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特許7324166電流リード装置、超電導コイル装置、およびメンテナンス方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-01
(45)【発行日】2023-08-09
(54)【発明の名称】電流リード装置、超電導コイル装置、およびメンテナンス方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 6/06 20060101AFI20230802BHJP
【FI】
H01F6/06 510
H01F6/06 150
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020049169
(22)【出願日】2020-03-19
(65)【公開番号】P2021150499
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】橋本 篤
【審査官】古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-108703(JP,A)
【文献】特開平9-167704(JP,A)
【文献】特開2005-210015(JP,A)
【文献】実開昭63-157903(JP,U)
【文献】特開2015-216304(JP,A)
【文献】実開昭62-4161(JP,U)
【文献】特開平5-114754(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 6/00- 6/06
H10N 60/00-69/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流リード部と、
前記電流リード部を収容する筒状ケースであって、軸方向に伸縮可能な開閉構造と、前記開閉構造が取り外し可能に取り付けられた取付部材と、を備える筒状ケースと、を備え、
前記筒状ケースの外から前記電流リード部へのアクセスを可能にする作業空間が、前記開閉構造が前記取付部材から取り外され軸方向に収縮されるとき前記取付部材と前記開閉構造との間に形成されることを特徴とする電流リード装置。
【請求項2】
前記開閉構造は、真空ベローズを備えることを特徴とする請求項1に記載の電流リード装置。
【請求項3】
前記電流リード部は、前記取付部材に支持されたフィードスルー部と、前記フィードスルー部に接続された金属電流リードとを備え、前記作業空間は、前記筒状ケースの外から前記フィードスルー部と前記金属電流リードとの接続部へのアクセスを可能にすることを特徴とする請求項1または2に記載の電流リード装置。
【請求項4】
前記開閉構造を軸方向に支持するように、前記筒状ケースの外側に配置され、前記筒状ケースに取り外し可能に取り付けられた補強材をさらに備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電流リード装置。
【請求項5】
超電導コイルと、
前記超電導コイルに接続された電流リード部と、
前記超電導コイルを収容するクライオスタットと、
前記クライオスタットの一部を形成し、前記電流リード部を収容する筒状ケースであって、軸方向に伸縮可能な開閉構造と、前記開閉構造が取り外し可能に取り付けられた取付部材と、を備える筒状ケースと、を備え、
前記筒状ケースの外から前記電流リード部へのアクセスを可能にする作業空間が、前記開閉構造が前記取付部材から取り外され軸方向に収縮されるとき前記取付部材と前記開閉構造との間に形成されることを特徴とする超電導コイル装置。
【請求項6】
電流リード装置のメンテナンス方法であって、前記電流リード装置は、電流リード部と、前記電流リード部を収容する筒状ケースと、を備え、前記方法は、
前記筒状ケースの外から前記電流リード部へのアクセスを可能にする作業空間を形成する工程と、
前記作業空間を通じて前記電流リード部にメンテナンスをする工程と、を備え、
前記筒状ケースは、軸方向に伸縮可能な開閉構造と、前記開閉構造が取り外し可能に取り付けられた取付部材と、を備え、
