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特許7325204インクセット及びインクジェット記録方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-03
(45)【発行日】2023-08-14
(54)【発明の名称】インクセット及びインクジェット記録方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/40 20140101AFI20230804BHJP
   C09D 11/322 20140101ALI20230804BHJP
   C09D 11/326 20140101ALI20230804BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20230804BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20230804BHJP
【FI】
C09D11/40
C09D11/322
C09D11/326
B41M5/00 120
B41J2/01 501
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019062060
(22)【出願日】2019-03-28
(65)【公開番号】P2020125437
(43)【公開日】2020-08-20
【審査請求日】2021-12-17
(31)【優先権主張番号】P 2019018007
(32)【優先日】2019-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石井 竜
(72)【発明者】
【氏名】笹沢 幸生
(72)【発明者】
【氏名】川口 彬
【審査官】松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2003/062330(WO,A1)
【文献】国際公開第2003/062329(WO,A1)
【文献】特開2016-176070(JP,A)
【文献】特開2016-138160(JP,A)
【文献】特開2014-025008(JP,A)
【文献】特開2014-169379(JP,A)
【文献】特開2014-046478(JP,A)
【文献】国際公開第2008/126469(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0302300(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00-11/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクの総質量中における着色剤の含有量が異なる、水系の濃色インクと水系の淡色インクを備えた水系のインクジェット記録用インクセットであって、上記の濃色インクと淡色インクが、着色剤として、いずれも水不溶性の着色剤を含有し、水不溶性の着色剤が顔料であり、濃色インクの着色剤の含有量が3~7%であり、濃色インク及び淡色インクの静的表面張力が、いずれも27mN/m以下であり、上記の濃色インクの静的表面張力から、淡色インクの静的表面張力を減じた値が±4mN/m以内であるインクセット。但し、上記の濃色インク及び淡色インクは、活性エネルギー線を照射することにより硬化する活性エネルギー線硬化型インクであるものを除く。
【請求項2】
上記の濃色インク及び淡色インクの少なくとも一方が、シリコーン系界面活性剤、及びフッ素系界面活性剤から選択される界面活性剤を含有する請求項1に記載のインクセット。
【請求項3】
上記の濃色インク及び淡色インクの両方が、シリコーン界面活性剤、及びフッ素系界面活性剤から選択される界面活性剤を含有する請求項に記載のインクセット。
【請求項4】
さらに有機溶剤を含有する、請求項1~のいずれか一項に記載のインクセット。
【請求項5】
請求項1~のいずれか一項に記載のインクセットの各インクの液滴を、記録信号に応じてインクジェットプリンタから吐出させて、記録メディアに付着させることにより記録を行うインクジェット記録方法。
【請求項6】
上記記録メディアがインク難吸収性、又はインク非吸収性の記録メディアである請求項に記載のインクジェット記録方法。
【請求項7】
請求項1~のいずれか一項に記載のインクセットの各インクが付着した記録メディア。
【請求項8】
請求項1~のいずれか一項に記載のインクセットの各インクを含有する容器を有するインクジェットプリンタ。
【請求項9】
請求項1~のいずれか一項に記載のインクセットを用いる、濃色インク及び淡色インクの色間にじみの抑制方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は濃色インクと淡色インクのインクセット、及びそのインクセットを用いるインクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタを用いたインクジェット記録方法は、インクの小液滴をプリンタから吐出して、これを紙等の記録メディアに付着させて印刷を行う方法である。この方法は、小型化、高速化が容易であるため近年急速に普及し、産業用途として応用も進んでいる。
【0003】
インクジェット記録方法によってカラー画像を形成するときは、少なくともブラック、シアン、マゼンタ、及びイエローの4色のインクをインクセットとして用いるのが一般的である。
