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特許7326163イオン導電性化合物およびそれに関連する使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】イオン導電性化合物およびそれに関連する使用
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0562 20100101AFI20230807BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20230807BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20230807BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20230807BHJP
   C01D 15/00 20060101ALI20230807BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20230807BHJP
   C25B 13/04 20210101ALI20230807BHJP
   C25B 9/23 20210101ALI20230807BHJP
【FI】
H01M10/0562
H01M10/052
H01M4/38 Z
H01M4/13
C01D15/00
H01B1/06 A
C25B13/04 301
C25B9/23
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2019564896
(86)(22)【出願日】2018-05-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-27
(86)【国際出願番号】 US2018034447
(87)【国際公開番号】W WO2018218057
(87)【国際公開日】2018-11-29
【審査請求日】2021-05-21
(31)【優先権主張番号】62/510,430
(32)【優先日】2017-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500287732
【氏名又は名称】シオン・パワー・コーポレーション
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】ホルガー・シュナイダー
(72)【発明者】
【氏名】ホイ・ドゥ
(72)【発明者】
【氏名】クラウス・ライトナー
(72)【発明者】
【氏名】ヨハン・テア・マート
(72)【発明者】
【氏名】パスカル・ハルトマン
(72)【発明者】
【氏名】イェルン・クリッシュ
(72)【発明者】
【氏名】マリナ・ザフォント-ゼンペレ
(72)【発明者】
【氏名】トレイシー・アール・ケリー
(72)【発明者】
【氏名】チャリクリー・スコーディリス-ケリー
【審査官】村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/118801(WO,A1)
【文献】特開2014-137918(JP,A)
【文献】特開2011-044249(JP,A)
【文献】特開2017-117753(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05-10/0587
H01M 4/00-4/62
C01D 15/00
H01B 1/06
C25B 13/04
C25B 9/23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学セルにおける使用のための物品であって、
空間群F43mのアルギロダイト型結晶構造を有する式(I):
Li (I)
(式(I)中、
Mは、Feであり
Qは、存在せず
Xは、存在しないか、またはハロゲン化物からなる群より選択され、
xは8~22であり、
yは0.1~3であり、
wはであり、
zは0.1~3であり、
uは7~20であり、
tは0~8である)
の化合物を含んで成る、物品。
【請求項2】
)Liの少なくとも一部およびMの少なくとも一部は、前記結晶構造でリートベルト精緻化リチウム格子サイトを占有し、ならびに/または
)Liの少なくとも一部およびMの少なくとも一部が、前記結晶構造でリートベルト精緻化48h格子サイトを占有する、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
式(I)の前記化合物を含んで成る層を有して成り、ならびに/または
層に堆積された式(I)の前記化合物を含んで成る、請求項1または2に記載の物品。
【請求項4】
アルギロダイト型結晶構造を有する式(I):
Li (I)
(式(I)中、
Mは、Feであり
Qは、存在せず
Xは、存在しないか、またはハロゲン化物からなる群より選択され、
xは、8~22であり、
yは、0.1~3であり、
wは、であり、
zは、0.1~3であり、
uは、7~20であり、
tは、0~8である)
の化合物であり、
記アルギロダイト型結晶構造は、空間群F43mである、化合物。
【請求項5】
(a)Mが少なくとも部分的にLiを置換しており、ならびに/または
(b)Mのイオン半径は、Liのイオン半径の25%以内であるか、または
(c)Mのイオン半径は、Liのイオン半径の20%以内であるか、または
(d)Mのイオン半径は、Liのイオン半径の15%以内であるか、または
(e)Mのイオン半径は、Liのイオン半径の10%以内であるか、または
(f)Mのイオン半径は、Liのイオン半径の5%以内である、請求項に記載の化合物。
【請求項6】
組成物を形成する方法であって、
元素Li、S、P、Mおよび任意のXの原子を含んで成る前駆体の混合物を、3時間~24時間の範囲で500℃~1200℃の範囲の温度にまで加熱すること、
前記混合物を冷却すること、および
空間群F43mのアルギロダイト型結晶構造を有する式(I)
Li (I)
(式(I)中、
Mは、Feであり
Qは、存在せず
Xは存在しないか、またはハロゲン化物からなる群より選択され、
xは、8~22であり、
yは、0.1~3であり、
wは、であり、
zは、0.1~3であり、
uは、7~20であり、
tは、0~8である)
の化合物を含んで成る組成物を形成すること
を含んで成る、方法。
【請求項7】
前駆体の前記混合物は、LiS、MS、P 、LXおよびSの少なくとも2つを含んで成り、
aは、0~8であり
bは、0~2であり、
cは、0~8であり、b+cが1以上であ、請求項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1またはに記載の物品または化合物を含んでなり、
(a)液体電解質を含んで成り、ならびに/または
(b)リチウムもしくはシリコンを含んで成るアノードを有して成り、ならびに/または
(c)硫黄を含んで成るカソードを有して成り、ならびに/または
(d)リチウム・インターカレーション種を含んで成るカソードを有して成る、電気化学セル。
【請求項9】
(a)Mは一価であり、または
(b)Mは二価であり、または
(c)Mは三価であり、または
(d)Mは四価であり、または
(e)Mは五価である、請求項1に記載の物品。
【請求項10】
(a)Xは存在しない、請求項1に記載の物品。
【請求項11】
(a)物品は、式(I)の前記化合物を含んで成る複数の粒子を含んで成り、ならびに/または
(b)物品は、式(I)の前記化合物を含んで成る複数の粒子を含んで成り、前記複数の粒子は、10nm以上100ミクロン以下の平均最大断面寸法を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項12】
(a)式(I)の前記化合物を含んで成る層は、10 -5 S/cm以上の平均イオン伝導度を有し、ならびに/または
(b)式(I)の前記化合物を含んで成る層は、電極に直接接触しており、ならびに/または
(c)式(I)の前記化合物を含んで成る層は、セパレータである、請求項1に記載の物品。
【請求項13】
(a)式(I)の前記化合物を含んで成る前記層は、保護層であり、ならびに/または
(b)式(I)の前記化合物を含んで成る前記層は、固体電解質層であり、ならびに/または
(c)式(I)の前記化合物を含んで成る前記層は、0.05ミクロン以上200ミクロン以下の厚さを有し、ならびに/または
(d)式(I)の前記化合物を含んで成る前記層は、リチウム・インターカレーション電極上に配置されており、ならびに/または
(e)式(I)の前記化合物を含んで成る前記層の少なくとも一部は、結晶質であり、および/もしくは式(I)の前記化合物を含んで成る前記層は、50重量%以上99重量%以下の結晶質である、請求項12に記載の物品。
【請求項14】
式(I)の前記化合物は、Li10FeP12、Li11FeP11Cl、Li12.5Fe0.7512、Li13.5Fe0.7512.25、Li13Fe0.512、Li13Fe0.7512.25、Li13FeP12.5、Li14.5Fe0.7513、Li14Fe0.512.5、Li14Fe0.7512.75、Li14FeP13、Li15Fe0.513、Li22FeP18、Li18FeP16、Li14FeP14、Li12FeP12、Li10FeP12、Li14FePS13.5、Li13FeP13Cl、Li12FeP12ClおよびLi13FeP13Brからなる群より選択される、請求項1に記載の物品。
【請求項15】
(a)Mは、少なくとも部分的にLiを置換しており、ならびに/または
(b)Mのイオン半径は、Liのイオン半径の25%以内でり、または
(c)Mのイオン半径は、Liのイオン半径の20%以内であり、または
(d)Mのイオン半径は、Liのイオン半径の15%以内であり、または
(e)Mのイオン半径は、Liのイオン半径の10%以内であり、または
(f)Mのイオン半径は、Liのイオン半径の5%以内である、請求項1に記載の物品。
【請求項16】
(a)加熱前に、ボール・ミリングにより前記混合物を混合し、ならびに/または
(b)0.1MPa~0.3MPaの圧力で混合物を加熱し、ならびに/または
(c)式(I)の化合物を層に堆積させることは、エアロゾル蒸着を含んで成り、ならびに/または
(d)式(I)の化合物を層に堆積させることは、真空蒸着を含んで成る、請求項に記載の方法。
【請求項17】
(a)式(I)の前記化合物を含んで成る複数の粒子が堆積される前記層は、電極であり、ならびに/または
(b)式(I)の前記化合物を含んで成る複数の粒子が堆積される前記層は、リチウム金属層であり、ならびに/または
(c)式(I)の前記化合物を含んで成る複数の粒子が堆積される前記層は、保護層もしくはセパレータであり、ならびに/または
(d)式(I)の前記化合物は、Li10FeP12、Li11FeP11Cl、Li12.5Fe0.7512、Li13.5Fe0.7512.25、Li13Fe0.512、Li13Fe0.7512.25、Li13FeP12.5、Li14.5Fe0.7513、Li14Fe0.512.5、Li14Fe0.7512.75、Li14FeP13、Li15Fe0.513、Li22FeP18、Li18FeP16、Li14FeP14、Li12FeP12、Li10FeP12、Li14FePS13.5、Li13FeP13Cl、Li12FeP12ClおよびLi13FeP13Brからなる群より選択され、ならびに/または
(e)前駆体の前記混合物は、前駆体の前記混合物の総重量に対して、0重量%以上15重量%以下の過剰の硫黄を含んで成る、請求項16(c)~16(d)の何れかに記載の方法。
【請求項18】
(a)前駆体の前記混合物は、前駆体の前記混合物の総重量に対して、20重量%以上60重量%以下のLiSを含んで成り、ならびに/または
(b)前駆体の前記混合物は、前駆体の前記混合物の総重量に対して、5重量%以上30重量%以下のMSを含んで成り、ならびに/または
(c)前駆体の前記混合物は、前駆体の前記混合物の総重量に対して、10重量%以上50重量%以下のPを含んで成り、ならびに/または
(d)前駆体の前記混合物は、前駆体の前記混合物の総重量に対して、0重量%以上25重量%以下のLiXを含んで成る、ならびに/または
(e)Xは、Cl、BrおよびIからなる群より選択される、請求項に記載の方法。
【請求項19】
(a)Mは少なくとも部分的にLiを置換しており、ならびに/または
(b)Mのイオン半径は、Liのイオン半径の25%以内でり、または
(c)Mのイオン半径は、Liのイオン半径の20%以内であり、または
(d)Mのイオン半径は、Liのイオン半径の15%以内であり、または
(e)Mのイオン半径は、Liのイオン半径の10%以内であり、または
(f)Mのイオン半径は、Liのイオン半径の5%以内である、請求項に記載の方法。
【請求項20】
Xは存在し、Cl、IおよびBrからなる群より選択されるハロゲン化物である、請求項1に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
イオン導電性化合物を含む物品、組成物および方法を提供する。いくつかの実施形態では、イオン導電性化合物は電気化学セルに有用である。
【背景技術】
【0002】
リチウム化合物含有電気化学セルおよびそのようなセルを含む電池は、エネルギー貯蔵のための最新の手段である。それらは、容量と寿命に関して従来の二次電池を超えており、多くの場合、鉛などの有毒材料(または物質または材;material)の使用を避けることができる。しかしながら、従来の鉛系二次電池とは対照的に様々な技術的問題がまだ解決されていない。
【0003】
LiCoO、LiMnおよびLiFePOのようなリチウム化金属酸化物を含むカソードをベースとする二次電池は十分に確立されている。しかしながら、このタイプの電池の中には容量が制限されているものがある。このため、電極材料を改良する試みが多くなされてきた。特に有望なのは、いわゆるリチウム硫黄電池である。そのような電池では、リチウムは酸化され、Li8-a(aは0~7の範囲の数値である)のような硫化リチウムに変換される。再充電中に、リチウムおよび硫黄が再生される。このような二次電池には大容量という利点がある。
【0004】
異なる組成および性質の硫化物材料は、リチウムイオン導電体であることが知られている(例えば、Li/Pガラス、Li/P由来のガラスセラミック、Li11、チオリスコン、オキシ硫化物ガラス)。しかしながら、そのような材料は、液体有機電解質溶液に対する低い安定性、金属リチウムまたは高電圧カソード材料に対する不十分な安定性、水分および/もしくは空気に対する極度の感度、ならびに/または本質的に低いイオン伝導性などの問題に苦しむ可能性がある。
【0005】
よって、改良されたリチウムイオン導電性化合物が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
イオン導電性化合物(ionically conductive compound)を含む物品(article)、組成物(composition)、および方法を提供する。いくつかの実施形態では、イオン導電性化合物は、電気化学セル(electrochemical cell)に有用である。
【0007】
本発明の主たる目的は、いくつかの場合では、相互に関連する製品、特定の問題に対する代替解決策、ならびに/または1もしくは複数のシステムおよび/もしくは物品の異なる使用を含む。
【0008】
一態様では、電気化学セルで使用する物品を提供する。いくつかの実施形態では、式(I):
Li (I)
(式(I)中、Mは、Na、K、Fe、Mg、Ag、Cu、ZrおよびZnからなる群より選択され、Qは存在せず、またはCr、B、Sn、Ge、Si、Zr、Ta、Nb、V、P、Fe、Ga、Al、Asおよびそれらの組合せからなる群より選択され、Qは存在する場合、Mと異なり、Xは存在しないか、またはまたはハロゲン化物(またはハロゲン化合物;halide)および疑似ハロゲン化物(または偽ハロゲン化物;pseudohalide)からなる群より選択され、xは8~22であり、yは0.1~3であり、wは0~3であり、zは0.1~3であり、uは7~20であり、tは0~8である)
の化合物を含んで成る。
【0009】
特定の実施形態では、Qは存在し、Qは、Cr、B、Sn、Ge、Si、Zr、Ta、Nb、V、P、Fe、GaおよびAlからなる群より選択される2以上の原子の組合せであり、Qにおける各原子の化学量論比(stoichiometric ratio)は、Qに存在する原子の総量がwであり、0~3である。
【0010】
特定の実施形態では、前記化合物はアルギロダイト型結晶構造(argyrodite-type crystal structure)を有する。
【0011】
特定の実施形態では、Qは存在し、Qの少なくとも一部およびPは、前記アルギロダイト型結晶構造において四面体的に配位する(tetrahedrally coordinated)。
【0012】
特定の実施形態では、Liの少なくとも一部およびMの少なくとも一部は、前記結晶構造でのリードベルト精緻化(またはリートベルト精密化またはリートベルト法またはリートフェルト法;Rietveld Refinement)リチウム格子サイト(lattice site)を占有する。
【0013】
特定の実施形態では、Liの少なくとも一部およびMの少なくとも一部は、前記結晶構造でのリートベルト精緻化48h格子サイトを占有する。
【0014】
特定の実施形態では、物品は、式(I)の前記化合物を含んで成る層を有して成る。
【0015】
特定の実施形態では、物品は、層に堆積した(または配置したまたは置いたまたは配置した;deposited)式(I)の前記化合物を含んで成る。
【0016】
別の態様では、化合物を提供する。いくつかの実施形態では、式(I):
Li (I)
(式(I)中、Mは、Na、K、Fe、Mg、Ag、Cu、ZrおよびZnからなる群より選択され、Qは存在せず、またはCr、B、Sn、Ge、Si、Zr、Ta、Nb、V、P、Fe、Ga、Alおよびそれらの組合せからなる群より選択され、Qは存在する場合、Mと異なり、Xは存在しないか、またはハロゲン化物および疑似ハロゲン化物からなる群より選択され、xは8~22であり、yは0.1~3であり、wは0~3であり、zは0.1~3であり、uは7~20であり、tは0~8である)
の前記化合物は、アルギロダイト型結晶構造を有する。
【0017】
特定の実施形態では、前記アルギロダイト型結晶構造は空間群F43mである。
【0018】
別の態様では、組成物を形成するための方法を提供する。いくつかの実施形態では、前記方法は、
Li、S、P、M、任意のQおよび任意のXの元素の原子を含んで成る前駆体の混合物を、500℃~1200℃の範囲の温度にまで、3~24時間の範囲の期間加熱すること、前記混合物を冷却すること、アルギロダイト型結晶構造を有する式(I):
Li (I)
(式(I)中、Mは、Na、K、Fe、Mg、Ag、Cu、ZrおよびZnからなる群より選択され、Qは存在しないかまたはCr、B、Sn、Ge、Si、Zr、Ta、Nb、V、P、Fe、Ga、Alおよびそれらの組合せからなる群より選択され、Qは、存在する場合、Mと異なり、Xは存在しないか、またはハロゲン化物および疑似ハロゲン化物からなる群より選択され、xは8~22であり、yは0.1~3であり、wは0~3であり、zは0.1~3であり、uは7~20であり、およびtは0~8である)
の化合物を含んで成る組成物を形成すること
を含んで成る。
【0019】
特定の実施形態では、前駆体の混合物は、LiS、MS、P、QS、LiX、QおよびSの少なくとも2つを含んで成り、aは0~8であり、bは0~2であり、cは0~8であり、b+cが1以上であり、dは0~3である。
【0020】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の物品を有して成り、または化合物を含んで成る電気化学セルを提供する。
【0021】
特定の実施形態では、前記電気化学セルはさらに液体電解質を有して成る。
【0022】
特定の実施形態では、前記電気化学セルは、リチウムまたはシリコンを含んで成るアノードを含んで成る。特定の実施形態では、前記電気化学セルは硫黄を含んで成るカソードを有して成る。特定の実施形態では、前記電気化学セルは、リチウム・インターカレーション(またはリチウム層間;lithium-intercalation)種を含んで成るカソードを有して成る。
【0023】
特定の実施形態では、Mは一価である。特定の実施形態では、Mは二価である。特定の実施形態では、Mは三価である。特定の実施形態では、Mは四価である。特定の実施形態では、Mは五価である。特定の実施形態では、MはFeである。
【0024】
特定の実施形態では、Xは存在しない。特定の実施形態では、Xは存在し、Cl、IおよびBrからなる群より選択されるハロゲン化物である。
【0025】
特定の実施形態では、前記物品は、式(I)の前記化合物を含んで成る複数の粒子を有して成る。特定の実施形態では、前記複数の粒子は10nm以上100ミクロン以下の平均最大断面寸法を有する。
【0026】
特定の実施形態では、式(I)の前記化合物を含む層は、10-5S/cm以上の平均イオン伝導度(平均イオン伝導率:average ion conductivity)を有する。特定の実施形態では、式(I)の前記化合物を含んで成る層は、電極と直接接触している。特定の実施形態では、式(I)の前記化合物を含んで成る層は、セパレータである。特定の実施形態では、式(I)の前記化合物を含んで成る層は、保護層である。特定の実施形態では、式(I)の前記化合物を含んで成る層は、固体電解質層である。特定の実施形態では、式(I)の化合物を含んで成る層は、0.05ミクロン以上200ミクロン以下の厚さを有する。特定の実施形態では、式(I)の化合物を含んで成る層は、リチウム・インターカレーション電極に配置される。特定の実施形態では、式(I)の前記化合物を含んで成る層の少なくととも一部は、結晶質(または結晶性;crystalline)である(または式(I)の化合物は結晶質である)。特定の実施形態では、式(I)の前記化合物を含んで成る層は、50重量%以上99重量%以下の結晶質である。
【0027】
特定の実施形態では、前記混合物をボール・ミリング(ball milling)により、加熱の前に混合する。
【0028】
特定の実施形態では、前記混合物は、0.1MPa~0.3MPaの圧力で加熱する。
【0029】
特定の実施形態では、式(I)の前記化合物を層上に堆積することは、エアロゾル蒸着(aerosol deposition)を含んで成る。特定の実施形態では、式(I)の前記化合物を層上に堆積することは、真空蒸着(vacuum deposition)を含んで成る。
