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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】筐体及び筐体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 5/03 20060101AFI20230807BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20230807BHJP
   H05K 5/00 20060101ALI20230807BHJP
   H05K 5/02 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
H05K5/03 A
H01L23/12 N
H05K5/00 C
H05K5/02 J
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017548306
(86)(22)【出願日】2017-06-20
(86)【国際出願番号】 JP2017022644
(87)【国際公開番号】W WO2017221921
(87)【国際公開日】2017-12-28
【審査請求日】2020-06-05
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-26
(31)【優先権主張番号】P 2016124181
(32)【優先日】2016-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 聖
(72)【発明者】
【氏名】本間 雅登
【合議体】
【審判長】山澤 宏
【審判官】野崎 大進
【審判官】中野 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-239106(JP,A)
【文献】特開2010-263147(JP,A)
【文献】特開2015-147378(JP,A)
【文献】特開2004-111502(JP,A)
【文献】特開2012-044640(JP,A)
【文献】特開2015-230255(JP,A)
【文献】特開2014-008956(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 5/00-5/03
H01L 23/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子回路を有するカバーで構成される電子機器筐体であって、
前記電子回路が、ガラス繊維に熱硬化性樹脂を含侵させてなるガラス繊維強化樹脂プリプレグによるプリフォーム中に前記電子回路を配置し、さらに炭素繊維に熱硬化性樹脂含浸させてなる炭素繊維強化樹脂プリプレグをその両表面に配置したプリフォームを成形して得られる繊維強化熱硬化性樹脂からなるカバーに内挿されていることを特徴とする電子機器筐体。
【請求項2】
前記カバーは、少なくとも平面部を有し、
前記電子回路は、少なくともカバーの平面部に内挿されていることを特徴とする、請求項1に記載の電子機器筐体。
【請求項3】
前記カバーが、電子回路と接続可能な機構を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の電子機器筐体。
【請求項4】
電子回路を有するカバーで構成され、前記電子回路がカバーに内挿された電子機器筐体の製造方法であって、
ガラス繊維にあらかじめ熱硬化性樹脂が含侵されてなるガラス繊維強化樹脂プリプレグによるプリフォーム中に前記電子回路を配置し、さらに炭素繊維にあらかじめ熱硬化性樹脂を含浸させてなる熱硬化性樹脂プリプレグをその両表面に積層してプリフォームを得る工程、及び、前記プリフォームを加圧および/または減圧して形状を賦型する工程を有する、電子機器筐体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械や電子部品を収納するための筐体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生活空間の有効活用化や機器携帯性の向上の観点から装置や電気・電子機器などの製品の小型化が進んでいる。詳しくは、筐体の内部に収納する機械や電子部品(回路基板など)の小型化および設計最適化による省スペース化が挙げられる。また、筐体に用いる材料の高剛性化により筐体を薄肉化し、筐体内部の収納能力の向上も挙げられる。このような背景から、電子部品の小型化や筐体の設計最適化などの技術が数多く提案されている。
【0003】
具体的には、特許文献1には、回路パターンを有する金属薄板を合成樹脂でインサートモールド成形して一体化した回路基板の発明が記載されている。特許文献2には、フレキシブル基板の配置位置を規定した電子機器筐体の発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平3-240300号公報
