(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】シート移送方法
(51)【国際特許分類】
B65H 3/22 20060101AFI20230807BHJP
B25J 13/00 20060101ALI20230807BHJP
B25J 15/00 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
B65H3/22
B25J13/00 Z
B25J15/00 C
(21)【出願番号】P 2019072348
(22)【出願日】2019-04-04
【審査請求日】2022-03-11
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 直樹
【審査官】正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-136840(JP,A)
【文献】特開昭59-172341(JP,A)
【文献】特開2017-128435(JP,A)
【文献】実開昭59-002724(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 3/22
B25J 13/00
B25J 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り畳まれた繊維シートが複数枚積層されているシート集積体における個々の繊維シートを、該シート集積体の上側から順に一枚ずつ把持して、前記シート集積体が配置された集積体配置部とは別の場所に移送するシート移送方法であって、
相互間の間隔を拡縮可能な一対の爪部を有する把持部
、並びに該把持部の位置及び該爪部の動作を制御する制御部を備えたシート移送装置を用いた移送方法であり、
前記把持部により、折り畳まれた繊維シートの一部を挟んで該繊維シートを把持する把持工程と、前記繊維シートを把持した前記把持部を持ち上げる持ち上げ工程と、持ち上げた前記把持部を移動させ、該繊維シートを折り畳まれた状態を維持しつつ前記別の場所に移送する移送工程とを繰り返して、前記シート集積体を構成する繊維シートを順次前記別の場所に移送
し、
前記繊維シートは、該繊維シートの一方向に沿う両側部それぞれを、該一方向に沿う折り曲げ線に沿って該繊維シートにおける一方の面側に折り返した後、折り返された該繊維シートにおける前記一方向の中央部で、該繊維シートを該一方向に折り返すことにより折り畳まれており、
折り畳まれた前記繊維シートは、最も前記爪部に近い側に位置する最上シート、最も前記爪部から遠い側に位置する最下シート及び該最上シートと該最下シートとの間に位置する中間シートを有しており、
前記把持工程では、
前記制御部による制御により、前記把持部に前記繊維シートの前記最上シート及び前記中間シートのみを把持させる、シート移送方法。
【請求項2】
前記シート集積体を構成する前記繊維シートの積層数が減少するにつれて、前記把持工程における前記繊維シートを把持する際の前記爪部の高さ位置を下げていき、且つ
前記繊維シートの積層数が減少するにつれて、前記爪部の高さ位置の下げ幅を変化させる、請求項1に記載のシート移送方法。
【請求項3】
前記把持工程では、前記把持部に前記繊維シートにおける前記最下シートを除く全シートを把持させる、請求項1又は2に記載のシート移送方法。
【請求項4】
前記把持部を複数用い、前記把持工程では、前記繊維シートにおける複数箇所を把持する、請求項1~3の何れか1項に記載のシート移送方法。
【請求項5】
前記シート移送装置は、前記一対の爪部の拡縮方向が一致する少なくとも2つの把持部を含み、該2つの把持部それぞれは、それぞれの内側爪部の位置を維持したまま外側爪部を移動させて前記繊維シートを把持する、請求項4に記載のシート移送方法。
【請求項6】
前記持ち上げ工程では、前記集積体配置部に配置されたシート集積体の側面に抵抗ブラシを当接させながら、前記把持部を持ち上げる、請求項1~5の何れか1項に記載のシート移送方法。
【請求項7】
前記持ち上げ工程では、前記集積体配置部に配置されたシート集積体の上面側から空気流を当てながら、前記把持部を持ち上げる、請求項1~6の何れか1項に記載のシート移送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート移送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シート状物や板状物が複数枚一方向に積み上げられた集積体から、シート状物や板状物を一枚ずつ順次別の場所に移動させる技術が知られている。例えば、特許文献1には、板状のワークの集積体からワークを一枚ずつ分離して別の場所に移動させる装置として、ワークの集積体が載置された状態で上下方向に移動する台と、該台に載置された集積体の一番上のワークに当接して該ワークを水平方向にずらす部材と、水平方向にずらしたワークの端部を把持して上下方向に移動するクランプと、該クランプが把持したワークを受け取り、他の場所に移動させるバキュームパッドとを備えるワーク一枚取り装置が記載されている。
【0003】
また特許文献2には、織布の集積体における一番上の織布に粘着テープを押し当て、該織布を粘着テープと共に持ち上げ他の織布から分離する機構を備えた織布自動搬送装置が記載されており、特許文献3には、紙ウエスの集積体における一番上の紙ウエスを紙把みチャックで挟み、該紙把みチャックにより該紙ウエスを持ち上げ他の紙ウエスから分離する機構を備えた紙ウエス抜き取り装置が記載されている。また特許文献4には、加工処理部に帯状部材を送り込む移動装置として、帯状部材の集積体における一番上の帯状部材の端部をグリッパーで挟み、該グリッパーにより該帯状部材を別の場所に搬送する装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-114376号公報
