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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-03
(45)【発行日】2023-08-14
(54)【発明の名称】車両用の温調システムおよび温調方法
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/22 20060101AFI20230804BHJP
【FI】
B60H1/22 651C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022148256
(22)【出願日】2022-09-16
【審査請求日】2023-01-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】足立 知康
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 徹三
(72)【発明者】
【氏名】中川 信也
(72)【発明者】
【氏名】小林 崇幸
(72)【発明者】
【氏名】山本 裕之
(72)【発明者】
【氏名】野山 英人
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 克弘
(72)【発明者】
【氏名】森下 昌俊
【審査官】大野 明良
(56)【参考文献】
【文献】特許第6083304(JP,B2)
【文献】特開2022-169906(JP,A)
【文献】国際公開第2015/107589(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用の温調システムであって、
圧縮機、高圧側熱交換器、減圧部、および低圧側熱交換器を含み、冷凍サイクルに従って冷媒が循環可能に構成される冷媒回路と、
前記冷媒に対して熱を授受する熱媒体が循環可能に構成される熱媒体回路と、を備え、
前記熱媒体回路は、
前記冷媒と前記熱媒体とを熱交換させる前記高圧側熱交換器と、
前記冷媒と前記熱媒体とを熱交換させる前記低圧側熱交換器と、
いずれも前記熱媒体を圧送可能に構成される第1ポンプおよび第2ポンプと、
外気と前記熱媒体とを熱交換させる室外熱交換器と、
前記熱媒体により加熱または冷却される温調対象に相当する、または前記温調対象の加熱または冷却に用いられる温調機器と、
前記室外熱交換器から前記熱媒体を迂回させる室外バイパス経路と、を含み、
前記温調システムは、運転モードとして、
前記低圧側熱交換器および前記室外熱交換器を前記熱媒体が前記第1ポンプにより循環する低圧側回路と、前記高圧側熱交換器および前記温調機器を前記熱媒体が前記第2ポンプにより循環する高圧側回路とが形成されるヒートポンプモードと、
前記高圧側熱交換器から流出した前記熱媒体が、前記温調機器を経由して前記低圧側熱交換器に流入し、さらに前記室外バイパス経路を通り、前記高圧側熱交換器に流入する圧縮機熱源モードと、を備えるとともに、
前記ヒートポンプモードまたは前記圧縮機熱源モードを選択可能に構成されるモード選択部と、
外気温度を検知する外気温センサと、を備え、
前記モード選択部は、
前記ヒートポンプモードおよび前記圧縮機熱源モードのそれぞれの外気温度-加熱能力特性の交点に対応する交点外気温度に設定されるか、または、前記交点外気温度よりも低い温度に設定される切替外気温度に対し、前記外気温センサにより検知される前記外気温度が高い場合は前記ヒートポンプモードを選択し、前記外気温度が低い場合は前記圧縮機熱源モードを選択するように構成される、
車両用温調システム。
【請求項2】
前記モード選択部は、前記ヒートポンプモードの前記外気温度-加熱能力特性における前記圧縮機熱源モードよりも加熱能力が劣る領域においては、前記切替外気温度を加熱負荷に応じて設定可能に構成される、
請求項1に記載の車両用温調システム。
【請求項3】
前記ヒートポンプモードの前記外気温度-加熱能力特性においては、前記外気温度が低下するにつれて前記加熱能力は低下し、
前記モード選択部は、前記加熱負荷と前記ヒートポンプモードの前記外気温度-加熱能力特性との交点に対応する前記切替外気温度に対し、前記外気温度が高い場合は前記ヒートポンプモードを選択し、前記外気温度が低い場合は前記圧縮機熱源モードを選択するように構成される、
請求項2に記載の車両用温調システム。
【請求項4】
前記高圧側熱交換器から前記熱媒体を迂回させる高圧側バイパス経路と、
前記高圧側熱交換器と前記高圧側バイパス経路との前記熱媒体の流量比を調整可能に構成される高圧側流量調整弁と、を備え、
前記運転モードとして、
前記低圧側熱交換器から流出した前記熱媒体が、前記室外熱交換器に流入し、さらに前記高圧側バイパス経路に流入する起動時圧縮機熱源モードを備える、
請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用温調システム。
【請求項5】
送られる空気と前記熱媒体とを熱交換させる室内熱交換器を備え、
前記起動時圧縮機熱源モードは、前記高圧側バイパス経路を流れた前記熱媒体を前記室内熱交換器に流入させた後に前記低圧側熱交換器に戻す、
請求項4に記載の車両用温調システム。
【請求項6】
車両用の温調システムを用いる温調方法であって、
前記温調システムは、
圧縮機、高圧側熱交換器、減圧部、および低圧側熱交換器を含み、冷凍サイクルに従って冷媒が循環可能に構成される冷媒回路と、
前記冷媒に対して熱を授受する熱媒体が循環可能に構成される熱媒体回路と、を備え、
前記熱媒体回路は、
前記冷媒と前記熱媒体とを熱交換させる前記高圧側熱交換器と、
前記冷媒と前記熱媒体とを熱交換させる前記低圧側熱交換器と、
いずれも前記熱媒体を圧送可能に構成される第1ポンプおよび第2ポンプと、
外気と前記熱媒体とを熱交換させる室外熱交換器と、
前記熱媒体により加熱または冷却される温調対象に相当する、または前記温調対象の加熱または冷却に用いられる温調機器と、
前記室外熱交換器から前記熱媒体を迂回させる室外バイパス経路と、を含み、
前記温調方法は、
前記低圧側熱交換器および前記室外熱交換器を前記熱媒体が前記第1ポンプにより循環する低圧側回路と、前記高圧側熱交換器および前記温調機器を前記熱媒体が前記第2ポンプにより循環する高圧側回路とが形成されるヒートポンプモードと、
前記高圧側熱交換器から流出した前記熱媒体が、前記温調機器を経由して前記低圧側熱交換器に流入し、さらに前記室外バイパス経路を通り、前記高圧側熱交換器に流入する圧縮機熱源モードとの一方を選択するにあたり、
前記ヒートポンプモードおよび前記圧縮機熱源モードのそれぞれの外気温度-加熱能力特性の交点に対応する交点外気温度、または、前記交点外気温度よりも低い温度に設定される切替外気温度に対し、検知される外気温度が高い場合は前記ヒートポンプモードを選択し、前記外気温度が低い場合は前記圧縮機熱源モードを選択する、
