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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-01
(45)【発行日】2023-08-09
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/00 20060101AFI20230802BHJP
   B60K 6/442 20071001ALI20230802BHJP
   B60K 6/52 20071001ALI20230802BHJP
   B60K 6/38 20071001ALI20230802BHJP
   B60K 7/00 20060101ALI20230802BHJP
   B60K 17/04 20060101ALI20230802BHJP
   F16D 7/02 20060101ALI20230802BHJP
   F16D 1/06 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
B60K1/00
B60K6/442 ZHV
B60K6/52
B60K6/38
B60K7/00
B60K17/04 G
F16D7/02 C
F16D1/06 210
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020007669
(22)【出願日】2020-01-21
(65)【公開番号】P2021113030
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 宏臣
(72)【発明者】
【氏名】薮崎 佑介
(72)【発明者】
【氏名】柿原 裕介
(72)【発明者】
【氏名】北村 浩将
【審査官】高瀬 智史
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-137806(JP,A)
【文献】英国特許出願公開第2448598(GB,A)
【文献】特開2010-209963(JP,A)
【文献】特開2009-73391(JP,A)
【文献】特開平9-312906(JP,A)
【文献】特開平9-136519(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110138176(CN,A)
【文献】特開2017-5878(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/00
B60K 6/20
B60K 7/00
B60K 17/04
F16D 7/02
F16D 1/06
F16D 27/00
F16H 49/00
B60F 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の内外を区切る隔壁と、
車輪に連結される第1継手部が前記隔壁に対して外側に位置し、第2継手部が前記隔壁に対して内側に位置し、前記第1継手部と前記第2継手部とが前記隔壁を間に挟んで磁気的に結合されるマグネットカップリングと、
前記第2継手部に連結され、前記隔壁に対して内側において着脱可能に設けられるモータと、
を備える車両。
【請求項2】
前記モータの回転軸と前記第2継手部との連結を解除可能な回転軸連結機構を有する請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記第1継手部に対する前記第2継手部の相対位置を変更可能な相対位置変更機構を有する請求項1または2に記載の車両。
【請求項4】
前記隔壁の底面と前記モータとの間に設けられ、前記モータを自車両に対して上下方向に移動可能なリフト機構を有する請求項1から3のいずれか1項に記載の車両。
【請求項5】
バッテリに接続され、前記隔壁の底面から上方に露出する第1電極と、
前記モータの底部から下方に露出する第2電極と、を有し、
前記リフト機構の下降に応じて前記第1電極および前記第2電極が電気的に接続され、前記リフト機構の上昇に応じて前記第1電極および前記第2電極の接続が解除される請求項4に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動源としてモータを含む車両に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド電気自動車には、前輪を駆動する前輪側駆動源と、後輪を駆動する後輪側駆動源とを備えるものがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-137806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、山道などでは、前輪側駆動源と後輪側駆動源との両方を駆動させることで、車両を安定して走行させることができる。一方、市街地などでは、エネルギー(燃料や電力)の消費を抑えるため、後輪側駆動源を停止させて前輪側駆動源のみで車両を走行させることがある。しかし、停止させた後輪側駆動源のモータにおいて後輪の回転に応じた引きずりトルクが生じると、エネルギーの消費を適切に抑えることができない。
