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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-02
(45)【発行日】2023-08-10
(54)【発明の名称】扉の取っ手構造および冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
   F25D 23/02 20060101AFI20230803BHJP
【FI】
F25D23/02 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019023236
(22)【出願日】2019-02-13
(65)【公開番号】P2020133919
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148275
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100136319
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 宏修
(74)【代理人】
【識別番号】100142745
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 世子
(74)【代理人】
【識別番号】100143498
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 健
(72)【発明者】
【氏名】中村 英介
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 勇也
(72)【発明者】
【氏名】森田 洋平
【審査官】笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-125122(JP,A)
【文献】特開2002-090044(JP,A)
【文献】国際公開第2017/217019(WO,A1)
【文献】特開平06-159916(JP,A)
【文献】特開2014-240735(JP,A)
【文献】特開2000-081277(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 23/02
E05D 3/02
E05D 15/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右何れの側からも開閉可能な扉の取っ手構造であって、
前記扉は、その左右何れか一方の端部を開くときには、前記扉を該一方の外方向側へスライド移動することで前記扉の他方の端部が回動自在に軸支されるように構成されており、
前記扉の左右両端部にそれぞれ配置されている把持部を有しており、
前記把持部は、前記扉の前面側に形成されている開口部を有し、前記扉の前方側から前記開口部内に手を掛けるように構成されており、
前記把持部は、前記扉の後方側から前方側へ向かって、前記扉の中央部の方へ傾斜するとともに、前記扉の後方側に面する傾斜面を有しており、
前記傾斜面は、前記扉に対して可動しないように前記開口部の前記外方向側に固定されている、取っ手構造。
【請求項2】
前記傾斜面は、略板状の部材で形成されており、
前記略板状の部材の厚さは、前記扉の前方側よりも後方側の方が少なくとも部分的に厚くなっている、請求項1に記載の取っ手構造。
【請求項3】
前記傾斜面は、前記開口部の内側の面によって形成されており、
前記傾斜面に対向する面は、前記扉の前面に対して90度よりも大きい角度を有して傾斜している、請求項1または2に記載の取っ手構造。
【請求項4】
本体部と、
前記本体部に取り付けられ、左右何れの側からも開閉可能な扉と
を備え、
前記扉は、請求項1から3の何れか1項に記載の取っ手構造を有している、冷蔵庫。
【請求項5】
冷蔵庫の扉に着脱可能に構成されている、請求項1または2に記載の取っ手構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右何れの側からも開閉することのできる扉の取っ手構造、およびこの取っ手構造を有する扉を備えている冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
冷蔵庫の扉の開閉機構として、左右どちらからも開閉可能な構造を有するものがある。例えば、特許文献1には、扉側又は扉が取り付けられる本体側の左右両端部に扉の中心線に関して対称に設けられた一対のスライドカム部材と、前記本体側又は扉側で前記各スライドカム部材に対応する部位に対称に設けられた一対のロックカム部材と、該ロックカム部材に設けられた軸孔を貫通する状態で取り付けられたヒンジピンとを備えた左右開きの扉開閉機構が開示されている。前記スライドカム部材は、前記ヒンジピンと水平方向で係脱自在な第1溝カムと、第1溝カムと連続し該第1溝カムに案内されたヒンジピンとの係止を扉閉止時に行なう第1係止位置から更に扉開成時にスライドカム部材の回転軸となる第2係止位置まで移動可能な第2溝カムとを有するとともに、前記第2溝カムの外周に設けられた第1カム突起を具備しており、前記ロックカム部材は第1係止位置で前記第1カム突起と係合関係になる第2カム突起を具備している。
【0003】
特許文献1の扉開閉機構は、扉が右側から開き始めた場合、扉が開放側(例えば、右側)にスライドすることにより、軸支側(例えば、左側)のヒンジピンが第2溝カムをスライドして第2係止位置へ移動することによって、左側の回転軸から扉が外れないような位置関係に構成されている。これにより、使用者が扉を手前に引いても扉が本体から脱落しないような構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3479410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような扉開閉機構では、使用者が扉を開けようとする際には、開けたい側へ扉をスライドさせる必要がある。しかし、使用者は、扉を開ける際に扉を前方に引っ張ることが自然であり、左右にスライドさせる動作をしにくい傾向にある。
【0006】