しかしながら、この4色で淡い色の画像(換言すると、着色剤の濃度が低い画像)を表現するときは、インクの塗布量を少なくする必要がある。インクの塗布量を少なくするためには、インク滴の吐出量を少なくする必要がある。その結果、淡い色の画像に粒状感を与えてしまい、高品質の画像を表現できないことが大きな問題となっている。
この問題を解決する方法の1つとして、通常のブラック、シアン、マゼンタ、及びイエローの各濃色インク(着色剤の濃度が高い、通常のインク)に加えて、淡色ブラック、淡色シアン、淡色マゼンタ、及び淡色イエローといった淡色インクを有するインクセットが装填されたインクジェットプリンタが開発されている。淡色インクとは、通常の濃色インクに対して同様の色相を有し、且つ着色剤の濃度が低いインクを意味する。淡い色の画像を印刷するときに淡色インクを用いることにより、インク滴の吐出量を少なくする必要がなくなる。このため、粒状感を与えない、高品質のカラー画像を表現することができる。
【0004】
【文献】特許第5279255号公報
【文献】特許第5062246号公報
【文献】特許第4232202号公報
【0005】
しかしながら、濃色インクと淡色インクのインクセットを用いて、淡い色から濃い色までの全ての画像を表現すると、淡色インクと濃色インクの両方が重なる画像領域が生じる。そのような画像領域においては、濃色インクと淡色インクの色間における「にじみ(ブリード)」が生じ易く、これが新たな問題となっている。そのような色間にじみが生じると、画像品質が極めて劣化する。このため、滲みを生じない濃色インクと淡色インクのインクセットが市場から強く求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、濃色インクと淡色インクの色間のにじみを抑制できるインクセットの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、濃色インク及び淡色インクの静的表面張力、及びそれらの差が特定の範囲であるインクセットにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は以下の[1]~[11]に関する。
【0008】
[1]
インクの総質量中における着色剤の含有量が異なる、濃色インクと淡色インクを備えたインクジェット記録用インクセットであって、濃色インク及び淡色インクの静的表面張力が、いずれも27mN/m以下であり、上記の濃色インクの静的表面張力から、淡色インクの静的表面張力を減じた値が±4mN/m以内であるインクセット。
[2]
上記の濃色インクと淡色インクが、着色剤として、いずれも水不溶性の着色剤を含有する上記[1]に記載のインクセット。
[3]
水不溶性の着色剤が顔料である、上記[2]に記載のインクセット。
[4]
上記の濃色インク及び淡色インクの少なくとも一方が、シリコーン系界面活性剤、及びフッ素系界面活性剤から選択される界面活性剤を含有する上記[1]に記載のインクセット。
[5]
上記の濃色インク及び淡色インクの両方が、シリコーン界面活性剤、及びフッ素系界面活性剤から選択される界面活性剤を含有する上記[4]に記載のインクセット。
[6]
さらに有機溶剤を含有する、上記[1]~[5]のいずれか一項に記載のインクセット。
[7]
上記[1]~[6]のいずれか一項に記載のインクセットの各インクの液滴を、記録信号に応じてインクジェットプリンタから吐出させて、記録メディアに付着させることにより記録を行うインクジェット記録方法。
[8]
上記記録メディアがインク難吸収性、又はインク非吸収性の記録メディアである上記[7]に記載のインクジェット記録方法。
[9]
上記[1]~[6]のいずれか一項に記載のインクセットの各インクが付着した記録メディア。
[10]
上記[1]~[6]のいずれか一項に記載のインクセットの各インクを含有する容器を有するインクジェットプリンタ。
[11]
上記[1]~[6]のいずれか一項に記載のインクセットを用いる、濃色インク及び淡色インクの色間にじみの抑制方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、濃色インクと淡色インクの色間のにじみを抑制できるインクセットを提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において、「C.I.」とは、カラーインデックスの略語である。また、本明細書中、「%」及び「部」数については、特に断りのない限り、いずれも質量基準で記載する。
また、本明細書において、濃色インクと淡色インクとを区別する必要がないときは、単に「インク」と記載して、両方を含む意味で使用することがある。
上記インクセットは、いずれも水系の濃色インクと淡色インクとからなる、水系のインクセットである。
【0011】
[濃色インク]
上記濃色インクが含有する着色剤の総含有量は通常3%~7%、好ましくは3%~6%、より好ましくは3.5%~5.5%である。
このような含有量とすることにより、記録画像の色濃度、及び吐出性の両方を良好にすることができる。
【0012】
[淡色インク]
上記淡色インクが含有する着色剤の総含有量は通常0.1%~2.5%、好ましくは0.5%~2%、より好ましくは0.7%~1.5%、さらに好ましくは0.9%~1.3%である。
このような含有量とすることにより、淡い色の記録画像を、粒状感なく表現することができる。