前記作業空間は、前記開閉構造を前記取付部材から取り外して軸方向に収縮させることによって、前記取付部材と前記開閉構造との間に形成されることを特徴とするメンテナンス方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流リード装置、超電導コイル装置、およびメンテナンス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超電導コイルは、電流リードによって外部電源装置に接続される。超電導コイルおよび電流リードは、クライオスタットに収容される。超電導コイルは、極低温に冷却され使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-131079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
超電導コイルを極低温に冷却するには、そのサイズによるが、相応の時間がかかる。たとえば、超電導サイクロトロンに搭載されるような大型の超電導コイルについては、室温から目標の極低温に冷却するまでに半月程度の期間を要しうる。もし、超電導コイルの運用中に電流リードが故障した場合、超電導コイルの運用を止め、極低温から室温に戻し、故障した電流リードを交換し、超電導コイルを再冷却することになる。このような一連の作業には長期間を要するものと想定され、その期間は超電導コイルを運用できないダウンタイムとなる。
【0005】
本発明のある態様の例示的な目的のひとつは、電流リードの交換作業を容易にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によると、電流リード装置は、電流リード部と、電流リード部を収容する筒状ケースであって、軸方向に伸縮可能な開閉構造と、開閉構造が取り外し可能に取り付けられた取付部材と、を備える筒状ケースと、を備える。筒状ケースの外から電流リード部へのアクセスを可能にする作業空間が、開閉構造が取付部材から取り外され軸方向に収縮されるとき取付部材と開閉構造との間に形成される。
【0007】
本発明のある態様によると、超電導コイル装置は、超電導コイルと、超電導コイルに接続された電流リード部と、超電導コイルを収容するクライオスタットと、クライオスタットの一部を形成し、電流リード部を収容する筒状ケースであって、軸方向に伸縮可能な開閉構造と、開閉構造が取り外し可能に取り付けられた取付部材と、を備える筒状ケースと、を備える。筒状ケースの外から電流リード部へのアクセスを可能にする作業空間が、開閉構造が取付部材から取り外され軸方向に収縮されるとき取付部材と開閉構造との間に形成される。
【0008】
本発明のある態様によると、電流リード装置のメンテナンス方法が提供される。電流リード装置は、電流リード部と、電流リード部を収容する筒状ケースと、を備える。メンテナンス方法は、筒状ケースの外から電流リード部へのアクセスを可能にする作業空間を形成する工程と、作業空間を通じて電流リード部にメンテナンスをする工程と、を備える。筒状ケースは、軸方向に伸縮可能な開閉構造と、開閉構造が取り外し可能に取り付けられた取付部材と、を備える。作業空間は、開閉構造を取付部材から取り外して軸方向に収縮させることによって、取付部材と開閉構造との間に形成される。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電流リードの交換作業を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態に係る超電導コイル装置を概略的に示す側面図である。
図2】実施の形態に係る電流リード装置を概略的に示す図である。
図3】実施の形態に係る電流リード装置のメンテナンス方法を示す概略図である。
図4】実施の形態に係る電流リード装置のメンテナンス方法を示す概略図である。
図5】実施の形態に係る電流リード装置のメンテナンス方法を示す概略図である。
図6】実施の形態に係る電流リード装置のメンテナンス方法を示す概略図である。
図7】実施の形態に係る電流リード装置のメンテナンス方法に使用されるジグを示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。説明および図面において同一または同等の構成要素、部材、処理には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。図示される各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。実施の形態は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0013】
