(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】コンバータ装置、産業機械
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20230807BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20230807BHJP
【FI】
H02M3/155 B
H02M3/155 C
H02M7/48 M
(21)【出願番号】P 2021522797
(86)(22)【出願日】2020-05-27
(86)【国際出願番号】 JP2020020833
(87)【国際公開番号】W WO2020241659
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-11-16
(31)【優先権主張番号】P 2019099083
(32)【優先日】2019-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】久保 孝平
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開平3-245772(JP,A)
【文献】実開昭53-123139(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンバータ装置であって、
入力ラインに直流電圧を受け、出力ラインがコンデンサと接続されるスイッチングコンバータと、
前記入力ラインに直列に設けられる突入電流防止抵抗および開閉器と、
(i)前記開閉器をオンした後、所定時間内に前記コンデンサの電圧がしきい値に達しないとき、または(ii)前記突入電流防止抵抗の温度が所定の第1しきい値より高いときに、前記開閉器を強制的にオフして前記コンバータ装置を異常停止させるコントローラと、
を備えることを特徴とするコンバータ装置。
【請求項2】
前記コントローラは、前記突入電流防止抵抗の温度が、前記第1しきい値より低い第2しきい値より高いときに、前記コンバータ装置の再起動を禁止することを特徴とする請求項1に記載のコンバータ装置。
【請求項3】
前記コントローラは、前記突入電流防止抵抗に流れる電流にもとづいて、前記突入電流防止抵抗の温度を計算することを特徴とする請求項1または2に記載のコンバータ装置。
【請求項4】
エンジン発電機と、
前記エンジン発電機の出力を整流する整流器と、
DCリンクバスと、
前記DCリンクバスと接続されるコンデンサと、
モータと、
蓄電手段と、
前記コンデンサの電圧にもとづいて前記モータを駆動するインバータと、
入力が前記整流器の出力と接続され、出力が前記DCリンクバスと接続される第1コンバータ装置と、
入力が前記蓄電手段と接続され、出力が前記DCリンクバスと接続される第2コンバータ装置と、
を備え、
前記第1コンバータ装置および前記第2コンバータ装置はそれぞれ、請求項1から3のいずれかに記載のコンバータ装置であることを特徴とする産業機械。
【請求項5】
門型クレーンであることを特徴とする請求項4に記載の産業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パワーエレクトロニクスの分野において、直流電圧のレベルを変換するDC/DCコンバータ、トランスで絶縁された1次側と2次側の間で電力を授受する双方向コンバータ、直流電力を交流電力に変換するインバータなど、さまざまな電力変換装置が用いられる。
【0003】
コンバータ装置は、DCリンクバスと、DCリンクバスに接続される平滑コンデンサを備える。またコンバータ装置には、その起動時に平滑コンデンサに突入電流が流れるのを防止するために、突入電流防止抵抗と、突入電流防止抵抗と直列な開閉器が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-77028号公報
【文献】特開2013-13092号公報
【文献】特開2015-22840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コンバータ装置の起動時に、二本のDCリンク間の短絡や、いずれかのDCリンクの地絡などの異常が発生していたとする。そうすると、突入電流防止抵抗には電流が流れるにもかかわらず、平滑コンデンサが充電されないため、いつまで経っても初期充電が完了しないという状況に陥り、突入電流防止抵抗の温度が上昇する。突入電流防止抵抗の温度が高くなりすぎると、突入電流防止抵抗自体の信頼性が損なわれ、また周囲の素子にも悪影響を及ぼす。
【0006】