【0013】
[静的表面張力]
上記濃色インクと、淡色インクの静的表面張力は、いずれも27mN/m以下である。このような範囲とすることにより、インク受容層を有さない、例えばインク非吸収性メディア及びインク難吸収性メディアに対しても、インク受容層を有する記録メディアと同様に、記録を行うことができる。
また、濃色インクの静的表面張力から、淡色インクの静的表面張力を減じた値は±4mN/m以内とするのが好ましい。このような静的表面張力とすることにより、インク非吸収性メディア、インク難吸収性メディアに記録したときであっても、濃色インクと淡色インクの色間にじみを抑制することができる。本明細書においては、表面張力の測定値における、小数点以下1桁目を四捨五入した数値を表面張力の値として採用する。
静的表面張力の調整には、界面活性剤を使用することができる。それらの中ではシリコーン系界面活性剤、及びフッ素系界面活性剤から選択される界面活性剤が好ましい。これらの界面活性剤を使用することにより、各インクの静的表面張力の範囲を、上記の範囲に調整することができる。
【0014】
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、ポリエーテル変性シロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられ、具体例としては、BYK-306、BYK-307、BYK-333、BYK-341、BYK-345、BYK-346、BYK-347、BYK-348、BYK-349、BYK-3455(ビックケミー社製)、KF-351A、KF-352A、KF-353、KF-354L、KF-355A、KF-615A、KF-945、KF-640、KF-642、KF-643、KF-6020、X-22-4515、KF-6011、KF-6012、KF-6015、KF-6017(信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0015】
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルかるボン酸系化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付与物、及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシ歩き連エーテルポリマー化合物等が挙げられ、具体例としては、Zonyl TBS、FSP、FSA、FSN-100、FSN、FSO-100、FSO、FS-300、(DuPont社製);Capstone FS-30、FS-31、FS-3100(Chemours社製);PF-151N、PF-154N(オムノバ社製);F-114、F-410、F-444、EXP.TF-2066、EXP.TF-2148、EXP.TF-2149、F-430、F-477、F-552、F-553、F-554、F-555、F-556、F-557、F-558.F-559、F-561、F-562、R-40、R-41、RS-72-K、RS-75、RS-76-E、RS-76-NS、RS-77、EXP.TF-1540、EXP.TF-1760(DIC株式会社製);BYK-340、BYK-3440、BYK-3441等(ビックケミー社製)が挙げられる。
【0016】
[着色剤]
上記インクセットの各インクが含有する着色剤は特に限定されず、公知の染料、及び顔料等を必要に応じて使用することができる。それらの中で、記録画像の耐光性、及び耐水性等の画像堅牢性の観点からは、水不溶性の着色剤が好ましく、顔料がより好ましい。
【0017】
ブラック着色剤としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラックが好ましい。カーボンブラックの具体例としては、例えばRaven 760 ULTRA、Raven 780 ULTRA、Raven 790 ULTRA、Raven 1060 ULTRA、Raven 1080 ULTRA、Raven 1170、Raven 1190 ULTRA II、Raven 1200、Raven 1250、Raven 1255、Raven 1500、Raven 2000、Raven 2500U LTRA、Raven 3500、Raven 5000 ULTRA II、Raven 5250、Raven 5750、Raven 7000(コロンビア・カーボン社製);Monarch 700、Monarch 800、Monarch 880、Monarch 900、Monarch 1000、Monarch 1100、Monarch 1300、Monarch 1400、Regal 1330R、Regal 1400R、Regal 1660R、Mogul L(キャボット社製);Color Black FW1、Color Black FW2、Color Black FW2V、Color Black FW200、Color Black S150、Color Black S160、Color Black S170、Printex 35、Printex U、Printex V、 Printex 140U、 Printex 140V、 SpecIal Black 4、SpecIal Black 4A、SpecIal Black 5、Special Black 6、Nerox305、Nerox505、Nerox510、Nerox600、Nerox605(オリオンエンジニアドカーボンズ社製);MA7、MA8、MA100、MA600、MCF-88、No.25、No.33、No.40、No.47、No.52、No.900、No.2300(三菱化学株式会社製)等が挙げられる。
