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特許7326023熱可塑性エラストマー発泡粒子及びその成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】熱可塑性エラストマー発泡粒子及びその成形体
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/18 20060101AFI20230807BHJP
   C08J 9/34 20060101ALI20230807BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20230807BHJP
   B29C 44/36 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
C08J9/18 CER
C08J9/34 CEZ
B29C44/00 G
B29C44/36
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019093829
(22)【出願日】2019-05-17
(65)【公開番号】P2020186356
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2022-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000131810
【氏名又は名称】株式会社ジェイエスピー
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 翔太
(72)【発明者】
【氏名】平 晃暢
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-126816(JP,A)
【文献】特開2018-080226(JP,A)
【文献】特開2014-077045(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/18
C08J 9/34
B29C 44/00
B29C 44/36
B29K 19/00
B29K 23/00
B29K 105/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡状態の熱可塑性エラストマー芯層と、当該芯層を被覆する熱可塑性ポリマー被覆層とからなる、貫通孔を有する筒状の熱可塑性エラストマー発泡粒子であって、
前記被覆層を構成する熱可塑性ポリマーの動摩擦係数が0.8以下であり、
前記芯層を構成する熱可塑性エラストマーの融点(Tmc)と前記被覆層を構成する熱可塑性ポリマーの融点(Tms)との差[(Tms)-(Tmc)]が-15℃~20℃である、熱可塑性エラストマー発泡粒子。
【請求項2】
前記発泡粒子の安息角が、35°以上43°以下である、請求項1に記載の熱可塑性エラストマー発泡粒子。
(発泡粒子の安息角の測定方法)
円筒回転法による安息角測定装置を用いて測定する。発泡粒子を200mlの専用グラス器内に入れ、回転速度を1周26秒とし、その時の発泡粒子の傾き角度を発泡粒子の安息角とする。
【請求項3】
前記芯層を構成する前記熱可塑性エラストマーは、曲げ弾性率が10MPa以上50MPa以下である熱可塑性エラストマーを含む、請求項1又は2に記載の熱可塑性エラストマー発泡粒子。
【請求項4】
前記熱可塑性エラストマーが、オレフィン系熱可塑性エラストマーである、請求項1~3のいずれか一項に記載の熱可塑性エラストマー発泡粒子。
【請求項5】
前記オレフィン系熱可塑性エラストマーが、ポリエチレンブロックとエチレン/α-オレフィン共重合体ブロックとのブロック共重合体である、請求項に記載の熱可塑性エラストマー発泡粒子。
【請求項6】
前記芯層がポリエチレン系樹脂をさらに含み、当該芯層中の当該ポリエチレン系樹脂の含有量が3~40質量%である、請求項1~のいずれか一項に記載の熱可塑性エラストマー発泡粒子。
【請求項7】
前記熱可塑性ポリマーがポリオレフィン系樹脂である、請求項1~のいずれか一項に記載の熱可塑性エラストマー発泡粒子。
【請求項8】
前記ポリオレフィン系樹脂がポリエチレン系樹脂である、請求項に記載の熱可塑性エラストマー発泡粒子。
【請求項9】
前記熱可塑性エラストマーの融点(Tmc)と前記熱可塑性ポリマーの融点(Tms)との差[(Tms)-(Tmc)]が0℃~20℃である、請求項1~のいずれか一項に記載の熱可塑性エラストマー発泡粒子。
【請求項10】
前記発泡粒子の表面から気泡構造を有する気泡構造部までの厚み方向の距離である外層厚み(Ds)と、前記発泡粒子の前記貫通孔側の内面から前記気泡構造部までの厚み方向の距離である内層厚み(Dc)との比[(Ds)/(Dc)]が2以上である、請求項1~のいずれか一項に記載の熱可塑性エラストマー発泡粒子。
【請求項11】
熱キシレン抽出法によるキシレン不溶分が30~70質量%である、請求項1~10のいずれか一項に記載の熱可塑性エラストマー発泡粒子。
【請求項12】
見掛け密度が10~250g/Lである、請求項1~11のいずれか一項に記載の熱可塑性エラストマー発泡粒子。
【請求項13】
発泡状態の熱可塑性エラストマー芯層と、当該芯層を被覆する熱可塑性ポリマー被覆層とからなる、貫通孔を有する筒状の熱可塑性エラストマー発泡粒子を型内成形してなる熱可塑性エラストマー発泡粒子成形体であって、
空隙率が15%以上であり、密度が10~200g/Lであり、さらに、引張り強さ(MPa)と引張り伸び(%)の積が5以上である、熱可塑性エラストマー発泡粒子成形体。
【請求項14】
密度の変動係数が0.005~0.020である、請求項13に記載の熱可塑性エラストマー発泡粒子成形体。
【請求項15】
請求項1~12のいずれか一項に記載の熱可塑性エラストマー発泡粒子を型内成形してなる、請求項13又は14に記載の熱可塑性エラストマー発泡粒子成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性エラストマー発泡粒子及びその成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性エラストマーは、柔軟性、反発弾性等に優れていることから、緩衝材、防振材、スポーツ用品、自動車用部材等の様々な用途で使用されている。
【0003】
熱可塑性エラストマーの発泡粒子成形体は、熱可塑性エラストマーが有する柔軟性、反発弾性等に優れた特性を維持しつつ軽量化を図ることができるため、スポーツ用品、自動車用部材、建材等の分野において、更なる用途展開が期待されている。
【0004】
このような熱可塑性エラストマーに関し、より優れた柔軟性、回復性等を有する発泡粒子成形体として、連通した空隙を有する発泡粒子成形体が開示されている。例えば、特許文献1には、オレフィン系熱可塑性エラストマー発泡粒子の発泡粒子成形体であって、発泡粒子成形体の空隙率が5~40%であり、発泡粒子成形体の密度が30~150g/Lであり、発泡粒子成形体を構成するオレフィン系熱可塑性エラストマーの曲げ弾性率が10~100MPaである、発泡粒子成形体が記載されている。
【0005】
また、上記したような、空隙を有する発泡粒子成形体を成形可能な発泡粒子として、特許文献2には、ポリエチレンブロックとエチレン/α-オレフィン共重合体ブロックとのブロック共重合体の、貫通孔を有する発泡粒子の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-80226号公報
【文献】特開2018-80227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び2に記載の発泡粒子は、発泡粒子の充填方法、発泡粒子成形体の形状等によっては、発泡粒子成形体中の空隙率にバラつきが生じる場合があった。また、発泡粒子成形体の柔軟性をより高めようとして密度を低くすると、高い空隙率を維持することができないとともに、所望の空隙率に制御することが難しいという課題があった。さらに、発泡粒子成形体の用途によっては、耐久性、耐熱性等の物性の更なる向上が要求される場合があった。
【0008】
本発明は、上述した課題の存在に鑑みて成されたものであり、その目的は、空隙率が高く均一であり、軽量性、柔軟性、耐久性、耐熱性等に優れる熱可塑性エラストマー発泡粒子成形体、及び当該発泡粒子成形体を成形可能な熱可塑性エラストマー発泡粒子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、以下に示す構成を採用することにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
[1] 発泡状態の熱可塑性エラストマー芯層と、当該芯層を被覆する熱可塑性ポリマー被覆層とからなる、貫通孔を有する筒状の熱可塑性エラストマー発泡粒子であって、前記被覆層を構成する熱可塑性ポリマーの動摩擦係数が0.8以下であり、前記芯層を構成する熱可塑性エラストマーの融点(Tmc)と前記被覆層を構成する熱可塑性ポリマーの融点(Tms)との差[(Tms)-(Tmc)]が-20℃~20℃である、熱可塑性エラストマー発泡粒子。
[2] 前記熱可塑性エラストマーが、オレフィン系熱可塑性エラストマーである、上記[1]に記載の熱可塑性エラストマー発泡粒子。
[3] 前記オレフィン系熱可塑性エラストマーが、ポリエチレンブロックとエチレン/α-オレフィン共重合体ブロックとのブロック共重合体である、上記[2]に記載の熱可塑性エラストマー発泡粒子。
[4] 前記芯層がポリエチレン系樹脂を更に含み、当該芯層中の当該ポリエチレン系樹脂の含有量が3~40質量%である、上記[1]~[3]のいずれか一つに記載の熱可塑性エラストマー発泡粒子。
[5] 前記熱可塑性ポリマーがポリオレフィン系樹脂である、上記[1]~[4]のいずれか一つに記載の熱可塑性エラストマー発泡粒子。
[6] 前記ポリオレフィン系樹脂がポリエチレン系樹脂である、上記[5]に記載の熱可塑性エラストマー発泡粒子。
[7] 前記熱可塑性エラストマーの融点(Tmc)と前記熱可塑性ポリマーの融点(Tms)との差[(Tms)-(Tmc)]が-10℃~15℃である、上記[1]~[6]のいずれか一つに記載の熱可塑性エラストマー発泡粒子。
[8] 前記発泡粒子の表面から気泡構造を有する気泡構造部までの厚み方向の距離である外層厚み(Ds)と、前記発泡粒子の前記貫通孔側の内面から前記気泡構造部までの厚み方向の距離である内層厚み(Dc)との比[(Ds)/(Dc)]が2以上である、上記[1]~[7]のいずれか一つに記載の熱可塑性エラストマー発泡粒子。