【文献】特開平9-172287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の発明では、金属薄板が絶縁膜または絶縁層によって被覆され、かつ導電性樹脂でモールド一体化している。このため、電子部品の小型化および設計最適化には効果を発現するかもしれないが、金属薄板を用いて大型な筐体として用いることはできない。また、特許文献2に記載の発明では、筐体本体の内面側に電磁波シールド構造部としてフレキシブルプリント基板を配置している。このため、外部が傷ついたとしても電磁波シールドを維持する効果を発現するかもしれないが、フレキシブル基板を配置するためのボスやリブを形成する必要があり、小型化や省スペース化を満足することはできない。
【0006】
以上のように、装置や電気・電子機器などの製品の小型化に関する従来技術によれば、筐体内部の空間を有効に活用することはできない。このため、筐体として必要とされる剛性を維持しつつ、筐体内部の収納能力を向上可能な技術の提供が期待されていた。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、筐体として必要とされる剛性を維持しつつ、筐体内部の収納能力を向上させた筐体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決する本発明は、以下である。
【0009】
(1)電子デバイスを有するカバーで構成される筐体であって、前記電子デバイスは、カバーに内挿されていることを特徴とする筐体。
【0010】
(2)前記カバーは、少なくとも平面部を有し、前記電子デバイスは、少なくともカバーの平面部に内挿されていることを特徴とする、(1)に記載の筐体。
【0011】
(3)電子部品を配置するための空間を有することを特徴とする、(1)又は(2)に記載の筐体。
【0012】
(4)前記カバーの少なくとも一部が、導電性材料であることを特徴とする、(1)~(3)のいずれかに記載の筐体。
【0013】
(5)前記カバーの少なくとも一部が、非導電性材料であることを特徴とする、(1)~(3)のいずれかに記載の筐体。
【0014】
(6)前記カバーが、電子デバイスと接続可能な機構を有することを特徴とする、(1)~(5)のいずれかに記載の筐体。
【0015】
(7)前記カバーの立ち壁部が、前記カバーの平面部と同種の材料からなることを特徴とする(1)~(6)のいずれかに記載の筐体。
【0016】
(8)電子デバイスを有するカバーで構成され、前記電子デバイスがカバーに内挿された筐体の製造方法であって、プリプレグ、フィルム、及び不織布からなる群より選ばれる少なくとも1つの材料、並びに、電子デバイスを、電子デバイスが内側となるように積層してプリフォームを得る工程、及び、前記プリフォームを加圧および/または減圧して形状を賦型する工程を有する、筐体の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る筐体によれば、筐体に必要とされる剛性を維持しつつ、筐体内部の収納能力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の筐体を示す模式断面図である。
図2図2は、カバーの表面に導電性材料を用いた本発明の筐体を示す模式断面図である。
図3図3は、電子デバイスと接続可能な機構を有する本発明の筐体を示す模式断面図である。
図4図4は、カバーと他の部材を接合・一体化した本発明の筐体を示す模式断面図である。
図5図5は、本発明の実施例1で用いるプリフォームを示す模式断面図である。
図6図6は、本発明の実施例2で用いるプリフォームを示す模式断面図である。
図7図7は、本発明の実施例3で用いるプリプレグに回路を直接プリントした状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の発明者らは、鋭意研究を重ねてきた結果、電子デバイスを筐体を構成するカバーに内挿することによって、電子デバイスがカバーに内挿されていない場合と比較して、筐体の剛性を維持しつつ筐体内部の収納能力を向上できることを知見した。以下、図面を参照して、上記知見から想到された、本発明の筐体について詳細に説明する。なお、本発明の筐体の用途としては、電気・電子機器、オフィスオートメーション機器、家電機器、医療機器などの筐体、運搬用のキャリーケースなどが挙げられ、中でも、ユーザーが携帯して使用するクラムシェル型パソコンやタブレット型パソコン、携帯電話、医療用カセッテに好ましく用いられる。
【0020】
本発明は、電子デバイスを有するカバーで構成される筐体であって、前記電子デバイスは、カバーに内挿されていることを特徴とする。そして以下に、本発明の筐体について詳しく説明する。
【0021】
<電子デバイス>
本発明における電子デバイスは、電子の働きを応用して、増幅などの能動的な仕事をする素子であり、トランジスタや電子管などがある。またさらに電子デバイスとしては、IC(集積回路)のような抵抗器やコンデンサ、インダクタおよびトランスなど受動素子を含んだ素子を用いることもでき、CPU(中央処置装置)やAI(人工知能)機能を有する電子回路、アンテナ、センサ、プリント基板などを用いることもできる。またこれらを接続するためのリレーやコネクタも電子デバイスに含まれる。本発明においては、これらの電子デバイスを単独または2種以上を併用しても良い。これらの電子デバイスの厚みについては、特に限定されないが、1mm以下の厚みであることが好ましく、0.5mm以下であることがより好ましく、さらに好ましくは0.3mm以下である。これにより、筐体を構成するカバーの厚みを薄くすることが可能となり、筐体全体の薄肉化および軽量化も満足することが可能となる。