【0018】
シアン着色剤としては、例えばC.I.Pigment Blue 1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、22、25、60、66、80等が挙げられる。
【0019】
マゼンタ着色剤としては、例えばC.I.Pigment Red 5、7、12、48、48:1、57、88、112、122、123、146、149、150、166、168、177、178、179、184、185、202、206、207、254、255、257、260、264、272及びC.I.Pigment Violet19等が挙げられる。
【0020】
イエロー着色剤としては、例えば、C.I.Pigment Yellow 1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、16、17、24、34、35、37、53、55、65、73、74、75、81、83、93、94、95、97、98、99、108、109、110、113、114、117、120、124、128、129、133、138、139、147、151、153、154、155、167、172、180。185、213等が挙げられる。
【0021】
上記の着色剤は、いずれも単一の着色剤を用いることができる。また、色相の調整等を目的として、2つ以上の着色剤を併用することもできる。
また、水不溶性の着色剤は、濃色インク及び淡色インク中において、安定に分散されているのが好ましい。そのような分散液を得るために、水不溶性の着色剤の表面に、科学的に分散性付与基を付与した表面処理顔料(自己分散顔料ともいう)を用いることができる。また、水不溶性の着色剤の表面の一部、又は全部を高分子分散剤で被覆した着色剤(マイクロカプセル型着色剤等ともいう)を用いることもできる。
【0022】
[インク調整剤]
上記の濃色インク、及び淡色インクは、例えば、有機溶剤、分散剤、消泡剤、防腐防黴剤、pH調整剤、キレート試薬、防錆剤、水溶性高分子化合物、水分散性樹脂等のインク調整剤を、必要に応じて含有できる。
【0023】
上記インクは、有機溶剤を含有するのが好ましい。有機溶剤としては水溶性有機溶剤が好ましい。しかしながら、水難溶性の有機溶剤であっても、水溶性有機溶剤と併用することにより、インクが層分離をしない範囲で使用することができる。本明細書において、水難溶性の有機溶剤とは、25℃の水に対して通常3%以下、好ましくは2%以下の溶解性を示すことを目安とする。
水溶性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、第二ブタノール、第三ブタノール等のC1-C6アルカノール;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のカルボン酸アミド;2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-メチルピロリジン-2-オン等のラクタム;1,3-ジメチルイミダゾリジン-2-オン、1,3-ジメチルヘキサヒドロピリミド-2-オン等の環式尿素類;アセトン、2-メチル-2-ヒドロキシペンタン-4-オン、エチレンカーボネート等のケトン又はケトアルコール;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ブチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール(好ましくは分子量400、800、1540、又はそれ以上のもの)、ポリプロピレングリコール、チオジグリコール、ジチオジグリコール等のC2-C6アルキレン単位を有するモノ、オリゴ、若しくはポリアルキレングリコール又はチオグリコール;グリセリン、ジグリセリン、ヘキサン-1,2,6-トリオール、トリメチロールプロパン等のC3-C9ポリオール(トリオール);エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル(好ましくはC3-C10のモノ、ジ又はトリエチレングリコールエーテル、及びC4-C13のモノ、ジ又はトリプロピレングリコールエーテルよりなる群から選択されるグリコールエーテル);1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール等の、C5-C9アルカンジオール;γ-ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
【0024】
また、水難溶性の有機溶剤としては、ヒドロキシ基とアシロキシ基を有するC8-16(好ましくはC8-12)アルキル、C10~C12アルカンジオール等が挙げられる。その具体例としては、例えばテキサノールが挙げられる。
【0025】
[分散剤]