【0005】
そこで、本発明は、エネルギーの消費を適切に抑えることが可能な車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の車両は、自車両の内外を区切る隔壁と、車輪に連結される第1継手部が隔壁に対して外側に位置し、第2継手部が隔壁に対して内側に位置し、第1継手部と第2継手部とが隔壁を間に挟んで磁気的に結合されるマグネットカップリングと、第2継手部に連結され、隔壁に対して内側において着脱可能に設けられるモータと、を備える。
【0007】
また、車両は、モータの回転軸と第2継手部との連結を解除可能な回転軸連結機構を有してもよい。
【0008】
また、車両は、第1継手部に対する第2継手部の相対位置を変更可能な相対位置変更機構を有してもよい。
【0009】
また、車両は、隔壁の底面とモータとの間に設けられ、モータを自車両に対して上下方向に移動可能なリフト機構を有してもよい。
【0010】
また、車両は、バッテリに接続され、隔壁の底面から上方に露出する第1電極と、モータの底部から下方に露出する第2電極と、を有し、リフト機構の下降に応じて第1電極および第2電極が電気的に接続され、リフト機構の上昇に応じて第1電極および第2電極の接続が解除されてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、エネルギーの消費を適切に抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、第1実施形態による車両の構成を示す概略図である。
図2図2は、モータを取り外した場合の車両の構成を示す概略図である。
図3図3は、後輪付近の構成を例示する部分拡大図である。図3Aは、車両の上方から車両を見た平面図で示す。図3Bは、車両の後方から車両を見た透視側面図で示す。
図4図4は、モータの取り外し動作を説明する説明図である。図4Aは、取り外しの第1ステップを示す。図4Bは、取り外しの第2ステップを示す。図4Cは、取り外しの第3ステップを示す。
図5図5は、第2実施形態の車両におけるモータの取り外し動作を説明する説明図である。図5Aは、モータの取り外し前を示している。図5Bは、モータの取り外し時を示している。
図6図6は、第3実施形態の車両におけるマグネットカップリングの構成を説明する概略図である。図6Aは、マグネットカップリングが磁気的に結合された状態を示している。図6Bは、マグネットカップリングの結合が解除された状態を示している。
図7図7は、後輪を駆動するモータが1個である第4実施形態の車両の部分拡大図である。図7Aは、車両の上方から車両を見た平面図で示す。図7Bは、車両の後方から車両を見た透視側面図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0014】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態による車両1の構成を示す概略図である。図1では、車両1の前後左右の各方向をクロスされた矢印で例示している。車両1は、エンジン10、モータ12、前輪14、減速機16、ディファレンシャルギア18、インバータ20、バッテリ22、モータ30a、30b、後輪32、減速機34、インバータ36および車両制御部38を含む。
【0015】
車両1は、エンジン10とモータ12とが並行して前輪14を駆動可能なハイブリッド電気自動車である。以後、エンジン10およびモータ12を主駆動源と呼ぶ場合がある。また、主駆動源により駆動される前輪14を主駆動輪と呼ぶ場合がある。なお、主駆動源は、エンジン10とモータ12とが並行して設けられる態様に限らず、例えば、エンジン10のみであってもよいし、モータ12のみであってもよい。
【0016】
エンジン10は、例えば、ガソリン等の燃料を燃焼させてピストンを往復運動させる。ピストンの往復運動は、コネクティングロッドを通じてクランクシャフトの回転運動に変換される。クランクシャフトは、エンジン10の出力軸に接続される。エンジン10の出力軸は、減速機16に接続される。
【0017】
モータ12は、例えば、三相の同期電動機や誘導電動機などである。モータ12の回転軸は、減速機16に接続される。
【0018】
減速機16は、例えば、無段変速機などである。減速機16のプライマリ側は、エンジン10の出力軸およびモータ12の回転軸に接続される。減速機16のセカンダリ側は、ディファレンシャルギア18に接続される。ディファレンシャルギア18は、左右の前輪14に接続される。エンジン10から出力されるトルクおよびモータ12から出力されるトルクは、減速機16およびディファレンシャルギア18を通じて前輪14に伝達される。