図1は、実施の形態に係る超電導コイル装置10を概略的に示す側面図である。超電導コイル装置10は、超電導コイル12を備え、たとえばサイクロトロンなどの加速器、またはその他の高磁場利用機器の磁場源として高磁場利用機器に搭載され、その機器に必要とされる高磁場を発生させることができる。
【0014】
超電導コイル12は、たとえば二段式のギフォード・マクマホン(Gifford-McMahon;GM)冷凍機またはその他の形式の極低温冷凍機(図示せず)と熱的に結合され、超電導転移温度以下の極低温に冷却された状態で使用される。この実施形態では、超電導コイル装置10は、超電導コイル12を液体ヘリウムなどの極低温液体冷媒に浸漬するのではなく、極低温冷凍機によって直接冷却する、いわゆる伝導冷却式として構成される。
【0015】
超電導コイル装置10は、超電導コイル12に接続された電流リード部14と、超電導コイル12を収容するクライオスタット16と、電流リード部14を収容する筒状ケース18と、電源装置20と、を備える。
【0016】
電流リード部14は、超電導コイル12を電源装置20に接続するために超電導コイル12に設置されている。電流リード部14は、少なくとも正極側と負極側で一対に設けられる。電流リード部14の先端には、フィードスルー部15、すなわちクライオスタット16内に電流を導入するための気密端子が設けられている。図示される例においては、電流リード部14は、超電導コイル12の上面に設置されているが、この配置には限定されない。電源装置20から電流リード部14を通じて超電導コイル12に励磁電流が供給される。それにより、超電導コイル装置10は、強力な磁場を発生することができる。
【0017】
クライオスタット16は、超電導コイル12を超電導状態とするのに適する極低温真空環境を提供する断熱真空容器である。一例として、超電導コイル12は、円環状の形状を有し、クライオスタット16は、超電導コイル12を囲むドーナツ状の形状を有する。筒状ケース18は、超電導コイル12を収容するクライオスタット16の本体部分から延出する。この例では、正極側と負極側の一対の電流リード部14をそれぞれ収容するために2本の筒状ケース18がクライオスタット16の上面に設置されている。クライオスタット16と筒状ケース18は、周囲圧力(たとえば大気圧)に耐えるように、例えばステンレス鋼などの金属材料またはその他の適する高強度材料で形成される。
【0018】
筒状ケース18は、クライオスタット16の一部を形成し、円筒状の形状をもつ外圧容器として設計される。筒状ケース18は、軸方向に伸縮可能な開閉構造たとえば真空ベローズ22と、支持フランジ24と、接続筒部26とを備える。真空ベローズ22は、たとえば溶接ベローズであるが、真空保持に適する他の形式のベローズでもよい。支持フランジ24は、筒状ケース18のいわば蓋として真空ベローズ22の一端に取り付けられた真空フランジであり、電流リード部14のフィードスルー部15を支持する。フィードスルー部15が支持フランジ24を貫通し、支持フランジ24に気密に接合されている。接続筒部26は、真空ベローズ22の他端に取り付けられ、真空ベローズ22をクライオスタット16の本体部分に接続する。接続筒部26は、真空ベローズ22とは異なり、伸縮しない固定の形状を有する。
【0019】
後述するように、筒状ケース18の外から電流リード部14へのアクセスを可能にする作業空間50が、真空ベローズ22が支持フランジ24から取り外され軸方向に収縮されるとき支持フランジ24と真空ベローズ22との間に形成される(図3参照)。
【0020】
図2は、実施の形態に係る電流リード装置を概略的に示す図である。図2を参照して、図1に示される電流リード部14と筒状ケース18の例示的な構成をさらに述べる。
【0021】
電流リード部14は、フィードスルー部15から超電導コイル12への電流経路を形成する。電流リード部14は、フィードスルー部15に接続された金属電流リード28と、金属電流リード28に接続された超電導電流リード30とを備える。超電導電流リード30は超電導コイル12に接続される。
【0022】
より詳しくは、フィードスルー部15と金属電流リード28は、第1接続部32で電気的に接続される。また、金属電流リード28と超電導電流リード30は、第2接続部34で電気的に接続される。超電導電流リード30は、第3接続部36で低温板ばね38に接続される。低温板ばね38は、超電導コイル12のコイル端子40に接続される。金属電流リード28と低温板ばね38は、蛇行状に湾曲しており、極低温冷却に伴う電流リード部14の熱収縮を吸収することができる。
【0023】