そこで、本発明では、左右何れの側からも開閉可能な扉において、使用者がより扉を開けやすい把持部の構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面にかかる扉の取っ手構造は、左右何れの側からも開閉可能な扉の取っ手構造である。この取っ手構造において、前記扉の左右両端部にそれぞれ配置されている把持部を有しており、前記把持部は、前記扉の前方側から手を掛けるように構成されており、前記把持部は、前記扉の後方側から前方側へ向かって、前記扉の中央部の方へ傾斜する傾斜面を有している。
【0008】
上記の本発明の一局面にかかる扉の取っ手構造において、前記傾斜面は、略板状の部材で形成されており、前記略板状の部材の厚さは、前記扉の前方側よりも後方側の方が少なくとも部分的に厚くなっていてもよい。
【0009】
上記の本発明の一局面にかかる扉の取っ手構造において、前記把持部は、前記扉の前面側に形成されている開口部を有していてもよい。そして、前記傾斜面は、前記開口部の内側の面によって形成されており、前記傾斜面に対向する面は、前記扉の前面に対して90度よりも大きい角度を有して傾斜していてもよい。
【0010】
本発明のもう一つの局面にかかる冷蔵庫は、本体部と、前記本体部に取り付けられ、左右何れの側からも開閉可能な扉とを備えている。そして、前記扉は、上記の本発明の一局面にかかる取っ手構造を有している。
【0011】
上記の本発明の一局面にかかる扉の取っ手構造は、冷蔵庫の扉に着脱可能に構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一局面にかかる扉の取っ手構造は、上述したような傾斜面を有する把持部が設けられていることで、使用者が扉を開ける際の自然な動作によって、扉を開けたい側に扉をスライドさせることができる。したがって、本発明の一局面によれば、左右何れの側からも開閉可能な扉において、使用者がより扉を開けやすい把持部の構成を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る冷蔵庫の外観構成を示す正面図である。
図2A図1に示す冷蔵庫に備えられた冷蔵室扉部分のA-A線部分の構成を示す断面図である。図2Aから図2Cでは、左側から冷蔵室扉が開けられる様子を示す。
図2B図1に示す冷蔵庫に備えられた冷蔵室扉部分のA-A線部分の構成を示す断面図である。図2Aから図2Cでは、左側から冷蔵室扉が開けられる様子を示す。
図2C図1に示す冷蔵庫に備えられた冷蔵室扉部分のA-A線部分の構成を示す断面図である。図2Aから図2Cでは、左側から冷蔵室扉が開けられる様子を示す。
図3】冷蔵室扉が開けられるときのカム機構の動作を示す模式図である。
図4】冷蔵室扉が開けられるときのカム機構の動作を示す模式図である。
図5】冷蔵室扉が開けられるときのカム機構の動作を示す模式図である。
図6】冷蔵室扉が開けられるときのカム機構の動作を示す模式図である。
図7】第1の実施形態にかかる冷蔵室扉の外観構成を示す斜視図である。
図8】第1の実施形態にかかる冷蔵室扉の外観構成を示す正面図である。
図9】第1の実施形態にかかる冷蔵室扉の把持部の構成を示す断面図である。
図10図9に示す冷蔵室扉の左側の把持部周辺を拡大して示す断面図である。
図11】第2の実施形態にかかる冷蔵室扉の把持部の構成を示す断面図である。
図12】第3の実施形態にかかる冷蔵室扉の左側の把持部の構成を示す断面図である。
図13】第4の実施形態にかかる冷蔵室扉の把持部の構成を示す断面図である。
図14】第5の実施形態にかかる冷蔵庫に備えられた冷蔵室扉と、扉に取り付けられる取っ手部材の外観構成を示す斜視図である。
図15】第5の実施形態にかかる冷蔵庫の外観構成を示す正面図である。この図では、冷蔵庫から取っ手部材が取り外された状態を示す。
図16】(a)は、第5の実施形態にかかる冷蔵庫に備えられた冷蔵室扉の外観構成を示す正面図である。(b)は、(a)に示す冷蔵室扉のA-A線部分の構成を示す断面図である。
図17】(a)は、第6の実施形態にかかる冷蔵庫に備えられた冷蔵室扉の外観構成を示す正面図である。(b)は、(a)に示す冷蔵室扉のA-A線部分の構成を示す断面図である。
図18図17(a)に示す冷蔵室扉に取り付けられている取っ手部材を示す斜視図である。
図19】(a)は、第7の実施形態にかかる冷蔵庫に備えられた冷蔵室扉の外観構成を示す正面図である。(b)は、(a)に示す冷蔵室扉のA-A線部分の構成を示す断面図である。
図20図19(a)に示す冷蔵室扉に取り付けられている取っ手部材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、本発明の各実施形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0015】
〔第1の実施形態〕
(冷蔵庫の全体構成)
本実施形態では、左右両開きの冷蔵室扉を備えている冷蔵庫301を例に挙げて説明する。冷蔵庫301は、扉開閉機構10を備えている。図1には、本実施形態にかかる冷蔵庫301の外観を示す。冷蔵庫301は、主として、本体部2と、冷蔵室扉311などの各種扉とで構成されている。本体部2は、断熱箱体でその外形が形成されている。冷蔵庫301の上段には冷蔵室が配置されている。冷蔵室の正面の開口部には、冷蔵室扉311が取り付けられている。
【0016】
また、冷蔵庫301には、冷蔵室以外に、第2の冷蔵室(野菜室)、冷凍室、第2の冷凍室、および製氷室などが備えられている。中段の第2の冷蔵室(野菜室)には、引き出し式の冷蔵室扉13が設けられている。下段の第1の冷凍室には、引き出し式の冷凍室扉14が設けられている。また、中段の製氷室および第2の冷凍室には、引き出し式の製氷室扉15または冷凍室扉16がそれぞれ設けられている。
【0017】
なお、冷蔵庫301における各貯蔵室の構成や配置は、上記のものに限定はされない。各貯蔵室の構成および配置は、冷蔵庫の容量、用途などに応じて適宜変更することができる。
【0018】
本実施形態では、扉が設けられている面を冷蔵庫301の前面(正面)とする。そして、前面を基準にして、冷蔵庫301を通常の状態で設置した場合に存在する位置に基づいて、冷蔵庫301の本体部2の各面を、上面、側面、背面、及び底面とする。また、冷蔵庫301を正面側から見た状態で、左に位置する側を冷蔵庫301(または冷蔵室扉311)の左側と呼び、右に位置する側を冷蔵庫301(または冷蔵室扉311)の右側と呼ぶ。
【0019】
