(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-01
(45)【発行日】2023-08-09
(54)【発明の名称】充電システムおよび車両
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20230802BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20230802BHJP
H02J 3/00 20060101ALI20230802BHJP
B60L 58/27 20190101ALI20230802BHJP
B60L 53/63 20190101ALI20230802BHJP
H01M 10/615 20140101ALI20230802BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20230802BHJP
H01M 10/635 20140101ALI20230802BHJP
H01M 10/6571 20140101ALI20230802BHJP
【FI】
H02J7/00 B
H02J7/00 P
H02J3/32
H02J3/00 130
B60L58/27
B60L53/63
H01M10/615
H01M10/625
H01M10/635
H01M10/6571
(21)【出願番号】P 2019224146
(22)【出願日】2019-12-12
【審査請求日】2022-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大伴 洋祐
【審査官】赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-191781(JP,A)
【文献】特開2016-086550(JP,A)
【文献】特開2016-184988(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0012447(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-7/36
H02J 3/00-5/00
H01M 10/60-10/667
B60L 1/00-3/12
B60L 7/00-13/00
B60L 15/00-58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車外の電源から供給される電力で充電可能な車載のバッテリの温度が所定温度以上に維持されるように前記バッテリの温度を加熱器で調節し、前記電源から車両への供給が許可される電力である供給許可電力から前記加熱器で消費される電力である温調電力を除いた残りの充電電力で前記バッテリを充電させる充電制御部と、
将来の前記供給許可電力の予測値と、将来の外気温の予測値に基づいて導出される前記温調電力の予測値とに基づいて、充電が完了すると予測される時刻である予測完了時刻を導出する予測完了時刻導出部と、
を備える充電システム。
【請求項2】
前記予測完了時刻導出部は、前記供給許可電力の予測値から前記温調電力の予測値を減算した充電電力の予測値を将来に向かって積算した積算電力量が、前記バッテリにおける不足の電力量を示す要充電容量より多くなる時刻を、前記予測完了時刻とする請求項1に記載の充電システム。
【請求項3】
前記予測完了時刻導出部は、前記電源から前記車両への電力の供給が可能となった時に前記予測完了時刻を導出し、導出された前記予測完了時刻を通知する請求項1または2に記載の充電システム。
【請求項4】
外気温を検出する外気温センサと、
前記外気温センサで検出される現在の外気温の実測値と、前記予測完了時刻の導出時に用いられた外気温の予測値のうち現在の時刻に対応する外気温の予測値との差分の絶対値が所定値以上となった場合、再度、その時点の前記予測完了時刻を導出し、導出された前記予測完了時刻を通知する予測完了時刻補正部と、
を備える請求項1から3のいずれか1項に記載の充電システム。
【請求項5】
車外の電源から供給される電力で充電可能なバッテリの温度が所定温度以上に維持されるように前記バッテリの温度を加熱器で調節し、前記電源から供給が許可される電力である供給許可電力から前記加熱器で消費される電力である温調電力を除いた残りの充電電力で前記バッテリを充電させる充電制御部と、
将来の前記供給許可電力の予測値と、将来の外気温の予測値に基づいて導出される前記温調電力の予測値とに基づいて、充電が完了すると予測される時刻である予測完了時刻を導出する予測完了時刻導出部と、
