(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-01
(45)【発行日】2023-08-09
(54)【発明の名称】組立装置
(51)【国際特許分類】
B23P 19/04 20060101AFI20230802BHJP
B23P 19/00 20060101ALI20230802BHJP
G05B 19/4097 20060101ALI20230802BHJP
B64C 3/00 20060101ALI20230802BHJP
B64F 5/10 20170101ALI20230802BHJP
【FI】
B23P19/04 Z
B23P19/00 304E
G05B19/4097 C
B64C3/00
B64F5/10
(21)【出願番号】P 2019180416
(22)【出願日】2019-09-30
【審査請求日】2022-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 洋一
(72)【発明者】
【氏名】菊池 麿介
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-088244(JP,A)
【文献】特開2001-300823(JP,A)
【文献】特開平01-295726(JP,A)
【文献】特開2008-007114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23P 19/00 - 21/00
G05B 19/4097
B64C 3/00
B64F 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1組立部品、および、第2組立部品を保持する保持部材と、
前記第1組立部品に設けられ、前記第1組立部品と前記第2組立部品の隙間を調整するための第1余肉部、および、前記第2組立部品に設けられ、前記隙間を調整するための第2余肉部を加工する加工装置と、
を備え
、
前記加工装置は、前記第1組立部品と前記第2組立部品とが対向する方向と直交する方向における位置合わせのための第1位置合わせ部を前記第1余肉部に形成し、前記第1位置合わせ部に対応する第2位置合わせ部を前記第2余肉部に形成する、
組立装置。
【請求項2】
前記加工装置は、前記保持部材に設けられた基準位置を基準として加工する、
請求項1に記載の組立装置。
【請求項3】
前記加工装置は、前記第1組立部品の設計形状と、前記第2組立部品の設計形状とに基づいて、前記第1余肉部および前記第2余肉部の双方を加工する、
請求項1または2に記載の組立装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組立装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば航空機の胴体や翼を組み立てる際、複数の組立部品の間に形成される隙間にシムを挿入し、隙間を充填する作業が行われる。特許文献1では、複数の組立部品の間に形成される隙間の厚さを測定し、測定した隙間厚さ分布に基づいて、加工機によりワークを3次元加工し、シムを製作することについて開示がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では、複数の組立部品の間に形成される隙間の測定工程、シムの製作工程、および、シムの挿入行程が必要であり、組立部品の組立作業が煩雑であった。
【0005】
本発明は、組立部品の組立作業を容易にすることが可能な組立装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の組立装置は、第1組立部品、および、第2組立部品を保持する保持部材と、第1組立部品に設けられ、第1組立部品と第2組立部品の隙間を調整するための第1余肉部、および、第2組立部品に設けられ、隙間を調整するための第2余肉部を加工する加工装置と、を備え、加工装置は、第1組立部品と第2組立部品とが対向する方向と直交する方向における位置合わせのための第1位置合わせ部を第1余肉部に形成し、第1位置合わせ部に対応する第2位置合わせ部を第2余肉部に形成する。
【0007】
加工装置は、保持部材に設けられた基準位置を基準として加工してもよい。
【0008】
加工装置は、第1組立部品の設計形状と、第2組立部品の設計形状とに基づいて、第1余肉部および前記第2余肉部の双方を加工してもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、組立部品の組立作業を容易にすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】