冷蔵室扉311は、左右何れの端部からも開閉することのできる両開き式の扉である。そのため、冷蔵室扉311の左右両側の端部には、冷蔵室扉311を開閉する際の取っ手構造として機能する把持部がそれぞれ設けられている。具体的には、左側の把持部334aは、冷蔵室扉311の左側端部11aに設けられている。また、右側の把持部334bは、冷蔵室扉311の右側端部11bに設けられている。使用者が冷蔵室扉311を左側から開ける際には、把持部334aに手を掛けて、冷蔵室扉311の左側端部11aを開放する。同様に、使用者が冷蔵室扉311を右側から開ける際には、把持部334bに手を掛けて、冷蔵室扉311の右側端部11bを開放する。
【0020】
また、冷蔵室扉311には、タッチセンサ(接触検知部)91(具体的には、左側タッチセンサ91aおよび右側タッチセンサ91b)がそれぞれ設けられている。左側タッチセンサ91aは、冷蔵室扉311の前面部11cの左側の端部近傍に配置されている。右側タッチセンサ91bは、冷蔵室扉311の前面部11cの右側の端部近傍に配置されている。タッチセンサ91は、人体等が接触したことを検知する。そして、左側タッチセンサ91aに使用者の手などが触れると、冷蔵室扉311が左側端部11aから開くように制御される。また、右側タッチセンサ91bに使用者の手などが触れると、冷蔵室扉311が右側端部11bから開くように制御される。
【0021】
冷蔵室扉311の前面部11cの左側には、表示装置50が設置されている。表示装置50は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどで構成することができる。表示装置50には、例えば、冷蔵庫の運転情報及び制御情報、庫内在庫情報、カレンダ情報、レシピ情報、伝言情報などを表示させることができる。
【0022】
(扉開閉機構について)
続いて、冷蔵庫301に取り付けられた冷蔵室扉311の扉開閉機構10について説明する。図2Aから図2Cには、本体部2(具体的には、冷蔵室の開口部)に取り付けられた冷蔵室扉311が左側から開けられるときの各部材の動作を示す。これらの図は、冷蔵室扉311の底面部(すなわち、図1のA-A線部分)に設けられたカム機構20(具体的には、左側のカム機構20aおよび右側のカム機構20b)を示す図である。なお、カム機構20aおよび20bは、例えば、特許文献1、または他の特許文献(特許第3761410号公報)などに開示された従来公知のカム機構の構成を適用することができる。
【0023】
カム機構20aおよび20bは、冷蔵室扉311の左右両側に対称に設けられており、冷蔵室扉311と本体部2との係合および離脱を行う。カム機構20aおよび20bは、冷蔵室扉311側に設けられたスライドカム部材と、本体部2側に設けられたロックカム部材とを有している。なお、別の態様では、本体部2側にスライドカム部材が設けられ、冷蔵室扉311側にロックカム部材が設けられていてもよい。
【0024】
スライドカム部材は、冷蔵室扉311の底部の左右両端部にそれぞれ設けられている。スライドカム部材は、第1溝カム21、第2溝カム22、およびスライド外カム25などで構成されている。これらの各部材は、冷蔵室扉311の中心線Oに関して対称に設けられている。
【0025】
第1溝カム21および第2溝カム22は、冷蔵室扉311の底部の左右両側の端部付近に配置されている。第1溝カム21および第2溝カム22は、本体部2側に設けられたヒンジピン38を相対的に摺動案内する。第1溝カム21および第2溝カム22は、略L字型に連続した凹形状を有している。
【0026】
スライド外カム25は、第1溝カム21および第2溝カム22のやや内側に形成された溝部27内に配置されている。スライド外カム25は、本体部2側に設けられたロック外カム37に対応する位置に配置されており、扉開閉動作時のロック外カム37の移動を規制する。
【0027】
また、冷蔵室扉311には、開閉動作を補助するための部材として、ガイドローラ28が備えられている。ガイドローラ28は、冷蔵室扉311の中心線Oに関して対称に設けられている。各ガイドローラ28は、スライド外カム25のやや内側に配置されている。
【0028】
ガイドローラ28は、上段の冷蔵室と中段の第2の冷蔵室(野菜室)などとを仕切る仕切壁の前端に配置されたヒンジアングル3上を転動し、冷蔵室扉311の開閉動作を補助する。また、ヒンジアングル3には後方に向かって下方に傾斜する傾斜面が左右にわたって設けられており、ガイドローラ28がこの傾斜面を下ることで冷蔵室扉311が閉鎖方向に付勢される自閉機構(重力を利用した自閉機構)を成している。
【0029】
ロックカム部材は、本体部2側に設けられている。ロックカム部材は、各スライドカム部材に対応する位置にそれぞれ配置されている。本実施形態では、ロックカム部材は、ヒンジアングル3上に設けられている。ロックカム部材は、ヒンジピン38、ロック外カム37、およびリブ39などで構成されている。
【0030】
ヒンジピン38は、冷蔵室扉311の枢支軸となる。リブ39は、ヒンジピン38と同心の円弧状の部材である。ロック外カム37は、ヒンジピン38から所定距離離れて配置され、冷蔵室扉311側のスライド外カム25と摺動して冷蔵室扉311を案内する。
【0031】
以上のような構成を有するスライドカム部材とロックカム部材とは互いに係合して、冷蔵室扉311の開閉を案内するカム機構20を構成する。
【0032】
続いて、図2Aから図2C、並びに図3から図6を参照しながら、冷蔵室扉311が開けられる際のカム機構20の動作を説明する。図2Aから図2Cには、冷蔵室扉311が左側端部11aから開けられる様子を順に示す。また、図3から図6には、冷蔵室扉311が左側端部11aから開けられる際のカム機構20aおよび20bの動作を順に示す。
【0033】
冷蔵室扉311が閉鎖状態のときには、図2Aおよび図3に示すように、左右のカム機構20aおよび20bの第2溝カム22の内側端部付近(第1溝カム21との境界付近)に、ヒンジピン38が位置する。このとき、左右のカム機構20aおよび20bと各ヒンジピン38との位置関係はほぼ対称な状態となっている。この状態を、第1係止位置とする。第1溝カム21は冷蔵庫301の後方へいくほど冷蔵室扉311の中央側に傾斜しているため、冷蔵室扉311の両側を引くことによる脱落が防止される。
【0034】
続いて、使用者が、冷蔵室扉311の左側端部11aの把持部334aに手をかけて力を掛けると、把持部334aには外方向(この場合は、左方向)への応力がかかる。このとき、第2溝カム22によりヒンジピン38が軌道規制されるため、左側のカム機構20aでは、ヒンジピン38が第1溝カム21へと相対的に案内されるとともに、右側のカム機構20bでは、ヒンジピン38が第2溝カム22によって相対的に端部方向(この場合は、右方向)に案内される。また、ロック外カム37とスライド外カム25とが摺動する(図2Bおよび図4参照)。これにより、冷蔵室扉311は左方向にスライド移動する。