車両用温調方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に装備される温調システム、およびそれを用いる温調方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車や、エンジンおよび電動機から車両走行用の駆動力を得る所謂ハイブリッド自動車等の車両においては、熱源が不足しがちな中、冷暖房、除湿、換気等の車両に要求される空調機能の他、バッテリー等の車載機器の熱管理や排熱利用が要求される。そうした要求に対して、従来、ヒートポンプシステムに加え、バッテリーを冷却するチラーやバッテリーを加温するヒータを含むシステム、あるいは、ラジエーターの排熱により加温された水をポンプで温調対象に搬送するシステム等の複数のシステムが用いられてきた。
【0003】
空調および機器の熱管理を統合可能な車両用熱管理システムとしては、冷媒が冷凍サイクルに従って循環する一次ループと、一次ループの冷媒に対して熱を授受する熱媒体(水等)をポンプにより車載機器に搬送する二次ループとを備えたシステムが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
特許文献1に記載の熱管理システムは、冷媒回路の蒸発器および熱媒体外気熱交換器が配置される第1熱媒体回路と、冷媒回路の凝縮器および車室空調ユニットのヒータコアが配置される第2熱媒体回路とを備えている。第1熱媒体回路と第2熱媒体回路とは、第1切替手段および第2切替手段による流路の切り替えにより、非連結の状態(非連結モード)と、低外気温を想定した連結の状態(連結モード)とに切り替えられる。
【0005】
非連結モード時には、外気の熱を第2熱媒体回路の熱媒体へ汲み上げるヒートポンプ運転が行われる。連結モード時には、蒸発器から流出した熱媒体を熱媒体外気熱交換器へ流入させることなく、凝縮器から流出した熱媒体と合流させ、蒸発器および凝縮器に対して熱媒体を並列に流入させる。このとき第1熱媒体回路と第2熱媒体回路とが、蒸発器および凝縮器を介して連結されている。
【0006】
上記特許文献1では、連結モード時の第2熱媒体回路における熱媒体温度に関連する物理量(ρ2)に基づき、下記の数式を満たす場合には、連結モード時に第2熱媒体回路の熱媒体に投入できる熱量の方が、非連結モード時に第2熱媒体回路の熱媒体に投入できる熱量よりも大きくなると推定されるため、非連結モードから連結モードに切り替えている。
ρ2>A1×ρ1
ここで、ρ1は、非連結モード時に圧縮機が吸入する冷媒の密度であり、ρ2は、非連結モード時に圧縮機11が吸入する冷媒の密度である。A1は、非連結モード時の冷凍サイクルの成績係数(COP;Coefficient of Performance)である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第6083304号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1では、ヒートポンプ運転に相当する非連結モードから、連結モードへの切替条件として、非連結モード時および連結モード時のそれぞれの圧縮機吸入密度と、外気温に応じたCOPとに基づく指標を用いている。こうしたモード切替条件は、非連結モード時の熱媒体への入熱量と、連結モード時の熱媒体への入熱量とを比べて、より入熱量の大きい方を選択する。つまり、特許文献1は、暖房能力をより十分に確保することを指向しているが、暖房のために消費される電力が増加する可能性がある。
【0009】
また、特許文献1の連結モード時には、蒸発器から流出した熱媒体と、凝縮器から流出した熱媒体とが混合されることで、混合前のそれぞれの熱媒体の温度の中間の温度となって蒸発器および凝縮器に流入する。そのため、非連結モードと比べて、凝縮器より流出する熱媒体の温度上昇に時間がかかる。また、室内熱交換器に流入する熱媒体の流量が低下するので、加熱能力には改善の余地がある。
【0010】
本開示は、外気温が低いため熱源の確保が難しい状況であっても加熱能力を担保することが可能であるとともに、より適切なモード切替による温調対象の加熱が可能な車両用の温調システムおよび温調方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示は、車両用温調システムであって、圧縮機、高圧側熱交換器、減圧部、および低圧側熱交換器を含み、冷凍サイクルに従って冷媒が循環可能に構成される冷媒回路と、冷媒に対して熱を授受する熱媒体が循環可能に構成される熱媒体回路と、を備える。
熱媒体回路は、冷媒と熱媒体とを熱交換させる高圧側熱交換器と、冷媒と熱媒体とを熱交換させる低圧側熱交換器と、いずれも熱媒体を圧送可能に構成される第1ポンプおよび第2ポンプと、外気と熱媒体とを熱交換させる室外熱交換器と、熱媒体により加熱または冷却される温調対象に相当する、または前記温調対象の加熱または冷却に用いられる温調機器と、室外熱交換器から熱媒体を迂回させる室外バイパス経路と、を含む。
温調システムは、運転モードとして、低圧側熱交換器および室外熱交換器を熱媒体が第1ポンプにより循環する低圧側回路と、高圧側熱交換器および温調機器を熱媒体が第2ポンプにより循環する高圧側回路とが形成されるヒートポンプモードと、高圧側熱交換器から流出した熱媒体が、温調機器を経由して低圧側熱交換器に流入し、さらに室外バイパス経路を通り、高圧側熱交換器に流入する圧縮機熱源モードと、を備えるとともに、ヒートポンプモードまたは圧縮機熱源モードを選択可能に構成されるモード選択部と、外気温度を検知する外気温センサと、を備える。
モード選択部は、ヒートポンプモードおよび圧縮機熱源モードのそれぞれの外気温度-加熱能力特性の交点に対応する交点外気温度、または、交点外気温度よりも低い温度に設定される切替外気温度に対し、外気温センサにより検知される外気温度が高い場合はヒートポンプモードを選択し、外気温度が低い場合は圧縮機熱源モードを選択するように構成される。
【0012】
また、本開示は、車両用の温調方法にも展開することができる。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、モード選択部により、ヒートポンプモードおよび圧縮機熱源モードのそれぞれの外気温度-加熱能力特性の相関データに基づいて設定される切替外気温度を閾値として、モード選択の判定が行われる。そうすると、外気温度に依存する加熱能力に基づき、適切にヒートポンプモードまたは圧縮機熱源モードを選択することができる。
例えば、高圧側熱交換器と熱交換される熱媒体に投入される熱量の大きさで言うとヒートポンプモードよりも圧縮機熱源モードが適するのだとしても、外気温度と加熱能力との特性に基づき、外気からの吸熱により省電力で運転可能なヒートポンプモードを選択することが可能となる。そうすると、必要な加熱能力に対してヒートポンプモードにより得られる加熱能力が十分である場合には、圧縮機への電力投入により必要な熱量を得る圧縮機熱源モードが選択されないので、経済的な運転が可能となる。
【0014】
圧縮機熱源モードのとき、高圧側熱交換器と低圧側熱交換器とは直列に接続されているので、高圧側熱交換器と低圧側熱交換器とに対して熱媒体を並列に流入させる場合と比べて、高圧側熱交換器から流出した熱媒体の温度を早く上昇させることができる。また、温調機器の熱媒体循環量が大きいため、熱媒体と温調対象との熱交換量が大きくなる。
【0015】