本発明は係る状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、突入電流防止抵抗やその他の素子を保護可能なコンバータ装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は、コンバータ装置に関する。コンバータ装置は、入力ラインに直流電圧を受け、出力ラインがDCリンクバスを介してコンデンサと接続されるコンバータと、入力ラインに直列に設けられる突入電流防止抵抗および開閉器と、(i)開閉器をオンした後、所定時間内にDCリンクバスの電圧がしきい値に達しないとき、または(ii)突入電流防止抵抗の温度が所定の第1しきい値より高いときに、開閉器を強制的にオフしてコンバータ装置を停止させるコントローラと、を備える。
【0008】
この態様によれば、コンバータ装置の出力側において、DCリンクバスの地絡等の異常が発生している場合に、起動、再起動を繰り返すのを防止でき、ひいては突入電流防止抵抗の温度が上がり続けるのを防止でき、信頼性を高めることができる。
【0009】
コントローラは、突入電流防止抵抗の温度が、第1しきい値より低い第2しきい値より高いときに、コンバータ装置の再起動を禁止してもよい。
【0010】
コントローラは、突入電流防止抵抗に流れる電流にもとづいて、突入電流防止抵抗の温度を計算してもよい。これにより温度センサが不要となる。
【0011】
本発明の別の態様は産業機械に関する。産業機械は、エンジン発電機と、エンジン発電機の出力を整流する整流器と、DCリンクバスと、DCリンクバスと接続されるコンデンサと、モータと、蓄電手段と、DCリンクバスの電圧にもとづいてモータを駆動するインバータと、入力が整流器の出力と接続され、出力がDCリンクバスと接続される第1コンバータ装置と、入力が蓄電手段と接続され、出力がDCリンクバスと接続される第2コンバータ装置と、を備えてもよい。第1コンバータ装置および第2コンバータ装置はそれぞれ、上述のいずれかのコンバータ装置であってもよい。
【0012】
産業機械は、門型クレーンであってもよい。
【0013】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【0014】
さらに、この項目(課題を解決するための手段)の記載は、すべての欠くべからざる特徴を説明するものではなく、したがって、記載されるこれらの特徴のサブコンビネーションも、本発明たり得る。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、突入電流防止抵抗やその他の素子を保護できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施の形態に係るコンバータ装置の回路図である。
【
図2】
図1のコンバータ装置の起動動作を説明する図である。
【
図3】
図1のコンバータ装置のDCリンクの短絡時の動作を説明する図である。
【
図4】異常状態における温度上昇を説明する図である。
【
図5】
図1のコンバータ装置の温度異常にもとづく強制終了を説明する動作波形図である。
【
図6】変形例1に係るコンバータ装置の動作を説明する図である。
【
図7】変形例3に係るスイッチングコンバータの回路図である。
【
図8】コンバータ装置を備える産業機械のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0018】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0019】
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0020】
本明細書において参照する波形図やタイムチャートの縦軸および横軸は、理解を容易とするために適宜拡大、縮小したものであり、また示される各波形も、理解の容易のために簡略化され、あるいは誇張もしくは強調されている。
【0021】
図1は、実施の形態に係るコンバータ装置100の回路図である。コンバータ装置100は、突入電流防止抵抗104、開閉器MC1,MC2、電流センサ108、スイッチングコンバータ130およびコントローラ200を備える。
【0022】
コンバータ装置100には、図示しない直流電源から直流電圧VINを受ける。直流電源は、電池やキャパシタなどの蓄電手段、あるいはエンジン発電機と整流器の組み合わせである。あるいは直流電源は、エンジンにより駆動される発電機と整流器の組み合わせを含んでもよい。直流電圧VINは、スイッチ6を介してコンバータ装置100の入力端子P1に供給される。
【0023】
コンバータ装置100は、直流の入力電圧VINを昇圧し、出力端子P2,N2に接続されるDCリンクバスLP,LNの間に、DCリンク電圧(出力電圧)VDCを発生する。
【0024】