水不溶性の着色剤をインク中に含有するときは、分散剤により着色剤を均一、且つ安定に、インク中に分散することが好ましい。分散剤としては、スチレン及びその誘導体;ビニルナフタレン及びその誘導体;α,β-エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル等;アクリル酸及びその誘導体;マレイン酸及びその誘導体;イタコン酸及びその誘導体;フマール酸及びその誘導体;酢酸ビニル、ビニルアルコール、ビニルピロリドン、アクリルアミド、及びその誘導体;等よりなる群の単量体から選択される、少なくとも2つの単量体(好ましくは、このうち少なくとも1つが親水性の単量体)からなる共重合体、例えば、ブロック共重合体、ランダム共重合体及びグラフト共重合体が挙げられる。必要に応じて、これらは塩等とすることができる。
分散剤の重量平均分子量としては、おおよそ1000~30000、好ましくは1250~25000、より好ましくは1500~20000程度である。また、酸価としては、おおよそ80~300、好ましくは90~275、より好ましくは100~250程度である。
分散剤は市販品として入手することも可能である。その具体例としては、いずれもBASF社製の、ジョンクリル 61J、67、68、450、55、555、586、678、680、682、683、690;及び、B-36;等が挙げられる。
さらに、分散剤としては、リビングラジカル重合法により共重合して得られるランダム共重合体及びブロック共重合体を用いることもできる。
【0026】
消泡剤としては、例えば、シリコーン系、シリカ鉱物油系、オレフィン系、アセチレン系等が挙げられる。市販の消泡剤で入手可能なものとして、例えば、いずれも信越化学工業株式会社製のサーフィノール DF37、DF58、DF110D、DF220、MD-20、オルフィン SK-14等が挙げられる。
【0027】
防黴剤としては、デヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ナトリウムピリジンチオン-1-オキシド、p-ヒドロキシ安息香酸エチルエステル、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン及びその塩等が挙げられる。
【0028】
防腐剤としては、例えば有機硫黄系、有機窒素硫黄系、有機ハロゲン系、ハロアリールスルホン系、ヨードプロパギル系、ハロアルキルチオ系、ニトリル系、ピリジン系、8-オキシキノリン系、ベンゾチアゾール系、イソチアゾリン系、ジチオール系、ピリジンオキシド系、ニトロプロパン系、有機スズ系、フェノール系、第4アンモニウム塩系、トリアジン系、チアジン系、アニリド系、アダマンタン系、ジチオカーバメイト系、ブロム化インダノン系、ベンジルブロムアセテート系又は無機塩系等の化合物が挙げられる。有機ハロゲン系化合物の具体例としては、例えばペンタクロロフェノールナトリウムが挙げられ、ピリジンオキシド系化合物の具体例としては、例えば2-ピリジンチオール-1-オキサイドナトリウムが挙げられ、イソチアゾリン系化合物としては、例えば1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンマグネシウムクロライド、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンカルシウムクロライド、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンカルシウムクロライド等が挙げられる。その他の防腐防黴剤の具体例として、無水酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム又は安息香酸ナトリウム、アーチケミカル社製、商品名プロクセル GXL(S)やプロクセル XL-2(S)等が挙げられる。
【0029】
pH調整剤としては、調製されるインクに悪影響を及ぼさずに、インクのpHを所定の範囲に制御できるものであれば任意の物質を使用することができる。その具体例としては、例えばジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン等のアルカノールアミン;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化アンモニウム(アンモニア水);炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩;ケイ酸ナトリウム、酢酸カリウム等の有機酸のアルカリ金属塩;リン酸二ナトリウム等の無機塩基等が挙げられる。
【0030】
キレート試薬としては、例えばエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム又はウラシル二酢酸ナトリウム等が挙げられる。
【0031】
防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオグリコール酸アンモニウム、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、四硝酸ペンタエリスリトール又はジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト等が挙げられる。
【0032】
水溶性紫外線吸収剤としては、例えばスルホ化されたベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾ-ル系化合物、サリチル酸系化合物、桂皮酸系化合物又はトリアジン系化合物が挙げられる。
【0033】