さらに、圧縮機熱源モードのとき、高圧側熱交換器および室内熱交換器を経た熱媒体が、低圧側熱交換器により冷媒へと放熱されることにより、ヒートポンプモードと比べて冷媒回路の低圧が上昇し、それに伴い圧縮機に吸入される冷媒の密度が増加することで、冷媒の循環流量が増加する。冷媒循環流量の増加により熱交換能力が向上し、加熱能力を向上させることができるから、温調対象の温度を早期に目標温度まで到達させることができる。
【0016】
熱交換システムによれば、少なくとも圧縮機熱源モードを備えることにより、外気温が低いため熱源の確保が厳しい状況であっても、熱源確保に必要な電力を圧縮機等に供給しながら、加熱能力を担保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本開示の実施形態に係る車両用温調システムを示す回路図である(ヒートポンプモード)。
図2図1に記載のシステムのヒータモードによる運転状態を示す図である。
図3】モード選択部を含む制御装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図4】(a)および(b)は、ヒートポンプモードおよびヒータモードのそれぞれの外気温度-加熱能力特性を示すグラフである。
図5】モード判定の一例を示すフロー図である。
図6】本開示の第1変形例に係るモード選択を説明するためのグラフである。
図7】本開示の第2変形例に係る車両用温調システムを示す回路図である(起動時ヒータモード)。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら、本開示の一実施形態について説明する。
[実施形態]
図1に示す車両用の温調システム1は、例えば、エンジンを備えておらず走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得る電気自動車、あるいは、エンジンおよび電動機から車両走行用の駆動力を得る所謂ハイブリッド自動車等の図示しない車両に装備されている。温調システム1は、乗員が搭乗する車室8の冷暖房、除湿、換気等の空調の他、車両に搭載されているバッテリー装置(電源装置)、走行用モータ、発熱する電子機器等の車載装置の熱管理、排熱回収等を担う。適切な温度や湿度に空調したり、車載装置を適温に管理したりすることを「熱管理」と総称するものとする。
温調システム1およびその他の車載装置に備わる電動機器や電子機器には、車載のバッテリー装置に蓄えられた電力が供給される。車載のバッテリー装置は、車両停止時に外部電源から充電される。
【0019】
〔全体構成〕
温調システム1は、冷媒が循環可能に構成される冷媒回路10と、冷媒に対して熱を授受する熱媒体が循環可能に構成される熱媒体回路20と、温調システム1を所定の運転モードに設定し、運転モードに応じて温調システム1の運転状態を制御する制御装置5とを備えている。
また、温調システム1は、外気温度を検知する外気温センサ51、車室8内の温度(室温)を検知する室温センサ52等のセンサを含む。
【0020】
温調システム1は、乗員によりあるいは制御装置5により選択される複数の運転モードを備えている。本実施形態の温調システム1の運転モードのうち、ヒートポンプモードHP(図1)と、ヒータモードHT(図2)とについて後述する。
温調システム1は、ヒートポンプモードHPとヒータモードHTとを選択可能に構成されるモード選択部50を備えている。モード選択部50は、制御装置5に含まれていてもよい。
【0021】
〔冷媒回路の構成〕
冷媒回路10は、図1に構成の一例を示すように、圧縮機11と、凝縮器12と、膨張弁13と、蒸発器14とを備えている。冷媒回路10には、冷凍サイクルに従って冷媒が循環する。
冷媒回路10に封入される冷媒としては、公知の適宜な単一冷媒あるいは混合冷媒を用いることができる。例えば、本実施形態の冷媒として、R410A、R32等のHFC(Hydro Fluoro Carbon)冷媒や、R1234ze、R1234yf等のHFO(Hydro Fluoro Olefin)冷媒、あるいは、プロパン、イソブタン等の炭化水素(HC)系冷媒を用いることが可能である。特に、本実施形態の冷媒としてR1234yfを用いることが好ましい。
【0022】
上記に列挙したフロン系または炭化水素系の冷媒を用いる場合は、高圧側の冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルが構成される。
冷媒として二酸化炭素(CO)を用いる場合は、高圧側の冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超える遷臨界冷凍サイクルが構成される。その場合でも、本実施形態の凝縮器12と同様に高圧側熱交換器により冷媒が放熱し、本実施形態の蒸発器14と同様に低圧側熱交換器により冷媒が吸熱する作用が得られるから、二酸化炭素冷媒のように遷臨界冷凍サイクルを構成する冷媒も冷媒回路10に採用することができる。
【0023】
圧縮機11は、図示しないバッテリー装置から供給される電力により駆動されるモータを備えた電動圧縮機に相当する。圧縮機11は、図示しないハウジング内に吸入される冷媒を圧縮機構により断熱圧縮して吐出する。
凝縮器12は、圧縮機11から吐出された冷媒ガスを熱媒体と熱交換させる。
膨張弁13(減圧部)は、凝縮器12から流出した冷媒を減圧させることで断熱膨張させる。膨張弁13としては、制御装置5からの指令に基づき開度を制御可能な電子膨張弁を採用することが好ましい。但し、温度式膨張弁を採用したり、膨張弁13の代わりにキャピラリーチューブを採用したりすることも許容される。
【0024】
蒸発器14は、膨張弁13から流出した冷媒を熱媒体と熱交換させる。蒸発器14により蒸発した冷媒は、圧縮機11により吸入される。
蒸発器14と圧縮機11との間には、図示しないアキュムレータ(気液分離器)を設けることができる。
【0025】
凝縮器12には相対的に高い冷媒圧力(高圧)が与えられ、蒸発器14には相対的に低い冷媒圧力(低圧)が与えられる。冷媒は、高圧と低圧との圧力差に基づき冷媒回路10を循環する。
図1において、低圧側の冷媒の流れは太い実線により示され、高圧側の冷媒の流れは太い破線により示されている。図2以下でも同様である。
【0026】
〔熱媒体回路の構成〕
熱媒体回路20は、凝縮器12および蒸発器14により冷媒と熱を授受可能な熱媒体が循環可能に構成されている。熱媒体は、少なくとも1つ以上の温調対象の冷却または加熱に用いられる。本実施形態における温調対象の一つは、車室8内の空気に相当する。
熱媒体回路20に封入される熱媒体は、液相の状態を維持して熱媒体回路20を循環する水やブライン等の液体である。ブラインとしては、例えば、水およびプロピレングリコールの混合液、あるいは、水およびエチレングリコールの混合液を例示することができる。
【0027】
熱媒体回路20は、図1に構成の一例を示すように、凝縮器12と、蒸発器14と、第1ポンプ21および第2ポンプ22と、室外熱交換器23と、室外バイパス経路24と、室内熱交換器25と、複数の流路切替弁としての第1切替弁31、第2切替弁32、および第3切替弁33とを備えている。
【0028】
本実施形態において、第1切替弁31および第2切替弁32は四方弁であり、第3切替弁33は三方弁に相当する。図1に示すヒートポンプモードHPにおいて、第1切替弁31には、凝縮器12から流出した熱媒体と、蒸発器14から流出した熱媒体との両方が流通する。