を備える車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のバッテリを車外の電源から供給される電力で充電可能な充電システムおよび車両に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やプラグインハイブリッド電気自動車などの車両では、自車両に搭載されたバッテリを、外部の電源に接続された充電器を通じて充電することが可能である(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
充電時の外気温によっては、車両のバッテリの温度を調節するために電力が消費され、充電に利用できる電力が変動する。このため、充電が完了すると予測される予測完了時刻の導出精度が低かった。
【0005】
そこで、本発明は、充電の予測完了時刻の導出精度を向上させることが可能な充電システムおよび車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の充電システムは、車外の電源から供給される電力で充電可能な車載のバッテリの温度が所定温度以上に維持されるようにバッテリの温度を加熱器で調節し、電源から車両への供給が許可される電力である供給許可電力から加熱器で消費される電力である温調電力を除いた残りの充電電力でバッテリを充電させる充電制御部と、将来の供給許可電力の予測値と、将来の外気温の予測値に基づいて導出される温調電力の予測値とに基づいて、充電が完了すると予測される時刻である予測完了時刻を導出する予測完了時刻導出部と、を備える。
【0007】
また、予測完了時刻導出部は、供給許可電力の予測値から温調電力の予測値を減算した充電電力の予測値を将来に向かって積算した積算電力量が、バッテリにおける不足の電力量を示す要充電容量より多くなる時刻を、予測完了時刻としてもよい。
【0008】
また、予測完了時刻導出部は、電源から車両への電力の供給が可能となった時に予測完了時刻を導出し、導出された予測完了時刻を通知してもよい。
【0009】
また、外気温を検出する外気温センサと、外気温センサで検出される現在の外気温の実測値と、予測完了時刻の導出時に用いられた外気温の予測値のうち現在の時刻に対応する外気温の予測値との差分の絶対値が所定値以上となった場合、再度、その時点の予測完了時刻を導出し、導出された予測完了時刻を通知する予測完了時刻補正部と、を備えてもよい。
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の車両は、車外の電源から供給される電力で充電可能なバッテリの温度が所定温度以上に維持されるようにバッテリの温度を加熱器で調節し、電源から供給が許可される電力である供給許可電力から加熱器で消費される電力である温調電力を除いた残りの充電電力でバッテリを充電させる充電制御部と、将来の供給許可電力の予測値と、将来の外気温の予測値に基づいて導出される温調電力の予測値とに基づいて、充電が完了すると予測される時刻である予測完了時刻を導出する予測完了時刻導出部と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、充電の予測完了時刻の導出精度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態による充電システムの構成を示す概略図である。
【
図2】予測完了時刻の導出について説明する図である。
図2Aは、供給許可電力の予測値の時間推移および温調電力の予測値の時間推移を示す。
図2Bは、予測外気温の時間推移を示す。
図2Cは、バッテリ温度の予測値の時間推移を示す。
図2Dは、SOCの予測値の時間推移を示す。
【
図3】予測完了時刻導出部の動作の流れを説明するフローチャートである。
【
図4】プレ処理の流れを説明するフローチャートである。
【
図5】予測完了時刻導出処理の流れを説明するフローチャートである。
【
図6】予測完了時刻補正部の動作を説明する図である。
図6Aは、予測外気温の時間推移および外気温の実測値(実測外気温)の時間推移の一例を示す。
図6Bは、供給許可電力の予測値の時間推移および温調電力の予測値の時間推移の一例を示す。
【
図7】予測完了時刻補正部の動作の流れを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0014】
図1は、本実施形態による充電システム1の構成を示す概略図である。以下では、本実施形態に関係する構成や処理について詳細に説明し、本実施形態と無関係の構成や処理については説明を省略する。
【0015】
充電システム1は、車両10、電力管理部12、充電器14、充電ケーブル16、端末装置18および外気温予測部20を含む。車両10は、電気自動車やプラグインハイブリッド電気自動車などである。車両10には、駆動源である不図示のモータに電力を供給するバッテリ30が搭載される。また、車両10には、バッテリ30に接続される充電口32が設けられる。充電口32は、例えば、車両10のボディの側面に設けられる。
