(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-01
(45)【発行日】2023-08-09
(54)【発明の名称】空陸両用移動体
(51)【国際特許分類】
B60F 5/02 20060101AFI20230802BHJP
B64C 37/00 20060101ALI20230802BHJP
B64C 25/58 20060101ALI20230802BHJP
B64C 25/16 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
B60F5/02
B64C37/00
B64C25/58
B64C25/16
(21)【出願番号】P 2019178809
(22)【出願日】2019-09-30
【審査請求日】2022-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平林 大輔
(72)【発明者】
【氏名】田尻 啓祐
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06619584(US,B1)
【文献】特開2004-268902(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0217586(US,A1)
【文献】特開2005-053434(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60F 1/00- 5/02
B64C 37/00
B64C 25/58
B64C 25/16
B64C 25/02
B60G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上走行および飛行可能な空陸両用移動体であって、
胴体と、
前記胴体に設けられる翼と、
前記胴体の下側に設けられる車輪と、
前記胴体と前記車輪との間に伸縮自在に設けられるサスペンションと、
少なくとも前記空陸両用移動体の自重により前記サスペンションが収縮した状態で、前記サスペンションの伸長をロック可能なロック機構と、
閉状態で前記車輪の下部を被覆し、開状態で前記車輪の下部を露出させる被覆部材と、
前記車輪の下端よりも上方に退避する退避位置と、前記車輪の下端よりも下方に突出する突出位置との間で、上下動可能に設けられる可動部材と、
を備え
、
前記被覆部材は、前記可動部材の上下動に連動して開閉可能に設けられ、前記可動部材が前記退避位置に移動すると前記開状態となり、前記可動部材が前記突出位置に移動すると前記閉状態となる、
空陸両用移動体。
【請求項2】
前記ロック機構は、前記空陸両用移動体の離陸前に、前記自重により収縮した状態の前記サスペンションの伸長をロックし、前記空陸両用移動体の着陸前に、前記サスペンションのロックを解除して、前記サスペンションを伸縮自在にする、請求項1に記載の空陸両用移動体。
【請求項3】
前記被覆部材は、前記可動部材の下方移動に連動して前記空陸両用移動体の離陸後に閉状態となって、前記車輪の下部を被覆する、請求項
1または2に記載の空陸両用移動体。
【請求項4】
前記可動部材を前記退避位置に固定する固定機構を備え、
前記固定機構は、前記可動部材の固定を解除することにより、前記可動部材を自重により下方に移動させる、請求項
1~3のいずれか1項に記載の空陸両用移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空陸両用移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来一般的な航空機は、着陸後に機体を地上で支持し、地上を滑走するために、車輪および緩衝装置等を含む着陸装置を備える。かかる着陸装置は、空中飛行時に航空機の空気抵抗を増加させる原因となるため、飛行時には着陸装置を折り畳む、または収縮させるなどして、機体に収容することが好ましい。
【0003】
例えば、特許文献1~3には、航空機の離陸後に、着陸装置の全長を短くする収縮機構を用いて、着陸装置を機体内に収容することが開示されている。このように収縮機構により着陸装置の全長を短くすることで、着陸装置を収容するための収容スペースを削減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-118720号公報
【文献】特開2010-018269号公報
【文献】特開2018-172106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1~3等に記載の従来一般的な航空機では、着陸装置が収縮機構を備えるため、着陸装置の構造が複雑化し、機体の重量が増加するという問題があった。
【0006】
ところで、近年、自動車または自動二輪車などのような小型の車両でありながら、地上走行だけでなく空中飛行も可能な空陸両用移動体の開発が進められている。この小型の空陸両用移動体は、車輪と翼を備え、通常の車両と同等に車輪を用いて地上を走行できるとともに、翼の揚力により空中を飛行することもできる。
【0007】
かかる空陸両用移動体においても、空中飛行時に空気抵抗を低減するため、できるだけ車輪を機体内に収容することが好ましい。反面、安定して地上走行するためには、機体内に収容した車輪を確実に展開して、機体外に露出させることが求められる。
【0008】