[9] 熱キシレン抽出法によるキシレン不溶分が30~70質量%である、上記[1]~[8]のいずれか一つに記載の熱可塑性エラストマー発泡粒子。
[10] 見掛け密度が10~250g/Lである、上記[1]~[9]のいずれか一つに記載の熱可塑性エラストマー発泡粒子。
[11] 発泡状態の熱可塑性エラストマー芯層と、当該芯層を被覆する熱可塑性ポリマー被覆層とからなる、貫通孔を有する筒状の熱可塑性エラストマー発泡粒子を型内成形してなる熱可塑性エラストマー発泡粒子成形体であって、空隙率が15%以上であり、密度が10~200g/Lであり、さらに、引張り強さ(MPa)と引張り伸び(%)の積が5以上である、熱可塑性エラストマー発泡粒子成形体。
[12] 密度の変動係数(C.V)が0.005~0.020である、上記[11]に記載の熱可塑性エラストマー発泡粒子成形体。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、空隙率が高く均一であり、軽量性、柔軟性、耐久性、耐熱性等に優れる熱可塑性エラストマー発泡粒子成形体、及び当該発泡粒子成形体を成形可能な熱可塑性エラストマー発泡粒子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[熱可塑性エラストマー発泡粒子]
本発明の熱可塑性エラストマー発泡粒子(以下、単に「熱可塑性エラストマー発泡粒子」又は「発泡粒子」ともいう)は、発泡状態の熱可塑性エラストマー芯層と、当該芯層を被覆する熱可塑性ポリマー被覆層とからなる、貫通孔を有する筒状の熱可塑性エラストマー発泡粒子であって、被覆層を構成する熱可塑性ポリマーの動摩擦係数が0.8以下であり、芯層を構成する熱可塑性エラストマーの融点(Tmc)と被覆層を構成する熱可塑性ポリマーの融点(Tms)との差[(Tms)-(Tmc)]が-20℃~20℃である。
【0012】
<芯層>
芯層を構成する熱可塑性エラストマー(以下、「TPE」ともいう)としては、例えば、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これらの中でも、熱可塑性エラストマーは、オレフィン系熱可塑性エラストマー(以下、「TPO」ともいう)であることが好ましい。
【0013】
TPOとしては、例えば、プロピレン系樹脂とエチレン系ゴムにより構成される混合物、ポリエチレンブロックとエチレン/α-オレフィン共重合体ブロックとのブロック共重合体等が挙げられる。発泡粒子成形体の柔軟性、耐熱性等の観点から、オレフィン系熱可塑性エラストマーは、ポリエチレンブロックとエチレン/α-オレフィン共重合体ブロックとのブロック共重合体であることが好ましい。
【0014】
プロピレン系樹脂とエチレン系ゴムにより構成される混合物において、プロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレンと、エチレン或いは炭素数4~8のα-オレフィンとの共重合体等が挙げられる。一方、エチレン系ゴムとしては、例えば、エチレンと炭素数3~8のα-オレフィンとの共重合体、エチレンと、5-ビニル-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン、ジシクロペンタジエン等の非共役ジエンとの共重合体等が挙げられる。
【0015】
ポリエチレンブロックとエチレン/α-オレフィン共重合体ブロックとのブロック共重合体において、ポリエチレンブロックとしては、例えば、エチレン単独重合体、エチレンと炭素数3~8のα-オレフィンとの共重合体が挙げられる。一方、エチレン/α-オレフィン共重合体ブロックは、エチレンと炭素数3~20のα-オレフィンとの共重合体のブロックであることが好ましく、エチレンと共重合するα-オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン等が挙げられる。工業的な入手のしやすさ、諸特性、経済性等の観点から、エチレンと共重合するα-オレフィンは、好ましくはプロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンであり、特に好ましくは1-オクテンである。
【0016】
ポリエチレンブロックとエチレン/α-オレフィン共重合体ブロックとのブロック共重合体におけるエチレン/α-オレフィン共重合体ブロックの割合は、ブロック共重合体の質量に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上であり、そして、好ましくは99質量%以下、より好ましくは95質量%以下である。ポリエチレンブロックの割合及びエチレン/α-オレフィン共重合体ブロックの割合は、示差走査熱量測定(DSC)又は核磁気共鳴(NMR)から得られるデータに基づいて計算される。
【0017】
ポリエチレンブロックにおけるエチレン単位の割合は、ポリエチレンブロックの質量に対して、好ましくは95質量%以上、より好ましくは98質量%以上である。一方、エチレン/α-オレフィン共重合体ブロックにおけるα-オレフィン単位の割合は、エチレン/α-オレフィン共重合体ブロックの質量に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上である。
【0018】
TPOとして市販品を用いてもよく、例えば、ダウ・ケミカル(株)製の商品名「インフューズ(INFUSE)」、ダウ・ケミカル(株)製の商品名「アフィニティー(Affinity)」、三菱ケミカル(株)製の商品名「サーモラン」、三井化学(株)製の商品名「ミラストマー」、三井化学(株)製の商品名「タフマー」、住友化学(株)製の商品名「住友TPE」、(株)プライムポリマー製の商品名「プライムTPO」等が挙げられる。
【0019】
(TPEの融点(Tmc))
熱可塑性エラストマーの融点(Tmc)は、発泡粒子成形体の耐熱性等の観点から、好ましくは110℃以上、より好ましくは115℃以上であり、そして、好ましくは140℃以下、より好ましくは135℃以下である。
TPEの融点(Tmc)は、JIS K7121:2012に記載の熱流束示差走査熱量測定に基づき測定される融解ピーク温度を意味する。試験片の状態調節としては「(2)一定の熱処理を行なった後、融解温度を測定する場合」を採用し、加熱速度及び冷却速度としては共に10℃/分を採用する。なお、DSC曲線に複数の融解ピークが表れる場合は、最も面積の大きな融解ピークの頂点温度を融点とする。なお、TPEが樹脂、添加剤等を含有している場合、添加剤等を含有するTPEを試験片とし、上記測定を行って得られる融点をTPEの融点(Tmc)とする。
【0020】
(TPEのメルトフローレイト(MFR))
TPEのMFRは、好ましくは2g/10min以上、より好ましくは3g/10min以上、更に好ましくは4g/10min以上であり、そして、好ましくは10g/10min以下、より好ましくは8g/10min以下、更に好ましくは7g/10min以下である。TPEのMFRが上記範囲内であると、発泡粒子は成形性に優れるとともに、所望の物性を有する発泡粒子成形体が得られる。
TPEのMFRは、JIS K7210-1:2014に準拠して、温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定される値である。なお、TPEが樹脂、添加剤等を含有している場合、添加剤等を含有するTPEのMFRをTPEのMFRとする。
【0021】
(TPEの曲げ弾性率)
TPEの曲げ弾性率は、柔軟性等の観点から、好ましくは10MPa以上、より好ましくは15MPa以上、更に好ましくは20MPa以上であり、そして、好ましくは50MPa以下、より好ましくは40MPa以下、更に好ましくは35MPa以下、より更に好ましくは30MPa以下である。
TPEの曲げ弾性率は、JIS K7171:2016に準拠して測定される値である。
【0022】
(TPEのビカット軟化温度)
TPEのビカット軟化温度は、発泡粒子成形体の耐熱性等の観点から、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上、更に好ましくは90℃以上であり、そして、好ましくは140℃以下、より好ましくは135℃以下である。
TPEのビカット軟化温度は、ISO 306:2013/A50に準拠し、縦20mm×横20mm×厚み3.5mmの試験片について、(株)上島製作所製のHDT/VICAT軟化試験機「TM4123」を用いて測定を行って得られる値である。
【0023】
芯層は、更にポリエチレン系樹脂を含むことが好ましい。特に、芯層を構成するTPEがTPOである場合、芯層は更にポリエチレン系樹脂を含むことが好ましい。芯層を構成するTPEがTPOであり、かつポリエチレン系樹脂を含有することにより、TPOの優れた特性を維持しつつ、発泡粒子の発泡性、耐熱性等がより優れるとともに、成形及び発泡時の収縮がより効果的に抑制され、さらに、発泡粒子成形体の耐熱性等に優れる。
【0024】
ポリエチレン系樹脂としては、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のエチレン系炭化水素単独重合体等が挙げられる。これらのポリエチレン系樹脂は、単独で又は2種類以上組み合わせて用いられる。これらの中でも、耐熱性等の観点から、ポリエチレン系樹脂は、好ましくは高密度ポリエチレン及び直鎖状低密度ポリエチレンから選択される1種以上であり、より好ましくは高密度ポリエチレンである。
【0025】
芯層中のポリエチレン系樹脂の含有量は、3~40質量%であることが好ましく、より好ましくは5~35質量%、更に好ましくは8~30質量%、より更に好ましくは10~25質量%である。芯層中のポリエチレン系樹脂の含有量が上記範囲内であると、TPOの優れた特性を維持しつつ、発泡粒子の発泡性、耐熱性、成形性等をより向上させることができ、発泡粒子成形体の耐熱性等にも優れる。
【0026】
(ポリエチレン系樹脂の融点)
芯層中のポリエチレン系樹脂の融点は、発泡粒子の成形性、発泡粒子成形体の耐熱性等の観点から、好ましくは110℃以上、より好ましくは120℃以上、更に好ましくは125℃以上であり、そして、好ましくは145℃以下、より好ましくは140℃以下、更に好ましくは135℃以下である。ポリエチレン系樹脂の融点は、上記TPEの融点と同様の方法により測定される。
【0027】
芯層にポリエチレン系樹脂を含む場合、ポリエチレン系樹脂の融点は、TPOの融点よりも高いことが好ましい。ポリエチレン系樹脂の融点がTPOの融点よりも高い場合、発泡粒子は成形性により優れ、得られる成形体の耐熱性がより高いものとなる。上記観点から、ポリエチレン系樹脂の融点は、TPOの融点よりも3℃以上高いことがより好ましく、TPOの融点よりも5℃以上高いことが更に好ましい。ポリエチレン系樹脂の融点がTPOの融点よりも高い場合、その温度の差に上限はないが、概ね20℃程度である。