【0035】
さらに把持部334aを引くと、左側のカム機構20aでは、ヒンジピン38が第1溝カム21により相対的に案内され、ロック外カム37とスライド外カム25とが摺動する。右側のカム機構20bでは、ヒンジピン38が第2溝カム22の端部に配置され、第2溝カム22の外周に設けられた第1カム突起がロックカム部材のリブ39と摺動を開始する。これにより、ヒンジピン38は相対的なスライド移動が規制されて、回動自在に支持される(図5参照)。カム機構20bのこのときの状態を、第2係止位置とする。
【0036】
さらに把持部334aを引くと、左側のカム機構20aは係合を解除される(図2Cおよび図6参照)。右側のカム機構20bでは、第2係止位置で第1カム突起がリブ39に摺動し、スライド外カム25がロック外カム37を摺動案内する。そして、右側のカム機構20bが第2係止位置を維持して冷蔵室扉311を軸支しながら、冷蔵室扉311が左側から開放される。
【0037】
以上のように、冷蔵庫301では、左右両開きの冷蔵室扉311を開けるときには、開く側の外方向へ冷蔵室扉311のスライド移動を伴う。本実施形態では、このスライド移動をより容易に行うことができるように、把持部334aおよび334bの構造に工夫が施されている。
【0038】
(把持部の構成)
以下では、把持部334aおよび334bのより具体的な構成について説明する。図7および図8には、冷蔵室扉311の外観の構成を示す。図9には、図8に示す冷蔵室扉311のA-A線部分の断面構造を示す。
【0039】
把持部334aは、冷蔵室扉311の左側端部11aの下方に設けられている。把持部334bは、冷蔵室扉311の右側端部11bの下方に設けられている。
【0040】
使用者は、冷蔵室扉311を左側から手動で開ける際に、左側端部11aに設けられた把持部334aに手を掛ける。そして、冷蔵室扉311に対して左方向(すなわち、扉を開ける方向の外側)への力を作用させる。これにより、冷蔵室扉311を外方向へスライド移動させて、扉開閉機構10の円滑な開閉動作を促すことができる。
【0041】
また、使用者は、冷蔵室扉311を右側から手動で開ける際に、右側端部11bに設けられた把持部334bに手を掛ける。そして、冷蔵室扉311に対して右方向(すなわち、扉を開ける方向の外側)への力を作用させる。これにより、冷蔵室扉311を外方向へスライド移動させて、扉開閉機構10の円滑な開閉動作を促すことができる。
【0042】
把持部334aは、冷蔵室扉311の前面部11cに形成されている開口部335aを有している。また、把持部334bは、冷蔵室扉311の前面部11cに形成されている開口部335bを有している。このような開口部335aおよび335bが形成されていることで、冷蔵室扉311を開けようとする使用者は、冷蔵庫301の前方側から扉に対して手を掛けることができる。
【0043】
開口部335aの内部の凹空間は、主として、第1傾斜面344、後方面345、および第2傾斜面346で空間が規定されている。同様に、開口部335bの内部の凹空間は、主として、第1傾斜面344、後方面345、および第2傾斜面346で空間が規定されている。図9に示すように、開口部335aと開口部335bとは、左右対称の形状となっている。
【0044】
開口部335aの第1傾斜面344は、冷蔵室扉311の左側端部11a側に位置する。開口部335bの第1傾斜面344は、冷蔵室扉311の右側端部11b側に位置する。いずれの把持部334aおよび334bにおいても、第1傾斜面344は、冷蔵室扉311の後方側から前方側へ向かって、扉の中央部(すなわち、中心線O)の方へ傾斜している。
【0045】
第1傾斜面344は、使用者が冷蔵室扉311を開けるときに使用者の手の指が当たることを想定した位置に設けられている。すなわち、第1傾斜面344は、把持部334aおよび334bの手指当接部となる。
【0046】
また、第1傾斜面344は、板状の部材で形成されている。これにより、使用者が開口部335aまたは335bに手を入れて、第1傾斜面344に手指(例えば、人差し指および中指)を当てたときに、残りの手指(例えば、親指)を第1傾斜面344とは反対側の面に当てて、板状部材を挟み込むことができる。
【0047】
後方面345は、開口部335a内に形成されている凹空間の最奥側の面を形成している。本実施形態では、後方面345は、冷蔵室扉311の前面部11cと略平行となるように形成されているが、別の実施態様では、これに限定はされない。
【0048】
第2傾斜面346は、第1傾斜面344に対向する位置に形成されている。扉の開閉動作をスムーズに行うためには、使用者が冷蔵室扉311を開けようとして開口部335aまたは335b内に手を入れた際に、使用者の手指は、第2傾斜面346側ではなく、第1傾斜面344側に当接されることが望ましい。そのため、使用者が開口部335aまたは335b内に手を入れた際に、使用者の手指が第2傾斜面346に引っ掛からないように構成されていることが好ましい。すなわち、第2傾斜面346の表面は、滑りやすくなるような加工が施されていることが好ましい。
【0049】
以下では、図10を参照しながら第1傾斜面344および第2傾斜面346の好ましい傾斜角度について説明する。図10には、冷蔵室扉311に備えられた各溝カム21および22と把持部334aの各構成部材との位置関係を模式的に示す。図10は、冷蔵庫301の左側端部11a側のカム機構20aの一部を示すものである。冷蔵庫301の右側端部11b側のカム機構20bについては、カム機構20aと左右対称な構造となっている。
【0050】
上述したように、本実施形態の冷蔵庫301に設けられた扉開閉機構10には、把持部334aの開口部335a内の凹空間に、使用者の手指が当たる第1傾斜面344が形成されている。第1傾斜面344は、冷蔵室扉311の前方側へ向かって、扉の中央部の方へ傾斜しているため、使用者が開口部335aから凹空間内に手を入れて第1傾斜面344に手指を掛けると、図10中矢印で示すように、自然に外方への応力が働くことになる。これにより、使用者が意識しなくても、冷蔵室扉311を外方にスライドさせることができる。
【0051】
ここで、閉鎖状態の冷蔵室扉311の前面部11cの延伸方向Y(左右方向)に対して垂直な方向をX方向と規定する。そして、このX方向を基準(0度)とする。また、第1溝カム21の延在方向をAとし、第2溝カム22の延在方向をBとする(図10参照)。このとき、基準位置Xに対する第1溝カム21の延伸角度をθ1とし、第2溝カム22の延伸角度をθ2とする。