【文献】特開昭62-249837号公報
【文献】実開昭61-34540号公報
【文献】特開昭60-52436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたワーク一枚取り装置は、一枚の板状のワークを集積体から分離するために、集積体の一番上のワークに部材を当接させ、該ワークを水平方向に移動させている。そのため、該ワークが、該ワーク間に摩擦が生じにくい場合には、該ワークを一枚ずつ水平に移動させる工程を経てワークを一枚ずつ分離することが可能であるが、繊維シートのように、ワーク間に摩擦が生じやすい場合には、ワークを一枚ずつ分離することが困難である。
【0006】
特許文献2~4には、繊維シートの集積体から一枚ずつ繊維シートを分離する技術が開示されているが、分離する各繊維シートは折り畳まれたものではない。
本発明者らは、折り畳まれた繊維シートの集積体から繊維シートを折り畳まれた状態を維持しつつ分離し、折り畳まれた状態を維持しつつ移動させる技術を開発するべく鋭意研究した。しかしながら、仮に特許文献2~4の技術によって、折り畳まれた繊維シートの集積体から一枚づつ繊維シートを分離した場合には、一番上の一枚の繊維シートを摘まんだとしても、摘まんだ繊維シートを持ち上げたり搬送する際にシートの折り畳み状態が解除されたり、一番上の繊維シートと共に次の繊維シートが持ち上げられ、一番上の繊維シートだけを適切に移動させることが困難になる虞がある。
【0007】
このように、従来技術においては、折り畳まれた繊維シートが複数枚積層されている集積体から、繊維シートを1枚ずつ分離し、分離した各繊維シートを、折り畳まれた状態を維持しながら別の場所に順次移送することは困難であった。
【0008】
本発明の課題は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得るシート移送方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、折り畳まれた繊維シートが複数枚積層されているシート集積体における個々の繊維シートを、該シート集積体の上側から順に一枚ずつ把持して、前記シート集積体が配置された集積体配置部とは別の場所に移送するシート移送方法であって、相互間の間隔を拡縮可能な一対の爪部を有する把持部により、折り畳まれた状態の繊維シートの一部を挟んで該繊維シートを把持する把持工程と、前記繊維シートを把持した前記把持部を持ち上げる持ち上げ工程と、持ち上げた前記把持部を移動させ、該繊維シートを折り畳んだ状態のまま前記別の場所に移送する移送工程とを繰り返して、前記シート集積体を構成する繊維シートを順次前記別の場所に移送する、シート移送方法を提供することにより、上記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、折り畳まれた繊維シートが複数枚積層されているシート集積体から、繊維シートを1枚ずつ分離し、分離した各繊維シートを、折り畳まれた状態を維持しながら別の場所に順次移送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1(a)~(c)は、本発明のシート移送方法により、折り畳まれた状態で移送される繊維シート及びその折り畳み方の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明のシート移送方法に用いられるシート移送装置の一例を示す概略図であり、
図2(a)は、該シート移送装置の側面図、
図2(b)は、該シート移送装置の平面図である。
【
図3】
図3は、
図2に示すシート移送装置のハンド部の拡大図であり、
図3(a)は、シート集積体の搬送方向に直交する方向から見た側面図、
図3(b)は、シート集積体の搬送方向上流側から見た側面図である。
【
図4】
図4(a)~(c)は、本発明のシート移送方法の一実施態様の説明図である。
【
図6】
図6(a)及び(b)は、本発明のシート移送方法の把持工程の説明図である。
【
図7】
図7は、
図3に示すハンド部の一部の拡大図であり、
図7(a)は、ハンド部の把持部を繊維シートに押し込む前の状態を示す図であり、
図7(b)は、ハンド部の把持部を繊維シートに押し込んだ状態を示す図である。
【
図8】
図8は、20枚の繊維シートが積層されたシート集積体を用いた本発明のシート移送方法の一実施態様における把持工程の回数と各把持工程における爪部の高さ位置を示すグラフである。
【
図9】
図9(a)は、
図3に示すハンド部を
図3中上側から見たときの平面図であり、
図9(b)~(e)は、爪部の配置位置の変形例を示す
図9(a)相当図である。
図9(a)~(d)は、一対の爪部の相互間の間隔を拡大した状態を示しており、
図9(e)は該間隔を縮小した状態を示している。
【
図10】
図10(a)及び(b)は、
図2に示すシート移送装置の好ましい爪部の動作態様を示す説明図である。
【
図11】
図11は、
図2に示すシート移送装置の変形例を用いた本発明の実施態様を示す
