を知ることができる。個別の梱包体の状態(商品が内包されている状態)では、包装袋の内圧は0~0.5kPaであ
る。
【0092】
包装袋3において、外袋11と内袋12との間には気体が封入されていてもよい。外袋11と内袋12との間に気体(空気)を封入する場合、上述した包装袋3における収容部10の内部空間3aと同条件で気体(空気)が封入されることが好ましい。
【0093】
本実施形態の包装袋3において、図1図2、及び図4に示すように、外袋11を形成するシートと、内袋12を形成するシートとが重なってなる多重シートが、開口部16から取り出し方向Xの外方側に延出している。斯かる延出した部分を延出部19ともいう。延出部19は、多重シートが折り返された積層構造を有している。側部シール部15,15は、開口部16よりも取り出し方向Xの外方に延出している。この延出した側部シール部15,15では、延出部19において対向する多重シートの側部どうしが接合されている。梱包体1の輸送時、延出部19を把持して梱包体1を運ぶことができる。
【0094】
包装袋3は、ヒトの手で把持し得る取手構造を有していてもよい。例えば、包装袋3は、図5に示すように、延出部19において、ヒトの手が挿通可能な取手貫通孔20を有していてもよい。図5に示す包装袋3は、平面視において取手貫通孔20の周縁に沿って貫通孔シール部20aが形成されている。貫通孔シール部20aでは、延出部19において対向する多重シートどうしが接合されている。前記貫通孔シール部20aは、開口部16におけるシール部と連続している。開口部16におけるシール部は、相対向する外袋11を形成するシートと、内袋12を形成するシートとを接合するシール部である。延出部19における取手貫通孔20及び貫通孔シール部20a以外の部分は、前記多重シートの積層構造によって構成されている。図5に示す延出部19において、前記多重シートの積層構造における多重シートどうし間には、気体が封入されていない。
【0095】
図6(a)~(d)には、平面視における取手貫通孔20のバリエーションが示されている。延出部19における取手貫通孔20の平面視形状は、図6(a)及び(b)に示すように楕円状であってもよく、図6(c)及び(d)に示すように矩形状であってもよいが、該平面視形状はこれらに限定されない。図6(a)及び(d)に示す延出部19は、貫通孔シール部20aが、開口部16におけるシール部と連続している。一方、図6(b)及び(c)に示す延出部19は、貫通孔シール部20aと、開口部16におけるシール部とが連続していない。即ち、図6(b)及び(c)に示す延出部19の平面視において、貫通孔シール部20aと開口部16との間には、前記多重シートの積層構造が介在している。図6(a)~(d)における延出部19において、取手貫通孔20及び貫通孔シール部20aの周囲21には、前記多重シートの積層構造における多重シートどうし間に気体が封入されている。これにより、当該周囲21は、取手貫通孔20が形成された部分に比して包装袋3の厚み方向の外方側に突出している(不図示)。
【0096】
包装袋3は、延出部19に、取手貫通孔20に代えて取手突出部22を有していてもよい。取手突出部22は、包装袋3の厚み方向の外方側に突出する部分であり、該部分をヒトの手で把持することができる。図7(a)~(d)には、平面視における取手突出部22のバリエーションが示されている。図7に示す延出部19においては、平面視において取手貫通孔20の周縁に沿って突出部シール部22aが形成されている。突出部シール部22aでは、延出部19において対向する多重シートどうしが接合されている。延出部19における取手突出部22の平面視形状は、図7(a)及び(b)に示すように楕円状であってもよく、図7(c)及び(d)に示すように矩形状であってもよいが、該平面視形状はこれらに限定されない。図7(a)及び(d)に示す延出部19は、突出部シール部22aが、開口部16におけるシール部と連続している。一方、図7(b)及び(c)に示す延出部19は、突出部シール部22aと、開口部16におけるシール部とが連続していない。即ち、図7(b)及び(c)に示す延出部19の平面視において、突出部シール部22aと開口部16との間には、前記多重シートの積層構造が介在している。
【0097】
取手突出部22は、多重シートが折り返された積層構造において、相対向する多重シートどうしの間に気体(空気)が封入されている。一方、図7(a)~(d)における延出部19において、取手突出部22の周囲23には、前記多重シートの積層構造における多重シートどうし間に気体が封入されていない。これにより取手突出部22は、図8に示すように、該取手突出部22の周囲23に比して包装袋3の厚み方向の外方側に突出している。
【0098】
前述したように、図6及び図7に示す延出部19は、その一部分に気体が封入されている。延出部19における気体の封入条件、即ち、延出部19の相対向する多重シートどうしの間における気体の封入条件は特に制限されない。把持のしやすさの観点から、延出部19における気体の封入条件は、最大容積の60%以上封入されることが好ましい。
【0099】
包装袋3の形成材料、即ち外袋11及び内袋12の形成材料としては、単層又は多層の公知の樹脂フィルムを用いることができる。包装袋3のリサイクルをより円滑に行う観点から、外袋11及び内袋12の形成材料は、単層又は多層の樹脂フィルムのみから構成されていることが好ましい。前記樹脂フィルムの構成樹脂としては、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリ乳酸系樹脂等の合成樹脂が挙げられる。
【0100】
包装袋3は、公知の製袋方法によって製造することができる。例えば、2枚のシートが積層した積層体を2つ折りにし、その周囲の三方又は四方をシールすることによって形成することができる。前記2枚のシートは、外袋11を形成するシートと、内袋12を形成するシートである。あるいは、2枚のシートからなる積層体を筒状にして、該積層体の両端をヒートシール等により封止したピロー袋として形成することができる。
【0101】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されない。
例えば、外袋11及び内袋12を形成するシートが透明であり、収容部10に収容された商品2を包装袋3の外から視認可能である場合、表示情報は、外袋11の内表面に表示されていてもよく、内袋12の内表面又は外表面に表示されていてもよい。また、収容部10に収容された商品2を包装袋3の外から視認可能である場合、外袋11の内表面、内袋12の外表面、又は内袋12の内表面に模様や絵柄等のデザインが施されていてもよい。この場合、前記デザインは、上述したプライマー層上に施される。包装袋3のリサイクルをより容易にする観点から、前記表示情報又は前記デザインは、内袋12の内表面に付与されていることが好ましい。
また、上述した実施形態において包装袋3の用途は、ネットショッピング等の通販に用いられる梱包資材であったが、製造業者と店舗との間等、他の流通経路や引越し等のサービスに用いられる梱包資材であってもよい。
【符号の説明】
【0102】
1 梱包体
2 商品
3 包装袋
4 第2表示情報
5 第1表示情報
10 収容部
11 外袋
12 内袋
15 側部シール部
16 開口部
17 底部シール部
19 延出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9