【0019】
インバータ20は、バッテリ22の直流電力を交流電力に変換してモータ12に供給する。モータ12は、インバータ20を通じてバッテリ22から供給される電力を消費して回転軸を回転させる。また、モータ12は、車両1の減速時には発電機として機能する。インバータ20は、モータ12で発生した交流電力を直流電力に変換してバッテリ22に回生する。
【0020】
車両1では、エンジン10およびモータ12とは独立して、モータ30a、30bが設けられる。モータ30aは、左側の後輪32を駆動する。モータ30bは、右側の後輪32を駆動する。以後、モータ30a、30bを総称してモータ30と呼ぶ場合がある。また、モータ30を副駆動源と呼ぶ場合がある。また、副駆動源により駆動される後輪32を副駆動輪と呼ぶ場合がある。また、車両1を、自車両と呼ぶ場合がある。
【0021】
モータ30は、例えば、三相の同期電動機や誘導電動機などである。左側のモータ30aの回転軸は、左側の減速機34に接続される。右側のモータ30bの回転軸は右側の減速機34に接続される。
【0022】
減速機34は、例えば、ギア機構などであってもよいし無段変速機などであってもよい。左側のモータ30aに接続される減速機34は、左側の後輪32に接続される。左側のモータ30aから出力されるトルクは、減速機34を通じて左側の後輪32に伝達される。右側のモータ30bに接続される減速機34は、右側の後輪32に接続される。右側のモータ30bから出力されるトルクは、減速機34を通じて右側の後輪32に伝達される。
【0023】
インバータ36は、バッテリ22の直流電力を交流電力に変換してモータ30に供給する。モータ30は、インバータ36を通じてバッテリ22から供給される電力を消費して回転軸を回転させる。また、モータ30は、車両1の減速時には発電機として機能する。インバータ36は、モータ30で発生した交流電力を直流電力に変換してバッテリ22に回生する。
【0024】
車両制御部38は、中央処理装置(CPU)、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含む半導体集積回路から構成される。詳細な説明は省略するが、車両制御部38は、車両1の駆動、制動および旋回など車両1全体を制御する。例えば、車両制御部38は、エンジン10を制御するとともに、インバータ20を通じてモータ12を制御する。また、車両制御部38は、インバータ36を通じてモータ30を制御する。
【0025】
車両制御部38は、エンジン10およびモータ12を駆動させるとともに、モータ30を駆動させて、車両1を4輪駆動で走行させることができる。また、車両制御部38は、エンジン10およびモータ12を駆動させる一方、モータ30を停止させて、車両1を前輪駆動で走行させることができる。
【0026】
ここで、車両1を前輪駆動で走行させる場合、停止させたモータ30において後輪32の回転に応じた引きずりトルクが生じることがある。引きずりトルクが生じると、エネルギーの消費を適切に抑えることができないことがある。
【0027】
そこで、車両1では、後輪32を駆動するモータ30をユーザ(例えば、運転者など)によって取り外しおよび取り付けできるように構成されている。
【0028】
図2は、モータ30を取り外した場合の車両1の構成を示す概略図である。図2では、モータ30が取り外されたことを、破線の四角で示している。図2に示すように、モータ30が取り外されても、インバータ36および減速機34は、車両1に取り付けられた状態で維持される。また、モータ30が取り外された状態では、車両制御部38は、インバータ36への制御を中止する。つまり、車両制御部38は、主駆動源および副駆動源のうち主駆動源側のみを制御して、車両1を前輪駆動で走行させる。
【0029】
図3は、後輪32付近の構成を例示する部分拡大図である。図3Aは、車両1の上方から車両1を見た平面図で示す。図3Bは、車両1の後方から車両1を見た透視側面図で示す。図3Aでは、車両1の前後左右の各方向をクロスされた矢印で例示している。図3Bでは、車両1の上下左右の各方向を、クロスされた矢印で例示している。以後、車両1の後輪32付近を車両1の後部と呼ぶ場合がある。
【0030】
車両1のボディには、車両1の内外を区切る隔壁40が設けられる。車両1の後部において、例えば、左右方向(幅方向)の中央付近の隔壁40は、左右両側に比べ、後方および下方に突出している。具体的には、車両1の後部において、隔壁40は、左右方向に対して交差する左側および右側の側面42、および、上下方向に対して交差する底面44を有する。車両1の後部には、隔壁40における左右の側面42および底面44によって空間46が形成される。この空間46の後方には、例えば、バンパー48が設けられる。
【0031】