図3相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のシート移送方法を、その好ましい実施態様に基づき図面を参照しながら説明する。本発明の実施態様である繊維シート1の移送方法は、折り畳まれた繊維シート1が複数枚積層されているシート集積体10における個々の繊維シート1を、該シート集積体10の上側から順に一枚ずつ把持して、前記シート集積体10が配置された集積体配置部3とは別の場所に移送するシート移送方法である。
【0013】
本発明におけるシート集積体10は、繊維シート1が、それぞれ折り畳まれた状態で所定の複数枚積層されているものである。繊維シート1は、
図1(a)に示すように、展開状態において、四角形(例えば正方形又は長方形)状であることが好ましいが、それに限られない。四角形状には、四角形の角部を丸めた形状も含まれる。四角形以外の形状の例としては、例えば、三角形、ひし形、五角形以上の多角形状、楕円状、プレイングカード(日本において一般にトランプと呼ばれるもの)におけるハート形等が挙げられる。
【0014】
繊維シート1は、繊維からなる層を一層以上有することが好ましく、例えば、単層若しくは多層の不織布、紙、織布、若しくはこれらの一種以上の複合材、又はこれらの一種以上とネット状部材や樹脂フィルム等との複合材等が挙げられる。繊維シートの用途に特に制限はなく、床やトイレ、キッチン等の清掃用シート、肌等の清拭用シート、包帯、繊維シートを含む使い捨ておむつや生理用ナプキン等の各種製品の構成部材等、多様な用途が挙げられる。また繊維シートは、通気性でも非通気性でもよいが、本発明は、繊維シートが通気性シートの場合にも好適に使用できる。また繊維シートは、液体が含侵されていない液体非含浸シートでもよいし、液体が含侵された液体含浸シートでもよい。
【0015】
シート集積体10の繊維シート1の前記所定の積層枚数は、好ましくは3枚以上、より好ましくは5枚以上、更に好ましくは10枚以上であり、また好ましくは1000枚以下、より好ましくは200枚以下、更に好ましくは50枚以下であり、より具体的には、好ましくは3枚以上1000枚以下、より好ましくは5枚以上200枚以下、更に好ましくは10枚以上50枚以下である。
図2には、シート集積体10の一例として、繊維シート1を20枚積層したシート集積体10を示す。
【0016】
シート集積体10に含まれる折り畳まれた繊維シート1は、折り畳まれた状態の個々の繊維シートの向きが同じであっても異なっていてもよいが、向きが同じである方が好ましい。例えば、
図1(c)に示す繊維シート1の集積体においては、すべての繊維シート1について折り部14の向きを共通する一方向に向けてもよいし、交互又は複数置きに、折り部14の向きを異ならせてもよい。なお、
図2(a)及び
図3に示す例においては、個々の繊維シートの向きを同じ向きに揃えてある。
【0017】
繊維シート1の折り畳み方に特に制限はなく、多様な折り畳み方をすることができる。
図1に、繊維シートの折り畳み方の一例を示す。
繊維シート1を、
図1(c)に示すように折り畳む手順について説明する。まず、折り畳む前の繊維シート1a(
図1(a)参照)の両側部を、折り曲げ線15に沿って繊維シート1aにおける一方の面側、即ち、矢印R1方向に折り返し、
図1(b)に示す状態にする。その後、
図1(b)に示す繊維シート1bの長手方向の中央部で、該繊維シート1bを半分に折る(
図1(c)参照)。即ち、繊維シート1bを折り曲げ線16に沿って矢印R2方向に折り返す。折り曲げ線15,16は、繊維シートの折り曲げ位置を示すことができるものであれば特に制限されず、例えば、エンボス加工等により繊維シートに形成された溝、着色等により繊維シートに形成された線等が挙げられる。折り曲げ線15,16は、繊維シートに、実際には形成されていない仮想線であってもよい。
【0018】
繊維シート1は、このように折り畳まれることにより、最上シート11、最下シート13、及び最上シート11と最下シート13との間に位置する中間シート12とを有する。最上シート11は、折り畳まれた繊維シート1において後述する爪部61に最も近い側に位置しており、最下シート13は、折り畳まれた繊維シート1において後述する爪部61から最も遠い側に位置している。折り畳まれた繊維シート1は、中間シート12として2枚の中間シート12a,12bを有しており、全体として、4枚のシートが厚み方向Zに重なったような形状を有している。また折り畳まれた繊維シート1は、平面視して矩形形状を有しており、一辺が、
図1(b)に示す繊維シート1bを半分に折ったときの折り部14となっている。
【0019】
繊維シート1の折り畳み方は、上述した折り畳み方に限定されるものではない。例えば、折り畳む前の繊維シート1aを半分に折り、該半分に折った繊維シートを更に半分に折ってもよい。また、繊維シート1は、山折りと谷折りを繰り返し、全体としてW字形状に折り畳まれていてもよい。
【0020】
折り畳まれた繊維シート1は、全体として4枚のシートが厚み方向Zに重なるように折り畳まれたものに制限されず、例えば、折り畳まれた繊維シート1は、一枚の繊維シート1aが二つ折り又は三つ折りされて、全体として2枚又は3枚のシートが厚み方向Zに重なるように折り畳まれたものであってもよい。三つ折りは、一枚の繊維シート1aをS字形状に折り畳んでもよいし、繊維シート1aにおける両側部を、該両側部どうしが厚み方向Zに重なる部分を有するように、繊維シート1aにおける一方の面側に折り返してもよい。また繊維シート1は、全体として5枚以上のシートが厚み方向に重なったような形状を有していてもよい。
【0021】