図2は、
図1に示す主翼のII-II線概略断面図である。
【
図3】
図3は、本実施形態の組立装置の構成を示す概略構成図である。
【
図4】
図4は、変形例の組立装置の構成を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0013】
図1は、航空機1の概略斜視図である。
図1に示すように、航空機1は、胴体3と、主翼5と、水平尾翼7と、垂直尾翼9とを備える。以下では、主翼5と、水平尾翼7と、垂直尾翼9を単に翼ともいう。
【0014】
胴体3は、航空機1の機首側と機尾側とを結ぶロール軸方向に延在して設けられる。主翼5は、ロール軸方向における胴体3の中央部に設けられる。主翼5は、ロール軸方向と直交するピッチ軸方向において、胴体3の左右両側に一対設けられる。主翼5は、ピッチ軸方向において、胴体3から外側に向かって延在する。主翼5は、航空機1に鉛直上方の揚力を発生させる機能を備える。
【0015】
水平尾翼7は、主翼5よりも胴体3の後方向側(機尾側)に設けられる。水平尾翼7は、ピッチ軸方向において、胴体3の左右両側に一対設けられる。水平尾翼7は、ピッチ軸方向において、胴体3から外側に向かって延在する。水平尾翼7は、航空機1のピッチ軸回りの安定性を保つ機能を備える。
【0016】
垂直尾翼9は、主翼5よりも胴体3の後方向側(機尾側)に設けられる。垂直尾翼9は、ロール軸方向およびピッチ軸方向と直交するヨー軸方向において、胴体3から外側に向かって延在する。垂直尾翼9は、航空機1のヨー軸回りの安定性を保つ機能を備える。
【0017】
図2は、
図1に示す主翼5のII-II線概略断面図である。
図2に示すように、主翼5は、外板(パネル)11と、ストリンガ(第1組立部品)13と、リブ(第2組立部品)15とを含む。
【0018】
外板11は、板部材で構成され、流線形の翼型に形成される。外板11は、外面側が外部空間S1に露出し、内面側に収容空間S2を形成する。ストリンガ13は、I字状に形成され、収容空間S2に収容される。ストリンガ13は、一端が外板11に接続され、他端がリブ15に接続される。本実施形態では、ストリンガ13は、外板11と一体的に構成される。ただし、ストリンガ13は、外板11と別体的に構成され、外板11に固定されてもよい。
【0019】
リブ15は、中空矩形状に形成され、収容空間S2に収容される。リブ15は、外板11から離隔した状態でストリンガ13に支持される。リブ15の内部には、燃料収容空間S3が形成される。本実施形態では、リブ15は、燃料タンクの一部として機能する。また、リブ15は、主翼5を補強する補強部材としても機能する。
【0020】
主翼5は、外板11と一体的に形成されたストリンガ13上にリブ15を載置し、ストリンガ13とリブ15とを締結部材(例えば、ボルト)により締結することで、組み立てられる。本実施形態では、主翼5は、組立装置100により組み立てられる。
【0021】
図3は、本実施形態の組立装置100の構成を示す概略構成図である。なお、
図3では、図面を見やすくするため、リブ15を平板形状に示している。
図3に示すように、組立装置100は、保持部材101と、加工装置103とを備える。保持部材101は、第1保持部材101aと、第2保持部材101bとを含む。
【0022】
第1保持部材101aは、例えば治具であり、外板11およびストリンガ13の鉛直下側に配置される。第1保持部材101aは、外板11およびストリンガ13の鉛直下側で、外板11およびストリンガ13を組立姿勢で保持する。第1保持部材101aには、加工装置103による加工位置の基準となる基準位置(基準マーク)X1が設けられている。
【0023】
第2保持部材101bは、例えば治具であり、リブ15の鉛直上側に配置される。第2保持部材101bは、リブ15の鉛直上側で、リブ15を組立姿勢で保持する。第2保持部材101bには、加工装置103による加工位置の基準となる基準位置(基準マーク)X2が設けられている。
【0024】
外板11およびストリンガ13は、組立姿勢において、リブ15と鉛直方向に対向して配置される。本実施形態では、第1保持部材101aは、第2保持部材101bと別体で構成され、第2保持部材101bと鉛直方向に対向して配置される。ただし、第1保持部材101aおよび第2保持部材101bは、一体的に構成されてもよい。
【0025】
図3に示すように、ストリンガ13には、第1余肉部13aが設けられる。
