(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-02
(45)【発行日】2023-08-10
(54)【発明の名称】電気掃除機の吸込口体およびそれを備えた電気掃除機
(51)【国際特許分類】
A47L 9/02 20060101AFI20230803BHJP
A47L 9/04 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
A47L9/02 D
A47L9/02 B
A47L9/04 A
(21)【出願番号】P 2020031871
(22)【出願日】2020-02-27
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【氏名又は名称】冨田 雅己
(72)【発明者】
【氏名】廣田 満久
【審査官】東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-087774(JP,A)
【文献】特開2004-283406(JP,A)
【文献】特開2017-184952(JP,A)
【文献】特開2018-140003(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 9/02 - 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面と対面する底部と、前記底部に設けられた吸込口とを有し、床面に沿って前後方向に移動しながら前記吸込口から床面上の塵埃を吸引可能な吸込口本体を備え、
前記底部側から視て、前記吸込口の前方位置から前記吸込口と重なるように後方へ突出する複数の歯を有する櫛歯部が設けられて
おり、
前記吸込口は前記底部の前端まで延びて前方へ開放しており、
前記吸込口本体における前端から前記吸込口側へ湾曲状に垂れ下がるバンパーが設けられており、
左右方向から視て、前記櫛歯部が前記バンパーの外面に沿って湾曲一体状に設けられており、
前記複数の歯は、前記バンパーの外面に沿う隆起部をそれぞれ有し、
前記複数の歯の隆起部は、バンパーの外面の前面よりも前方へ突出していることを特徴とする電気掃除機の吸込口体。
【請求項2】
前記複数の歯は
、前記隆起部に連設されて前記バンパーの下端縁から後方へ突出する突出
部をそれぞれ有してなる請求項
1に記載の吸込口体。
【請求項3】
前記突出部の底部側の面が湾曲面である、請求項2に記載の吸込口体。
【請求項4】
前記バンパーは、その両端から左右方向に延びて後方へ折れ曲がる平面視L字形の一対の屈曲片を有し、
前記バンパーの外面からの前記隆起部の厚さが、前記一対の屈曲片が有する角部付近の厚さよりも薄い請求項
1~3のいずれか1つに記載の吸込口体。
【請求項5】
前記櫛歯部は、前記吸込口本体が平坦な床面上に載置されたときに床面と接触しない請求項1~
4のいずれか1つに記載の吸込口体。
【請求項6】
前記底部における前記吸込口の左右両端側に一対の前輪が設けられている請求項1~
5のいずれか1つに記載の吸込口体。
【請求項7】
前記吸込口本体内に設けられたモータと、前記モータにて回転駆動されるよう前記吸込口に回転可能に設けられた回転ブラシとをさらに備えた請求項1~
6のいずれか1つに記載の吸込口体。
【請求項8】
前記底部における前記吸込口の後端縁に沿って後方櫛歯部が設けられている請求項1~
7のいずれか1つに記載の吸込口体。
【請求項9】
塵埃を吸引し集塵する掃除機本体と、前記掃除機本体と直接または延長管を介して接続される請求項1~
8のいずれか1つに記載の吸込口体とを備えた電気掃除機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電気掃除機の吸込口体およびそれを備えた電気掃除機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電気掃除機の吸込口体では、絨毯(特に、毛足が長い絨毯(ラグ))でのゴミの吸引除去性能を上げるために、絨毯との密着性を高めることにより負圧を上げてゴミを吸い込む構造が多くみられる。
このような構造の吸込口体の場合、絨毯への吸付性が高まっているため、絨毯上での走行性および操作性が低下し、ユーザーの負担が大きくなる。また、吸込口体における前端側の底部にて絨毯を押し付けることにより、絨毯の奧(毛の根元付近)にあるゴミを毛で覆い被せる状態になってしまい、この結果、吸込口体内の回転ブラシにてゴミを掻き取ることが困難になってしまう。