折り畳まれた繊維シート1中のシートの積層枚数は、好ましくは2枚以上であり、より好ましくは3枚以上であり、更に好ましくは、4枚以上であり、また好ましくは10枚以下であり、より好ましくは8枚以下であり、更に好ましくは、6枚以下であり、また好ましくは2枚以上10枚以下であり、より好ましくは3枚以上8枚以下であり、更に好ましくは、4枚以上6枚以下である。
折り畳まれた繊維シート1の平面視形状は、
図1(c)に示す例では、矩形形状であるが、それに限定されるものではない。
【0022】
図2に、本発明のシート移送方法の実施に好ましく用いられるシート移送装置の一例を示す。以下、本発明のシート移送方法の一実施態様として、
図2に示すシート移送装置を用いて、
図1(c)に示すように折り畳まれた繊維シート1が複数枚積層されているシート集積体10における個々の繊維シート1を、シート集積体10の上側から順に一枚ずつ把持して、シート集積体10が配置された集積体配置部とは別の場所に移送するシート移送方法について説明する。
図2に示すシート移送装置2について説明すると、シート移送装置2は、集積体配置部3と、ハンド部4と、ハンド部4を上下左右に移動可能なアーム部7と、ハンド部4の把持部60やアーム部7の移動や動作を制御する制御部(不図示)を備えている。
【0023】
集積体配置部3は、シート集積体10が配置される部分である。集積体配置部3は、シート集積体10を配置することができるものであればよく、例えば、上下左右に移動可能なものであってもよいし、ベルトコンベアのように、該集積体配置部3に配置されたシート集積体10を搬送することができるものであってもよい。
【0024】
ハンド部4は、
図3に示すように、把持部60を有しており、該把持部60は、相互間の間隔Dを拡縮可能な一対の爪部61,61を有している。一対の爪部61,61は、制御部(不図示)により、相互間の間隔Dを所望のタイミングで拡縮させることができる。制御部(不図示)は、ハンド部4に設けられていてもよいし、シート移送装置2におけるハンド部4以外の部分に設けられていてもよい。また後述するようにハンド部4が把持部60を複数有している場合、各把持部60における一対の爪部61,61は、それぞれ独立して開閉できるようになっていることが好ましい。
【0025】
またハンド部4は、上部フレーム41とセンターフレーム42とを有している。上部フレーム41は、ジョイント部41aを備え、ジョイント部41aにアーム部7が接続されている。
【0026】
上部フレーム41とセンターフレーム42とは、支柱43により連接されている。支柱43は、上部フレーム41に設けられた貫通孔に、支柱43の軸方向に沿って摺動可能に挿通されている。支柱43における上部フレーム41側の端部には、板状部材44が取り付けられている。支柱43とセンターフレーム42とは固定されている。センターフレーム42には、爪部61,61の相互間の間隔Dを拡縮させる機構としてエアチャック5が取り付けられている。エアチャック5は、一対のフィンガ部51,51を有し、エア供給装置(不図示)からのエアの供給を受けて一方又は双方のフィンガ部51を移動させることにより一対のフィンガ部51,51の相互間の間隔を拡縮することができるようになされている。また一対のフィンガ部51,51には、それぞれ爪部61が取り付けられており、一対のフィンガ部51,51の相互間の間隔を拡縮することにより、一対の爪部61,61の相互間の間隔Dも拡縮するようになされている。エアチャック5としては、市販のものを使用することもでき、例えばSMC株式会社製のMHZL2-16Dを用いることができる。
一対のフィンガ部51,51や一対の爪部61,61の相互間の間隔Dを拡縮させる機構としては、エアーを用いるものに代えて、電動モータ等を用いることもできる。
【0027】
アーム部7は、ハンド部4を上下左右に移動可能なもの等を特に制限なく用いることができる。アーム部7は、ハンド部4の三次元的な位置を、前述した制御部により電気的に制御することが可能であることが好ましい。アーム部7を動かす機構は、電動モータにより駆動されるものであっても、エアー等の気体やオイル等の液体の圧力によって駆動されるものであってもよい。アーム部7の動作を電気的に制御する場合、アーム部7の動作を制御する制御部は、一対の爪部61,61の相互間の間隔Dを制御する制御部と同じであってもよいし、異なっていてもよい。アーム部7としては、各種公知のロボットアームを用いることができる。
【0028】
制御部(不図示)は、好ましくは、設定したプログラムで定められた順序や条件などに従ってアーム部7やハンド部の爪部61の動作を制御するものである。制御部としては、汎用のパーソナルコンピュータに、エア供給装置(不図示)等の装置に接続するためのI/0インタフェースを取り付けたものや、プログラマブルロジックコントローラー(PLC)を用いることができる。アーム部7の動作を制御する制御部としては、市販のロボットアームに付属の制御部を用いることもできる。
【0029】
上述したシート移送装置2を用いた本実施態様の繊維シートの移送方法においては、先ず、アーム部7を動かし、ハンド部4を、シート集積体10が配置された集積体配置部3におけるシート集積体10の上方に位置させる(
図4(a)参照)。集積体配置部3へのシート集積体10の配置は、手動又は任意の搬送装置により行うことができ、例えば、
図2(a)に示すように、ベルトコンベア8等により行うことができる。
【0030】
次に、把持部60により、折り畳まれた状態の繊維シート1の一部を挟んで該繊維シート1を把持する把持工程を行う(