図3中、ストリンガ13の設計形状(設計値)DVaを破線で示す。従来、ストリンガは、この設計形状DVaに形成されていた。本実施形態では、ストリンガ13は、この設計形状DVaよりも大きく形成される。ストリンガ13のうち、設計形状DVaより外側にある部分が第1余肉部13aである。つまり、本実施形態のストリンガ13は、設計形状DVaより大きい部分を有し、その大きい部分が第1余肉部13aに相当する。第1余肉部13aは、ストリンガ13の設計形状DVaに対し、リブ15と近接(対向)する側に設けられる。
【0026】
本実施形態では、第1余肉部13aは、ストリンガ13を設計形状DVaよりも大きく製作することで形成され、ストリンガ13と一体的に形成される。ただし、第1余肉部13aは、ストリンガ13と別体的に形成されてもよい。例えば、ストリンガ13を設計形状DVaに形成し、ストリンガ13のリブ15と対向する面に、シムやスペーサなどの調整部材を取り付け、調整部材を第1余肉部13aとしてもよい。
【0027】
本実施形態では、第1余肉部13aは、金属により構成される。例えば、第1余肉部13aは、ストリンガ13と同じ金属により構成される。ただし、第1余肉部13aは、ストリンガ13と異なる金属で構成されてもよいし、金属とは異なる材料で構成されてもよい。例えば、第1余肉部13aは、複合材により構成されてもよい。
【0028】
リブ15には、第2余肉部15bが設けられる。
図3中、リブ15の設計形状(設計値)DVbを破線で示す。従来、リブは、この設計形状DVbに形成されていた。本実施形態では、リブ15は、この設計形状DVbよりも大きく形成される。リブ15のうち、設計形状DVbより外側にある部分が第2余肉部15bである。つまり、本実施形態のリブ15は、設計形状DVbより大きい部分を有し、その大きい部分が第2余肉部15bに相当する。第2余肉部15bは、リブ15の設計形状DVbに対し、ストリンガ13と近接(対向)する側に設けられる。
【0029】
本実施形態では、第2余肉部15bは、リブ15を設計形状DVbよりも大きく製作することで形成され、リブ15と一体的に形成される。ただし、第2余肉部15bは、リブ15と別体的に形成されてもよい。例えば、リブ15を設計形状DVbに形成し、リブ15のストリンガ13と対向する面に、シムやスペーサなどの調整部材を取り付け、調整部材を第2余肉部15bとしてもよい。
【0030】
本実施形態では、第2余肉部15bは、金属により構成される。例えば、第2余肉部15bは、リブ15と同じ金属により構成される。ただし、第2余肉部15bは、リブ15と異なる金属で構成されてもよいし、金属とは異なる材料で構成されてもよい。例えば、第2余肉部15bは、複合材により構成されてもよい。
【0031】
このように、本実施形態のストリンガ13およびリブ15には、ストリンガ13とリブ15の隙間を調整するための第1余肉部13aおよび第2余肉部15bが設けられる。第1余肉部13aおよび第2余肉部15bは、鉛直方向に互いに対向して設けられる。
【0032】
加工装置103は、例えば、NC加工機であり、ストリンガ13の第1余肉部13aおよびリブ15の第2余肉部15bをNC加工する。本実施形態では、加工装置103は、切削用工具を備え、第1余肉部13aおよび第2余肉部15bを切削加工する。ただし、加工装置103は、研磨用工具を備え、第1余肉部13aおよび第2余肉部15bを研磨加工してもよい。
【0033】
ところで、航空機1の胴体3や翼(主翼5、水平尾翼7、垂直尾翼9)を組み立てる際、複数の組立部品の間に隙間が発生する場合がある。従来(例えば、特許文献1)では、複数の組立部品の間に形成される隙間の厚さを測定し、測定した隙間厚さ分布に基づいて、加工機によりワークを3次元加工してシムを製作し、隙間にシムを挿入することで、隙間を充填する作業が行われていた。
【0034】
このように、従来では、複数の組立部品の隙間を充填する作業に、複数の組立部品の間に形成される隙間の測定工程、シムの製作工程、シムの挿入行程など多くの作業工程が必要であり、組立部品の組立作業が煩雑であった。
【0035】
以下、本実施形態の組立装置100による主翼5の組立作業について説明する。
図3に示すように、まず、第1保持部材101aは、外板11およびストリンガ13を、主翼5の組立姿勢で保持する。また、第2保持部材101bは、リブ15を、主翼5の組立姿勢で保持する。
【0036】
ここで、上述したように、ストリンガ13には、リブ15との対向間隔(隙間)を調整するための第1余肉部13aが設けられている。また、リブ15には、ストリンガ13との対向間隔(隙間)を調整するための第2余肉部15bが設けられている。組立姿勢において、第1余肉部13aと第2余肉部15bは、鉛直方向に離隔した状態で互いに対向して配置される。