【0003】
引用文献1では、底部における吸込口よりも前部に複数の吸着防止リブを設けることにより、絨毯や布団のような軟質の被清掃物に対する底部の前部の吸い付きを防止するように構成された吸込具が開示されている。
また、絨毯でのゴミの吸引除去性能を上げるために、引用文献2では複数の梳歯を有する櫛状部を備えた吸込み具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-184952号公報
【文献】実公平7-11734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
引用文献1の吸込具の場合、吸着防止リブを設けるための底部の前部によって、吸込具の前端から吸込口までの距離が長くなる。
引用文献2の吸込み具は、筒形ノズルの先端開口部から外方へ櫛状部が突出した構造であるため、フローリング、畳等の床面や壁際の清掃時には櫛状部によって床面または壁際と吸込口との距離が長くなる。
【0006】
この発明は、以上のような事情を考慮してなされた電気掃除機の吸込口体およびそれを備えた電気掃除機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、床面と対面する底部と、前記底部に設けられた吸込口とを有し、床面に沿って前後方向に移動しながら前記吸込口から床面上の塵埃を吸引可能な吸込口本体を備え、
前記底部側から視て、前記吸込口の前方位置から前記吸込口と重なるように後方へ突出する複数の歯を有する櫛歯部が設けられている電気掃除機の吸込口体が提供される。
また、本発明によれば、塵埃を吸引し集塵する掃除機本体と、前記掃除機本体と直接または延長管を介して接続される前記吸込口体とを備えた電気掃除機が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、絨毯での操作性に優れた、小型の電気掃除機の吸込口体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の吸込口体を備えた電気掃除機の第1実施形態を示す斜視図である。
【
図2】第1実施形態の吸込口体を前方斜め上から視た斜視図である。
【
図6】第1実施形態の吸込口体を後方斜め下から視た斜視図である。
【
図7】(A)は
図3のI-I線矢視断面図であり、(B)は
図3のII-II線矢視断面図である。
【
図9】第1実施形態の吸込口体のバンパーが室内の柱に当接した状態での清掃を説明する図である。
【
図10】第1実施形態の吸込口体による絨毯の清掃を説明するバンパー後方から前方を見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いてこの発明をさらに詳述する。なお、以下の説明は、すべての点で例示であって、この発明を限定するものと解されるべきではない。
(第1実施形態)
<電気掃除機の全体構成>
図1は本発明の吸込口体を備えた電気掃除機の第1実施形態を示す斜視図である。なお、
図1において、電気掃除機の使用時における使用者から視た電気掃除機の前後左右上下方向を矢印にて示しており、電気掃除機はこれらの方向に基づいて説明される。
図1に示すように、この電気掃除機1は、掃除機本体10と、掃除機本体10に着脱可能に装着されるバッテリ40と、掃除機本体10に着脱可能に接続される一端90aを有する延長管90と、延長管90の他端90bと着脱可能に接続される吸込口体50とを備えたスティックタイプのコードレス電気掃除機1である。
【0011】
また、
図1で説明した電気掃除機1は、延長管90を介さずに、掃除機本体10に吸込口体50を直接接続してハンディタイプとして使用することもできる。
あるいは、掃除機本体10に図示しないハンディノズルを取り付けてハンディタイプの電気掃除機として使用することもできる。
【0012】
掃除機本体10は、駆動装置20と、駆動装置20に着脱可能に装着されるサイクロン式の集塵装置30とを備える。
駆動装置20は、図示しない電動送風機および制御部を構成する回路基板を収納する電動送風機収納部20a、ハンドル部20b、操作スイッチ部20c、バッテリ装着部20dおよび接続パイプ部20eを有する。なお、接続パイプ部20eに延長管90の一端90aまたは吸込口体50の後述の接続管部53が着脱可能に接続される。