【0028】
(ポリエチレン系樹脂のMFR)
芯層中のポリエチレン系樹脂のMFRは、好ましくは2g/10min以上、より好ましくは5g/10min、更に好ましくは8g/10minであり、そして、好ましくは50g/10min以下、より好ましくは40g/10min以下、更に好ましくは35g/10min以下である。ポリエチレン系樹脂のMFRが上記範囲内であると、発泡粒子はより発泡性、成形性等に優れるとともに、発泡粒子成形体はより耐熱性等に優れる。ポリエチレン系樹脂のMFRは、上記TPEのMFRと同様の方法により測定される。
【0029】
芯層にポリエチレン系樹脂を含む場合、ポリエチレン系樹脂のMFR(II)とTPOのMFR(I)との差[(II)-(I)]が1~35g/10minであることが好ましい。MFRの差[(II)-(I)]が上記範囲内であると、発泡粒子はより発泡性に優れるものとなり、軽量性、柔軟性等により優れる発泡粒子成形体を得ることができる。上記観点から、MFRの差[(II)-(I)]は2~25g/10minであることがより好ましく、3~20g/10minであることが更に好ましく、5~17g/10minであることが特に好ましい。
【0030】
なお、芯層を構成する熱可塑性エラストマーがTPOとポリエチレン系樹脂の混合物である場合には、該混合物の融点を熱可塑性エラストマーの融点(Tmc)とする。また、該混合物のMFRを熱可塑性エラストマーのMFRとする。
【0031】
(ポリエチレン系樹脂の曲げ弾性率)
芯層中のポリエチレン系樹脂の曲げ弾性率は、好ましくは100MPa以上、より好ましくは300MPa以上、更に好ましくは500MPa以上であり、そして、好ましくは1000MPa以下、より好ましくは950MPa以下、更に好ましくは900MPa以下である。ポリエチレン系樹脂の曲げ弾性率が上記範囲内であると、発泡粒子成形体は、TPOの有する優れた柔軟性をより良好に維持しつつ、耐熱性に優れる。ポリエチレン系樹脂の曲げ弾性率は、上記TPEの曲げ弾性率と同様の方法により測定される。
【0032】
(他の重合体)
芯層は、本発明の目的効果を阻害しない範囲において他の重合体を含んでもよい。他の重合体としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリスチレン系樹脂等の熱可塑性樹脂等が挙げられる。芯層中の他の重合体の含有量は、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下であり、更に好ましくは実質的に0質量%である。
【0033】
(その他の添加剤)
芯層には、本発明の目的効果を阻害しない範囲においてその他の添加剤を添加することができる。その他の添加剤としては、例えば、気泡調整剤、難燃剤、難燃助剤、気泡核剤、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、光安定剤、導電性フィラー、抗菌剤、滑剤等が挙げられる。気泡調整剤としては、タルク、マイカ、ホウ酸亜鉛、炭酸カルシウム、シリカ、酸化チタン、石膏、ゼオライト、ホウ砂、水酸化アルミニウム、カーボン等の無機粉体;リン酸系核剤、フェノール系核剤、アミン系核剤、ポリフッ化エチレン系樹脂粉末等の有機粉体が挙げられる。芯層中の上記添加剤の含有量は、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下であり、更に好ましくは5質量%以下である。
【0034】
<被覆層>
被覆層を構成する熱可塑性ポリマーとしては、上記熱可塑性エラストマーの他に、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等の熱可塑性樹脂が例示される。これらは、単独で又は2種類以上組み合わせて用いられる。中でも、芯層を構成するTPEがTPOである場合には、芯層との接着性の観点から、被覆層を構成する熱可塑性ポリマーはポリオレフィン系樹脂を主成分とすることが好ましい。被覆層中のポリオレフィン系樹脂以外の他の熱可塑性ポリマーの含有量は、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下であり、更に好ましくは実質的に0質量%である。
【0035】
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン樹脂等が挙げられる。これらは、単独で又は2種類以上組み合わせて用いられる。ポリオレフィン系樹脂の中でも、耐候性等の観点から、熱可塑性ポリマーは、ポリエチレン系樹脂であることが好ましい。
【0036】
ポリエチレン系樹脂は、後述する発泡粒子の充填性等の観点から、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、及び高密度ポリエチレンから選択される1種以上であることが好ましく、直鎖状低密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンから選択される1種以上であることがより好ましい。
【0037】
(その他の添加剤)
被覆層には、本発明の目的効果を阻害しない範囲においてその他の添加剤を添加することができる。その他の添加剤の例は、芯層に添加され得るその他の添加剤と同様である。被覆層中の上記添加剤の含有量は、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下であり、更に好ましくは5質量%以下である。
【0038】
(熱可塑性ポリマーの動摩擦係数)
被覆層を構成する熱可塑性ポリマーの動摩擦係数は、0.8以下である。熱可塑性ポリマーの動摩擦係数が0.8を超える場合には、発泡粒子の充填性が低下して発泡粒子成形体の空隙率にバラつきが生じるおそれがあり、また、発泡粒子同士の融着が不十分となり耐久性が低下するおそれがある。上記観点から、熱可塑性ポリマーの動摩擦係数は、好ましくは0.6以下、より好ましくは0.4以下、更に好ましくは0.2以下である。熱可塑性ポリマーの動摩擦係数の下限値は、特に限定されないが、概ね0.1である。
【0039】
従来、空隙を有する熱可塑性エラストマー発泡粒子成形体は、発泡粒子の充填方法、発泡粒子成形体の形状等によっては、充填性が不十分となり、発泡粒子成形体中の空隙率にバラつきが生じる場合があった。それに対して、本発明の発泡粒子は、発泡状態の熱可塑性エラストマー芯層に対し、動摩擦係数の低い熱可塑性ポリマーが被覆されていることにより、充填性に優れるものとなる。したがって、本発明の発泡粒子を型内成形してなる発泡粒子成形体は空隙率が均一なものとなるとともに、耐久性に優れるものとなる。
【0040】
熱可塑性ポリマーの動摩擦係数は、JIS K7125:1999に記載のプラスチック-フィルム及びシート-摩擦係数試験に準拠して測定される。具体的には、試験片を63mm×63mm×4mmとし、滑り片の全質量を200gとし、滑り片の底面を他の材料で覆わず、試験テーブルとして塗装鋼板(日新製鋼(株)製、商品名:月星GLカラーSELiOS/GLエナメルクリーン/ストロークリーム、厚み:0.27mm)を用い、スプリングを用いず、試験速度500mm/分、試験距離80mmを採用して測定を行う。そして、第一極大荷重を無視し、接触界面の相対ずれ運動を検出してから6cmまでの摩擦力の平均値(N)を法線力1.95(N)で除した値を動摩擦係数とする。なお、熱可塑性ポリマーが滑剤等の添加剤等を含有している場合、添加剤等を含有する熱可塑性ポリマーを試験片とし、上記測定を行って得られる動摩擦係数を熱可塑性ポリマーの動摩擦係数とする。
【0041】
(熱可塑性ポリマーの融点(Tms))
熱可塑性ポリマーの融点(Tms)は、成形性、耐熱性等の観点から、好ましくは110℃以上、より好ましくは120℃以上、更に好ましくは125℃以上であり、そして、好ましくは145℃以下、より好ましくは140℃以下、更に好ましくは135℃以下である。熱可塑性ポリマーの融点(Tms)は、上記TPEの融点(Tmc)と同様の方法により測定される。
【0042】
(熱可塑性ポリマーのMFR)
熱可塑性ポリマーのMFRは、好ましくは2g/10min以上、より好ましくは4g/10min、更に好ましくは6g/10minであり、そして、好ましくは50g/10min以下、より好ましくは30g/10min以下、更に好ましくは25g/10min以下である。熱可塑性ポリマーのMFRが上記範囲内であると、発泡粒子はより発泡性、成形性等に優れるとともに、発泡粒子成形体は、より耐熱性等に優れる。熱可塑性ポリマーのMFRは、上記TPEのMFRと同様の方法により測定される。
【0043】
(熱可塑性ポリマーの曲げ弾性率)
熱可塑性ポリマーの曲げ弾性率は、好ましくは100MPa以上、より好ましくは300MPa以上、更に好ましくは500MPa以上であり、そして、好ましくは1000MPa以下、より好ましくは950MPa以下、更に好ましくは900MPa以下である。熱可塑性ポリマーの曲げ弾性率が上記範囲内であると、発泡粒子成形体は、TPOの有する優れた柔軟性をより良好に維持しつつ、型内成形時の発泡粒子の空隙の潰れが抑制されるため、空隙率が高く、軽量性、柔軟性、耐熱性等により優れる成形体を得ることができる。熱可塑性ポリマーの曲げ弾性率は、上記TPEの曲げ弾性率と同様の方法により測定される。
【0044】
(熱可塑性ポリマーのビカット軟化温度)
熱可塑性ポリマーのビカット軟化温度は、発泡粒子成形体の耐熱性等の観点から、好ましくは100℃以上、より好ましくは105℃以上、更に好ましくは110℃以上であり、そして、好ましくは145℃以下、より好ましくは140℃以下、更に好ましくは135℃以下である。熱可塑性ポリマーのビカット軟化温度は、上記TPEのビカット軟化温度と同様の方法により測定される。
【0045】
(熱可塑性エラストマーの融点(Tmc)と熱可塑性ポリマーの融点(Tms)との差)
芯層を構成する熱可塑性エラストマーの融点(Tmc)と被覆層を構成する熱可塑性ポリマーの融点(Tms)との差[(Tms)-(Tmc)]は、-20℃~20℃である。本発明の発泡粒子は、差[(Tms)-(Tmc)]が、-20℃~20℃であることにより、融着性に優れ、密度が低い場合であっても、高い空隙率を維持することができるものとなる。差[(Tms)-(Tmc)]が-20℃より小さいと、特に低密度の発泡粒子成形体において発泡粒子の二次発泡を十分に抑制することができないため、空隙率が下がるおそれがある。一方、差[(Tms)-(Tmc)]が20℃より大きいと、発泡性が低下して発泡粒子成形体の空隙率が下がるおそれがあり、また、発泡粒子の融着性が低下するおそれがある。
