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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】ゴム組成物及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20230808BHJP
   C08L 61/14 20060101ALI20230808BHJP
   C08L 91/00 20060101ALI20230808BHJP
   C08K 5/47 20060101ALI20230808BHJP
   C08K 5/40 20060101ALI20230808BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20230808BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
C08L21/00
C08L61/14
C08L91/00
C08K5/47
C08K5/40
C08K3/04
B60C1/00 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019139025
(22)【出願日】2019-07-29
(65)【公開番号】P2021021024
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 祐美
【審査官】吉田 早希
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-178035(JP,A)
【文献】特開2001-348461(JP,A)
【文献】特開2016-089015(JP,A)
【文献】特開2019-014809(JP,A)
【文献】特開2005-220181(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 - 101/14
B60C 1/00 - 19/12
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分と、アルキルフェノール系樹脂と、加硫時に活性硫黄を放出する硫黄供与体と、チウラム系加硫促進剤と、オイルとを含み、
前記ゴム成分100質量部に対する前記硫黄供与体の含有量が0.1~10質量部、前記チウラム系加硫促進剤の含有量が1~10質量部、前記オイルの含有量が60質量部以上であるゴム組成物。
【請求項2】
前記硫黄供与体が、下記式(1)及び/又は(2)で表されるポリスルフィド化合物である請求項1記載のゴム組成物。
【化1】
(式中、R101は、同一又は異なって、置換基を有してもよい炭素数3~15の1価の炭化水素基を表す。nは2~6の整数を表す。)
【化2】
(式中、R102は、同一又は異なって、置換基を有してもよい炭素数3~15の2価の炭化水素基を表す。mは2~6の整数を表す。)
【請求項3】
前記硫黄供与体が、N,N’-ジ(ε-カプロラクタム)ジスルフィドであり、前記チウラム系加硫促進剤が、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィドである請求項1又は2記載のゴム組成物。
【請求項4】
チアゾール系加硫促進剤を含む請求項1~3のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項5】
ゴム成分100質量部に対して、カーボンブラックを80質量部以上含有する請求項1~4のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項6】
トレッド用ゴム組成物である請求項1~5のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載のゴム組成物を用いたトレッドを有するタイヤ。
【請求項8】
競技用タイヤである請求項7記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物及びタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からタイヤには、種々の性能が求められているが、安全性の観点から、グリップ性能が重要視されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-009300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者が鋭意検討した結果、アルキルフェノール系樹脂を配合することにより、ドライグリップ性能は向上するものの、スコーチタイムが短くなり、更にはグリップ安定性が低下することが判明した。
ここで、グリップ安定性能を向上させるために、架橋密度を向上させることが考えられるが、スコーチタイムに余裕が無いため、通常の手段では架橋密度を向上させることは困難である。
このように従来の技術では、ドライグリップ性能を改善しつつ、良好なグリップ安定性能を得るという点では改善の余地があった。
本発明は、前記課題を解決し、ドライグリップ性能を改善しつつ、良好なグリップ安定性能が得られるゴム組成物及びタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ゴム成分と、アルキルフェノール系樹脂と、加硫時に活性硫黄を放出する硫黄供与体と、チウラム系加硫促進剤とを含むゴム組成物に関する。
【0006】
上記硫黄供与体が、下記式(1)及び/又は(2)で表されるポリスルフィド化合物であることが好ましい。
【化1】
(式中、R101は、同一又は異なって、置換基を有してもよい炭素数3~15の1価の炭化水素基を表す。nは2~6の整数を表す。)
【化2】
(式中、R102は、同一又は異なって、置換基を有してもよい炭素数3~15の2価の炭化水素基を表す。mは2~6の整数を表す。)
【0007】
上記硫黄供与体が、N,N’-ジ(ε-カプロラクタム)ジスルフィドであり、上記チウラム系加硫促進剤が、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィドであることが好ましい。
【0008】
上記ゴム組成物は、チアゾール系加硫促進剤を含むことが好ましい。
【0009】
上記ゴム組成物は、ゴム成分100質量部に対して、カーボンブラックを80質量部以上含有することが好ましい。