【0030】
特定の実施形態では、前記粒子が堆積した前記層は、電極である。特定の実施形態では、前記粒子が堆積した前記層は、リチウム金属層である。特定の実施形態では、前記粒子が堆積した前記層は、保護層またはセパレータである。
【0031】
本発明の他の利点および新規の特徴は、添付の図面と併せて考慮すると、本発明の様々な非限定的な実施形態の以下の詳細な説明から明らかになるであろう。本明細書および参照により組み込まれた文書が矛盾するおよび/または不一致の開示を含む場合、本明細書を基準とする(または支配する;control)ものとする。参照により組み込まれた2つ以上の文書に互いに矛盾する開示が含まれる場合、その後の有効日がより遅い文書を基準とするものとする。
【図面の簡単な説明】
【0032】
本発明の非限定的な実施形態は、添付の図面を参照して例として説明されるが、添付の図面は概略であり、縮尺通りに描かれることを意図していない。図では、図示されている同一またはほぼ同一の各要素は、通常、単一の数字で表されている。明確にするために、全ての構成要素が全ての図でラベル付けされているわけではなく、当業者が本発明を理解できるようにするために、例示が必要でない場合、各実施形態の全ての構成要素が示されているわけではない。
【0033】
図1図1A~1Eは、いくつかの実施形態に係るイオン導電性化合物を組み込んだ物品の概要である。
図2図2A~2Bは、一組の実施形態に係る、Li21SiP17.5およびLi2118のXRDスペクトルのプロットを示す。
図3図3A~3Dは、一組の実施形態に係る、Li22FeP18、Li18FeP16、Li14FeP14およびLi10FeP12のXRDスペクトルのプロットを示す。
図4図4(A)~(B)は、いくつかの実施形態に係る、LiFeP7+x/2のような式を有する化合物およびLiSiP7+x/2のような式を有する化合物についてのxの関数としての伝導度(S/cm)のプロットを示す。
図5図5(A)~(B)は、一組の実施形態に係る、Li21SiP17.5およびLi14FeP14のXRDスペクトルのプロットを示す。
図6図6は、一組の実施形態に係る、Li14FeP14の電子インピーダンス分光法(EIS)測定のプロットを示す。
図7図7A~7Dは、一組の実施形態に係る、Li14FeP14、Li13FeP13Cl、Li12FeP12ClおよびLi11FeP11l3のXRDスペクトルのプロットを示す。
図8図8は、いくつかの実施形態に係る、LiFeP7+x/2のような式を有する化合物およびLiSiP7+x/2のような式を有する化合物であって、それぞれがハロゲン化物でドープされた化合物についてのxの関数としての伝導度(S/cm)のプロットを示す。
図9図9は、一組の実施形態に係る、Li11FeP11Clの電子インピーダンス分光法(EIS)測定のプロットを示す。
図10図10A~10Cは、一組の実施形態に係る、Li14FeP14、Li13FeP13ClおよびLi13FeP13BrのXRDスペクトルのプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
イオン導電性化合物を含む物品、組成物、および方法を提供する。いくつかの実施形態では、イオン導電性化合物は、電気化学セルに有用である。開示されたイオン導電性化合物は、例えば、電極用保護層、固体電解質層および/または電気化学セル内の他の適切な要素として電気化学セル(例えば、リチウム硫黄電気化学セル、リチウムイオン電気化学セル、層間(またはインターカレートした;intercalated)カソード系電気化学セル)に組み込むことができる。特定の実施形態では、本明細書に記載されたイオン導電性化合物を含んで成る層を有して成る電極構造および/または電極構造を作製する方法を提供する。
【0035】
本明細書に記載されたイオン導電性化合物の電気化学セルへの組み込みは、例えば、電気化学セルにおける電極(例えば、リチウム電極)の安定性を増加させ、イオン伝導度を増加させることができ、および/または電気化学セルで使用される特定の既存のイオン導電性化合物と比較して、製造(例えば、薄層の形成)を促進することができる。有利なことに、いくつかの場合では、電極の安定性を増加させることが、イオン伝導度を増加させ、および/または電池の全体的な安定性も高めることもできる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されたイオン導電性化合物の電気化学セルへの組み込みは、特定の既存のイオン導電性化合物を有する電気化学セルに比べて、および/または本明細書に記載されたイオン導電性化合物がない電気化学セルに比べて、電解質の成分(例えば、ポリスルフィド)とアノード(例えば、金属リチウムのようなリチウムを含んで成るアノード)の電気活性材料との間の化学反応の発生を防止または低減することができる。
【0036】
本明細書で詳細に説明するように、イオン導電性化合物を含んで成る層は、いくつかの場合では、アニオンではなくリチウムカチオンを選択的に伝導し、電解質(例えば、液体電解質)のバリア(または障壁;barrier)(例えば、保護構造)として機能できる。例えば、保護層における(例えば、液体電解質を含む電気化学セルにおける)イオン導電性化合物の使用は、特定の既存の保護層に対していくつかの利点があり、電気化学セルの充電/放電中のリチウム(例えば、リチウム金属)の消費量の低減を含む。保護層は、電解質および/または電解質中に存在する特定の種を有する電極(例えば、アノード、カソード)の直接接触を実質的に抑制するために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のイオン導電性化合物の固体電解質層(例えば、固体電気化学セル)における使用は、特定の既存の固体電解質に比べて、イオン伝導度の増加および/または化学安定性の増加といったいくつかの利点がある。
【0037】
開示されたイオン導電性化合物は、一次電池、または何度も充電および放電が可能な二次電池を含む電気化学セルに組み込むことができる。特定の実施形態では、本明細書に記載の物品、組成物および方法は、液体電解質を有する電池に関連して使用することができる。しかしながら、他の実施形態では、本明細書に記載の物品、組成物および方法は、固体電池に関連して使用することができる。
【0038】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の材料、システムおよび方法は、リチウム電池(例えば、リチウム硫黄電池)に関連して使用することことができる。しかしながら、本明細書に記載の多くはリチウム硫黄電池に関連するものであるが、イオン導電性化合物およびイオン導電性化合物を含む層は、他のアルカリ金属系電池を含む他のリチウム系電池に適用することができる。
【0039】
本明細書に記載の電気化学セルは、例えば、車、コンピューター、携帯情報端末、携帯電話、時計、カムコーダー、デジタルカメラ、温度計、電卓、ラップトップBIOS、通信機器、またはリモート・カー・ロックの作製または操作といった様々な用途で使用され得る。
【0040】
いくつかの実施形態では、イオン導電性化合物(および/またはイオン導電性化合物を含んでなる層)の安定性および/または伝導度は、化合物にアニオン(例えば、ハロゲン化物、疑似ハロゲン化物)をドープすることで増加することができる。理論に拘束されることを望まないが、特定の実施形態では、アニオンは化合物内の硫黄のような元素を少なくとも部分的に置換してもよい。
【0041】
特定の実施形態では、イオン導電性化合物(および/またはイオン導電性化合物を含んでなる層)の安定性および/または伝導度は、1または複数のカチオンを前記化合物に組み込むことにより、増加させることも、あるいは増加させることもできる。理論に拘束されることを望まないが、特定の実施形態では、カチオンは、化合物内で(例えば、シリコン、スズ、ゲルマニウム、亜鉛、鉄、ジルコニウム、アルミニウムのようなカチオンによって)リン基のような元素を少なくとも部分的に置換してもよい。
【0042】
本発明者らは、本明細書の説明の文脈内で、いくつかの実施形態では、イオン導電性化合物(および/またはイオン導電性化合物を含んでなる層)の安定性および/または伝導度はまた、Na、K、Fe、Mg、Ag、Cu、Zr、Znおよびそれらの組合せのような1または複数の他のカチオンにより、化合物においてリチウムイオンの部分的な置換により増加させるか、あるいは増加させる。例えば、カチオンは、いくつかの場合では、カチオンが存在しない場合、リチウムイオンによって占有される化合物の格子構造上の少なくとも1つの格子サイトを占有し得る。例示的な実施形態では、化合物中のリチウムイオンは、少なくとも部分的に鉄で置換されている。理論に拘束されることを望まないが、カチオン(例えば、Na、K、Fe、Mg、Ag、Cu、Zr、Zn)は、リチウムイオンと構造(例えば、イオン半径)が類似しているため、リチウムイオンを少なくとも部分的に置換することができる。例えば、前記化合物においてリチウムイオンを少なくとも部分的に置換するカチオンは、いくつかの場合では、リチウムイオンのイオン半径の25%以内(例えば、20%以内、15%以内、10%以内、5%以内)のイオン半径を有する。
【0043】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のイオン導電性化合物は、例えば、イオン導電性化合物の安定性および/または導電度が増加するように(例えば、そうでなければ置換されたアニオンおよび/または1または複数のカチオンを欠くイオン導電性化合物と比較して)、アニオンでドープされてもよく、および/または1もしくは複数のカチオン(例えば、少なくとも部分的にリンを置換するカチオンおよび/または少なくとも部分的にリチウムイオンを置換するカチオン)を含んで成ってもよい。
【0044】
いくつかの実施形態では、イオン導電性化合物は、式(I):
Li (I)
(式(I)中、Mは、Na、K、Fe、Mg、Ag、Cu、ZrおよびZnからなる群より選択され、Qは存在しないか、またはCr、B、Sn、Ge、Si、Zr、Ta、Nb、V、P、Fe、Ga、Al、Asおよびそれらの組合せからなる群より選択され、Xは存在しないか、またはハロゲン化物もしくは疑似ハロゲン化物からなる群より選択され、xは8~22であり、yは0.1~3であり、wは0~3であり、zは0.1~3であり、uは7~20であり、tは0~8である)
のような組成物を有する。いくつかの実施形態では、Qは存在する場合、Mと異なる。
【0045】
いくつかの実施形態では、イオン導電性化合物は、式(I)のような組成物を有し、xは8~22、8~16、8~12、10~12、10~14、12~16、14~18、16~20または18~22である。いくつかの実施形態では、xは8以上、または、8.5以上、または、9以上、または、9.5以上、または、10以上、または、10.5以上、または、11以上、または、11.5以上、または、12以上、または、12.5以上、または、13以上、または、13.5以上、または、14以上、または、14.5以上、または、15以上、または、15.5以上、または、16以上、または、16.5以上、または、17以上、または、17.5以上、または、18以上、または、18.5以上、または、19以上、または、19.5以上、または、20以上、または、20.5以上、または、21以上、または21.5以上である。特定の実施形態では、xは、22以下、21.5以下、21以下、20.5以下、20以下、19.5以下、19以下、18.5以下、18以下、17.5以下、17以下、16.5以下、16以下、15.5以下、15以下、14.5以下、14以下、13.5以下、13以下、12.5以下、12以下、11.5以下、11以下、10.5以下、10以下、9.5以下、または9以下である。上記参照範囲の組合せ(例えば、8以下22以上、10以上12以下)も可能である。他の範囲も可能である。いくつかの実施形態では、xは10である。特定の実施形態では、xは11である。いくつかの場合では、xは12である。特定の実施形態では、xは13である。いくつかの実施形態では、xは14である。いくつかの場合では、xは18である。特定の実施形態では、xは22である。
【0046】
特定の実施形態では、イオン導電性化合物は、式(I)のような組成物を有し、yは、0.1~3、0.1~1、0.1~1.5、0.1~2、0.5~3、0.8~3、1~3または2~3である。例えば、いくつかの実施形態では、yは1である。いくつかの実施形態では、yは、0.1以上、0.2以上、0.25以上、0.4以上、0.5以上、0.6以上、0.75以上、0.8以上、1以上、1.2以上、1.25以上、1.4以上、1.5以上、1.6以上、1.75以上、1.8以上、2.0以上、2.25以上、2.4以上、2.5以上、2.6以上、2.75以上または2.8以上である。特定の実施形態では、yは、3.0以下、2.8以下、2.75以下、2.6以下、2.5以下、2.4以下、2.25以下、2.2以下、2.0以下、1.8以下、1.75以下、1.6以下、1.5以下、1.4以下、1.25以下、1.2以下、1.0以下、0.8以下、0.75以下、0.6以下、0.5以下、0.4以下、0.25以下または0.2以下である。上記参照範囲の組合せ(例えば、0.1以上3.0以下、1以上3以下、0.1以上2.5以下、1.0以上2.0以下)も可能である。他の範囲も可能である。例示的な実施形態では、yは1である。別の例示的な実施形態では、yは0.5である。いくつかの実施形態では、yは0.75である。
【0047】
特定の実施形態では、イオン導電性化合物は、式(I)のような組成物を有し、wは0~3、0.1~3、0.1~1、0.1~1.5、0.1~2、0.5~3、0.8~3、1~3または2~3である。例えば、いくつかの実施形態では、wは1である。いくつかの実施形態では、wは、0以上、0.1以上、0.2以上、0.25以上、0.4以上、0.5以上、0.6以上、0.75以上、0.8以上、1以上、1.2以上、1.25以上、1.4以上、1.5以上、1.6以上、1.75以上、1.8以上、2.0以上、2.25以上、2.4以上、2.5以上、2.6以上、2.75以上または2.8以上である。特定の実施形態では、wは、3.0以下、2.8以下、2.75以下、2.6以下、2.5以下、2.4以下、2.25以下、2.2以下、2.0以下、1.8以下、1.75以下、1.6以下、1.5以下、1.4以下、1.25以下、1.2以下、1.0以下、0.8以下、0.75以下、0.6以下、0.5以下、0.4以下、0.25以下、0.2以下または0.1以下である。上記参照範囲の組合せ(例えば、0以上3以下、0.1以上3.0以下、1以上3以下、0.1以上2.5以下、1.0以上2.0以下)も可能である。他の範囲も可能である。例示的な実施形態では、wは1である。別の例示的な実施形態では、wは0.5である。いくつかの実施形態では、wは0.75である。いくつかの場合では、wは0である。
【0048】
特定の実施形態では、イオン導電性化合物は、式(I)のような組成物を有し、zは0.1~3、0.1~1、0.1~1.5、0.1~2、0.5~3、0.8~3、1~3または2~3である。例えば、いくつかの実施形態では、zは1である。いくつかの実施形態では、zは、0.1以上、0.2以上、0.25以上、0.4以上、0.5以上、0.6以上、0.75以上、0.8以上、1以上、1.2以上、1.25以上、1.4以上、1.5以上、1.6以上、1.75以上、1.8以上、2.0以上、2.25以上、2.4以上、2.5以上、2.6以上、2.75以上または2.8以上である。特定の実施形態では、zは、3.0以下、2.8以下、2.75以下、2.6以下、2.5以下、2.4以下、2.25以下、2.2以下、2.0以下、1.8以下、1.75以下、1.6以下、1.5以下、1.4以下、1.25以下、1.2以下、1.0以下、0.8以下、0.75以下、0.6以下、0.5以下、0.4以下、0.25以下または0.2以下である。上記参照範囲の組合せ(例えば、0.1以上3.0以下、1以上3以下、0.1以上2.5以下、1.0以上2.0以下)も可能である。他の範囲も可能である。例示的な実施形態では、zは1である。別の例示的な実施形態では、zは2である。
【0049】
特定の実施形態では、イオン導電性化合物は、式(I)のような組成物を有し、uは7~20、7~10、8~14、10~16、12~18または14~20である。例えば、いくつかの実施形態では、uは、7以上、7.5以上、8以上、8.5以上、9以上、9.5以上、10以上、10.25以上、10.5以上、10.75以上、11以上、11.25以上、11.5以上、11.75以上、12以上、12.25以上、12.5以上、12.75以上、13以上、13.25以上、13.5以上、13.75以上、14以上、14.25以上、14.5以上、14.75以上、15以上、15.25以上、15.5以上、15.75以上、16以上、16.5以上、17以上、17.5以上、18以上、18.5以上、19以上または19.5以上である。特定の実施形態では、uは、20以下、19.5以下、19以下、18.5以下、18以下、17.5以下、17以下、16.5以下、16以下、15.75以下、15.5以下、15.25以下、15以下、14.75、以下、14.5以下、14.25以下、14以下、13.75以下、13.5以下、13.25以下、13以下、12.75以下、12.5以下、12.25以下、12以下、11.75以下、11.5以下、11.25以下、11以下、10.75以下、10.5以下、10.25以下、10以下、9.5以下、9以下、8.5以下、8以下または7.5以下である。上記参照範囲の組合せ(例えば、7以上20以下、11以上18以下)も可能である。他の範囲も可能である。
【0050】
いくつかの実施形態では、イオン導電性化合物は、式(I)のような組成物を有し、tは、0~8、0.1~8、0.1~1、0.8~2、1~3、1.5~3.5、2~4、2.5~5、3~6または4~8である。例えば、いくつかの実施形態では、tは1である。いくつかの場合では、tは、2であってもよい。特定の実施形態では、tは3である。いくつかの実施形態では、tは0以上、0.1以上、0.2以上、0.4以上、0.5以上、0.6以上、0.8以上、1以上、1.5以上、2以上、2.5以上、3以上、4以上、5以上、6以上または7以上である。特定の実施形態では、tは、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、2.5以下、2以下、1.5以下、1以下、0.8以下、0.6以下、0.5以下、0.4以下、0.2以下または0.1以下である。上記参照範囲の組合せ(例えば、0以上8以下、0.1以上8以下、1以上3以下)も可能である。他の範囲も可能である。
【0051】
いくつかの実施形態では、Mは、一価カチオン、二価カチオン、三価カチオン、四価カチオンおよび五価カチオンからなる群より選択される。特定の実施形態では、Qは存在しない、または存在し、Qは一価カチオン、二価カチオン、三価カチオン、四価カチオンおよび五価カチオンからなる群より選択される。いくつかの実施形態では、Qは、Mと異なる。
【0052】
適切な一価カチオンの非限定的な例(Mについて)は、Na、K、Rb、AgおよびCuを含む。適切な二価カチオンの非限定的な例は、Ca、Mg、Zn、CuおよびFeを含む。適切な三価カチオンの非限定的な例は、Fe、Al、Ga、As、Cr、MnおよびBを含む。適切な四価カチオンの非限定的な例は、Mn、Sn、Ge、ZrおよびSiを含む。適切な五価カチオンの非限定的な例は、Ta、Nb、As、VおよびPを含む。他のカチオンも可能である。いくつかの場合では、カチオンは、1または別のタイプの価数を有し得る(例えば、いくつかの実施形態では、Gaは三価であり、他の実施形態では、Gaは二価であり、さらに他の実施形態では、Gaは一価である)。当業者は、本明細書の教示に基づいて、本技術分野の一般的な知識と共通して、本明細書に記載のイオン導電性化合物中の特定の原子の1または複数の価数を決定することができるであろう。
【0053】
いくつかの実施形態では、Mは、Na、K、Fe、Mg、Ag、Cu、ZrおよびZnからなる群より選択される。特定の実施形態では、Qは存在しない(例えば、w=0)。他の実施形態では、Qは存在し、Mと異なり、Cr、B、Sn、Ge、Si、Zr、Ta、Nb、V、P、Fe、Ga、Al、Asおよびそれらの組合せからなる群より選択される。
【0054】
Qが2以上の組合せである実施形態では(例えば、Cr、B、Sn、Ge、Si、Zr、Ta、Nb、V、P、Fe、Ga、AlおよびAsからなる群より選択される2以上の原子)、Qにおける各原子の化学量論比は、Qに存在する原子の合計量がwであり、0.1~3である。特定の実施形態では、各原子は実質的に同じ量でQに存在し、Qに存在する原子の合計量はwであり、0.1~3の範囲内である。他の実施形態では、各原子は、Qにおいて異なる量で存在してもよく、Qに存在する合計量はwであり、0.1~3の範囲内である。例えば、そのような実施形態では、Qにおける各原子は、それぞれ実質的に同じ量で存在するシリコンまたはゲルマニウムのいずれかであってもよく、QはSi0.5Ge0.5であるため、wは1である。別の例示的な実施形態では、イオン導電性化合物は、式(I)のような組成物を有し、Qにおける各原子は、QがSiw-pGe(ここで、pは0~w(例えば、wは1であり、pは0.25または0.75である))となるように各原子が異なる量で存在するシリコンまたはゲルマニウムのいずれかであってもよい。他の範囲および組合せも可能である。当業者は、いくつかの実施形態で、wの値および範囲が2以上の原子の組合せとしてQの価数に依存してもよく、本明細書の教示に基づいてwを選択および/または決定され得ることに理解するであろう。上記のように、式(I)の化合物がQにおいて2以上の原子を含む実施形態では、合計wは、0.1~3の範囲内であってもよい。
【0055】
いくつかの実施形態では、イオン導電性化合物(例えば、式(I)のような構造を有するイオン導電性化合物)は、アルギロダイト型結晶構造を有する。そのようないくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、立方晶構造(cubic crystal structure)を有する。例えば、特定の実施形態では、イオン導電性化合物は、空間群F43mにおいてアルギロダイト型結晶構造を有する。イオン導電性化合物の結晶構造は、化合物を含んでなる粒子のシンクロトロンを使用する波長1.541nmでX線パワー回折(XPRD)結晶学(x-ray power diffraction (XPRD) crystallography)を使用し、単相リートベルト法を使用してXPRDパターンを特性評価することにより決定することができる。