図4(b)参照)。具体的には、アーム部7によりハンド部4の高さ位置を下げ、一対の爪部61,61を、折り畳まれた状態の繊維シート1に押し込む。このとき、上部フレーム41に対して支柱43が軸方向上側に摺動し、上部フレーム41に対する支柱43及び板状部材44の相対位置が上昇し、板状部材44が上部フレーム41から離れる(
図7(b)参照)。そして、繊維シート1の一部が、一対の爪部61,61の間に入り込んだ状態で(
図5参照)、一対の爪部61,61の相互間の間隔Dを縮小させ、繊維シート1を一対の爪部61,61に把持させる。
【0031】
次に、繊維シート1を把持した把持部60を持ち上げる持ち上げ工程を行う(
図4(c)参照)。具体的には、アーム部7によりハンド部4を持ち上げ、把持部60が把持した繊維シート1のみを、その折り畳まれた状態を維持しつつ、シート集積体10から分離する。
【0032】
そして、持ち上げた把持部60を移動させ、繊維シート1を折り畳まれた状態を維持しつつ別の場所へ移送する移送工程を行う。具体的には、持ち上げ工程により分離した繊維シート1をその折り畳まれた状態を維持しつつ、集積体配置部3から離れた別の場所に移送させる。折り畳まれた繊維シート1の移送先である別の場所は、集積体配置部以外の場所である。そして、その別の場所において、一対の爪部61,61の相互間の間隔Dを拡大して繊維シート1を把持部60から解放し、該繊維シート1を、別の場所に折り畳まれた状態で配置する。
【0033】
このようにして、一枚の折り畳まれた繊維シート1を別の場所に移送した後、アーム部7により、ハンド部4を集積体配置部3の上方に移動させ、前回の把持工程と同様にして、次の繊維シート1を把持する把持工程を行う。このように、把持工程と持ち上げ工程と移送工程とを繰り返すことにより、シート集積体10を構成する繊維シート1を順次別の場所に移送する
【0034】
折り畳まれた繊維シート1の移送先である前記別の場所は、繊維シート1を、次の工程を行うための場所へ移動させる移動手段上であってもよい。その移動手段は、連続的又は間欠的に動くものであってもよく、例えば、ベルトコンベア、移動プレート等であってもよい。移動手段上に載置されて移動した繊維シート1に対して行われる次の工程としては、例えば、品質等を検査する検査工程、包装シートによる包装を行う包装工程等が挙げられる。包装工程は、前記移動手段の上に、例えば、帯状の包装シートを配しておき、移動手段による移動後に、該包装シートにより被覆し、所定箇所の封止及び切断を行い、個々の繊維シートがそれぞれ包装シートに包装されている個装体を製造する個装工程であってもよい。このような方法で製造された個装体は試供品等として活用することもできる。
【0035】
本実施態様のシート移送方法によれば、把持工程により、折り畳まれた状態の繊維シート1を把持し、持ち上げ工程により該繊維シート1を持ち上げ、移送工程により、該繊維シート1を折り畳んだ状態のまま別の場所に移送するため、折り畳まれた繊維シート1が複数枚積層されているシート集積体10から、折り畳まれた繊維シート1を1枚ずつ順次分離し易く、折り畳まれた状態の繊維シート1を安定して別の場所に移送することができる。折り畳まれた状態の繊維シート1を安定して移送することができると、例えば、折り畳まれた繊維シート1が包装シートに内包された商品を製造する商品の製造ラインにおいて、折り畳まれた状態が解除された状態あるいは折り畳んだ状態が不適正な状態となった繊維シート1の発生を抑制でき、そのような不良品を製造ラインから除外する必要性がなくなったり、製造ラインの安定的な稼働が可能になる等の利点がある。
【0036】
本発明のシート移送方法では、把持工程、持ち上げ工程及び移送工程を繰り返し、シート集積体10を構成する繊維シート1の積層数が減少するにつれて、把持工程における繊維シート1を把持する際の爪部61の高さ位置Hを下げることが好ましい。その場合、各把持工程における爪部61の下げ幅Rは、一定であってもよいが、繊維シート1の積層数が減少するにつれて下げ幅Rを変化させることが好ましい。
爪部61の下げ幅Rを変化させることにより、シート集積体10から繊維シート1を1枚ずつ順次分離する際に、移送対象の繊維シート1の折り畳み状態が解除されたり乱れたりする不都合や、移送対象の繊維シート1の折り畳み状態が解除される等の不都合が発生することを防止しやすくなり、折り畳まれた繊維シート1を1枚ずつ順次移送することが容易となる。把持工程における繊維シート1を把持する際の爪部61の高さ位置Hとは、集積体配置部3の上面から、把持工程における繊維シート1を把持する際の爪部61の先端部までの距離Hを意味する(
図6参照)。nを2以上の自然数としたときn回目の把持工程における爪部61の下げ幅Rとは、n-1回目の把持工程における爪部61の高さ位置H
n-1(
図6(a)参照)と、n回目の把持工程における爪部61の高さ位置H
n(
図6(b)参照)との差R
nを意味する。
【0037】
本発明のシート移送方法は、繰り返し行う複数回の把持工程の全てにおいて下げ幅Rを変化させてもよいし、下げ幅Rが変化しない把持工程を含んでいてもよい。本発明の好ましい実施態様においては、表1及び
図8に示す態様で、爪部61の下げ幅Rの変化させている。表1には、20枚の繊維シート1が積層されたシート集積体を用いて本実施態様のシート移送方法を実施したときの、各把持工程における爪部61の高さ位置H、及び各把持工程における爪部61の下げ幅Rが示されている。
図8は、横軸を把持工程の繰り返し回数とし、縦軸を各把持工程における爪部61の高さ位置Hとして表1のデータをプロットしたグラフである。
【0038】
本実施態様のシート移送方法は、横軸を把持工程の回数、縦軸を把持工程における爪部61の高さ位置Hとしたグラフを作成したときに、該グラフが、