【0029】
熱媒体回路20は、凝縮器12から熱媒体を迂回させる凝縮器バイパス経路12Aと、蒸発器14から熱媒体を迂回させる蒸発器バイパス経路14Aとを備えることが好ましい。その場合、熱媒体回路20は、凝縮器12と凝縮器バイパス経路12Aとの熱媒体の流量比を調整可能に構成される凝縮器流量調整弁12Vと、蒸発器14と蒸発器バイパス経路14Aとの熱媒体の流量比を調整可能に構成される蒸発器流量調整弁14Vとを備えることが好ましい。
【0030】
第1ポンプ21は、蒸発器14から流出した熱媒体を吸入して吐出することで熱媒体を圧送する。第2ポンプ22は、凝縮器12から流出した熱媒体を吸入して吐出することで熱媒体を圧送する。
【0031】
室外熱交換器23は、車室8の外側の外気と、熱媒体とを熱交換させる。室外熱交換器23は、例えば、車両の空気導入口の付近に配置されるラジエーターに相当する。車両の走行と、室外送風機23Aの動作とによって室外熱交換器23に供給される外気は、外気と熱媒体との温度差に基づいて、放熱または吸熱する。
【0032】
室外バイパス経路24は、室外熱交換器23から熱媒体を迂回させる。
【0033】
室内熱交換器25は、室内送風機25Aにより送られる空気と熱媒体とを熱交換させることで車室8内に空調空気を与える。室内送風機25Aは、車室8内の空気(内気)または外気を室内熱交換器25に向けて吹き付ける。
HVAC(Heating, Ventilation, and Air Conditioning)ユニットUは、室内熱交換器25と、室内送風機25Aと、室内送風機25Aにより送られる空気が流れる図示しないダクトとを含んで構成されている。
【0034】
第1~第3切替弁31,32,33の少なくとも1つにより熱媒体の流れが切り替えられることで、熱媒体回路20は、低圧側回路C1および高圧側回路C2を並列的に設定可能に構成されるとともに(図1)、直列回路CCを設定可能に構成される(図2)。
【0035】
凝縮器12から流出して凝縮器12に戻る熱媒体の高圧側回路C2と、蒸発器14から流出して蒸発器14に戻る低圧側回路C1とは、互いに分離している。以下において、低圧側回路C1および高圧側回路C2のことを並列回路C1,C2と称する場合がある。
凝縮器12を含む高圧側回路C2の熱媒体と、蒸発器14を含む低圧側回路C1の熱媒体とは相互に混合されない。
【0036】
並列回路C1,C2を示す図1において、低圧側回路C1を循環する相対的に低温の熱媒体(低温熱媒体)の流れが実線で示され、高圧側回路C2を循環する相対的に高温の熱媒体(高温熱媒体)の流れが一点鎖線で示されている。このとき、熱媒体回路20上の位置Aから位置Bまでは低温媒体のみが流れ、位置Cから位置Dまでは高温媒体のみが流れる。低温熱媒体および高温熱媒体のいずれも圧送されていない経路は、破線で示されている。
【0037】
一方、直列回路CCは、直列に配置される蒸発器14および凝縮器12を含む一つの連続した回路に相当する。直列回路CCが設定されるとき、例えば、図2に示すように、凝縮器12から流出した熱媒体が蒸発器14に流入し、さらに凝縮器12に流入する。
直列回路CCを示す図2においても、相対的に低温の熱媒体の流れが実線で示され、相対的に高温の熱媒体の流れが一点鎖線により示されている。図2を参照すると、並列回路C1,C2が設定される場合とは異なり、蒸発器14から流出し、凝縮器12に流入するまでの熱媒体の流れが実線で示され、凝縮器12から流出し、蒸発器14に流入するまでの熱媒体の流れが一点鎖線で示されている。これは、熱媒体が蒸発器14に流入すると、冷媒への放熱により熱媒体の温度が低下することを表し、熱媒体が凝縮器12に流入すると、冷媒からの吸熱により熱媒体の温度が上昇することを表している。
【0038】
直列回路CCが設定されるとき、熱媒体は、凝縮器12による温度上昇および蒸発器14による温度低下を繰り返しながら、凝縮器12と蒸発器14とを循環する。このとき、熱媒体回路20には、一つの連続した回路が形成されるので、第1ポンプ21および第2ポンプ22の少なくとも一方のみによって、熱媒体を圧送することができる。
但し、直列回路CCを用いる運転モードでも、2つのポンプ21,22を作動させることで、熱媒体回路20における熱媒体の循環流量を十分に得ることができる。
【0039】
第1~第3切替弁31~33のいずれも、制御装置5からの指令に基づき開閉制御が可能な電動弁であり、熱媒体の流路を切り替え可能に構成される。
第1~第3切替弁31~33は、必要な運転モードの実現に必要な経路を熱媒体回路20に設定するために、適宜な構造の適宜な数の電動弁に代替可能である。
【0040】
〔制御装置の構成〕
制御装置5は、図3に示すように、メモリ501、演算部502、記憶部503、および入出力部504を含むコンピュータに相当する。「コンピュータ」には、プログラマブルロジックコントローラ(PLC;programmable logic controller)も含まれる。
【0041】
制御装置5は、熱負荷に応じて圧縮機11の回転数制御等を行い、冷媒の循環流量を増減させることで、冷房能力および暖房能力をそれぞれ増減させることができる。
また、制御装置5は、例えば、室温、外気温度、熱媒体温度、冷媒の温度または圧力等、室温に相関する物理量をセンサにより検知し、検知された値と目標値との偏差を解消させるように圧縮機11の回転数等をフィードバック制御することにより、室温を目標温度に調整することができる。
【0042】
記憶部503には、モード選択部50を実行可能に構成されているコンピュータ・プログラムが記憶されている。
【0043】
モード選択部50は、コンピュータ・プログラムが実行されることにより、ヒートポンプモードHPおよびヒータモードHTのそれぞれの外気温度-加熱能力特性OH1,OH2(図4(a))に基づき、ヒートポンプモードHPおよびヒータモードHTのいずれかを選択する。
モード選択部50は、制御装置5とは別のコンピュータに含まれていてもよい。
【0044】
〔ヒートポンプモードの説明〕
次に、図1を参照し、ヒートポンプモードHP時の温調システム1の作用を説明する。
ヒートポンプモードHPは、車室8内を暖房するモードに相当し、熱源としての外気から、外気温よりも温度が高い高温熱媒体に熱を汲み上げて車室8まで搬送することで、車室8内を暖房する。
熱媒体回路20には、第1~第3切替弁31~33、凝縮器流量調整弁12V、および蒸発器流量調整弁14Vに対する制御指令に基づいて、ヒートポンプモードHPに対応する回路が設定される。
【0045】
ヒートポンプモードHP時に温調システム1は並列回路C1,C2を使用して運転される。ヒートポンプモードHP時は、高温熱媒体が室内熱交換器25に供給され、低温熱媒体が室外熱交換器23に供給される。
つまり、蒸発器14から流出した低温熱媒体は、実線の矢印で示すように、第2切替弁32を経由して室外熱交換器23へと流入する。外気から吸熱した熱媒体は、第1切替弁31および蒸発器流量調整弁14Vを経由して蒸発器14へと戻る。
蒸発器14に流入した熱媒体からの吸熱により冷媒は蒸発し、圧縮機11へと吸入される。圧縮機11から吐出された冷媒は、凝縮器12で熱媒体への放熱により凝縮し、これに伴い熱媒体は昇温する。
【0046】