【0056】
特定の実施形態では、Qが存在する場合、構造中のQの少なくとも一部およびPの少なくとも一部は、それぞれアルギロダイト型結晶構造における四面体配位サイト(tetrahedral coordinated site)を占有する。いくつかの実施形態では、化合物におけるQの少なくとも一部は、そうでなければQが存在しない場合にPによって占有されるであろうアルギロダイト型結晶構造の四面体配位サイトを占有する。いくつかの実施形態では、四面体配位サイトは、ワイコフ位置(またはワイコッフの位置;Wyckoff position)4b(例えば、ワイコフ位置4bでのPS-四面体および/またはQS-四面体)にある。いくつかの場合では、S2-イオンは、ワイコフ位置4aおよび/または4cにあってもよい。
【0057】
いくつかの実施形態では、前記構造におけるLiの少なくとも一部およびMの少なくとも一部は、それぞれ結晶構造上のリートベルト精緻化リチウム格子サイトを占有する。特定の実施形態では、前記化合物におけるMの少なくとも一部は、Mの非存在下では、結晶構造におけるLiにより占有されるはずのサイトを占有する。例えば、いくつかの実施形態では、Liの少なくとも一部および/またはMの少なくとも一部は、結晶構造におけるリートベルト精緻化48h格子サイトを占有する。
【0058】
実施形態の特定の一組では、MはFeである。例えば、いくつかの実施形態では、イオン導電性化合物は、式(IIA):
LiFe (IIA)
(式(IIA)中、xは8~22であり、yは0.1~3であり、wは0~3であり、zは0.1~3であり、uは7~20であり、tは0~8であり、Xは存在しないかまたはハロゲン化物および疑似ハロゲン化物からなる群より選択され、Qは存在しないかまたはCr、B、Sn、Ge、Si、Zr、Ta、Nb、V、P、Ga、Al、Asおよびそれらの組合せからなる群より選択される)
のような組成物を有する。
【0059】
特定の実施形態では、Xはハロゲン化物である。適切なハロゲン化物の非限定的な例は、Cl、I、FおよびBrを含む。いくつかの実施形態では、Xは疑似ハロゲン化物である。適切な疑似ハロゲン化物の非限定的な例は、シアニド、イソシアニド、シアネート、イソシアネートおよびアジドを含む。他の疑似ハロゲン化物も可能である。
【0060】
いくつかの実施形態では、イオン導電性化合物は式(I)のような組成物を有し、Qは存在せず、Mは一価カチオンであり、xは8~22であり、yは0.1~3であり、wは0~3であり、zは0.1~3であり、uは7~20であり、tは0~8である。そのようないくつかの実施形態では、イオン導電性化合物は式(II):
Li2x-y+2-ty-zx+6-0.5z-t (II)
(式(II)中、xは8~22であり、yは0.1~3であり、wは0~3であり、zは0.1~3であり、uは7~20であり、tは0~8であり、Xは存在しないかまたはハロゲン化物および疑似ハロゲン化物からなる群より選択され、2x-y+2-tが8~22、y-zが0.1~3および/またはx+6-0.5z-tが7~20となるようにMは一価カチオンである)
のような組成物を有してもよい。いくつかの場合では、式(II)のような組成物は、アルギロダイト型結晶構造を有してもよい。
【0061】
特定の実施形態では、イオン導電性化合物は、式(I)のような組成物を有し、Mは一価カチオンであり、Qは一価カチオンであり、xは8~22であり、yは0.1~3であり、wは0~3であり、zは0.1~3であり、uは7~20であり、tは0~8である。いくつかのそのような実施形態では、イオン導電性化合物は式(III):
Li2x-y+2+4w-ty-z2-wx+6-0.5z-t (III)
(式(III)中、xは8~22であり、yは0.1~3であり、wは0~3であり、zは0.1~3であり、uは7~20であり、tは0~8であり、Xは存在しないかまたはハロゲン化物および疑似ハロゲン化物からなる群より選択され、Mは一価カチオンであり、2x-y+2+4w-tが8~22、y-zが0.1~3、2-wが0.1~3および/またはx+6-0.5z-tが7~20であるようにQは一価カチオンである)
のような組成物を有してもよい。いくつかの場合では、式(III)のような組成物は、アルギロダイト型結晶構造を有してもよい。
【0062】
いくつかの実施形態では、イオン導電性化合物は式(I)のような組成物を有し、Qは二価カチオンであり、Mは一価カチオンであり、xは8~22であり、yは0.1~3であり、wは0~3であり、zは0.1~3であり、uは7~20であり、tは0~8である。いくつかのそのような実施形態では、前記イオン導電性化合物は、式(IV):
Li2x-y+2+3w-ty-z2-wx+6-0.5z-t (IV)
(式(IV)中、xは8~22であり、yは0.1~3であり、wは0~3であり、zは0.1~3であり、uは7~20であり、tは0~8であり、Xは存在しないかまたはハロゲン化物および疑似ハロゲン化物からなる群より選択され、Mは一価カチオンであり、2x-y+2+3w-tが8~22、y-zが0.1~3、2-wが0.1~3および/またはx+6-0.5z-tが7~20となるようにQは二価カチオンである)
のような組成物を有してもよい。いくつかの場合では、式(IV)のような組成物は、アルギロダイト型結晶構造を有してもよい。
【0063】
特定の実施形態では、イオン導電性化合物は、式(I)のような組成物を有し、Mは一価カチオンであり、Qは三価カチオンであり、xは8~22であり、yは0.1~3であり、wは0~3であり、zは0.1~3であり、uは7~20であり、tは0~8である。いくつかのそのような実施形態では、前記イオン導電性化合物は、式(V):
Li2x-y+2+2w-ty-z2-wx+6-0.5z-t (V)
(式(V)中、xは8~22であり、yは0.1~3であり、wは0~3であり、zは0.1~3であり、uは7~20であり、tは0~8であり、Xは存在しないかまたはハロゲン化物および疑似ハロゲン化物からなる群より選択され、Mは一価カチオンであり、2x-y+2+2w-tが8~22、y-zが0.1~3、2-wが0.1~3および/またはx+6-0.5z-tが7~20となるようにQは三価カチオンである)
のような組成物を有してもよい。いくつかの場合では、式(V)のような組成物はアルギロダイト型結晶構造を有してもよい。
【0064】
いくつかの実施形態では、前記イオン導電性化合物は式(I)のような組成物を有し、Qは四価カチオンであり、Mは一価カチオンであり、xは8~22であり、yは0.1~3であり、wは0~3であり、zは0.1~3であり、uは7~20であり、tは0~8である。いくつかのそのような実施形態では、前記イオン導電性化合物は、式(VI):
Li2x-y+2+w-ty-z2-wx+6-0.5z-t (VI)
(式(VI)中、xは8~22であり、yは0.1~3であり、wは0~3であり、zは0.1~3であり、uは7~20であり、tは0~8であり、Xは存在しないかまたはハロゲン化物および疑似ハロゲン化物からなる群より選択され、Mは一価カチオンであり、2x-y+2+w-tが8~22、y-zが0.1~3、2-wが0.1~3および/またはx+6-0.5z-tが7~20となるようにQは四価カチオンである)
のような組成物を有してもよい。いくつかの場合では、式(VI)のような組成物はアルギロダイト型結晶構造を有してもよい。
【0065】
特定の実施形態では、前記イオン導電性化合物は式(I)のような組成物を有し、Mは一価カチオンであり、Qは五価カチオンであり、xは8~22であり、yは0.1~3であり、wは0~3であり、zは0.1~3であり、uは7~20であり、tは0~8である。いくつかのそのような実施形態では、前記イオン導電性化合物は式(VII):
Li2x-y+2-ty-z2-wSx+6-0.5z-t (VII)
(式(VII)中、xは8~22であり、yは0.1~3であり、wは0~3であり、zは0.1~3であり、uは7~20であり、tは0~8であり、Xは存在しないかまたはハロゲン化物および疑似ハロゲン化物からなる群より選択され、Mは一価カチオンであり、2x-y+2-tが8~22、y-zが0.1~3、2-wが0.1~3および/またはx+6-0.5z-tが7~20となるようにQは五価カチオンである)
のような組成物を有してもよい。いくつかの場合では、式(VII)のような組成物は、アルギロダイト型結晶構造を有してもよい。
【0066】
いくつかの実施形態では、前記イオン導電性化合物は式(I)のような組成物を有し、Qは存在せず、Mは二価カチオンであり、xは8~22であり、yは0.1~3であり、wは0~3であり、zは0.1~3であり、uは7~20であり、tは0~8である。いくつかのそのような実施形態では、前記イオン導電性化合物は、式(VIII):
Li2x-2y+2-ty-zx+6-z-t (VIII)
(式(VIII)中、xは8~22であり、yは0.1~3、wは0~3であり、zは0.1~3であり、uは7~20であり、tは0~8であり、Xは存在しないかまたはハロゲン化物および疑似ハロゲン化物からなる群より選択され、2x-2y+2-tが8~22、y-zが0.1~3および/またはx+6-z-tが7~20となるようにMは二価カチオンである)
のような組成物を有してもよい。いくつかの場合では、式(VIII)のような組成物はアルギロダイト型結晶構造を有してもよい。
【0067】
特定の実施形態では、イオン導電性化合物は、式(I)のような組成物を有し、Mはカチオンであり、Qは一価カチオンであり、xは8~22であり、yは0.1~3であり、wは0~3であり、zは0.1~3であり、uは7~20であり、tは0~8である。いくつかのそのような実施形態では、前記イオン導電性化合物は式(IX):
Li2x-2y+2+4w-ty-z2-wx+6-z-t (IX)
(式(IX)中、xは8~22であり、yは0.1~3であり、wは0~3であり、zは0.1~3であり、uは7~20であり、tは0~8であり、Xは存在しないかまたはハロゲン化物および疑似ハロゲン化物からなる群より選択され、Mは二価カチオンであり、2x-2y+2+4w-tが8~22、y-zが0.1~3、2-wが0.1~3および/またはx+6-z-tが7~20となるようにQは一価カチオンである)
のような組成物を有してもよい。いくつかの場合では、式(IX)のような組成物はアルギロダイト型結晶構造を有してもよい。
【0068】
いくつかの実施形態では、前記イオン導電性化合物は式(I)のような組成物を有し、Qは二価カチオンであり、Mは二価カチオンであり、xは8~22であり、yは0.1~3であり、wは0~3であり、zは0.1~3であり、uは7~20であり、tは0~8である。いくつかのそのような実施形態では、前記イオン導電性化合物は式(X):
Li2x-2y+2+3w-ty-z2-wx+6-z-t (X)
(式(X)中、xは8~22であり、yは0.1~3であり、wは0~3であり、zは0.1~3であり、uは7~20であり、tは0~8であり、Xは存在しないかまたはハロゲン化物および疑似ハロゲン化物からなる群より選択され、Mは二価カチオン、2x-2y+2+3w-tが8~22、y-zが0.1~3、2-wが0.1~3および/またはx+6-z-tが7~20となるようにQは二価カチオンである)
のような組成物を有してもよい。いくつかの場合では、式(X)のような組成物はアルギロダイト型結晶構造を有してもよい。
【0069】
特定の実施形態では、前記イオン導電性化合物は式(I)のような化合物を有し、Mは二価カチオンであり、Qは三価カチオンであり、xは8~22であり、yは0.1~3であり、wは0~3であり、zは0.1~3であり、uは7~20であり、tは0~8である。いくつかのそのような実施形態では、前記イオン導電性化合物は式(XI):
Li2x-2y+2+2w-ty-z2-wx+6-z-t (XI)
(式(XI)中、xは8~22であり、yは0.1~3であり、wは0~3であり、zは0.1~3であり、uは7~20であり、tは0~8であり、Xは存在しないかまたはハロゲン化物および疑似ハロゲン化物からなる群より選択され、Mは二価カチオンであり、2x-2y+2+2w-tが8~22、y-zが0.1~3、2-wが0.1~3および/またはx+6-z-tが7~20となるようにQは三価カチオンである)
のような組成物を有してもよい。いくつかの場合では、式(XI)のような組成物はアルギロダイト型結晶構造を有してもよい。
【0070】
いくつかの実施形態では、前記イオン導電性化合物は式(I)のような組成物を有し、Qは四価カチオンであり、Mは二価カチオンであり、xは8~22であり、yは0.1~3であり、wは0~3であり、zは0.1~3であり、uは7~20であり、tは0~8である。いくつかのそのような実施形態では、前記イオン導電性化合物は式(XII):
Li2x-2y+2+w-ty-z2-wx+6-z-t (XII)
(式(XII)中、xは8~22であり、yは0.1~3であり、wは0~3であり、zは0.1~3であり、uは7~20であり、tは0~8であり、Xは存在しないかまたはハロゲン化物および疑似ハロゲン化物からなる群より選択され、Mは二価カチオンであり、2x-2y+2+w-tが8~22、y-zが0.1~3、2-wが0.1~3および/またはx+6-z-tが7~20となるようにQは四価カチオンである)
のような組成物を有してもよい。いくつかの場合では、式(XII)のような組成物はアルギロダイト型結晶構造を有してもよい。.
【0071】
特定の実施形態では、前記イオン導電性化合物は式(I)のような組成物を有し、Mは二価カチオンであり、Qは五価カチオンであり、xは8~22であり、yは0.1~3であり、wは0~3であり、zは0.1~3であり、uは7~20であり、tは0~8である。いくつかのそのような実施形態では、前記イオン導電性化合物は式(XIII):
Li2x-2y+2-ty-z2-wx+6-z-t (XIII)
(式(XIII)中、xは8~22であり、yは0.1~3であり、wは0~3であり、zは0.1~3であり、uは7~20であり、tは0~8であり、Xは存在しないかまたはハロゲン化物および疑似ハロゲン化物からなる群より選択され、Mは二価カチオンであり、2x-2y+2-tが8~22、y-zが0.1~3、2-wが0.1~3および/またはx+6-z-tが7~20となるようにQは五価カチオンである)
のような組成物を有してもよい。いくつかの場合では、式(XIII)のような組成物はアルギロダイト型結晶構造を有してもよい。
【0072】
いくつかの実施形態では、前記イオン導電性化合物は式(I)のような組成物を有し、Qは存在せず、Mは三価カチオンであり、xは8~22であり、yは0.1~3であり、wは0~3であり、zは0.1~3であり、uは7~20であり、tは0~8である。いくつかのそのような実施形態では、前記イオン導電性化合物は式(XIV):
Li2x-3y+2-ty-zx+6-1.5z-t (XIV)
(式(XIV)中、xは8~22であり、yは0.1~3であり、wは0~3であり、zは0.1~3であり、uは7~20であり、tは0~8であり、Xは存在しないかまたはハロゲン化物および疑似ハロゲン化物からなる群より選択され、2x-3y+2-tが8~22、y-zが0.1~3および/またはx+6-1.5z-tが7~20となるようにMは三価カチオンである)
のような組成物を有してもよい。いくつかの場合では、式(XIV)のような組成物はアルギロダイト型結晶構造を有してもよい。
【0073】
特定の実施形態では、前記イオン導電性化合物は式(I)のような組成物を有し、Mは三価カチオンであり、Qは一価カチオンであり、xは8~22であり、yは0.1~3であり、wは0~3であり、zは0.1~3であり、uは7~20であり、tは0~8である。いくつかのそのような実施形態では、前記イオン導電性化合物は式(XV):
Li2x-3y+2+4w-ty-z2-wx+6-1.5z-t (XV)
(式(XV)中、xは8~22であり、yは0.1~3であり、wは0~3であり、zは0.1~3であり、uは7~20であり、tは0~8であり、Xは存在しないかまたはハロゲン化物および疑似ハロゲン化物からなる群より選択され、Mは三価カチオンであり、2x-3y+2+4w-tが8~22、y-zが0.1~3、2-wが0.1~3および/またはx+6-1.5z-tが7~20となるようにQは一価カチオンである)
のような組成物を有してもよい。いくつかの場合では、式(XV)のような組成物はアルギロダイト型結晶構造を有してもよい。
【0074】
いくつかの実施形態では、前記イオン導電性化合物は式(I)のような組成物を有し、Qは二価カチオンであり、Mは三価カチオンであり、xは8~22であり、yは0.1~3であり、wは0~3であり、zは0.1~3であり、uは7~20であり、tは0~8である。いくつかのそのような実施形態では、前記イオン導電性化合物は式(XVI):
Li2x-3y+2+3w-ty-z2-wx+6-1.5z-t (XVI)
(式(XVI)中、xは8~22であり、yは0.1~3であり、wは0~3であり、zは0.1~3であり、uは7~20であり、tは0~8であり、Xは存在しないかまたはハロゲン化物および疑似ハロゲン化物からなる群より選択され、Mは三価カチオンであり、2x-3y+2+3w-tが8~22、y-zが0.1~3、2-wが0.1~3および/またはx+6-1.5z-tが7~20となるようにQは二価カチオンである)
のような組成物を有してもよい。いくつかの場合では、式(XVI)のような組成物はアルギロダイト型結晶構造を有してもよい。
【0075】
特定の実施形態では、前記イオン導電性化合物は式(I)のような組成物を有し、Mは三価カチオンであり、Qは三価カチオンであり、xは8~22であり、yは0.1~3であり、wは0~3であり、zは0.1~3であり、uは7~20であり、tは0~8である。いくつかのそのような実施形態では、前記イオン導電性化合物は式(XVII):
Li2x-3y+2+2w-ty-z2-wx+6-1.5z-t (XVII)
(式(XVII)中、xは8~22であり、yは0.1~3であり、wは0~3であり、zは0.1~3であり、uは7~20であり、tは0~8であり、Xは存在しないかまたはハロゲン化物および疑似ハロゲン化物からなる群より選択され、Mは三価カチオンであり、2x-3y+2+2w-tが8~22、y-zが0.1~3、2-wが0.1~3および/またはx+6-1.5z-tが7~20となるようにQは三価カチオンである)
のような組成物を有してもよい。いくつかの場合では、式(XVII)のような組成物はアルギロダイト型結晶構造を有してもよい。
【0076】
いくつかの実施形態では、前記イオン導電性化合物は式(I)のような組成物を有し、Qは四価カチオンであり、Mは三価カチオンであり、xは8~22であり、yは0.1~3であり、wは0~3であり、zは0.1~3であり、uは7~20であり、tは0~8である。いくつかのそのような実施形態では、前記イオン導電性化合物は式(XVIII):
Li2x-3y+2+w-ty-z2-wx+6-1.5z-t (XVIII)
(式(XVIII)中、xは8~22であり、yは0.1~3であり、wは0~3であり、zは0.1~3であり、uは7~20であり、tは0~8であり、Xは存在しないかまたはハロゲン化物および疑似ハロゲン化物からなる群より選択され、Mは三価カチオンであり、2x-3y+2+w-tが8~22、y-zが0.1~3、2-wが0.1~3および/またはx+6-1.5z-tが7~20となるようにQは四価カチオンである)
のような組成物を有してもよい。いくつかの場合では、式(XVIII)のような組成物はアルギロダイト型結晶構造を有してもよい。
【0077】
特定の実施形態では、前記イオン導電性化合物は式(I)のような組成物を有し、Mは三価カチオンであり、Qは五価カチオンであり、xは8~22であり、yは0.1~3であり、wは0~3であり、zは0.1~3であり、uは7~20であり、tは0~8である。いくつかのそのような実施形態では、前記イオン導電性化合物は式(XIX):
Li2x-3y+2-ty-z2-wx+6-1.5z-t (XIX)
(式(XIX)中、xは8~22であり、yは0.1~3であり、wは0~3であり、zは0.1~3であり、uは7~20であり、tは0~8であり、Xは存在しないかまたはハロゲン化物および疑似ハロゲン化物からなる群より選択され、Mは三価カチオンであり、2x-3y+2-tが8~22、y-zが0.1~3、2-wが0.1~3および/またはx+6-1.5z-tが7~20となるようにQは五価カチオンである)
のような組成物を有してもよい。いくつかの場合では、式(XIX)のような組成物はアルギロダイト型結晶構造を有してもよい。
【0078】
いくつかの実施形態では、前記イオン導電性化合物は式(I)のような組成物を有し、Qは存在せず、Mは四価カチオンであり、xは8~22であり、yは0.1~3であり、wは0~3であり、zは0.1~3であり、uは7~20であり、tは0~8である。いくつかのそのような実施形態では、前記イオン導電性化合物は式(XX):
Li2x-4y+2-ty-zx+6-2z-t (XX)
(式(XX)中、xは8~22であり、yは0.1~3であり、wは0~3であり、zは0.1~3であり、uは7~20であり、tは0~8であり、Xは存在しないかまたはハロゲン化物および疑似ハロゲン化物からなる群より選択され、2x-4y+2-tが8~22、y-zが0.1~3および/またはx+6-2z-tが7~20となるようにMは四価カチオンである)
のような組成物を有してもよい。いくつかの場合では、式(XX)のような組成物はアルギロダイト型結晶構造を有してもよい。
【0079】
特定の実施形態では、前記イオン導電性化合物は式(I)のような組成物を有し、Mは四価カチオンであり、Qは一価カチオンであり、xは8~22であり、yは0.1~3であり、wは0~3であり、zは0.1~3であり、uは7~20であり、tは0~8である。いくつかのそのような実施形態では、前記イオン導電性化合物は式(XXI):
Li2x-4y+2+4w-ty-z2-wx+6-2z-t (XXI)
(式(XXI)中、xは8~22であり、yは0.1~3であり、wは0~3であり、zは0.1~3であり、uは7~20であり、tは0~8であり、Xは存在しないかまたはハロゲン化物および疑似ハロゲン化物からなる群より選択され、Mは四価カチオンであり、2x-4y+2+4w-tが8~22、y-zが0.1~3、2-wが0.1~3および/またはx+6-2z-tが7~20となるようにQは一価カチオンである)