超電導電流リード30は、銅酸化物超電導体またはその他の高温超電導材料で形成されうる。あるいは、超電導電流リード30は、NbTiに代表される低温超電導材料で形成されてもよい。
【0024】
超電導電流リード30を構造的に支持するために、超電導電流リード30と平行に延びる支柱42が設けられている。支柱42は、例えばステンレス鋼などの金属材料またはその他の適する高強度材料で形成されたパイプであり、支柱42の両端はそれぞれ、第2接続部34と第3接続部36に固定されている。
【0025】
電流リード部14における超電導電流リード30以外の電流経路、すなわち、フィードスルー部15、金属電流リード28、各接続部(32、34、36)、低温板ばね38は、例えば無酸素銅などの純銅に代表される導電性に優れる金属材料で形成される。
【0026】
第1接続部32は、フィードスルー部15の一部であり、支持フランジ24から真空ベローズ22内へと延出する。第1接続部32は、金属電流リード28の一端と第1ボルト44で締結される。第2接続部34は、金属電流リード28の他端と第2ボルト46で締結される。第3接続部36は、低温板ばね38と第3ボルト48で締結される。各接続部(32、34、36)は、ボルトによる締結を可能とするようブロック形状に形成されている。
【0027】
真空ベローズ22は、支持フランジ24に取り外し可能に取り付けられている。真空ベローズ22は、伸縮部22aと、伸縮部22aの両端それぞれに設けられた第1取付フランジ22bおよび第2取付フランジ22cとを有する。第1取付フランジ22bが支持フランジ24に取り付けられ、第2取付フランジ22cが接続筒部26の一端のフランジ部に取り付けられている。接続筒部26の他端は、クライオスタット16に取り付けられている。
【0028】
真空ベローズ22と接続筒部26は、内部に電流リード部14を収容するように電流リード部14に沿って軸方向に延在する。真空ベローズ22と接続筒部26は、同軸に互いに隣接して接続されている。真空ベローズ22の中には、第1接続部32、金属電流リード28、第2接続部34が収容され、接続筒部26の中には、超電導電流リード30、支柱42、第3接続部36が収容されている。
【0029】
また、真空ベローズ22を軸方向に支持するように、筒状ケース18の外側に配置された補強材49が設けられている。補強材49は、筒状ケース18に取り外し可能に取り付けられている。補強材49は、棒状の部材、たとえば長ボルトである。対応するナットを用いて、補強材49の一端で支持フランジ24および真空ベローズ22の第1取付フランジ22bが固定され、補強材49の他端で真空ベローズ22の第2取付フランジ22cおよび接続筒部26が固定される。補強材49は、真空ベローズ22の伸縮部22aに沿って軸方向に延び、伸展状態の伸縮部22aを支持し、その形状を保持することができる。
【0030】
クライオスタット16の周囲環境から超電導コイル12に侵入しうる輻射熱を低減するために、超電導コイル12を囲む輻射熱シールド17がクライオスタット16内に設けられている。また、輻射熱シールド17は、筒状ケース18の接続筒部26内に延出する筒状シールド17aを有し、超電導電流リード30が筒状シールド17a内に配置される。筒状シールド17aは、第2接続部34に電気的に絶縁された状態で熱的に結合されるように固定される。
【0031】
なお、図2において図示を省略するが、筒状ケース18内にはいくつかの絶縁性のパイプが電流リード部14を囲むように配置され、電流リード部14が周囲の金属部品から絶縁される。こうした絶縁パイプは、たとえば、真空ベローズ22の伸縮部22aの内周面に沿って設けられる。また、別の絶縁パイプが、筒状シールド17aの内周面および外周面に沿って設けられる。
【0032】
図3から図6は、実施の形態に係る電流リード装置のメンテナンス方法を示す概略図である。図7は、実施の形態に係る電流リード装置のメンテナンス方法に使用されるジグを示す概略斜視図である。このメンテナンス方法は、たとえば、電流リード部14に故障が生じたとき行われる。よって、メンテナンス方法は、電流リード部14の取り外し工程と、新たな電流リード部14の取り付け工程とを含む。それにより、電流リード部14が交換される。
【0033】
まず、電流リード部14の取り外し工程を説明する。取り外し工程は、図2に示される初期状態から開始される。補強材49が筒状ケース18から取り外される。真空ベローズ22の伸縮部22aは、人手で押さえられる程度のばね定数を有するので、真空ベローズ22を支持フランジ24から取り外して軸方向に収縮させることができる。ここで、真空ベローズ22を収縮させる長さは、第1接続部32の軸方向長さより若干長い。
