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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-08
(45)【発行日】2023-08-17
(54)【発明の名称】洗浄用バスケット
(51)【国際特許分類】
   B08B 3/06 20060101AFI20230809BHJP
   B08B 9/023 20060101ALI20230809BHJP
   B08B 9/027 20060101ALI20230809BHJP
【FI】
B08B3/06
B08B9/023
B08B9/027
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019205361
(22)【出願日】2019-11-13
(65)【公開番号】P2021074696
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110685
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 方宜
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 哲也
(72)【発明者】
【氏名】荒木 真隆
(72)【発明者】
【氏名】須賀 亮幸
【審査官】粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0132404(US,A1)
【文献】特開2016-203036(JP,A)
【文献】特開2011-000510(JP,A)
【文献】特表2018-505008(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 3/00-3/14
B08B 9/023-9/027
A61B 90/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングからシャフトが延出する手術支援ロボット用インストゥルメントを被洗浄物として収容して洗浄するために用いられるバスケットであって、
洗浄器に格納された状態において、前記インストゥルメントの水平面内での移動を規制する被洗浄物保持部と、バスケット本体と、前記バスケット本体の開口を覆う蓋材を備え、
前記被洗浄物保持部として、前記ハウジングを保持するハウジング保持部と、前記シャフトを保持するシャフト保持部とを備え、
前記ハウジングは、前記ハウジング保持部と前記バスケット本体の側壁との間で保持され、
前記バスケットに複数個の前記インストゥルメントの設置高さをずらして収容可能となるように前記被洗浄物保持部が設けられており、
前記バスケット本体には、設置高さをずらして配置される複数の前記インストゥルメントの内、上側に配置される前記インストゥルメントのハウジング下面への当接面となる位置に弾性材が設けられ、
前記蓋材には、設置高さをずらして配置される複数の前記インストゥルメントの内、下側に配置される前記インストゥルメントのハウジング上面への当接面となる位置に弾性材が設けられる
ことを特徴とする減圧沸騰機能を備える洗浄器に適用される洗浄用バスケット。
【請求項2】
前記ハウジング保持部は、前記ハウジングの下方側部を支える部材である
ことを特徴とする請求項1に記載の洗浄用バスケット。
【請求項3】
前記シャフト保持部は、前記バスケット本体に設けられ、
前記蓋材には、前記シャフト保持部との間において、前記シャフトの鉛直方向の動きを規制する規制材が設けられている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の洗浄用バスケット。
【請求項4】
前記シャフト保持部は、前記シャフトを係合できる凹溝を形成された部材である
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の洗浄用バスケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術支援ロボットのインストゥルメントを収容して洗浄するのに用いられるバスケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に開示されるように、手術支援ロボットのインストゥルメントの部品を洗浄することが提案されている。
【0003】