【0010】
上記ゴム組成物は、トレッド用ゴム組成物であることが好ましい。
【0011】
本発明はまた、ゴム組成物を用いたトレッドを有するタイヤに関する。
【0012】
上記タイヤが競技用タイヤであることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ゴム成分と、アルキルフェノール系樹脂と、加硫時に活性硫黄を放出する硫黄供与体と、チウラム系加硫促進剤とを含むゴム組成物であるので、ドライグリップ性能を改善しつつ、良好なグリップ安定性能が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のゴム組成物は、ゴム成分と、アルキルフェノール系樹脂と、加硫時に活性硫黄を放出する硫黄供与体と、チウラム系加硫促進剤とを含む。これにより、ドライグリップ性能を改善しつつ、良好なグリップ安定性能が得られる。
【0015】
このような作用効果が得られる理由は必ずしも明らかではないが、以下のように推察される。
アルキルフェノール系樹脂を配合することにより、ドライグリップ性能は向上するものの、スコーチタイムが短くなり、更にはグリップ安定性が低下する。ここで、グリップ安定性能を向上させるために、架橋密度を向上させることが考えられるが、アルキルフェノール系樹脂を配合するとスコーチタイムが短くなり、スコーチタイムに余裕が無いため、通常の手段では架橋密度を向上させることは困難である。
一方、本発明では、加硫時に活性硫黄を放出する硫黄供与体と、チウラム系加硫促進剤とを併用することにより、スコーチタイムの低下を抑制しつつ、グリップ安定性を向上できる。
更には、「アルキルフェノール系樹脂」と、「加硫時に活性硫黄を放出する硫黄供与体(特に、上記式(1)及び/又は(2)で表されるポリスルフィド化合物)並びにチウラム系加硫促進剤」とを併用することにより、ドライグリップ性能、グリップ安定性能を相乗的に改善でき、ドライグリップ性能を改善しつつ、良好なグリップ安定性能が得られる。
【0016】
上記ゴム組成物は、ゴム成分を含み、例えば、ジエン系ゴムを使用できる。
ジエン系ゴムとしては、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)などが挙げられる。また、上記以外のゴム成分としては、ブチル系ゴム、フッ素ゴムなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。ゴム成分としては、良好なグリップ性能が得られるという理由から、SBR、BR、イソプレン系ゴムが好ましく、SBRがより好ましい。
【0017】
ここで、ゴム成分は、重量平均分子量(Mw)が20万以上が好ましく、より好ましくは35万以上のゴムである。Mwの上限は特に限定されないが、好ましくは400万以下、より好ましくは300万以下である。
なお、本明細書において、Mw、数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(東ソー(株)製GPC-8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMULTIPORE HZ-M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めることができる。
【0018】
ジエン系ゴムを含有する場合、ゴム成分100質量%中のジエン系ゴムの含有量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、特に好ましくは80質量%以上、最も好ましくは90質量%以上であり、100質量%であってもよい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0019】
ゴム成分は、非変性ジエン系ゴムでもよいし、変性ジエン系ゴムでもよい。
変性ジエン系ゴムとしては、シリカ等の充填剤と相互作用する官能基を有するジエン系ゴムであればよく、例えば、ジエン系ゴムの少なくとも一方の末端を、上記官能基を有する化合物(変性剤)で変性された末端変性ジエン系ゴム(末端に上記官能基を有する末端変性ジエン系ゴム)や、主鎖に上記官能基を有する主鎖変性ジエン系ゴムや、主鎖及び末端に上記官能基を有する主鎖末端変性ジエン系ゴム(例えば、主鎖に上記官能基を有し、少なくとも一方の末端を上記変性剤で変性された主鎖末端変性ジエン系ゴム)や、分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物により変性(カップリング)され、水酸基やエポキシ基が導入された末端変性ジエン系ゴム等が挙げられる。
【0020】
上記官能基としては、例えば、アミノ基、アミド基、シリル基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基等が挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。なかでも、アミノ基(好ましくはアミノ基が有する水素原子が炭素数1~6のアルキル基に置換されたアミノ基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基)、アルコキシシリル基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシシリル基)が好ましい。
【0021】
SBRとしては特に限定されず、例えば、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E-SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S-SBR)等を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
SBRのスチレン含量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、特に好ましくは20質量%以上、最も好ましくは25質量%以上、より最も好ましくは30質量%以上、更に最も好ましくは35質量%以上である。また、該スチレン含量は、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは45質量%以下である。上記範囲内であると、前記効果がより好適に得られる。