のような組成物を有してもよい。いくつかの場合では、式(XXI)のような組成物は、アルギロダイト型結晶構造を有してもよい。
【0080】
いくつかの実施形態では、前記イオン導電性化合物は式(I)のような組成物を有し、Qは二価カチオンであり、Mは四価カチオンであり、xは8~22であり、yは0.1~3であり、wは0~3であり、zは0.1~3であり、uは7~20であり、tは0~8である。いくつかのそのような実施形態では、前記イオン導電性化合物は式(XXII):
Li2x-4y+2+3w-ty-z2-wx+6-2z-t (XXII)
(式(XXII)中、xは8~22であり、yは0.1~3であり、wは0~3であり、zは0.1~3であり、uは7~20であり、tは0~8であり、Xは存在しないかまたはハロゲン化物および疑似ハロゲン化物からなる群より選択され、Mは四価 カチオンであり、2x-4y+2+3w-tが8~22、y-zが0.1~3、2-wが0.1~3および/またはx+6-2z-tが7~20となるようにQは二価カチオンである)
のような組成物を有してもよい。いくつかの場合では、式(XXII)のような組成物は、アルギロダイト型結晶構造を有してもよい。
【0081】
特定の実施形態では、前記イオン導電性化合物は式(I)のような組成物を有し、Mは四価カチオンであり、Qは三価カチオンであり、xは8~22であり、yは0.1~3であり、wは0~3であり、zは0.1~3であり、uは7~20であり、tは0~8である。いくつかのそのような実施形態では、前記イオン導電性化合物は式(XXIII):
Li2x-4y+2+2w-ty-z2-wx+6-2z-t (XXIII)
(式(XXIII)中、xは8~22であり、yは0.1~3であり、wは0~3であり、zは0.1~3であり、uは7~20であり、tは0~8であり、Xは存在しないかまたはハロゲン化物および疑似ハロゲン化物からなる群より選択され、Mは四価カチオンであり、2x-4y+2+2w-tが8~22、y-zが0.1~3、2-wが0.1~3および/またはx+6-2z-tが7~20となるようにQは三価カチオンである)
のような組成物を有してもよい。いくつかの場合では、式(XXIII)のような組成物は、アルギロダイト型結晶構造を有してもよい。
【0082】
いくつかの実施形態では、前記イオン導電性化合物は式(I)のような組成物を有し、Qは四価カチオンであり、Mは四価カチオンであり、xは8~22であり、yは0.1~3であり、wは0~3であり、zは0.1~3であり、uは7~20であり、tは0~8である。いくつかのそのような実施形態では、前記イオン導電性化合物は式(XXIV):
Li2x-4y+2+w-ty-z2-wx+6-2z-t (XXIV),
(式(XXIV)中、xは8~22であり、yは0.1~3であり、wは0~3であり、zは0.1~3であり、uは7~20であり、tは0~8であり、Xは存在しないかまたはハロゲン化物および疑似ハロゲン化物からなる群より選択され、Mは四価カチオンであり、2x-4y+2+w-tが8~22、y-zが0.1~3、2-wが0.1~3および/またはx+6-2z-tが7~20となるようにQは四価カチオンである)
のような組成物を有してもよい。いくつかの場合では、式(XXIV)のような組成物は、アルギロダイト型結晶構造を有してもよい。
【0083】
特定の実施形態では、前記イオン導電性化合物は式(I)のような組成物を有し、Mは四価カチオンであり、Qは五価カチオンであり、xは8~22であり、yは0.1~3であり、wは0~3であり、zは0.1~3であり、uは7~20であり、tは0~8である。いくつかのそのような実施形態では、前記イオン導電性化合物は式(XXV):
Li2x-4y+2-ty-z2-wx+6-2z-t (XXV)
(式(XXV)中、xは8~22であり、yは0.1~3であり、wは0~3であり、zは0.1~3であり、uは7~20であり、tは0~8であり、Xは存在しないかまたはハロゲン化物および疑似ハロゲン化物からなる群より選択され、Mは四価カチオンであり、2x-4y+2-tが8~22、y-zが0.1~3、2-wが0.1~3および/またはx+6-2z-tが7~20となるようにQは五価カチオンである)
のような組成物を有してもよい。いくつかの場合では、式(XXV)のような組成物は、アルギロダイト型結晶構造を有してもよい。
【0084】
例示的な実施形態では、QおよびXは存在せず、前記イオン導電性化合物はLi22MP18のような組成物(または組成;composition)を有し、Mは四価カチオンである。別の例示的な実施形態では、QおよびXは存在せず、前記イオン導電性化合物はLi18MP16のような組成物を有し、Mは四価カチオンである。別の例示的な実施形態では、QおよびXは存在せず、前記イオン導電性化合物はLi14MP14のような組成物を有し、Mは四価カチオンである。別の例示的な実施形態では、QおよびXは存在せず、前記イオン導電性化合物はLi12MP12のような組成物を有し、Mは四価カチオンである。さらに別の例示的な実施形態では、QおよびXは存在せず、前記イオン導電性化合物は有し、Li10MP12のような組成物を有し、Mは四価カチオンである。さらに別の例示的な実施形態では、前記イオン導電性化合物は有し、Li1413.5のような組成物を有し、Mは四価カチオンである。
【0085】
例示的な実施形態では、Qは存在せず、前記イオン導電性化合物はLi13MP13Clのような組成物を有する。別の例示的な実施形態では、Qは存在せず、前記イオン導電性化合物はLi12MP12Clのような組成物を有する。さらに別の例示的な実施形態では、Qは存在せず、前記イオン導電性化合物はLi11MP11Clのような組成物を有する。さらに別の例示的な実施形態では、Qは存在せず、前記イオン導電性化合物はLi11MP11Brのような組成物を有する。
【0086】
式(I)のような組成物を有する化合物の非限定的な例は、Li10FeP12、Li11FeP11Cl、Li12.5Fe0.7512、Li13.5Fe0.7512.25、Li13Fe0.512、Li13Fe0.7512.25、Li13FeP12.5、Li14.5Fe0.7513、Li14Fe0.512.5、Li14Fe0.7512.75、Li14FeP13、Li15Fe0.513、Li22FeP18、Li18FeP16、Li14FeP14、Li12FeP12、Li10FeP12、Li14FePS13.5、Li13FeP13Cl、Li12FeP12ClおよびLi13FeP13Brを含む。
【0087】
いくつかの実施形態では、イオン導電性化合物(例えば、式(I)のイオン導電性化合物)は、粒子の形態である。イオン導電性化合物を含んで成る複数の粒子は電気活性材料(例えば、リチウム)のイオンに対して導電性であってもよく、例えば、リチウムイオンに対して実質的に導電性であってもよい。いくつかの場合では、複数の粒子は、10-5S/cm以上の平均イオン伝導度(例えば、リチウムイオン伝導度)を有してもよい。特定の実施形態では、複数の粒子の平均イオン伝導度は、10-5S/cm以上、10-4S/cm以上、10-3S/cm以上、10-2S/cmまたは10-1S/cm以上である。いくつかの実施形態では、複数の粒子の平均イオン伝導度は、1S/cm以下、10-1S/cm以下、10-2S/cm以下、10-3S/cm以下または10-4S/cm以下である。上記参照範囲の組合せ(例えば、10-5S/cm以上10-1S/cm以下、10-4S/cm以上10-2S/cm以下のイオン伝導度)も可能である。他のイオン伝導度も可能である。
【0088】
いくつかの実施形態では、複数の粒子の平均イオン伝導度は、粒子を電気化学セルの層(例えば、保護層、固体電解質層、層間電極層)に組み込む前に決定(または測定;be determined)することができる。平均イオン伝導度は、4トン/cmまでの圧力で2つの銅シリンダーの間に粒子をプレスすることにより測定することができる。本明細書で使用される「トン」はメートル法のトンをいう。特定の実施形態では、平均イオン伝導度(すなわち、平均抵抗率の逆数)は、1kHzで動作する伝導度ブリッジ(すなわち、インピーダンス測定回路)を使用して、500kg/cm単位で測定することができる。いくつかのそのような実施形態では、平均イオン伝導度の変化がサンプルで観察されなくなるまで、圧力を増加させる。伝導度は、室温(例えば、摂氏25度)で測定することができる。
【0089】
いくつかの実施形態では、イオン導電性化合物を含んで成る複数の粒子(例えば、電気化学セルの層内、または層に組み込まれる前)の平均最大断面寸法は、例えば、100ミクロン以下、50ミクロン以下、25ミクロン以下、10ミクロン以下、5ミクロン以下、2ミクロン以下、1ミクロン以下、500nm以下、100nm以下または50nm以下であってもよい。いくつかの実施形態では、複数の粒子の平均最大断面寸法は、10nm以上、100nm以上、500nm以上、1ミクロン以上、2ミクロン以上、5ミクロン以上、10ミクロン以上、25ミクロン以上または50ミクロン以上である。上記参照範囲の組合せ(例えば、10ミクロンより大きく100ミクロンより小さい、1ミクロンより大きく25ミクロンより小さい、100nmより大きく2ミクロンより小さい、10nmより大きく500nmより小さい最大断面寸法)も可能である。
【0090】
複数の粒子の平均最大断面寸法は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて粒子を画像化することにより決定してもよい。画像は、複数の粒子の全体寸法に応じて、10×~100,000×の倍率で取得してもよい。当業者は、サンプルを画像化するために適切な倍率を選択することができよう。複数の粒子の平均最大断面寸法は、各粒子の最長断面寸法を取得し、最長断面寸法を平均化すること(例えば、10個の粒子の最長断面寸法を平均化すること)により決定することができる。
【0091】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のイオン導電性化合物を含んで成る粒子は、本明細書でより詳細に記載されているように前駆体の混合物を加熱することにより形成してもよい。特定の実施形態では、前駆体は、元素Li、S、P、M、Q(存在すれば)およびX(存在すれば)の混合物を含んで成り、MはNa、K、Fe、Mg、Ag、Cu、ZrおよびZnからなる群より選択され、Qは存在しないかまたはCr、B、Sn、Ge、Si、Zr、Ta、Nb、V、P、Fe、Ga、Al、Asおよびそれらの組合せからなる群より選択され、Xは存在しないかまたはハロゲン化物および疑似ハロゲン化物からなる群より選択される。
【0092】
いくつかの実施形態では、元素Li、S、P、M、存在すればQおよび存在すればXは、元素の形態、または化学結合形態(または化学的に結合した形態;chemically bound form)で存在する。例えば、Li、S、P、M、Qおよび/またはXは、上述のように、元素S、P、M、Qおよび/またはXの1または複数の原子と共に、Li、S、P、M、Qおよび/またはXを含んで成る化合物の形態のような化学結合形態で提供されてもよい(例えば、LiS、P、FeS、FeS、SiS、GeS、Ga、MgS、ZnS、ここで、M、Q、X、PおよびSは元素の形態で提供されてもよい)。いくつかの実施形態では、前駆体は、元素Li、S、PおよびMの混合物を含んで成る。特定の実施形態では、前駆体は、元素Li、S、PおよびFeの混合物を含んで成る。いくつかの場合では、前駆体は、元素Li、S、P、FeおよびQの混合物を含んで成ってもよい。いくつかの実施形態では、前駆体は、元素LiおよびXの混合物を含んで成ってもよい。
【0093】
いくつかの実施形態では、前駆体の混合物は、LiS、MS、P、QS、LiおよびSの少なくとも2つの混合物を含んで成り、b+cが1以上またはdが0~3となるようにaは0~8であり、bは0~2であり、cは0~8である。例えば、いくつかの実施形態では、aは0~3であり、bは2であり、cは0~5であり、dは0~2である。適切な前駆体の非限定的な例は、LiS、P、FeS、FeS、SiS、GeS、Ga、MgS、ZnS、SnS、Si、Ge、Sn、Fe、S、S、S、P、P、LiCl、LiBr、LiIおよびそれらの組合せを含む。
【0094】
いくつかの実施形態では、aは0以上、1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上または7以上である。特定の実施形態では、aは、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下または2以下である。上記参照範囲の組合せ(例えば、0以上8以下、1以上4以下、2以上6以下、4以上8以下)も可能である。いくつかの場合では、aは0であってもよい(すなわち、前駆体は元素Mである)。
【0095】
特定の実施形態では、bは0以上または1以上である。いくつかの場合では、bは2以下または1以下であってもよい。上記参照範囲の組合せ(例えば、0以上2以下)も可能である。いくつかの実施形態では、bは0である(すなわち、前駆体は元素の硫黄である)。特定の実施形態では、bは1である。いくつかの場合では、bは2であってもよい。
【0096】
いくつかの実施形態では、cは、0以上、1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上または7以上である。特定の実施形態では、cは、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下または2以下である。上記参照範囲の組合せ(例えば、0以上8以下、1以上4以下、2以上6以下、4以上8以下)も可能である。特定の実施形態では、cは0である(すなわち前駆体は元素のリンである)。いくつかの実施形態では、cは1である。
【0097】
いくつかの実施形態では、bおよびcは、b+cが1以上となるように選択される(例えば、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上または9以上)。いくつかの場合では、b+cは10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下または2以下である。上記参照範囲の組合せも可能である。
【0098】
特定の実施形態では、dは、0以上または1以上である。いくつかの場合では、dは、2以下または1以下であってもよい。上記参照範囲の組合せ(例えば、0以上2以下)も可能である。いくつかの実施形態では、dは0である(すなわち、前駆体は元素Qである)。特定の実施形態では、dは1である。いくつかの場合では、dは2であってもよい。
【0099】
特定の実施形態では、本明細書に記載の前駆体の混合物は、上述の式(I)のように元素Li、S、P、M、X(存在すれば)およびQ(存在すれば)の化学量論比を有する(例えば、Li)。いくつかの実施形態では、Li、S、P、M、X(存在すれば)およびQ(存在すれば)は、混合物から形成される複数の粒子が式(I)の化合物を含んで成るような化学量論比を有する。例えば、いくつかの場合では、元素Li、S、P、M、XおよびQの前記比がLi10FeP12、Li11FeP11Cl、Li12.5Fe0.7512、Li13.5Fe0.7512.25、Li13Fe0.512、Li13Fe0.7512.25、Li13FeP12.5、Li14.5Fe0.7513、Li14Fe0.512.5、Li14Fe0.7512.75、Li14FeP13、Li15Fe0.513、Li22FeP18、Li18FeP16、Li14FeP14、Li12FeP12、Li10FeP12、Li14FePS13.5、Li13FeP13Cl、Li12FeP12ClおよびLi13FeP13Brのような本明細書に記載のイオン導電性化合物の形成をもたらすように、前駆体の混合物は選択される。
【0100】
式(I)のような化合物を形成するための他の適切な比も可能である。例えば、特定の場合において、過剰なSは混合物において存在してもよい(例えば、本明細書に記載のイオン導電性化合物の式において含まれる硫黄を超える硫黄)。過剰な硫黄は、例えば、混合中に硫黄欠損(loss)を補うかもしれない。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の前駆体の混合物は、元素LiS、LiX、MS、P、QS、LiXおよびSの2つ以上の化学量論比を有し、a、b、cおよびdは上述した通りである。
【0101】
いくつかの実施形態では、前駆体の混合物は、LiS、MS(例えば、FeS)およびP;またはLiS、MS(例えば、FeS)およびP;またはLiS、M(例えば、Fe)、SおよびP;またはLiS、M(例えば、Fe)、SおよびP;またはLiS、MS(例えば、FeS)、LiX(例えば、LiCl、LiBr)およびP;またはLiS、MS(例えば、FeS)、LiX(例えば、LiCl、LiBr、LiI)およびPを含んで成るかまたはからなる。前駆体の他の混合物も可能である。
【0102】
例えば、いくつかの実施形態では、LiSは、前駆体の前記混合物の総重量に対して、20重量%以上、25重量%以上、27重量%以上、30重量%以上、35重量%以上、40重量%以上、45重量%以上、50重量%以上または55重量%以上の量で、(例えば、混合物を加熱する前の、または混合物の加熱中の)前駆体の混合物において存在する。特定の実施形態では、LiSは、前駆体の前記混合物の総重量に対して、60重量%以下、55重量%以下、50重量%以下、45重量%以下、40重量%以下、35重量%以下、30重量%以下、27重量%以下または25重量%以下の量で、(例えば、混合物の加熱前の、混合物の加熱中の)前駆体の混合物において存在する。上記参照範囲の組合せ(例えば、20重量%以上60重量%以下、27重量%以上60重量%以下)も可能である。他の範囲も可能である。
【0103】
特定の実施形態では、MS(例えば、FeS)は、前駆体の前記混合物の総重量に対して、5重量%以上、7重量%以上、10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上、25重量%以上、26重量%以上、29重量%以上の量で、(例えば、混合物を加熱する前の、混合物の加熱中の)前駆体の混合物において存在してもよい。いくつかの実施形態では、MSは、前記混合物の総重量に対して30重量%以下、29重量%以下、26重量%以下、25重量%以下、20重量%以下、15重量%以下、10重量%以下または7重量%以下の量で、(例えば、混合物を加熱する前の、混合物の加熱中の)前駆体の混合物において存在してもよい。上記参照範囲の組合せ(例えば、5重量%以上30重量%以下、7重量%以上26重量%以下)も可能である。他の範囲も可能である。
【0104】
いくつかの実施形態では、Pは、前記混合物の総重量に対して、10重量%以上、12重量%以上、14重量%以上、16重量%以上、18重量%以上、20重量%以上、25重量%以上、30重量%以上、35重量%以上、40重量%以上または45重量%以上の量で、(例えば、混合物を加熱する前の、混合物の加熱中の)前駆体の混合物において存在してもよい。いくつかの実施形態では、Pは、前記混合物の総重量に対して、50重量%以下、45重量%以下、40重量%以下、35重量%以下、30重量%以下、25重量%以下、20重量%以下、18重量%以下、16重量%以下、14重量%以下または12重量%以下の量で、(例えば、混合物を加熱する前の、混合物の加熱中の)前駆体の混合物において存在してもよい。上記参照範囲の組合せ(例えば、10重量%以上50重量%以下、16重量%以上40重量%以下)も可能である。他の範囲も可能である。
【0105】
特定の実施形態では、LiX(例えば、LiCl、LiBr、LiI)は、前記混合物の総重量に対して、0重量%以上、5重量%以上、10重量%以上、15重量%以上または20重量%以上の量で、(例えば、混合物を加熱する前の、混合物の加熱中の)前駆体の混合物において存在してもよい。いくつかの実施形態では、LiXは、前記混合物の総重量に対して、25重量%以下、20重量%以下、15重量%以下、10重量%以下または5重量%以下の量で、(例えば、混合物を加熱する前の、混合物の加熱中の)前駆体の混合物において存在してもよい。上記参照範囲の組合せ(例えば、0重量%以上25重量%以下、0重量%以上20重量%以下)も可能である。他の範囲も可能である。
【0106】
いくつかの実施形態では、硫黄(例えば、LiS、MSまたはPのような他の成分との前駆体の混合物において存在しないSおよび/またはSのような過剰な硫黄)は、前記混合物の総重量に対して、0重量%以上、2重量%以上、5重量%以上、7重量%以上、10重量%以上または12重量%以上の量で、(例えば、混合物を加熱する前の、混合物の加熱中の)前駆体の混合物において存在してもよい。特定の実施形態では、硫黄(例えば、過剰な硫黄)は、前記混合物の総重量に対して、15重量%以下、12重量%以下、10重量%以下、7重量%以下、5重量%以下または2重量%以下の量で、(例えば、混合物を加熱する前の、混合物の加熱中の)前駆体の混合物において存在してもよい。。上記参照範囲の組合せ(例えば、0重量%以上15重量%以上、0重量%以上10重量%以下)も可能である。他の範囲も可能である。
【0107】
いくつかの場合では、LiSおよびMS(例えば、FeS)は、特定の比率で前駆体の混合物において存在してもよい。いくつかの実施形態では、MSに対するLiSの比率は、(例えば、混合物を加熱する前の、混合物の加熱中の)前駆体の混合物において、12:1以下、10:1以下、8:1以下、6:1以下、4:1以下、2:1以下、1:1以下または0.8:1以下である。特定の実施形態では、MSに対するLiSの比率は、(例えば、混合物を加熱する前の、混合物の加熱中の)前駆体の混合物において、0.6:1以上、0.8:1以上、1:1以上、2:1以上、4:1より大きく、6:1以上、8:1以上または10:1以上である。上記参照範囲の組合せ(例えば、0.6:1以上12:1以下)も可能である。他の範囲も可能である。例示的な一組の実施形態では、(例えば、混合物を加熱する前の、混合物の加熱中の)前駆体の混合物は、(前記混合物の総重量に対して)20重量%以上60重量%以下のLiS、5重量%以上30重量%以下のMS(例えば、FeS)、10重量%以上50重量%以下のP、0重量%以上25重量%以下のLiX(例えば、LiCl、LiBr、LiI)、および0重量%以上15重量%以下の過剰な硫黄を含んで成る。別の実施形態では、(例えば、混合物を加熱する前の、混合物の加熱中の)前駆体の混合物は、(前記混合物の総重量に対して)27重量%以上60重量%以下のLiS、7重量%以上26重量%以下のMS(例えば、FeS)、16重量%以上40重量%以下のP、0重量%以上20重量%以下のLiX(例えば、LiCl、LiBr、LiI)、および0重量%以上10重量%以下の過剰な硫黄を含んで成る。いくつかの実施形態では、過剰な硫黄は、前駆体の混合物において存在しない。