【0037】
つぎに、加工装置103は、第1余肉部13aおよび第2余肉部15bをNC加工する。
図3中、第1保持部材101aの基準位置X1を基準とした外板11およびストリンガ13の組立設計形状(設計値)DSaを一点鎖線で示す。組立設計形状DSaは、外板11およびストリンガ13を組立姿勢で第1保持部材101aに保持させた場合における設計上の理想的な形状である。上述したストリンガ13の設計形状DVaは、この組立設計形状DSaと一致することが好ましいが、外板11およびストリンガ13を製造した際の製造誤差や組立姿勢での自重による歪みなどにより、組立設計形状DSaと一致しない場合がある。
図3では、設計形状DVaが製造誤差や歪みなどの影響により、組立設計形状DSaからずれている場合を示す。
【0038】
加工装置103は、第1保持部材101aに設けられた基準位置X1を基準として第1余肉部13aを組立設計形状DSaに沿って加工する。加工装置103は、外板11およびストリンガ13の組立姿勢で第1余肉部13aをNC加工することで、組立設計形状DSaに対する誤差を小さくすることができる。
図3中、3つの第1余肉部13aのうち一番左の第1余肉部13aが加工装置103によりNC加工された後の第1余肉部13aである。第1余肉部13aのうち、第2余肉部15bと対向する面は、加工装置103により組立設計形状DSaに切削加工されている。また、
図3中、3つの第1余肉部13aのうち真ん中および一番右の第1余肉部13aが加工装置103によりNC加工される前の第1余肉部13aである。
【0039】
ストリンガ13には、第1余肉部13aが設けられているため、組立設計形状DSaが設計形状DVaよりもリブ15側に位置する場合でも、ストリンガ13(第1余肉部13a)をNC加工することができる。ここで、第1余肉部13aの鉛直方向の高さは、外板11およびストリンガ13の製造誤差や歪みなどの影響によるずれ量を加味して決定される。例えば、第1余肉部13aの鉛直方向の高さは、設計形状DVaに対し、外板11およびストリンガ13の製造誤差や歪みなどの影響によるずれ量以上となる値を加算した高さに決定される。
【0040】
また、
図3中、第1保持部材101aの基準位置X1を基準としたリブ15の組立設計形状(設計値)DSbを一点鎖線で示す。ここでは、基準位置X1を基準としたリブ15の組立設計形状DSbについて説明するが、リブ15の組立設計形状DSbは、基準位置X2を基準とした形状であってもよい。組立設計形状DSbは、リブ15を組立姿勢で第2保持部材101bに保持させた場合における設計上の理想的な形状である。上述したリブ15の設計形状DVbは、この組立設計形状DSbと一致することが好ましいが、リブ15を製造した際の製造誤差や組立姿勢での自重による歪みなどにより、組立設計形状DSbと一致しない場合がある。
図3では、設計形状DVbが製造誤差や歪みなどの影響により、組立設計形状DSbからずれている場合を示す。
【0041】
加工装置103は、第1保持部材101aに設けられた基準位置X1を基準として第2余肉部15bを組立設計形状DSbに沿ってNC加工する。加工装置103は、リブ15の組立姿勢で第2余肉部15bをNC加工することで、組立設計形状DSbに対する誤差を小さくすることができる。
図3中、3つの第2余肉部15bのうち一番左の第2余肉部15bが加工装置103によりNC加工された後の第2余肉部15bである。第2余肉部15bのうち、第1余肉部13aと対向する面は、加工装置103により組立設計形状DSbに切削加工されている。また、
図3中、3つの第2余肉部15bのうち真ん中および一番右の第2余肉部15bが加工装置103によりNC加工される前の第2余肉部15bである。
【0042】
リブ15には、第2余肉部15bが設けられているため、組立設計形状DSbが設計形状DVbよりもストリンガ13側に位置する場合でも、リブ15(第2余肉部15b)をNC加工することができる。ここで、第2余肉部15bの鉛直方向の高さは、リブ15の製造誤差や歪みなどの影響によるずれ量を加味して決定される。例えば、第2余肉部15bの鉛直方向の高さは、設計形状DVbに対し、リブ15の製造誤差や歪みなどの影響によるずれ量以上となる値を加算した高さに決定される。
【0043】
このように、本実施形態では、加工装置103は、第1保持部材101aに設けられた基準位置X1を基準として、第1余肉部13aおよび第2余肉部15bの双方をNC加工する。ただし、加工装置103は、第2保持部材101bに設けられた基準位置X2を基準として第1余肉部13aおよび第2余肉部15bの双方をNC加工してもよい。また、加工装置103は、基準位置X1を基準として、第1余肉部13aをNC加工し、基準位置X2を基準として、第2余肉部15bをNC加工してもよい。