上記観点から、差[(Tms)-(Tmc)]は、好ましくは-15℃~15℃であり、より好ましくは-10℃~15℃であり、更に好ましくは0℃~10℃である。
【0046】
本発明の発泡粒子を成形してなる発泡粒子成形体は、発泡粒子成形体を構成する発泡粒子間に存在する空隙と、発泡粒子自体に貫通孔として形成される空隙とにより空隙が形成される。従来、空隙を有する熱可塑性エラストマー発泡粒子成形体は、その柔軟性をより高めようとして密度を低くすると、高い空隙率を維持することができないとともに、所望の空隙率に制御することが難しいという課題があった。この原因は、次のように考えられる。熱可塑性エラストマー発泡粒子を型内成形する際、加熱された発泡粒子は二次発泡する。熱可塑性エラストマーはポリオレフィン系樹脂等と比較してより弾性的であり、二次発泡力がより強いものである。そのため、成形時に発泡粒子が二次発泡することにより発泡粒子間に存在する空隙が潰されるため、特に低密度の成形体において空隙率が低下すると考えられる。これは、熱可塑性エラストマーの中でも、オレフィン系熱可塑性エラストマーにおいてより顕著となる。
【0047】
本発明の発泡粒子は、密度が低い場合であっても、高い空隙率を維持することができるものとなる。本発明の発泡粒子が、空隙率の高い発泡粒子成形体を成形可能な発泡粒子となる理由は、明らかではないが、以下の理由が考えられる。
【0048】
本発明の貫通孔を有する筒状の発泡粒子は、発泡状態の熱可塑性エラストマー芯層と、芯層を被覆する熱可塑性ポリマー被覆層とからなり、芯層を構成する熱可塑性エラストマーの融点(Tmc)と被覆層を構成する熱可塑性ポリマーの融点(Tms)との差[(Tms)-(Tmc)]が、-20℃~20℃である。したがって、型内成形時における芯層の二次発泡を被覆層が抑制することにより、高い空隙率を維持することができるものとなると考えられる。
【0049】
上記型内成形時における二次発泡抑制の観点から、芯層を被覆する被覆層は、芯層の外表面略全体を覆っていることが好ましく、芯層の外表面全体を完全に覆っていることがより好ましい。なお、本発明の目的効果を阻害しない範囲において、被覆層に覆われていない芯層部分があってもよい。
【0050】
同様の観点から、被覆層は非発泡状態又は実質的に非発泡状態であることが好ましく、非発泡状態であることがより好ましい。なお、本発明の目的効果を阻害しない範囲において、被覆層が微発泡状態であってもよい。
【0051】
本発明の発泡粒子において、被覆層と芯層との質量比は、1:99~20:80であることが好ましい。被覆層と芯層の質量比が上記範囲内であると、融着性により優れるとともに、型内成形時の二次発泡をより確実に抑制することができる。上記観点から、被覆層と芯層との質量比は、2:98~15:85であることがより好ましく、5:95~10:90であることが更に好ましい。
【0052】
本発明の発泡粒子は、芯層を構成する熱可塑性エラストマーのビカット軟化温度(Tc)と被覆層を構成する熱可塑性ポリマーのビカット軟化温度(Ts)との差[(Ts)-(Tc)]は、-5℃~35℃であることが好ましい。差[(Ts)-(Tc)]が上記範囲内であると、型内成形時において芯層が二次発泡することが被覆層により、より一層抑制されやすくなるため、高い空隙率を有する発泡粒子成形体をより容易に成形可能な発泡粒子となると考えられる。上記観点から、差[(Ts)-(Tc)]は、より好ましくは0℃~20℃であり、更に好ましくは5℃~15℃である。
ビカット軟化温度は、ISO 306:2013/A50に準拠して測定される。ビカット軟化温度は熱可塑性エラストマー及び熱可塑性ポリマーのそれぞれにおいて、無架橋状態(バージン原料)で測定しても良く、架橋状態(架橋原料)で測定してもよい。発泡粒子を架橋させて製造した発泡粒子を型内成形する場合には、架橋原料のビカット軟化温度が上記関係を満足することが好ましい。
【0053】
[熱可塑性エラストマー発泡粒子の製造方法]
熱可塑性エラストマー発泡粒子は、例えば、以下の工程(A)~(E)を含む方法により製造することができる。
工程(A):芯層を構成する熱可塑性エラストマーと被覆層を構成する熱可塑性ポリマーとをそれぞれ別途溶融混練して共押出しし、芯層と該芯層を被覆する被覆層からなる貫通孔を有する多層樹脂粒子を得る造粒工程、
工程(B):密閉容器内で分散媒に、上記多層樹脂粒子及び架橋剤を分散させる分散工程、
工程(C):芯層を構成するTPEが軟化し、架橋剤が実質的に分解する温度以上の温度(架橋温度)まで加熱し、TPEを含有する多層樹脂粒子を架橋させて架橋多層樹脂粒子(以下、単に「架橋粒子」ともいう)を得る架橋工程、
工程(D):多層樹脂粒子又は架橋多層樹脂粒子に、所定の温度(含浸温度)で所定の時間(含浸保持時間)保持して発泡剤を含浸させる含浸工程、及び
工程(E):所定の温度(発泡温度)で加熱されている発泡剤を含浸させた発泡性架橋多層樹脂粒子を、密閉容器内から密閉容器内の圧力よりも低い圧力の雰囲気下に放出して、発泡させて発泡粒子を製造する発泡工程。
【0054】
<工程(A)>
工程(A)では、例えば、芯層形成用押出機と、被覆層形成用押出機と、これらの押出機の出口側に設置される多層ストランド形成用ダイとを有する押出機を用いることができる。芯層形成用押出機には、芯層を構成する熱可塑性エラストマーと必要に応じて供給される添加剤とを供給して溶融混練して芯層形成用溶融混練物とし、被覆層形成用押出機には、被覆層を形成する熱可塑性ポリマーと必要に応じて添加される添加剤とを供給して溶融混練して被覆層溶融混練物とする。芯層形成溶融混練物と被覆層形成溶融混練物とを多層ストランド形成用ダイに導入して合流させ、非発泡状態の芯層及び該芯層を被覆する非発泡状態の被覆層からなり、鞘芯構造を有する複合体を形成する。そして、当該複合体を押出機先端に付設されたダイの小孔から、貫通孔を有するとともに円筒形状を有するストランド状に押出し、水中で冷却した後、ペレタイザーで所定の質量となるように切断すること(ストランドカット法)により、貫通孔を有する中空形状を有し、芯層と芯層を被覆する被覆層とからなる多層樹脂粒子を得ることができる。押出された複合体を切断する方法としては、上記方法のほか、複合体を水中に押出して切断するアンダーウォーターカット法、複合体を空気中に押出した直後に切断するホットカット法等を採用することもできる。
【0055】
多層樹脂粒子は、円筒形状、楕円筒形状、三角筒形状、四角筒形状、五角筒形状以上の多角筒形状、穿孔方向と直交する断面形状として例えば星形のように複数の突起がある形状を有する筒形状、穿孔方向と直交する断面形状として不定形状を有する筒形状等を有していてもよい。これらの中でも、多層樹脂粒子は、好ましくは円筒形状を有する。
【0056】
多層樹脂粒子が有する貫通孔の形状は、特に限定されず、穿孔方向に直交する断面形状において、通常円形状を有するが、楕円形状、正方形状、矩形状、台形状、三角形状、五角形状以上の多角形状、例えば星形のように複数の突起がある形状、不定形状等を有していてもよい。
多層樹脂粒子の貫通孔の内径(上記断面形状の長径)は、発泡粒子成形体の短時間での回復性の観点から、好ましくは1.0mm以上、より好ましくは1.3mm以上、更に好ましくは1.5mmであり、そして、好ましくは7.0mm以下、より好ましくは5.0mm以下である。
また、多層樹脂粒子の貫通孔の穿孔方向の長さは、充填性の観点から、好ましくは1mm以上であり、そして、好ましくは10mm以下、より好ましくは7mm以下である。
【0057】
多層樹脂粒子の1個当たりの平均質量は、好ましくは0.5mg以上、より好ましくは1mg以上であり、そして、好ましくは8mg以下、より好ましくは5mg以下である。多層樹脂粒子の1個当たりの平均質量が上記範囲内であると、発泡性、成形性等に優れ、優れた物性及び外観を有する発泡粒子成形体を得ることができる。なお、多層樹脂粒子の平均質量は、無作為に選んだ100個の多層樹脂粒子の質量[mg]を100で除した値である。
【0058】
多層樹脂粒子の平均アスペクト比は、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.3以下、更に好ましくは1.1以下である。多層樹脂粒子の平均アスペクト比は、無作為に選択した100個の多層樹脂粒子(ミニペレット)について、最大長(L)と最大長の長さ方向と直交する方向における当該粒子の断面の断面最大径(D)を測定して、比(L/D)を算出し、その値を算術平均した値である。
【0059】
芯層及び被覆層からなる多層樹脂粒子に、必要に応じて、気泡調整剤、難燃剤、難燃助剤、気泡核剤、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、光安定剤、導電性フィラー、抗菌剤等の添加剤を添加する場合、工程(A)において添加することができる。気泡調整剤としては、タルク、マイカ、ホウ酸亜鉛、炭酸カルシウム、シリカ、酸化チタン、石膏、ゼオライト、ホウ砂、水酸化アルミニウム、カーボン等の無機粉体;リン酸系核剤、フェノール系核剤、アミン系核剤、ポリフッ化エチレン系樹脂粉末等の有機粉体が挙げられる。気泡調整剤を添加する場合、多層樹脂粒子中の気泡調整剤の含有量は、多層樹脂粒子100質量部に対して、好ましくは0.01~1質量部である。
【0060】
<工程(B)>
工程(B)では、例えば、オートクレーブ等の密閉可能であり加熱及び加圧に耐えられる容器内において、分散媒に、例えば撹拌機を用いて多層樹脂粒子及び架橋剤を分散させることができる。
【0061】
分散媒は、多層樹脂粒子を溶解しない分散媒であれば、特に限定されず、例えば、水、エチレングリコール、グリセリン、メタノール、エタノール等のアルコールが挙げられ、中でも水が好ましい。
【0062】
架橋剤は、TPEを架橋させるものであれば、特に限定されない。架橋剤としては、例えば、2,5-t-ブチルパーベンゾエート(10時間半減期温度:104℃)、1,1-ビス-t-ブチルパーオキシシクロヘキサン(10時間半減期温度:91℃)、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン(10時間半減期温度:87℃)、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカルボネート(10時間半減期温度:99℃)等の過酸化物が挙げられる。これらは、単独で又は2種類以上組み合わせて使用することができる。これらの中でも、貫通孔が潰れにくいことから、架橋剤の10時間半減期温度が、好ましくは75℃以上、より好ましくは80℃以上であり、そして、好ましくは120℃以下、より好ましくは105℃以下、更に好ましくは100℃以下であるものを用いることが好ましい。