しかしながら、このような特殊なモビリティである空陸両用移動体において車輪を機体に収容および展開する技術に関し、従来では明確なコンセプトが何ら提案されていなかった。また、上記特許文献1~3の一般的な航空機における着陸装置の収縮機構を空陸両用移動体に適用した場合、空陸両用移動体の装置構造が複雑化し、機体重量が増加してしまうので、小型の空陸両用移動体には適さないという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、空陸両用移動体の車輪を機体に収容する収容機構を簡素化、軽量化しつつ、飛行時の空気抵抗を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の空陸両用移動体は、地上走行および飛行可能な空陸両用移動体であって、胴体と、胴体に設けられる翼と、胴体の下側に設けられる車輪と、胴体と車輪との間に伸縮自在に設けられるサスペンションと、少なくとも空陸両用移動体の自重によりサスペンションが収縮した状態で、サスペンションの伸長をロック可能なロック機構と、閉状態で車輪の下部を被覆し、開状態で車輪の下部を露出させる被覆部材と、車輪の下端よりも上方に退避する退避位置と、車輪の下端よりも下方に突出する突出位置との間で、上下動可能に設けられる可動部材と、を備え、被覆部材は、可動部材の上下動に連動して開閉可能に設けられ、可動部材が退避位置に移動すると開状態となり、可動部材が突出位置に移動すると前記閉状態となる。
【0011】
ロック機構は、空陸両用移動体の離陸前に、自重により収縮した状態のサスペンションの伸長をロックし、空陸両用移動体の着陸前に、サスペンションのロックを解除して、サスペンションを伸縮自在にしてもよい。
【0014】
被覆部材は、可動部材の下方移動に連動して空陸両用移動体の離陸後に閉状態となって、車輪の下部を被覆してもよい。
【0015】
可動部材を退避位置に固定する固定機構を備え、固定機構は、可動部材の固定を解除することにより、可動部材を自重により下方に移動させてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、空陸両用移動体の車輪を機体に収容する収容機構を簡素化、軽量化しつつ、飛行時の空気抵抗を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る地上走行モードの空陸両用移動体を示す概略斜視図である。
【
図2】同実施形態に係る垂直離着陸モードの空陸両用移動体を示す概略斜視図である。
【
図3】同実施形態に係る水平飛行モードの空陸両用移動体を示す概略斜視図である。
【
図4】同実施形態に係る空陸両用移動体の動力系の構成を示すブロック図である。
【
図5】同実施形態に係る空陸両用移動体の内部構造を示す概略図である。
【
図6】同実施形態に係るロック機構を示す概略図である。
【
図7】同実施形態に係るロック機構を示す概略図である。
【
図8】同実施形態に係るサスペンションが空陸両用移動体の自重により収縮した状態を示す概略図である。
【
図9】同実施形態に係るロック機構のロック状態とロック解除状態を示す概略図である。
【
図10】同実施形態に係る車輪被覆機構の構成を示す概略図である。
【
図11】同実施形態に係る車輪被覆機構の動作を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0019】
[1.空陸両用移動体の全体構成と動作モード]
まず、
図1~
図3を参照して、本発明の一実施形態に係る空陸両用移動体1の全体構成と動作モードについて説明する。
図1は、地上走行モードの空陸両用移動体1の概略斜視図である。
図2は、垂直離着陸モードの空陸両用移動体1の概略斜視図である。
図3は、水平飛行モードの空陸両用移動体1の概略斜視図である。
【0020】
以下では、空陸両用移動体1の進行方向に対して平行な方向を前後方向X(ロール軸方向)、前後方向Xに対して垂直な水平方向を左右方向Y(ピッチ軸方向)、前後方向Xおよび左右方向Yに対して垂直な方向を上下方向Z(ヨー軸方向)として説明する。前方向+Xは、前後方向Xのうち機体の前側に向かう方向(空陸両用移動体1の進行方向)であり、後方向-Xは、前後方向Xのうち機体の後側に向かう方向である。左方向+Y、右方向-Yはそれぞれ、左右方向Yのうち機体の左側、右側に向かう方向である。上方向+Z、下方向-Zはそれぞれ、上下方向Zのうち機体の上側、下側に向かう方向である。
【0021】
図1~
図3に示すように、本実施形態に係る空陸両用移動体1(以下、「移動体1」と略称する。)は、例えば、2つの車輪3と、左右一対の主翼5を備えた自動二輪車である。移動体1は、地上走行および飛行可能に構成されている。つまり、移動体1は、2つの車輪3等の走行手段を備えることで、自動二輪車と同様に地上を走行可能である。かつ、移動体1は、主翼5等の飛行手段を備えることで、航空機と同様に空中を飛行可能である。
【0022】
移動体1は、車輪3と、主翼5と、胴体7と、水平尾翼9と、垂直尾翼11と、第1回転翼13と、第2回転翼15と、主翼桁17と、ヒンジ機構19とを備える。移動体1は、
図1~3に示すように、主翼5の配置を変更することにより、動作モードを切り替えることが可能である。動作モードは、地上走行モード(
図1)と、垂直離着陸モード(
図2)と、水平飛行モード(
図3)とを含む。垂直離着陸モードおよび水平飛行モードは、空中飛行モードとも呼ぶ。
【0023】
図1に示す地上走行モードでは、移動体1は、胴体7に対し主翼5、5が後方向-Xに折り畳まれる主翼折畳状態となる。主翼5、5が折り畳まれることで、移動体1の左右方向Yの幅が小さくなる。その結果、移動体1は、地上走行時に走行幅が制限されるような環境下においても走行可能となる。
【0024】
図2に示す垂直離着陸モードでは、移動体1は、胴体7に対し主翼5、5が左方向+Yおよび右方向-Yに展開される主翼展開状態となる。主翼5、5の付け根に配置されたヒンジ機構19により、上下方向Zに延びる回動軸を中心に主翼5、5を回動させることで、移動体1は、