【0013】
バッテリ40は、ケース内に収納された複数のセルを備える。
延長管90は、管本体91と、管本体91に沿って設けられた図示しない複数の導電ケーブルとを備える。
【0014】
吸込口体50は、後述する回転ブラシ51eおよび回転ブラシ用モータ51fを内蔵した吸込口本体51と、前後方向の第1軸心P1を中心として回動可能に吸込口本体51と結合した関節部52と、第1軸心P1と直交する第2軸心P2を中心として回動可能に関節部52と結合した接続管部53と、吸込口本体51の前端に設けられたバンパー54とを備える(
図7(A)、
図8参照)。なお、吸込口体50について詳しくは後述する。
【0015】
掃除機本体10と吸込口体50とが延長管90を介して接続された電気掃除機1においては、バッテリ40からの電力を回転ブラシ用モータ51fに供給する電気配線系が設けられており、掃除機本体10の操作スイッチ部20cに設けられた電源スイッチをONまたはOFFに切り替えることによって回転ブラシ51eの回転駆動が制御される。なお、吸込口体50を直接掃除機本体10に接続した場合も同様である。
【0016】
<吸込口体について>
図2は第1実施形態の吸込口体を前方斜め上から視た斜視図であり、
図3は第1実施形態の吸込口体の正面図であり、
図4は第1実施形態の吸込口体の左側面図である。また、
図5は第1実施形態の吸込口体の底面図であり、
図6は第1実施形態の吸込口体を後方斜め下から視た斜視図である。また、
図7(A)は
図3のI-I線矢視断面図であり、
図7(B)は
図3のII-II線矢視断面図である。また、
図8は第1実施形態の吸込口体の分解図である。また、
図9は第1実施形態の吸込口体のバンパーが室内の柱に当接した状態での清掃を説明する図であり、
図10は第1実施形態の吸込口体による絨毯の清掃を説明するバンパー後方から前方を見た図である。なお、
図2~
図5、
図7、
図8において、電気掃除機の使用時における使用者から視た吸込口体の前後左右上下方向を矢印にて示しており、吸込口体はこれらの方向に基づいて説明される。
【0017】
以下、
図2~
図10を参照しながら吸込口体50についてさらに詳しく説明する。
吸込口体50の吸込口本体51は、下ケース部51aと、上ケース部51bとを備える。
下ケース部51aは、左右方向に延びる吸込口51aaを前部に有する底部51abと、底部51abの後端に連設された後端支持部51acと、底部51abの周囲を包囲する周壁部51adと、吸込口51aaを覆うように底部51ab上に設けられた略半円筒形の上壁部51aeと、上壁部51aeの左右方向の中間部と連通連結する接続筒部51agとを有する。
【0018】
吸込口51aaは、底部51abの前端まで達して前方に解放している。すなわち、底部51abの前端は左右部分を残して切り欠かれている。
底部51abの吸込口51aaの左右部分には一対の前輪51cが設けられ、上壁部51aeと吸込口51aaとの間のスペースには回転ブラシ51eが回転可能に設けられている。
また、底部51abの後部の右側には車輪51dを有する安全スイッチが設けられており、吸込口体50が床面から浮き上がると回転ブラシ用モータ51fの駆動が停止するようになっている。
【0019】
底部51ab上の後部の右スペースには前記安全スイッチおよび回転ブラシ用モータ51fの制御基板51gが収納され、左スペースには回転ブラシ用モータ51fが収納されている。なお、回転ブラシ用モータ51fと回転ブラシ51eとは、図示しない動力伝達機構(例えば、プーリー・ベルト機構または複数のギア)にて連結されている。
また、底部51abにおける吸込口51aaの後端縁51ayに沿って起毛ブラシ51h(
図4参照)が設けられ、後端支持部51acには後輪51iが設けられている。なお、
図5と
図6においては、起毛ブラシ51hの図示が省略され、起毛ブラシ51hを嵌め入れる溝51haが図示されている。
【0020】
関節部52は、吸込口本体51の接続筒部51agに第1軸心P1を中心に回動可能に結合した前端部と、接続管部53の基端が第2軸心P2を中心として回動するよう摺接可能に接続管部53と結合する後端部とを有する。
【0021】