【0063】
架橋剤の配合量は、多層樹脂粒子100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上であり、そして、好ましくは5質量部以下、より好ましくは2.5質量部以下である。架橋剤の配合量が上記範囲内であると、架橋の効率が向上し、所望のキシレン不溶分を有する架橋粒子を得ることができ、架橋粒子は発泡性に優れ、TPEに対して発泡に十分耐えることができる強度を付与することができる。
【0064】
工程(B)において、多層樹脂粒子同士の融着を防止するために、分散剤を分散媒に更に添加することが好ましい。分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース等の有機系分散剤;酸化アルミニウム、酸化亜鉛、カオリン、マイカ、リン酸マグネシウム、リン酸三カルシウム等の難溶性無機塩等が挙げられる。これらは、単独で又は2種類以上組み合わせて使用することができる。これらの中でも、取り扱いの容易さから、好ましくは難溶性無機塩であり、より好ましくはカオリンである。
【0065】
分散媒には、界面活性剤を更に添加することもできる。界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、その他懸濁重合で一般的に使用されるアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0066】
<工程(C)>
工程(C)では、例えば、芯層を構成するTPEが軟化し、架橋剤が実質的に分解する温度以上の温度(架橋温度)まで加熱して所定の時間(架橋保持時間)保持し、TPEを含有する多層樹脂粒子を架橋させて架橋多層樹脂粒子を得ることができる。
【0067】
架橋温度は、好ましくは多層樹脂粒子を構成するTPEの融点以上、該融点+80℃以下であり、具体的には、100℃~170℃であることが好ましい。架橋温度で保持する時間(架橋保持時間)は、好ましくは1分間以上、より好ましくは20分間以上であり、そして、好ましくは100分間以下、より好ましくは60分間以下である。
【0068】
工程(C)を経て得られる架橋多層樹脂粒子の熱キシレン抽出法によるキシレン不溶分は、好ましくは30~70質量%である。架橋多層樹脂粒子の熱キシレン抽出法によるキシレン不溶分は、後述する発泡粒子の熱キシレン抽出法によるキシレン不溶分と同様の方法により測定される。
【0069】
<工程(D)>
工程(D)では、例えば、多層樹脂粒子又は架橋多層樹脂粒子に、所定の温度(含浸温度)で所定の時間(含浸保持時間)保持して発泡剤を含浸させて発泡性多層樹脂粒子又は発泡性架橋多層樹脂粒子を得ることができる。
【0070】
発泡剤は、多層樹脂粒子を発泡させることができるものであれば、特に限定されない。発泡剤としては、例えば、空気、窒素、二酸化炭素、アルゴン、ヘリウム、酸素、ネオン等の無機物理発泡剤、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ノルマルヘキサン等の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、シクロペンタン等の脂環式炭化水素、クロロフルオロメタン、トリフルオロメタン、1,1-ジフルオロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、メチルクロライド、エチルクロライド、メチレンクロライド等のハロゲン化炭化水素、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル等のジアルキルエーテル等の有機物理発泡剤等が挙げられる。これらの中でも、オゾン層の破壊がなく、かつ安価な無機物理発泡剤が好ましく、窒素、空気、二酸化炭素がより好ましく、二酸化炭素が特に好ましい。これらは、単独で又は2種類以上組み合わせて使用される。
【0071】
発泡剤の配合量は、所望の発泡粒子の見掛け密度、TPEの種類、発泡剤の種類等を考慮して決定されるが、通常、多層樹脂粒子又は架橋多層樹脂粒子100質量部に対して、有機物理発泡剤で5~50質量部を用いることが好ましく、無機物理発泡剤で0.5~30質量部を用いることが好ましい。
【0072】
含浸温度は、好ましくはTPEの融点以上、該融点+80℃以下であり、具体的には、100℃~170℃であることが好ましい。含浸温度で保持する時間(含浸保持時間)は、好ましくは1分間以上、より好ましくは20分間以上、そして、好ましくは100分間以下、より好ましくは60分間以下である。
【0073】
工程(D)は、工程(C)の前に行ってもよいし、工程(C)と同時に行ってもよい。工程(D)を工程(C)の前に行う場合には、多層樹脂粒子に発泡剤を含浸させた発泡性多層樹脂粒子を得ることができる。一方、工程(D)を工程(C)と同時に行う場合には、多層樹脂粒子又は架橋多層樹脂粒子に発泡剤を含浸させた発泡性架橋多層樹脂粒子を得ることができる。
【0074】
<工程(E)>
工程(E)では、例えば、工程(D)により発泡剤を含浸しており、加熱されている発泡性架橋多層樹脂粒子を、密閉容器内から密閉容器内の圧力よりも低い圧力の雰囲気下に放出して、発泡させて発泡粒子を製造することができる。
具体的には、密閉容器内の圧力を発泡剤の蒸気圧以上の圧力に保持しながら、密閉容器内の水面下の一端を開放し、発泡剤が含浸されている発泡性架橋多層樹脂粒子を分散媒とともに密閉容器内から密閉容器内の圧力よりも低圧の雰囲気下、通常は大気圧下に放出して発泡性架橋多層樹脂粒子を発泡させることによって発泡粒子を作製することができる。また、工程(D)を経た発泡性架橋多層樹脂粒子を冷却して取り出した後、該発泡性架橋多層樹脂粒子を温風、スチーム等の加熱媒体により加熱して発泡させることにより発泡粒子を作製することもできる。
【0075】
工程(E)において、発泡時の温度(発泡温度)は、架橋温度と同一でなくてもよく、通常、好ましくは110℃~170℃である。また、密閉容器内の圧力(釜内圧力)は、好ましくは蒸気圧以上、5MPa以下である。
【0076】
上記の工程(B)~(E)は、単一の密閉容器における一連の工程として行うことが好ましいが、それぞれの工程毎に多層樹脂粒子等を取り出し、再度密閉容器内に投入して、次の工程を行うなど別工程とすることもできる。
【0077】
また、特に見掛け密度の低い発泡粒子を得るにあたっては、発泡粒子を通常行われる大気圧下での養生を行った後、加圧可能な密閉容器に該発泡粒子を投入し、空気等の加圧気体を該容器内に圧入することにより加圧処理をして発泡粒子の内圧を高め、該発泡粒子を容器内で熱風等の加熱媒体を用いて所定の時間加熱することにより更に見掛け密度の低い発泡粒子(二段発泡粒子)を得ることができる。
【0078】
[熱可塑性エラストマー発泡粒子の物性等]
(発泡粒子の形状)
発泡粒子は、多層樹脂粒子の形状に概ね対応する筒形状を有する。発泡粒子は、円筒形状、楕円筒形状、三角筒形状、四角筒形状、五角筒形状以上の多角筒形状、穿孔方向と直交する断面形状として例えば星形のように複数の突起がある形状を有する筒形状、穿孔方向と直交する断面形状として不定形状を有する筒形状等を有していてもよい。これらの中でも、発泡粒子の充填性の観点から、好ましくは円筒形状を有する。
【0079】
(発泡粒子のアスペクト比)
本発明の発泡粒子の平均アスペクト比は、1.0~1.5であることが好ましい。発泡粒子のアスペクト比が上記範囲内であると、発泡粒子は充填性により優れるとともに、発泡粒子成形体の空隙率の制御がより容易なものとなる。上記観点から、発泡粒子のアスペクト比は、より好ましくは1.0~1.4、更に好ましくは1.0~1.3である。
発泡粒子の平均アスペクト比は、無作為に選択した100個の発泡粒子について、最大長(l)と、該最大長の長さ方向と直交する方向における当該粒子の断面の断面最大径(d)とをノギス等で測定し、比(l/d)を算出し、その値を算術平均した値である。
【0080】
(発泡粒子の安息角)
発泡粒子の充填性、及び発泡粒子成形体の空隙率の制御の観点から、発泡粒子の安息角は45°以下であることが好ましく、43°以下であることがより好ましい。安息角の下限は、概ね35°である。
発泡粒子の安息角は、例えば、筒井理学機器(株)製の円筒回転法による安息角測定装置「流動表面角測定器FSA-100S」等を用いて測定することができる。
【0081】
(発泡粒子の貫通孔)
熱可塑性エラストマー発泡粒子が有する貫通孔の形状は、特に限定されず、穿孔方向に直交する断面形状において、通常円形状を有するが、楕円形状、正方形状、矩形状、台形状、三角形状、五角形状以上の多角形状、例えば星形のように複数の突起がある形状、不定形状等を有していてもよい。
発泡粒子が有する貫通孔の内径(上記断面形状の長径)は、発泡粒子を型内成形して得られる発泡粒子成形体(以下、単に「発泡粒子成形体」ともいう)の短時間での回復性の観点から、好ましくは0.8mm以上、より好ましくは1.0mm以上、更に好ましくは1.5mm以上であり、そして、好ましくは7.0mm以下、より好ましくは5.0mm以下、更に好ましくは3.0mm以下である。
また、発泡粒子が有する貫通孔の穿孔方向の長さは、充填性の観点から、好ましくは1mm以上であり、そして、好ましくは10mm以下、より好ましくは7mm以下である。
【0082】
(発泡粒子の見掛け密度)
熱可塑性エラストマー発泡粒子の見掛け密度は、10~250g/Lであることが好ましく、より好ましくは30~200g/Lであり、更に好ましくは35~150g/Lであり、より更に好ましくは40~100g/Lであり、より更に好ましくは45~90g/Lである。発泡粒子の見掛け密度が上記範囲内であると、軽量性、柔軟性、反発性、回復性等により優れる発泡粒子成形体を成形することができる。本発明の発泡粒子は、見掛け密度が小さい場合であっても空隙率が高く均一な発泡粒子成形体を成形可能なものとなる。
【0083】
発泡粒子の見掛け密度は、以下のように求められる。まず、発泡粒子群を、相対湿度50%、23℃、1atmの条件にて2日間放置する。次いで、23℃の水が入ったメスシリンダーを用意し、任意の量の発泡粒子群(発泡粒子群の質量W1)を上記メスシリンダー内の水中に金網等の道具を使用して沈める。そして、金網等の道具の体積を考慮し、水位上昇分より読みとられる発泡粒子群の容積V1[L]を測定する。メスシリンダーに入れた発泡粒子群の質量W1[g]を容積V1[L]で除する(W1/V1)ことにより、発泡粒子の見掛け密度が求められる。
【0084】
(発泡粒子の嵩密度)