【0052】
そして、第1傾斜面344の法線Cの基準位置Xに対する延伸角度をθ3とする。この延伸角度θ3は、以下の条件を満たすことが好ましい。
θ1≦θ3≦θ2
法線Cがこのような角度となるように第1傾斜面344の傾斜角度が規定されることで、扉を開けるときに、先ず第2溝カム22に沿ってヒンジピン38を移動させる力と、その後、第1溝カム21に沿って、ヒンジピン38を移動させる力との両方を、把持部334aにかかる応力から効率よく得ることができる。なお、図10では、便宜上、第1傾斜面344の実際の法線の位置とはずれた位置に法線Cを図示している。
【0053】
より具体的には、第1溝カム21の延伸角度θ1を、例えば10度とすることができる。また、第2溝カム22の延伸角度θ2を、例えば72度とすることができる。この場合、第1傾斜面344の法線Cの延伸角度θ3は、10度以上72度以下の範囲内の何れかの角度に規定することができる。
【0054】
また、本実施形態では、第1傾斜面344の法線Cの延伸角度θ3は、第1溝カム21の延伸角度θ1よりも第2溝カム22の延伸角度θ2に近い角度としてもよい。例えば、第1傾斜面344の法線Cの延伸角度θ3を65度とすることができる。これにより、先ず第2溝カム22に沿ってヒンジピン38を移動させる力を大きくすることができる。そのため、より小さい力で冷蔵室扉311を回動可能状態となるまでスライド移動させることができ、使用者がより扉を開けやすくなる。また、第1傾斜面344の左右方向の幅が小さくなるため、開口部335aを冷蔵室扉311の左側端部11aに寄せることが可能となる。これにより、冷蔵庫扉311の断熱性能を確保しやすく、また、冷蔵庫扉311の外観意匠性を向上できる。
【0055】
また、第1傾斜面344に対向して位置する第2傾斜面346は、前面部11cの延伸方向(左右方向)に対して90度よりも大きい角度を有して傾斜していることが好ましい。すなわち、前面部11cに対する第2傾斜面346の傾斜角度θ4は、鈍角となっていることが好ましい。この構成によれば、使用者が開口部335a内に手を入れた際に、第2傾斜面346側に手指を掛けにくい構成とすることができる。そのため、開口部335a内に手を入れた使用者は、第1傾斜面344側に積極的に手指を当接させ、上述したように、自然な動作で冷蔵室扉311を外方にスライドさせることができる。
【0056】
(電動式の扉開閉制御について)
なお、本実施形態にかかる冷蔵庫301は、タッチセンサ91によるタッチ操作によって電動制御で冷蔵室扉311の開閉を行うことも可能である。タッチセンサを用いた冷蔵室扉の自動開閉制御については、従来公知の方法で実施することができる。そのため、詳しい説明は省略する。
【0057】
(第1の実施形態のまとめ)
以上のように、本実施形態にかかる冷蔵庫301は、扉開閉機構10を備えている。扉開閉機構10は、冷蔵室扉311の左右両端部にそれぞれ配置されている少なくとも2つの把持部334aおよび334bと、冷蔵室扉311の左右両側に対称に設けられ、冷蔵室扉311と本体部2との係合および離脱を行う2つのカム機構20aおよび20bとを備えている。
【0058】
把持部334aおよび334bは、扉の前面部11c側から手を掛けることができるように、前面部11cに形成された開口部335aおよび335bが設けられている。また、開口部335aおよび335b内の空間には、第1傾斜面344が設けられている。第1傾斜面344は、冷蔵室扉311の後方側から前方側へ向かって、扉の中央部(すなわち、中心線O)の方へ傾斜している。
【0059】
この構成によれば、使用者は、冷蔵室扉311を開ける際に、この把持部334a(または334b)の開口部335a(または335b)内の空間に手を入れ、手指で第1傾斜面344を押すことで、扉を開ける方向の外側に向かって力を作用させることができる。したがって、冷蔵室扉311をより容易に外方向へスライド移動させて、より操作性のよい扉開閉機構を得ることができる。
【0060】
〔第2の実施形態〕
続いて、本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、冷蔵室扉の扉開閉機構に設けられた把持部の構成が、第1の実施形態とは異なっている。把持部以外の構成については、第1の実施形態と同様の構成が適用できる。そこで、本実施形態では、第1の実施形態となる異なる把持部の構成を中心に説明する。
【0061】
図11には、第2の実施形態にかかる冷蔵室扉411の構成を示す。図11は、図8のA-A線部分に相当する位置における冷蔵室扉411の断面構造を示す図である。
【0062】
第1の実施形態と同様に、冷蔵室扉411は、左右何れの端部からも開閉することのできる両開き式の扉である。そのため、冷蔵室扉411の左右両側の端部には、冷蔵室扉411を開閉する際の取っ手構造として機能する把持部(具体的には、左側の把持部434aおよび右側の把持部434b)がそれぞれ設けられている。
【0063】
把持部434aは、冷蔵室扉411の前面部11cに形成されている開口部335aを有している。また、把持部434bは、冷蔵室扉411の前面部11cに形成されている開口部335bを有している。
【0064】
開口部335aの内部の凹空間は、主として、第1傾斜面444、後方面345、および第2傾斜面346で空間が規定されている。同様に、開口部335bの内部の凹空間は、主として、第1傾斜面444、後方面345、および第2傾斜面346で空間が規定されている。
【0065】
第1傾斜面444は、板状の部材で形成されている。そして、この板状の部材の厚さは、扉の前方側よりも後方側の方が厚くなっている。このような構成により、開口部335aまたは335b内に手を入れた使用者は、板厚のより大きい後方で板状の部材をつかみにくくなる。そのため、扉を開ける動作を開始する際に、扉を手前内側(板状の部材が延びる方向)に引く動作をしにくくさせることができる。したがって、第1傾斜面444に手指をかけて力を加えたときに、手指の押圧力を扉の外方向へより確実に向かわせることができる。
【0066】
なお、上記の板状の部材のうち、第1傾斜面444の表面には、例えば上下方向に延びる畝や溝など、滑り止めの加工や構造を施しても良い。一方で、第1傾斜面444とは反対側となる面(対向面)は、滑り止めの加工や構造を施さないことなどによって、第1傾斜面444よりも滑り易くする。これにより、手指の押圧力を扉の内方向へは向かいにくくすることができ、手指の押圧力を扉の外方向へより確実に向かわせることができる。