N極ラインLNは、N極側の入力端子N1とN極側の出力端子N2の間を接続する。またP極ラインLPは、出力端子P2と接続されている。平滑コンデンサ102は、P極ラインLPとN極ラインLNの間に設けられる。平滑コンデンサ102は直列に接続される2個のコンデンサC11,C12を含む。放電抵抗110は、平滑コンデンサ102と並列に接続されており、コンバータ装置100の停止状態において、平滑コンデンサ102の電荷を放電する。放電抵抗110はコンデンサC11,C12それぞれと並列に接続される抵抗R11,R12を含む。ダイオードD11,D12は回路保護のために設けられる。
【0025】
スイッチングコンバータ130は昇圧コンバータ(Boostコンバータ)であり、入力電圧VINを昇圧し、直流電圧VDCを発生する。スイッチングコンバータ130は、リアクトルL1~L3、スイッチング素子MH1~MH3,ML1~ML3、平滑コンデンサ102を含む。
【0026】
電流センサ108は、コンバータ装置100の動作時において、入力ラインおよびリアクトルL1~L3に流れるリアクトル電流ILを検出するために設けられる。コントローラ200は、DCリンク電圧VDCが所定の目標電圧と一致するように、DCリンク電圧VDCの検出値およびリアクトル電流ILの検出値にもとづいてスイッチングコンバータ130をフィードバック制御する。
【0027】
突入電流防止抵抗104および開閉器MC2,MC1は、コンバータ装置100の起動時の突入電流を抑制するために設けられる。起動直後の初期充電状態において、開閉器MC1がオフされ、開閉器MC2がオンとなり、突入電流防止抵抗104および保護回路であるダイオードD11,D12を介して、平滑コンデンサ102が充電される。これにより突入電流を抑制しつつ、平滑コンデンサ102を充電し、入力電圧VINの近傍までDCリンク電圧VDCを上昇させる。
【0028】
そしてDCリンク電圧VDCが入力電圧VIN付近まで上昇すると、初期充電状態が終了し、開閉器MC2がオフ、開閉器MC1がオンされ、突入電流防止抵抗104がバイパスされる。そしてスイッチングコンバータ130の動作が開始し、DCリンク電圧VDCがその目標電圧に安定化される。
【0029】
電流センサ108は、たとえばカレントトランスであり、フィードバック制御において参照されるリアクトル電流ILの経路であって、かつ初期充電状態における平滑コンデンサ102への充電電流ICHGの経路の上に設けられる。電流センサ108は、センス抵抗とセンス抵抗の電圧降下を増幅するアンプを含むセンサであってもよい。電流センサ108が生成する電流検出値DCSは、スイッチングコンバータ130の動作状態において、リアクトル電流ILの検出値IL(MEAS)を示し、初期充電状態において充電電流ICHGの測定値ICHG(MEAS)を示す。
【0030】
またコントローラ200には、平滑コンデンサ102の電圧(DCリンク電圧)VDCに応じた電圧検出値DVSが入力されている。コントローラ200は、電圧検出値DVSにもとづくフィードバック制御により、DCリンク電圧VDCを目標電圧に安定化させる。
【0031】
開閉器MC1およびMC2は、電磁接触器(MC:Electromagnetic Contactor)や電磁開閉器(MS:Electromagnetic Switch)、電磁リレーなどの機械的な接点を有するスイッチ素子である。
【0032】
図2は、
図1のコンバータ装置100の起動動作を説明する図である。時刻t
1に、コンバータ装置100の起動が指示される。起動指示に応答して、開閉器MC2がオンとなる。これにより開閉器MC2および突入電流防止抵抗104を介して充電電流I
CHGが流れ、平滑コンデンサ102が充電され、DCリンク電圧V
DCが上昇する。時刻t
2にDCリンク電圧V
DCが、入力電圧V
IN付近のしきい値V
THに達すると、初期充電が完了し、開閉器MC2がオフとなる。そして開閉器MC1がオンとなり、スイッチングコンバータ130の動作が開始すると、スイッチングコンバータ130の昇圧動作によって、DCリンク電圧V
DCが上昇し、その後、目標電圧V
REFに維持される。
【0033】
図3は、
図1のコンバータ装置100のDCリンクの短絡時の動作を説明する図である。
【0034】
時刻t1に、コンバータ装置100の起動が指示され、開閉器MC2がオンとなる。これにより開閉器MC2および突入電流防止抵抗104を介して充電電流ICHGが流れるが、DCリンクが地絡していると、平滑コンデンサ102が充電されず、DCリンク電圧VDCが0V付近を維持する。
【0035】
正常時においてDCリンク電圧VDCがしきい値VTHに到達するはずの時刻t2を過ぎても、DCリンク電圧VDCは0Vを維持し続ける。突入電流防止抵抗104の両端間には、VINが印加されるため、突入電流防止抵抗104には、電流ICHG=VIN/Rが流れ続ける。Rは突入電流防止抵抗104の抵抗値である。