【0016】
電力管理部12は、発電設備などの電源40を含む。電力管理部12は、例えば、電力会社であり、電源40は、例えば、発電所などである。充電器14は、不図示の電力系統や分電盤などを通じて電源40に電気的に接続される。充電器14は、電源40から電力の供給を受けることができる。
【0017】
充電ケーブル16の一端には、車両10の充電口32に接続可能な充電コネクタ50が設けられる。充電ケーブル16の他端には、充電器14に接続可能な電源プラグ52が設けられる。充電器14は、充電ケーブル16を通じて電源40の電力を車両10の充電口32に供給可能である。車両10のバッテリ30は、充電口32に供給される車外の電源40の電力で充電可能である。また、充電ケーブル16には、コントロールボックス54が設けられる。コントロールボックス54は、充電時の漏電、過電流および過熱の有無を検知し、それらが検知された場合、充電を中断させる。
【0018】
充電器14は、例えば、一般的な家屋に設けられる家庭用の充電設備であってもよいし、充電ステーションに設けられる業務用の充電設備であってもよい。充電器14は、充電部60および充電コンセント62を含む。充電部60は、電力系統に接続される。充電コンセント62は、充電部60に接続される。充電コンセント62には、充電ケーブル16の電源プラグ52が接続される。充電部60は、充電コンセント62および充電ケーブル16を通じて車両10に電源40の電力を供給する。
【0019】
端末装置18は、例えば、車両10の所有者が携帯するスマートフォンなどである。端末装置18は、携帯電話網や無線LANなどの無線通信網を通じて車両10や充電器14と通信することができる。後に詳述するが、充電システム1では、バッテリ30の充電が完了すると予測される時刻である予測完了時刻が導出される。充電システム1では、導出された予測完了時刻が、端末装置18のディスプレイなどを通じて車両10の所有者に通知される。
【0020】
外気温予測部20は、将来の外気温の予測値の時間推移を導出する。外気温予測部20は、例えば、気象庁などである。以後、外気温の予測値を予測外気温と呼ぶ場合がある。外気温予測部20は、例えば、インターネットなどの通信網を通じて将来の予測外気温の時間推移を送信可能である。車両10は、外気温予測部20から送信される将来の予測外気温の時間推移を受信可能である。
【0021】
電力管理部12は、所定の地域における代表的な消費電力の時間推移を示す地域ベースプロファイルを導出する。地域は、例えば、関東地域などのように、電力管理部12の管轄地域とするが、この例に限らない。また、地域は、少なくとも共通の時差内のエリアに設定される。例えば、電力管理部12は、充電器14が設けられる建物が属する地域の地域ベースプロファイルを導出する。
【0022】
地域ベースプロファイルでは、24時間(1日)分の消費電力の時間推移が示される。また、地域ベースプロファイルは、例えば、1カ月などの所定期間の消費電力の実績値に基づいて導出される。つまり、地域ベースプロファイルは、対象地域(例えば、関東地域など)および対象期間(例えば、2月など)における1日分の消費電力の時間推移を大雑把に示すものである。
【0023】
電力管理部12は、例えば、1カ月ごとに各地域の地域ベースプロファイルを導出する。電力管理部12は、例えば、インターネットなどの通信網を通じて各地域の地域ベースプロファイルを送信可能である。車両10は、充電器14が設けられる建物が属する地域の地域ベースプロファイル(対象となる地域ベースプロファイル)を受信可能である。対象となる地域ベースプロファイルは、充電器14が設けられる建物における推定される消費電力の時間推移に相当する。なお、車両10は、充電器14を経由して地域ベースプロファイルを受信してもよい。
【0024】
充電器14が設けられる建物では、所定の契約アンペア数が決められている。契約アンペア数は、電力管理部12と建物(需要家)との間で予め契約された電流の上限値である。以後、契約アンペア数に受電電圧の公称値を乗算した電力を契約電力と呼ぶ場合がある。契約電力は、建物で消費可能な電力の上限値を示す。
【0025】
充電器14が設けられる建物では、充電器14以外の負荷(例えば、家電などの電気機器)にも電力が供給される。このため、充電器14から車両10に供給が許可される電力は、契約電力から、充電器14が設けられる建物における充電器14以外の負荷の消費電力を減算した電力に相当する。以後、充電器14から車両10に供給が許可される電力を、供給許可電力と呼ぶ場合がある。供給許可電力は、例えば、契約電力から、対象となる地域ベースプロファイルの消費電力を減算することで導出される。つまり、充電器14(充電部60)は、このような供給許可電力を車両10に供給することができる。