なお、本明細書において、SBRのスチレン含量は、H-NMR測定により算出される。
【0023】
SBRとしては、例えば、住友化学(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等により製造・販売されているSBRを使用できる。
【0024】
SBRは、非変性SBRでもよいし、変性SBRでもよい。変性SBRとしては、変性ジエン系ゴムと同様の官能基が導入された変性SBRが挙げられる。
【0025】
SBRを含有する場合、ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上であり、100質量%でもよい。上記範囲内にすることで、前記効果がより好適に得られる傾向がある。
【0026】
BRは特に限定されず、例えば、高シス含量のハイシスBR、シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR、希土類系触媒を用いて合成したBR(希土類BR)等を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、耐摩耗性能が向上するという理由から、シス含量が90質量%以上のハイシスBRが好ましい。
【0027】
また、BRは、非変性BRでもよいし、変性BRでもよい。変性BRとしては、変性ジエン系ゴムと同様の官能基が導入された変性BRが挙げられる。
【0028】
BRとしては、例えば、宇部興産(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等の製品を使用できる。
【0029】
イソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、改質NR、変性NR、変性IR等が挙げられる。NRとしては、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。IRとしては、特に限定されず、例えば、IR2200等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。改質NRとしては、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)等、変性NRとしては、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等、変性IRとしては、エポキシ化イソプレンゴム、水素添加イソプレンゴム、グラフト化イソプレンゴム等、が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
上記ゴム組成物は、アルキルフェノール系樹脂を含有する。
アルキルフェノール系樹脂としては、例えば、アルキルフェノールと、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラールなどのアルデヒド類とを酸又はアルカリ触媒で反応させることにより得られるアルキルフェノールアルデヒド縮合樹脂;アルキルフェノールと、アセチレンなどのアルキンとを反応させて得られるアルキルフェノールアルキン縮合樹脂;これらの樹脂を、カシューオイル、トールオイル、アマニ油、各種動植物油、不飽和脂肪酸、ロジン、アルキルベンゼン樹脂、アニリン、メラミンなどの化合物を用いて変性した変性アルキルフェノール樹脂;等が挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、アルキルフェノールアルキン縮合樹脂が好ましく、アルキルフェノールアセチレン縮合樹脂が特に好ましい。
【0031】
アルキルフェノール系樹脂を構成するアルキルフェノールとしては、クレゾール、キシレノール、t-ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール等が挙げられる。なかでも、t-ブチルフェノール等の分枝状アルキル基を有するフェノールが好ましく、t-ブチルフェノールが特に好ましい。
【0032】
アルキルフェノール系樹脂の軟化点は、60~200℃が好ましい。上限は160℃以下がより好ましく、150℃以下が更に好ましく、下限は100℃以上がより好ましく、130℃以上が更に好ましい。上記範囲内にすることで、前記効果がより好適に得られる。
なお、本明細書において、軟化点は、JIS K 6220-1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
【0033】
アルキルフェノール系樹脂としては、例えば、BASF社等の製品を使用できる。
【0034】
アルキルフェノール系樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは15質量部以上、特に好ましくは20質量部以上、最も好ましくは25質量部以上、より最も好ましくは30質量部以上、更に最も好ましくは35質量部以上である。アルキルフェノール系樹脂の含有量は、好ましくは80質量部以下、より好ましくは60質量部以下、更に好ましくは40質量部以下である。上記範囲内にすることで、前記効果がより好適に得られる。
【0035】
上記ゴム組成物は、アルキルフェノール系樹脂以外の樹脂を含有してもよい。
アルキルフェノール系樹脂以外の樹脂としては、特に限定されないが、例えば、固体状のスチレン系樹脂、クマロンインデン樹脂、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂、アクリル系樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂(DCPD系樹脂)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
アルキルフェノール系樹脂以外の樹脂としては、例えば、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、ヤスハラケミカル(株)、東ソー(株)、Rutgers Chemicals社、BASF社、アリゾナケミカル社、日塗化学(株)、(株)日本触媒、JXTGエネルギー(株)、荒川化学工業(株)、田岡化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0037】