図1に示す例では、蒸発器流量調整弁14Vによる流量調整により、第1切替弁31から蒸発器14に向けて流れる熱媒体の全量が、蒸発器バイパス経路14Aへは流入せずに蒸発器14へと流入する。
【0047】
凝縮器12から流出した高温熱媒体は、一点鎖線の矢印で示すように、第3切替弁33を経由して室内熱交換器25へと流入する。車室8内を温めた熱媒体は、第1切替弁31および凝縮器流量調整弁12Vを経由して凝縮器12へと戻る。
【0048】
図1に示す例では、凝縮器流量調整弁12Vによる流量調整により、第1切替弁31から凝縮器12に向けて流れる熱媒体の全量が、凝縮器バイパス経路12Aへは流入せずに凝縮器12へと流入する。
【0049】
ヒートポンプモードHPは、外気を熱源の一部として利用することにより、圧縮機11やポンプ21,22等の動力増加を抑えつつ、暖房能力を担保することができる。
【0050】
〔ヒータモードの説明〕
次に、図2を参照し、直列回路CCを用いる運転モードであるヒータモードHTについて説明する。外気温が0℃を大幅に下回る場合、例えば-20℃以下にまで外気温が低下した場合は、上述のヒートポンプモードHPにより外気から熱媒体に吸熱することができる熱量が少なくなるとともに、圧縮機11の吸入冷媒密度が低下し、圧縮機11の動力が小さくなる。そうした場合でも、ヒータモードHTにより、圧縮機11を熱源として暖房運転を行うことができる。ヒータモードHTは、圧縮機11の動力を温調対象の加熱に用いる。
【0051】
ヒータモードHTは、例えば抵抗加熱式の電気ヒータと同様に、供給電力に相応の熱量の熱が温調対象に供給される。そのため、「ヒータ」モードと称するが、ヒータモードHTの名称は、必ずしもこれに限られない。
なお、後述する起動時ヒータモードHT0は、ヒータモードHTへの移行を前提とするモードであるため、ヒータモードHTと同様の名称を使用するが、起動時ヒータモードHT0の名称も、必ずしもこれに限られない。
【0052】
ヒータモードHT時の熱媒体の具体的な流れを説明する。熱媒体から外気への放熱を防ぐため、室外バイパス経路24を通じて室外熱交換器23から熱媒体を迂回させる。このとき室外送風機23Aの作動は停止させてよい。
制御装置5は、第1切替弁31、第2切替弁32、蒸発器流量調整弁14V、凝縮器流量調整弁12V、室外送風機23A、および室内送風機25Aに指令を送ることで、ヒータモードHTに対応する経路を熱媒体回路20に設定する。
【0053】
凝縮器12により冷媒から吸熱した熱媒体は、第3切替弁33を経由して室内熱交換器25へと流入して車室8内の暖房に供される。そして、室内熱交換器25から流出した熱媒体は、第1切替弁31および蒸発器流量調整弁14Vを経由し、蒸発器14および蒸発器バイパス経路14Aのうち少なくとも蒸発器14に流入して冷媒へと放熱される。
蒸発器14から流出した熱媒体は、第2切替弁32から室外バイパス経路24に流入し、第1切替弁31と凝縮器流量調整弁12Vとの間で、第1切替弁31から凝縮器12に向かう流れに合流した後、凝縮器12および凝縮器バイパス経路12Aのうち少なくとも凝縮器12に流入して冷媒から吸熱する。
【0054】
ヒータモードHTにおいて、熱媒体は、外気への放熱を避けて室外バイパス経路24を流れつつ、圧縮機11の動力により発生した熱を冷媒から受け取り温調対象に搬送する。ヒータモードHTによれば、外気との熱の出入りがない系により運転されるので、外気温によらず、車室8内の暖房を継続して行うことができる。
【0055】
〔モード選択の説明〕
モード選択部50によるヒートポンプモードHPとヒータモードHTとのモード選択を説明する。
図4(a)の横軸は外気温度Tであり、縦軸は加熱能力CPである。図4(a)には、ヒートポンプモードHPの外気温度-加熱能力特性OH1が実線で示され、ヒータモードHTの外気温度-加熱能力特性OH2が一点鎖線で示されている。図4(a)は、特性OH1と特性OH2との相関データDTを示している。
【0056】
ここで、「加熱能力」は、圧縮機11の回転数が最大のときの加熱能力(以下、最大加熱能力と言う)に相当する。このときポンプ21,22の回転数も最大となる。ヒートポンプモードHPの最大加熱能力時には、第1切替弁31から蒸発器14に向けて流れる熱媒体の全量が蒸発器14に流入し、第1切替弁31から凝縮器12に向けて流れる熱媒体の全量が凝縮器12に流入する。
ヒータモードHTの最大加熱能力のとき、第1切替弁31から蒸発器14に向けて流れる熱媒体の全量が蒸発器14に流入し、第1切替弁31から凝縮器12に向けて流れる熱媒体の全量が凝縮器12に流入する。
【0057】
特性OH1より、ヒートポンプモードHP時には、外気温度Tが低下するにつれて次第に加熱能力CPが低下する。また、特性OH2より、ヒータモードHT時には、外気温度Tにかかわらず、加熱能力CPは一定である。
特性OH1,OH2に基づき、特性OH1を示す線と特性OH2を示す線とは交差する。これらの線の交点Xに対応する外気温度を交点外気温度Tと称する。この交点外気温度Tには切替外気温度Tが設定されている。
【0058】
モード選択部50は、切替外気温度Tに対し、外気温センサ51により検知される外気温度Tが高い場合はヒートポンプモードHPを選択し、切替外気温度Tに対し、外気温センサ51により検知される外気温度Tが低い場合はヒータモードHTを選択する。
切替外気温度Tよりも高い外気温度Tが検知されるときは、検知された外気温度Tに対応するヒートポンプモードHPの特性OH1における領域R2の加熱能力CPの方が、ヒータモードHTの加熱能力CPよりも高い。
一方、切替外気温度Tよりも低い外気温度Tが検知されるときは、ヒータモードHTの加熱能力CPの方が、外気温度Tに対応するヒートポンプモードHPの特性OH1の領域R1の加熱能力CPよりも高い。
制御装置5は、切替外気温度Tを閾値とする外気温度Tの判定に基づき、ヒートポンプモードHPおよびヒータモードHTのいずれか一方を温調システム1の運転モードとして設定することができる。
【0059】
続いて、図4(b)を参照し、温調システム1の空調負荷Lに応じてモードを選択する場合の一例を説明する。図5に示すように、上記の外気温度Tの判定によりヒートポンプモードHPが選択される場合には(ステップS01でNo)、モード選択部50は、以下の判定によるモード選択は行わずに、選択されるモードをヒートポンプモードHPに決定する(ステップS02)。
一方、上記の外気温度Tの判定(第1の判定)によりヒータモードHTが選択される場合(ステップS01でYes)、つまり、検知された外気温度Tに対応するヒートポンプモードHPの特性OH1の領域R1の加熱能力CPが、ヒータモードHTの加熱能力CPよりも劣る場合は、以下に説明する第2の判定により、空調負荷Lに応じて運転モードを決定することが好ましい(ステップS03~S05)。
【0060】
図4(b)には、温調システム1の加熱負荷である空調負荷Lの一例としてのL,Lが示されている。L<Lである。空調負荷L,Lのいずれも暖房負荷であり、暖房負荷は外気温が上昇するにつれて小さくなる。
ここで、「空調負荷」は、下記の式(1)により定義される。式中の空気温度は、厳密には空気エンタルピである。式中の風量は、厳密には質量流量である。
空調負荷L=風量Q×(目標吹き出し空気温度T- 吸い込み空気温度T)…(1)
【0061】