バンパー54は、吸込口本体51の前端51ax(周壁部51adの前端)に沿って延びるバンパー本体54aと、バンパー本体54aの長手方向の両端に設けられた一対の第1片54bおよび一対の第2片54cと、バンパー本体54aの外面54ax(前面)に設けられた櫛歯部54dとを有する(
図8参照)。
【0022】
バンパー本体54aは、吸込口本体51の前端51axから垂れ下がって後方の吸込口51aa側へ湾曲しており、櫛歯部54dが設けられた外面54axとは反対側の内面54ayには、左右方向に延びる横リブ54aaおよび所定間隔(本実施形態では等間隔)で設けられた複数の縦リブ54abを有している。
複数の縦リブ54abは、横リブ54aaとバンパー本体54aの下端縁54acとの間に設けられてこれらを連結している。
【0023】
櫛歯部54dは、バンパー本体54aの外面54axに沿って上下方向に延びる複数の歯54daからなる。
複数の歯54daは、隆起部54daaと突出部54dabとをそれぞれ有する(
図3、
図5、
図6、
図10参照)。隆起部54daaは、バンパー本体54aの外面54axにおける複数の縦リブ54abに対応する位置に配置されている。突出部54dabは、下方から視て吸込口51aaと重なるように隆起部54daaの下端(バンパー本体54aの下端縁54ac)から後方へ突出する。なお、複数の歯54daと複数の縦リブ54abとは互いにずれた位置に配置されてもよい。
【0024】
この櫛歯部54dにおいて、各歯54daのサイズおよび間隔は特に限定されるものではないが、
図9に示すように、歯54daの左右方向の幅Aとしては3~10mm程度、バンパー54の外面54axからの歯54daの厚さBとしては0.5~3mm程度であって上から下に向かって徐々に厚くなっており、隣接する歯54daと歯54daとの間隔Cとしては3~10mm程度が適当である。また、
図5に示すように、バンパー54の下端縁54acからの歯54daの突出部54dabの突出寸法Dとしては2~5mm程度が適当である。これらの寸法は、櫛歯部54dにて絨毯Jを押しつけながら回転ブラシ51eにて絨毯Jの奥のゴミを掻き出しやすくするよう設定されている。
【0025】
バンパー54の一対の第1片54bは、バンパー本体54aの両端から左右方向に延びて後方へ折れ曲がる平面視L字形に形成された一対の屈曲片である。
バンパー54の一対の第2片54cは、バンパー本体54aの両端から上方斜め後方に湾曲しながら突出している一対の湾曲片である。
【0026】
バンパー54が吸込口本体51に取り付けられた状態において、バンパー本体54aの上端縁54adと横リブ54aaとの間に吸込口本体51の前端51axが挟み込まれている(
図7(A)、
図8参照)。また、バンパー54の一対の第1片54bは下ケース部51aの周壁部51adの左右側面に係止し、バンパー54の一対の第2片54cはその一部が下ケース部51aの上壁部51aeの左右両端を覆う位置に係止している。また、上ケース部51bを下ケース部51aに取り付けることにより、上ケース部51bの左右の前端51baによってバンパー54の一対の第2片54cの凸部54caを押さえ込むようにしている。
【0027】
このように構成された吸込口体50を使用して清掃を行う際、
図9に示すように、例えば、バンパー54の長さよりも細い室内の柱Kにバンパー54を接近させると、櫛歯部54dの複数の歯54daの隆起部54daaが柱Kに当接する。これにより、バンパー54の外面54axと柱Kとの間(複数の隆起部54daa間)に隙間が生じる。この隙間が空気の通り道となって上方から吸込口51aa側へ空気が流入する(吸い込まれる)。そのため、床面上または敷居上の柱Kの際に存在するゴミが空気と共に効率よく吸引除去される。
【0028】
また、
図9に示すように、室内の壁面Wにバンパー54を接近させると、一対の第1片54bの角部近傍が壁面Wに当接し、櫛歯部54dを含むバンパー本体54aの外面54axと壁面Wとの間に隙間が形成される。そのため、その隙間に上方から空気が流入して(吸い込まれて)壁際のゴミを空気と共に効率よく吸込口51aaへ吸引し、除去することができる。なお、本実施形態(