空間46の上方には、隔壁40よりも内側に位置する内壁50によってトランクルーム52が形成されている。トランクルーム52の底面54には、トランクルーム52内と空間46とを連通させる貫通孔56が形成される。貫通孔56には、貫通孔56を塞ぐ蓋部58が着脱可能に設けられる。
【0032】
後輪32および減速機34は、隔壁40に対して外側(車外側)に位置する。左側の減速機34は、隔壁40における左側の側面42よりも左側に位置する。左側の後輪32は、左側の減速機34よりも左側に位置する。右側の減速機34は、隔壁40における右側の側面42よりも右側に位置する。右側の後輪32は、右側の減速機34よりも右側に位置する。減速機34は、車両1のボディに支持される。後輪32は、ドライブシャフト60を通じて減速機34に接続される。
【0033】
モータ30は、隔壁40で形成される空間46に収容される。モータ30は、例えば、モータ30から突出する回転軸62が左右方向に延在するように配置される。具体的には、左側のモータ30aは、回転軸62が左側の側面42に対向配置され、右側のモータ30bは、回転軸62が右側の側面42に対向配置される。モータ30aおよびモータ30bは、回転軸62が同一直線上となるように配置される。
【0034】
車両1では、モータ30と減速機34との間にマグネットカップリング70が設けられる。マグネットカップリング70は、左側のモータ30aおよび右側のモータ30bのそれぞれに対して設けられる。マグネットカップリング70は、第1継手部72および第2継手部74を有する。第1継手部72および第2継手部74は、円盤状に形成される。
【0035】
第1継手部72は、隔壁40に対して車両1の外側に位置する。第1継手部72は、隔壁40の側面42に対して対向配置される。第1継手部72と隔壁40の側面42との間には、所定のギャップが形成される。第1継手部72は、減速機34に接続される。つまり、第1継手部72は、減速機34を通じて後輪32(車輪)に連結される。
【0036】
第2継手部74は、隔壁40に対して車両1の内側に位置する。第2継手部74は、隔壁40の側面42に対して対向配置される。第2継手部74と隔壁40の側面42との間には、所定のギャップが形成される。第1継手部72および第2継手部74は、各々の中心軸が同一線上に位置するように対向される。つまり、第1継手部72および第2継手部74は、隔壁40を間に挟んで設けられる。第2継手部74は、モータ30の回転軸62に連結される。
【0037】
第1継手部72における第2継手部74側の面には、永久磁石が設けられる。また、第2継手部74における第1継手部72側の面にも、永久磁石が設けられる。永久磁石は、第1継手部72および第2継手部74の周方向にN極とS極とが交互に配置されるようにそれぞれ設けられる。第1継手部72のN極は、第2継手部74のS極に磁気的に結合され、第1継手部72のS極は、第2継手部74のN極に磁気的に結合される。つまり、第1継手部72および第2継手部74は、非接触で磁気的に結合される。このため、第1継手部72は、第2継手部74に同期して回転可能である。そして、モータ30から出力されるトルクは、マグネットカップリング70を通じて減速機34および後輪32に伝達される。なお、永久磁石に代えて電磁石が設けられてもよい。
【0038】
隔壁40の側面42におけるマグネットカップリング70で挟まれる部分は、例えば、非磁性体で構成され、具体的には、合成樹脂で構成される。このため、隔壁40の側面42は、マグネットカップリング70における磁気的結合を妨げない。なお、マグネットカップリング70で挟まれる部分は、合成樹脂で構成される態様に限らず、例えば、ステンレスなどで構成されてもよい。
【0039】
車両1には、回転軸連結機構76が設けられている。回転軸連結機構76は、モータ30の回転軸62と第2継手部74とを連結させることができる。また、回転軸連結機構76は、モータ30の回転軸62と第2継手部74との連結を解除させることができる。例えば、回転軸62の先端の外周面には、軸方向に延びる溝であるスプラインが形成される。また、第2継手部74における第1継手部72とは反対側の面には、回転軸62のスプラインに係合するキー溝が形成される。
【0040】
回転軸連結機構76は、油圧や電磁力などによって、モータ30に対する回転軸62の先端の相対位置を移動させることができる。例えば、回転軸62は、モータ30の回転子に対して軸方向に摺動可能に連結される。回転軸連結機構76は、油圧や電磁力などによって回転軸62を軸方向に摺動させることができる。回転軸連結機構76は、回転軸62をモータ30に対する突出量が増加する方向に摺動させ、回転軸62のスプラインを第2継手部74のキー溝に差し込むことで回転軸62と第2継手部74とを連結させる。また、回転軸連結機構76は、回転軸62をモータ30に対する突出量が減少する方向に摺動させ、回転軸62のスプラインを第2継手部74のキー溝から抜き出すことで回転軸62と第2継手部74との連結を解除させる。回転軸連結機構76は、例えば、スイッチ操作に応じて回転軸62の連結および解除をさせてもよい。