【0036】
初期充電状態が長引いて、開閉器MC2がオンし続けると、突入電流防止抵抗104に、電流が流れ続けると、異常発熱を引き起こす。突入電流防止抵抗104の温度Tが高くなりすぎると、突入電流防止抵抗104自体の信頼性が損なわれ、また周囲の素子にも悪影響を及ぼす。
【0037】
この問題を解決するために、コンバータ装置100には、起動開始から(あるいは開閉器MC2のオンから)所定時間τ経過しても、DCリンク電圧VDCがしきい値VTHに到達しない場合(タイムアウト)、システムをシャットダウン(異常終了)させる保護機能が実装される。
【0038】
この保護機能によって、突入電流防止抵抗104に流れる電流を遮断することで、温度Tが上昇し続けるのを防止することができる。突入電流防止抵抗104の温度Tは、時間とともに低下していく。
【0039】
ところがユーザが、異常終了の時刻t3から十分な時間が経過する前、すなわち突入電流防止抵抗104の温度Tが十分低くなる前の時刻t4に、再びコンバータ装置100を起動したとする。そうすると、同じ動作が繰り返され、突入電流防止抵抗104の温度Tはさらに上昇する。
【0040】
図4は、異常状態における温度上昇を説明する図である。時刻t
0に起動指示が発生する。突入電流防止抵抗104に電流が流れることにより突入電流防止抵抗104の温度Tが上昇する。
【0041】
時刻t1に、タイムアウトとなり、異常停止する。停止期間の間、温度Tは緩和する。そして温度Tが十分に緩和するより前の時刻t2にユーザが装置をリセットし、再起動する。そうすると突入電流防止抵抗104に再度、電流が流れることにより温度Tが上昇する。そして時刻t3にタイムアウトとなり、異常停止する。
【0042】
タイムアウトによる異常停止から再起動までのインターバルが短いと、
図4に示すように温度Tは上昇し続け、やがて突入電流防止抵抗104自体あるいは周辺の素子の信頼性に悪影響を及ぼす可能性がある。以下、
図4の動作モードに陥るのを防止するための技術を説明する。
【0043】
図1に戻る。コントローラ200は、制御部210、異常判定器220、表示装置230、シーケンサ240、操作部250、温度監視部260を備える。
【0044】
異常判定器220、シーケンサ240、パルス発生器212等は、コンピュータやプロセッサなどのハードウェアとソフトウェアの組み合わせで実装してもよいし、FPGAやロジック回路などのハードウェアで実装してもよい。
【0045】
操作部250は、ユーザからの起動指示START、終了指示SHTDWN、リセット指示RSTなどを受け付けるインタフェースである。操作部250が受け付けた指示START,SHTDWN,RSTは、シーケンサ240に入力される。
【0046】
シーケンサ240は、操作部250からの入力に応じて、コンバータ装置100の起動シーケンスや終了シーケンスを制御する。たとえばシーケンサ240は、起動指示STARTを受けると、開閉器MC2をオンし、入力電圧VINによって平滑コンデンサ102を充電する(初期充電状態)。そしてDCリンク電圧VDCがあるしきい値に達すると、初期充電状態を終了し、通常動作状態に移行する。通常状態では開閉器MC1がオンとなり、スイッチングコンバータ130によってDCリンク電圧VDCが目標電圧に安定化される。
【0047】
またシーケンサ240は、終了指示SHTDWNを受けると、スイッチングコンバータ130の動作を停止させ、開閉器MC1、開閉器MC2をオフとする。
【0048】
制御部210は、通常状態において電圧検出値DVSおよび電流検出値DCSにもとづいてスイッチングコンバータ130を制御する。制御部210は、パルス発生器212およびドライバ214を含む。パルス発生器212はたとえばパルス幅変調器あるいはパルス周波数変調器を含む。パルス発生器212の構成は特に限定されず、公知技術を用いて構成すればよい。
【0049】
一例としてパルス発生器212は、電圧制御器と、電流制御器と、パルス変調器と、を含んでもよい。電圧制御器は、PI(比例・積分)コントローラやPID(比例・積分・微分)コントローラであり、DCリンク電圧VDCの検出値DVSと目標値の誤差に応じた電流指令値を生成する。電流制御器は、電流検出値IL(MEAS)と電流指令値IREFの誤差に応じたデューティ指令値を生成する。パルス変調器は、デューティ指令値に応じたデューティ比を有するパルス信号SPWMを生成する。
【0050】
ドライバ214は、パルス信号SPWMに応じて、スイッチングコンバータ130のスイッチング素子MH1~MH3,ML1~ML3を駆動する。
【0051】
表示装置230は、ユーザに対して、コンバータ装置100の動作状態や異常の有無を視覚的に提示する。
【0052】