しかしながら、インストゥルメントは、比較的大きいため、従来、これを収容可能なバスケットはない。その一方、バスケットなしに洗浄器の槽内にそのまま入れたのでは、液体の流動(特に沸騰による流動)に伴い、インストゥルメントが上下左右等に揺れ動き、損傷をきたすおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-23917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、手術支援ロボットのインストゥルメントを洗浄する際の損傷を防止できるバスケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、ハウジングからシャフトが延出する手術支援ロボット用インストゥルメントを被洗浄物として収容して洗浄するために用いられるバスケットであって、洗浄器に格納された状態において、前記インストゥルメントの水平面内での移動を規制する被洗浄物保持部と、バスケット本体と、前記バスケット本体の開口を覆う蓋材を備え、前記被洗浄物保持部として、前記ハウジングを保持するハウジング保持部と、前記シャフトを保持するシャフト保持部とを備え、前記ハウジングは、前記ハウジング保持部と前記バスケット本体の側壁との間で保持され、前記バスケットに複数個の前記インストゥルメントの設置高さをずらして収容可能となるように前記被洗浄物保持部が設けられており、前記バスケット本体には、設置高さをずらして配置される複数の前記インストゥルメントの内、上側に配置される前記インストゥルメントのハウジング下面への当接面となる位置に弾性材が設けられ、前記蓋材には、設置高さをずらして配置される複数の前記インストゥルメントの内、下側に配置される前記インストゥルメントのハウジング上面への当接面となる位置に弾性材が設けられることを特徴とする減圧沸騰機能を備える洗浄器に適用される洗浄用バスケットである。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、手術支援ロボットのインストゥルメントをバスケットに収容して洗浄することができる。洗浄時には、被洗浄物保持部によりインストゥルメントの水平面内での移動が規制される。従って、洗浄時に液体の流動があっても、インストゥルメントの移動を抑えて、インストゥルメントの損傷を防止することができる。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、インストゥルメントは、ハウジングがハウジング保持部に保持されると共に、シャフトがシャフト保持部に保持される。インストゥルメントのハウジングとシャフトの双方を保持することで、洗浄時のインストゥルメントの移動を抑えて、インストゥルメントの損傷を防止することができる。
請求項1に記載の発明によれば、蓋付きのバスケット内に収容されることで、インストゥルメントの上下方向の移動が規制される。また、インストゥルメントのハウジングは、少なくとも一部が弾性材を介して、バスケットに保持される。そのため、インストゥルメントの損傷を一層確実に防止することができる。
請求項1に記載の発明によれば、複数個のインストゥルメントを上下にずらして配置することで、複数個のインストゥルメントをコンパクトに収容することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記ハウジング保持部は、前記ハウジングの下方側部を支える部材であることを特徴とする請求項1に記載の洗浄用バスケットである。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、ハウジングの下方側部を支えるハウジング保持部により、インストゥルメントをバスケットに容易に保持することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、前記シャフト保持部は、前記バスケット本体に設けられ、前記蓋材には、前記シャフト保持部との間において、前記シャフトの鉛直方向の動きを規制する規制材が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の洗浄用バスケットである。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、インストゥルメントのシャフトは、シャフト保持部と規制材との間で、上下動を規制される。そのため、インストゥルメントの損傷を一層確実に防止することができる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、前記シャフト保持部は、前記シャフトを係合できる凹溝を形成された部材であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の洗浄用バスケットである。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、インストゥルメントのシャフトは、シャフト保持部の凹溝に係合される。凹溝への係合でシャフトを保持することで、容易に確実にシャフトの移動を規制することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の洗浄用バスケットによれば、手術支援ロボットのインストゥルメントを洗浄する際の損傷を防止することができる。特に、液体の振動が大きい洗浄器での洗浄に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施例の洗浄用バスケットを示す概略斜視図であり、バスケット本体に被洗浄物をセットしようとする状態を示している。
図2図1のバスケットの概略平面図であり、バスケット本体に被洗浄物をセットし終えた状態を示している。