熱可塑性エラストマー発泡粒子の嵩密度は、好ましくは10g/L以上、より好ましくは15g/L以上、更に好ましくは20g/L以上であり、そして、好ましくは250g/L以下、より好ましくは200g/L以下、更に好ましくは150g/L以下、より更に好ましくは100g/L以下である。発泡粒子の嵩密度が上記範囲内であると、軽量性、柔軟性、反発性、回復性等により優れる発泡粒子成形体を成形することができる。
発泡粒子の嵩密度は、発泡粒子群から発泡粒子を無作為に取り出して容積1Lのメスシリンダーに入れ、自然堆積状態となるように多数の発泡粒子を1Lの目盛まで収容し、収容された発泡粒子の質量W2[g]と、収容体積(1[L])とから算出される。
【0085】
(発泡粒子の見掛け密度と嵩密度の比)
熱可塑性エラストマー発泡粒子の見掛け密度と嵩密度との比(見掛け密度/嵩密度)は、2.5以下であることが好ましい。該比(見掛け密度/嵩密度)が上記範囲内であると、発泡粒子の充填性がより良好となり、空隙率の高い発泡粒子成形体を成形した場合であっても、成形性により優れるものとなる。上記観点から、該比(見掛け密度/嵩密度)はより好ましくは2.0以下である。その下限値は概ね1.7である。比(見掛け密度/嵩密度)が小さいほど、発泡粒子の充填性に優れる。
【0086】
(発泡粒子のキシレン不溶分)
熱可塑性エラストマー発泡粒子の熱キシレン抽出法によるキシレン不溶分は、30~70質量%であることが好ましく、より好ましくは40~60質量%である。発泡粒子のキシレン不溶分が上記範囲内であると、回復性、耐久性等により優れる発泡粒子成形体を成形することができ、また、成形体の密度が小さい場合であっても空隙率が高く維持されやすいものとなる。熱キシレン抽出法によるキシレン不溶分は、発泡粒子の架橋状態を示す指標の一つである。
【0087】
熱キシレン抽出法によるキシレン不溶分は、試料約1gを秤量(秤量した試料質量をG1[g]とする)してキシレン100g中で6時間煮沸した後、100メッシュの金網で速やかに濾過し、次いで金網上に残った沸騰キシレン不溶分を80℃の減圧乾燥機で8時間乾燥させてから沸騰キシレン不溶分の質量を秤量し(秤量した沸騰キシレン不溶分の質量をG2[g]とする)、式(1)によって求められる。
キシレン不溶分(質量%)=〔G2/G1〕×100 (1)
【0088】
(発泡粒子の平均気泡径)
熱可塑性エラストマー発泡粒子の平均気泡径は、好ましくは20μm以上、より好ましくは40μm以上、更に好ましくは60μm以上、より更に好ましくは80μm以上であり、そして、好ましくは200μm以下、より好ましくは180μm以下、更に好ましくは160μm以下、より更に好ましくは140μm以下である。発泡粒子の平均気泡径が上記範囲内であると、発泡粒子の型内成形性がより優れるとともに、発泡粒子成形体の物性がより優れる。
【0089】
発泡粒子の平均気泡径は、ASTM D3576-77に準拠し、次のように測定される。発泡粒子群から無作為に50個以上の発泡粒子を選択する。発泡粒子をその中心部を通るように切断して2分割し、その断面の拡大写真をそれぞれ撮影する。各断面写真において、発泡粒子の最表面から中心部を通って反対側の最表面まで、等角度で4本の線分を引く。各線分と交差する気泡数をそれぞれ計測し、4本の線分の合計長さを線分と交差する全気泡数で除して気泡の平均弦長を求め、さらに0.616で除することにより、各発泡粒子の平均気泡径を求め、これらの値を算術平均することにより求められる値を発泡粒子の平均気泡径とする。
【0090】
(発泡粒子の外層厚み(Ds))
発泡粒子の表面から気泡構造を有する気泡構造部までの厚み方向の距離である外層厚み(Ds)は、1.5~10μmであることが好ましい。発泡粒子の外層厚みが上記範囲内であると、型内成形時の発泡粒子の二次発泡をより効果的に抑制することができる。上記観点から、発泡粒子の外層厚み(Ds)は、1.8~8.0μmであることがより好ましく、2.0~6.0μmであることが更に好ましい。
発泡粒子の外層厚みは、次のように測定することができる。任意の発泡粒子を穿孔方向に対して略垂直に二等分した断面の拡大写真を撮影し、該拡大写真上の任意の箇所で、発泡粒子の表面(外表面)の任意の地点から発泡粒子の中心(貫通孔)に向けて直線を引き、該直線における発泡粒子の外表面から気泡構造を有する気泡構造部までの距離を測定する。上記測定を、該発泡粒子の外表面の任意の10地点について測定し、測定値を算術平均する。この操作を任意の30個以上の発泡粒子で行い、その算術平均値を外層厚みとする。
【0091】
(比[(Ds)/(Dc)])
発泡粒子の表面から気泡構造を有する気泡構造部までの厚み方向の距離である外層厚み(Ds)と、発泡粒子の貫通孔側の内面から気泡構造部までの厚み方向の距離である内層厚み(Dc)との比[(Ds)/(Dc)]は、1.5以上であることが好ましい。該比[(Ds)/(Dc)]が上記範囲内であると、型内成形時の発泡粒子の二次発泡をより効果的に抑制することができる。また、本発明によれば、発泡粒子を二段発泡した二段発泡粒子においても上記比[(Ds)/(Dc)]を1.8以上とすることができる。上記観点から、該比[(Ds)/(Dc)]は、より好ましくは2.0以上であり、更に好ましくは2.5以上である。その上限値は概ね10である。
発泡粒子の内層厚み(Dc)は、次のように測定することができる。任意の発泡粒子を穿孔方向に対して略垂直に二等分した断面の拡大写真を撮影し、該拡大写真上の任意の箇所で、発泡粒子の貫通孔側の内面の任意の地点から発泡粒子の外表面に向けて直線を引き、該直線における発泡粒子の貫通孔側の内面から気泡構造を有する気泡構造部までの距離を測定する。上記測定を、該発泡粒子の内面の任意の10地点について測定し、測定値を算術平均する。この操作を任意の30個以上の発泡粒子で行い、その算術平均値を内層厚みとする。
【0092】
[熱可塑性エラストマー発泡粒子成形体]
本発明の熱可塑性エラストマー発泡粒子成形体(以下、単に「熱可塑性エラストマー発泡粒子成形体」、「発泡粒子成形体」又は「成形体」ともいう)は、発泡状態の熱可塑性エラストマー芯層と、当該芯層を被覆する熱可塑性ポリマー被覆層とからなる、貫通孔を有する筒状の熱可塑性エラストマー発泡粒子(以下、単に「熱可塑性エラストマー発泡粒子」又は「発泡粒子」ともいう)を型内成形してなる熱可塑性エラストマー発泡粒子成形体であって、空隙率が15%以上であり、密度が10~200g/Lであり、さらに、引張り強さ(MPa)と引張り伸び(%)の積が5以上である。
【0093】
[熱可塑性エラストマー発泡粒子成形体の製造方法]
本発明の熱可塑性エラストマー発泡粒子成形体は、例えば、従来公知の方法により、既述の発泡粒子を型内成形することにより製造することができる。
具体的には、発泡粒子を成形型内に充填した後、成形型内にスチーム等の加熱媒体を導入することにより、発泡粒子を加熱して発泡させ、相互に融着させて成形空間の形状が賦形された発泡粒子成形体を得ることができる。
また、本発明における型内成形は、発泡粒子を空気等の加圧気体により予め加圧処理して発泡粒子内の圧力を高めて、発泡粒子内の圧力を0.01~0.3MPa(G)(Gはゲージ圧を意味する)に調整し、大気圧下又は減圧下で発泡粒子を成形型キャビティー内に充填して型閉めを行った後、型内にスチーム等の加熱媒体を供給して発泡粒子を加熱融着させる加圧成形法(例えば、特公昭51-22951号公報に記載の方法)により成形することが好ましい。また、圧縮ガスにより大気圧以上に加圧したキャビティー内に、当該圧力以上に加圧した発泡粒子を充填した後、キャビティー内にスチーム等の加熱媒体を供給して加熱を行い、発泡粒子を加熱融着させる圧縮充填成形法(例えば、特公平4-46217号公報に記載の方法)により成形することもできる。その他に、特殊な条件にて得られる二次発泡力の高い発泡粒子を、大気圧下又は減圧下で雌雄一対の成形型キャビティー内に充填した後、スチーム等の加熱媒体を供給して加熱を行い、発泡粒子を加熱融着させる常圧充填成形法(例えば、特公平6-49795号公報に記載の方法)又は上記の方法を組み合わせた方法(例えば、特公平6-22919号公報に記載の方法)などによっても成形することができる。
また、特に見掛け密度の低い発泡粒子成形体を得るにあたっては、発泡粒子を型内成形する前に、通常行われる大気圧下での養生を行った後、加圧可能な密閉容器に該発泡粒子を投入し、空気等の加圧気体を該容器内に圧入することにより加圧処理して発泡粒子の内圧を高め、該発泡粒子を容器内で熱風等の加熱媒体を用いて所定の時間加熱する二段発泡を行ってもよい。
【0094】
[熱可塑性エラストマー発泡粒子成形体の物性等]
(発泡粒子成形体の密度)
熱可塑性エラストマー発泡粒子成形体の密度は、10~200g/Lであり、好ましくは20~180g/L、より好ましくは30~160g/L、更に好ましくは35~150g/Lである。発泡粒子成形体の密度が上記範囲内であると、気泡膜の強度が保たれ、圧縮に対抗し易くなり、圧縮後の回復性に優れる。
発泡粒子成形体の密度は、発泡粒子成形体から成形時のスキン層を除いて、縦50mm×横50mm×厚み25mmの直方体状となるように試験片を無作為に3つ切り出し、それぞれの試験片の質量及び体積を測定し、3つの試験片の見掛け密度を算出して、その算術平均値として求められる。
【0095】
(発泡粒子成形体の収縮率)
熱可塑性エラストマー発泡粒子成形体の収縮率は、好ましくは15%以下、より好ましくは12%以下、更に好ましくは10%以下である。発泡粒子成形体の収縮率が小さいほど、発泡粒子間の空隙が小さく表面外観に優れる発泡粒子成形体であることを示している。
発泡粒子成形体の収縮率は、発泡粒子成形体を60℃のオーブン中で12時間乾燥した後、室温まで冷却して得られた養生後の発泡粒子成形体の長手方向の寸法を測定し、成形金型の長手方向の寸法に対する、成形金型の長手方向の寸法と発泡粒子成形体の長手方向の寸法との差の比率から求められる。
【0096】
(発泡粒子成形体の80℃加熱寸法変化率)
発泡粒子成形体の80℃における加熱寸法変化率は、好ましくは-5~5%であり、より好ましくは-4~3%であり、更に好ましくは-3~1%である。加熱寸法変化率が上記範囲内であれば、高温雰囲気下における寸法変化が小さく、耐熱性に優れる発泡粒子成形体となる。
加熱寸法変化率は、JIS K6767:1999のB法に準拠して測定される。具体的には、発泡粒子成形体から厚みはそのままで大きさ150mm×150mmの成形体を切り出し、成形体の中央部に縦及び横方向にそれぞれ互いに平行に3本の直線を50mm間隔になるように記入する。縦及び横方向について、それぞれ3本の直線の長さを測定し、その平均値を求めて、初めの寸法とする。その後、80℃で22時間成型体を静置させ、取り出した後、23℃の条件下で1時間静置する。1時間静置後の成形体について、初めの寸法と同様に寸法を求め、加熱前後での寸法変化の比率から加熱寸法変化率を算出する。