【0108】
当業者は、本明細書の教示に基づいて、各成分(例えば、LiS、MS、P、LiX、Sおよび/または他の成分)の量を選択して、特定の本明細書の記載の化合物の文脈において上述した特定の化学量論を生成してもよいことを理解するであろう。
【0109】
(例えば、元素Li、S、P、M、Q(存在すれば)およびX(存在すれば)の混合物を含んで成る)前駆体の混合物は、本明細書に記載の化合物を形成するための適切な温度に加熱され得る。特定の実施形態では、前駆体の混合物を、500℃以上、550℃以上、600℃以上、650℃以上、700℃以上、750℃以上、800℃以上、850℃以上、900℃以上、950℃以上、1000℃以上、1050℃以上、1100℃以上または1150℃の温度に加熱する。いくつかの実施形態では、前駆体の混合物を、1200℃以下、1150℃以下、1100℃以下、1050℃以下、1000℃以下、950℃以下、900℃以下、850℃以下、800℃以下、750℃以下、700℃以下、650℃以下、600℃以下または550℃以下の温度に加熱する。上記参照範囲の組合せ(例えば、500℃以上1200℃以下、400℃以上900℃以下、500℃以上800℃以下、500℃以上700℃以下、600℃以上800℃以下)も可能である。他の範囲も可能である。
【0110】
前駆体の混合物を、任意の適切な時間加熱し得る。いくつかの場合では、前駆体の混合物を、3時間以上、5時間以上、8時間以上、12時間以上、16時間以上または20時間以上加熱し得る。特定の実施形態では、前駆体の混合物を、24時間以下、48時間以下、36時間以下、24時間以下、20時間以下、16時間以下、12時間以下、8時間以下または5時間以下加熱し得る。上記参照範囲の組合せ(例えば、3時間以上24時間以下、5時間以上12時間以下、8時間以上20時間以下、12時間以上24時間以下)も可能である。他の範囲も可能である。
【0111】
前駆体の混合物を、任意の適切な圧力で加熱し得る。いくつかの実施形態では、前駆体の混合物を、比較的低圧で加熱する。例えば、特定の実施形態では、前駆体の混合物を、0.1MPa~0.3MPaの圧力または他の適切な圧力で加熱する。
【0112】
特定の実施形態では、前駆体の混合物を加熱した後、混合物を冷却する。例えば、前駆体の混合物を500℃~1200℃の温度(例えば、500℃~900℃)で3時間~24時間加熱してもよく、混合物を室温のような500℃未満の温度に冷却してもよい。その後、混合物を、所望のサイズの複数の粒子に粉砕してもよい。当業者は、例えば、ボール・ミリングまたはブレンダー・クラッシングを含む、材料を粒子に粉砕するための適切な方法を選択することができよう。いくつかの実施形態では、前駆体の混合物を、加熱前および/または加熱中に、ボール・ミルで粉砕してもよい。いくつかの場合では、複数の粒子の粉砕を比較的低圧で行う。例えば、複数の粒子の粉砕を、約1GPa以下、約500MPa以下、約100MPa以下、約50MP以下、約10MPa以下、約5MPa以下、約1MPa以下または約0.5MPa以下の圧力で行ってもよい。特定の実施形態では、複数の粒子の粉砕を少なくとも約0.1MPa、少なくとも約0.5MPa、少なくとも約1MPa、少なくとも約5MPa、少なくとも約10MPa、少なくとも約50MPa、少なくとも約100MPa、または少なくとも約500MPaの圧力で行ってもよい。上記参照範囲の組合せ(例えば、少なくとも約0.1MPaでかつ約1GPa以下)も可能である。他の範囲も可能である。
【0113】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物(例えば、式(I)~(XXV)の任意の1の化合物)を層として置く。特定の実施形態では、式(I)の化合物を含んで成る複数の粒子を層として(例えば、電気化学セルに)置く。当業者によって理解されるように、式(I)~(XXV)の任意の1つの化合物とは、式(I)の化合物、式(IIA)の化合物、式(II)の化合物、式(III)の化合物、式(IV)の化合物、式(V)の化合物、式(VI)の化合物、式(VII)の化合物、式(VIII)の化合物、式(IX)の化合物、式(X)の化合物、式(XI)の化合物、式(XII)の化合物、式(XIII)の化合物、式(XIV)の化合物、式(XV)の化合物、式(XVI)の化合物、式(XVII)の化合物、式(XVIII)の化合物、式(XIX)の化合物、式(XX)の化合物、式(XXI)の化合物、式(XXII)の化合物、式(XXIII)の化合物、式(XXIV)の化合物または式(XXV)の化合物をいう。
【0114】
本明細書に記載の化合物(例えば、式(I)~(XXV)の化合物)を含んで成る層を、スパッタリング(例えば、マグネトロン・スパッタリング)、イオンビーム蒸着、分子線エピタキシー、電子線蒸着、真空熱蒸着、エアロゾル蒸着、ゾルゲル、レーザー・アブレーション、化学気相蒸着(CVD)、熱蒸発、プラズマ支援化学真空蒸着(PECVD)、レーザー支援化学蒸着、ジェット蒸着などのような任意の適切な方法により、表面(例えば、別の層)に、堆積し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物を含んで成る層をコールド・プレス(または冷間プレス;cold pressing)により作製する。使用される技術は、層の所望の厚さ、堆積される材料などに依存する場合がある。いくつかの場合では、式(I)の化合物(または式(IIA)~(XXV)の1もしくは複数の化合物)を粉末形態で堆積してもよい。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物を含んで成る粒子を表面に堆積し、焼結してもよい。
【0115】
例示的な実施形態では、本明細書に記載の化合物(例えば、式(I)~(XXV)の化合物)を、エアロゾル蒸着を使用して(例えば、層に)堆積し得る。
【0116】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物を含んで成る層を電極/電気活性材料(例えば、アノード、カソード)上に配置する。特定の実施形態では、式(I)の化合物を含んで成る層を、セパレータ、保護層、電解質層または電気化学セルの別の層上に配置する。
【0117】
特定の実施形態では、本明細書に記載されているように、式(I)の化合物(または式(IIA)~(XXV)の1もしくは複数の化合物))を含んで成る層は、実質的に結晶質である。特定の実施形態では、本明細書に記載されているように、式(I)の化合物(または式(IIA)~(XXV)の1もしくは複数の化合物)を含んで成る層、または式(I)の化合物(または式(IIA)~(XXV)の1もしくは複数の化合物)を含んで成る複数の粒子は、1重量%~100重量%の結晶質である。すなわち、いくつかの実施形態では、層(または粒子)に含まれる式(I)の化合物の結晶画分(または結晶フラクション;crystalline fraction)は、層(または粒子)に含まれる式(I)の化合物の総重量に基づいて、1%~100%の範囲内にある。特定の実施形態では、式(I)の化合物(または式(IIA)~(XXV)の1もしくは複数の化合物)を含んで成る層、または本明細書に記載の式(I)の化合物(または式(IIA)~(XXV)の1もしくは複数の化合物)を含んで成る複数の粒子は、1重量%以上、2重量%以上、5重量%以上、10重量%以上、20重量%以上、25重量%以上、50重量%以上、75重量%以上、90重量%以上、95重量%以上、98重量%以上、99重量%以上または99.9重量%以上の結晶質である。特定の実施形態では、本明細書に記載の式(I)の化合物を含んで成る層、または式(I)の化合物を含んで成る複数の粒子は、99.9重量%以下、98重量%以下、95重量%以下、90重量%以下、75重量%以下、50重量%以下、25重量%以下、20重量%以下、10重量%以下、5重量%以下、2重量%以下の結晶質である。
【0118】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物(または式(IIA)~(XXV)の1もしくは複数の化合物)を含んで成る層、または本明細書に記載の式(I)の化合物(または式(IIA)~(XXV)の1もしくは複数の化合物)を含んで成る複数の粒子は、99.2重量%以上、99.5重量%以上、99.8重量%以上または99.9重量%以上の結晶質である。いくつかの場合では、式(I)の化合物(または式(IIA)~(XXV)の1もしくは複数の化合物)を含んで成る層、または本明細書に記載の式(I)の化合物(または式(IIA)~(XXV)の1もしくは複数の化合物)を含んで成る複数の粒子は、100%の結晶質であってもよい。上記参照範囲の組合せも可能である(例えば、1重量%以上100重量%以下、50重量%以上100重量%以下)。
【0119】
いくつかの実施形態では、式(I)のイオン導電性化合物(または式(IIA)~(XXV)の1もしくは複数の化合物)は、全層重量に対して、少なくとも約1重量%、少なくとも約2重量%、少なくとも約5重量%、少なくとも約10重量%、少なくとも約20重量%、約30重量%、少なくとも約40重量%、少なくとも約50重量%、少なくとも約60重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約80重量%、少なくとも約85重量%、少なくとも約90重量%、少なくとも約95重量%、または少なくとも約98重量%の量で層(例えば、セパレータ、保護層)内に存在してもよい。特定の実施形態では、式(I)のイオン導電性化合物(または式(IIA)~(XXV)の1もしくは複数の化合物)は、全層重量に対して、約100重量%以下、約99重量%以下、約98重量%以下、約95重量%以下、約90重量%以下、約85重量%以下、約80重量%以下、約70重量%以下、約60重量%以下、約50重量%以下、約40重量%以下、約30重量%以下、約20重量%以下、約10重量%以下、約5重量%以下または約2重量%以下の量で層内に存在してもよい。上記参照範囲の組合せ(例えば、少なくとも約1重量%かつ約100重量%以下)も可能である。他の範囲も可能である。
【0120】
いくつかの場合では、層は、以下でより詳細に記載するように、式(I)のイオン導電性化合物(または式(IIA)~(XXV)の1もしくは複数の化合物)および1または複数の付加的な材料(例えば、ポリマー、金属、セラミック、イオン導電性材料)を含んで成ってもよい。
【0121】
いくつかの実施形態では、電気化学セルの1または複数の層は、式(I)のイオン導電性化合物(または式(IIA)~(XXV)の1もしくは複数の化合物)を含んで成ってもよい。いくつかの場合では、1または複数の層における化合物は、複数の粒子の形態である。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物(または式(IIA)~(XXV)の1もしくは複数の化合物)を含んで成る層は、電極(例えば、電極の電気活性材料)と直接接触している。
【0122】
特定の実施形態では、式(I)の化合物(または式(IIA)~(XXV)の1もしくは複数の化合物)を含んで成る層は、イオン(例えば、リチウムイオンのような電気化学的に活性なイオン)に層を通過させ得るが、電子が層を通過するのを実質的に妨げる場合がある。この文脈において、層は、「実質的に妨げる」により、本実施形態では、層は電子通過の10倍以上のリチウムイオン流束を可能にすることを意味する。有利には、本明細書に記載の粒子および層(例えば、式(I)の化合物を含んで成る粒子および層)は、特定のアニオン(例えば、ポリスルフィドアニオン)を伝導せずに、特定のカチオン(例えば、リチウムカチオン)を伝導してもよく、ならびに/または電解質および/もしくは電極用の電解質中の成分(例えば、ポリスルフィド種)に対するバリアとして作用してもよい。
【0123】
いくつかの実施形態では、式(I)のイオン導電性化合物(または式(IIA)~(XXV)の1もしくは複数の化合物)を含んで成る層(例えば、セパレータ、保護層、固体電解質層)は、イオン伝導性である。いくつかの実施形態では、式(I)のイオン導電性化合物(または式(IIA)~(XXV)の1もしくは複数の化合物)を含んで成る層の平均イオン伝導度は、10-5S/cm以上、10-4S/cm以上、10-3S/cm以上、10-2S/cm以上、10-1S/cm以上である。特定の実施形態では、式(I)のイオン導電性化合物(または式(IIA)~(XXV)の1もしくは複数の化合物)を含んで成る層の平均イオン伝導度は、1S/cm以下、10-1S/cm以下、10-2S/cm以下、10-3S/cm以下または10-4S/cm以下であってもよい。上記参照範囲の組合せ(例えば、10-5S/cm以上10-1S/cm以下のイオン伝導度)も可能である。他のイオン伝導度も可能である。
【0124】
いくつかの実施形態では、式(I)のイオン導電性化合物(または式(IIA)~(XXV)の1もしくは複数の化合物)を含んで成る層の平均イオン伝導度は、3トン/cmまでの圧力で2つの銅シリンダーの間の層をプレスすることで決定することができる。特定の実施形態では、平均イオン伝導度(すなわち、平均抵抗率の逆数)は、1kHzで動作する伝導度ブリッジ(すなわち、インピーダンス測定回路)を使用して500kg/cm単位(または増分;increments)で測定することができる。いくつかのそのような実施形態では、平均イオン伝導度における変化がサンプルで観察されなくなるまで、圧力を増加させる。伝導度は室温(例えば、摂氏25度)で測定し得る。
【0125】
本明細書に記載されているように、本明細書に記載の化合物を含む層が特定の電気化学システム用の他の材料で形成された層と比較して、有利な特性を有するかどうかを決定することが望ましい場合がある。候補物質間の選択を助けるために、簡単なスクリーニング試験が用いることができる。1の簡単なスクリーニング試験には、1の電気化学セルに、例えば、セル内の保護層として、層(例えば、式(I)の化合物を含んで成る層)を配置することが含まれる。その後、電気化学セルは複数の充電/放電サイクルを経てもよく、阻害性(inhibitory)または他の破壊的挙動が制御システムに比べて起こるかどうかについて電気化学セルを観察してもよい。セルのサイクル中に阻害性または他の破壊的挙動が制御システムに比べて観察される場合、それは、組み立てられた電気化学セル内の問題の層の劣化または他の不具合を示す可能性がある。本明細書に記載され、当業者に知られている方法を使用して層の電気伝導性および/またはイオン伝導度を評価することも可能である。測定された値は、比較して、候補物質間で選択するために比較されてもよく、対照(例えば、本明細書に記載された化合物を含まない物質)中のベースライン物質との比較に使用されてもよい。
【0126】
いくつかの実施形態では、電気化学セル内で使用される特定の電解質または溶媒の存在下で膨潤させるために、層(例えば、式(I)の化合物を含んで成る層)を試験することが望ましい場合がある。簡単なスクリーニング試験は、例えば、計量され、次いで任意の適切な時間(例えば、24時間)にわたり電気化学セルにおいて使用される溶媒または電解質に設置される層片(pieces of the layer)を含んでもよい。溶媒または電解質の添加の前後の層の重量(または体積)のパーセント差は、電解質または溶媒の存在下における層の膨潤量を決定し得る。
【0127】
別の簡単なスクリーニング試験は、ポリスルフィドに対する層(例えば、式(I)の化合物を含んで成る層)の安定性(すなわち、完全性)を決定することを含んでもよい。つまり、層は、任意の適切な時間(例えば、72時間)にわたりポリスルフィド溶液/混合物に暴露されてもよく、ポリスルフィド溶液への暴露後の層のパーセント重量欠損は、暴露前後の層の重量における差を計算することにより決定し得る。例えば、いくつかの実施形態では、ポリスルフィド溶液への暴露後の層のパーセント重量欠損は、15重量%以下、10重量%以下、5重量%以下、2重量%以下、1重量%以下または0.5重量%以下であってもよい。特定の実施形態では、ポリスルフィド溶液への暴露後の層のパーセント重量欠損は、0.1重量%以上、0.5重量%以上、1重量%以上、2重量%以上、5重量%以上、10重量%以上であってもよい。上記参照範囲の組合せ(例えば、0.1重量%以上5重量%以下)も可能である。
【0128】
さらに別の簡単なスクリーニング試験は、層(例えば、式(I)の化合物を含んで成る層)の金属リチウムへの安定性(すなわち、完全性)を決定することを含んでもよい。つまり、式(I)の化合物(または式(IIA)~(XXV)の1もしくは複数の化合物)を含んで成る層またはペレットは、電気化学セル内の2つのリチウム金属ホイル間に設置され、任意の適切な時間(例えば、72時間)にわたりインピーダンスの変化を測定することができる。一般に、より低いインピーダンスは、金属リチウムへの層のより高い安定性をもたらし得る。
【0129】
上記のスクリーニング試験も層(例えば、式(I)の化合物を含んで成る複数の粒子)の個々の成分の特性を決定するために適合され、使用され得る。
【0130】
ここで図を参照して、本開示の様々な実施形態が以下でより詳細に説明する。図で示される特定の層は互いに直接配置されるが、特定の実施形態において、他の中間層も図示された層間に存在する場合があることも理解されたい。したがって、本明細書で示されるように、ある層が別の層「に配置される(disposed on)」、「に堆積される(deposited on)」または「に(on)」と言及する場合、当該層は、当該別の層に直接配置され、堆積され、もしくは存在し得、または介在層が存在してもよい。対照的に、「別の層に直接配置され」、「別の層に接触して」、「別の層に直接堆積され」、または「別の層に直接存在する」層は、介在層が存在しないことを示す。
【0131】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載された1または複数のイオン導電性化合物を、セパレータ(例えば、図1Aにおけるセパレータ30)へ組み込んでもよい。通常、セパレータは、電気化学セルにおいてカソードとアノードとの間に置かれる。セパレータは、アノードとカソードとを互いに分離または絶縁し短絡を防止し、アノードとカソードとの間のイオンの輸送を可能にし得る。セパレータは多孔質であってもよく、細孔は、電解質によって部分的にまたは実質的に満たされてもよい。セパレータは、セルの製造中にアノードおよびカソードを交互に配置した多孔性の自立膜(free standing film)として供されてもよい。あるいは、セパレータ層は、電極の一方の表面に直接適用してもよい。
【0132】
図1Aは、電気化学セルに組み込むことのできる物品の例を示す。物品10は、電気活性材料と、電極に隣接するセパレータ30とを有する電極20(例えば、アノードまたはカソード)を有する。いくつかの実施形態では、セパレータ(例えば、セパレータ30)は、式(I)のイオン導電性化合物(または式(IIA)~(XXV)の1もしくは複数の化合物)および/または式(I)のイオン導電性化合物(または式(IIA)~(XXV)の1もしくは複数の化合物)を含んで成る複数の粒子を有して成る。しかしながら、他の材料を使用して、セパレータを形成することもできる。電極は、電気活性材料(例えば、アノード活性電極材料、カソード活性電極材料)を含んでもよく、以下により詳細に記載する。
【0133】
いくつかの実施形態では、電気化学セルは電解質を有して成る。いくつかの実施形態では、セパレータは、電解質と電極(例えば、アノード、カソード)との間に配置される。例えば、図1Bに示すように、物品11は、電気活性材料、電極に隣接する電解質40、および電解質に隣接するセパレータ30を有して成る電極20(例えば、アノードまたはカソード)を有する。電解質は、イオンの貯蔵および輸送について媒体として機能することができる。電解質は、本明細書に詳細に記載されているように、液体電解質、固体電解質、またはゲルポリマー電解質のような任意の適切な構成を有してもよい。
【0134】
いくつかの実施形態では、セパレータはポリマー材料(例えば、電解質に暴露されると膨潤するか、または膨潤しないポリマー材料)を有して成る。セパレータは、式(I)のイオン導電性化合物(または式(IIA)~(XXV)の1もしくは複数の化合物)(または前記化合物を含んで成る複数の粒子)を任意に有してもよい。特定の実施形態では、イオン導電性化合物は、セパレータ表面の少なくとも一部に直接配置される。特定の実施形態では、イオン導電性化合物は、セパレータへ組み込まれる。
【0135】
セパレータは、電気化学セルの短絡をもたらす可能性のある第1電極および第2電極の間の物理的な接触を阻害する(例えば、防止する)ように構成することができる
。セパレータは、実質的に非伝導性となるように構成され、電気化学セルの短絡を引き起こす度合い(degree)を阻害することができる。特定の実施形態では、セパレータの全てまたは一部は、10以上、10以上、1010以上、1015以上、または1020オームメートル以上のバルク電子抵抗率を有する材料で形成することができる。いくつかの実施形態では、バルク電子抵抗率は、1050オームメートル以下であってもよい。バルク電子抵抗率は、室温(例えば、摂氏25度)で測定してもよい。
【0136】
いくつかの実施形態では、セパレータは固体であり得る。セパレータは、電解質溶媒が通過できるように多孔質であってもよい。いくつかの場合では、セパレータは、セパレータの細孔を通過するかまたは細孔に存在する溶媒を除き、実質的に溶媒(ゲルのような溶媒)を実質的に含まない。他の実施形態では、セパレータはゲル形態であってもよい。
【0137】
いくつかの実施形態では、セパレータの空隙率(porosity)は、例えば、30体積%以上、40体積%以上、50%以上、60体積%以上、70体積%以上、80体積%以上または90体積%以上であり得る。特定の実施形態では、空隙率は、90体積%以下、80体積%以下、70体積%以下、60体積%以下、50体積%以下、40体積%以下、30体積%以下であり得る。他の空隙率も可能である。上記範囲の組合せも可能である。本明細書で使用する空隙率は、層の全体積で割った層における空隙の体積の割合をいい、水銀ポロシメトリーを用いて測定される。
【0138】