アルキルフェノール系樹脂以外の樹脂を含有する場合、その含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは80質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは20質量部以下である。
【0038】
上記ゴム組成物は、加硫時に活性硫黄を放出する硫黄供与体を含有する。
上記硫黄供与体としては、加硫時に活性硫黄を放出する化合物であれば特に限定されないが、下記式(1)及び/又は(2)で表されるポリスルフィド化合物であることが好ましい。これにより、上記効果がより好適に得られる。上記硫黄供与体は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【化3】
(式中、R101は、同一又は異なって、置換基を有してもよい炭素数3~15の1価の炭化水素基を表す。nは2~6の整数を表す。)
【化4】
(式中、R102は、同一又は異なって、置換基を有してもよい炭素数3~15の2価の炭化水素基を表す。mは2~6の整数を表す。)
【0039】
上記式(1)中のR101は、置換基を有してもよい炭素数3~15の1価の炭化水素基であるが、該炭素数は、5以上が好ましく、6以上がより好ましく、12以下が好ましく、10以下がより好ましい。R101の1価の炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよく、また、飽和、不飽和炭化水素基(脂肪族、脂環式、芳香族炭化水素基など)のいずれでもよい。なかでも置換基を有してもよい芳香族炭化水素基が好ましい。
【0040】
101としては、例えば、炭素数3~15のアルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アラルキル基、置換アラルキル基などが挙げられ、なかでも、アラルキル基、置換アラルキル基が好ましい。ここで、アルキル基としては、ブチル基、オクチル基が挙げられ、シクロアルキル基としてはシクロヘキシル基が挙げられ、アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基などが挙げられる。置換基としては、オキソ基(=O)、ヒドロキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、アミノ基、アセチル基、アミド基、イミド基などの極性基などが挙げられる。
【0041】
上記式(1)中のnは、2~6の整数であるが、2又は3が好ましく、2がより好ましい。
【0042】
上記式(2)中のR102は、置換基を有していてもよい炭素数3~15の2価の炭化水素基であるが、該炭素数は、3以上が好ましく、4以上がより好ましく、10以下が好ましく、8以下がより好ましい。R102の2価の炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよく、また、飽和、不飽和炭化水素基(脂肪族、脂環式、芳香族炭化水素基など)のいずれでもよい。なかでも、置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基が好ましく、置換基を有してもよい直鎖状脂肪族炭化水素基がより好ましい。
【0043】
102としては、例えば、炭素数3~15のアルキレン基、置換アルキレン基などが挙げられる。ここで、アルキレン基としては、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基などが挙げられ、置換基としては、R101の置換基と同様のものなどが挙げられる。
【0044】
上記式(2)中のmは、2~6の整数であるが、2又は3が好ましく、2がより好ましい。
【0045】
上記式(1)、(2)で表されるポリスルフィド化合物としては、上記式(2)で表されるポリスルフィド化合物が好ましい。
【0046】
上記式(1)、(2)で表されるポリスルフィド化合物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、N,N’-ジ(γ-ブチロラクタム)ジスルフィド、N,N’-ジ(5-メチル-γ-ブチロラクタム)ジスルフィド、N,N’-ジ(5-エチル-γ-ブチロラクタム)ジスルフィド、N,N’-ジ(5-イソプロピル-γ-ブチロラクタム)ジスルフィド、N,N’-ジ(5-メトキシ-γ-ブチロラクタム)ジスルフィド、N,N’-ジ(5-エトキシ-γ-ブチロラクタム)ジスルフィド、N,N’-ジ(5-クロル-γ-ブチロラクタム)ジスルフィド、N,N’-ジ(5-ニトロ-γ-ブチロラクタム)ジスルフィド、N,N’-ジ(5-アミノ-γ-ブチロラクタム)ジスルフィド、N,N’-ジ(δ-バレロラクタム)ジスルフィド、N,N’-ジ(δ-カプロラクタム)ジスルフィド、N,N’-ジ(ε-カプロラクタム)ジスルフィド、N,N’-ジ(3-メチル-δ-カプロラクタム)ジスルフィド、N,N’-ジ(3-エチル-ε-カプロラクタム)ジスルフィド、N,N’-ジ(3-イソプロピル-ε-カプロラクタム)ジスルフィド、N,N’-ジ(δ-メトキシ-ε-カプロラクタム)ジスルフィド、N,N’-ジ(3-エトキシ-ε-カプロラクタム)ジスルフィド、N,N’-ジ(3-クロル-ε-カプロラクタム)ジスルフィド、N,N’-ジ(δ-ニトロ-ε-カプロラクタム)ジスルフィド、N,N’-ジ(3-アミノ-ε-カプロラクタム)ジスルフィド、N,N’-ジ(ω-ヘプタラクタム)ジスルフィド、N,N’-ジ(ω-オクタラクタム)ジスルフィド、ジチオジカプロラクタム、モルホリン・ジスルフィド、N-benzyl-N-[(dibenzylamino)disulfanyl]phenylmethanamine(N,N’-ジチオビス(ジベンジルアミン))などが挙げられる。なかでも、N,N’-ジ(ε-カプロラクタム)ジスルフィドが好ましく、N,N’-ジ(ε-カプロラクタム)ジスルフィドがより好ましい。
【0047】
上記式(1)、(2)で表されるポリスルフィド化合物としては、例えば、ラインケミー社製等の製品を使用できる。
【0048】
上記硫黄供与体(好ましくは上記式(1)及び/又は(2)で表されるポリスルフィド化合物)の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上、更に好ましくは0.7質量部以上、特に好ましくは1質量部以上、最も好ましくは1.2質量部以上、より最も好ましくは1.5質量部以上である。また、上記硫黄供与体(好ましくは上記式(1)及び/又は(2)で表されるポリスルフィド化合物)の含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下、更に好ましくは4質量部以下、特に好ましくは3質量部以下である。上記範囲内にすることで、前記効果がより好適に得られる。