【0041】
なお、回転軸連結機構76は、回転軸62を軸方向に摺動させる態様に限らず、油圧や電磁力などによって回転軸62を軸方向に延長および短縮させる構成としてもよい。例えば、回転軸62は、回転子に連結されるシリンダと、シリンダに対して挿入および突出されるプランジャとから構成される。なお、シリンダおよびプランジャは、例えば、キーおよびキー溝の係合などにより、軸周りに一体的に回転可能とする。回転軸連結機構76は、プランジャをシリンダに対して突出させてプランジャの先端を第2継手部74に連結させる。また、回転軸連結機構76は、プランジャをシリンダ内に収容させてプランジャと第2継手部74との連結を解除させる。このように、シリンダに対するプランジャの突出および挿入などによって回転軸62を軸方向に延長および短縮させてもよい。
【0042】
隔壁40の底面44とモータ30との間には、リフト機構78が設けられている。リフト機構78は、例えば、油圧ジャッキや電動ジャッキなどである。リフト機構78は、リフト機構78上に戴置されたモータ30を自車両に対して上下方向に移動可能となっている。リフト機構78によってモータ30が最下部に位置されると、回転軸62を第2継手部74に連結させることができる。
【0043】
隔壁40の底面44には、インバータ36を通じてバッテリ22に接続される第1電極80が設けられている。第1電極80は、3相(U相V相W相)分設けられている。第1電極80は、隔壁40の底面44から絶縁されている。第1電極80は、隔壁40の底面44から上方に突出されており、上方に向けて露出される。
【0044】
モータ30の底部には、第2電極82が設けられている。第2電極82は、3相(U相V相W相)分設けられている。第2電極82はモータ30の底部から下方に向けて露出される。
【0045】
第1電極80および第2電極82は、リフト機構78の下降に応じて互いに電気的に接続される。つまり、リフト機構78によってモータ30が最下部に位置されると、第1電極80と第2電極82とが電気的に接続された状態となり、第1電極80および第2電極82を通じてバッテリ22からモータ30への電力の供給が可能となる。また、第1電極80および第2電極82は、リフト機構78の上昇に応じて電気的接続が解除される。
【0046】
なお、第1電極80および第2電極82は、3相の電極のみに限らない。例えば、中性点用の電極が設けられてもよいし、電流センサなどに繋がる電極が設けられてもよい。
【0047】
また、図示は省略するが、モータ30が収容される空間46やトランクルーム52には、レールが予め収容されてもよい。レールは、後述するが、モータ30の取り外し時においてリフト機構78に水平に連結される。レールは、モータ30の水平方向の移動を案内する水平案内機構として機能する。なお、レールは、リフト機構に収容され、リフト機構78から水平方向に延長および短縮可能な構成としてもよい。
【0048】
図4は、モータ30の取り外し動作を説明する説明図である。図4Aは、取り外しの第1ステップを示す。図4Bは、取り外しの第2ステップを示す。図4Cは、取り外しの第3ステップを示す。図4Aでは、車両1の前後左右の各方向をクロスされた矢印で例示している。図4Bでは、車両1の上下左右の各方向をクロスされた矢印で例示している。図4Cでは、上下前後の各方向をクロスされた矢印で例示している。図4A図4Cでは、2個のモータ30を代表して左側のモータ30aを例示している。
【0049】
まず、ユーザは、モータ30を取り外すための準備として、車両1を停止させ、サイドブレーキを掛けるなどして後輪32が回転しない状態にさせる。そして、ユーザは、トランクルーム52のハッチを開け、トランクルーム52内の蓋部58を取り外す。これにより、モータ30は、貫通孔56を通じて上方に露出される。
【0050】
次に、ユーザは、回転軸連結機構76のスイッチを操作し、図4Aの白抜き矢印A1のように、回転軸62を軸方向に短縮させて第2継手部74との連結を解除させる(第1ステップ)。なお、回転軸62が取り外された第2継手部74は、隔壁40などに支持されてもよい。
【0051】
次に、ユーザは、リフト機構78を操作し、図4Bの白抜き矢印A2のように、モータ30を上方に移動させる(第2ステップ)。これにより、モータ30は、空間46からトランクルーム52に移動される。このとき、モータ30の上昇に応じて第1電極80と第2電極82とが離れ、モータ30の電気的な接続が解除される。
【0052】
次に、ユーザは、空間46やトランクルーム52に予め収容させておいたレール84を取り出す。次に、ユーザは、レール84がリフト機構78の天板86から車両1の後方に延びるように、レール84を天板86に連結する。レール84の先端は、例えば、車庫におけるモータ30の保管台などに連結させる。そして、ユーザは、図4Cの白抜き矢印A3のように、モータ30をレール84に沿って車両1の後方に水平移動させる(第3ステップ)。これにより、モータ30は、トランクルーム52外に取り出され、保管台などに戴置される。