【0022】
これらの電子デバイスは、筐体を構成するカバーに内挿されていることが必要である。そして、ここで言う、電子デバイスが「カバーに内挿されている」とは、図1(a)に示すように電子デバイスがカバーを構成する材料に覆われて封止されている状態であり、カバーを構成する材料の内側に形成される空隙部に電子デバイスが存在することを意味する。このとき、図1(b)に示すように少なくとも電子デバイスの上下がカバーを構成する材料と接していることが好ましく、図1(c)に示すように電子デバイス全体(表面)がカバーを構成する材料に接していることがさらに好ましい。このように電子デバイスをカバーに内挿することで、図1(c)に示す電子デバイスをカバーの外側であり、かつ筐体の内部5に配置する必要がなくなり、筐体内部の空間を拡大することができ、筐体の収納能力が向上する。また電子デバイスがカバーに内挿されていることにより、電子デバイスへの水の侵入を防止することが可能であり、防水性の高い筐体も提供可能となる。さらに、電子デバイスを取り外すことが困難であることから、高いセキュリティ性も付与される。
【0023】
また、これらの電子デバイスおよびその一部となるサーキット(回路)をカバーの内側を構成する材料に直接プリントすることで電子デバイスが内挿されたカバーを得ることも可能である。このとき、カバーの材料となるフィルムや不織布、プリプレグなどに直接プリントすることで、電子デバイスのベースとなる基板も不要となる点から、筐体の軽量化およびカバーの薄肉化に貢献可能となる。
【0024】
本発明における電子デバイスは、図1に示すように少なくともカバーの平面部に内挿されていることが好ましい。このような配置とすることで設計自由度を高めることができる。ここでいう平面部とは、筐体の角などの屈曲部を除いた平滑な面のことである。このとき、電子デバイスの内挿される位置は特に限定されないが、厚み方向については、カバーの厚みの中心に近い位置に配置されることが、外力によって生じる変形や衝撃などの影響が小さいことから好ましい。面方向については、筐体の立ち壁や補強部位の近くに配置されることが、電子デバイスの保護の観点から好ましい。
【0025】
<カバー>
本発明におけるカバーは、筐体の構成要素の1つである。カバーのみで筐体が構成される態様は、成形工程の削減などの生産性を向上させる観点から好ましい。また、カバーと他の部材を組み合わせて筐体が構成される様態は、形状などの設計自由度を高める観点から好ましい。このカバーおよび/またはカバーと他の部材を用いて、図1~4に示すような筐体を形作りながら、同時に電子デバイスを内挿することで固定し、保護することが目的である。そのため、カバーを構成する材料としては、設計目的に応じて熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂、これらの樹脂に強化繊維を添加した繊維強化樹脂、金属など用いることができる。筐体の軽量性の観点からは、比重の低い樹脂を用いることが好ましく、高剛性の観点からは繊維強化樹脂や金属などが用いられることが好ましい。カバーを構成するこれらの材料は、単独または2種以上を併用しても良い。
【0026】
これらの電子デバイスをカバーに内挿させるために用いる材料は、フィルムや不織布の形態であることが、材料の取り扱い性が良くプリフォームを容易に作製できる観点から好ましい。さらにフィルムの中でも、強化繊維にあらかじめ樹脂を含浸させたプリプレグであることが、カバーの力学特性を向上させる観点からより好ましい。
【0027】
本発明のカバーは、その少なくとも一部が導電性材料であることが好ましい。カバーの少なくとも一部に導電性材料を用いることで、カバーに電磁波シールド性を付与することができる。ここで言う「導電性材料」とは、材料の体積固有抵抗値が1.0×10―2Ω・cm未満の材料のことを意味する。このような導電性材料としては、例えば、炭素繊維や金属繊維を添加した繊維強化樹脂、金属などが挙げられる。導電性材料は、カバーの少なくとも一部に存在しさえすれば、その配置される位置は特に限定されない。そのため、例えばカバー中の電磁波を遮蔽したい位置に選択的に導電性材料を配置しても良いが、図2に示すようにカバーの表面に導電性材料を配置したサンドイッチ構造が生産性の高さから好ましい。また導電性材料は一般的に熱伝導性が高い材料であるため、放熱を必要とする電子デバイスの近くや冷却ファンの近くに配置することが好ましい。
【0028】
本発明のカバーは、その少なくとも一部が非導電性材料であることが好ましい。カバーの少なくとも一部に非導電性材料を用いることで、当該カバーで構成した筐体に電波透過性を付与することができる。ここで言う「非導電性材料」とは、材料の体積固有抵抗値が1.0×10―2Ω・cm以上の材料のことを意味する。このような非導電性材料としては、例えば、ガラス繊維やアラミド繊維を添加した繊維強化樹脂、樹脂、セラミックスなどが挙げられる。非導電性材料は、カバーの少なくとも一部に存在しさえすれば、その配置される位置は特に限定されない。そのため、例えば、カバーのアンテナが内挿されている位置の周囲に配置することが好ましい。