【0044】
加工装置103が組立設計形状DSa、DSbに基づいてすべての第1余肉部13aおよび第2余肉部15bをNC加工した後、第1保持部材101aおよび第2保持部材101bの少なくともいずれか一方は、他方に近接する方向に移動する。このとき、第1保持部材101aおよび第2保持部材101bの保持状態(すなわち、外板11、ストリンガ13、リブ15の組立姿勢)は、維持され続ける。ストリンガ13とリブ15が当接すると、第1保持部材101aおよび第2保持部材101bの移動が停止される。
【0045】
このとき、ストリンガ13の第1余肉部13aとリブ15の第2余肉部15bは、組立設計形状DSa、DSbにNC加工されている。そのため、組立部品(外板11、ストリンガ13、リブ15)の製造時に製造誤差が発生したり、組立姿勢での自重による歪みが発生したりしていても、複数の組立部品の組立時における隙間をNC加工精度まで小さくすることができる。したがって、複数の組立部品の隙間を測定する工程や、シムを製作する工程や、シムを挿入する工程などを不要にでき、複数の組立部品の隙間を充填する作業を簡略化できる。
【0046】
組立装置100は、ストリンガ13とリブ15が当接した状態で不図示の締結部材(例えば、ボルト)によりこれらを締結する。これにより、外板11、ストリンガ13、リブ15が一体化し、主翼5が組み立てられる。
【0047】
以上のように、本実施形態の組立装置100は、加工装置103を備え、加工装置103は、ストリンガ13に設けられた第1余肉部13a、および、リブ15に設けられた第2余肉部15bを加工する。これにより、加工装置103は、ストリンガ13(第1余肉部13a)およびリブ15(第2余肉部15b)を、組立姿勢における設計上の理想的な形状(組立設計形状DSa、DSb)に加工することができる。その結果、複数の組立部品の隙間を充填する作業を簡略化でき、組立部品の組立作業を容易にすることができる。
【0048】
また、加工装置103は、第1保持部材101aに設けられた基準位置X1または第2保持部材101bに設けられた基準位置X2を基準として第1余肉部13aおよび第2余肉部15bを加工する。治具である保持部材101に設けられた基準位置を基準として加工することで、ストリンガ13(第1余肉部13a)およびリブ15(第2余肉部15b)を組立姿勢における設計上の理想的な形状(組立設計形状DSa、DSb)に高精度に加工することができる。
【0049】
(変形例)
図4は、変形例の組立装置100Aの構成を示す概略構成図である。上記実施形態と実質的に等しい構成要素については、同一符号を付して説明を省略する。
図4では、加工装置103が組立設計形状DSa、DSbに基づいて第1余肉部113aおよび第2余肉部115bを雄雌型に加工した後の状態を示す。
図4に示すように、本変形例の組立装置100Aは、加工後の第1余肉部113aおよび第2余肉部115bの形状が、上記実施形態の第1余肉部13aおよび第2余肉部15bの形状と異なる。それ以外の部分については、上記実施形態の組立装置100と同じであるため、説明を省略する。
【0050】
本変形例の加工装置103は、組立設計形状DSa、DSbに対し少なくとも一部が異なる形状を有するように、第1余肉部113aおよび第2余肉部115bを加工する。具体的に、加工装置103は、組立設計形状DSaよりも小さく第1余肉部113aを加工している。また、加工装置103は、組立設計形状DSbよりも大きく第2余肉部115bを加工している。
【0051】
第1余肉部113aは、ストリンガ13の幅方向(
図4中、左右方向)において、高さが異なる。具体的に、第1余肉部113aは、ストリンガ13の幅方向において中央に近づくほど、高さが漸減する。換言すれば、第1余肉部113aは、ストリンガ13の幅方向において中央から離れるほど、高さが漸増する。
図4に示すように、第1余肉部113aは、組立設計形状DSaに対し、中央部が窪んだ窪み部(第1位置合わせ部)113bを備える。
【0052】
第2余肉部115bは、リブ15の幅方向(
図4中、左右方向)において、高さが異なる。具体的に、第2余肉部115bは、リブ15の幅方向において中央に近づくほど、高さが漸増する。換言すれば、第2余肉部115bは、リブ15の幅方向において中央から離れるほど、高さが漸減する。
図4に示すように、第2余肉部115bは、組立設計形状DSbに対し、中央部が突出した突出部(第2位置合わせ部)115cを備える。
【0053】