温度監視部260は、突入電流防止抵抗104の温度Tを監視する。温度監視部260は、突入電流防止抵抗104に流れる電流I(すなわち電流検出値DCS)を監視し、電流にもとづいて突入電流防止抵抗104の温度Tを推定してもよい。温度Tは、突入電流防止抵抗104における発熱と放熱のバランスで決まる。突入電流防止抵抗104の発熱は、ジュール熱であり、R×I2で与えられる。一方、突入電流防止抵抗104の放熱は、突入電流防止抵抗104の熱環境をモデル化することにより計算することができる。コンバータ装置100は、温度管理された環境下に設置される場合、突入電流防止抵抗104の初期温度は、管理温度となる。この管理温度を初期値として、発熱量と放熱量を時々刻々と計算することにより、突入電流防止抵抗104の温度Tをトレースすることができる。温度監視部260により検出される温度Tは、表示装置230に表示してもよい。
【0053】
異常判定器220は、コンバータ装置100の異常を検出する。本実施の形態において、異常判定器220は、コンバータ装置100の回路異常と、温度異常の二種類の異常を検出可能に構成される。回路異常は、DCリンクバスのショートなどの異常である。温度異常は、突入電流防止抵抗104の温度が高温となる異常である。
【0054】
回路異常について説明する。異常判定器220は、起動指示に応じて開閉器MC2をオンしたにもかかわらず、DCリンク電圧VDCが上昇しないときに回路異常と判定する。たとえばシーケンサ240は、起動開始からの経過時間を測定し、所定時間の経過後に、DCリンク電圧VDCがしきい値より低いときに、回路異常と判定してもよい(タイムアウト)。異常判定器220が回路異常を検出すると、表示装置230にその旨を表示してもよい。
【0055】
回路異常の情報は、シーケンサ240に与えられる。シーケンサ240は、回路異常が検出されると、コンバータ装置100の動作を強制終了する。
【0056】
異常判定器220は、温度監視部260が検出した温度Tが、所定のしきい値Taを超えると、温度異常と判定する。温度異常が検出されると、表示装置230にその旨を表示してもよい。
【0057】
温度異常の情報はシーケンサ240に与えられる。シーケンサ240は、温度異常が検出されたときも、コンバータ装置100の動作を強制終了する。
【0058】
以上がコンバータ装置100の構成である。続いてその動作を説明する。
図5は、
図1のコンバータ装置100の温度異常にもとづく強制終了を説明する動作波形図である。時刻t
0~t
3までの動作は
図4と同様である。時刻t
4にリセットおよび再起動がかかると、温度Tが上昇し始める。
【0059】
時刻t5に温度Tがしきい値Taに達すると、温度異常が検出され、強制終了する。その後、時刻t6に再びリセットおよび再起動がかかると、温度Tが上昇し始め、時刻t7に再度、温度異常が検出され、強制終了する。
【0060】
このように実施の形態に係るコンバータ装置100によれば、温度異常を検出すると、強制終了することにより、温度Tが、しきい値Taを超えて上昇し続けるのを防止することができる。
【0061】
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上記実施形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例を説明する。
【0062】
(変形例1)
実施の形態では、温度異常あるいは回路異常(タイムアウト)により強制終了した後は、ユーザが異常のリセットRSTを行った後に、起動指示STARTを与えることにより、再起動が可能であった。これに対して変形例1において、シーケンサ240は、温度異常が検出されている間は、リセットRSTによる異常解除を禁止し、再起動不能とする。
【0063】
上述の温度異常の判定しきい値Taを、第1しきい値と称する。異常判定器220には、第1しきい値Taより低い第2しきい値Tbが定められている。そして異常判定器220は、突入電流防止抵抗104の温度Tが、第2しきい値Tbより高い状態において、コンバータ装置100の再起動を禁止する。
【0064】
図6は、変形例1に係るコンバータ装置100の動作を説明する図である。時刻t
0~t
3は、
図5と同様である。
【0065】
温度Tは、第2しきい値Tbと比較され、T>Tbのときがリセット禁止である。T>Tbである時刻t4に、ユーザがリセットおよび再起動を試みるが、シーケンサ240により禁止され、停止状態が維持される。時刻t5に温度Tが第2しきい値Tbより低くなると、再起動可能な状態となる。そして、時刻t6にユーザがリセットおよび再起動を行うと、コンバータ装置100が再起動を始める。そして時刻t7に温度Tが第1しきい値Taに達すると、温度異常となり停止する。
【0066】