図9)の場合、櫛歯部54dの各歯54daの隆起部54daaの厚さBを、一対の第1片54bの角部付近の厚さよりも薄くしているが、櫛歯部54dの各歯54daの隆起部54daaの厚さBを、一対の第1片54bの角部付近の厚さと同じに揃えてもよい。すなわち、一対の第1片54bの角部付近と各歯54daの隆起部54daaとが壁面Wに当接するようにしてもよい。
【0029】
また、一対の第1片54bの左右側の外面(側面)には凹部54baが設けられている。そのため、一方の第1片54bの側面を壁面Wに当接させると、第1片54bの凹部54baと壁面Wとの間に形成された隙間に上方から空気が流入して(吸い込まれて)壁際のゴミを空気と共に吸引し、除去することができる。したがって、一方の第1片54bの側面を壁面Wに当接させながら吸込口体50を壁際で走行させると、壁際を効率よく清掃することができる。なお、絨毯のような敷物以外のフローリングや畳等の床面上を吸込口体50が走行する際は、一対の前輪51c、安全スイッチの車輪51dおよび後輪51iが床面上を転動し、回転ブラシ51eおよび起毛ブラシ51hが床面に摺接するが、バンパー54の櫛歯部54d(複数の突出部54dab)は床面に接触しない。
【0030】
また、
図5と
図10に示すように、フローリングF上に敷かれた絨毯Jを清掃する場合、吸込口体50を絨毯J上で前進させると、バンパー54の櫛歯部54dの複数の歯54daの突出部54dabが絨毯Jの奥(毛Jfの根元付近)に分け入る。これにより、絨毯Jの奧に入り込んだゴミが吸込口51aa側に露出しやすくなる。言い換えると、絨毯Jの吸込口51aaの前端付近において、櫛歯部54dの複数の歯54daによって押さえられる(踏まれる)部分と押さえられない(踏まれない)部分が生じる。そのため、互いに隣接する押さえられた毛Jfaと押さえられない毛Jfbとはそれらの根本付近でY字状、V字状またはL字状に分かれ、この分かれ目に存在するゴミ(絨毯Jの奥のゴミ)が吸込口51aa側に露出しやすくなる。この結果、絨毯Jの奧のゴミを回転ブラシ51eにて掻き出しやすくなり、ゴミの取り残しを少なくすることができる。このとき、吸込口体50における櫛歯部54dによって押さえられない絨毯Jの箇所(毛Jfbの箇所)が風路となって前方から吸込口51aaへ向かって空気が流れるため、絨毯Jの奥のゴミの取り残しを低減する構成として好都合となっている。
【0031】
ここで、一般に従来の回転ブラシ付き吸込口体において、回転ブラシの絨毯に接する下部の回転方向は、吸込口体の前進方向とは逆方向となり、吸込口体の後退方向と同じ方向となる。したがって、このような従来の回転ブラシ付き吸込口体では、前進時よりも後退時の方が絨毯に対する回転ブラシの回転速度が速くなってゴミの掻き出し力が大きくなる。言い換えれば、従来の回転ブラシ付き吸込口体では、後退時よりも前進時の方が絨毯に対する回転ブラシの回転速度が遅くなってゴミの掻き出し力(ゴミの除去性能)が小さくなっている。そこで、第1実施形態の吸込口体50では、バンパー54に前記構成の櫛歯部54dを設けることにより、吸込口体50の前進時においては櫛歯部54dの複数の歯54daが絨毯Jの奥に入り込み、絨毯Jの奥のゴミを回転ブラシ51eにて掻き出しやすくしている。このようにすることで、第1実施形態の吸込口体50では従来の吸込口体と比較して前進時におけるゴミの除去性能が向上している、すなわち、ゴミの取り残しを少なくすることができる。
【0032】
また、毛足の長い絨毯Jに対しては、櫛歯部54dの複数の歯54daの突出部54dabにて吸込口51aaの前端付近の一部の毛Jfaを押さえ付けるため、毛Jfが吸込口51aaに吸い込まれにくくなる。それに加え、絨毯Jに対して底部51abが密着し過ぎないよう櫛歯部54dにて吸込口体50を支えている。したがって、毛Jfが吸込口51aaに吸い込まれることおよび底部51abが絨毯Jに密着し過ぎることによって生じる吸込口体50の操作性の低下を抑制することができる。このとき、圧力がかかる複数の歯54daの位置に複数の縦リブ54abが設けられていることに加え、複数の縦リブ54abを横リブ54aaにて支持しているため、バンパー54の強度が高められている。なお、ここで言う吸込口体50の操作性とは、吸込口体50を絨毯J上で前後方向へ移動させるまたは左右方向への旋回させるときに使用者がスムーズにハンドル部20b(
図1参照)を操作できる性能を意味する。
【0033】