セパレータは、様々な材料で作製することができる。いくつかの実施形態では、セパレータは、式(I)のイオン導電性化合物(または式(IIA)~(XXV)の1もしくは複数の化合物)を有して成る。付加的なまたは代替的なセパレータは、ポリマー材料のような適切なセパレータ材料を有して成ってもよい。適切なポリマー材料の例は、これらに限定されないが、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリ(ブテン-1)、ポリ(n-ペンテン-2)、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン)、ポリアミン(例えば、ポリ(エチレンイミン)およびポリプロピレンイミン(PPI))、ポリアミド(例えば、ポリアミド(ナイロン)、ポリ(ε-カプロラクタム)(ナイロン6)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)(ナイロン66))、ポリイミド(例えば、ポリイミド、ポリニトリル、およびポリ(ピロメリットイミド-1,4-ジフェニルエーテル)(Kapton(登録商標))(NOMEX(登録商標))(KEVLAR(登録商標)));ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ビニルポリマー(例えば、ポリアクリルアミド、ポリ(2-ビニルピリジン)、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリ(メチルシアノアクリレート)、ポリ(エチルシアノアクリレート)、ポリ(ブチルシアノアクリレート)、ポリ(イソブチルシアノアクリレート)、ポリ(ビニルアセテート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルクロライド)、ポリ(フッ化ビニル)、ポリ(2-ビニルピリジン)、ビニルポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレン、およびポリ(イソヘキシルシアノアクリレート))、ポリアセタール;ポリエステル(例えば、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヒドロキシブチレート)、ポリエーテル(ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(プロピレンオキシド)(PPO)、ポリ(テトラメチレンオキシド)(PTMO))、ビニリデンポリマー(例えば、ポリイソブチレン、ポリ(メチルスチレン)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(フッ化ビニリデン));ポリアラミド(例えば、ポリ(イミノ-1,3-フェニレンイミノフタロイル)およびポリ(イミノ-1,4-フェニイミノテレフタロイル)); ポリヘテロ芳香族化合物(例えば、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリベンゾビスオキサゾール(PBO)およびポリベンゾビスチアゾール(PBT))、ポリ複素環化合物(例えば、ポリピロール);ポリウレタン;フェノール系ポリマー(例えば、フェノール-ホルムアルデヒド);ポリアルキン(例えば、ポリアセチレン);ポリジエン(例えば、1,2-ポリブタジエン、シスまたはトランス-1,4-ポリブタジエン);ポリシロキサン(例えば、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)、ポリ(ジエチルシロキサン)(PDES)、ポリジフェニルシロキサン(PDPS)、およびポリメチルフェニルシロキサン(PMPS))、および無機ポリマー(例えば、ポリホスファゼン、ポリホスホネート、ポリシラン、ポリシラザン)を有して成ってもよい。いくつかの実施形態では、ポリマーは、ポリ(n-ペンテン-2)ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミド(例えば、ポリアミド(ナイロン)、ポリ(ε-カプロラクタム)(ナイロン6)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)(ナイロン66)、ポリイミド(例えば、ポリニトリル、およびポリ(ピロメリトイミド-1,4-ジフェニルエーテル)(Kapton(登録商標))(NOMEX(登録商標))(KEVLAR(登録商標)))、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ならびにこれらの組合せから選択することができる。
【0139】
これらのポリマーの機械的および電子的特性(例えば、伝導度、抵抗率)は知られている。したがって、当業者は、それらの機械的および/または電子的特性(例えば、イオンおよび/もしくは電子導電率/抵抗率)に基づいて適切な材料を選択することができ、ならびに/または本明細書に記載との組合せで当該技術分野の知識に基づいてイオン伝導性(例えば、単一イオンに対する伝導性)をそのようなポリマーに調整することができる。例えば、上記および本明細書にリストされたポリマーは、所望により、イオン伝導性を向上させるために、塩、例えば、リチウム塩(例えば、LiSCN、LiBr、LiI、LiClO、LiAsF、LiSOCF、LiSOCH、LiBF、LiB(Ph)、LiPF、LiC(SOCF、およびLiN(SOCF)、および/または式(I)のイオン導電性化合物をさらに含んで成ってもよい。
【0140】
セパレータは多孔質であってもよい。いくつかの実施形態では、セパレータ孔径は、例えば、5ミクロン未満であってもよい。いくつかの実施形態では、孔径は、5ミクロン以下、3ミクロン以下、2ミクロン以下、1ミクロン以下、500nm以下、300nm以下、100nm以下または50nm以下であってもよい。いくつかの実施形態では、孔径は、50nm以上、100nm以上、300nm以上、500nm以上または1ミクロン以上であってもよい。他の値も可能である。上記範囲の組合せ(例えば、300nm未満および100nm以上の孔径)も可能である。特定の実施形態では、セパレータは、実質的に非多孔質であってもよい。
【0141】
セパレータは、任意の適切な厚さを有してもよい。いくつかの実施形態では、セパレータは、500nm以上、1ミクロン以上、5ミクロン以上、10ミクロン以上、15ミクロン以上、20ミクロン以上、25ミクロン以上、30ミクロン以上、40ミクロン以上、50ミクロン以上、60ミクロン以上、70ミクロン以上、80ミクロン以上、90ミクロン以上、100ミクロン以上、120ミクロン以上、140ミクロン以上、160ミクロン以上、または180ミクロン以上の厚さを有することができる。いくつかの実施形態では、セパレータの厚さは、200ミクロン以下、180ミクロン以下、160ミクロン以下、140ミクロン以下、120ミクロン以下、100ミクロン以下、90ミクロン以下、80ミクロン以下、70ミクロン以下、60ミクロン以下、50ミクロン以下、40ミクロン以下、30ミクロン以下、20ミクロン以下、10ミクロン以下、5ミクロン以下である。他の値も可能である。上記範囲の組合せ(例えば、500nm以上200ミクロン以下、1ミクロン以上50ミクロン以下)も可能である。
【0142】
本明細書に記載されるセパレータまたは他の層の平均厚さは、走査型電子顕微鏡(SEM)によって決定される。つまり、層は、形成後に(例えば、層を切断することによって)断面に沿って画像化することができ、SEMによって画像を取得することができる。平均厚さは、断面に沿ったいくつかの異なる位置(例えば、少なくとも10箇所)でのサンプルの厚さの平均をとることによって決定されてもよい。当業者は、サンプルを画像化するための適切な倍率を選択することができるであろう。
【0143】
特定の実施形態では、保護層は、式(I)のイオン導電性化合物(または式(IIA)~(XXV)の1もしくは複数の化合物)および/または式(I)のイオン導電性化合物(または式(IIA)~(XXV)の1もしくは複数の化合物)を含んで成る複数の粒子を含んで成ってもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のイオン導電性化合物を組み込んだ保護層は、電解質に対して実質的に不浸透性である。保護層は、電解質の存在下で膨潤しないように構成されてもよい。しかしながら、他の実施形態では、電解質の存在下で保護層の少なくとも一部を膨潤させることができる。保護層は、いくつかの場合、実質的に非多孔質であってもよい。保護層は、電極に直接隣接して、または介在層(例えば、別の保護層)を介して電極に隣接して位置付けられてもよい。図1Cを参照すると、いくつかの実施形態では、物品12は、電極20、電極活性表面20’の少なくとも一部に、またはその近傍に配置された保護層32、およびオプションとしての電解質40を有して成る。他の実施形態では、保護層32に隣接する第2保護層(図1Cには図示せず)が存在してもよい。いくつかの実施形態では、保護層32および第2保護層の少なくとも一方または両方が、式(I)のイオン導電性化合物を含んで成るイオン伝導層を有して成る。他の構成も可能である。
【0144】
いくつかの実施形態では、保護層は、式(I)のイオン導電性化合物(または式(IIA)~(XXV)の1もしくは複数の化合物)を含んで成るイオン伝導層であるが、保護層を形成するために、式(I)の前記化合物(または式(IIA)~(XXV)の1もしくは複数の化合物)に加えて、または代替的に他の材料を使用してもよい。さらに、1以上の保護層が存在し得る場合、各層は、本明細書に記載の1または複数の材料から独立して形成されてもよい。いくつかの実施形態では、保護層は、セラミックおよび/またはガラス(例えば、リチウムイオンに対して伝導性のイオン伝導性セラミック/ガラス)を含んで成る。適切なガラスおよび/またはセラミックには、当技術分野で知られているように、「改質剤(modifier)」部分および「ネットワーク(network)」部分を含むものとして特徴付けられるものが含まれるが、これらに限定されない。改質剤は、ガラスまたはセラミックにおいて伝導性の金属イオンの金属酸化物を含むことができる。ネットワーク部分は、金属カルコゲナイド、例えば、金属酸化物または硫化物を含むことができる。リチウム金属および他のリチウム含有電極については、リチウムイオンを通過させるためにイオン伝導層をリチウム化してもよく、またはイオン伝導層はリチウムを含有してもよい。イオン伝導層は、リチウム窒化物、リチウムシリケート、リチウムボレート、リチウムアルミネート、リチウムホスフェート、オキシ窒化リンリチウム、ケイソ硫化リチウム、ゲルマニウム硫化リチウム、酸化リチウム(例えば、LiO、LiO、LiO、LiRO、ここでRは希土類金属である)、リチウムランタンオキサイド、リチウムランタンジルコニウムオキサイド、リチウムチタンオキサイド、リチウムボロスルフィド、リチウムアルミノサルファイド、リチウムホスフェートおよびリチウムホスホスルフィド、ならびにそれらの組合せのような材料を含んで成る層を有して成ってもよい。材料の選択は、これに限定されないが、セル内で使用される電解質、アノード、およびカソードの特性を含む多数の因子に応じてなされるであろう。
【0145】
一組の実施形態では、保護層は非電気活性金属層である。非電気活性金属層は、特にリチウムアノードが使用される場合、金属アロイ層、例えばリチウム化金属層を有して成ってもよい。金属アロイ層のリチウム含有量は、例えば、金属の特定の選択、所望のリチウムイオン伝導性および金属アロイ層の所望の可撓性に応じて、0.5重量%~20重量%で変化させてもよい。イオン伝導性材における使用のために適した金属は、Al、Zn、Mg、Ag、Pb、Cd、Bi、Ga、In、Ge、Sb、AsおよびSnが挙げられるが、これらに限定されない。場合によっては、上に列挙したような金属の組合せをイオン伝導性材料に使用してもよい。
【0146】
保護層は、任意の適切な厚さを有してもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の保護層の厚さは、1nm以上、2nm以上、5nm以上、10nm以上、20nm以上、50nm以上、100nm以上、500nm以上、1ミクロン以上、2ミクロン以上、または5ミクロン以上であってもよい。特定の実施形態では、保護層の厚さは、10ミクロン以下、5ミクロン以下、2ミクロン以下、1ミクロン以下、500nm以下、100nm以下、50nm以下、20nm以下、10nm以下、5nm以下または2nm以下であってもよい。他の値も可能である。上記範囲の組合せ(例えば、1nm以上10ミクロン以下、500nm以上2ミクロン以下)も可能である。他の範囲も可能である。
【0147】
いくつかの実施形態では、保護層はポリマー層またはポリマー材料を含んで成る層である。いくつかの実施形態では、式(I)のイオン導電性化合物(または式(IIA)~(XXV)の1もしくは複数の化合物)は、ポリマー層に組み込まれる。電気化学セルにおいて使用するために適したポリマー層は、例えば、リチウムに対して高い伝導性があり、電子に対して最小の伝導性であってもよい。そのようなポリマーは、例えば、イオン伝導性ポリマー、スルホン化ポリマー、および炭化水素ポリマーを含んでもよい。ポリマーの選択は、セルに使用される電解質、アノードおよびカソードの特性を含む多くの因子に応じてなされるであろう。適切なイオン伝導性ポリマーは、リチウム電気化学セルのための固体ポリマー電解質およびゲルポリマー電解質、例えば、ポリエチレンオキシドに有用であることが知られているイオン伝導性ポリマーなどを含む。適切なスルホン化ポリマーは、例えば、スルホン化シロキサンポリマー、スルホン化ポリスチレン-エチレン-ブチレンポリマーおよびスルホン化ポリスチレンポリマーを含む。適切な炭化水素ポリマーは、例えば、エチレンプロピレンポリマー、およびポリスチレンポリマーなどを含む。
【0148】
ポリマー層はまた、アルキルアクリレート、グリコールアクリレート、ポリグリコールアクリレート、ポリグリコールビニルエーテルおよびポリグリコールジビニルエーテルのようなモノマーの重合から形成された架橋ポリマー材料を含むことができる。例えば、そのような架橋ポリマー材の1つは、ポリジビニルポリ(エチレングリコール)である。架橋ポリマー材は、イオン伝導性を高めるために、塩、例えばリチウム塩をさらに含んでもよい。一実施形態では、ポリマー層は架橋ポリマーを含んで成る。
【0149】
ポリマー層に使用するために適し得る他の種類のポリマーは、限定されないが、ポリアミン(例えば、ポリ(エチレンイミン)およびポリプロピレンイミン(PPI))、ポリアミド(例えば、ポリアミド(ナイロン)、ポリ(ε-カプロラクタム)(ナイロン6)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)(ナイロン66))、ポリイミド、(例えば、ポリイミド、ポリニトリルおよびポリ(ピロメリトイミド-1,4-ジフェニルエーテル)(Kapton))、ビニルポリマー(例えば、ポリアクリルアミド、ポリ(2-ビニルピリジン)、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリ(メチルシアノアクリレート)、ポリ(エチルシアノアクリレート)、ポリ(ブチルシアノアクリレート)、ポリ(イソブチルシアノアクリレート)、ポリ(ビニルアセテート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルクロライド)、ポリ(ビニルフルオライド)、ポリ(2-ビニルピリジン)、ビニルポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレンおよびポリ(イソヘキシルシアナアクリレート))、ポリアセタール、ポリオレフィン(例えば、ポリ(ブテン-1)、ポリ(n-ペンテン-2)、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン)、ポリエステル(例えば、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヒドロキシブチレート)、ポリエーテル、(ポリ(エチレンオキシド))(PEO)、ポリ(プロピレンオキシド)(PPO)、ポリ(テトラメチレンオキシド)(PTMO)、ビニリデンポリマー(例えば、ポリイソブチレン、ポリ(メチルスチレン)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(ビニリデンクロライド)およびポリ(ビニリデンフルオライド))、ポリアラミド(例えば、ポリ(イミノ-1,3-フェニレンイミノイソフタロイル)およびポリ(イミノ-1,4-フェニレンイミノテレフタロイル))、ポリへテロ芳香族化合物(例えば、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリベンゾビスオキサゾール(PBO)およびポリベンゾビスチアゾール(PBT))、ポリヘテロ環式化合物(例えば、ポリピロール)、ポリウレタン、フェノールポリマー(例えば、フェノール-ホルムアルデヒド)、ポリアルキレン(例えば、ポリアセチレン)、ポリジエン(例えば、1,2-ポリブタジエン、シスまたはトランス-1,4-ポリブタジエン)、ポリシロキサン(例えば、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)、ポリ(ジエチルシロキサン)(PDES)、ポリジフェニルシロキサン(PDPS)およびポリメチルフェニルシロキサン(PMPS)、ならびに無機ポリマー(例えば、ポリホスファゼン、ポリホスホネート、ポリシラン、ポリシラザン)を含む。これらのポリマーの機械的特性および電子的特性(例えば、伝導度、抵抗率)は公知である。したがって、当業者は、例えば、それらの機械的および/または電子的特性(例えば、イオン伝導度および/または電子伝導度)に基づいて、リチウム電池での使用に適したポリマーを選択することができ、および/または本明細書の記載と組合せ、当技術分野の知識に基づいて、イオン伝導性(例えば、単一イオンに対する伝導度)および/また電気伝導性になるようにそのようなポリマーを変更することができる。例えば、上記列挙されたポリマー材料は、イオン伝導性を向上させるために、塩、例えばリチウム塩(例えば、LiSCN、LiBr、LiI、LiC1O、LiAsF、LiSOCF、LiSOCH、LiBF、LiB(Ph)、LiPF、LiC(SOCF、LiN(SOCF)をさらに含んで成ってもよい。
【0150】
ポリマー材料は、例えば、ポリマーブレンドの成分のテーラリング(tailoring)、架橋度(もしあれば)の調整などによって、適切な物理的特性/機械的特性を有するように選択または配合することができる。
【0151】
いくつかの実施形態では、複合層は、本明細書に記載のポリマー材料およびイオン導電性化合物(例えば、式(I)のイオン導電性化合物)を含んで成る。このような複合層は、例えば、ポリマー材および式(I)のイオン導電性化合物(または式(IIA)~(XXV)の1もしくは複数の化合物)を基板に共噴霧(例えば、エアロゾル蒸着)すること、ポリマー材料および式(I)のイオン導電性化合物(または式(IIA)~(XXV)の1もしくは複数の化合物)を含んで成るスラリー、溶液または懸濁液から複合層をキャストすること、式(I)のイオン導電性化合物(または式(IIA)~(XXV)の1もしくは複数の化合物)を含んで成る粒子を、ポリマー材料を含んで成るポリマー層へと圧縮すること、および/または、式(I)のイオン導電性化合物を含んで成る層の細孔をポリマー材料で充填することを含む、任意の適切な方法によって形成されてもよい。複合層を形成するための他の方法も可能であり、当該技術分野において一般的に知られている。複合層は、保護層のような本明細書に記載の電気化学セルの任意の適切な構成要素に使用されてもよい。このような複合層を形成するためのこれらの方法および他の方法は、2016年5月20日に出願された「電極用保護層」という名称の米国特許公報第2016/0344067号に詳細に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0152】
本明細書で記載するように、特定の実施形態では、電気化学セルは電解質(例えば、図1B~1Cの電解質40)を含んで成る。電気化学または電池セルにおいて使用される電解質は、イオンの貯蔵および輸送のための媒体として機能することができ、固体電解質およびゲル電解質の特別な場合において、これらの材料は、アノードとカソードとの間のセパレータとしてさらに機能し得る。材料がカソードとカソードとの間のイオン(例えば、リチウムイオン)の輸送を促進する限り、イオンを貯蔵し輸送することができる任意の適切な液体、固体またはゲル材料を使用してもよい。電解質は、アノードとカソードとの間の短絡を防止するために電子的に非伝導性であってもよい。いくつかの実施形態では、電解質は非固体電解質を含んで成ってもよい。
【0153】
いくつかの実施形態では、電解質は、特定の厚さを有する層の形態である。電解質層の厚さは、例えば、50nm以上、100nm以上、200nm以上、500nm以上、1ミクロン以上、5ミクロン以上、10ミクロン以上、15ミクロン以上、20ミクロン以上、25マイクロメートル以上、30マイクロメートル以上、40マイクロメートル以上、50マイクロメートル以上、70マイクロメートル以上、100マイクロメートル以上、200ミクロン以上、500ミクロン以上または1mm以上であってもよい。いくつかの実施形態では、電解質層の厚さは、1mm以下、500ミクロン以下、200ミクロン以下、100ミクロン以下、70ミクロン以下、50ミクロン以下、40ミクロン以下、30ミクロン以下、20ミクロン以下、10ミクロン以下、50ミクロン以下、40ミクロン以下、30ミクロン以下、25ミクロン以下、20ミクロン以下、15ミクロン以下、10ミクロン以下、5ミクロン以下、1ミクロン以下、500nm以下、200nm以下または100nm以下である。他の値も可能である。上記範囲の組合せも可能である。
【0154】