【0026】
車両10は、バッテリ30および充電口32の他、加熱器70、バッテリ温度センサ72、外気温センサ74、通信部76およびバッテリ制御装置78を含む。
【0027】
加熱器70は、充電口32に接続される。加熱器70は、充電器14から充電口32に供給される電力(車外の電源40の電力)でバッテリ30を加温する。以後、バッテリ30の温度を、バッテリ温度と呼ぶ場合がある。また、バッテリ温度を調節することを、温調と呼ぶ場合がある。また、加熱器70で消費される電力を、温調電力と呼ぶ場合がある。
【0028】
バッテリ温度センサ72は、バッテリ温度を検出する。外気温センサ74は、外気温を検出する。通信部76は、端末装置18、電力管理部12、外気温予測部20などと通信することができる。
【0029】
バッテリ制御装置78は、中央処理装置(CPU)、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含む半導体集積回路から構成される。バッテリ制御装置78は、プログラムを実行することで充電制御部80、SOC導出部82、予測完了時刻導出部84および予測完了時刻補正部86として機能する。つまり、バッテリ制御装置78は、ハードウェアとソフトウェアとが協働して充電制御部80、SOC導出部82、予測完了時刻導出部84および予測完了時刻補正部86等として機能するコンピュータである。
【0030】
充電制御部80は、バッテリ30および加熱器70の制御を行う。バッテリ30の充電が行われる場合、まず、充電ケーブル16の電源プラグ52が充電器14の充電コンセント62に接続され、充電コネクタ50が車両10の充電口32に接続される。そして、充電の開始を指示する操作が、車両10や充電器14に対して行われると、充電開始指示がバッテリ制御装置78に送信される。充電制御部80は、充電開始指示に応じてバッテリ30の充電を開始させる。
【0031】
バッテリ30は、バッテリ温度が所定温度以上とならないと適切に充電を行うことができない。このため、充電制御部80は、充電開始指示の受信後、バッテリ温度が所定温度以上に維持されるようにバッテリ温度を加熱器70で調節する。つまり、所定温度は、バッテリ30の充電が許可される充電許可温度に相当する。
【0032】
また、充電制御部80は、充電器14の供給許可電力から温調電力を除いた残りの電力でバッテリ30を充電させる。以後、バッテリ30の充電に使われる電力(バッテリ30に伝達する電力)を、充電電力と呼ぶ場合がある。
【0033】
充電制御部80は、充電開始指示の受信時にバッテリ温度が所定温度より低い場合、充電口32に供給される供給許可電力をバッテリ30へ伝達させず、加熱器70のみに伝達させて、バッテリ温度が所定温度に到達するまで温調を行う。以後、このような温調を、初期温調と呼ぶ場合がある。初期温調を行った場合、充電制御部80は、初期温調の終了後、充電口32に供給される供給許可電力のバッテリ30への伝達(バッテリ30の充電)を開始させる。
【0034】
充電開始指示の受信時にバッテリ温度が所定温度以上である場合、充電制御部80は、初期温調を行わず、充電口32に供給される供給許可電力のバッテリ30への伝達を遅滞なく開始させる。
【0035】
また、バッテリ30の充電を実際に行っている間(充電中)、外気温によっては、バッテリ30から放熱されてバッテリ温度が低下するおそれがある。そこで、充電制御部80は、充電中、供給許可電力の一部を加熱器70へ伝達させて、バッテリ温度が所定温度以上に維持されるように温調を行いつつ、バッテリ30の充電を行わせる。以後、初期温調と区別するために、実際の充電中の温調を、便宜的に中間温調と呼ぶ場合がある。
【0036】
SOC導出部82は、バッテリ30のSOC(State Of Charge)を導出する。なお、SOCは、バッテリ30の充電率を示し、満充電の状態を100%として百分率で表わされる。
【0037】
予測完了時刻導出部84は、バッテリ30の充電の予測完了時刻を導出する。予測完了時刻導出部84は、電源40から車両10への電力の供給が可能となった時に予測完了時刻を導出する。具体的には、予測完了時刻導出部84は、充電開始指示の受信に応じて予測完了時刻を導出する。
【0038】
予測完了時刻導出部84は、将来の供給許可電力の予測値と、将来の温調電力の予測値とに基づいて予測完了時刻を導出する。予測完了時刻導出部84については、後に詳述する。
【0039】
予測完了時刻補正部86は、充電の完了時刻が予測完了時刻から乖離する可能性が高くなった場合に、再度、その時点の予測完了時刻を導出し直して再通知する。予測完了時刻補正部86については、後に詳述する。