図3図1のバスケットへの被洗浄物の収容状態を示す概略縦断面図であり、蓋を閉じる前の状態を示している。
図4図1のバスケットへの被洗浄物の収容状態を示す概略縦断面図であり、蓋を閉じた後の状態を示している。
図5図1のバスケットを用いて被洗浄物を洗浄する洗浄器の一例を示す概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1および図2は、本発明の一実施例の洗浄用バスケット1を示す概略図であり、図1は、被洗浄物をセットしようとする状態を示す斜視図、図2は、被洗浄物をセットし終えた状態を示す平面図であり、それぞれバスケット1の蓋を開けた状態を示している。また、後述するように、バスケット1は網材を用いて構成されるが、一部の網材を省略して示している。さらに、図3および図4は、バスケット1への被洗浄物の収容状態を示す概略縦断面図であり、図3は蓋を閉じる前の状態を示し、図4は蓋を閉じた後の状態を示している。
【0025】
なお、複数出現する同等の部品には、図面上の符号として、数字に添え字「A」または「B」を付しているが、両者を特に区別する必要のない場合、添え字を外した状態で説明する場合がある。たとえば、第一被洗浄物保持部8Aと第二被洗浄物保持部8Bとを特に区別する必要がない場合、単に被洗浄物保持部8ということがある。逆にいえば、以下の説明において、単に被洗浄物保持部8という場合、第一被洗浄物保持部8Aおよび/または第二被洗浄物保持部8Bをいう。ハウジング保持部13(第一ハウジング保持部13A、第二ハウジング保持部13B)、シャフト保持部14(第一シャフト保持部14A、第二シャフト保持部14B)などについても同様である。
【0026】
被洗浄物は、手術支援ロボットのインストゥルメント2である。たとえば、鏡視下手術用ロボット「ダ・ヴィンチ」のインストゥルメント2である。インストゥルメント2は、略矩形箱状のハウジング3と、このハウジング3の一面から略垂直に延出するパイプ状のシャフト4と、このシャフト4の可動先端部5とを備えて構成される。
【0027】
洗浄用バスケット1は、インストゥルメント2を寝かせて配置されるバスケット本体6と、このバスケット本体6の上部開口を開閉する蓋材7と、バスケット本体6に設けられた被洗浄物保持部8(8A,8B)とを備える。なお、図1および図2において、バスケット本体の長手方向を左右方向、バスケット本体の短手方向を前後方向、バスケット本体の高さ方向を上方方向として、以下説明する。
【0028】
バスケット本体6は、上方へ開口した略矩形の箱状に形成されている。本実施例では、バスケット本体6は、金属(たとえばステンレス)製であり、線材で形成された枠材に網材が張られて構成される。これにより、前後左右の各側壁6a~6dおよび下壁6eがそれぞれ網状に形成されて、全体として上方へ開口した略矩形の箱状に形成される。なお、図示例では、左右の側壁6c,6dの前後方向中央部は、左右方向外側へ突出して形成される一方、前壁6aの左右方向中央部は、後方へ凹んで形成されている。
【0029】
蓋材7は、略矩形の板状に形成されている。本実施例では、バスケット本体6の上部開口と略対応した形状(大きさ)とされている。また、蓋材7は、バスケット本体6と同様に、金属製であり、線材で形成された枠材に網材が張られて構成される。蓋材7は、バスケット本体6の後壁6b上部に、ヒンジ9を介して、バスケット本体6に対し開閉可能に設けられる。
【0030】
バスケット本体6の上部開口を蓋材7で閉じた状態で、バスケット本体6に対し蓋材7を係止可能とされている。この係止具として、図示例ではパチン錠10が用いられている。この場合、バスケット本体6には、前端部にはパチン錠10が設けられる一方、蓋材7には、ヒンジ9と対向する端辺に被係止部11が設けられる。バスケット本体6の上部開口を閉じるように蓋材7を配置した状態で、蓋材7の被係止部11にパチン錠10の係止部10aを引っ掛けて、レバー10bを押し下げることで、バスケット本体6に蓋材7を着脱可能に固定することができる。
【0031】
バスケット本体6に対し蓋材7を閉めた状態で、蓋材7の上面となる位置には、取手12が設けられている。この取手12を用いて、バスケット1を容易に持ち運ぶことができる。取手12は、蓋材7の上面に沿うように倒すことができる。
【0032】
被洗浄物保持部8は、バスケット本体6の内側に設けられ、バスケット本体6に対しインストゥルメント2の水平面内での移動を規制する。バスケット1には、典型的には複数個のインストゥルメント2を収容可能に、被洗浄物保持部8が複数設けられている。図示例では、二つのインストゥルメント2(第一インストゥルメント2A、第二インストゥルメント2B)を収容可能に、二組の被洗浄物保持部8(第一被洗浄物保持部8A、第二被洗浄物保持部8B)を設けているが、後述するように、実際にはこれと同様の構成のものを前後に複数設けてもよい。
【0033】
各被洗浄物保持部8は、インストゥルメント2の前後左右の移動を規制できれば、その構成を特に問わない。本実施例では、被洗浄物保持部8として、ハウジング3を保持するハウジング保持部13(13A,13B)と、シャフト4を保持するシャフト保持部14(14A,14B)とを備える。