【0049】
上記ゴム組成物は、チウラム系加硫促進剤を含有する。
チウラム系加硫促進剤としては、例えば、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT-N)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTM)、ジペンタメチレンチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムモノスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)、ジペンタメチレンチウラムヘキサスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、ペンタメチレンチウラムテトラスルフィドなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、TOT-N、TMTD、DPTTが好ましく、TOT-Nがより好ましい。
【0050】
チウラム系加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは1.5質量部以上、更に好ましくは2質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下、更に好ましくは5質量部以下、特に好ましくは4質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0051】
上記ゴム組成物は、チアゾール系加硫促進剤を含有することが好ましい。これにより、効果がより良好に得られる傾向がある。
チアゾール系加硫促進剤としては、例えば、2-メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、ジベンゾチアゾリルジスルフィド(MBTS)、2-メルカプトベンゾチアゾールのナトリウム塩、亜鉛塩、銅塩、シクロヘキシルアミン塩、2-(2,4-ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾール、2-(2,6-ジエチル-4-モルホリノチオ)ベンゾチアゾールなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、MBTS、MBTが好ましく、MBTSがより好ましい。
【0052】
チアゾール系加硫促進剤を含有する場合、チアゾール系加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、また、好ましくは8質量部以下、より好ましくは6質量部以下、更に好ましくは4質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0053】
上記ゴム組成物には、チウラム系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤以外の加硫促進剤を使用してもよい。
チウラム系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤以外の加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0054】
加硫促進剤としては、例えば、川口化学(株)、大内新興化学(株)、ラインケミー社製等の製品を使用できる。
【0055】
上記ゴム組成物は、充填剤(補強性充填剤)として、カーボンブラック及び/又は白色充填剤を含有することが好ましい。なかでも、前記効果がより良好に得られるという点から、カーボンブラックを含有することが好ましい。
【0056】
カーボンブラックとしては、N134、N110、N220、N234、N219、N339、N330、N326、N351、N550、N762などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0057】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは80m/g以上、より好ましくは120m/g以上、更に好ましくは130m/g以上である。また、上記NSAは、好ましくは200m/g以下、より好ましくは170m/g以下、更に好ましくは155m/g以下である。上記範囲内にすることで、前記効果がより好適に得られる。
なお、カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、JIS K6217-2:2001によって求められる。
【0058】
カーボンブラックのジブチルフタレート吸油量(DBP)は、好ましくは50ml/100g以上、より好ましくは100ml/100g以上である。また、該DBPは、好ましくは200ml/100g以下、より好ましくは135ml/100g以下である。上記範囲内にすることで、前記効果がより好適に得られる。
なお、カーボンブラックのDBPは、JIS-K6217-4:2001に準拠して測定できる。
【0059】
カーボンブラックとしては、例えば、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱ケミカル(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。
【0060】
カーボンブラックを含有する場合、ゴム成分100質量部に対するカーボンブラックの含有量は、好ましくは30質量部以上、より好ましくは60質量部以上、更に好ましくは80質量部以上、特に好ましくは90質量部以上、最も好ましくは100質量部以上である。該含有量は、好ましくは300質量部以下、より好ましくは250質量部以下、更に好ましくは200質量部以下、特に好ましくは150質量部以下、最も好ましくは120質量部以下である。上記範囲内にすることで、前記効果がより好適に得られる。
【0061】