【0097】
(発泡粒子成形体の空隙率)
熱可塑性エラストマー発泡粒子成形体の空隙率は、15%以上であり、好ましくは17%以上であり、より好ましくは19%以上である。発泡粒子成形体の空隙率が上記範囲内であると、軽量性、柔軟性、回復性、反発弾性等に優れる。本発明によれば、密度の低い発泡粒子成形体であっても空隙率を高く維持することができる。
発泡粒子成形体の空隙率は、次のように測定される。発泡粒子成形体から切り出した立方体形状の試験片を、エタノールを入れたメスシリンダー中に沈めてエタノールの液面の上昇分から試験片の真の体積Vc(L)を求める。また、該試験片の外形寸法(縦×横×高さ)から見掛けの体積Vd(L)を求める。求められた真の体積Vcと見掛けの体積Vdから式(2)に基づいて発泡粒子成形体の空隙率が求められる。
空隙率(%)=〔(Vd-Vc)/Vd〕×100 (2)
【0098】
(発泡粒子成形体の密度の変動係数)
熱可塑性エラストマー発泡粒子成形体の密度の変動係数(C.V)は、好ましくは0.005~0.020であり、より好ましくは0.005~0.018であり、更に好ましくは0.005~0.015である。発泡粒子成形体の密度の変動係数が小さいほど、発泡粒子成形体中の空隙のバラつきが小さく均一であることを示している。
発泡粒子成形体の密度の変動係数は、発泡粒子成形体の密度の標準偏差を、発泡粒子成形体の平均密度で除することにより求められる。なお、標準偏差の値は、不偏分散の平方根により与えられる値である。
【0099】
(発泡粒子成形体の圧縮永久歪み)
本発明の発泡粒子成形体は、成形体を25%歪ませた状態で、23℃で22時間圧縮した後、大気圧で23℃の温度下に開放してから24時間経過後に測定される圧縮永久歪みが、5%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましく、2%以下であることが更に好ましい。本発明の発泡粒子成形体は、空隙を有するため圧縮状態からの回復性に優れるとともに、気泡膜がエラストマーからなることで、空隙が回復し易く、気泡が潰された場合にも回復性が良好であるため、回復性に優れたものなる。
【0100】
(発泡粒子成形体の引張り特性)
熱可塑性エラストマー発泡粒子成形体は、引張り強さ(A)[MPa]と引張り伸び(B)[%]の積が5以上であり、好ましくは7以上、より好ましくは9以上であり、そして、好ましくは50以下、より好ましくは30以下である。発泡粒子成形体の引張り強さ(A)と発泡粒子成形体の引張り伸び(B)との積[(A)×(B)]が上記範囲内であると、強度と柔軟性とのバランスに優れるものとなる。本発明の発泡粒子成形体は密度が低く、高い空隙率を有する場合であっても上記積[(A)×(B)]の範囲を満足するものとなる。これは、本発明の発泡粒子成形体は、熱可塑性エラストマー芯層と、該芯層を被覆する熱可塑性ポリマー被覆層とからなり、融着性に優れるためであると考えられる。なお、本明細書において上記積[(A)×(B)]の値を発泡粒子成形体の耐久性の指標として用いることがある。
【0101】
発泡粒子成形体の引張り強さ及び引張り伸びは、JIS K6767:1999に準拠して、バーチカルスライサーを用いて発泡粒子成形体から全ての面が切り出し面となるように、120mm×25mm×10mmの切り出し片を切り出し、該切り出し片から糸鋸を用いてダンベル状1号形状の試験片を作製し、該試験片を500mm/分の引張速度で引張試験を行うことにより求められる。測定される引張り時の最大引張り応力及び破断時の伸びを、それぞれ、引張り強さ及び引張り伸びとする。
【0102】
本発明の発泡粒子成形体は、建材、自動車用部材、防振材、クッション材、スポーツパッド材、靴底材、玩具等の用途に好適なものである。本発明の発泡粒子成形体は空隙率が高く、そのバラつきが抑制されたものであるため、例えば、クッション材として用いた場合には、着座時の違和感等がなく座り心地により優れたものとなる。
【実施例
【0103】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0104】
<原料>
実施例及び比較例の発泡粒子の作製に用いた原料を表1に示す。表1において、熱可塑性エラストマーを「エラストマー」、熱可塑性ポリマーを「ポリマー」と表記する。
【0105】
【表1】
【0106】
<原料の物性>
実施例及び比較例の発泡粒子の作製に用いた原料の融点、メルトフローレイト(MFR)、曲げ弾性率、ビカット軟化温度、及び動摩擦係数は、以下のように測定した。
【0107】
(原料の融点Tm)
熱可塑性エラストマーの融点(Tmc)及び熱可塑性ポリマーの融点(Tms)は、JIS K7121:2012に記載の熱流束示差走査熱量測定に基づき測定される融解ピーク温度を意味し、試験片の状態調節としては「(2)一定の熱処理を行なった後、融解温度を測定する場合」を採用し、加熱速度及び冷却速度としては共に10℃/分を採用した。なお、DSC曲線に複数の融解ピークが表れる場合は、最も面積の大きな融解ピークの頂点温度を融点とした。なお、原料が樹脂、添加剤等を含有している場合、添加剤等を含有する原料を試験片とし、上記測定を行って得られる融点を原料の融点とした。
【0108】
(原料のMFR)
熱可塑性エラストマー及び熱可塑性ポリマーのMFRは、JIS K7210-1:2014に準拠して、温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定することにより求めた。なお、原料が樹脂、添加剤等を含有している場合、添加剤等を含有する原料を試験片とし、上記測定を行って得られるMFRを原料のMFRとした。
【0109】
(原料の曲げ弾性率)
熱可塑性エラストマー及び熱可塑性ポリマーの曲げ弾性率は、JIS K7171:2016に準拠して測定した。具体的には、原料を200℃に加熱したプレス機を用いてヒートプレスして縦80mm×横10mm×厚さ4mmの試験片を作製し、10kgのロードセルを使用して、支点間距離64mm、曲げ速度2mm/minの条件下で3点曲げを行った。曲げ弾性率は、変位0.5~1.0mm間の勾配より算出した。
【0110】
(原料のビカット軟化温度)
熱可塑性エラストマー及び熱可塑性ポリマーのビカット軟化温度は、ISO 306:2013/A50に準拠し、200℃に加熱したプレス機を用いてヒートプレスして作製した縦20mm×横20mm×厚み3.5mmの試験片について、(株)上島製作所製のHDT/VICAT軟化試験機「TM4123」を用いて測定を行うことにより求めた。ビカット軟化温度は、無架橋状態のバージン原料と該バージン原料を架橋剤により架橋をさせた架橋原料とを用いてそれぞれ測定した。
なお、架橋原料の試験片は、次のように作製した。まず、バージン原料を、気泡核剤としてホウ酸亜鉛とともに押出機に供給し、表2に記載した発泡粒子の架橋条件と同条件で架橋した後、表2に記載した発泡粒子と同条件で発泡させ架橋発泡粒子を得た。得られた架橋発泡粒子を、200℃に加熱したプレス機を用いてヒートプレスして縦20mm×横20mm×厚み3.5mmの架橋原料の試験片を得た。
【0111】
(原料の動摩擦係数)
熱可塑性エラストマー及び熱可塑性ポリマーの動摩擦係数は、JIS K7125:1999に記載のプラスチック-フィルム及びシート-摩擦係数試験に準拠して測定した。原料を200℃に加熱したプレス機を用いてヒートプレスして縦63mm×横63mm×厚み4mmの試験片を作製した。滑り片の全質量を200gとし、滑り片の底面を他の材料で覆わず、試験テーブルとして塗装鋼板(日新製鋼(株)製、商品名:月星GLカラーSELiOS/GLエナメルクリーン/ストロークリーム、厚み:0.27mm)を用い、スプリングを用いず、試験速度500mm/分、試験距離80mmを採用して測定を行った。そして、第一極大荷重を無視し、接触界面の相対ずれ運動を検出してから6cmまでの摩擦力の平均値(N)を法線力1.95(N)で除した値を動摩擦係数とした。なお、原料が添加剤等を含有している場合、添加剤等を含有する原料を試験片とし、上記測定を行って得られる動摩擦係数を原料の動摩擦係数とした。
【0112】
(多層樹脂粒子の貫通孔の内径)
多層樹脂粒子の貫通孔の内径は、多層樹脂粒子の断面写真を撮影し、その断面写真における貫通孔の内径(直径)を測定した。
【0113】
<発泡粒子の物性>
実施例及び比較例の発泡粒子又は二段発泡粒子の見掛け密度、嵩密度、空隙率、キシレン不溶分、平均気泡径、外層厚み、内層厚み、安息角、及び貫通孔の内径は、以下のように測定した。
【0114】
(発泡粒子の見掛け密度)
発泡粒子の見掛け密度は、以下のように求めた。まず、発泡粒子群を、相対湿度50%、23℃、1atmの条件にて2日間放置する。次いで、23℃の水が入ったメスシリンダーを用意し、任意の量の発泡粒子群(発泡粒子群の質量W1)を上記メスシリンダー内の水中に金網等の道具を使用して沈めた。そして、金網等の道具の体積を考慮し、水位上昇分より読みとられる発泡粒子群の容積V1[L]を測定する。メスシリンダーに入れた発泡粒子群の質量W1[g]を容積V1[L]で除する(W1/V1)ことにより、発泡粒子の見掛け密度を求めた。
【0115】
(発泡粒子の嵩密度)
発泡粒子の嵩密度は、発泡粒子群から発泡粒子を無作為に取り出して容積1Lのメスシリンダーに入れ、自然堆積状態となるように多数の発泡粒子を1Lの目盛まで収容し、収容された発泡粒子の質量W2[g]と、収容体積(1[L])とから算出した。
【0116】
(発泡粒子の空隙率)
発泡粒子の空隙率は、発泡粒子をメスシリンダーに入れた時のメスシリンダーの目盛りが示す見掛けの体積A(cm)、及び当該量の発泡粒子をアルコールの入ったメスシリンダーに沈めて増量した分のメスシリンダーの目盛りが示す真の体積B(cm)を求め、空隙率(%)=〔(A-B)/A〕×100の関係より求めた。
【0117】
(発泡粒子のキシレン不溶分)
発泡粒子の熱キシレン抽出法によるキシレン不溶分は、試料約1gを秤量(秤量した試料質量をG1[g]とする)してキシレン100g中で6時間煮沸した後、100メッシュの金網で速やかに濾過し、次いで金網上に残った沸騰キシレン不溶分を80℃の減圧乾燥機で8時間乾燥させてから沸騰キシレン不溶分の質量を秤量し(秤量した沸騰キシレン不溶分の質量をG2[g]とする)、式(1)によって求めた。
キシレン不溶分(質量%)=〔G2/G1〕×100 (1)
【0118】
(発泡粒子の平均気泡径)