また、第1実施形態の吸込口体50においては、バンパー54に櫛歯部54dが樹脂にて一体成形されている。吸込口本体51とは別部品であるバンパー54に櫛歯部54dを一体状に設けることにより、櫛歯部54dを吸込口本体51とは異なる材料にて形成することができる。例えば、バンパー54を滑り性の高い材料(例えば、耐久性のある硬質樹脂材料)にて形成することにより、櫛歯部54dと絨毯Jとの摩擦抵抗を低減して操作性を上げることができる。あるいは、バンパー54を滑り性の低い材料(例えば、弾性を有する軟質樹脂材料)にて形成することにより、櫛歯部54dが絨毯Jの奧に入り込みやすくなるようにすることができる。このように、材料の選択によって特性が異なるバンパー54のバリエーションを増やすことが可能となる。
【0034】
また、櫛歯部54dはバンパー54(バンパー本体54a)の外面54axに沿って湾曲一体状に設けられているため、床面上の段差(例えば、フローリングF上の絨毯JとフローリングFとの段差)に櫛歯部54dが引っ掛かることなくスムーズに吸込口体50が段差を乗り越えることができる。
また、吸込口本体51の底部51abにおける吸込口51aaの左右部分に一対の前輪51cが設けられているため、吸込口体50の段差乗り越え性がさらに向上している。それに加え、吸込口本体51の底部51abにおける吸込口51aaの左右部分と絨毯Jとの摩擦抵抗を一対の前輪51cにて低減することができるため、吸込口体50の絨毯J上での操作性がより向上する。
【0035】
(第2実施形態)
図11は第2実施形態の吸込口体の底面図である。なお、
図11において、
図5中の要素と同様の要素には同一の符号を付している。
第2実施形態の吸込口体150は、底部51abにおける吸込口51aaの後端縁51ayに沿って後方櫛歯部51azが設けられたこと以外は、第1実施形態の吸込口体50と概ね同様に構成されている。
【0036】
第2実施形態の場合、後方櫛歯部51azは、前方の櫛歯部54dの複数の歯54daに対向する位置に複数の歯51azaを有している。
各歯51azaにおいて、底部51abからの厚さとしては0.5~1mm程度であり、吸込口51aaの後端縁51ayから吸込口51aa側への突出寸法としては1~3mm程度である。
【0037】
吸込口体150の底部51abに後方櫛歯部51azを設けたことにより、絨毯上の清掃時に吸込口体150を後退させると、後方櫛歯部51azが絨毯の奥に分け入ってゴミを露出させることができる。したがって、吸込口体150の前進時には前方の櫛歯部54dが絨毯に分け入ってゴミを回転ブラシ51eにて掻き出しやすると共に、後退時には後方櫛歯部51azが絨毯に分け入ってゴミを回転ブラシ51eにて掻き出しやすることができるため、絨毯奥のゴミの取り残しをより少なくすることができる。
【0038】
(第3実施形態)
第1実施形態(
図5参照)では、吸込口体50の底部51abの前端まで吸込口51aaが延びて前方に解放し、櫛歯部54dを有するバンパー54にて吸込口51aaの解放した前部を覆うように構成した場合を例示したが、次のように構成してもよい。
吸込口体の底部の前端より後方に吸込口を設けて、吸込口を前方へ解放しない閉じた長方形とし、櫛歯部を底部における吸込口の前端縁に沿って設けてもよい。すなわち、第3実施形態では、第2実施形態(
図11参照)で説明した後方櫛歯部51azのような構成の櫛歯部を底部における吸込口の前端縁に沿って設けてもよい。さらに、底部における吸込口の後端縁に沿って第2実施形態と同様の後方櫛歯部を設けてもよい。
【0039】
(他の実施形態)
1.第1実施形態の吸込口体50の構成は、回転ブラシ51eがタービン駆動方式で回転する構成であってもよく、あるいは、回転ブラシ51eおよび回転ブラシ用モータ51fが省略された構成であってもよい。なお、第2および第3実施形態についても同様である。
2.第1実施形態の吸込口体50(
図5参照)では、下方から視て櫛歯部54dの複数の突出部54dabが略矩形波状に併設された場合を例示したが、突出部54dabを三角形に形成して三角波状に併設してもよい。なお、第2および第3実施形態についても同様であり、第2実施形態については後方櫛歯部51azの複数の歯51azaも三角形に形成して三角波状に併設してもよい。