この変形例によれば、温度Tを、第2しきい値Tbまで確実に低下させることができる。
図5の場合は、リセット・再起動のインターバルが短くなると、温度Tの平均値がしきい値Taに近づくことになるが、変形例1の制御を行うと、平均温度を下げることができる。
【0067】
(変形例2)
実施の形態では、突入電流防止抵抗104に流れる電流にもとづいて、突入電流防止抵抗104の温度を推定したが、より直接的に突入電流防止抵抗104の温度を検出してもよい。たとえば突入電流防止抵抗104の近傍に、サーミスタや熱電対などの温度センサを配置し、温度センサの出力を監視してもよい。
【0068】
(変形例3)
スイッチングコンバータ130の構成は、
図1のそれに限定されない。
図7は、変形例3に係るスイッチングコンバータ130Aの回路図である。スイッチングコンバータ130Aは、1個のリアクトルL
1と、1組のハイサイドトランジスタM
H1,ローサイドトランジスタM
L1、平滑コンデンサ102を備える。
【0069】
スイッチングコンバータ130や130Aにおいて、ハイサイドトランジスタMHおよびローサイドトランジスタMLは、バイポーラトランジスタに限定されず、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やFETを用いることができる。
【0070】
(用途)
続いて、コンバータ装置100の用途を説明する。
図8は、コンバータ装置100を備える産業機械のブロック図である。産業機械は、作業機械、工作機械、作業車両、建設機械であり、各種クレーンやショベル、二次電池の充放電検査装置などが例示される。
【0071】
産業機械300は、バッテリと油圧のハイブリッド型であり、エンジン発電機302、スイッチ304、整流器306、エンジンコンバータ308、蓄電手段312、スイッチ314、バッテリコンバータ316、インバータ318、モータ320を備える。
【0072】
エンジン発電機302はエンジンによって駆動される発電機であり、三相交流電力を発生する。整流器306は、スイッチ304を介して三相交流電力を受け、直流電圧VIN1に変換する。エンジンコンバータ308は直流電圧VIN1を受け、それを昇圧した電圧VDCをDCリンクバス310に発生させ、その電圧レベルを安定化する。
【0073】
蓄電手段312は、バッテリあるいはキャパシタであり、直流電圧VIN2を生成する。バッテリコンバータ316の出力は、エンジンコンバータ308の出力と共通のDCリンクバス310と接続される。バッテリコンバータ316は、スイッチ314を介して直流電圧VIN2を受け、それを昇圧して、DCリンクバス310の直流電圧VDCを安定化する。インバータ318は、DCリンクバス310のDCリンク電圧VDCを受け、交流電力に変換し、モータ320を駆動する。
【0074】
モータ320が回生動作する際には、モータ320からの回生電流が、インバータ318を介してDCリンクバス310に流れ込む。バッテリコンバータ316は、モータ320の回生動作時には充電モードとなり、DCリンクバス310側を入力、蓄電手段312側を出力とする降圧コンバータとして動作する。これにより余った電力を、蓄電手段312に回収することができる。
【0075】
エンジンコンバータ308およびバッテリコンバータ316はそれぞれ、上述のコンバータ装置100と同様の構成を有する。これにより、突入電流防止抵抗104の温度上昇を抑制し、信頼性を高めることができる。
【0076】
産業機械300は、たとえば門型クレーンである。門形クレーンは、コンテナを昇降させ、あるいは水平方向に移動させる。コンテナを上昇させるときには、モータが力行動作となり、エンジンの出力をアシストする。コンテナを下降させるときには、モータが回生動作となり、バッテリコンバータ316は、モータ320の回生電流を、蓄電手段312に回収する。
【0077】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、コンバータ装置に関する。
【符号の説明】
【0079】
100 コンバータ装置
102 平滑コンデンサ
104 突入電流防止抵抗
MC1,MC2 開閉器
108 電流センサ
110 放電抵抗
120 保護回路
130 スイッチングコンバータ
200 コントローラ
210 制御部
212 パルス発生器
214 ドライバ
220 異常判定器
230 表示装置
240 シーケンサ
250 操作部
260 温度監視部
P1 入力端子
P2 出力端子
C11,C12 コンデンサ
R11,R12 抵抗
300 産業機械
302 エンジン発電機
304 スイッチ
306 整流器
308 エンジンコンバータ
310 DCリンクバス
312 蓄電手段
314 スイッチ
316 バッテリコンバータ
318 インバータ
320 モータ