【0040】
図2は、予測完了時刻の導出について説明する図である。
図2Aは、供給許可電力の予測値の時間推移および温調電力の予測値の時間推移を示す。
図2Bは、予測外気温の時間推移を示す。
図2Cは、バッテリ温度の予測値の時間推移を示す。
図2Dは、SOCの予測値の時間推移を示す。
図2A~
図2Dにおいて、充電開始指示を受信した現在の時刻を時刻T10とする。
図2Aにおいて、実線A10は、供給許可電力の予測値の時間推移を示す。二点鎖線A12は、温調電力の予測値の時間推移を示す。一点鎖線A14は、契約電力を示す。矢印A16は、地域ベースプロファイルの消費電力の一例を示す。
【0041】
図2Aで示すように、予測完了時刻導出部84は、建物の充電器14以外の負荷における将来の消費電力の予測値の時間推移に相当する地域ベースプロファイルを電力管理部12から取得する。予測完了時刻導出部84は、充電器14が設けられた建物の契約電力(一点鎖線A14)から地域ベースプロファイルの各時刻の消費電力(矢印A16)を減算して将来の供給許可電力の予測値の時間推移(実線A10)を導出する。
【0042】
また、
図2Cで示すように、充電開始指示を受信した現在の時刻(時刻T10)において、バッテリ温度が所定温度(充電許可温度)より低かったとする。この場合、
図2Aで示すように、初期温調が行われることとなるため、予測完了時刻導出部84は、初期温調にかかる電力量(初期温調電力量)を導出する。具体的には、予測完了時刻導出部84は、
図2Cの矢印A20で示すように、所定温度から現在のバッテリ温度を減算してバッテリ温度差を導出する。予測完了時刻導出部84は、バッテリ温度差にバッテリ30のパラメータ(バッテリ30の比熱、バッテリ30の体積およびバッテリ30の比重)を乗算し、単位を整理して初期温調電力量を導出する。
【0043】
また、予測完了時刻導出部84は、初期温調が完了すると予測される時刻である初期温調予測完了時刻を導出する。例えば、予測完了時刻導出部84は、供給許可電力の予測値を現在の時刻T10から積算した電力量が、初期温調電力量より多くなる時刻(例えば、時刻T11)を初期温調予測完了時刻とする。したがって、初期温調予測完了時刻では、バッテリ温度が所定温度以上となると予測される。
【0044】
また、予測完了時刻導出部84は、
図2Bで示すような将来の予測外気温の時間推移を外気温予測部20から取得する。予測完了時刻導出部84は、
図2Bで示す将来の予測外気温の時間推移に基づいて、
図2Aで示すような初期温調後の将来の温調電力(すなわち、将来の中間温調電力)の時間推移(二点鎖線A12)を導出する。具体的には、予測完了時刻導出部84は、初期温調後の各時刻について、所定温度(充電許可温度)から予測外気温を減算して放熱温度を導出する。放熱温度は、外気温による放熱で低下するバッテリ温度を示す。予測完了時刻導出部84は、初期温調後の各時刻について、放熱温度にバッテリ30のパラメータ(バッテリ30の比熱、バッテリ30の体積およびバッテリ30の比重)および所定の断熱係数を乗算し、単位を整理して中間温調にかかる電力量を導出し、
図2Aの矢印A22で示すような中間温調電力に換算する。
【0045】
また、
図2Dで示すように、予測完了時刻導出部84は、現在のSOCをSOC導出部82から取得する。予測完了時刻導出部84は、
図2Dの矢印A24で示すように、目標SOCから現在のSOCを減算して要充電容量を導出する。目標SOCは、例えば、90%以上に設定される。要充電容量は、バッテリ30における不足の電力量を示す。
【0046】
また、
図2Aで示すように、予測完了時刻導出部84は、初期温調後の各時刻において、供給許可電力の予測値から温調電力の予測値を減算して、
図2Aの矢印A26で示すような充電電力の予測値を導出する。予測完了時刻導出部84は、このようにして導出される充電電力の予測値を、初期温調予測終了時刻(時刻T11)から将来に向かって積算する。以後、充電電力の予測値を将来に向かって積算した電力量を、積算電力量と呼ぶ場合がある。
【0047】
そして、
図2Aおよび
図2Dで示すように、予測完了時刻導出部84は、積算電力量が要充電容量より多くなる時刻(時刻T12)を予測完了時刻とする。
【0048】
なお、
図2A~
図2Dでは、現在の時刻T10においてバッテリ温度が所定温度より低い場合(初期温調を行う場合)を説明していた。しかし、現在の時刻T10においてバッテリ温度が所定温度以上である場合、予測完了時刻導出部84は、初期温調を省略してもよい。この場合、予測完了時刻導出部84は、
図2A~
図2Dにおける初期温調予測終了時刻(時刻T11)が現在の時刻である場合のようにして、予測完了時刻(時刻T12)を導出してもよい。