【0029】
本発明におけるカバーは、図3に示すように電子デバイスと接続可能な機構を有することが好ましい。電子デバイスと接続可能な機構は、カバーおよび筐体の電子部品を配置する側に設けてもそれらの反対側に設けても良い。例えば、カバーおよび筐体の内部の空間にバッテリーなどの電子デバイスを配置した場合、当該電子デバイスと接続可能な機構を、カバーの内部側に設けることが好ましい。一方で、筐体の外部側の電子デバイスなどの外部の機器と接続する場合、当該電子デバイスなどと接続可能な機構をカバーの外側に設けることが好ましい。
【0030】
本発明において、電子デバイスが内挿されたカバーを得る手段は特に限定されないが、電子デバイスを内挿したプリフォームをプレス成形またはオートクレーブ成形する方法や電子デバイスを金型内に配置してインサート射出成形する方法、電子デバイスに樹脂を塗布して特定の波長の光を照射することで樹脂を硬化させて成形する方法、電子デバイスを内挿するための溝を形成したカバーに電子デバイスを埋め込み、蓋をして成形する方法などが挙げられる。
【0031】
本発明におけるカバーは、図1に示すようにカバーの立ち壁部とカバーの平面部が同種の材料からなることが好ましい。そして、ここで言う、「同種の材料からなる」とは、各部に用いられる材料を構成する成分のうち、50質量%以上を占める成分が同じであることを意味する。
【0032】
ここで同種の材料からなるか否かは、熱可塑性樹脂においては、熱可塑性樹脂を特徴付ける構造の同一性で判断するものとする。例えばポリアミド樹脂であればアミド結合を含む繰り返し単位を有する樹脂を、カバーの立ち壁部とカバーの平面部が共に各部に用いられる材料を構成する成分の中で50質量%以上を占めるか否かである。同様に、ポリエステル樹脂であればエステル結合を含む繰り返し単位を有する樹脂を、ポリカーボネート樹脂であればカーボネート結合を含む繰り返し単位を有する樹脂を、ポリプロピレン樹脂であればプロピレン繰り返し単位を有する樹脂を、カバーの立ち壁部とカバーの平面部が共に各部に用いられる材料を構成する成分の中で50質量%以上を占めるか否か、という観点で判断する。
【0033】
具体例としては、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612は、いずれもアミド結合を含む繰り返し単位を有する樹脂、つまりポリアミド樹脂という同種の材料に該当する。そのためカバーの立ち壁部を構成する成分の中で、50質量%以上を占める成分がポリアミド6であって、カバーの平面部を構成する成分の中で、50質量%以上を占める成分がポリアミド66である態様は、カバーの立ち壁部とカバーの平面部が同種の材料からなると判断できる。
【0034】
またアルミニウム合金であれば、カバーの立ち壁部とカバーの平面部の両方において、アルミニウムが各部材全体の50質量%以上含まれているか否かで、カバーの立ち壁部とカバーの平面部が同種の材料からなるか否かを判断する。例えば、A2017、A4043、A5052、A6063、A7075などは同種の材料(アルミニウム合金)に該当する。
【0035】
ただし、強化繊維を含む繊維強化樹脂や添加材を含む場合には、それらの強化繊維や添加剤を除いた成分において同種であるか否かで、同種の材料からなるか否かを判断する。
【0036】
カバーの立ち壁部とカバーの平面部が同種の材料からなる組み合せとすることで、接着剤を用いずに、インサートおよびアウトサート射出成形や超音波溶着などによる接合・一体化を容易に行うことができる。さらに、図4(a)および(b)に示すようにカバー(平面部)と他の部材(立ち壁部)が接合・一体化された筐体でも良く、図4(c)に示すように平面部と立ち壁部の一部をカバーで形成し、他の部材と接合・一体化された筐体でも良い。中でも、図1に示すように電子デバイスが内挿されているカバーによって、平面部および立ち壁部、その他の筐体に必要な形状を形成した場合、後述する成形方法を用いてカバーと他の部材を接合・一体化して筐体を形成する工程が不要となるため、生産性が高くなる。また接合部が存在しないため筐体の剛性が向上する観点から好ましい。
【0037】
<筐体>
本発明における筐体は、電子部品を配置するための空間を有することが好ましい。このような形状とすることで、ディスプレイやバッテリー、冷却ファンなどの電子部品を搭載した電気・電子機器や家電機器、医療用機器などの筐体として好適に用いることができる。特に、クラムシェル型パソコンやタブレット型パソコン、携帯電話、医療用カセッテに好ましく用いられる。
【0038】
本発明において、筐体を得る方法としては特に限定されないが、電子デバイスが内挿されたカバーを金型内に配置してインサートまたはアウトサート射出成形する方法、電子デバイスが内挿されたカバーと他の部材からなるプリフォームをプレス成形する方法などが挙げられる。
【0039】
<筐体の製造方法>