図8に示すように下向きに凸の湾曲線を描くように爪部61の下げ幅Rを変化させることが好ましい。
また爪部61の下げ幅Rの変化のさせ方は、
図8に示すように、繊維シートの積層枚数が半数を超えてから最後から1回前(
図8中19回目)の把持工程までは、把持工程の回数が増大するにつれて、爪部61の下げ幅Rを漸次減少させることが好ましい。
【0039】
【0040】
表1及び
図8に示す下げ幅Rの変化のさせ方においては、4回目及び5回目、6回目ないし10回目、並びに16回目及び17回目の把持工程においては下げ幅Rを変化させていない。このように、本発明のシート移送方法においては、下げ幅Rが変化しない把持工程を含んでいてもよい。
【0041】
また、本発明のシート移送方法では、繰り返し行う把持工程の全てにおいて爪部61を繊維シート1に押し込んだときに、爪部61又は繊維シート1に加わる荷重が略同じとすることも好ましい。爪部61又は繊維シート1に加わる荷重は、例えば、支柱43の周囲に圧縮量が荷重に比例するコイルバネ(不図示)を配置し、把持工程において爪部61を繊維シート1に押し込んだときに爪部61又は繊維シート1に加わる荷重に応じて上部フレーム41と板状部材44との間の距離Tが増大するようにしておき、その距離Tに基づき評価することができる(
図7参照)。また把持部60と上部フレーム41との間等に圧力センサを配置し、該圧力センサにより検出される圧力値に基づき、評価することもできる。
【0042】
また、把持工程では、把持部60に繊維シート1の最上シート11及び中間シート12のみを把持させることが好ましい。つまり、把持部60には、繊維シート1の最上シート11、及び中間シート12の全部又は一部を把持させる一方、最下シート13を把持させないことが好ましい(
図5参照)。把持部60に最下シート13まで把持させた場合、該最下シート13の下側に位置する次の繊維シート1まで把持してしまったり、該最下シート13に、次の繊維シート1が張り付いてしまったりすることがある。この状態のまま把持部60を持ち上げると、把持した繊維シート1とともに次の繊維シート1も一緒に移送されてしまったり、移送途中で、次の繊維シート1が落ちてしまったりする。また、把持した繊維シート1とともに次の繊維シート1が持ち上がることにより、次の繊維シート1の上面が乱れてしまい、次の繊維シート1の折り畳まれた状態が解除されてしまい、次の把持工程及び移送工程を安定して行うことが困難となる場合がある。
【0043】
把持部60に、繊維シート1の最上シート11及び中間シート12のみを把持させることにより、次の繊維シート1が、移送対象の繊維シート1とともに持ち上がることを防ぐことができるため、繊維シート1を1枚ずつ順次移送し易くなる。
【0044】
同様の観点から、把持部60に、繊維シート1における最上シート11、及び中間シート12の全部を把持させる一方、最下シート13を把持させないことが好ましい。つまり、把持部60に繊維シート1における最下シート13を除く全シートを把持させることがより好ましい。
具体的には、本実施態様のように、繊維シート1が、全体として、4枚のシートが厚み方向に重なったような形状を有しているときは、最上シート11及び上側の中間シート12aのみを把持してもよいが、最上シート11、上側の中間シート12a及び下側の中間シート12bを把持、すなわち最下シート13を除く全シートを把持することがより好ましい。
【0045】
更に詳述すると、
図5に示すように、把持工程において、一対の爪部61,61を、折り畳まれた状態の繊維シート1に押込んだときに、該繊維シート1における最上シート11及び中間シート12a,12bのみが、一対の爪部61,61の間に入り込み、最下シート13は一対の爪部61,61の間に入り込んでいないことが好ましい。最上シート11及び中間シート12a,12bのみが、一対の爪部61,61の間に入り込んだ状態で、一対の爪部61,61の相互間の間隔Dを縮小することで、把持部60に最上シート11及び中間シート12のみを把持させることができる。
【0046】
把持部60を複数用い、繊維シート1の複数箇所を把持する場合、複数の把持部60のうち、少なくとも1つが最上シート11及び中間シート12のみを把持することが好ましく、2つ以上の把持部60が最上シート11及び中間シート12のみを把持することがより好ましい。
【0047】
把持部60が単数である場合は、その把持部60に、最上シート11及び中間シート12のみを把持させ、最下シート13を把持させないときが、「把持部に、繊維シートの最上シート及び中間シートのみを把持させる」に該当する。
他方、把持部60を複数用いる場合、以下の(1)及び(2)は、「把持部に、繊維シートの最上シート及び中間シートのみを把持させる」に該当する。
(1)複数の把持部60の全てに、最上シート11及び中間シート12のみを把持させる場合。
(2)最上シート11及び中間シート12のみを把持する一つ又は2以上の把持部60に加えて、最上シート11、中間シート12及び最下シート13を把持する把持部60が一つ又は2以上存在するが、最下シート13を把持する把持部60が把持する部分が、最下シート13の全厚を100%としたときに50%以下である場合。
上記(2)の場合において、最下シート13を把持する把持部60が把持する部分は、最下シート13の全厚を100%としたときに25%以下であることがより好ましい。
【0048】