図1に示す主翼折畳状態(地上走行モード)と、
図2に示す主翼展開状態(垂直離着陸モード)とに切り替わる。垂直離着陸モードでは、主翼5、5は大凡YZ平面内に配置され、第1回転翼13、13の回転中心軸は大凡上下方向Zとなる。この状態で、第1回転翼13が回転すると、移動体1の上方向+Zに推力(揚力)を発生させることができる。上方向+Zへの推力を増減させることで、移動体1は、地上から上方向+Zに浮上して離陸したり、あるいは、空中から下方向-Zに下降して着陸したりすることができる。このように、移動体1は、垂直離着陸可能な飛行体として動作可能である。
【0025】
図3に示す水平飛行モードでは、垂直離着陸モードと同様に、移動体1は、主翼展開状態となる。水平飛行モードでは、主翼5、5および第1回転翼13、13は、上記垂直離着陸モード時の状態から主翼桁17を中心に前方に90度回動した状態となり、主翼5、5は大凡XY平面内に配置され、第1回転翼13、13の回転中心軸は大凡前後方向Xとなる。移動体1は、左右方向Yに延びる回動軸を中心に主翼桁17を回動させることで、
図2に示す垂直離着陸モードと、
図3に示す水平飛行モードとに切り替わる。水平飛行モード中、第1回転翼13が回転すると、移動体1の前方向+Xに推力(揚力)を発生させることができる。前方向+Xへの推力を増減することで、移動体1は、前方向+Xに移動する速度(即ち、飛行速度)を増減することができる。
【0026】
[2.移動体の各構成要素]
次に、本実施形態に係る移動体1の各構成要素について詳述する。
【0027】
本実施形態に係る移動体1は、例えば、自動二輪車をベースとした飛行体であるため、地上走行時に地面に接触する駆動輪として、2つの車輪3(前輪3a、後輪3b)を備える。前輪3aは、胴体7の下部の前側に設けられる。後輪3bは、胴体7の下部の後側に設けられる。車輪3は、
図1に示す地上走行モードおいて、回転駆動しながら地面と接触し、移動体1を走行させる。
【0028】
胴体7の中央部の左右両側に一対の主翼5、5が設けられる。主翼5、5は、前後方向Xにおける胴体7の中央部に配置され、胴体7の左右両側に連結される。主翼5、5は、
図3に示す水平飛行モードにおいて、胴体7の左右両側に展開され、移動体1に上方向+Zの揚力を発生させる。
【0029】
胴体7は、移動体1の機体の中心構造部材であり、前後方向Xの長さが左右方向Yの長さよりも長い。胴体7の内部には、搭乗者が搭乗可能な搭乗スペースSが形成されるとともに、エンジン等の駆動源、燃料タンク、運転装置、計測器等の各種装置が搭載される。本実施形態に係る胴体7は、搭乗スペースSおよび各種装置、車輪3等のほぼ全体を覆うカバーを備えているが、かかる例に限定されず、胴体7内の搭乗スペースSまたは各種装置の一部は、カバーで覆われずに露出していてもよい。
【0030】
胴体7の後部の左右両側に、一対の水平尾翼9、9が設けられる。水平尾翼9、9は、胴体7の後部から左右方向Yに張り出すように配置される。水平尾翼9、9は、移動体1のピッチ軸回り(
図1~
図3中、Y軸回り)の安定性を保つ機能を有する。
【0031】
垂直尾翼11は、胴体7の後部の上側に、上方向+Zに張り出すように設けられる。垂直尾翼11は、移動体1のヨー軸回り(
図1~
図3中、Z軸回り)の安定性を保つ機能を有する。
【0032】
第1回転翼13、13は、一対の主翼5、5のそれぞれに設けられる。第1回転翼13は、不図示のモータにシャフトを介して接続されたスピナ13aと、スピナ13aの周囲に放射状に配置される複数のブレード13bを備える。第1回転翼13を回転させることにより
図2に示す垂直離着陸モードにおいて上方向+Zに推力(揚力)を発生させ、また、
図3に示す水平飛行モードにおいて前方向+Xに推力を発生させる。
【0033】
第2回転翼15は、胴体7の後端において、一対の水平尾翼9、9の間に設けられる。第2回転翼15を回転させることで、上下方向Zに推力を発生させ、移動体1のピッチ軸回りの姿勢を制御する。第2回転翼15は、主に移動体1の空中停止(ホバー)時に使用される。
【0034】
主翼桁17は、主翼5、5を支持する機能を有する。主翼桁17は、左右一対の主翼5、5および胴体7に跨って左右方向Yに延びるように設けられる。主翼桁17は、左右方向Yに胴体7を貫通するように配置される。本実施形態では、主翼桁17は、中心の胴体7内に配置される主翼桁17Aと、左右一対の主翼5、5内に配置される主翼桁17B、17Bとから構成される。主翼桁17Aと主翼桁17B、17Bはヒンジ機構19により連結される。
【0035】
かかる主翼桁17が円筒形状として回動可能に構成されることで、移動体1をティルトウィング機として成立させることができる。つまり、移動体1は、左右方向Yに延びる回動軸を中心に主翼桁17を回動させることにより、主翼5、5を回動させて、上記垂直離着陸モード(
図2)時の状態、または水平飛行モード(
図3)時の状態にすることができる。これにより、移動体1は、垂直離発着から水平飛行まで行うことができる。
【0036】
主翼桁17の途中には、左右一対のヒンジ機構19、19が設けられる。ヒンジ機構19、19は、胴体7の左右両側に配置される。ヒンジ機構19は、胴体7内の主翼桁17Aと、主翼5内の主翼桁17Bとを折れ曲げ可能に連結する。また、ヒンジ機構19は、主翼5、5を胴体7に対し折り畳み可能に支持する。かかるヒンジ機構19により、上記地上走行モード(
図1)では、主翼桁17Aに対して主翼桁17B、17Bを折り曲げて、胴体7に対して主翼5、5を折り畳むことができる。一方、垂直離着陸モード(