風量Qは、室内送風機25Aおよび車両の走行により室内熱交換器25に送られる空気の体積流量を言う。風量Qは、例えば、乗員による設定段数もしくは温調システム1による設定段数と、吹き出しモード(Face/Foot/Defogger等)とから取得可能である。
目標吹き出し空気温度Tは、HVACユニットUから車室8内に吹き出される空気の目標温度であり、車室8内の空気の目標温度から設定される。目標吹き出し空気温度Tは、室温センサ52等より算出される。
吸い込み空気温度Tは、室内送風機25Aおよび車両の走行により室内熱交換器25に導入される空気の温度を言う。吸い込み空気温度Tは、内気循環が設定されている場合は、室温センサ52により検知される室温に相当し、外気導入が設定されている場合は、外気温センサ51により検知される外気温に相当する。
外気温が0℃を大幅に下回る場合は、TとTとの差ΔTが大きいので空調負荷が高い。
【0062】
モード選択部50は、上記の式により空調負荷Lを演算し、空調負荷Lに応じて切替外気温度TSLを設定することが好ましい。例えば、空調負荷がLであるのならば、空調負荷LとヒートポンプモードHPの外気温-加熱能力特性OH1との交点X1に対応する温度Tに切替外気温TSLを設定する。また、空調負荷がLであるのならば、空調負荷LとヒートポンプモードHPの外気温-加熱能力特性OH1との交点X2に対応する温度Tに切替外気温TSLを設定する。
モード選択部50は、空調負荷Lに応じて設定された切替外気温度TSLに対し、外気温度Tが高い場合は(ステップS03でNo)ヒートポンプモードHPを選択し(ステップS04)、切替外気温度TSLに対し、外気温度Tが低い場合は(ステップS03でYes)ヒータモードHTを選択する(ステップS05)。
【0063】
例えば、外気温度TがTであって、空調負荷がLである場合は、TSL=Tとなるため(ステップS03でNo)、ヒートポンプモードHPが選択される(ステップS04)。
一方、外気温度Tが同様にTであって、空調負荷がLよりも大きいLである場合は、TSL>Tとなるため(ステップS03でYes)、ヒータモードHTが選択される(ステップS05)。
【0064】
外気温度TがTであって、空調負荷がLである場合は、TSL<Tとなるため(ステップS03でNo)、ヒートポンプモードHPが選択される(ステップS04)。
また、外気温度Tが同様にTであって、空調負荷がLよりも大きいLである場合も、TSL=Tとなるから(ステップS03でNo)、ヒートポンプモードHPが選択される(ステップS04)。但し、外気温度Tが変わらずTであっても、空調負荷がLよりも高くなれば、TSL>Tとなるため(ステップS03でYes)、ヒータモードHTが選択される(ステップS05)
【0065】
制御装置5は、切替外気温度TSLを閾値とする外気温度Tの判定に基づき、ヒートポンプモードHPおよびヒータモードHTのいずれか一方を温調システム1の運転モードとして設定することができる。
【0066】
〔本実施形態による主な作用効果〕
【0067】
モード選択部50により、ヒートポンプモードHPおよびヒータモードHTのそれぞれの外気温度-加熱能力特性OH1,OH2の相関データDTに基づいて設定される切替外気温度Tを閾値として、モード選択の判定を行うことができる。そうすると、外気温度Tに依存する加熱能力CPに基づき、適切にヒートポンプモードHPまたはヒータモードHTを選択することができる。
外気温度Tが0℃を大幅に下回る場合など、空調負荷Lが高い場合は、圧縮機11を熱源として動作するヒータモードHTが選択されることで、外気温度Tによらず、能力不足を起こさずに加熱対象を加熱することができる。
また、仮に、凝縮器12と熱交換される熱媒体に投入される熱量の大きさで言うとヒートポンプモードHPよりもヒータモードHTが適するのだとしても、外気温度Tと加熱能力CPとの特性OH1,OH2に基づき、外気からの吸熱により省電力で運転可能なヒートポンプモードHPを選択することができる。そうすると、必要な加熱能力に対してヒートポンプモードHPにより得られる加熱能力が十分である場合には、圧縮機11への電力投入により必要な熱量を得るヒータモードHTが選択されないので、経済的な運転が可能となる。
【0068】
さらに、ヒータモードHTの加熱能力CPに対してヒートポンプモードHPの加熱能力CPが劣る領域R1については、空調負荷L(L,L)とヒートポンプモードHPの特性OH1との交点(X1,X2)に対応する温度に設定される切替外気温度TSLを用いて、ヒートポンプモードHPおよびヒータモードHTのうち、空調負荷Lに足りる運転モードを選択することができる。このように空調負荷Lに基づいて適切にモードが選択されることによれば、より一層経済的な運転が可能となる。
【0069】
以上に加えて、直列回路CCを用いるヒータモードHTのとき、凝縮器12と蒸発器14とは直列に接続されているので、凝縮器12と蒸発器14とに対して熱媒体を並列に流入させる場合と比べて、凝縮器12から流出した熱媒体の温度を早く上昇させることができる。また、室内熱交換器25の熱媒体循環量が大きいため、熱媒体と空気との熱交換量が大きくなる。
【0070】
さらに、ヒータモードHTのとき、凝縮器12および室内熱交換器25を経た熱媒体が、蒸発器14により冷媒へと放熱されることにより、ヒートポンプモードHPと比べて冷媒回路10の低圧が上昇し、それに伴い圧縮機11に吸入される冷媒の密度が増加することで、冷媒の循環流量が増加する。冷媒循環流量の増加により熱交換能力が向上し、暖房能力を向上させることができるから、車室8内の温度を早期に目標温度まで到達させることができる。
【0071】
温調システム1によれば、少なくともヒータモードHTを備えることにより、外気温が低いため熱源の確保が厳しい状況であっても、熱源確保に必要な電力を圧縮機11等に供給しながら、加熱能力を担保することができる。
【0072】
[第1変形例]
図6に示すように、切替外気温度Tは、交点外気温度Tよりも低温側にシフトして設定されていても良い。この場合に、上述の第1の判定(ステップS01)のみに基づいてモード選択を行うとすると、切替外気温度Tよりも外気温度Tが高いとき、ヒータモードHTに対して加熱能力CPが劣るヒートポンプモードHPが選択される場合がある。
しかし、特性OH1,OH2の加熱能力CPは、最大加熱能力であるため、殆どの場合、実際の空調負荷Lに対して必要な加熱能力は不足しない。そのため、切替外気温度Tを交点外気温度Tに対して所定の温度差Δxだけ低い外気温度に設定しておくことで、外気温が低下してもヒートポンプモードHPの運転を出来るだけ継続させて経済的に運転することができる。
【0073】
また、切替外気温度Tは、最大の空調負荷に基づき、交点外気温度Tから交点Xmaxまで温度差Δx´だけ低い外気温度に設定することもできる(T´)。交点Xmaxは、外気導入および風量最大を想定した最大の空調負荷Lmaxと、特性OH1との交点である。
【0074】
[第2変形例]
上記実施形態の温調システム1は、図7に示す起動時用のヒータモードとしての起動時ヒータモードHT0を備えていてもよい。
【0075】
例えば車両が長時間停止した後に温調システム1が起動される場合を想定して、起動時ヒータモードHT0およびヒータモードHTを説明する。温調システム1の起動後、制御装置5は、ヒータモードHTに先行して起動時ヒータモードHT0を実施することが好ましい。そうすることで、暖房運転をより早期に立ち上げることができる。