本発明のシート移送方法では、繰り返し行う把持工程の全てにおいて、把持部60に繊維シート1の最上シート11及び中間シート12のみを把持させること、又は繰り返し行う把持工程のうち最後の把持工程を除く全ての工程において、把持部60に繊維シート1の最上シート11及び中間シート12のみを把持させることが好ましい。最後の把持工程では、集積体配置部3には一枚の繊維シート1のみが載置されており、次の繊維シート1が存在しないため、把持部60に最下シート13まで把持させたとしても、該最下シート13の下側に位置する次の繊維シート1まで把持してしまったり、該最下シート13に、次の繊維シート1が張り付いてしまったりする恐れがない。
【0049】
本発明のシート移送方法では、予め、シート集積体10を構成する各繊維シート1について、把持部60が繊維シート1の最上シート11及び中間シート12のみを把持するときの条件を記録しておき、該条件で把持部60が繊維シート1を把持するように、把持部60の制御を行うことが好ましい。前記条件としては、例えば、爪部61の高さ位置H、爪部61の下げ幅R、爪部61が繊維シート1に加える荷重、一対の爪部61,61の前記間隔D等が挙げられる。例えば、把持部60が繊維シート1の最上シート11及び中間シート12のみを把持するときの前記条件をシート移送装置2に設けられた記憶部に記憶させておき、該記憶部に記憶された前記条件に基づいて、シート移送装置2に設けられた制御部が把持部60の動作を制御するようにすることができる。
本発明のシート移送方法では、移送する繊維シート1の種類や厚みに応じて、爪部61の下げ幅Rの変化のさせ方を決定することが好ましい。
【0050】
また本実施態様のシート移送方法では、シート集積体10を構成する全ての繊維シート1に対し、把持工程において、一対の爪部61,61の間に入り込む繊維シート1の量を略一定とすることが好ましい。これにより、把持部60が各繊維シート1を挟む量を略一定とすることが容易となるため、繊維シート1を1枚ずつ順次安定して移送し易くなる。一対の爪部61,61の間に入り込む繊維シート1の量を略一定とするためには、把持工程を繰り返したときの、全ての把持工程における、繊維シート1を挟む前の一対の爪部61,61の間隔Dを略同じとすればよい。繊維シート1を挟む前の一対の爪部61,61の間隔Dとは、一対の爪部61,61を、繊維シート1に押込んだ後、相互間の間隔Dを縮小する前の間隔Dを意味する(
図5参照)。全ての把持工程における、繊維シート1を挟む前の一対の爪部61,61の間隔Dが略同じであるとは、最小である前記間隔Dの長さが最大である前記間隔Dの長さに対して95%以上であることを意味する。また、全ての該把持工程における爪部61の下げ幅Rを略一定にし、それぞれの把持工程における一対の爪部61,61の間隔Dを変化させてもよい。
【0051】
それぞれの把持工程における前記下げ幅Rや前記間隔Dを設定する際の作業効率や、繊維シート1の材質及び折り畳み方等による影響を受けにくい観点から、全ての把持工程における一対の爪部61,61の間隔Dを略一定にして、繊維シート1の積層数が減少するにつれて爪部61の下げ幅Rを変化させることが好ましい。
【0052】
前述したとおり、本発明においては、把持部60を複数用い、把持工程において、折り畳まれた繊維シート1における複数箇所を把持してもよい。把持部60の数、繊維シート1における把持部60により把持される箇所の数、複数の把持部60のレイアウト、及び把持部60どうし間の距離L(
図9(c)参照)等は、繊維シート1の種類や大きさに応じて適宜変更することができる。把持部60を複数用いる場合、全ての把持部60により繊維シート1を把持してもよいし、一部の把持部60により繊維シート1を把持してもよい。把持部60を複数用い、折り畳まれた繊維シート1における複数箇所を把持することにより、折り畳まれた状態を維持したまま繊維シート1を移送し易くなる。
図9(a)に示す実施態様では、把持部60を4つ用い、折り畳まれた繊維シート1における4箇所を把持している。またその4つの把持部60は、平面視矩形の四隅に位置するように配置されており、各把持部60の拡縮方向X1は同じとなっている。
図9では、ハンド部4における爪部61以外の部材は、図示を省略している。
【0053】
シート移送装置2が把持部60を複数有する場合、該シート移送装置2は、把持部60どうし間の距離Lを変更できるように構成されていてもよい。シート移送装置2は、例えば、ハンド部4を、該ハンド部4とは把持部60どうし間の距離Lが異なる別のハンド部4と取り換えることができるように構成されていてもよい。またシート移送装置2は、ハンド部4における把持部60の取付け位置を変更できるように構成されていてもよい。ハンド部4に、把持部60どうし間の距離Lを変更する機構を設けてもよい。
【0054】
図9では、
図1(c)に示すように折り畳まれた繊維シート1を把持する様子を図示しているが、繊維シート1の折り畳み方は、これに限定されるものではなく、多様な折り畳み方であってもよい。
【0055】
把持部60の数は、1個又は複数個である。好ましくは2個以上であり、より好ましくは3個以上であり、更に好ましくは4個以上であり、また好ましくは10個以下であり、より好ましくは8個以下であり、更に好ましくは6個以下であり、また好ましくは2個以上10個以下であり、より好ましくは3個以上8個以下であり、更に好ましくは4個以上6個以下である。
また繊維シート1における、把持部60により把持される箇所の数は、1箇所又は複数個所である。好ましくは2箇所以上であり、より好ましくは3箇所以上であり、更に好ましくは4箇所以上であり、また好ましくは10箇所以下であり、より好ましくは8箇所以下であり、更に好ましくは6箇所以下であり、また好ましくは2箇所以上10箇所以下であり、より好ましくは3箇所以上8箇所以下であり、更に好ましくは4箇所以上6箇所以下である。