図2)や水平飛行モード(
図3)では、左右方向Yに延びるように主翼桁17A、17B、17Bを真っ直ぐに連結して、胴体7に対して主翼5、5を展開することができる。
【0037】
[3.移動体の動力系の構成]
次に、
図4を参照して、移動体1の動力系の構成について説明する。
図4は、移動体1の動力系の構成を示すブロック図である。
図4に示すように、移動体1は、燃料タンク21と、エンジン23と、発電機25と、動力制御部27と、バッテリ29と、駆動機構31とを備える。
【0038】
燃料タンク21には、燃料が貯留される。エンジン23には、燃料タンク21に貯留された燃料が供給される。エンジン23は、燃料を燃焼室内で燃焼させ、その燃焼圧力によりピストンを往復動させてクランクシャフトを回転させる。クランクシャフトの回転は、動力伝達機構(図示せず。)を介して車輪3に伝達される。車輪3が回転することで、空陸両用移動体1は、地上を走行することができる。
【0039】
また、クランクシャフトは、発電機25に接続される。発電機25には、クランクシャフトの回転が伝達される。発電機25は、クランクシャフトの回転により電力を生成する。動力制御部27は、発電機25により生成された電力をバッテリ29に充電する。動力制御部27は、バッテリ29から第1回転翼13、第2回転翼15、駆動機構31に電力を供給する。また、動力制御部27は、第1回転翼13、第2回転翼15、駆動機構31への電力の供給量を制御する。第1回転翼13、第2回転翼15、駆動機構31は、動力制御部27から供給される電力により駆動される。
【0040】
駆動機構31は、主翼桁17に連結されたフランジ部と、フランジ部に連結されたアクチュエータを備え、アクチュエータの駆動により、フランジ部を介して主翼桁17を回動させる。駆動機構31は、主翼桁17を回動させることで、主翼5、5を、上記垂直離着陸モード(
図2)時の状態、または水平飛行モード(
図3)時の状態にすることができる。
【0041】
[4.着陸装置の構成]
次に、
図5を参照して、移動体1の着陸装置100の構成について説明する。
図5は、本実施形態における移動体1の内部構造を示す概略図である。
図5に示すように、胴体7の内部には、車体フレーム33と、フロントサスペンション35と、スイングアーム37と、リアサスペンション39とが収容されている。車体フレーム33は、胴体7と一体的に構成され、胴体7の一部として機能する。
【0042】
車体フレーム33は、フロントサスペンション35と、スイングアーム37と、リアサスペンション39とを支持する。フロントサスペンション35の一端は車体フレーム33に接続され、フロントサスペンション35の他端は前輪3aに接続される。フロントサスペンション35は、車体フレーム33と前輪3aとの間に伸縮自在に設けられる。フロントサスペンション35は、前輪3aを回転可能、かつ、弾性的に支持する。
【0043】
スイングアーム37の一端は、車体フレーム33に接続され、スイングアーム37の他端は後輪3bに接続される。スイングアーム37は、車体フレーム33に対し回動可能(揺動可能)に支持され、後輪3bを回転可能に支持する。リアサスペンション39の一端は車体フレーム33に接続され、リアサスペンション39の他端はスイングアーム37に接続される。リアサスペンション39は、車体フレーム33とスイングアーム37との間に伸縮自在に設けられる。リアサスペンション39は、スイングアーム37および後輪3bを弾性的に支持する。
【0044】
フロントサスペンション35およびリアサスペンション39(以下、単にサスペンション35、39ともいう)は、車輪3(前輪3a、後輪3b)から車体フレーム33に伝達される衝撃(振動)を低減する。例えば、サスペンション35、39は、移動体1が着陸した際に、車輪3から車体フレーム33に伝達される衝撃を低減する。このように、本実施形態において、車輪3、サスペンション35、39は、着陸装置100として機能する。着陸装置100は、移動体1の機体を地上で支持し、移動体1の着陸の際の衝撃を受ける。
【0045】
サスペンション35、39は、車体フレーム33から離隔する方向に、車輪3(前輪3a、後輪3b)を付勢している。車輪3は、サスペンション35、39の付勢力により、胴体7の底面7aから下方に突出する。これにより、移動体1の地上走行時には、車輪3が胴体7よりも下方に十分に突出するので、走行に伴う振動や衝撃をサスペンション35、39により吸収して、安定的に走行できる。一方、移動体1の空中飛行時には、車輪3が底面7aから下方に突出する突出量が増大するほど、移動体1の空気抵抗が増大するので、移動体1の燃費が悪化するおそれがある。
【0046】
そこで、本実施形態の移動体1は、サスペンション35、39の伸長をロック可能なロック機構200A、200Bを備える。
図6は、本実施形態におけるロック機構200Aを示す概略図である。
図7は、本実施形態におけるロック機構200Bを示す概略図である。
【0047】
図6に示すように、ロック機構200Aは、ワイヤ201Aと、レバー部材203Aとを備える。ワイヤ201Aは、アウターケーシングと、アウターケーシング内のインナーワイヤとを含む。インナーワイヤは、アウターケーシングにガイドされながら、アウターケーシング内を摺動可能に構成される。ワイヤ(インナーワイヤ)201Aの一端はフロントサスペンション35に接続され、ワイヤ(インナーワイヤ)201Aの他端はレバー部材203Aに接続される。
【0048】
レバー部材203Aは、回動軸を中心に回動可能に構成される。レバー部材203Aは、例えば、移動体1に搭乗する搭乗者により
図6中、矢印A方向または矢印B方向に操作される。レバー部材203Aが回動すると、ワイヤ201Aが巻き取られたり、繰り出されたりする。例えば、レバー部材203Aが