水溶性高分子化合物としては、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体、ポリアミン又はポリイミン等が挙げられる。
【0034】
水分散性樹脂としては、室温で被膜化することにより、インク中の着色剤を記録メディアに定着できるものが好ましい。水分散性樹脂に使用される樹脂としては特に制限はなく、例えば、ウレタン系樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂等が挙げられる。
水分散性樹脂としては、水系の樹脂エマルションが好ましい。
樹脂エマルションの具体例としては、例えば、スーパーフレックス 126、150、170、210、420、470、820、830、860、890(ウレタン系樹脂エマルション、第一工業製薬社製);ハイドランHW-350、HW-178、HW-163、HW-171、AP-20、AP-30、AP-40F、WLS-201、WLS-210(ウレタン系樹脂エマルション、DIC株式会社製);0569、0850Z、2108(スチレン-ブタジエン系樹脂エマルション JSR株式会社製);AE980、AE981A、AE982、AE986B、AE104(アクリル系樹脂エマルション、イーテック株式会社製)、サイビノールSK-200(アクリル系樹脂エマルション、サイデン化学株式会社製)、ボンコート4001、ボンコート5454(アクリル系樹脂エマルション、DIC株式会社製)、等が挙げられる。
【0035】
酸化防止剤としては、例えば、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。上記有機系の褪色防止剤の例としては、ハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類又は複素環類等が挙げられる。
【0036】
上記インクを調製する方法としては、例えば、上記の顔料をサンドミル(ビーズミル)、ロールミル、ボールミル、ペイントシェーカー、超音波分散機、マイクロフルイダイザー等を用いて、水系の液中で撹拌混合する等の公知の方法を用いて水性の分散液を調製する。得られた分散液に、水、及び必要に応じてインク調製剤等を加え、撹拌、ホモジナイザー等を用いる公知の方法で混合することにより、インクを調製することができる。インクの各成分を混合する順番は、特に限定されない。
【0037】
上記インクをインクジェット記録に用いるときは、インクを精密濾過することにより、固体の夾雑物を除去することが好ましい。精密ろ過の方法としては、公知の方法を適宜用いることができる。例えば、ガラスろ紙GC-50(保留径子径0.5μm、アドバンテック社製)、ガラス濾紙GA-100(保留粒子径1.0μm、アドバンテック社製)といった濾紙を使用し、吸引濾過をする方法等が挙げられる。
【0038】
上記インクセットは、各種の記録において使用することができる。例えば、筆記具用、水性印刷、情報記録、捺染等に好適であり、インクジェット記録に用いることが特に好ましい。
【0039】
上記インクジェット記録方法は、上記インクセットの各インクの液滴を、記録信号に応じてインクジェットプリンタから吐出させて、記録メディアに付着させることにより記録を行う方法である。記録の際に使用するインクノズル等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0040】
インクジェットプリンタは、公知のいずれの記録方式を用いることができる。例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式;ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式);電気信号を音響ビームに変えインクに照射し、その放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式;インクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット方式等が挙げられる。
なお、上記インクジェット記録方法には、無色透明のインクを用いることにより、着色剤の定着性を向上させる方式等も含まれる。
産業用インクジェットプリンタは、印刷速度を高速にする目的で、ラインヘッド型のインクジェットプリンタの構成で、シングルパスでの印刷も好ましく行われる。上記インクにより、そのような印刷条件においても、濃色インクと淡色インクの色間のにじみが抑制された印刷画像を得ることができる。
【0041】
上記の記録メディアとしては特に制限はなく、上記インクセットが付着できる物質であれば、記録メディアとして使用できる。その具体例としては、例えば紙、フィルム等の記録用シート;繊維や布(セルロース、ナイロン、羊毛等);皮革;カラーフィルター用基材等が挙げられる。これらの中では、記録用シートが好ましい。
記録用シートは、インク受容層を有するものと、有さないものとに大別することができる。
インク受容層は、カチオン系ポリマーを基材に含浸あるいは塗工する方法;又は、多孔質シリカ、アルミナゾルや特殊セラミックス等の無機微粒子を、ポリビニルアルコールやポリビニルピロリドン等の親水性ポリマーと共に基材に塗工する方法等により設けられる。
基材としては紙、合成紙、フィルム等が使用できる。
インク受容層を有する情報伝達用シートは、通常インクジェット専用紙、インクジェット専用フィルム、光沢紙等と呼ばれる。
【0042】