【0056】
把持部60を複数用い、折り畳まれた繊維シート1における複数箇所を把持するときは、複数の把持部60は、一対の爪部61,61の拡縮方向X1が同じであってもよいし(
図9(a)参照)、異なっていてもよい(
図9(b)~(d)参照)。
図9(a)及び(b)に示すように、一対の爪部61,61の拡縮方向X1が一致する把持部60が少なくとも2つあり、該2つの把持部が拡縮方向X1に並んでいる場合、該2つの把持部60それぞれは、それぞれの内側爪部61bの位置を維持したまま外側爪部61aを移動させて繊維シート1を把持することが好ましい(
図10参照)。この場合、拡縮方向X1に並ぶ前記2つの把持部60それぞれにおいて、他方の把持部60から遠い側に位置する爪部61が、外側爪部61aであり、他方の把持部に60に近い側に位置する爪部61が内側爪部61bである(
図9及び
図10参照)。拡縮方向X1に並ぶ前記2つの把持部60それぞれが、内側爪部61bの位置を維持したまま外側爪部61aを移動させて繊維シート1を把持することにより、2つの把持部60における内側爪部61bどうしの間の距離が拡大することを防ぐことができるため該内側爪部61bどうしの間において繊維シート1が伸長し、例えば繊維シート1が破断してしまうという不都合を防止することができる。
【0057】
爪部61は、該爪部61の先端部における、前記一対の爪部61,61の拡縮方向X1において繊維シート1を挟む側とは反対側の角部62がR形状を有していることが好ましい。爪部61の前記角部62がR形状を有していると、一対の爪部61,61を繊維シート1にスムーズに押し込むことができ、一対の爪部61,61に挟む繊維シートの量を一定に制御することが容易となる。これにより、折り畳まれた繊維シート1を、安定して適切な状態に把持することも容易となり、繊維シート1を1枚ずつ分離し移送することが一層容易となる。
【0058】
把持工程では、
図11に示すように、把持部60が折り畳まれた状態の繊維シート1を把持するときに、繊維シート1の上面に変形防止ガイド80を当接させながら、把持部60に繊維シート1を把持させることも好ましい。これにより、把持工程において、一対の爪部61,61を繊維シート1に押し込んだときに、繊維シート1の上面が変形することを防止することができるため、把持部60が各繊維シート1を挟む量が略一定に維持され易く、繊維シート1を1枚ずつ分離し移送することが一層容易となる。
【0059】
変形防止ガイド80は、繊維シート1の上面に当接させたときに、該繊維シート1の上面が変形することを防止できるものであれば制限なく用いることができる。変形防止ガイド80の一例を
図12に示す。
図12に示す変形防止ガイド80は、略コの字形状を有するコの字ガイド81と、扁平な形状を有する板状ガイド82とからなる。コの字ガイド81及び板状ガイド82は、把持工程において一対の爪部61,61を繊維シート1に押し込んだときに、それぞれの下面81a,82bが、繊維シート1の上面に当接するようになっている(
図11(b)参照)。
【0060】
また持ち上げ工程では、
図13に示すように、集積体配置部3に配置されたシート集積体10の側面に抵抗ブラシ9を当接させながら、把持部60を持ち上げることも好ましい。集積体配置部3に配置され且つ把持工程では把持していない繊維シート1が複数ある場合、抵抗ブラシ9は、把持工程で把持した繊維シート1を含むシート集積体10の側面の全体に当接させてもよいし、シート集積体10の側面の一部に当接させてもよい。
【0061】
抵抗ブラシ9は、例えば
図13に示すように、ブラシ状に毛(不図示)を有する側の面が、集積体配置部3に配置されたシート集積体10を構成する繊維シート1に当接するように、集積体配置部3に配することができる。抵抗ブラシ9におけるブラシ状に毛(不図示)が、繊維シート1の動きを制限することにより、シート集積体10から繊維シート1を1枚ずつ順次取り出すときに、移送対象の繊維シート1とともに次の繊維シートが持ち上がることを防ぐことができるため、繊維シート1を1枚ずつ順次移送させることが容易となる。
【0062】
また、持ち上げ工程では、集積体配置部3に配置されたシート集積体10の上面側から空気流を当てながら、把持部60を持ち上げてもよい。これにより、シート集積体10から繊維シート1を1枚ずつ順次取り出すときに、移送対象の繊維シート1とともに次の繊維シートが持ち上がることを防ぐことができるため、繊維シート1を1枚ずつ順次移送させることが容易となる。
【0063】
シート集積体10の上面側から空気流を当てる手段は、空気流を噴射することができるものであれば特に制限されず、例えば、エアブロー等が挙げられる。空気流は温風であってもよいし、冷風であってもよい。空気流は、把持工程で把持した繊維シート1を含むシート集積体10の全体に当ててもよいし、シート集積体10の一部に当ててもよい。空気流は、
図13に示すように、シート集積体10の上面に対して斜めに当てることが好ましい。
【0064】
以上、本発明をその好ましい実施態様に基づき説明したが、本発明は上述した各実施態様に制限されず、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 繊維シート
11 最上シート
12 中間シート
13 最下シート
10 シート集積体
2 シート移送装置
3 集積体配置部
4 ハンド部
60 把持部
61 爪部
7 アーム部