図6中、矢印A方向に回動すると、ワイヤ201Aが繰り出され、
図6に示すようにワイヤ201Aが弛む。逆に、レバー部材203Aが
図6中、矢印B方向に回動すると、ワイヤ201Aが巻き取られ、ワイヤ201Aが張る。
【0049】
ワイヤ201Aが巻き取られると、フロントサスペンション35は、ワイヤ201Aにより下方向-Zの移動が制限される。フロントサスペンション35が収縮した状態で下方向-Zの移動が制限されると、ワイヤ201Aには、フロントサスペンション35の伸長しようとする力に対応する張力が加わる。また、フロントサスペンション35の下方向-Zの移動が制限されると、前輪3aは、下方向-Zへの移動が制限される。つまり、レバー部材203Aを
図6中、矢印B方向に回動させると、ロック機構200Aは、フロントサスペンション35の伸長をロックする。このとき、ロック機構200Aは、レバー部材203Aの回動を規制する規制部材(不図示)が別途設けられる。不図示の規制部材は、移動体1に搭乗する搭乗者により操作され、ロックまたはアンロックに切り替えられる。不図示の規制部材がロックに切り替えられることで、ロック機構200Aは、フロントサスペンション35のロックを維持することができる。
【0050】
反対に、レバー部材203Aを
図6中、矢印A方向に回動させると、ロック機構200Aは、フロントサスペンション35のロックを解除し、フロントサスペンション35を伸縮自在にする。
【0051】
図7に示すように、ロック機構200Bは、ワイヤ201Bと、レバー部材203Bとを備える。ワイヤ201Bは、アウターケーシングと、アウターケーシング内のインナーワイヤとを含む。インナーワイヤは、アウターケーシングにガイドされながら、アウターケーシング内を摺動可能に構成される。ワイヤ(インナーワイヤ)201Bの一端はスイングアーム37に接続され、ワイヤ(インナーワイヤ)201Bの他端はレバー部材203Bに接続される。
【0052】
レバー部材203Bは、回動軸を中心に回動可能に構成される。レバー部材203Bは、例えば、移動体1に搭乗する搭乗者により
図7中、矢印A方向または矢印B方向に操作される。レバー部材203Bが回動すると、ワイヤ201Bが巻き取られたり、繰り出されたりする。例えば、レバー部材203Bが
図7中、矢印A方向に回動すると、ワイヤ201Bが繰り出され、ワイヤ201Bが弛む。逆に、レバー部材203Bが
図7中、矢印B方向に回動すると、ワイヤ201Bが巻き取られ、ワイヤ201Bが張る。
【0053】
ワイヤ201Bが巻き取られると、スイングアーム37およびリアサスペンション39は、ワイヤ201Bにより下方向-Zの移動が制限される。リアサスペンション39が収縮した状態で、下方向-Zの移動が制限されると、ワイヤ201Bには、リアサスペンション39の伸長しようとする力に対応する張力が加わる。また、スイングアーム37の下方向-Zの移動が制限されると、リアサスペンション39および後輪3bは、下方向-Zへの移動が制限される。つまり、レバー部材203Bを
図7中、矢印B方向に回動させると、ロック機構200Bは、リアサスペンション39の伸長をロックする。このとき、ロック機構200Bは、レバー部材203Bの回動を規制する規制部材(不図示)が別途設けられる。不図示の規制部材は、移動体1に搭乗する搭乗者により操作され、ロックまたはアンロックに切り替えられる。不図示の規制部材がロックに切り替えられることで、ロック機構200Bは、リアサスペンション39のロックを維持することができる。
【0054】
反対に、レバー部材203Bを
図7中、矢印A方向に回動させると、ロック機構200Bは、リアサスペンション39のロックを解除し、リアサスペンション39を伸縮自在にする。
【0055】
ところで、移動体1が着地しているとき、車輪3およびサスペンション35、39は、移動体1を地上で支持する。このとき、サスペンション35、39は、移動体1の自重および搭乗者の重量により収縮する。
【0056】
図8は、本実施形態におけるサスペンション35、39が移動体1の自重により収縮した状態を示す概略図である。なお、
図8では、図面を見やすくするため、第1回転翼13の図示を省略している。
図8に示すように、ロック機構200A、200Bは、移動体1の自重によりサスペンション35、39が収縮した状態で、サスペンション35、39の伸長をロックしている。
【0057】
図9は、本実施形態におけるロック機構200Bのロック状態とロック解除状態を示す概略図である。
図9では、胴体7と後輪3bとリアサスペンション39との関係を表しているが、胴体7と前輪3aとフロントサスペンション35との関係も
図9と同様であるため、説明を省略する。
図9(a)は、移動体1の着陸前にロック機構200Bのロックを解除した状態を示し、
図9(b)は、移動体1の離陸前にロック機構200Bをロックした状態を示す。
【0058】
ここで、離陸時点とは、離陸態勢にある移動体1の車輪3が地面から離隔した時点をいう。離陸前とは、着地している移動体1が離陸態勢に移行した時点から、離陸時点より所定時間前(例えば数秒~数十秒前)までの期間における任意の時点をいう。離陸後とは、離陸時点以後の任意の時点をいう。なお、離陸態勢に移行した時点は、例えば、移動体1の動作モードが地上走行モード(
図1)から垂直離着陸モード(
図2)に切り替わった時点、または離陸に向けて第1回転翼13の回転を開始した時点などであってよい。
【0059】