【0049】
図3は、予測完了時刻導出部84の動作の流れを説明するフローチャートである。予測完了時刻導出部84は、電源40から車両10への電力の供給が可能となったときに
図3の一連の処理を行う。具体的には、予測完了時刻導出部84は、充電開始指示の受信に応じて
図3の一連の処理を行う。
【0050】
予測完了時刻導出部84は、まず、予測完了時刻を導出する前のプレ処理を行う(S100)。プレ処理では、予測完了時刻を導出するために必要な各種の情報が取得される。プレ処理の流れについては、後に詳述する。
【0051】
次に、予測完了時刻導出部84は、プレ処理で取得した各種の情報を用いて予測完了時刻を導出する予測完了時刻導出処理を行う(S110)。予測完了時刻導出処理の流れについては、後に詳述する。
【0052】
次に、予測完了時刻導出部84は、予測完了時刻導出処理で導出された予測完了時刻を端末装置18に送信して車両10の所有者に通知し(S120)、一連の処理を終了する。
【0053】
図4は、プレ処理(S100)の流れを説明するフローチャートである。予測完了時刻導出部84は、まず、電力管理部12から地域ベースプロファイルを取得する(S200)。次に、予測完了時刻導出部84は、地域ベースプロファイルに基づいて供給許可電力の予測値の時間推移を導出する(S210)。例えば、予測完了時刻導出部84は、契約電力を充電器14から取得する。予測完了時刻導出部84は、契約電力から地域ベースプロファイルの消費電力を減算して供給許可電力の予測値の時間推移を導出する。
【0054】
次に、予測完了時刻導出部84は、SOC導出部82で導出される現在のSOCを取得する(S220)。次に、予測完了時刻導出部84は、目標SOC(例えば、SOC90%など)から現在のSOCを減算して要充電容量を導出する(S230)。
【0055】
次に、予測完了時刻導出部84は、外気温予測部20から予測外気温の時間推移を取得する(S240)。次に、予測完了時刻導出部84は、現在の時刻を取得する(S250)。次に、予測完了時刻導出部84は、バッテリ温度センサ72から現在のバッテリ温度を取得し(S260)、一連の処理を終了する。
【0056】
図5は、予測完了時刻導出処理(S110)の流れを説明するフローチャートである。予測完了時刻導出部84は、まず、現在のバッテリ温度が所定温度(充電許可温度)以上であるか否かを判断する(S300)。
【0057】
現在のバッテリ温度が所定温度より小さい場合(S300におけるNO)、予測完了時刻導出部84は、所定温度から現在のバッテリ温度を減算したバッテリ温度差を導出する(S310)。次に、予測完了時刻導出部84は、バッテリ温度差に基づいて初期温調電力量を導出する(S320)。次に、予測完了時刻導出部84は、初期温調電力量に基づいて初期温調予測完了時刻を導出する(S330)。次に、予測完了時刻導出部84は、初期温調予測完了時刻を時刻Tkと仮定し(S340)、ステップS360の処理に進む。
【0058】
一方、現在のバッテリ温度が所定温度以上の場合(S300におけるYES)、予測完了時刻導出部84は、現在の時刻を時刻Tkと仮定し(S350)、ステップS360の処理に進む。
【0059】
ステップS360において、予測完了時刻導出部84は、予測外気温の時間推移から時刻Tkにおける予測外気温を抽出する(S360)。次に、予測完了時刻導出部84は、時刻Tkにおける予測外気温に基づいて、時刻Tkの中間温調電力の予測値を導出する(S370)。
【0060】
次に、予測完了時刻導出部84は、供給許可電力の予測値の時間推移から時刻Tkにおける供給許可電力の予測値を抽出する(S380)。
【0061】
次に、予測完了時刻導出部84は、時刻Tkにおける供給許可電力の予測値から時刻Tkにおける中間温調電力の予測値を減算して、時刻Tkにおける充電電力の予測値を導出する(S390)。
【0062】
次に、予測完了時刻導出部84は、時刻Tkから時刻Tk+αまでの充電電力量を導出する(S400)。αは、例えば、1分とするが、この例に限らない。つまり、予測完了時刻導出部84は、時刻Tkから所定時間分(1分間分)の充電電力量を導出する。
【0063】
次に、予測完了時刻導出部84は、ステップS400の充電電力量に基づいて積算電力量を導出する(S410)。具体的には、予測完了時刻導出部84は、前回のステップS410で導出された積算電力量にステップS400で導出された所定時間分の充電電力量を加算して、その時点の積算電力量とする。なお、ステップS410の処理が初回である場合、予測完了時刻導出部84は、ステップS400で導出された所定時間分の充電電力量をその時点の積算電力量とする。
【0064】