【0067】
開口部335aおよび335b内の凹空間を形成している後方面345および第2傾斜面346については、第1の実施形態と同様の構成を有している。
【0068】
〔第3の実施形態〕
続いて、本発明の第3の実施形態について説明する。第3の実施形態では、冷蔵室扉の扉開閉機構に設けられた把持部の構成が、第1の実施形態とは異なっている。把持部以外の構成については、第1の実施形態と同様の構成が適用できる。そこで、本実施形態では、第1の実施形態となる異なる把持部の構成を中心に説明する。
【0069】
図12には、第3の実施形態にかかる冷蔵室扉611の左側の把持部634aの構成を示す。
【0070】
第1の実施形態と同様に、冷蔵室扉611は、左右何れの端部からも開閉することのできる両開き式の扉である。そのため、冷蔵室扉611の左右両側の端部には、冷蔵室扉611を開閉する際の取っ手構造として機能する把持部(具体的には、左側の把持部634a、および、図示はしていないが右側の把持部634b)がそれぞれ設けられている。
【0071】
把持部634aは、冷蔵室扉611の前面部11cに形成されている開口部335aを有している。図示はしていないが、右側の把持部634bも同様の構成を有している。
【0072】
開口部335aの内部の凹空間は、主として、第1傾斜面644、後方面345、および第2傾斜面346で空間が規定されている。
【0073】
図12に示すように、第1傾斜面644は、開口部335a内の空間内において、凸形状に盛り上がった湾曲面を有している。このような構成により、開口部335a内に手を入れた使用者は、扉を開ける動作を開始する際に、手指の腹を第1傾斜面644に固定しやすくなる。これにより、手指を握る力を、第1傾斜面644を押す方向の力へ変化させやすくなる。したがって、第1傾斜面644に手指をかけて力を加えたときに、手指の押圧力を扉の外方向へより確実に向かわせることができる。
【0074】
開口部335a内の凹空間を形成している後方面345および第2傾斜面346については、第1の実施形態と同様の構成を有している。
【0075】
〔第4の実施形態〕
続いて、本発明の第4の実施形態について説明する。第4の実施形態では、冷蔵室扉の扉開閉機構に設けられた把持部の構成が、第1の実施形態とは異なっている。把持部以外の構成については、第1の実施形態と同様の構成が適用できる。そこで、本実施形態では、第1の実施形態となる異なる把持部の構成を中心に説明する。
【0076】
図13には、第4の実施形態にかかる冷蔵室扉511の構成を示す。図13は、図8のA-A線部分に相当する位置における冷蔵室扉511の断面構造を示す図である。
【0077】
第1の実施形態と同様に、冷蔵室扉511は、左右何れの端部からも開閉することのできる両開き式の扉である。そのため、冷蔵室扉511の左右両側の端部には、冷蔵室扉511を開閉する際の取っ手構造として機能する把持部(具体的には、左側の把持部534aおよび右側の把持部534b)がそれぞれ設けられている。
【0078】
把持部534aは、冷蔵室扉511の前面部11cに形成されている開口部335aを有している。また、把持部534bは、冷蔵室扉511の前面部11cに形成されている開口部335bを有している。
【0079】
開口部335aの内部の凹空間は、主として、第1傾斜面344、後方面345、および第2傾斜面346で空間が規定されている。同様に、開口部335bの内部の凹空間は、主として、第1傾斜面344、後方面345、および第2傾斜面346で空間が規定されている。凹空間を形成している第1傾斜面344、後方面345、および第2傾斜面346の構成は、第1の実施形態と略同じ構成である。
【0080】
但し、本実施形態では、第2傾斜面346と前面部11cとの境界部分が、滑らかな曲面546Rとなっている。これにより、扉を開けようとする使用者が開口部335a内に手を入れて、第1傾斜面344ではなく、第2傾斜面346側に手指を掛けようとしたときに、手指が曲面546R上を滑ることで、第2傾斜面346側により手を掛けにくい構成とすることができる。そのため、開口部335a内に手を入れた使用者は、第1傾斜面344側に積極的に手指を当接させ、上述したように、自然な動作で冷蔵室扉311を外方にスライドさせることができる。
【0081】
〔第5の実施形態〕
続いて、本発明の第5の実施形態について説明する。第5の実施形態では、取っ手部材(取っ手構造)が冷蔵庫の扉に着脱可能に構成されている例について説明する。
【0082】
図14には、第5の実施形態にかかる冷蔵庫1の冷蔵室扉11と、冷蔵室扉11に取り付けられる取っ手部材(取っ手構造)700とを分解した状態で示す。図15には、取っ手部材700が取り付けられていない状態の冷蔵庫1の外観を示す。
【0083】
冷蔵庫1は、左右両開きの冷蔵室扉11を備えている。冷蔵庫1の基本的な構成は、第1の実施形態で説明した冷蔵庫301と同じである。なお、冷蔵庫1では、冷蔵室扉11に設けられた把持部(すなわち、把持部34aおよび34b)の構成が冷蔵庫301とは異なっている。
【0084】
左側の把持部34aは、冷蔵室扉11の左側端部11aに設けられている。また、右側の把持部34bは、冷蔵室扉11の右側端部11bに設けられている。把持部34aは、冷蔵室扉11の左側端部11aを構成する端部部材31の開口部32に把持部形成部材34が取り付けられることによって、形成される。把持部形成部材34は凹部43を有している(図16(b)参照)。右側の把持部34bも、左側の把持部34aと同様の構成を有している。
【0085】
取っ手部材700は、例えば、樹脂材料などのある程度の可撓性を有する材料で形成されている。取っ手部材700は、主な構成部材として、中央支持部材710、左側把持部734a、および右側把持部734bを有している。
【0086】
中央支持部材710は、左側把持部734aと右側把持部734bとを連結している板状の部材である。左側把持部734aは、冷蔵庫1に取り付けられたときに、左側の端部に位置し、冷蔵室扉11を左側から開けるときの把持部となる。右側把持部734bは、冷蔵庫1に取り付けられたときに、右側の端部に位置し、冷蔵室扉11を右側から開けるときの把持部となる。
【0087】
左側把持部734aと右側把持部734bとは、左右対称の構成を有している。左側把持部734aおよび右側把持部734bはそれぞれ、傾斜面形成部744、後方板状部751、および固定部752などを有している。