本発明の、電子デバイスを有するカバーで構成され、前記電子デバイスがカバーに内挿された筐体は、プリプレグ、フィルム、及び不織布からなる群より選ばれる少なくとも1つの材料、並びに、電子デバイスを、電子デバイスが内側となるように積層してプリフォームを得る工程、及び、前記プリフォームを加圧および/または減圧して形状を賦型する工程を有する製造工程を有する製造方法により製造することができる。このように、あらかじめ電子デバイスを、筐体に用いる材料の内側に積層してプリフォームを得ることで、筐体を容易に製造することができる。好ましくは、形状を賦型する工程で用いる型を用いてプリフォームを作製することで、プリフォームを運搬した際に電子デバイスの位置がずれることを抑制することができる。またプリフォームを加圧および/または減圧して形状を賦型することで、得られる筐体に生じるボイド(微細な空隙)を抑制することができる。
【0040】
さらに、前述のプリフォームを得る工程において、積層するための各種材料を適宜選択することで、得られる筐体のカバーの少なくとも一部に導電性材料を配置したり、非導電性材料を配置することができる。
【実施例
【0041】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。まず、本発明に使用した材料を下記する。
【0042】
<使用した材料>
[材料1]
ガラス繊維からなる目付け200g/mのガラスクロス、および主剤と硬化剤とからなる2液型エポキシ樹脂を準備し、ガラス繊維の含有量が質量割合(Wf)で50%となるように、ガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸させ材料1を得た。
【0043】
[材料2]
炭素繊維からなる目付け198g/mの炭素繊維クロスを用いること以外は材料1と同様にして、炭素繊維クロスにエポキシ樹脂を含浸させ材料2を得た。
【0044】
(実施例1)
図5に示すように材料1および電子デバイスとして厚み0.7mmのICチップと厚み0.5mmの抵抗器を積層してプリフォーム1を得た。得られたプリフォーム1を50℃に温度調整された金型内に配置し、加圧・加熱プレス成形した。2時間後、金型を開き、筐体1を得た。
【0045】
(実施例2)
図6に示すように材料1および材料2、電子デバイスとして厚み0.7mmのICチップと厚み0.5mmの抵抗器を積層してプリフォーム2を得た。得られたプリフォーム2を用いること以外は実施例1と同様にして筐体2を得た。
【0046】
(実施例3)
図7(a)に示すように導電ペーストを用い、表面に回路を直接プリントしたプリプレグを用意し、図7(b)のように積層してプリフォーム3を得た。これ以外は実施例1と同様にして筐体3を得た。
【0047】
(実施例4)
実施例1に記載のプリフォーム1を用い、図4(a)に示すような平面部のカバー4を成形した。立ち壁部となる他の部材は、マトリックス樹脂がNy6樹脂からなり、炭素繊維含有率(Wf)が30%の繊維強化ペレット(東レ(株)社製“トレカ”ペレットTLP1060)および射出成形機を用いて他の部材4を成形した。得られたカバー4および他の部材4を接着剤を用いて接合することで筐体4を得た。
【0048】
実施例で得られた筐体は、従来技術である電子デバイスを配置するためのボスやリブなどを形成する必要がなく、また筐体内部に電子デバイスを配置する必要がないため、筐体内の空間を全て電子部品などの配置に用いることができ、収納能力の高い筐体であった。実施例1では、非導電性材料であるガラス繊維強化樹脂のみでカバーおよび筐体が形成されているため電波透過性に優れる。また実施例2では、カバーおよび筐体の表面に導電性材料である炭素繊維強化樹脂が配置されているため、カバーに内挿された電子デバイスから発せられる電磁波に対し、高いシールド性を発現した筐体であった。このため、電気・電子機器、オフィスオートメーション機器、家電機器、医療機器などの筐体、運搬用のキャリーケースなど幅広い分野に好適に用いることができる。実施例3で得られた筐体は、電子デバイスを作製するために必要な基板を用いることがないため、重量の増加を抑制した筐体であった。実施例4で得られた筐体は、電子デバイスを内挿したカバーを単純な形状である平面部のみとすることによって、立ち壁などの複雑な形状である他の部材を成形性に優れる射出成形材料で形成することで、高い設計自由度を有する筐体であった。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、電気・電子機器、オフィスオートメーション機器、家電機器、医療機器などの筐体、運搬用のキャリーケースなど幅広い分野に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0050】
1 筐体
2 カバー
3 電子デバイス
4 空隙部
5 筐体の内部
6 導電性材料
7 非導電性材料
8 電子デバイスと接続可能な機構
9 バッテリー
10 他の部材
11 材料1(ガラス繊維強化樹脂)
12 プリフォーム
13 材料2(炭素繊維強化樹脂)
14 サーキット(回路)
15 サーキット(回路)をプリントしたプリプレグ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7