また、着陸時点とは、着陸態勢にある移動体1の車輪3が地面に接触した時点をいう。着陸前とは、飛行している移動体1が着陸態勢に移行した時点から、着陸時点より所定時間前(例えば数秒~数十秒前)までの期間における任意の時点をいう。また、着陸後とは、着陸時点以後の任意の時点をいう。なお、着陸態勢に移行した時点は、例えば、移動体1の動作モードが水平飛行走行モード(
図3)から垂直離着陸モード(
図2)に切り替わった時点、または、着陸に向けて下降を開始した時点などであってよい。
【0060】
図9(a)に示すように、例えば着陸前において、ロック機構200Bのロックを解除すると、後輪3bは、リアサスペンション39の伸長する力により、胴体7の底面7aから下方に突出する。このときの底面7aからの後輪3bの突出量LをL1とする。
【0061】
一方、
図9(b)に示すように、例えば離陸前において、リアサスペンション39は、移動体1の自重により収縮する。このとき、後輪3bは、リアサスペンション39の収縮により、上方向+Z(収縮方向)に引き上げられる。この状態でロック機構200Bをロックさせると、リアサスペンション39は、下方向-Z(伸長方向)への移動が制限される。このときの底面7aからの後輪3bの突出量LをL2とする。突出量L2は、突出量L1より差分ΔLだけ小さい。
【0062】
ロック機構200Bは、移動体1の離陸後においても、リアサスペンション39の下方向-Z(伸長方向)への移動を制限する。そのため、底面7aからの後輪3bの突出量Lは、移動体1の離陸後も突出量L2に維持される。
【0063】
このように、ロック機構200Bは、リアサスペンション39を収縮した状態でロックすることで、底面7aからの後輪3bの突出量Lを、L1からL2に低減できる。底面7aからの後輪3bの突出量Lが低減するほど、移動体1の空気抵抗が減少し、移動体1の燃費が向上する。ロック機構200Bは、移動体1の自重によりリアサスペンション39が収縮した状態をロックすることで、複雑な機構を必要とせず、また、搭乗者により操作されることでアクチュエータを必要としない。そのため、移動体1に適した着陸装置100の構造を簡素化および軽量化することができる。
【0064】
[5.車輪被覆機構の構成]
胴体7の下部側には、車輪3を下方に突出させるための開口が形成されている。移動体1の空中飛行時、車輪3の一部は、胴体7の底面7aから下方に突出して外部に露出している。ここで、断面が円形状の車輪3のような突出物が胴体7から突出(露出)すると、断面が流線型の突出物が胴体7から突出する場合と比較して空気抵抗が増大する。そのため、移動体1の空気抵抗を低減するために、車輪3を被覆するフェアリングを設けることが好ましい。
【0065】
そこで、本実施形態の移動体1は、車輪被覆機構300を備える。
図10は、本実施形態の車輪被覆機構300の構成を示す概略図である。
図10では、車輪被覆機構300が後輪3bに適用された場合を表しているが、車輪被覆機構300が前輪3aに適用される場合も
図10と同様であるため、説明を省略する。
図10(a)は、車輪被覆機構300が後輪3bを被覆した状態を示し、
図10(b)は、車輪被覆機構300が後輪3bを露出させた状態を示す。
【0066】
図10に示すように、車輪被覆機構300は、接触子(可動部材)301と、アンダーカウル(被覆部材)303と、ヒンジ部305と、固定機構400とを備える。
【0067】
接触子301は、例えば、略L字形状を有する棒状金具で構成される。接触子301の上部は、スイングアーム37の筒部37aに挿抜自在に収容される。接触子301は、筒部37aに対して上下方向Zに摺動可能である。このように、接触子301は、胴体7に対して上下方向に移動可能に設けられている。接触子301は、車輪3の下端よりも下方に突出して地面に接触したり、車輪3の下端よりも上方に移動して、地面に接触しないように退避したりできる。かかる接触子301は、移動体1と地面との間の距離を検出するための地面検出用接触子として機能する。
【0068】
アンダーカウル303は、後輪3bの下部を覆う。本実施形態では、アンダーカウル303は、左右方向Yに2つに分割され、上方向+Zの上端部においてヒンジ303aにより互いに連結される。これにより、アンダーカウル303は、ヒンジ303aを中心として回動して、左右に開閉可能である。アンダーカウル303は、閉状態において後輪3bの下部を被覆し、開状態において後輪3bの下部を露出させ、胴体7内に収容される。
【0069】
ヒンジ部305の一端は接触子301に接続され、ヒンジ部305の他端はアンダーカウル303に接続される。ヒンジ部305により、アンダーカウル303は、接触子301の上下移動と連動して移動する。ヒンジ部305は、接触子301が上方向+Zに移動したとき、アンダーカウル303を上方向+Zに引き上げる。反対に、ヒンジ部305は、接触子301が下方向-Zに移動したとき、アンダーカウル303を下方向-Zに押し下げる。
【0070】
固定機構400は、ワイヤ401と、レバー部材403とを備える。ワイヤ401は、アウターケーシングと、アウターケーシング内のインナーワイヤとを含む。インナーワイヤは、アウターケーシングにガイドされながら、アウターケーシング内を摺動可能に構成される。
【0071】
ワイヤ(インナーワイヤ)401の一端は接触子301に接続され、ワイヤ(インナーワイヤ)401の他端はレバー部材403に接続される。
【0072】
レバー部材403は、回動軸を中心に回動可能に構成される。レバー部材403は、例えば、移動体1に搭乗する搭乗者により
図10中、矢印A方向または矢印B方向に操作される。レバー部材403が回動すると、ワイヤ401が巻き取られたり、繰り出されたりする。例えば、レバー部材403が
図10中、矢印A方向に回動すると、ワイヤ401が繰り出され、ワイヤ401が弛む。逆に、レバー部材403が