白色充填剤としては、ゴム工業で一般的に使用されているもの、たとえば、シリカ、炭酸カルシウム、セリサイトなどの雲母、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、クレー、タルク、アルミナ、酸化チタンなどを使用でき、低燃費性の観点から、シリカが好ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0062】
シリカとしては特に限定されず、例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。
【0063】
シリカとしては、例えば、デグッサ社、ローディア社、東ソー・シリカ(株)、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用できる。
【0064】
白色充填剤のNSAは、好ましくは50m/g以上、より好ましくは150m/g以上である。また、該NSAは好ましくは300m/g以下、より好ましくは200m/g以下である。
なお、白色充填剤のNSAは、ASTM D3037-81に準拠して測定できる。
【0065】
白色充填剤を含有する場合、ゴム成分100質量部に対する白色充填剤(好ましくはシリカ)の含有量は、好ましくは10質量部以上、より好ましくは30質量部以上、更に好ましくは50質量部以上である。該含有量は、好ましくは200質量部以下、より好ましくは100質量部以下、更に好ましくは80質量部以下である。
【0066】
上記ゴム組成物において、充填剤(補強性充填剤)100質量%中のカーボンブラックの含有量は、前記性能バランスの観点から、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上である。上限は特に限定されず、100質量%であってもよい。
【0067】
上記ゴム組成物は、白色充填剤を配合する場合、白色充填剤と共にシランカップリング剤を含むことが好ましい。
シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、などのスルフィド系、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、Momentive社製のNXT、NXT-Zなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、などのグリシドキシ系、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシランなどのクロロ系などがあげられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0068】
シランカップリング剤としては、例えば、デグッサ社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)、東レ・ダウコーニング(株)等の製品を使用できる。
【0069】
シランカップリング剤を含有する場合、シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、更に好ましくは3質量部以上である。また、該含有量は、好ましくは20質量部以下、より好ましくは16質量部以下、更に好ましくは12質量部以下である。
【0070】
上記ゴム組成物は、可塑剤を配合してもよい。可塑剤としては特に限定されないが、オイル、液状ポリマー(液状ジエン系重合体)、液状樹脂などが挙げられる。これら可塑剤は、1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0071】
可塑剤のなかでも、オイル、液状ポリマー、及び液状樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、加工性やグリップ性能の観点からオイル及び/又は液状ポリマー(液状ジエン系重合体)がより好ましく、オイルが更に好ましい。
【0072】
なお、上記可塑剤は、環境の面から、多環式芳香族含有量(PCA)が3質量%未満であることが好ましく、1質量%未満であることがより好ましい。該多環式芳香族含有量(PCA)は、英国石油学会346/92法に従って測定される。
【0073】
上記オイルとしては、特に限定されず、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどのプロセスオイル、TDAE、MES等の低PCA(多環式芳香族)プロセスオイル、植物油脂、及びこれらの混合物等、従来公知のオイルを使用できる。これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、アロマ系プロセスオイルが好ましい。上記アロマ系プロセスオイルとしては、具体的には、出光興産(株)製のダイアナプロセスオイルAHシリーズ等が挙げられる。
【0074】
オイルとしては、例えば、出光興産(株)、三共油化工業(株)、(株)ジャパンエナジー、オリソイ社、H&R社、豊国製油(株)、昭和シェル石油(株)、富士興産(株)等の製品を使用できる。
【0075】
上記液状ポリマー(液状ジエン系重合体)とは、常温(25℃)で液体状態のジエン系重合体である。
液状ジエン系重合体は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、1.0×10以上であることが好ましく、3.0×10以上であることがより好ましく、2.0×10以下であることが好ましく、1.5×10以下であることがより好ましい。
なお、本明細書において、液状ジエン系重合体のMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算値である。
【0076】
液状ジエン系重合体としては、液状スチレンブタジエン共重合体(液状SBR)、液状ブタジエン重合体(液状BR)、液状イソプレン重合体(液状IR)、液状スチレンイソプレン共重合体(液状SIR)などが挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0077】
液状ジエン系重合体としては、例えば、サートマー社、(株)クラレ等の製品を使用できる。
【0078】
上記液状樹脂としては、特に制限されないが、例えば、液状の芳香族ビニル重合体、クマロンインデン樹脂、インデン樹脂、テルペン樹脂、ロジン樹脂、またはこれらの水素添加物などが挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0079】