【0053】
モータ30の移動後、レール84は、リフト機構78および保管台から取り外される。取り外されたレール84は、例えば、空間46やトランクルーム52に収容されてもよいし、車庫などに保管されてもよい。なお、モータ30が取り外された後、リフト機構78を下降させ、トランクルーム52の蓋部58を閉じてもよい。
【0054】
また、モータ30を取り付ける場合、ユーザは、取り外し時とは逆の順番に行えばよい。具体的には、ユーザは、モータ30をレール84に沿って保管台からリフト機構78の天板86上に移動させる(第3ステップの逆)。次に、ユーザは、リフト機構78を操作し、モータ30を下方に移動させる(第2ステップの逆)。モータ30が最下部に移動されると、第1電極80と第2電極82とが電気的に接続される。次に、ユーザは、回転軸連結機構76のスイッチを操作し、回転軸62を延長させて第2継手部74と連結させる(第1ステップの逆)。
【0055】
以上のように、第1実施形態の車両1では、隔壁40に対して車両1の内側において、モータ30が着脱可能に設けられる。このため、例えば、市街地を走行する通常時は、モータ30を取り外しておき、行楽などのイベントで山道を走行する予定がある場合などには、事前にモータ30を取り付けておくという具合に、状況に応じてユーザがモータ30を自在に着脱することができる。
【0056】
モータ30が取り外された場合、車両1は、主駆動源による前輪駆動とされる。この場合、走行に従って後輪32が回転しても、モータ30が取り外されているため引きずりトルクは生じない。したがって、第1実施形態の車両1では、エネルギーの消費を適切に抑えることができる。
【0057】
また、第1実施形態の車両1では、モータ30を取り外すことで、モータ30の重量分だけ車両1の重量を低減することができる。車両1の重量が低減されると、車両1を駆動するエネルギーを低減することができる。
【0058】
また、第1実施形態の車両1では、車両1全体をジャッキアップすることなく、トランクルーム52を介してモータ30を着脱することができる。このため、第1実施形態の車両1では、モータ30を着脱するための設備を簡素にすることができ、整備士などに依頼することなくユーザ自身がモータ30を着脱することが可能となる。
【0059】
また、第1実施形態の車両1では、マグネットカップリング70を介してモータ30が後輪32に接続される。このため、第1実施形態の車両1では、モータ30が隔壁40の内側に配置されても、モータ30から出力されるトルクを後輪32に適切に伝達することができる。
【0060】
また、第1実施形態の車両1では、モータ30を隔壁40の内側に配置することで、例えば、砂礫やダストなどがモータ30へ侵入することを抑制することができ、モータ30の信頼性を向上させることが可能となる。
【0061】
また、第1実施形態の車両1では、モータ30を取り付けることで、4輪駆動で走行させることができる。このため、第1実施形態の車両1では、後輪32の駆動源が元から設けられていない態様に比べ、駆動力が必要な山道などにおいて安定した走行を行うことが可能となる。
【0062】
第1実施形態では、回転軸62と第2継手部74との連結が解除された後、モータ30が車両1外に取り出されていた。しかし、第2継手部74との連結が解除された回転軸62およびモータ30は、車両1内に収容された状態とされてもよい。これは、少なくとも第2継手部74と回転軸62との連結を解除することで、モータ30における引きずりトルクを抑制することができるからである。
【0063】
(第2実施形態)
第1実施形態では、回転軸62と第2継手部74との連結が解除されることで、モータ30を取り外し可能としていた。これに対し、第2実施形態では、回転軸62が第2継手部74に接続されており、第1継手部72に対する第2継手部74の相対位置を変更することで、モータ30を取り外し可能とする。
【0064】
図5は、第2実施形態の車両100におけるモータ30の取り外し動作を説明する説明図である。図5Aは、モータ30の取り外し前を示している。図5Bは、モータ30の取り外し時を示している。図5Aおよび図5Bでは、車両100の前後左右の各方向をクロスされた矢印で例示している。
【0065】
図5Aで示すように、第2実施形態の車両100では、相対位置変更機構110が設けられている。相対位置変更機構110は、例えば、モータ30と第2継手部74との間に設けられる。相対位置変更機構110は、具体的には、油圧ジャッキや電動ジャッキなどである。相対位置変更機構110は、第2継手部74を回転軸62の軸方向に移動可能となっている。つまり、相対位置変更機構110は、第1継手部72と第2継手部74との間隔を変更することができる。また、相対位置変更機構110は、第2継手部74の移動に伴って、回転軸連結機構76と同様にして、回転軸62を軸方向に摺動させてもよいし、回転軸62を軸方向に延長または短縮させてもよい。