3.第1実施形態の吸込口体50において、起毛ブラシ51hは櫛歯を有するものであってもよい。つまり、起毛ブラシ用基台に垂直方向の複数の歯を設け、基台における複数の歯の間にブラシ毛を設けた櫛歯付き起毛ブラシを用いてもよい。この場合、フローリングや畳に複数の歯が当たらない程度にブラシ毛を各歯よりも長くすることが好ましい。なお、第2および第3実施形態についても同様である。
4.各実施形態において、櫛歯部および後方櫛歯部の各歯のサイズ(
図5および
図9中の幅A、厚さB、突出寸法Dのうちの少なくとも1つ)は均一でなくともよく、例えば、吸込口の左右端から中間部に向かうにつれてサイズが大きくなるまたは小さくなるようにしてもよい。また、隣接する歯同士の間隔Cは均一でなくともよく、例えば、吸込口の左右端から中間部に向かうにつれて間隔が広くなるまたは狭くなるようにしてもよい。
【0040】
(まとめ)
本発明の電気掃除機の吸込口体は、床面と対面する底部と、前記底部に設けられた吸込口とを有し、床面に沿って前後方向に移動しながら前記吸込口から床面上の塵埃を吸引可能な吸込口本体を備え、
前記底部側から視て、前記吸込口の前方位置から前記吸込口と重なるように後方へ突出する複数の歯を有する櫛歯部が設けられているものである。
【0041】
この吸込口体は、吸込口体は床面と対面する底部に吸込口が設けられ、吸込口と重なるように櫛歯部が後方へ突出した構造を備えるため、絨毯、フォローリング、畳等の床面に沿って吸込口および櫛歯部が移動しながら床面上のゴミを吸引除去することができる。
この際、ゴミを除去しにくい絨毯(特に、毛足の長い絨毯)の清掃においても、吸込口体を前進させると櫛歯部の各歯が絨毯の奧(毛の根元付近)に分け入ることができるため、絨毯の奧に入り込んだゴミが吸込口側に露出しやすくなる。言い換えると、絨毯の吸込口前端付近において、櫛歯部によって押さえられる(踏まれる)部分と押さえられない(踏まれない)部分が生じる。そのため、互いに隣接する押さえられた毛と押さえられない毛とはそれらの根本付近でY字状、V字状またはL字状に分かれ、この分かれ目に存在するゴミが露出する。この結果、絨毯の奧のゴミを効率よく吸引除去してゴミの取り残しを少なくすることができる。このとき、吸込口体における櫛歯部によって押さえない絨毯の箇所が風路となって前方から吸込口へ向かって空気が流れるため、絨毯の奥のゴミの吸込性能が上がり、ゴミの取り残しを少なくすることに貢献している。
また、毛足の長い絨毯に対しては、櫛歯部にて吸込口前端付近の一部の毛を押さえ付けるため、毛が吸込口に吸い込まれにくくなる。それに加え、絨毯に対して底部が密着し過ぎないよう櫛歯部にて支えている。したがって、毛が吸込口に吸い込まれることおよび底部が絨毯に密着し過ぎることによって生じる吸込口体の操作性の低下を抑制することができる。
【0042】
本発明の電気掃除機の吸込口体は、次のように構成されてもよく、それらが適宜組み合わされてもよい。
【0043】
・前記吸込口は前記底部の前端まで延びて前方へ開放しており、
前記吸込口本体における前端から前記吸込口側へ湾曲状に垂れ下がるバンパーが設けられており、
左右方向から視て、前記櫛歯部が前記バンパーの外面に沿って湾曲一体状に設けられてもよい。
この構成によれば、吸込口体のバンパーを室内の壁に当接した状態で床面上の壁際を効率よく掃除することができる。この際、吸込口は吸込口本体の底部の前端まで延びて前方へ開放した形状であるため、壁際に吸込口を接近させてゴミの取り残しを少なくすることができる。
また、櫛歯部はバンパーの外面に沿って湾曲一体状に設けられているため、床面上の段差(例えば、フローリング上の絨毯とフローリングとの段差)に櫛歯部が引っ掛かることなくスムーズに吸込口体が段差を乗り越えることができる。
また、吸込口本体とは別部品であるバンパーに櫛歯部を一体状に設けることにより、櫛歯部を吸込口本体とは異なる材料にて形成することができる。例えば、バンパーを滑り性の高い材料(例えば、耐久性のある硬質樹脂材料)にて形成することにより、櫛歯部と絨毯との摩擦抵抗を低減して操作性を上げることができる。あるいは、バンパーを滑り性の低い材料(例えば、弾性を有する軟質樹脂材料)にて形成することにより、櫛歯部が絨毯の奧に入り込みやすくなるようにすることができる。このように、材料の選択によって特性が異なるバンパーのバリエーションを増やすことが可能となる。
【0044】
・前記複数の歯は、前記バンパーの外面に沿う隆起部と、前記隆起部に連設されて前記バンパーの下端縁から後方へ突出する突出部とをそれぞれ有してなるものであってもよい。