【0088】
傾斜面形成部744は、略板状に形成されており、内側に傾斜面744aを有している。傾斜面744aは、使用者が冷蔵室扉11を開けるときに使用者の手の指が当たることを想定した位置に設けられている。すなわち、傾斜面744aは、把持部734aおよび734bの手指当接部となる。
【0089】
傾斜面744aは、第1の実施形態で説明した第1傾斜面344などと同様に、冷蔵室扉11に取り付けられた状態で、冷蔵室扉11の後方側から前方側へ向かって、扉の中央部の方へ傾斜している。
【0090】
後方板状部751は、傾斜面形成部744から後方へ延びる略板状の部材である。固定部752は、後方板状部751の内側の面から中央支持部材710の方へ突き出した凸部を有している。
【0091】
図16(a)および(b)には、取っ手部材700が取り付けられている状態の冷蔵室扉11を示す。
【0092】
取っ手部材700を冷蔵室扉11に取り付けた状態では、固定部752の凸部は、冷蔵室扉11の把持部形成部材34の凹部43内に嵌め込まれている。すなわち、取っ手部材700の固定部752を、冷蔵室扉11の各端部11aおよび11bに形成された凹部43へ嵌め込むことで、取っ手部材700を冷蔵室扉11に固定した状態で取り付けることができる。
【0093】
以上のように、本実施形態にかかる冷蔵庫1の冷蔵室扉11には、取っ手部材700が取り付けられている。取っ手部材700が取り付けられることで、冷蔵室扉11の左右両端部には、左側把持部734aまたは右側把持部734bが配置される。これらの把持部734aおよび734bは、冷蔵庫1本体に設けられた把持部34aおよび34bの代わりに、扉を開閉する際の取っ手として機能する。
【0094】
把持部734aおよび734bには、前面部11cから前方へ突出する傾斜面形成部744が設けられている。これにより、扉を開けようとする使用者は、扉の前面部11c側から把持部734aおよび734bに手を掛けることができる。また、傾斜面形成部744の内側には、傾斜面744aが形成されている。傾斜面744aは、冷蔵室扉11の後方側から前方側へ向かって、扉の中央部の方へ傾斜している。
【0095】
この構成によれば、使用者は、冷蔵室扉11を開ける際に、この把持部734aまたは734bの前方内側から傾斜面744aに手を掛け、手指で傾斜面744aを押すことで、扉を開ける方向の外側に向かって力を作用させることができる。したがって、冷蔵室扉11をより容易に外方向へスライド移動させて、より操作性のよい扉開閉機構を得ることができる。
【0096】
また、冷蔵庫1本体に設けられた把持部34aおよび34bの位置や形状などが、使用者の体格や癖などにより使いづらい状態であった場合に、取っ手部材700を取り付けてもよい。これにより、冷蔵庫1本体に設けられた把持部34aおよび34bの代わりに、取っ手部材700の把持部734aおよび734bが扉を開閉する際の取っ手として機能する。したがって、取っ手部材700の把持部734aおよび734bの位置や形状を種々に異ならせて、多種のバリエーション構造として商品展開してもよい。これにより、使用者が、自身の好みに応じて取っ手部材700を選択することができる。そのため、使用者にとって利便性の高い把持部の構成を提供することができる。
【0097】
〔第6の実施形態〕
続いて、本発明の第6の実施形態について説明する。第6の実施形態では、冷蔵室扉に取り付けられる取っ手部材(取っ手構造)の構成が、第5の実施形態とは異なっている。取っ手部材以外の構成については、第5の実施形態と同様の構成が適用できる。そこで、本実施形態では、第5の実施形態となる異なる構成を中心に説明する。
【0098】
図17(a)には、第6の実施形態にかかる冷蔵庫1の冷蔵室扉11の外観を示す。この図では、取っ手部材800が取り付けられている状態の冷蔵室扉11を示す。図17(b)には、図17(a)に示す冷蔵室扉11のA-A線部分の断面構成を示す。図18には、取っ手部材800単体の外観を示す。
【0099】
取っ手部材800は、例えば、樹脂材料などのある程度の可撓性を有する材料で形成されている。取っ手部材800は、主な構成部材として、中央板状部材810、左側把持部834a、および右側把持部834bを有している。第5の実施形態では、取っ手部材700は、一体的に成形された樹脂部材であったが、本実施形態では、取っ手部材800を構成している中央板状部材810、左側把持部834a、および右側把持部834bが、それぞれ別部材で構成されている。
【0100】
中央板状部材810は、左側把持部834aと右側把持部834bとを連結している板状の部材である。中央板状部材810の上端部および下端部には、連結軸部811が設けられている。連結軸部811の左側端部には、左側把持部834aが連結されている。連結軸部811の右側端部には、右側把持部834bが連結されている。
【0101】
左側把持部834aは、冷蔵庫1に取り付けられたときに、左側の端部に位置し、冷蔵室扉11を左側から開けるときの把持部となる。右側把持部834bは、冷蔵庫1に取り付けられたときに、右側の端部に位置し、冷蔵室扉11を右側から開けるときの把持部となる。
【0102】
左側把持部834aと右側把持部834bとは、左右対称の構成を有している。左側把持部834aおよび右側把持部834bはそれぞれ、傾斜面形成部844、後方板状部851、固定部852、および連結部853などを有している。
【0103】
傾斜面形成部844は、略板状に形成されており、内側に傾斜面844aを有している。傾斜面844aは、使用者が冷蔵室扉11を開けるときに使用者の手の指が当たることを想定した位置に設けられている。
【0104】
傾斜面844aは、第1の実施形態で説明した第1傾斜面344などと同様に、冷蔵室扉11に取り付けられた状態で、冷蔵室扉11の後方側から前方側へ向かって、扉の中央部の方へ傾斜している。
【0105】
後方板状部851は、傾斜面形成部844から後方へ延びる略板状の部材である。固定部852は、後方板状部851の内側の面から中央板状部材810の方へ突き出した凸部を有している。
【0106】
連結部853は、中央板状部材810との接続部分を構成している。この連結部853を、中央板状部材810の連結軸部811へ差し込み、ビス854などで固定することで、中央板状部材810に各把持部834aおよび834bを固定させることができる。
【0107】