【0066】
モータ30を取り外す場合、ユーザは、相対位置変更機構110を操作して、図5Bの白抜き矢印A10で示すように、第2継手部74をモータ30側に移動させる。これにより、第1継手部72と第2継手部74との間隔が広くなることで、第2継手部74に作用する磁力が弱まる。そして、ユーザは、リフト機構78によってモータ30を上昇させて取り出す。第2実施形態では、第2継手部74もモータ30と共に取り外される。
【0067】
モータ30を取り付ける場合、ユーザは、リフト機構78によってモータ30を最下部に位置させた後、相対位置変更機構110を操作して、第2継手部74を第1継手部72側に移動させる。これにより、第1継手部72と第2継手部74との間隔が所定値となり、第1継手部72および第2継手部74は、所定の磁力で結合される。
【0068】
このように、第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、モータ30を取り外すことで引きずりトルクの発生を回避でき、エネルギーの消費を適切に抑えることができる。
【0069】
なお、第2実施形態では、第2継手部74をモータ30側に移動させた後、モータ30が車両100外に取り出されていた。しかし、第2継手部74をモータ30側に移動させた状態で、モータ30を車両100内に継続して収容させてもよい。これは、少なくとも第2継手部74に作用する磁力が弱まることで、マグネットカップリング70を通じた後輪32の回転の伝達が低下され、モータ30における引きずりトルクを抑制することができるからである。
【0070】
また、第2実施形態では、第1継手部72に対する第2継手部74の相対位置を回転軸62の軸方向に変更させていた。しかし、相対位置変更機構110は、第2継手部74を回転軸62の軸方向に変更させる態様に限らない。例えば、相対位置変更機構110は、第1継手部72に対して第2継手部74を回転軸62に垂直な方向(例えば、車両100の前後方向など)に移動させることで第2継手部74の相対位置を変更させてもよい。この場合、相対位置変更機構110は、第2継手部74、回転軸62、モータ30およびリフト機構78を一体的に移動させてもよい。
【0071】
(第3実施形態)
第1実施形態および第2実施形態では、第1継手部72および第2継手部74が円盤状に形成されていた。しかし、第1継手部72および第2継手部74は、円盤状に限らない。
【0072】
図6は、第3実施形態の車両200におけるマグネットカップリング270の構成を説明する概略図である。図6Aは、マグネットカップリング270が磁気的に結合された状態を示している。図6Bは、マグネットカップリング270の結合が解除された状態を示している。図6Aおよび図6Bでは、車両200の前後左右の各方向をクロスされた矢印で例示している。
【0073】
マグネットカップリング270は、円柱状の第1継手部272と円筒状の第2継手部274を含む。第1継手部272は、減速機34に接続される。第2継手部274は、モータ30の回転軸62に接続される。第2継手部274の内径は、第1継手部272の外径より大きい。第1継手部272の外周面および第2継手部274の内周面には、それぞれ永久磁石276が設けられる。なお、永久磁石276に代えて電磁石が設けられてもよい。
【0074】
第3実施形態の車両200では、隔壁40の側面42に、モータ30側に窪む円筒状の窪み部278が形成されている。第1継手部272は、窪み部278内に収容される。第2継手部274は、窪み部278および第1継手部272を内部に収容可能である。第1継手部272と隔壁40との間、および、第2継手部274と隔壁40との間には、所定のギャップが設けられる。第2継手部274内に第1継手部272が収容されると、第1継手部272の永久磁石276と第2継手部274の永久磁石276とが対向配置されて、第1継手部272と第2継手部274とが磁気的に結合される。このため、第1継手部272は、第2継手部274内に収容された状態で第2継手部274に同期して回転される。
【0075】
第3実施形態の相対位置変更機構110は、モータ30と第2継手部274との間に設けられる。相対位置変更機構110は、第2実施形態と同様に、第2継手部274を回転軸62の軸方向に移動可能となっている。
【0076】
モータ30を取り外す場合、ユーザは、相対位置変更機構110を操作して、図6Bの白抜き矢印A20で示すように、第2継手部274をモータ30側に移動させる。そうすると、第1継手部272は、相対的に第2継手部274外に移動され、第2継手部274に作用する磁力が弱まる。これにより、第2実施形態と同様にして、モータ30を取り外すことができる。