図10中、矢印B方向に回動すると、ワイヤ401が巻き取られ、ワイヤ401が張る。
【0073】
ワイヤ401が巻き取られると、接触子301は、ワイヤ401により引き上げられ、上方向+Zに移動する。接触子301が上方向+Zに移動すると、ヒンジ部305を介してアンダーカウル303が上方向+Zに移動する。つまり、レバー部材403を
図10中、矢印B方向に回動させると、アンダーカウル303は、閉状態から開状態となる。このとき、固定機構400は、レバー部材403の回動を規制する規制部材(不図示)が別途設けられ、アンダーカウル303を開状態または閉状態にロックする。不図示の規制部材は、移動体1に搭乗する搭乗者により操作され、ロックまたはアンロックに切り替えられる。不図示の規制部材がロックに切り替えられることで、固定機構400は、接触子301を引き上げられた状態に維持し、アンダーカウル303を開状態に維持することができる。
【0074】
反対に、ワイヤ401が繰り出されると、接触子301は、下方向-Zの移動が許容され、接触子301の自重により下方向-Zに移動(落下)する。接触子301が下方向-Zに移動すると、ヒンジ部305を介してアンダーカウル303が下方向-Zに移動する。つまり、レバー部材403を
図10中、矢印A方向に回動させると、アンダーカウル303は、開状態から閉状態となる。なお、固定機構400は、接触子301の上方向+Zの移動を規制する移動規制部材(不図示)が別途設けられる。不図示の移動規制部材は、移動体1に搭乗する搭乗者により操作され、ロックまたはアンロックに切り替えられる。不図示の移動規制部材がロックに切り替えられることで、固定機構400は、接触子301が下方向-Zに移動した状態を維持し、アンダーカウル303を閉状態に維持することができる。
【0075】
図11は、本実施形態における車輪被覆機構300の動作を示す概略図である。
図11では、後輪3bの車輪被覆機構300の動作を表しているが、前輪3aの車輪被覆機構300の動作も
図11と同様であるため、説明を省略する。また、
図11では、地上走行モードと垂直離着陸モードとの間の移行状態を示しているが、
図11は、地上走行モードと水平飛行モードとの間の移行状態であってもよい。
図11(a)は、地上走行モードにおいて、アンダーカウル303が開状態に維持される状態を示す。
図11(b)は、垂直離着陸モードの離陸前において、アンダーカウル303が開状態から閉状態に移行している状態を示す。
図11(c)は、垂直離着陸モードの離陸後において、アンダーカウル303が閉状態に維持される状態を示す。
図11(d)は、垂直離着陸モードの着陸前において、ロック機構200Bのロックが解除された状態を示す。
図11(e)は、垂直離着陸モードの着陸前において、アンダーカウル303が閉状態から開状態に移行し、開状態に維持された状態を示す。
図11(f)は、垂直離着陸モードの着陸時において、後輪3bの代わりに接触子301が地面と接触し、移動体1が起立した状態を示す。
【0076】
図11(a)に示すように、リアサスペンション39は、地上走行モードにおいて、移動体1の自重により収縮する。このとき、ロック機構200Bは、リアサスペンション39のロックを解除している。つまり、リアサスペンション39は、後輪3bから胴体7に伝達される衝撃を低減する。また、固定機構400は、接触子301を引き上げた状態で接触子301を保持し、接触子301を地面から離隔させるとともに、アンダーカウル303を開状態に維持する。
図11(a)では、接触子301は、後輪3bの下端よりも上方に退避する退避位置に位置する。このとき、固定機構400は、接触子301を退避位置で固定する。これにより、移動体1は、接触子301およびアンダーカウル303と地面との接触を避けつつ、地上走行することができる。
【0077】
図11(b)に示すように、リアサスペンション39は、垂直離着陸モードの離陸前において、移動体1の自重により収縮する。このとき、ロック機構200Bは、リアサスペンション39をロックする。つまり、リアサスペンション39は、移動体1の自重により収縮された状態で、ロック機構200Bによりロックされる。また、固定機構400は、接触子301の固定を解除することにより、接触子301の上下方向Zの移動が許容され、接触子301は自由に上下動可能となる。これにより、接触子301は、自重により下方向-Zに移動し、地面と接触する。アンダーカウル303は、接触子301の下方への移動に伴い開状態から閉状態へと移行する。アンダーカウル303は、接触子301が地面と接触した状態では、閉状態とならずに後輪3bおよび地面から離隔した状態を維持する。
【0078】
図11(c)に示すように、接触子301は、垂直離着陸モードの離陸後において、地面から離隔する。すると、接触子301は、後輪3bの下端よりも下方に突出し、最大限下方に移動した突出位置まで突出した後に、接触子301の先端が地面から離隔する。このように、接触子301は、車輪3の下端よりも上方に退避する退避位置と、車輪3の下端よりも下方に突出する突出位置との間で、上下動可能に設けられる。アンダーカウル303は、接触子301の上下動に連動して開閉可能に設けられる。接触子301が突出位置に位置するとき、アンダーカウル303は、閉状態となり、後輪3bの下部を被覆する。このとき、ロック機構200Bは、リアサスペンション39を、移動体1の自重により収縮された状態で維持する。アンダーカウル303により後輪3bの下部が被覆されるため、移動体1の空気抵抗を低減することができる。
【0079】