取っ手部材800を冷蔵室扉11に取り付けた状態では、固定部852の凸部は、冷蔵室扉11の把持部形成部材34の凹部43内に嵌め込まれている。すなわち、取っ手部材800の固定部852を、冷蔵室扉11の各端部11aおよび11bに形成された凹部43へ嵌め込むことで、取っ手部材800を冷蔵室扉11に固定した状態で取り付けることができる。
【0108】
以上のように、本実施形態にかかる冷蔵庫1の冷蔵室扉11には、取っ手部材800が取り付けられている。取っ手部材800が取り付けられることで、冷蔵室扉11の左右両端部には、左側把持部834aまたは右側把持部834bが配置される。これらの把持部834aおよび834bは、冷蔵庫1本体に設けられた把持部34aおよび34bの代わりに、扉を開閉する際の取っ手として機能する。
【0109】
〔第7の実施形態〕
続いて、本発明の第7の実施形態について説明する。第7の実施形態では、冷蔵室扉に取り付けられる取っ手部材(取っ手構造)の構成が、第5の実施形態とは異なっている。取っ手部材以外の構成については、第5の実施形態と同様の構成が適用できる。そこで、本実施形態では、第5の実施形態となる異なる構成を中心に説明する。
【0110】
図19(a)には、第7の実施形態にかかる冷蔵庫1の冷蔵室扉11の外観を示す。この図では、取っ手部材900が取り付けられている状態の冷蔵室扉11を示す。図19(b)には、図19(a)に示す冷蔵室扉11のA-A線部分の断面構成を示す。図19には、取っ手部材900単体の外観を示す。
【0111】
第5の実施形態では、1つの取っ手部材700が、2つの把持部734aおよび734を有している構成について説明した。これに対して、本実施形態では、左側の把持部934aを形成する取っ手部材900と、右側の把持部934bを形成する取っ手部材900とが、別々の部材で構成されている。
【0112】
左側の把持部934aを形成する取っ手部材900と、右側の把持部934bを形成する取っ手部材900とは、同一の形状を有している。そして、冷蔵室扉11に対して、互いに左右対称の位置関係になるように取り付けられる。
【0113】
図20に示すように、取っ手部材900は、主として、傾斜面形成部材944と、固定部形成部材950とで構成されている。本実施形態では、傾斜面形成部材944と、固定部形成部材950とは、別個の部材として構成されており、ビス954などの連結部材によって互いに接続されて一つの構成部品(すなわち、取っ手部材900)を形成している。
【0114】
傾斜面形成部材944は、傾斜面944aを形成している本体部分と、リブ945とを有している。傾斜面944aは、使用者が冷蔵室扉11を開けるときに使用者の手の指が当たることを想定した位置に設けられている。すなわち、傾斜面944aは、把持部934aおよび934bの手指当接部となる。
【0115】
傾斜面944aは、第1の実施形態で説明した第1傾斜面344などと同様に、冷蔵室扉11に取り付けられた状態で、冷蔵室扉11の後方側から前方側へ向かって、扉の中央部の方へ傾斜している。
【0116】
固定部形成部材950は、板状部951と、突起部952とを有している。板状部951は、傾斜面形成部材944から後方へ延びている。突起部952は、板状部951の内側の面から突き出すように形成されている。
【0117】
取っ手部材900を冷蔵室扉11に取り付けた状態では、突起部952は、冷蔵室扉11の把持部形成部材34の凹部43内に嵌め込まれている。すなわち、2つの取っ手部材900の突起部952を、冷蔵室扉11の各端部11aおよび11bに形成された凹部43へそれぞれ嵌め込むことで、取っ手部材900を冷蔵室扉11に固定した状態で取り付けることができる。
【0118】
以上のように、本実施形態にかかる冷蔵庫1の冷蔵室扉11には、2つの取っ手部材900が取り付けられている。2つの取っ手部材900が取り付けられることで、冷蔵室扉11の左右の端部には、把持部934aおよび把持部934bが形成される。これらの把持部934aおよび934bは、冷蔵庫1本体に設けられた把持部34aおよび34bの代わりに、扉を開閉する際の取っ手として機能する。
【0119】
把持部934aおよび934bには、冷蔵室扉11の前面部11cから前方へ突出する傾斜面形成部材944が設けられている。これにより、扉を開けようとする使用者は、扉の前面部11c側から把持部934aおよび934bに手を掛けることができる。また、傾斜面形成部材944の内側には、傾斜面944aが形成されている。傾斜面944aは、冷蔵室扉11の後方側から前方側へ向かって、扉の中央部の方へ傾斜している。
【0120】
この構成によれば、使用者は、冷蔵室扉11を開ける際に、この把持部934aまたは934bの前方内側から傾斜面944aに手を掛け、手指で傾斜面944aを押すことで、扉を開ける方向の外側に向かって力を作用させることができる。したがって、冷蔵室扉11をより容易に外方向へスライド移動させて、より操作性のよい扉開閉機構を得ることができる。
【0121】
また、この構成によれば、冷蔵室扉11の左右の把持部34aおよび34bのうち、使用者がよく利用する側または不便と感じる側のみに、取っ手部材900を取り付けることができる。そのため、冷蔵庫1の外観意匠性と冷蔵庫扉11の利便性とを両立しやすくなる。
【0122】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。また、本明細書で説明した異なる実施形態の構成を互いに組み合わせて得られる構成についても、本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0123】
1 :冷蔵庫
2 :本体部
10 :扉開閉機構
11 :冷蔵室扉
301 :冷蔵庫
311 :冷蔵室扉(扉)
334a:把持部
334b:把持部
335a:開口部
335b:開口部
344 :第1傾斜面(扉の中央部の方へ傾斜する傾斜面)
346 :第2傾斜面(傾斜面に対向する面)
411 :冷蔵室扉(扉)
434a:把持部
434b:把持部
511 :冷蔵室扉(扉)
534a:把持部
534b:把持部
611 :冷蔵室扉(扉)
634a:把持部
700 :取っ手部材(取っ手構造)
734a:把持部
734b:把持部
744a:傾斜面(扉の中央部の方へ傾斜する傾斜面)
800 :取っ手部材(取っ手構造)
834a:把持部
834b:把持部
900 :取っ手部材(取っ手構造)
934a:把持部
934b:把持部
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
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