【0077】
このように、第3実施形態においても、第1実施形態および第2実施形態と同様に、モータ30を取り外すことで引きずりトルクの発生を回避でき、エネルギーの消費を適切に抑えることができる。
【0078】
また、第3実施形態では、第1継手部272の永久磁石276と第2継手部274の永久磁石276とが回転軸62の径方向に対向配置される。このため、第3実施形態のマグネットカップリング270では、円盤状のマグネットカップリング70に比べ、第1継手部272に対する第2継手部274の軸方向の離隔距離が短くても第2継手部274に作用する磁力を弱めることができる。その結果、第3実施形態では、モータ30が収容される空間46を狭くすることができる。
【0079】
(第4実施形態)
第1~第3実施形態では、左側の後輪32を駆動するモータ30aと、右側の後輪32を駆動するモータ30bとが設けられていた。しかし、後輪32を駆動するモータ30は、1個であってもよい。
【0080】
図7は、後輪32を駆動するモータ30が1個である第4実施形態の車両300の部分拡大図である。図7Aは、車両300の上方から車両300見た平面図で示す。図7Bは、車両300の後方から車両300を見た透視側面図で示す。図7Aでは、車両300の前後左右の各方向をクロスされた矢印で例示している。図7Bでは、車両300の上下左右の各方向をクロスされた矢印で例示している。
【0081】
第4実施形態の車両300では、例えば、モータ30、減速機310およびディファレンシャルギア312が隔壁40の内側の空間46に収容される。モータ30の回転軸62は、減速機310に接続される。減速機310は、ディファレンシャルギア312に接続される。ディファレンシャルギア312は、サイド軸314を通じて左右のマグネットカップリング70の第2継手部74にそれぞれ接続される。マグネットカップリング70の第1継手部72は、ドライブシャフト60を通じて後輪32に接続される。
【0082】
第4実施形態の回転軸連結機構376は、モータ30の回転軸62と減速機310とを連結させることができる。また、回転軸連結機構376は、モータ30の回転軸62と減速機310との連結を解除させることができる。回転軸連結機構376は、例えば、スイッチ操作に応じて、減速機310のギアに形成されるキー溝に対して回転軸62のスプラインを抜き差しさせることで、回転軸62および減速機310の連結および連結の解除をさせる。換言すると、回転軸連結機構376は、減速機310、ディファレンシャルギア312およびサイド軸314を通じた第2継手部74と、回転軸62との連結を解除可能である。
【0083】
隔壁40の底面44とモータ30との間には、リフト機構78が設けられている。リフト機構78は、リフト機構78上に戴置されたモータ30を自車両に対して上下方向に移動可能となっている。リフト機構78によってモータ30が最下部に位置されると、回転軸62を減速機310に連結させることができる。
【0084】
モータ30を取り外す場合、第1実施形態と同様に、ユーザは、回転軸62と減速機310との連結を解除させてからリフト機構78でモータ30を上方に移動させ、トランクルーム52を通じて取り外す。
【0085】
このように、第4実施形態においても、第1実施形態と同様に、モータ30を取り外すことで引きずりトルクの発生を回避でき、エネルギーの消費を適切に抑えることができる。
【0086】
以上、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0087】
例えば、各実施形態では、主駆動源が前輪14を駆動し、副駆動源であるモータ30が後輪32を駆動する構成としていた。しかし、主駆動源が後輪32を駆動し、副駆動源が前輪14を駆動する構成としてもよい。この場合、副駆動源を取り外すと、主駆動源による後輪駆動とされる。また、この場合、運転席の前方において、モータ30が収容される空間46が隔壁40によって形成される。モータ30は、例えば、運転席の前方のボンネットを通じて取り外し可能とされてもよい。
【0088】
また、各実施形態および変形例の特徴を組み合わせてもよい。例えば、第3実施形態のマグネットカップリング270を第1実施形態の車両1や第4実施形態の車両300に適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、駆動源としてモータを含む車両に利用できる。
【符号の説明】
【0090】
1、100、200、300 車両
22 バッテリ
30、30a、30b モータ
40 隔壁
44 底面
62 回転軸
70、270 マグネットカップリング
72、272 第1継手部
74、274 第2継手部
76、376 回転軸連結機構
78 リフト機構
80 第1電極
82 第2電極
110 相対位置変更機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7