いくつかの実施形態では、電解質は、非水性電解質を含む。適切な非水性電解質は、液体電解質、ゲルポリマー電解質および固体ポリマー電解質などの有機電解質を含んでもよい。これらの電解質は、本明細書に記載されているように、(例えば、イオン伝導性を供するかまたは高めるために)1または複数のイオン性電解質塩を、オプションとして含んでもよい。有用な非水性液体電解質溶媒の例には、例えば、N-メチルアセトアミド、アセトニトリル、アセタール、ケタール、エステル(例えば、炭酸のエステル)、カーボネート(例えば、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート)、スルホン、亜硫酸塩、スルホラン、スフロニミジン(suflonimidies)(例えば、ビス(トリフルオロメタン)スルホンイミドリチウム塩)、脂肪族エーテル、非環式エーテル、環状エーテル、グライム、ポリエーテル、ホスフェートエステル(例えば、ヘキサフルオロホスフェート)、シロキサン、ジオキソラン、N-アルキルピロリドン、ニトレート含有化合物、前記の置換体、およびそれらのブレンドなどの非水性有機溶媒が含まれるが、これらに限定されない。用いることができる非環式エーテルの例には、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、トリメトキシメタン、1,2-ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、1,2-ジメトキシプロパンおよび1,3-ジメトキシプロパンが含まれるが、これらに限定されない。用いることができる環状エーテルの例としては、テトラヒドロピラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソランおよびトリオキサンが含まれるが、これらに限定されない。用いることができるポリエーテルの例には、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(テトラグリム)、高グライム、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテルおよびブチレングリコールエーテルが含まれるが、これらに限定されない。用いることができるスルホンの例には、スルホラン、3-メチルスルホランおよび3-スルホレンが含まれるが、これらに限定されない。上記のフッ素化誘導体はまた、液体電解質溶媒として有用である。
【0155】
いくつかの場合では、本明細書に記載の溶媒の混合物も使用してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、溶媒の混合物は、1,3-ジオキソランおよびジメトキシエタン、1,3-ジオキソランおよびジエチレングリコールジメチルエーテル、1,3-ジオキソランおよびトリエチレングリコールジメチルエーテル、ならびに1,3-ジオキソランおよびスルホランからなる群より選択される。混合物中の2つの溶媒の重量比は、いくつかの場合では、5重量%:95重量%~95重量%:5重量%であってもよい。
【0156】
適切なゲルポリマー電解質の非限定的な例には、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリアクリロニトリル、ポリシロキサン、ポリイミド、ポリホスファゼン、ポリエーテル、スルホン化ポリイミド、過フッ素化メンブレン(NAFION樹脂)、ポリジビニルポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、上記の誘導体、上記のコポリマー、上記の架橋およびネットワーク構造、および上記のブレンドを含む。
【0157】
いくつかの実施形態では、非水性電解質は、少なくとも1のリチウム塩を含んで成る。例えば、いくつかの場合では、少なくとも1のリチウム塩は、LlNO、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiSiF、LiSbF、LiAlCl、リチウムビスオキサラトボレート、LiCFSO、LiN(SOF)、LiC(C2n+1SO(式中、nは1~20の整数である)、および、(C2n+1SOQLi(式中、nは1~20の整数であり、Qが酸素または硫黄から選択される場合、mは1であり、Xが窒素またはリンから選択される場合、mは2であり、Qが炭素またはケイ素から選択される場合、mは3である)からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、非水性(例えば、固体)電解質は、反ペブルスカイト材料(例えば、LiOBr、LiOCl)を含んで成る。
【0158】
いくつかの場合では、電解質は、式(I)のイオン導電性化合物を含んで成る固体電解質層である。いくつかの実施形態では、図1Dを参照して、物品13は、電極20(例えば、アノードまたはカソード)および電極20と直接的に接触する固体電解質42を有して成る。いくつかの実施形態では、図1Eを参照して、物品14は、それぞれ、第1電極表面20’および第2電極表面22’において、固体電解質42と直接的に接触する電極20(例えば、カソード)および電極22(例えば、アノード)を有して成る。固体電解質は、例えば、電気化学セル内の有機または非水性の液体電解質を置き換えてもよい。
【0159】
固体ポリマー電解質に適し得る他の材料の非限定的な例には、ポリエーテル、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリイミド、ポリホスファゼン、ポリアクリロニトリル、ポリシロキサン、上記の誘導体、上記のコポリマー、上記の架橋およびネットワーク構造、ならびに上記のブレンドを含む。
【0160】
固体電解質層(例えば、式(I)のイオン導電性化合物を含んで成る固体電解質層)は、任意の適切な厚さを有してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、固体電解質層の厚さは、50nm以上、100nm以上、200nm以上、500nm以上、1ミクロン以上、5ミクロン以上、10ミクロン以上、15ミクロン以上または20ミクロン以上である。いくつかの実施形態では、固体電解質層の厚さは、25ミクロン以下、20ミクロン以下、10ミクロン以下、5ミクロン以下、1ミクロン以下、500nm以下、200nm以下または100nm以下である。他の値も可能である。上記範囲の組合せ(例えば、50nm以上25ミクロン以下、5ミクロン以上25ミクロン以下)も可能である。
【0161】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の電極は、カソード(例えば、電気化学セルのカソード)であってもよい。いくつかの実施形態では、カソードのような電極は、式(I)の化合物(または式(IIA)~(XXV)の1もしくは複数の化合物)を含んで成る。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物(または式(IIA)~(XXV)の1もしくは複数の化合物)を含んで成る層は、本明細書に記載のようにカソードに配置される。特定の実施形態では、式(I)の化合物(または式(IIA)~(XXV)の1もしくは複数の化合物)は、カソードへと組み込まれる(例えば、カソードの形成前にカソード活性電極材料と混合することによって組み込まれる)。
【0162】
いくつかの実施形態では、カソードにおける電気活性材料は、式(I)の化合物(または式(IIA)~(XXV)の1もしくは複数の化合物)を含んで成る。すなわち、式(I)のイオン導電性化合物(または式(IIA)~(XXV)の1もしくは複数の化合物)は、カソードの活性電極種であってもよい。特定の実施形態では、式(I)の化合物(または式(IIA)~(XXV)の1もしくは複数の化合物)は、リチウムインターカレーション化合物(例えば、格子サイトおよび/または格子間サイトにリチウムイオンを可逆的にインサートすることができる化合物)である。いくつかの実施形態では、カソードは、式(I)のイオン導電性化合物(または式(IIA)~(XXV)の1もしくは複数の化合物)を含んで成るインターカレーション電極であってもよい。例示的な実施形態では、カソードは、Li10FeP12、Li11FeP11Cl、Li12.5Fe0.7512、Li13.5Fe0.7512.25、Li13Fe0.512、Li13Fe0.7512.25、Li13FeP12.5、Li14.5Fe0.7513、Li14Fe0.512.5、Li14Fe0.7512.75、Li14FeP13、Li15Fe0.513、Li22FeP18、Li18FeP16、Li14FeP14、Li12FeP12、Li10FeP12、Li14FePS13.5、Li13FeP13Cl、Li12FeP12Cl、およびLi13FeP13Brを含んで成る。上記の化合物に加えて、またはそれに代えて、他のイオン導電性化合物を組み込むことも可能である。上記の化合物に加えてまたは代えて、他のイオン導電性化合物の組み込みも可能である。
【0163】
電気活性材料(例えば、アルカリ金属イオン)のイオンをインターカレートすることができ、電極(例えば、カソード)に含まれ得る適切な材料のさらなる付加的で非限定的な例は、オキサイド、硫化チタン、および硫化鉄を含む。具体例としては、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiMn、LiFePO、LiCoPO、LiMnPOおよびLiNiPO、(式中、(0<x<1)である)、ならびにLiNiMnCo(式中、(x+y+z=1)である)を含む。
【0164】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物を含んで成るカソードにおける電気活性材料は、総カソード重量に対して、少なくとも約30重量%、少なくとも約40重量%、少なくとも約50重量%、少なくとも約60重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約80重量%、少なくとも約85重量%、少なくとも約90重量%、少なくとも約95重量%または少なくとも約98重量%の量でカソードにおいて存在する。特定の実施形態では、式(I)の化合物を含んで成るカソードにおける電気活性材は、総カソード重量に対して、約100重量%以下、約99重量%以下、約98重量%以下、約95重量%以下、約90重量%以下、約85重量%以下、約80重量%以下、約70重量%以下、約60重量%以下または約50重量%以下の量でカソードにおいて存在する。上記範囲の組合せ(例えば、少なくとも約40重量%および約95重量%以下)も可能である。他の範囲も可能である。
【0165】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の電気化学セルのカソードにおけるカソード活性材料として使用する活性電極材料は、電気活性遷移金属カルコゲナイド、電気活性伝導ポリマー、硫黄、炭素および/またはそれらの組合せを含んでもよいが、これらに限定されない。本明細書で使用される用語「カルコゲナイド」は、酸素、硫黄およびセレンの元素において1以上の元素を含む化合物に関する。適切な遷移金属カルコゲニドの例は、限定されないが、Mn、V、Cr、Ti、Fe、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Hf、Ta、W、Re、OsおよびIrからなる群より選択される遷移金属の電気活性酸化物、硫化物、およびセレン化物を含む。一実施形態では、遷移金属カルコゲナイドは、ニッケル、マンガン、コバルトおよびバナジウムの電気活性酸化物、ならびに鉄の電気活性硫化物からなる群より選択される。特定の実施形態では、カソードは、電気活性種元素として硫黄、硫化物、および/またはポリスルフィドを含んでもよい。
【0166】
一実施形態では、カソードは、二酸化マンガン、ヨウ素、クロム酸銀、酸化銀および五酸化バナジウム、酸化銅、オキシホスフェート銅、硫化鉛、硫化銅、硫化鉄、鉛ビスマス、三酸化ビスマス、二酸化コバルト、塩化銅、二酸化マンガンならびに炭素からなる群より選択された1以上の材料を含む。別の実施形態では、カソード活性層は、電気活性伝導性ポリマーを含んで成る。適切な電気活性伝導性ポリマーの例としては、ポリピロール、ポリアニリン、ポリフェニレン、ポリチオフェンおよびポリアセチレンからなる群より選択される電気活性および電子伝導性のポリマーが含まれるが、これらに限定されない。伝導性ポリマーの例には、ポリピロール、ポリアニリンおよびポリアセチレンが含まれる。
【0167】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の電気化学セルにおけるカソード活性材料として使用するための活性電極材料は、電気活性硫黄含有材料(例えば、リチウム硫黄電気化学セル)を含む。本明細書で使用する「電気活性硫黄含有材料(electroactive sulfur-containing materials)」は、電気活性が硫黄原子または部分(moieties)の酸化または還元を含む、任意の形態の硫黄元素を含んで成るカソード活性材料に関する。本発明の実施に有用な電気活性硫黄含有材料の性質は、当該技術分野で知られているように広く変化し得る。例えば、一実施形態では、電気活性硫黄含有材は硫黄元素を含んで成る。別の実施形態では、電気活性硫黄含有材料は、元素硫黄(または元素状硫黄;elemental sulfur)と硫黄含有ポリマーとの混合物を含んで成る。したがって、適切な電気活性硫黄含有材料には、元素硫黄と、硫黄原子および炭素原子を含んで成る有機材料とを含んでもよく、ポリマーであってもなくてもよいが、これらに限定されない。適切な有機材料には、ヘテロ原子、伝導性ポリマーセグメント、複合材料、および伝導性ポリマーをさらに含んで成るものが含まれる。
【0168】
特定の実施形態では、硫黄含有材料(例えば、酸化形態)は、共有結合性のS部分、イオン性のS部分、およびイオン性のS 2-部分(mは、3以上の整数である)からなる群より選択されるポリスルフィド部分Sを含んで成る。いくつかの実施形態では、硫黄含有ポリマーのポリスルフィド部分Sのmは、6以上の整数または8以上の整数である。いくつかの場合では、硫黄含有材料は硫黄含有ポリマーであってもよい。いくつかの実施形態では、硫黄含有ポリマーはポリマー骨格鎖を有し、ポリスルフィド部分Sは、その末端の硫黄原子の一方または両方が側鎖としてポリマー骨格鎖に共有結合している。特定の実施形態では、硫黄含有ポリマーはポリマー骨格鎖を有し、ポリスルフィド部分Sはポリスルフィド部分の末端硫黄原子の共有結合によってポリマー骨格鎖に組み込まれる。
【0169】
いくつかの実施形態では、電気活性硫黄含有材料は、50重量%を超える硫黄を含んで成る。特定の実施形態では、電気活性硫黄含有材料は、75重量%を超える硫黄(例えば、90重量%を超える硫黄)を含んで成る。
【0170】
当業者に知られているように、本明細書に記載された電気活性硫黄含有材料の性質は、広範囲に変え得る。いくつかの実施形態では、電気活性硫黄含有材料は元素硫黄を含んで成る。特定の実施形態では、電気活性硫黄含有材料は、元素硫黄と硫黄含有ポリマーとの混合物を含んで成る。
【0171】
特定の実施形態では、本明細書に記載の電気化学セルは、カソード活性材料として硫黄を含んで成る1または複数のカソードを含む。いくらかのそのような実施形態では、カソードは、カソード活性材料として元素硫黄を含む。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、式(I)の化合物がアノード活性材料と異なり、カソード活性材料とは異なるように選択される。
【0172】
本明細書に記載されるように、電気化学セルまたは電気化学セルにおいて使用される物品は、アノード活性材料を含んで成る電極(例えば、アノード)を含んでもよい。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物を含んで成る層は、アノードに配置される。特定の実施形態では、式(I)の化合物は、(例えば、アノードの形成前に活性電極材料と混合することによって)電極に組み込まれる。
【0173】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、総アノード重量に対して、少なくとも約40重量%、少なくとも約50重量%、少なくとも約60重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約80重量%または少なくとも約85重量%の量でアノードにおいて(例えば、アノード上のまたはアノードに組み込まれた層として)存在する。特定の実施形態では、式(I)の化合物は、総アノード重量に対して、約90重量%以下、約85重量%以下、約80重量%以下、約70重量%以下、約60重量%以下、または約50重量%以下の量でアノードにおいて存在する。上記範囲の組合せ(例えば、少なくとも約40重量%および約90重量%以下)も可能である。他の範囲も可能である。いくつかの実施形態では、総アノード重量は、アノード活性層それ自体または任意の保護層を有して成るアノード活性材料として測定されてもよい。
【0174】
本明細書に記載の電気化学セルにおけるアノード活性材料として使用するために適した活性電極材料には、限定されないが、伝導性基材に配置されたリチウムホイルおよびリチウムのようなリチウム金属、リチウムアロイ(例えば、リチウム-アルミニウム・アロイおよびリチウム-スズ・アロイ)、およびグラファイトが含まれる。本明細書に記載のセラミック材料またはイオン伝導材料のような保護材料によって任意に分離された、1のフィルムまたはいくつかのフィルムとしてリチウムを含有させることができる。適切なセラミック材料としては、リチウムホスフェート、リチウムアルミネート、リチウムシリケート、リチウムリン酸窒化物、リチウムタンタル酸化物、リチウムアルミノサルファイド、リチウムチタン酸化物、リチウムシリコスルフィド、リチウムゲルマニウムサルファイド、リチウムアルミノサルファイド、リチウムボロスルフィド、およびリチウムホスホスルフィド、ならびに上記の2以上の組合せなどのガラス質材料を含有するシリカ、アルミナまたはリチウムを含む。本明細書に記載の実施形態で使用するために適したリチウムアロイは、リチウムおよびアルミニウム、マグネシウム、シリシウム(ケイ素)、インジウムならびに/またはスズのアロイを含むことができる。いくつかの実施形態では、これらの材料が好ましい場合があるが、他のセル化学も考えられる。例えば、いくつかの実施形態では、いくらかの例では、特定の電極(例えば、アノード)は、他のアルカリ金属(例えば、第1族原子)を含んでもよい。いくつかの実施形態では、アノードは、1または複数のバインダー材料(例えば、ポリマーなど)を含んで成ってもよい。
【0175】
他の実施形態では、ケイ素含有またはケイ素ベースのアノードを使用してもよい。
【0176】
いくつかの実施形態では、アノードの厚さは、例えば、2~200ミクロンで変化させてもよい。例えば、アノードは、200ミクロン未満、100ミクロン未満、50ミクロン未満、25ミクロン未満、10ミクロン未満または5ミクロン未満の厚さを有してもよい。特定の実施形態では、アノードは、2ミクロン以上、5ミクロン以上、10ミクロン以上、25ミクロン以上、50ミクロン以上、100ミクロン以上または150ミクロン以上の厚さを有してもよい。上記範囲の組合せ(例えば、2ミクロン以上200ミクロン以下、2ミクロン以上100ミクロン以下、5ミクロン以上50ミクロン以下、5ミクロン以上25ミクロン以下、10ミクロン以上25ミクロン以下の厚さ)も可能である。他の範囲も可能である。厚さの選択は、所望のリチウムの過剰量、サイクル寿命、およびカソード電極の厚さなどのセル設計パラメータに応じてなされてよい。
【0177】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の電気化学セルは、少なくとも1の電流コレクタ(または集電体;current collector)を含んで成る。電流コレクタの材料は、場合によっては、金属(例えば、銅、ニッケル、アルミニウム、不動態化金属、および他の適切な金属)、金属化ポリマー、導電性ポリマー、分散された伝導性粒子を含んで成るポリマー、ならびに他の適切な材料から選択されてもよい。特定の実施形態では、電流コレクタは、物理蒸着、化学蒸着、電気化学堆積、スパッタリング、ドクターブレード、フラッシュ蒸発、または選択された材料のための他の適切な堆積技術を用いて電極層に堆積される。ある場合には、電流コレクタは別個に形成され、電極構造に結合されてもよい。しかし、いくつかの実施形態では、電気活性層とは分離した電流コレクタが存在しなくてもよく、または必要でないことがあることを理解されたい。
【0178】
いくつかの実施形態では、電気化学セルは、リチウムまたはケイ素ベースのアノード、カソード(例えば、電気活性硫黄含有材料を含んで成るカソード、インターカレーション・カソード)および式(I)の化合物を含んで成る固体電解質層を有して成る。電気化学セルは、本明細書で記載される他の構成要素を含んでもよい。
【0179】
特定の実施形態では、電気化学セルは、リチウムまたはケイ素ベースのアノード、カソード(例えば、電気活性硫黄含有材料を含んで成るカソード、インターカレーション・カソード)、液体電解質、および式(I)の化合物を含んで成る保護層を有して成る。電気化学セルは、本明細書で記載される他の構成要素を含んでもよい。
【0180】
いくつかの実施形態では、電気化学セルは、リチウムまたはケイ素ベースのアノード、カソード(例えば、電気活性硫黄含有材料を含んで成るカソード、インターカレーション・カソード)、液体電解質、および式(I)の化合物を含んで成るセパレータを含んで成る。電気化学セルは、本明細書で記載される他の構成要素を含んでもよい。
【0181】
特定の実施形態では、電気化学セルは、リチウムまたはケイ素ベースのアノード、インターカレーションされたカソード(例えば、インターカレーション種としての式(I)の化合物を含んで成るカソード)および電解質(例えば液体電解質)を含んで成る。電気化学セルは、本明細書で記載される他の構成要素を含んでもよい。
【0182】
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態を例示することを意図しているが、本発明の全範囲を例示するものではない。
【実施例
【0183】
本実施例は、式(I)のような式を有する様々なイオン導電性化合物の伝導度および組成を説明する。
【0184】
(実施例1)
[一般的な合成]
【0185】
実施例2~3で形成されたイオン導電性材料については、以下の手順に従った。前駆体材料LiS(99.9%純度)、P(99%純度)、FeS(99.9%純度)および元素硫黄(99.9%純度)をそれぞれの化学量論比で完全に混合した。硫黄を、FeSをFeSに酸化する量で添加した(例えば、反応容器での蒸発による損失を補うために10%の余剰を含む)。ハロゲン化物を含む組成物では、LiCl(99%純度)またはLiBr(99.9%純度)をそれぞれの化学量論量で添加した。一部はかなり小さな反応バッチ(全体で5~15g)によるものであるため、乳鉢およびピスティルで慎重に粉末を粉砕することにより、均質で微細な混合物を生成した。