図11(d)に示すように、搭乗者は、垂直離着陸モードの着陸前において、リアサスペンション39のロックを解除する。これにより、リアサスペンション39は、移動体1の自重により収縮された状態から解放され、下方向-Zに伸長する。また、リアサスペンション39の伸長に伴い、後輪3bは、底面7aから下方向-Zに突出する。このとき、後輪3bの突出に伴って車輪被覆機構300も下方向-Zに突出し、アンダーカウル303は、後輪3bの下部を被覆した状態に維持される。
図11(d)では、接触子301は、地面から離隔した状態である。
【0080】
図11(e)に示すように、搭乗者は、垂直離着陸モードの着陸前において、レバー部材403を操作し、接触子301およびアンダーカウル303を上方向+Zに引き上げ、後輪3bを露出させる。これにより、後輪3bは、地面と接触可能な状態となり、また、リアサスペンション39は、ロック機構200Bのロックが解除されているため、着陸時において後輪3bから胴体7に伝達される衝撃を低減できる。
【0081】
なお、
図11(f)に示すように、固定機構400は、垂直離着陸モードの着陸時において、接触子301の上下動の移動を規制してもよい。このとき、接触子301は、後輪3b(車輪3)の代わりに地面と接触する。車輪3の代わりに接触子301が地面と接触するとこで、移動体1の着陸が完了する。接触子301は、地面と接触すると、移動体1を支持するスタンドとして機能する。接触子301は、移動体1の転倒を抑制し、移動体1の起立状態を維持する。
【0082】
以上のように、本実施形態の移動体1は、ロック機構200A、200Bを備える。ロック機構200Aは、少なくとも移動体1の自重によりフロントサスペンション35が収縮された状態で、フロントサスペンション35の伸長をロックする。ロック機構200Bは、少なくとも移動体1の自重によりリアサスペンション39が収縮された状態で、リアサスペンション39の伸長をロックする。これにより、移動体1の空中飛行時に、ロック機構200A、200Bにより、胴体7の底面7aからの前輪3aおよび後輪3bの突出量Lを制限し、胴体7内に車輪3の大部分を収容できる。その結果、移動体1の空気抵抗を低減し、移動体1の燃費を向上させることができる。また、車輪3を胴体7内に収容するための複雑な機構やアクチュエータを必要とせず、移動体1の車輪3の収容機構を簡素化および軽量化することができ、移動体1全体を軽量化できる。
【0083】
本実施形態のロック機構200A、200Bは、移動体1の離陸前に、自重により収縮した状態のサスペンション35、39の伸長をロックし、移動体1の着陸前に、サスペンション35、39のロックを解除して、サスペンション35、39を伸縮自在にする。これにより、ロック機構200A、200Bは、移動体1の離陸後に、胴体7の底面7aからの前輪3aおよび後輪3bの突出量を低減でき、移動体1の空気抵抗を低減することができる。また、サスペンション35、39は、移動体1の着陸時に、車輪3(前輪3aおよび後輪3b)から胴体7に伝達される衝撃を低減することができる。
【0084】
本実施形態の移動体1は、接触子301と、アンダーカウル303とを有する車輪被覆機構300を備える。接触子301は、車輪3の下端よりも上方に退避する退避位置と、車輪3の下端よりも下方に突出する突出位置との間で、上下動可能に設けられる。また、アンダーカウル303は、接触子301の上下動に連動して開閉可能に設けられ、閉状態で車輪3の下部を被覆し、開状態で車輪3の下部を露出させる。これにより、移動体1は、地面を検知可能なセンサを搭載することなく、接触子301が地面と接触することにより地面を検知することができる。また、アンダーカウル303は、接触子301の移動と連動するように構成される。したがって、移動体1は、接触子301およびアンダーカウル303を駆動させる駆動機構を共用することができ、車輪被覆機構300の構成を簡素化することができる。また、アンダーカウル303が地面を検知可能な接触子301と連動して駆動されることで、地面とアンダーカウル303との干渉を避けることができ、アンダーカウル303の耐久性が低下することを抑制できる。
【0085】
本実施形態の移動体1は、固定機構400を備える。固定機構400は、接触子301を退避位置または突出位置に固定する。固定機構400は、移動体1の離陸前に、退避位置にある接触子301の固定を解除することにより、接触子301の自重により接触子301が下方に移動し、当該接触子301の下方移動に連動してアンダーカウル303が閉状態となって、車輪3の下部を被覆する。これにより、アンダーカウル303を開閉するアクチュエータを用いることなく、アンダーカウル303を開状態から閉状態に移行させることができ、移動体1の空気抵抗を低減することができる。
【0086】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0087】
例えば、上記実施形態では、移動体1は、2つの車輪3を備えた自動二輪車をベースとした移動体であったが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の空陸両用移動体は、3つ以上の車輪を備えた車両、例えば、4つの車輪を備えた自動四輪車をベースとした移動体であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、空陸両用移動体に利用できる。
【符号の説明】
【0089】
1 空陸両用移動体
3 車輪
5 主翼(翼)
7 胴体
13 第1回転翼(翼)
35 フロントサスペンション(サスペンション)
39 リアサスペンション(サスペンション)
200A ロック機構
200B ロック機構
301 接触子(可動部材)
303 アンダーカウル(被覆部材)
400 固定機構