第1余肉部113aと第2余肉部115bとが互いに近接すると、突出部115cは、窪み部113b内に導入される。窪み部113bと突出部115cとが互いに対向する対向面は、大凡平行である。そのため、窪み部113bと突出部115cとが当接したとき、窪み部113bと突出部115cとの互いの対向面が当接する。窪み部113bと突出部115cとが当接したとき、ストリンガ13およびリブ15の鉛直方向の位置が決定される。このとき、組立設計形状DSaのうち鉛直上側の上面は、組立設計形状DSbのうち鉛直下側の下面と大凡一致する。また、窪み部113bと突出部115cとが当接したとき、窪み部113bおよび突出部115cは、ストリンガ13およびリブ15の幅方向(
図4中、左右方向)にも当接している。これにより、ストリンガ13およびリブ15の幅方向(
図4中、左右方向)の位置が決定される。
【0054】
以上のように、本変形例の組立装置100Aは、加工装置103を備え、加工装置103は、第1余肉部113aに窪み部(第1位置合わせ部)113bを形成し、第2余肉部115bに突出部(第2位置合わせ部)115cを形成する。突出部115cは、窪み部113bと対応するように形成される。窪み部113bおよび突出部115cは、ストリンガ13とリブ15とが対向する方向と直交する方向(
図4中、左右方向)における位置合わせのために形成される。これにより、組立装置100Aは、ストリンガ13およびリブ15の鉛直方向の位置決めに加え、幅方向の位置決めを容易に行うことができる。また、上記実施形態と同様に、複数の組立部品の隙間を充填する作業を簡略化でき、組立部品の組立作業を容易にすることができる。
【0055】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0056】
上記実施形態および変形例では、組立装置100、100Aが外板11、ストリンガ13およびリブ15を用いて主翼5を組み立てる例について説明した。しかし、これに限定されず、組立装置100、100Aは、外板11、ストリンガ13およびリブ15を用いて他の翼を組み立ててもよい。例えば、組立装置100、100Aは、外板11、ストリンガ13およびリブ15を用いて水平尾翼7、垂直尾翼9、あるいは中央翼を組み立ててもよい。
【0057】
上記実施形態および変形例では、第1余肉部13a、113aおよび第2余肉部15b、115bが金属により構成される例について説明した。しかし、これに限定されず、第1余肉部13a、113aおよび第2余肉部15b、115bは、複合材により構成されてもよい。ここで、第1余肉部13a、113aおよび第2余肉部15b、115bは、金属により構成される場合、加工装置103によりNC加工(切削加工)されると酸化被膜が除去されるため、酸化被膜を付与するための後処理を行う必要が生じる。これに対し、第1余肉部13a、113aおよび第2余肉部15b、115bは、複合材により構成される場合、加工装置103によりNC加工した後で酸化被膜を付与するための後処理を不要にできるというメリットが生じる。
【0058】
上記実施形態および変形例では、加工装置103が保持部材101に設けられた基準位置X1、X2を基準として第1余肉部13a、113aおよび第2余肉部15b、115bを加工する例について説明した。しかし、これに限定されず、加工装置103は、基準位置X1、X2とは別の基準位置を基準として第1余肉部13a、113aおよび第2余肉部15b、115bを加工してもよい。例えば、加工装置103は、地面に設けられた基準位置を基準として第1余肉部13a、113aおよび第2余肉部15b、115bを加工してもよい。
【0059】
上記変形例では、加工装置103が第1余肉部113aに窪み部113bを形成し、第2余肉部115bに突出部115cを形成する例について説明した。しかし、これに限定されず、加工装置103は、第1余肉部113aに突出部115cを形成し、第2余肉部115bに窪み部113bを形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、組立装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0061】
13 ストリンガ(第1組立部品)
13a 第1余肉部
15 リブ(第2組立部品)
15b 第2余肉部
100 組立装置
101 保持部材
101a 第1保持部材
101b 第2保持部材
103 加工装置
100A 組立装置
113a 第1余肉部
113b 窪み部(第1位置合わせ部)
115b 第2余肉部
115c 突出部(第2位置合わせ部)
DSa、DSb 組立設計形状(設計形状)
X1 基準位置
X2 基準位置