発泡粒子の平均気泡径は、ASTM D3576-77に準拠し、次のように測定した。発泡粒子群から無作為に50個以上の発泡粒子を選択し、該発泡粒子をその中心部を通るように切断して2分割し、その断面の拡大写真をそれぞれ撮影した。各断面写真において、発泡粒子の最表面から中心部を通って反対側の最表面まで、等角度で4本の線分を引き、各線分と交差する気泡数をそれぞれ計測し、4本の線分の合計長さを線分と交差する全気泡数で除して気泡の平均弦長を求め、さらに0.616で除することにより、各発泡粒子の平均気泡径を求めた。そして、これらの値を算術平均することにより発泡粒子の平均気泡径を求めた。
【0119】
(発泡粒子の外層厚み)
発泡粒子の外層厚みは、まず、任意の発泡粒子を穿孔方向に対して略垂直に二等分した断面の拡大写真を撮影し、該拡大写真上の任意の箇所で、発泡粒子の表面(外表面)の任意の地点から発泡粒子の中心(貫通孔)に向けて直線を引き、該直線における発泡粒子の外表面から気泡構造を有する気泡構造部までの距離を測定した。上記測定を、該発泡粒子の外表面の任意の10地点について測定し、測定値を算術平均した。この操作を任意の30個以上の発泡粒子で行い、その算術平均値を外層厚みとした。
【0120】
(発泡粒子の内層厚み)
発泡粒子の内層厚みは、まず、任意の発泡粒子を穿孔方向に対して略垂直に二等分した断面の拡大写真を撮影し、該拡大写真上の任意の箇所で、発泡粒子の貫通孔側の内面の任意の地点から発泡粒子の外表面に向けて直線を引き、該直線における発泡粒子の貫通孔側の内面から気泡構造を有する気泡構造部までの距離を測定した。上記測定を、該発泡粒子の内面の任意の10地点について測定し、測定値を算術平均した。この操作を任意の30個以上の発泡粒子で行い、その算術平均値を内層厚みとした。
【0121】
(発泡粒子の安息角)
発泡粒子の安息角は、筒井理学機器(株)製の円筒回転法による安息角測定装置「流動表面角測定器FSA-100S」を用いて測定を行った。発泡粒子を200mlの専用グラス器内に入れ、回転速度を1周26秒とし、その時の発泡粒子の傾き角度を発泡粒子の安息角とした。
【0122】
(発泡粒子の貫通孔の内径)
発泡粒子の貫通孔の内径は、発泡粒子の断面写真を撮影し、その断面写真における貫通孔の内径(直径)を測定した。
【0123】
<発泡粒子成形体の物性>
実施例及び比較例の発泡粒子成形体の密度、収縮率、空隙率、密度の変動係数、引張り強さ、及び引張り伸びは、以下のように測定した。
【0124】
(発泡粒子成形体の密度)
発泡粒子成形体の密度は、発泡粒子成形体から成形時のスキン層を除いて、縦50mm×横50mm×厚み25mmの直方体状となるように試験片を無作為に3つ切り出し、それぞれの試験片の質量及び体積を測定し、3つの試験片の見掛け密度を算出して、その算術平均値として求めた。
【0125】
(発泡粒子成形体の収縮率)
発泡粒子成形体の収縮率は、発泡粒子成形体を60℃のオーブン中で12時間乾燥した後、室温まで冷却して得られた養生後の発泡粒子成形体の長手方向の寸法を測定し、成形金型の長手方向の寸法に対する、成形金型の長手方向の寸法と発泡粒子成形体の長手方向の寸法との差の比率から求めた。
【0126】
(80℃加熱寸法変化率)
発泡粒子成形体の加熱寸法変化率は、JIS K6767:1999のB法に準拠して測定した。まず、発泡粒子成形体から厚みそのまま(50mm)で縦150mm×横150mmの成形体を切り出し、成形体の中央部に縦及び横方向にそれぞれ互いに平行に3本の直線を50mm間隔になるように記入した。縦及び横方向について、それぞれ3本の直線の長さを測定し、その平均値を求めて、初めの寸法(L)とした。その後、80℃で22時間成型体を静置させ、取り出した後、23℃の条件下で1時間静置した。1時間静置後に初めの寸法Lと同様に加熱後の寸法(L)を求めた。80℃における、加熱前の寸法に対する加熱前後の寸法変化の比率((L1-L)/L×100)を80℃加熱寸法変化率とした。
【0127】
(発泡粒子成形体の空隙率)
発泡粒子成形体の空隙率は、次のように測定した。発泡粒子成形体から切り出した立方体形状の試験片を、エタノールを入れたメスシリンダー中に沈めてエタノールの液面の上昇分から試験片の真の体積Vc(L)を求めた。また、該試験片の外形寸法から(縦×横×高さ)見掛けの体積Vd(L)を求めた。求められた真の体積Vcと見掛けの体積Vdから式(2)に基づいて発泡粒子成形体の空隙率を求めた。
空隙率(%)=〔(Vd-Vc)/Vd〕×100 (2)
【0128】
(発泡粒子成形体の密度の変動係数)
発泡粒子成形体の密度の変動係数は、発泡粒子成形体の密度の標準偏差を、発泡粒子成形体の平均密度で除することにより求めた。発泡粒子成形体から、縦60mm×横60mm×厚み50mmの直方体状となるように試験片を無作為に9つ切り出し、それぞれの試験片の質量及び体積を測定し、各試験片の見掛け密度を算出し、平均密度を求めた。標準偏差の値は、不偏分散の平方根として求めた値である。
【0129】
(発泡粒子成形体の圧縮永久歪み)
発泡粒子成形体の圧縮永久歪みは、JIS K6767:1999に基づき、温度23℃にて測定した。具体的には、発泡粒子成形体から縦50mm×横50mm×厚み25mmに、成形時のスキン層を除いて直方体状となるように5つの試験片を切り出し、温度23℃、相対湿度50%の環境下で厚み方向に25%圧縮した状態で22時間放置し、圧縮開放24時間後に厚みを測定し、試験片の圧縮永久歪(%)を求め、その算術平均値を圧縮永久歪み(%)とした。
【0130】
(発泡粒子成形体の引張り特性)
発泡粒子成形体の引張り強さ及び引張り伸びは、JIS K6767:1999に準拠して、バーチカルスライサーを用いて発泡粒子成形体から全ての面が切り出し面となるように、120mm×25mm×10mmの切り出し片を切り出し、該切り出し片から糸鋸を用いてダンベル状1号形状の試験片を作製し、該試験片を500mm/分の引張速度で引張試験を行うことにより求めた。引張り時の最大引張り応力及び破断時の伸びを、それぞれ、引張り強さ及び引張り伸びとした。
【0131】
実施例1~4及び比較例1~4
<発泡粒子の作製>
(多層樹脂粒子の作製)
内径26mmの芯層形成用押出機と、内径25mmの被覆層形成用押出機と、これらの押出機の出口側に設置される多層ストランド形成用ダイとを有する押出機を用いた。芯層形成用押出機には、表2に示す熱可塑性エラストマーを供給して溶融混練して芯層形成用溶融混練物とし、被覆層形成用押出機には、表2に示す熱可塑性ポリマーを供給して溶融混練して被覆層溶融混練物とした。次いで、芯層形成溶融混練物と被覆層形成溶融混練物とを多層ストランド形成用ダイに導入して合流させ、押出機先端に付設されたダイの小孔から、貫通孔を有するとともに円筒形状を有するストランド状(芯層:95質量%、被覆層:5質量%)に押出し、水冷した後、ペレタイザーで、質量が2mg、アスペクト比(L/D)が1となるように切断して乾燥し、表2に記載の内径の貫通孔を有する多層樹脂粒子を得た。なお、芯層を構成する熱可塑性エラストマー樹脂組成物には、多層樹脂粒子100質量部に対して、気泡調整剤としてホウ酸亜鉛の含有量が0.1質量部となるように添加した。
(発泡粒子の作製)
容積5Lの密閉容器内に、分散媒として水3L、得られた多層樹脂粒子700g、分散剤としてカオリン3g、界面活性剤としてアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.2g、及び、架橋剤として第一工業製薬(株)製の商品名「トリゴノックス117」(Tri117)を仕込み、発泡剤として二酸化炭素を1.5MPa圧入し、撹拌下で表2に記載の条件で昇温して、発泡性架橋多層樹脂粒子を得た。次いで、表2に記載の発泡温度に到達してから30分間保持した後、表2に記載の釜内圧力に圧力を維持しながら、密閉容器を開放し、発泡性架橋多層樹脂粒子を分散媒とともに密閉容器内から大気圧下に放出して発泡粒子を得た。得られた発泡粒子等の物性等を表2に示す。
【0132】
(二段発泡粒子の作製)
得られた発泡粒子を大気圧下での養生を行った後、加圧可能な密閉容器に投入し、表2に記載の内圧となるように加圧した。加圧された発泡粒子を別の密閉容器内に投入し、攪拌しながら表2に記載のスチーム圧で15秒間加熱することにより二段発泡した二段発泡粒子を得た。得られた二段発泡粒子の物性等を表2に示す。
【0133】
<発泡粒子成形体の作製>
縦250mm×横200mm×厚み50mmの平板形状の金型に、得られた発泡粒子を充填し、表2に記載の条件下で、水蒸気で加熱後、冷却して金型から成形体を取り出す型内成型を行い、さらに、該成型体を60℃のオーブン内で12時間加熱乾燥養生した後に取り出し、発泡粒子成型体を得た。得られた発泡粒子成形体の物性等を表2に示す。
【0134】
【表2】
【0135】
表2から分かるように、実施例によれば、密度の低い成形体であっても、空隙率が高く均一であり、軽量性、柔軟性、耐久性、耐熱性等に優れる熱可塑性エラストマー発泡粒子成形体が得られた。芯層を構成する原料としてエラストマー2を用いた実施例2~4は80℃加熱寸法変化率がより小さく、耐熱性により優れるものであった。
【0136】
比較例1及び比較例2の発泡粒子成形体は、被覆層を有していないため、[(A)×(B)]の値が低く、耐久性に劣るものであった。また、比較例1において耐久性を向上させようとして成形圧を0.08MPaとした場合には、良好な成形体を成形することができなかった。
【0137】
比較例3は被覆層を構成する熱可塑性エラストマーの動摩擦係数が大きいため、発泡粒子の充填性が悪く、密度の変動係数の値が大きく、発泡粒子成形体中の空隙率にバラつきがあるものであった。
【0138】
比較例4の発泡粒子成形体は、被覆層を構成する熱可塑性ポリマーの融点が芯層を構成する熱可塑性エラストマーの融点よりも20℃を超えて低いものであるため、[(A)×(B)]の値が低く、耐久性に劣るものであった。また、耐久性を向上させようとして成形圧を0.10MPaとした場合には、二次発泡を抑制することができず、空隙率が低下する物であった。
【0139】
実施例1及び比較例1について、二段発泡を行わずに型内成形した結果を表3に示す。この場合でも、本発明の発泡粒子は、空隙率が高く、耐久性、耐熱性等にも優れる発泡粒子成形体を成形することができた。一方、比較例1の発泡粒子は、見掛け密度の低い発泡粒子成形体を製造する場合であっても、充填性が悪く、耐久性に劣るものであった。
【0140】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明の熱可塑性エラストマー発泡粒子成形体は、空隙率が高く均一であり、軽量性、柔軟性、耐久性、耐熱性等に優れるため、緩衝材、防振材、クッション材、スポーツ用品、自動車用部材、建材等の用途に好適であり、更なる用途展開も期待される。