【0034】
そうすると、図3に示されるように、支持フランジ24と真空ベローズ22との間に作業空間50が形成される。作業者は、作業空間50を通じて、筒状ケース18の外から電流リード部14にアクセスすることができる。より具体的には、作業空間50は、筒状ケース18の外からフィードスルー部15と金属電流リード28との第1接続部32へのアクセスを可能にする。作業空間50を通じて電流リード部14にメンテナンスをすることができる。
【0035】
真空ベローズ22の収縮状態を保持するために、ジグ52が使用されてもよい。ジグ52は、押さえ金具52a、支持金具52b、支持材52cを備える。図3および図7に示されるように、押さえ金具52aは、L字状に形成され、その一面が真空ベローズ22の第1取付フランジ22bを押さえるために使用され、これと直角なもう一面が支持金具52bの軸方向中間部にボルトで固定される。第1取付フランジ22bを押さえる押さえ金具52aの面には、支持材52cを受け入れるスリットが形成されている。支持金具52bは、C字状または片側を開いた矩形状に形成され、一端が支持フランジ24に固定され、他端が支持材52cに固定される。支持金具52bの両端にも、押さえ金具52aと同様に、支持材52cを受け入れるスリットが形成されている。支持材52cは、支持フランジ24から軸方向に延び、第1取付フランジ22bを通って第2取付フランジ22cまで延びている。上述の補強材49が支持材52cとして流用されてもよい。このようにして、支持フランジ24と押さえ金具52aの間に作業空間50が形成される。
【0036】
図3に示されるように、作業者は、作業空間50を通じて第1接続部32にアクセスし、第1接続部32から第1ボルト44を取り外すことができる。これにより、フィードスルー部15と金属電流リード28との固定が解除される。
【0037】
次に、図4に示されるように、真空ベローズ22が伸展状態に戻される。そのために、押さえ金具52aが支持金具52bから取り外され、真空ベローズ22の伸縮部22aが軸方向に伸長され、作業空間50は閉じられる。真空ベローズ22の第2取付フランジ22cと接続筒部26を接続するボルトが取り外される。
【0038】
そして、図5に示されるように、真空ベローズ22が接続筒部26から取り外される。このとき、支持フランジ24はジグ52によって真空ベローズ22に組み付けられているので、真空ベローズ22とともに支持フランジ24も取り外される。第1接続部32のボルト固定は上述のように既に解除されているので、フィードスルー部15も支持フランジ24とともに、金属電流リード28から取り外すことができる。
【0039】
さらに、図6に示されるように、金属電流リード28が第2接続部34から取り外される。接続筒部26がクライオスタット16から取り外され、筒状シールド17aが第2接続部34と輻射熱シールド17から取り外される。最後に、超電導電流リード30、第2接続部34、第3接続部36、支柱42および低温板ばね38からなる組立体が超電導コイル12から取り外される。このようにして、電流リード部14および筒状ケース18は、分解される。
【0040】
電流リード部14の取り付け工程は、取り外し工程とは逆の手順により行われる。新品の電流リード部14が用意され、上述の手順を逆にたどることによって、電流リード部14および筒状ケース18を再び組み立てることができる。すなわち、まず、図6に示されるように、超電導電流リード30および低温板ばね38を含む組立体が超電導コイル12にボルトで取り付けられる。図5に示されるように、筒状シールド17aが第2接続部34と輻射熱シールド17それぞれにボルトで取り付けられ、それを囲むように接続筒部26がクライオスタット16にボルトで取り付けられる。第2接続部34には第2ボルト46で金属電流リード28が取り付けられる。
【0041】
次に、図4に示されるように、支持フランジ24と真空ベローズ22をジグ52によって組み合わせた組立体が、接続筒部26にボルトで取り付けられる。このとき、フィードスルー部15と金属電流リード28はまだ固定されていない。図3に示されるように、真空ベローズ22を軸方向に収縮させることにより支持フランジ24と真空ベローズ22との間に作業空間50が形成される。押さえ金具52aで支持フランジ24が押さえられ、真空ベローズ22は収縮状態に保持される。
【0042】