【0076】
車両の長時間停止後の温調システム1の起動時に外気温が0℃を大幅に下回る場合、熱媒体の温度も外気温と同様に低い。そのため、温調システム1が始動された直後は、熱媒体により冷媒が冷却されることで冷媒回路10の低圧が降下し、冷媒の蒸発温度は外気温よりも低くなる。そのため、温調システム1の起動時には、起動時ヒータモードHT0により、車室8内の暖房に優先して、室外熱交換器23により外気から熱媒体に吸熱させた熱を冷媒に伝達することで冷媒を加温すると良い。その後、冷媒回路10の低圧が所定値まで上昇し、冷媒回路10が定常運転することで、圧縮機11の動力から熱媒体に取り出した熱により温調対象を加熱することが可能となるのでヒータモードHTに移行すると良い。
【0077】
〔起動時ヒータモードの説明〕
図7を参照し、熱媒体の具体的な流れと共に、直列回路CCを用いる起動時ヒータモードHT0の作用を説明する。起動時ヒータモードHT0では、室外熱交換器23により外気から熱媒体に吸熱させるため、室外熱交換器23に熱媒体を流入させる。また、冷媒の加温を車室8内の暖房に優先させるため、凝縮器12に熱媒体を流入させずに凝縮器バイパス経路12Aへと迂回させることで、冷媒の熱媒体への放熱を防ぐ。そして、蒸発器14において熱媒体から冷媒へと放熱させる。
さらには、室内熱交換器25における空気と熱媒体との熱交換を抑えるために、室内送風機25Aの作動を停止させることが好ましい。
【0078】
起動時ヒータモードHT0では、凝縮器12から熱媒体を迂回させているため、凝縮器12を熱媒体が流れる場合と比べて熱媒体の圧力損失が小さい。
【0079】
蒸発器14から流出した熱媒体は、第2切替弁32を経由して室外熱交換器23へと流入し、外気から吸熱する。図7では、外気からの吸熱により昇温した熱媒体を一点鎖線で示している。室外熱交換器23から流出した熱媒体は、第1切替弁31、凝縮器流量調整弁12Vを経由して凝縮器バイパス経路12Aに流入することで、凝縮器12を迂回する。凝縮器バイパス経路12Aから流出した熱媒体は、第3切替弁33を経由して室内熱交換器25に流入する。しかし、室内送風機25Aが停止しているため、室内熱交換器25における熱媒体と、未空調の冷たい空気との熱交換は抑えられている。室内熱交換器25から流出した熱媒体は、第1切替弁31、および蒸発器流路調整弁14Vを経由して蒸発器14へと戻る。そして、蒸発器14により冷媒へと放熱され、低温熱媒体となって蒸発器14から流出する。
【0080】
室外熱交換器23の出口から、凝縮器バイパス経路12Aおよび室内熱交換器25を経て蒸発器14の入口までの間に亘り、熱媒体と冷媒との間の熱の授受、および熱媒体と空気との間の熱の授受は抑えられている。外気から吸熱した熱媒体は、凝縮器バイパス経路12Aと室内熱交換器25とを通過して、冷媒が流れる蒸発器14まで熱を搬送する。
【0081】
外気温が氷点下の非常に低い状態で車両が停止している間に、熱媒体および冷媒のそれぞれの温度は外気温と同程度にまで下がっている。そのため、温調システム1の起動により圧縮機11の起動が開始され、冷凍サイクルが始動した直後は、冷媒が熱媒体を冷却する。しかし、起動時ヒータモードHT0によれば、外気から熱媒体に吸熱した熱を冷媒に継続的に伝達することで、冷媒回路10の低圧が次第に上昇し、蒸発温度も上昇する。その過程で、冷媒と熱を授受する熱媒体の温度も上昇する。
【0082】
熱媒体の温度が外気温を超えると外気からの吸熱が不十分となるので、制御装置5は、熱媒体が外気温に近づいた時に温調システム1をヒータモードHTに移行させると良い。例えば、外気温(例えば-20℃)に対して所定の温度差αだけ低い閾値tを熱媒体の温度が上回った時にヒータモードHTに移行させるとよい。外気温と閾値との差は、運転モードを切り替える指令に対して熱媒体の流れが切り替わるまでに要する時間に対応する温度差等により決定される。
【0083】
乗員の操作により又は温調システム1により暖房運転が選択される場合、制御装置5は、モード選択部50により、切替外気温度Tと外気温度Tとの比較に基づき、ヒートポンプモードHPまたはヒータモードHTを選択することができる。さらに、制御装置5は、切替外気温度Tよりも低い閾値t(例えば-15℃)に対して外気温度Tが高いのならば、ヒートポンプモードHPを選択し、閾値tに対して外気温が低いのならば起動時ヒータモードHT0を選択することができる。
【0084】
検知された外気温度Tが切替外気温度Tに対して低く、かつ温調システム1の起動直後であるならば、制御装置5は、外気温度Tと閾値tとを比較することなく、ヒータモードHTに先行して起動時ヒータモードHT0を選択することができる。あるいは、外気温度Tが切替外気温度Tに対して低い場合の起動直後には、先ずヒータモードHTを選択し、そのときに検知された熱媒体や冷媒の温度に所定の閾値を適用することで、ヒータモードHTを続行するか、起動時ヒータモードHT0に切り替えるかを判定しても良い。
【0085】
ヒータモードHTに先行して起動時ヒータモードHT0が行われる場合、制御装置5は、温調システム1を起動時ヒータモードHT0にて運転させながら、冷媒回路10が定常状態となるまで待ち、例えば熱媒体の温度が所定の閾値tを超えると、起動用の起動時ヒータモードHT0から、定常状態のヒータモードHTへと運転モードを切り替えることができる。閾値として熱媒体、冷媒の温度には限らず、温度の閾値が示す熱媒体や冷媒の状態と同様の状態を示す圧力等の物理量を用いることも可能である。
起動時ヒータモードHT0からヒータモードHTへの切り替え後、凝縮器流量調整弁12Vにより、凝縮器12に流入する熱媒体の流量を次第に増加させると良い。
【0086】
上記以外にも、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
温調システム1は、温調機器としての室内熱交換器25に加えて、あるいは室内熱交換器25に代えて、バッテリー装置等の他の温調機器を備えていてもよい。その場合、熱媒体回路20は、他の温調機器を熱媒体により冷却または加熱するための経路を含む。
【0087】
[付記]
以上の開示により、以下に記す構成が把握される。
〔1〕車両用の温調システムであって、
圧縮機11、高圧側熱交換器(12)、減圧部(13)、および低圧側熱交換器(14)を含み、冷凍サイクルに従って冷媒が循環可能に構成される冷媒回路(10)と、
前記冷媒に対して熱を授受する熱媒体が循環可能に構成される熱媒体回路(20)と、を備え、
前記熱媒体回路(20)は、
前記冷媒と前記熱媒体とを熱交換させる前記高圧側熱交換器(12)と、
前記冷媒と前記熱媒体とを熱交換させる前記低圧側熱交換器(14)と、
いずれも前記熱媒体を圧送可能に構成される第1ポンプ(21)および第2ポンプ(22)と、
外気と前記熱媒体とを熱交換させる室外熱交換器(23)と、
前記熱媒体により加熱または冷却される温調対象に相当する、または前記温調対象の加熱または冷却に用いられる温調機器(25)と、
前記室外熱交換器(23)から前記熱媒体を迂回させる室外バイパス経路(24)と、を含み、
前記温調システムは、運転モードとして、