【0186】
得られた混合物を、密閉スチールシリンダー(コンフラット(CF)フランジ上のCuガスケット)内に封入したガラス質カーボンるつぼで、不活性雰囲気(Ar)下で一晩(一般的に14~18時間)750℃で加熱した。オーブンをArでフラッシュした(例えば、鋼製反応容器が漏れた場合であっても、望ましくない副反応を避けるため)。鋼製シリンダーを開ける前に、反応物を実質的にゆっくりと室温まで冷却した。理論に拘束されることを望まないが、未反応の硫黄が最初にシリンダー壁で気相から凝縮し、生成物混合物に戻ることはないと予想されていた(この理由から、最初は余剰の硫黄を安全に使用できる)。その後、反応した粉末をAr充填グローブボックス内のるつぼから取り出し、粉砕してから分析用のサンプルを提出した。
【0187】
[分析方法]
EDX測定を実行し、サンプルの組成物を検証し、不純物および汚染、例えば、反応容器が漏れた場合の酸化のような望ましくない副反応からの不純物および汚染を特定した。
【0188】
粉末伝導度測定は、ダイ内の圧力を増加しながら指定量の粉末を緻密化することにより実施した(測定は、2つの銅板で挟まれた2つのアルミニウム・ホイルの間で行われる)。測定曲線と非常に高い圧力値での実験的な伝導度の値(1’’ペレットで5tまで、~968.5バールに対応)から、検討中の材料のバルク伝導度が推定された。
【0189】
EIS(電子インピーダンス分光法)測定を、同じ条件および設定下で行い、粉末全体の伝導度に対する電子的寄与とイオン的寄与とを区別した。
【0190】
XRD測定を使用して、合成の成功および再現性を検証した(最終反応生成物は結晶質である)。XRDパターンはリチウムベースのアルギロダイトを連想させることが示された。一般的に比較にLi21SiP17.5を使用した。
【0191】
(実施例2 イオン導電性化合物)
[Li2xSiPx+7(x=10~14)およびLi2118(比較例化合物)]
典型的な代表例としてのLi21SiP17.5のXRD粉末回折図を図2Aに示す。本パターンはリチウムアルギロダイトを示すいくつかの鋭いピーク(立方晶、空間群F-43m)を示すが、いくつかの残留しているLiSをまだ観察することができる(図2Aの矢印でマークされている)。明るい影付きの矢印は、強力なアルギロダイト信号と重複するLiS位置を示す。
【0192】
Li21SiP17.5図2A)およびLi2118図2B)の両方の回折図の比較は、両方の化合物がアルギロダイトに特徴的な同じパターンを共有することを示している。しかしながら、Li2118のスペクトルでは、いくつかのピークの分裂およびブロード化を観察することができる(矢印によりマークされている)。これらは、現在の製造手順に基づいて、最終生成物に高温(HT)および低温(LT)の両方の変更(または修正;modification)が存在することを示す可能性が最も高い。これらの特徴を使用して2つの化合物を非常に異なる伝導度(Li21SiP17.5では10-3S/cmのオーダー、Li2118では10-6S/cmのオーダー)で区別することができる。
【0193】
[LiFePx/2+7(x=10~22)(式(I)のような構造を有する実施例化合物、ここでxは10~22であり、yは1であり、zは2であり、uは12~18であり、MはFeであり、Qは存在せず、Xは存在しない)]
【0194】
図3A~3Dは、Li22FeP18、Li18FeP16、Li14FeP14、およびLi10FPe12のXRD粉末回折図である。式(I)のような構造を有する化合物は、MがSiの代わりにFeであることを除いて、比較例Li22SiP18と同じ組成物で始めて様々なLiS含有量で合成された。興味深いことに、Li22FeP18のスペクトル(図3A)は、Si化合物(図2A)と同じアルギロダイト型結晶構造を示す同じ特性パターンを示す。しかしながら、未反応のLiSに起因する非常に強いピーク(矢印でマークされた)が確認できる。前駆体混合物におけるLiSの量を減少させて、公称(nominal)組成物Li18FeP16、Li14FeP14およびLi10FeP12の化合物を得た。それらのそれぞれのXRDパターン(図3B~3D)は、化学量論的組成物におけるLiSの相対量の減少とともに、最終生成物における残留未反応LiSの急激な減少を示す。Li14FeP14のXRD粉末回折図は、Si系化合物について記録されたものと非常に類似したパターンを示している。
【0195】
図4は、x(LiS含有量)の関数としてLiSiPx/2+7およびLiFePx/2+7の粉末伝導度の比較を示している。破線は、LiSiPx/2+7およびLiFePx/2+7の両方について最大伝導度が見つかった組成物を示している。測定された粉末伝導度は、XRD回折図(図4および表1)で観察されたものと同じパターンに従った:Li14Fe14では~7.5・10-5S/cmが測定されXRDパターン(図2)において観察されたアルギロダイトと構造的に類似しており、Li12FeP12では~1・10-4S/cmが測定された。
【0196】
表1:LiFePx/2+7の粉末伝導度 参照材料としてのLi21SiP17.5の伝導度もリストされている。全体式は、実施例1で説明したように、XRDデータの解析、構造XRDデータのリートベルト精緻化、およびEDX測定に基づいて、サンプルの組成物(または組成;composition)を検証し、不純物および汚染を特定する。
【0197】
Li21SiP17.5およびLi14FeP14の両化合物の回折図(図5)の比較は、Fe系材料の場合、より高い2θ値への一般的なピークシフトを有する特徴的なアルギロダイトパターンが観察できることを明らかにする。理論に拘束されることを望まないが、そのようなピークシフトは、単位セルの収縮を示している可能性があり、これがイオン伝導度の相対的な低下の理由の1つである可能性がある。Li14FeP14の電子インピーダンス分光(EIS)測定は、図6に示される。より低い周波数に向かって、2番目の半円は見つからないが、Z’’値の直線的な増加のみが見られ、これは、リチウムイオン伝導度のみが含まれ、電子伝導度は含まれないことを示す。全体的なリチウムイオンの寄与は、この測定から~8.7・10-5S/cmの量まで導出された。
【0198】
(実施例3 LiFePx/2+7(x=10~22)+LiX)
ハロゲンのドーピングは、合成されたアルギロダイトの伝導度を増加させるための実行可能な戦略の一つであり得る。したがって、最高固有伝導度と最も純粋なアルギロダイト型のスペクトルパターン(実施例2参照)を備えた(ハロゲンフリー)Fe系化合物であることが分かったため、Li14FeP14は最初に選択された。体系的なハロゲンドーピングの影響を調査するため、LiS単位をLi14FeP14材料におけるLiClエンティティ(entities)に連続的に置き換えて、Li13FeP13Cl、Li12FeP12ClおよびLi11FeP11Clを生成した。それぞれのXRDスペクトルを図7A~7Dに示す。興味深いことに、Li14FeP14におけるLiS単位を1つ置き換えてLi13FeP13Clを製造すると、回折図における残留した弱いLiS信号が完全に消失するが、その他の弱い不明確なピークがいくつか現れる。アルギロダイトの全体の典型的なスペクトルパターンが完全に保存される。LiCl含有量をそれぞれLi12FeP12ClおよびLi11FeP11Clでさらに増加させると、LiCl比率の増加に伴い強度が増加し始めるLiClに相当するスペクトルパターンが出現する。これは、反応混合物全体における不完全な反応と未反応のLiClの量を示しており、つまり、いくつかの場合では、完全な反応プロセスを維持しながら複数のLiS単位がLi14FeP14に置き換わらないことがあることを意味する。いくつかの追加的なピークが、副反応および生成物の量の増加と、その後の所望のアルギロダイト型スペクトルパターンのゆっくりとした損失とを示すLi12FeP12ClおよびLi11FeP11l3の回折図において現れる。
【0199】
この点で興味深いのは、XRDパターンについて説明した知見を、図8に示しかつ表2に要約された同じ化合物についての粉末伝導度と比較することである。測定された粉末の伝導度は、Li14FeP14の~7.5・10-5S/cmからLi13FeP13Clの~2.9・10-4S/cmに増加する。
【0200】
XRDスペクトルから予想されるように、最高伝導度値がLi13FeP13Clで得られ、最も純粋なアルギロダイト型スペクトルを示す。しかしながら、LiClのさらなる増加は、反応混合物における未反応LiClの量の増加にかかわらず、伝導度のわずかな低下(これらの測定/合成手段の誤差内)を伴うだけであることに注意する必要がある。粉末全体の伝導度が純粋にイオン性であることを示すために、EISスペクトルが記録されている。Li11FeP11Clのスペクトルは、図9に例示的に示されている。図9のグラフから導出できるように、電子伝導度は観察されないが、~6.5・10-5S/cmのイオン伝導度は測定される。
【0201】
表2
【0202】
異なるハロゲン原子の影響を確認するために、LiClの代わりにLiBrを使用して、Li13FeP13Brを合成した。XRD粉末回折図は、比較を容易にするためLi14FeP14およびLi13FeP13Clの両方の回折図とともに図10に示される。Li13FeP13BrおよびLi13FeP13Clのスペクトルは、互いに非常によく似ており、特徴的なアルギロダイト型パターンを示す。「親」化合物Li14FeP14の回折図との比較において、どちらの場合もLiClまたはLiBrのいずれかによる1のLiS単位の正式な(formal)置換えは、XRD回折図における残留したLiS信号の消失をもたらすことに注意することは興味深い。Li13FeP13Brの粉末伝導度測定では、~2.1・10-4S/cmの値が得られる。
【0203】
(実施例4 イオン導電性化合物)
表3は、前駆体の例示的な混合物、合成温度、伝導度、および本明細書に記載されているように合成された例示的なイオン導電性化合物の全体式を要約する。
【0204】
表3
【0205】
(実施例5 Li14FeP14およびLi13FeP13X(X=Cl、Br)の結晶学)
Li13FeP13Cl、Li13FeP13Br、およびLi14FeP14 のサンプルを、x線回折測定のためにアルゴン充填したグローブボックスに入れた。少量のサンプルを、メノウ乳鉢で粉砕し、ホウケイ酸ガラス製の毛細管(Hilgenberg GmbH、外径0.3mmおよび0.01mm壁厚)に充填し、フレームシールした。標準的な粉末X線回折データをDECTRIS MYTHEN 1Kストリップ検出器を備えたSTOE Stadi P粉末回折計を用いて、5~90°2θの範囲内、298KでGe(111)単色Cu-Kα1放射線(1.540596Å)により、Debye-Scherrerジオメトリで記録した。Topas Academicソフトウェアを回折パターンの解析のために使用した。
【0206】
Li14FeP14サンプルの測定は、アルギロダイト構造タイプに典型的な格子パラメータa=9.86888(10)Åを有する立方メトリック(metric)を示す回折パターンをもたらした。アルギロダイト化合物Li(PS)S構造は、ワイコフ位置4bのPS 3-四面体、4aおよび4cのS2-イオン、48hのLiイオンを含む(ICSD421130;さらにLiサイトは別の48hおよび24gサイトである)。実施例2~3で記載したように、前記構造に鉄を組み込むことができ、例えば、FeでPを置換し、組成物Lix-u3-yz-t(M=FeおよびX=Br、Clである)のアルギロダイト誘導体を合成することができる。定量的リートベルト解析では、先述の構造モデルを出発点として使用された。
【0207】
精密化の第1の試みにおいて、Feは、サイトの完全な占有を保持しながらPを置き換えることが許容される。これにより、(公称組成物Li14FeP14で予測される33%の代わりに)Pサイト上のFe比率が15%の組成物Li14.6(5)(Fe0.15(2)0.85(2))Sがもたらされた。Liイオンの占有率は、電荷バランスに必要な予測値の2倍に改善された(7の代わりに14)。さらに、前記構造は、Feの影響を受けない純粋なP-S結合特徴的なP/Fe-S結合長2.038(5)Åを明らかにした(固体中の典型的な結合長はP-Sで2.04Å、Fe-Sで2.3~2.4Åである)。これらの結果は、すべてLiサイトに位置するFeイオン(メスバウワー分光法によって決定されるFe(II)またはFe(III))の強い兆候である。LiサイトでのFeを許容する精緻化は、表4~6に示す構造モデル(推定標準偏差(esd)を含む)をもたらした。
【0208】
表4 2つのサンプルについての「Li14FeP14」のリートベルト精緻化の結果(括弧内はesd)
【0209】
表5 サンプル1:Li6(6)Fe(0.6)(12)(PS)Sにおける原子の原子座標、ワイコフ記号(またはワイコッフの記号;Wyckoff symbols)および等方性変位パラメータBiso/Å(括弧内はesd)
【0210】
表6 サンプル2:Li6(6)Fe(0.6)(12)(PS)Sにおける原子の原子座標、ワイコフ記号および等方性変位パラメータBiso/Å(括弧内はesd)
【0211】
占有率の標準偏差は高いものの、Li位置でのFeを有する第2の精緻化から得られる式は、(P位置にFeを有する)他の構造モデルに比べ公称組成物に近い。したがって、合成混合物に添加されたFeすべてがアルギロダイト相に含まれるとの仮定は、他のFe含有相が回折パターンで検出されないとの事実により裏付けられている(非晶質相および昇華も考慮すべきである)。P位置に15%のFeを有する構造モデルでは、残りのFeS、FeSまたはFe含有相が予想されていた。さらに、Li位置にFeイオンを有する構造モデルは、Li(PS)Sと比較してFe含有相の格子パラメータにおいて大きな拡大がないことも説明できる。例えば、イオン半径r=49pmを有するFe3+(CNの配位数(CN)=4)は、r=59pmを有するLi(CN=4)よりも小さい。Fe-S距離がより長いことによりFeがPに置き換わると、格子パラメータの拡大が予想されるが、実験的には上で概説したように小さな収縮が観察された可能性が最も高い。
【0212】
BrおよびClサンプルから測定された回折パターンのモデリングの結果を表7~9に示す。これらの化合物では、ほとんどのFeイオンはLi位置に配置されているようである。P-S距離は、再び拡大を示すものではない。これらのサンプルにおけるBrの組み込みは、うまく機能しているようである:過剰な電子密度が位置4aおよび4dで見つけられ、パターンにおいて残留LiBrは見つけられなかった。4aおよび4d位置でのS2-およびClはXRDにより区別できないため(例えば、それらは同じ量の電子を有するため、同じ散乱力を有している)、Clの組み込みは、機能するだけでなく、パターンにLiClが存在しないことにより間接的に示唆されるみたいである。両方のサンプルで側相(side phase)がLiおよび硫化リチウム鉄であることが検出された。LiSはそれらのサンプルのいずれにも含まれていなかった。
【0213】
表7 Li13FeP13ClおよびLi13FeP13Brのリートベルト精緻化の結果(括弧内はesd)
【0214】
表8 Li14.58(Fe0.15(2)0.85(2))Sにおける原子の原子座標、ワイコフ記号および等方性変位パラメータBiso/Å(括弧内はesd)
【0215】
表9 Li7.0(Fe0.15(2)0.85(2))S1.731(18)Br0.269(18)における原子の原子座標、ワイコフ記号および等方性変位パラメータBiso/Å(括弧内はesd)
【0216】
本発明のいくらかの態様を本明細書に記載し、示したが、当業者であれば、機能を実行し、ならびに/または、本明細書に記載された結果および/もしくは利点を得るための種々の他の手段および/もしくは構造を容易に想到し得るであろう。また、そのような変形および/または修正の各々は、本発明の範囲内であるとみなされる。より一般的には、当業者は、本明細書に記載される全てのパラメータ、寸法、材料および構成が例示的であることを意図し、実際のパラメータ、寸法、材料および/または構成は、具体的な用途または本発明で教示される具体的な用途に応じることは容易に理解するであろう。当業者は、本明細書に記載された本発明の特定の実施形態に対する多くの等価物を、日常的な実験のみを用いて認識し、確認することができるであろう。したがって、前述の態様は単なる例として提示され、添付の特許請求の範囲およびそれと均等の範囲内で、本発明は、具体的な記載および請求の範囲以外の方法で実施され得ることが理解されるべきである。本発明は、本明細書に記載の個々の特徴、システム、物品、材料、キットおよび/または方法を対象とする。さらに、そのような特徴、システム、物品、材料、キットおよび/または方法が相互に矛盾しない場合、そのような特徴、システム、物品、材料、キットおよび/または方法の2以上の任意の組合せが、本発明の範囲内である。
【0217】
本明細書で規定され、使用されている全ての定義は、辞書における定義、参照により組み込まれた文献における定義および/または定義された用語の通常の意味を基準とすると理解されるべきである。
【0218】
本明細書および特許請求の範囲で使用する不定冠詞「1の(aおよびan)」は、明確に反対の指示がない限り、「少なくとも1つ」を意味すると理解すべきである。
【0219】
本明細書および特許請求の範囲において使用される「および/または(and/or)」という語句は、そのように結合された要素の「一方または両方(either or both)」、すなわちいくつかの場合では結合的に存在し、他の場合では離れて存在する要素であることを意味することを理解されたい。「および/または」と列挙された複数の要素は、同じように、すなわちそのように結合された要素の「1以上の、または1または複数の(one or more)」と解釈されるべきである。具体的に特定された要素と関連するかどうかにかかわらず、「および/または」の句によって具体的に特定される要素以外の他の要素がオプションとして存在してもよい。したがって、非限定的な例として、「含んで成る(comprising)」のような開放型言語と併せて使用される場合、「Aおよび/またはB」への言及は、一実施形態では、Aのみ(オプションとして、B以外の要素を含む)、別の実施形態では、Bのみ(オプションとして、A以外の要素を含む)、さらに別の実施形態では、AおよびBの両方(オプションとして、他の要素を含む)、などに言及する。
【0220】
本明細書および特許請求の範囲で使用される「または」は、上記で定義した「および/または」と同じ意味を有すると理解すべきである。例えば、リスト中の項目を分離する場合、「または」もしくは「および/または」は包括的(すなわち、要素の数またはリスト、およびオプションとして付加的なリストにない項目の少なくとも1つを含む(1以上を含む))であると解釈されるべきである。「~の1つだけ(only one of)」または「~の正確に1つ(exactly one of)」または特許請求の範囲で使用される場合、「~から成る(consisting of)」などの、逆に明示された用語のみが、要素の数またはリストの正確な1要素を含むことに言及するであろう。一般的に、本明細書で使用される「または」という用語は、「どちらか(either)」、「~の1つ(one of)」、「~の1つだけ(only one of)」、「~のうちの正確に1つ(exactly one of)」、「本質的に~から成る(consisting of)」のような排他的な条件によって先行される場合、排他的な代替語(すなわち、「1または両方では無く一方(one or the other but not both)」)を示すものとして解釈されるべきである。、特許請求の範囲で使用される場合、特許法の分野で使用される通常の意味を有するものとする。
【0221】
本明細書および特許請求の範囲で使用されるように、1または複数の要素のリストを参照して、「少なくとも1の(at least one)」という語句は、要素のリストにおいて、1または複数の要素のいずれかから選択される少なくとも1の要素を意味すると理解されるべきであり、必ずしも要素のリスト内に特にリストされた各要素および全ての要素の少なくとも1を含み、要素のリスト内の要素のあらゆる組合せを除外しない。この定義はまた、「少なくとも1の」という語句が指し示す要素のリスト内で具体的に特定される要素以外に、特定された要素に関連するものであろうと無関係なものであろうと、要素が任意に存在することを可能にする。したがって、非限定的な例として、「AおよびBの少なくとも1の」(または、同等に「AまたはBの少なくとも1の」、または同等に「Aおよび/またはBの少なくとも1の」)は、一実施形態では、Bが存在しない(およびオプションとしてB以外の要素を含む)少なくとも1の、オプションとして1以上のAを含み、別の実施形態では、Aが存在しない(およびオプションとしてA以外の要素を含む)少なくとも1の、オプションとして1以上のBを含み、さらに別の実施形態では、少なくとも1の、オプションとして1以上のA、および少なくとも1の、オプションとして1以上のBを含む(オプションとして他の要素を含む)のような実施形態がある。
【0222】
逆に明示されていない場合に限り、1以上の工程または動作を含む本明細書で請求されるいずれの方法において、方法における工程または動作の順序は、必ずしも方法における工程または動作が列挙される順序に限定されないことを理解すべきである。
【0223】
特許請求の範囲および本明細書において、「含んで成る(comprising)」、「含む(including)」、「支持する(carrying)」、「有する(having)」、「含む、または含有する(containing)」、「含む(involving)」、「支持する(holding)」、「~から成る(composed of)」などの全ての移行句(transitional phrases)は、制約がない(open-ended)(すなわち、限定されないことを含むことを意味する)と理解されるべきである。米国特許商標庁の特許審査手続書第2111.03項に記載されているように、移行句「~から成る」および「本質的に~から成る」のみが、それぞれ閉鎖式(closed)または半閉鎖式の(semi-closed)移行句とする。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
図9
図10A
図10B
図10C