インク受容層を有さない記録用シートとしてはグラビア印刷、オフセット印刷等の用途に用いられるコート紙、アート紙等の各種の用紙;ラベル印刷用途に用いられるキャストコート紙;OHPシート;プラスチックフィルム等が挙げられる。ここでいうプラスチックとは、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン等がある。
【0043】
インク受容層を有さない記録用シートにインクジェット記録をするときは、着色剤の定着性等を向上させる目的で、記録用シートを表面改質することも好ましく行われる。
【0044】
表面改質の方法としてはコロナ放電処理、プラズマ処理及びフレーム処理から選択される、少なくとも1つの処理を行うことが好ましい。これらの処理としては、公知の方法を用いることができる。また、これらの処理に基づく表面改質の効果は、経時的に減弱することが一般的に知られている。このため、記録用シートに表面改質を行ったときは、速やかにインクジェット記録を行うことが好ましい。
記録シートに対する表面改質は、望みの効果が得られるように処理の回数;処理の時間;及び、印可する電圧;等を適宜調整して行うことができる。表面改質の状態は公知の方法で接触角を測定するなどし、改質の状態を確認することができる。
【0045】
上記インクジェット記録方法は、上記インクセットの各インクを含有する容器を有するインクジェットプリンタを使用して、記録を行う方法である。
【0046】
特に断りのない限り、上記した全ての成分は、必要に応じて、そのうちの1種類のみを;また、2種類以上を同時に使用することができる。
また、上記した全ての事項について、好ましいもの同士の組み合わせはより好ましく、より好ましいもの同士の組み合わせはさらに好ましい。好ましいものとより好ましいものとの組み合わせ、より好ましいものとさらに好ましいものとの組み合わせ等においても同様である。
【0047】
本発明のインクセットにより、濃色インクと淡色インクの色間のにじみを抑制できる。また、淡い色の画像を印刷するときであっても、粒状感のない高品質な画像を得ることができる。
【実施例
【0048】
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
なお、特に断りのない限り、濾過分離の操作を行ったときは、濾紙としてガラス濾紙GC-50とガラス濾紙GA-100から選択される少なくとも1種類を使用し、吸引ろ過を行った。
分散液の総質量中における着色剤の含有量は、株式会社エイ・アンド・デイ社製、MS-70を用いた乾燥重量法により、着色剤の含有量のみの換算値として算出した。
各インクの静的表面張力は、CBVP-Z(協和界面科学株式会社製)を用いて測定した。
【0049】
[調製例1]:シアン分散液の調製
国際公開第2013/115071号の合成例3に記載のブロック共重合体を調製し、得られたブロック共重合体(6部)をメチルエチルケトン20部に溶解させ、均一な溶液とした。この液に、水酸化ナトリウム(0.45部)を水(53.55部)に溶解させた混合液を加えた後、C.I.Pigment Blue 15:4(大日精化株式会社製、Chromofine blue 4851、20部)を加え、1500rpmの条件下で15時間、サンドグラインダー中で分散処理を行い液を得た。得られた液に水(100部)を加えた後、この液を濾過しろ液を得た。得られたろ液から、エバポレーターでメチルエチルケトン、及び水の一部を減圧留去することにより、顔料含有量が11.7%のシアン分散液(Cdp)を得た。
【0050】
[調整例2]:濃色シアンインクDC~DC3の調製。
下記表1に記載の各成分を混合した後、3μmのメンブレンフィルターで夾雑物を濾別することにより、濃色のシアンインクであるDC1~DC3を得た。濃色インクの総質量中における、着色剤の総含有量は5%に調整した。
【0051】
[調整例3]:淡色シアンインクLC1~LC3の調製。
下記表1に記載の各成分を混合した後、3μmのメンブレンフィルターで夾雑物を濾別することにより、淡色のシアンインクであるLC1~LC3を得た。淡色インクの総質量中における、着色剤の総含有量は1%に調整した。
【0052】
[調整例4]:水分散瀬樹脂の樹脂エマルションの調製。
国際公開2015/147192号の調整例4を追試する事により、酸価6KOHmg/g、固形分が25%の樹脂エマルションを調製した。これを樹脂1とする。
【0053】
下記表1中の略号等は、以下の意味を有する。
Cdp:調製例1で得たシアン分散液。
TEG:トリエチレングリコール。
PG:プロピレングリコール。
GL-3:青木油脂株式会社製、製品名ブラウノン GL-3、グリセリンのポリオキシエチレン付加物、エチレンオキシ付加モル数3。
1,2-HD:1,2-ヘキサンジオール。
TEA:トリエタノールアミン。
Tex:テキサノール。
BYK-349:ビックケミー社製、商品名BYK-349。
FS-31:Chemours社製、商品名Capstone FS-31。
SF465:日信化学工業社製のアセチレングリコール系界面活性剤、商品名サーフィノール465。
樹脂1:調製例4で得た水分散性樹脂のエマルション
水:イオン交換水。
【0054】
【表1】
【0055】
[にじみ評価試験(1)]
下記表2及び表3に記載の濃色インクと淡色インクとを組み合わせ、実施例1~4、及び、比較例1~5のインクセットとした。