前記低圧側熱交換器(14)および前記室外熱交換器(23)を前記熱媒体が前記第1ポンプ(21)により循環する低圧側回路(C1)と、前記高圧側熱交換器(12)および前記温調機器(25)を前記熱媒体が前記第2ポンプ(22)により循環する高圧側回路(C2)とが形成されるヒートポンプモード(HP)と、
前記高圧側熱交換器(12)から流出した前記熱媒体が、前記温調機器(25)を経由して前記低圧側熱交換器(14)に流入し、さらに前記室外バイパス経路(24)を通り、前記高圧側熱交換器(12)に流入する圧縮機熱源モード(HT)と、を備えるとともに、
前記ヒートポンプモード(HP)または前記圧縮機熱源モードを選択可能に構成されるモード選択部(50)と、
外気温度を検知する外気温センサ(51)と、を備え、
前記モード選択部(50)は、
前記ヒートポンプモード(HP)および前記圧縮機熱源モード(HT)のそれぞれの外気温度-加熱能力特性(OH1,OH2)の交点(X)に対応する交点外気温度(T)、または、前記交点外気温度(T)よりも低い温度に設定される切替外気温度(T,TSL)に対し、前記外気温センサ(51)により検知される外気温度(T)が高い場合は前記ヒートポンプモード(HP)を選択し、前記外気温度(T)が低い場合は前記圧縮機熱源モード(HT)を選択するように構成される、
車両用温調システム。
【0088】
〔2〕前記モード選択部(50)は、前記ヒートポンプモード(HP)の前記外気温度-加熱能力特性(OH1)における前記圧縮機熱源モード(HT)よりも加熱能力(CP)が劣る領域(R1)においては、前記切替外気温度(TSL)を加熱負荷(L,L)に応じて設定可能に構成される、
〔1〕項に記載の車両用温調システム。
【0089】
〔3〕前記ヒートポンプモード(HP)の前記外気温度-加熱能力特性(OH1)においては、前記外気温度(T)が低下するにつれて前記加熱能力(CP)は低下し、
前記加熱負荷(L,L)と前記ヒートポンプモード(HP)の前記外気温度-加熱能力特性との交点(X1,X2)に対応する前記切替外気温(TSL)に対し、前記外気温度(T)が高い場合は前記ヒートポンプモード(HP)を選択し、前記外気温度(T)が低い場合は前記圧縮機熱源モード(HT)を選択可能に構成される、
〔2〕項に記載の車両用温調システム。
【0090】
〔4〕前記高圧側熱交換器(12)から前記熱媒体を迂回させる高圧側バイパス経路(12A)と、
前記高圧側熱交換器(12)と前記高圧側バイパス経路との前記熱媒体の流量比を調整可能に構成される高圧側流量調整弁(12V)と、を備え、
前記運転モードとして、
前記高圧側熱交換器(12)から流出した前記熱媒体が、前記低圧側熱交換器(14)に流入し、さらに前記室外熱交換器(23)を通り、前記高圧側熱交換器(12)および前記高圧側バイパス経路(12A)のうち少なくとも前記高圧側バイパス経路(12A)に流入する起動時圧縮機熱源モード(HT0)を備える、
〔1〕から〔3〕のいずれか一項に記載の車両用温調システム。
【0091】
〔5〕前記起動時圧縮機熱源モード(HT0)は、前記低圧側熱交換器(14)から流出した前記熱媒体を前記室外熱交換器(23)に流入させる、
〔6〕車両用の温調システムを用いる温調方法であって、
前記温調システムは、
圧縮機11、高圧側熱交換器(12)、減圧部(13)、および低圧側熱交換器(14)を含み、冷凍サイクルに従って冷媒が循環可能に構成される冷媒回路(10)と、
前記冷媒に対して熱を授受する熱媒体が循環可能に構成される熱媒体回路(20)と、を備え、
前記熱媒体回路(20)は、
前記冷媒と前記熱媒体とを熱交換させる前記高圧側熱交換器(12)と、
前記冷媒と前記熱媒体とを熱交換させる前記低圧側熱交換器(14)と、
いずれも前記熱媒体を圧送可能に構成される第1ポンプ(21)および第2ポンプ(22)と、
外気と前記熱媒体とを熱交換させる室外熱交換器(23)と、
前記熱媒体により加熱または冷却される温調対象に相当する、または前記温調対象の加熱または冷却に用いられる温調機器(25)と、
前記室外熱交換器(23)から前記熱媒体を迂回させる室外バイパス経路(24)と、を含み、
前記温調方法は、
前記低圧側熱交換器(14)および前記室外熱交換器(23)を前記熱媒体が前記第1ポンプ(21)により循環する低圧側回路(C1)と、前記高圧側熱交換器(12)および前記温調機器(25)を前記熱媒体が前記第2ポンプ(22)により循環する高圧側回路(C2)とが形成されるヒートポンプモード(HP)と、
前記高圧側熱交換器(12)から流出した前記熱媒体が、前記温調機器(25)を経由して前記低圧側熱交換器(14)に流入し、さらに前記室外バイパス経路(24)を通り、前記高圧側熱交換器(12)に流入する圧縮機熱源モード(HT)との一方を選択するにあたり、
前記ヒートポンプモード(HP)および前記圧縮機熱源モード(HT)のそれぞれの外気温度-加熱能力特性(OH1,OH2)の交点(X)に対応する交点外気温度(T)、または、前記交点外気温度(T)よりも低い温度に設定される切替外気温度(T,TSL)に対し、検知される外気温度(T)が高い場合は前記ヒートポンプモード(HP)を選択し、前記外気温度(T)が低い場合は前記圧縮機熱源モード(HT)を選択する、
車両用温調方法。
【符号の説明】
【0092】
1 温調システム
5 制御装置
8 車室
10 冷媒回路
11 圧縮機
12 凝縮器
12A 凝縮器バイパス経路
12V 凝縮器流量調整弁
13 膨張弁(減圧部)
14 蒸発器
14A 蒸発器バイパス経路
14V 蒸発器流量調整弁
20 熱媒体回路
21 第1ポンプ
22 第2ポンプ
23 室外熱交換器
23A 室外送風機
24 室外バイパス経路
25 室内熱交換器
25A 室内送風機
31 第1切替弁
32 第2切替弁
33 第3切替弁
50 モード選択部
51 外気温センサ
52 室温センサ
501 メモリ
502 演算部
503 記憶部
504 入出力部
C1 低圧側回路
C2 高圧側回路
CC 直列回路
CP 加熱能力
DT 相関データ
R1,R2 領域
HP ヒートポンプモード
HT ヒータモード(圧縮機熱源モード)
HT0 起動時ヒータモード(起動時圧縮機熱源モード)
L,L,L 空調負荷
OH1,OH2 外気温度-加熱能力特性
T,T,T 外気温度
,TSL 切替外気温度
交点外気温度
U ユニット
X 交点
Δx 温度差
【要約】
【課題】外気温が低くても加熱能力を担保することができ、より適切なモード切替による熱負荷の加熱が可能な車両用の温調システム・方法の提供。
【解決手段】車両用の温調システムは、冷媒回路と、熱媒体回路とを備え、熱媒体が循環する低圧側回路と、熱媒体が循環する高圧側回路とが形成されるヒートポンプモードと、高圧側熱交換器から流出した熱媒体が、温調機器を経由して低圧側熱交換器に流入し、さらに室外バイパス経路を通り、高圧側熱交換器に流入する圧縮機熱源モードと、モード選択部とを備える。モード選択部は、ヒートポンプモードおよび圧縮機熱源モードのそれぞれの外気温度-加熱能力特性の交点に関連する切替外気温度に対し、検知される外気温度が高い場合はヒートポンプモードを選択し、外気温度が低い場合は圧縮機熱源モードを選択するように構成される。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7