この構成によれば、柱際や壁際の清掃の際に櫛歯部の各歯の隆起部が柱や壁に当接すると、柱際や壁際における各歯の隆起部間が空気の通り道となって上方から下方へ向かって空気が流れ、この空気の流れによって壁際のゴミを吸込口側へ送ることができる。したがって、壁際のゴミの取り残しをより少なくすることができる。なお、各歯の突出部は、絨毯の奧へ分け入る部分として機能する。
【0045】
・前記バンパーは、その両端から左右方向に延びて後方へ折れ曲がる平面視L字形の一対の屈曲片を有し、
前記バンパーの外面からの前記隆起部の厚さが、前記一対の屈曲片が有する角部付近の厚さよりも薄くてもよい。
この構成によれば、室内の壁面にバンパーを接近させると、一対の屈曲片の角部近傍が壁面に当接し、櫛歯部を含むバンパー本体の外面と壁面との間に隙間が形成される。そのため、その隙間に上方から空気が流入して(吸い込まれて)壁際のゴミを空気と共に効率よく吸込口へ吸引し、除去することができる。
【0046】
・前記櫛歯部は、前記吸込口本体が平坦な床面上に載置されたときに床面と接触しないようにしてもよい。
この構成によれば、吸込口体にてフローリング上を清掃する際の櫛歯部によるフローリング面への傷付きを防止できる。
【0047】
・前記底部における前記吸込口の左右両端側に一対の前輪が設けられてもよい。
この構成によれば、一対の車輪によって床面上の段差に対する吸込口体の乗り越え性がさらに向上する。それに加え、吸込口本体の底部における吸込口の左右両側と絨毯との摩擦抵抗を一対の前輪にて低減することができるため、吸込口体の絨毯上での操作性がより向上する。
【0048】
・前記吸込口本体内に設けられたモータと、前記モータにて回転駆動されるよう前記吸込口に回転可能に設けられた回転ブラシとをさらに備えてもよい。
この構成によれば、櫛歯部によって絨毯の奧のゴミを露出させ、回転ブラシによって露出したゴミを吸込口へ掻き込むことができるため、絨毯のゴミの取り残しをより少なくすることができる。
また、回転ブラシが絨毯上で回転することによって自走効果が得られるため、走行性および操作性がより向上する。また、吸込口体に一対の前輪が設けられている場合には自走効果がより高められる。
【0049】
・前記底部における前記吸込口の後端縁に沿って後方櫛歯部が設けられてもよい。
この構成によれば、吸込口体を絨毯上で前後方向へ移動させながら清掃する際、吸込口体が後方へ移動するときに後方櫛歯部が絨毯に分け入ってゴミを露出させることができるため、吸込口体の後方移動時にも効率よく絨毯の奧のゴミを吸引除去することができる。
【0050】
なお、開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上述の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0051】
1:電気掃除機、 10:掃除機本体、 20:駆動装置、 20a:電動送風機収納部、 20b:ハンドル部、 20c:操作スイッチ部、 20d:バッテリ装着部、 20e:接続パイプ部、 30:集塵装置、 40:バッテリ、 50:吸込口体、 51:吸込口本体、 51a:下ケース部、 51aa:吸込口、 51ab:底部、 51ac:後端支持部、 51ad:周壁部、 51ae:上壁部、 51ag:接続筒部、 51ax:前端、 51ay:後端縁、 51az:後方櫛歯部、 51b:上ケース部、 51ba:前端、 51c:前輪、 51d:車輪、 51e:回転ブラシ、 51f:回転ブラシ用モータ、 51g:制御基板、 51h:起毛ブラシ、 51ha:溝、 51i:後輪、 52:関節部、 53:接続管部、 54:バンパー、 54a:バンパー本体、 54aa:横リブ、 54ab:縦リブ、 54ac:下端縁、 54ad:上端縁、 54ax:外面、 54ay:内面、 54b:第1片(屈曲片)、 54ba:凹部、 54c:第2片、 54ca:凸部、 54d:櫛歯部、 54da:歯、 54daa:隆起部、 54dab:突出部、 90:延長管、 90a:一端、 90b:他端、 91:管本体、 150:吸込口体、 F:フローリング、 J:絨毯、 Jf:毛、 Jfa:毛、 Jfb:毛、 A:幅、 B:厚さ、 C:間隔、 D:突出寸法、 K:柱、 P1:第1軸心、 P2:第2軸心、 W:壁面