次に、予測完了時刻導出部84は、ステップS410で導出された積算電力量が要充電容量より多いか否かを判断する(S420)。積算電力量が要充電容量より多い場合(S420におけるYES)、予測完了時刻導出部84は、時刻Tk+αを予測完了時刻とし(S430)、一連の処理を終了する。
【0065】
積算電力量が要充電容量より多くない場合(S420におけるNO)、予測完了時刻導出部84は、時刻Tk+αを時刻Tkとして(S440)、ステップS360以降の処理を繰り返す。つまり、予測完了時刻導出部84は、積算電力量が要充電容量より多くなるまで、充電電力を将来に向かって積算していき、積算電力量が要充電容量より多くなる時刻を予測完了時刻とする。
【0066】
図6は、予測完了時刻補正部86の動作を説明する図である。
図6Aは、予測外気温の時間推移および外気温の実測値(実測外気温)の時間推移の一例を示す。
図6Bは、供給許可電力の予測値の時間推移および温調電力の予測値の時間推移の一例を示す。
図6Aおよび
図6Bにおいて、充電中の時刻T21が現在の時刻であるとする。
図6Aにおいて、一点鎖線A30は、充電開始指示の受信に応じた予測完了時刻の導出時に用いられた予測外気温の時間推移を示す。実線A32は、外気温の実測値の時間推移を示す。二点鎖線A34は、現在の時刻T21において取得される予測外気温の時間推移を示す。また、
図6Bにおいて、実線A40は、供給許可電力の予測値の時間推移を示す。実線A42は、充電開始指示の受信に応じた予測完了時刻の導出時に用いられた温調電力の予測値の時間推移を示す。実線A44は、現在の時刻T21において導出される温調電力の予測値の時間推移を示す。以後、充電開始指示の受信に応じた予測完了時刻の導出時を、当初と呼ぶ場合がある。
【0067】
図6Aで示すように、実際の外気温(実線A32)は、時間が経過するに従って、当初の予測外気温の時間推移(一点鎖線A30)から乖離することがある。例えば、
図6Aの例では、現在の外気温(外気温B2)は、当初の予測外気温のうち現在の時刻T21に対応する予測外気温(外気温B1)よりも低下している。実際の外気温が当初の予測外気温から乖離すると、充電の完了時刻が当初の予測完了時刻から乖離するおそれがある。
【0068】
そこで、予測完了時刻補正部86は、外気温センサ74から現在の外気温の実測値を取得する。予測完了時刻補正部86は、
図6Aの矢印A36で示すように、現在の外気温の実測値と、予測完了時刻の導出時に用いられた予測外気温のうち現在の時刻に対応する予測外気温との差分の絶対値を、外気温差として導出する。
【0069】
予測完了時刻補正部86は、外気温差が所定値以上となった場合、現在の時刻において予測された将来の予測外気温の時間推移(二点鎖線A34)を取得する。予測完了時刻補正部86は、
図6Bの実線A44で示すように、現在の時刻において予測された将来の予測外気温の時間推移に基づいて温調電力の予測値の時間推移を導出し直す。
【0070】
ここで、
図6Bでは、当初の温調電力の予測値の時間推移に基づく充電電力の積算電力量を斜線のハッチングで示している。また、
図6Bでは、当初の予測完了時刻が時刻T22であったとする。
【0071】
これに対し、予測完了時刻補正部86は、
図6Bの縦線のハッチングで示すように、現在(時刻T21)の温調電力の予測値の時間推移に基づいて充電電力の積算電力量を導出する。また、予測完了時刻補正部86は、現在のSOCに基づいて現在の要充電容量を導出する。予測完了時刻補正部86は、積算電力量が現在の要充電容量より多くなる時刻(時刻T23)を、現在の時刻における予測完了時刻として導出する。そして、予測完了時刻補正部86は、導出された予測完了時刻の再通知を行う。例えば、予測完了時刻補正部86は、現在の時刻における予測完了時刻を端末装置18のディスプレイに表示させることで車両10の所有者に再通知する。
【0072】
なお、充電中に予測完了時刻の再通知を行った後、予測完了時刻補正部86は、再通知された予測完了時刻の導出時の予測外気温の時間推移に基づいて外気温差を導出する。そして、予測完了時刻補正部86は、この外気温差が所定値以上となった場合、予測完了時刻の導出および通知を再度行う。つまり、予測完了時刻補正部86は、外気温差が所定値以上であるか否かの判断を、充電が完了するまで繰り返し行う。
【0073】
図7は、予測完了時刻補正部86の動作の流れを説明するフローチャートである。予測完了時刻補正部86は、予測完了時刻の通知(S120)を行った後(換言すると、
図3の一連の処理を終了した後)、所定制御周期ごとの割り込み制御により
図7の一連の処理を繰り返す。所定制御周期は、例えば、1分とするが、この例に限らない。
【0074】