作業者は、作業空間50を通じて、筒状ケース18の外から第1接続部32にアクセスし、フィードスルー部15と金属電流リード28を第1ボルト44で固定することができる。そして、ジグ52は取り外され、図2に示されるように、真空ベローズ22が伸展状態に戻される。さらに、補強材49を用いて、支持フランジ24、真空ベローズ22、接続筒部26が互いに固定される。こうして、電流リード部14および筒状ケース18の組立は完成する。
【0043】
比較のために、筒状ケース18の全体が固定形状の筒である場合を考える。この固定筒に支持フランジ24をフィードスルー部15とともに配置したとすると、固定筒は支持フランジ24で蓋をした状態となる。フィードスルー部15と金属電流リード28との間の第1接続部32は固定筒の中に閉じ込められているから、第1接続部32の締結作業をすることができない。
【0044】
開閉できる窓を固定筒の側面の一部に設ける設計もありうるが、その場合、窓の存在により固定筒がもはや軸対称の形状ではなくなる。そのような非軸対称の形状では外圧容器としての設計が容易でない。とくに、超電導コイル装置10の小型化を指向する場合、固定筒の径も小さくなるから、窓構造を設置する設計は困難さが増す。
【0045】
これに対して、実施形態によれば、真空ベローズ22のように軸方向に伸縮可能な開閉構造を利用して作業空間50を形成することができる。作業者は、作業空間50を通じて筒状ケース18の外から電流リード部14にアクセスし、電流リード部14の交換など、所望のメンテナンスをすることができる。また、真空ベローズ22を含む筒状ケース18は、円筒状の軸対称構造を有するので、外圧容器としての設計もしやすい。
【0046】
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上記実施形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。ある実施の形態に関連して説明した種々の特徴は、他の実施の形態にも適用可能である。組合せによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態それぞれの効果をあわせもつ。
【0047】
上述の実施の形態では、真空ベローズ22が支持フランジ24に取り外し可能に取り付けられているが、真空ベローズ22は、他の取付部材に取り外し可能に取り付けられてもよい。たとえば、真空ベローズ22が接続筒部26に取り外し可能に取り付けられ、筒状ケース18の外から電流リード部14へのアクセスを可能にする作業空間50が、真空ベローズ22が接続筒部26から取り外され軸方向に収縮されるとき接続筒部26と真空ベローズ22との間に形成されてもよい。
【0048】
上述の実施の形態では、真空ベローズ22が支持フランジ24と接続筒部26の間に設けられ、これらを接続するが、これに代えて、支持フランジ24に固定筒が接続され、この固定筒とクライオスタット16が真空ベローズ22により接続されてもよい。この場合、真空ベローズ22が固定筒に取り外し可能に取り付けられ、筒状ケース18の外から電流リード部14へのアクセスを可能にする作業空間50が、真空ベローズ22が固定筒から取り外され軸方向に収縮されるとき固定筒と真空ベローズ22との間に形成されてもよい。
【0049】
上述の実施の形態では、真空ベローズ22が軸方向に筒状ケース18の一部分として設けられているが、真空ベローズ22は、筒状ケース18の軸方向全長にわたって設けられてもよい。すなわち、支持フランジ24が真空ベローズ22によってクライオスタット16に接続されてもよい。
【0050】
上述の実施の形態では、正極側の電流リード部14と負極側の電流リード部14がそれぞれ別個の筒状ケース18に収容されているが、これら2つの電流リード部14が1つの筒状ケース18に収容される構成も可能である。
【0051】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用の一側面を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0052】
10 超電導コイル装置、 12 超電導コイル、 14 電流リード部、 15 フィードスルー部、 16 クライオスタット、 18 筒状ケース、 22 真空ベローズ、 28 金属電流リード、 32 第1接続部、 49 補強材、 50 作業空間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7