インクジェットヘッドKJ4B-QA(京セラ株式会社製)を搭載したインクジェットプリンタを用いて、雷鳥コート紙(中越パルプ工業株式会社製)に、上記のインクセットの濃色インク及び淡色インクが十字型に交差するようにインクジェット記録を行い、試験片を得た。
得られた試験片を室温で約24時間乾燥させた後、濃色インクと淡色インクが交差した部分の「にじみ」を目視にて観察し、下記A~Cの3段階の評価基準で評価した。評価結果を下記表2及び表3に示す。
なお、下記表中の括弧内の数値は、各インクの静的表面張力の測定値である。その単位は「mN/m」である。
また、下記表2及び表3中、「StD-StL」は、濃色インクの静的表面張力「StD」から淡色インクの静的表面張力「StL」を減じた数値である。
[評価基準]
A:滲みが殆ど認めず、実用上、全く問題はない。
B:僅かに滲みが認められるが、実用上の問題とはならない。
C:明らかな滲みが認めら、実用的な品質ではない。
【0056】
【表2】
【0057】
【表3】
【0058】
上記表2及び表3から分かるとおり、濃色インク及び淡色インクの両者の表面張力が27mN/m以下であり、濃色インクと淡色インクの表面張力差が±4以内のインクセットではにじみが認められないのに対して、それ以外のインクセットでは明らかなにじみが発生している事が分かる。
実施例1~4のインクセットにより得られた各試験片はいずれもにじみが認められず、良好な結果を示した。
【0059】
[調製例5]:イエロー分散液の調製
調整例1で使用したC.I.Pigment Blue 15:4の代わりにC.I.Pigment Yellow 74(クラリアント社製HANSA Yellow 5GX01)を用いる以外は調整例1と同様にして、顔料含有量が11.9%のイエロー分散液(Ydp)を得た。
【0060】
[調製例6]:濃色イエローインクDY1~DY2の調製
下記表4に記載の各成分を混合した後、3μmのメンブレンフィルターで夾雑物を濾別することにより、濃色のイエローインクであるDY1及びDY2を得た。濃色インクの総質量中における、着色剤の総含有量は5%に調整した。
【0061】
[調製例7]:淡色イエローインクLY1の調製
下記表4に記載の各成分を混合した後、3μmのメンブレンフィルターで夾雑物を濾別することにより、淡色のイエローインクであるLY1を得た。淡色インクの総質量中における、着色剤の総含有量は1%に調整した。
【0062】
[調製例8]:マゼンタ分散液の調製
調整例1で使用したC.I.Pigment Blue 15:4の代わりにC.I.Pigment Magenta 122(クラリアント社製Inkjet Magenta E02VP2621)を用いる以外は調整例1と同様にして、顔料含有量が12.2%のマゼンタ分散液(Mdp)を得た。
【0063】
[調製例9]:濃色マゼンタインクDM1~DM2の調製
下記表4に記載の各成分を混合した後、3μmのメンブレンフィルターで夾雑物を濾別することにより、濃色のマゼンタインクであるDM1及びDM2を得た。濃色インクの総質量中における、着色剤の総含有量は5%に調整した。
【0064】
[調製例10]:淡色マゼンタインクLM1の調製
下記表4に記載の各成分を混合した後、3μmのメンブレンフィルターで夾雑物を濾別することにより、淡色のマゼンタインクであるLM1を得た。淡色インクの総質量中における、着色剤の総含有量は1%に調整した。
【0065】
[調整例11]:濃色シアンインクDC4の調製。
下記表4に記載の各成分を混合した後、3μmのメンブレンフィルターで夾雑物を濾別することにより、濃色のシアンインクであるDC4を得た。濃色インクの総質量中における、着色剤の総含有量は5%に調整した。
【0066】
下記表4中で使用した新たな略号等は、以下の意味を有する。これら以外は、上記表1中の略号等と同じ意味を有する。
Ydp:調製例5で得たイエロー分散液。
Mdp:調製例8で得たマゼンタ分散液。
【0067】
【表4】
【0068】
[にじみ評価試験(2)]
下記表5及び表6に記載の濃色インクと淡色インクとを組み合わせ、実施例5~7、及び、比較例6~8のインクセットとした。
得られたインクセットを用いる以外は、上記「[にじみ評価試験(1)]」と同様にして、濃色インクと淡色インクが交差した部分の「にじみ」を目視にて観察し、上記A~Cの3段階の評価基準で評価した。評価結果を下記表5及び表6に示す。
なお、下記表中の括弧内の数値は、各インクの静的表面張力の測定値である。その単位は「mN/m」である。
また、下記表5及び表6中、「StD-StL」は、濃色インクの静的表面張力「StD」から淡色インクの静的表面張力「StL」を減じた数値である。
【0069】
【表5】
【0070】
【表6】
【0071】
上記表5~表6から分かるとおり、濃色インク及び淡色インクの両者の表面張力が27mN/m以下であり、濃色インクと淡色インクの表面張力差が±4以内のインクセットでは、上記表2に示したインクセットと同様に、にじみが認められないのに対して、それ以外のインクセットでは明らかなにじみが発生している事が分かる。
実施例5~7のインクセットにより得られた各試験片はいずれもにじみが認められず、良好な結果を示した。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明のインクセットは、濃色・淡色間でのにじみが抑えられている事から、インクジェット記録用インクセットとして極めて有用である。