上記液状樹脂としては、例えば、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、ヤスハラケミカル(株)、東ソー(株)、Rutgers Chemicals社、BASF社、アリゾナケミカル社、日塗化学(株)、(株)日本触媒、JXTGエネルギー(株)、荒川化学工業(株)、田岡化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0080】
可塑剤を含有する場合、可塑剤(好ましくはオイル)の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは30質量部以上、より好ましくは40質量部以上、更に好ましくは50質量部以上、特に好ましくは60質量部以上である。また、該含有量は、好ましくは200質量部以下、より好ましくは150質量部以下、更に好ましくは100質量部以下、特に好ましくは80質量部以下である。上記範囲内にすることで、前記効果がより好適に得られる。
なお、可塑剤の含有量には、ゴム(油展ゴム)に含まれるオイルの量も含まれる。
【0081】
上記ゴム組成物は、ステアリン酸を含むことが好ましい。
ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、例えば、日油(株)、NOF社、花王(株)、富士フィルム和光純薬(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。
【0082】
ステアリン酸を含有する場合、ステアリン酸の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、更に好ましくは2.5質量部以下である。上記数値範囲内であると、良好なグリップ性能が得られる傾向がある。
【0083】
上記ゴム組成物は、酸化亜鉛を含有してもよい。
酸化亜鉛としては、従来公知のものを使用でき、例えば、三井金属鉱業(株)、東邦亜鉛(株)、ハクスイテック(株)、正同化学工業(株)、堺化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0084】
酸化亜鉛を含有する場合、酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0085】
上記ゴム組成物は、老化防止剤を含んでもよい。
老化防止剤としては、例えば、フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4′-ビス(α,α′-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N-イソプロピル-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N′-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等のp-フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス-[メチレン-3-(3′,5′-ジ-t-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、p-フェニレンジアミン系老化防止剤、キノリン系老化防止剤が好ましく、p-フェニレンジアミン系老化防止剤がより好ましい。
【0086】
老化防止剤としては、例えば、精工化学(株)、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)、フレクシス社等の製品を使用できる。
【0087】
老化防止剤を含有する場合、老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0088】
上記ゴム組成物は、ワックスを含むことが好ましい。
ワックスとしては、特に限定されず、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス;植物系ワックス、動物系ワックス等の天然系ワックス;エチレン、プロピレン等の重合物等の合成ワックスなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0089】
ワックスとしては、例えば、大内新興化学工業(株)、日本精蝋(株)、精工化学(株)等の製品を使用できる。
【0090】
ワックスを含有する場合、ワックスの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下である。
【0091】
上記ゴム組成物は、硫黄を含むことが好ましい。
硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0092】
硫黄としては、例えば、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0093】
硫黄を含有する場合、硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下、更に好ましくは5質量部以下、特に好ましくは3質量部以下、最も好ましくは2質量部以下である。上記数値範囲内であると、前記効果が良好に得られる傾向がある。
【0094】
上記ゴム組成物には、前記成分の他、タイヤ工業において一般的に用いられている添加剤を配合することができ、硫黄以外の加硫剤(例えば、有機架橋剤、有機過酸化物);等を例示できる。これら各成分の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上であり、好ましくは200質量部以下である。
【0095】
上記ゴム組成物は、例えば、前記各成分をオープンロール、バンバリーミキサーなどのゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法等により製造できる。
【0096】
混練条件としては、架橋剤(加硫剤)及び加硫促進剤以外の添加剤を混練するベース練り工程では、混練温度は、通常100~180℃、好ましくは120~170℃である。加硫剤、加硫促進剤を混練する仕上げ練り工程では、混練温度は、通常120℃以下、好ましくは80~110℃である。また、加硫剤、加硫促進剤を混練した組成物は、通常、プレス加硫などの加硫処理が施される。加硫温度としては、通常140~190℃、好ましくは150~185℃である。