予測完了時刻補正部86は、まず、現在の時刻を取得する(S500)。次に、予測完了時刻補正部86は、予測完了時刻の導出時に用いられた予測外気温の時間推移に基づいて、現在の時刻に対応する予測外気温を抽出する(S510)。
【0075】
次に、予測完了時刻補正部86は、外気温センサ74から現在の外気温の実測値を取得する(S520)。次に、予測完了時刻補正部86は、現在の時刻に対応する予測外気温と、現在の外気温の実測値との差分の絶対値を、外気温差として導出する(S530)。
【0076】
次に、予測完了時刻補正部86は、外気温差が所定値以上であるか否かを判断する(S540)。外気温差が所定値より小さい場合(S540におけるNO)、予測完了時刻補正部86は、一連の処理を終了する。
【0077】
外気温差が所定値以上の場合(S540におけるYES)、予測完了時刻補正部86は、
図4で説明したプレ処理と同様の処理を行う(S100)。次に、予測完了時刻補正部86は、
図5で説明した予測完了時刻導出処理と同様の処理を行う(S110)。これにより、現在の時刻において導出された予測外気温に基づいて、現在の時刻における予測完了時刻が導出される。
【0078】
次に、予測完了時刻補正部86は、導出された予測完了時刻を端末装置18に送信して車両10の所有者に再通知する(S570)。つまり、予測完了時刻補正部86は、外気温差が所定値以上の場合、予測完了時刻が既に通知している予測完了時刻から乖離する可能性が高いため、現時点での予測完了時刻を導出して再通知する。
【0079】
以上のように、本実施形態の充電システム1において、車両10の予測完了時刻導出部84は、将来の供給許可電力の予測値と、将来の外気温の予測値に基づいて導出される温調電力の予測値とに基づいて、予測完了時刻を導出する。具体的には、予測完了時刻導出部84は、供給許可電力の予測値から温調電力の予測値を減算した充電電力の予測値を将来に向かって積算した積算電力量が、要充電容量より多くなる時刻を、予測完了時刻とする。
【0080】
したがって、本実施形態の充電システム1によれば、将来の温調電力の予測値および将来の充電電力の予測値を精度よく導出することができ、充電の予測時刻の導出精度を向上させることが可能となる。
【0081】
また、本実施形態の充電システム1の予測完了時刻導出部84は、電源40から車両10への電力の供給が可能となった時に予測完了時刻を導出し、導出された予測完了時刻を通知する。このため、本実施形態の充電システム1では、充電の開始を指示する操作が行われたときに、車両10の所有者に予測完了時刻を認識させることができる。
【0082】
また、本実施形態の充電システム1の予測完了時刻補正部86は、現在の外気温の実測値と、予測完了時刻の導出時に用いられた外気温の予測値のうち現在の時刻に対応する外気温の予測値との差分の絶対値が所定値以上となった場合、再度、その時点の予測完了時刻を導出し、導出された予測完了時刻を通知する。このため、本実施形態の充電システム1では、外気温が予測値から乖離した場合に、予測完了時刻が変わったことを車両10の所有者に認識させるとともに、より正確な予測完了時刻をその所有者に認識させることができる。
【0083】
以上、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0084】
例えば、上記実施形態では、車両10内のバッテリ制御装置78を予測完了時刻導出部84および予測完了時刻補正部86として機能させる例を挙げていた。しかし、予測完了時刻導出部84および予測完了時刻補正部86として機能するコンピュータは、充電器14に設けられてもよいし、充電ケーブル16のコントロールボックス54に設けられてもよい。この場合、予測完了時刻導出部84および予測完了時刻補正部86は、車両10からバッテリ温度、外気温の実測値、現在のSOCなどの各種の情報を通信によって取得して各処理を実行してもよい。
【0085】
また、上記実施形態では、予測外気温の時間推移を外気温予測部20から取得する例を挙げていた。しかし、予測外気温の時間推移については、外気温予測部20から取得する態様に限らず、気象予報を行う他の団体等から取得してもよい。
【0086】
また、上記実施形態では、予測完了時刻をスマートフォンなどの端末装置18に通知する例を挙げていた。しかし、予測完了時刻を通知する態様は、この例に限らず、例えば、家のテレビなどに通知するなどとしてもよい。
【0087】
また、上記実施形態の充電器14は、充電コンセント62に充電ケーブル16の電源プラグ52が接続される構成を挙げていた。しかし、充電器14は、充電ケーブル16を一体として備える構成であってもよい。
【符号の説明】
【0088】
1 充電システム
10 車両
30 バッテリ
40 電源
70 加熱器
74 外気温センサ
80 充電制御部
84 予測完了時刻導出部
86 予測完了時刻補正部