【0097】
上記ゴム組成物は、例えば、トレッド(キャップトレッド)、サイドウォール、ベーストレッド、アンダートレッド、クリンチ、ビードエイペックス、ブレーカークッションゴム、カーカスコード被覆用ゴム、インスレーション、チェーファー、インナーライナー等や、ランフラットタイヤのサイド補強層などのタイヤ部材に(タイヤ用ゴム組成物として)用いることができる。なかでも、トレッドに好適に用いられる。
【0098】
本発明のタイヤ(空気入りタイヤ等)は、上記ゴム組成物を用いて通常の方法によって製造される。すなわち、必要に応じて各種添加剤を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でタイヤの各部材(特に、トレッド(キャップトレッド))の形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、未加硫タイヤを形成した後、加硫機中で加熱加圧してタイヤを製造することができる。
【0099】
なお、上記タイヤのトレッドは、少なくとも一部が上記ゴム組成物で構成されていればよく、全部が上記ゴム組成物で構成されていてもよい。
【0100】
上記タイヤは、乗用車用タイヤ、大型乗用車用、大型SUV用タイヤ、トラック・バス用タイヤ、二輪車用タイヤ、競技用タイヤ、スタッドレスタイヤ(冬用タイヤ)、オールシーズンタイヤ、ランフラットタイヤ、航空機用タイヤ、鉱山用タイヤ等として好適に用いられ、特に競技用タイヤとしてより好適に用いられる。
【実施例
【0101】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0102】
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
SBR:旭化成(株)製のタフデン4850(S-SBR、油展〔ゴム固形分100質量部に対してオイル分50質量部含有〕、スチレン含量:40質量%)
カーボンブラック:東海カーボン(株)製のシースト9 SAF(NSA:142m/g、DBP:115ml/100g)
オイル:H&R社製のアロマ系プロセスオイル(TDAEオイル、Vivatec500)
アルキルフェノール系樹脂:BASF社製のコレシン(p-t-ブチルフェノールアセチレン樹脂(p-t-ブチルフェノールとアセチレンの縮合樹脂)、軟化点145℃、Tg98℃)
老化防止剤:住友化学(株)製のアンチゲン6C(N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン)
ワックス:大内新興化学(株)製のサンノックN
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「椿」
酸化亜鉛:三井金属工業(株)製の酸化亜鉛2種
硫黄:軽井沢硫黄(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤NS:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤DM:大内新興化学工業(株)製のノクセラーDM(ジベンゾチアゾリルジスルフィド)
加硫促進剤TOT:大内新興化学工業(株)製のノクセラーTOT-N(テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド)
加硫促進剤TMTD:大内新興化学工業(株)製のノクセラーTMTD(テトラメチルチウラムジスルフィド)
硫黄供与体CLD-80:ラインケミー社製のレノグランCLD-80(N,N’-ジ(ε-カプロラクタム)ジスルフィド)
【0103】
〔実施例及び比較例〕
表1に示す配合処方にしたがい、バンバリーミキサーを用いて、硫黄、硫黄供与体及び加硫促進剤以外の薬品を165℃で、4分間混練りし、混練り物を得た。次に、オープンロールを用いて、得られた混練り物に硫黄、硫黄供与体及び加硫促進剤を添加し、80℃で、4分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。
【0104】
更に、得られた未加硫ゴム組成物をキャップトレッドの形状に押出し成形し、タイヤ成形機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを形成し、150℃の条件下で20分間プレス加硫し、試験用タイヤ(タイヤサイズ:195/65R15)を得た。
【0105】
得られた未加硫ゴム組成物、試験用タイヤを用いて以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0106】
<ドライグリップ性能>
試験用タイヤを国産FR車(排気量2000cc)の全輪に装着し、1周3kmのドライアスファルト路面のテストコースにて15周実車走行を行った。その際におけるベストラップ時のコントロールをテストドライバーが評価し、比較例1を100として指数表示をした。数値が大きいほどドライ路面におけるグリップ性能が良好であることを示す。
【0107】
<グリップ安定性能>
試験用タイヤを国産FR車(排気量2000cc)の全輪に装着し、1周3kmのドライアスファルト路面のテストコースにて15周実車走行を行った。ベストタイムと、後半の10~15周目の平均ラップタイムの差をグリップ安定性とした。
比較例1を100として指数表示し、数値が大きいほどグリップ安定性能が良好であることを示す。
【0108】
<スコーチタイム>
JIS K 6300-1「未加硫ゴム-物理特性-第1部:ムーニー粘度計による粘度及びスコーチタイムの求め方」に準じて、ムーニー粘度試験機を用いて、1分間の予熱によって熱せられた125℃の温度条件にて、小ローターを回転させ、最低粘度より5ポイント上昇するまでに要する時間(スコーチタイム)を測定した。
【0109】
【表1】
【0110】
表1より、ゴム成分と、アルキルフェノール系樹脂と、加硫時に活性硫黄を放出する硫黄供与体と、チウラム系加硫促進剤とを含む実施例は、ドライグリップ性能を改善しつつ、良好なグリップ安定性能が得られた。
【0111】
比較例4~6、実施例1の対比により、「アルキルフェノール系樹脂」と、「加硫時に活性硫黄を放出する硫黄供与体及びチウラム系加硫促進剤」とを併用することにより、ドライグリップ性能、グリップ安定性能を相乗的に改善できることが分かった。