【0034】
図示例では、第一インストゥルメント2Aが、左前方にハウジング3を配置すると共に、そのハウジング3から右後方へシャフト4を延出して配置されるが、この第一インストゥルメント2Aを保持するために、第一ハウジング保持部13Aと、第一シャフト保持部14Aとが設けられる。また、第二インストゥルメント2Bが、右前方にハウジング3を配置すると共に、そのハウジング3から左後方へシャフト4を延出して配置されるが、この第二インストゥルメント2Bを保持するために、第二ハウジング保持部13Bと、第二シャフト保持部14Bとが設けられる。
【0035】
各ハウジング保持部13(13A,13B)は、インストゥルメント2のハウジング3をバスケット本体6に対し位置決めする部材である。本実施例では、ハウジング保持部13は、ハウジング3の下方側部を支える部材である。より具体的には、ハウジング保持部13は、合成樹脂(たとえばナイロン)から形成され、一片13xと他片13yとで平面視略L字形状に形成される(図2)。そして、この略L字形状の部材は、所望により取付金具15を介して、バスケット本体6の下壁6eに固定される。図示例では、各ハウジング保持部13は、バスケット本体6内の左前方と右前方とに、左右対称に設けられる。
【0036】
図2において、第一ハウジング保持部13Aは、一片13xと他片13yとの連接部を起点に、一片13xは左側へ行くに従ってやや前方へ向けて配置され、他片13yは後方へ行くに従ってやや左側へ向けて配置される。一方、第二のハウジング保持部13Bは、一片13xと他片13yとの連接部を起点に、一片13xは右側へ行くに従ってやや前方へ向けて配置され、他片13yは後方へ行くに従ってやや右側へ向けて配置される。
【0037】
バスケット本体6内には、各ハウジング保持部13の一片13xと他片13yとで形成される角部に、ハウジング3の一つの角部を合わせて、インストゥルメント2が収容される。その際、図2に示すように、第一ハウジング保持部13Aに保持される第一インストゥルメント2Aは、シャフト4を右後方へ延出するよう配置され、第二ハウジング保持部13Bに保持される第二インストゥルメント2Bは、シャフト4を左後方へ延出するよう配置される。また、詳細は後述するが、第二インストゥルメント2Bのシャフト4は、第一インストゥルメント2Aのシャフト4よりも上方に配置されて、平面視でX状に交差される。
【0038】
図2の平面視において、各ハウジング保持部13の角部に各ハウジング3の第一の角部を合わせた保持状態において、第一の角部と対角線上の第二の角部は、バスケット本体6の左右の側壁6c,6dに当接または近接して配置される。これにより、ハウジング保持部13とバスケット本体6の側壁6c,6dとの間で、ハウジング3を保持することができる。つまり、ハウジング3は、ハウジング保持部13とバスケット本体6の側壁6c,6dとに挟まれて、水平面内での移動を規制される。
【0039】
各シャフト保持部14(14A,14B)は、インストゥルメント2のシャフト4をバスケット本体6に対し位置決めする部材である。本実施例では、シャフト保持部14は、合成樹脂(たとえばナイロン)から形成され、略直方体状に形成される。そして、この直方体状の部材は、所望により取付金具を介して、バスケット本体6の下壁6eに固定される。図示例では、各シャフト保持部14は、バスケット本体6内において、左右対称に設けられる。
【0040】
シャフト保持部14には、上方へ開口して凹溝14xが形成されている。この凹溝14xには、ハウジング保持部13に保持されるハウジング3からのシャフト4がはめ込まれる。シャフト4の延出方向に沿って、シャフト保持部14に凹溝14xを形成するのが好ましい。また、凹溝14xの溝幅をシャフト4の直径に合わせることで、凹溝14xにシャフト4が略適合してはめ込まれるのが好ましい。
【0041】
第一インストゥルメント2Aのシャフト4を保持する第一シャフト保持部14Aは、次のとおりである。すなわち、左前方のハウジング3から右後方へ延出するシャフト4を保持するシャフト保持部14Aは、ハウジング保持部13よりも後方で、且つ、好ましくはバスケット本体6の左右方向中央部よりも右側に設けられる。
【0042】
第二インストゥルメント2Bのシャフト4を保持する第二シャフト保持部14Bは、次のとおりである。すなわち、右前方のハウジング3から左後方へ延出するシャフト4を保持するシャフト保持部14Bは、ハウジング保持部13よりも後方で、且つ、好ましくはバスケット本体6の左右方向中央部よりも左側に設けられる。
【0043】
第二インストゥルメント2Bのシャフト4は、第一インストゥルメント2Aのシャフト4よりも上方に配置されるように、「シャフト保持部14の高さ」および/または「シャフト保持部14の上面からの凹溝14xの深さ」が調整されている。言い換えれば、バスケット本体6の下壁6eを基準として、左右のシャフト保持部14の各凹溝14xの底部の高さを異ならせている。ここでは、第二シャフト保持部14Bの凹溝14xの底部の高さ位置は、第一シャフト保持部14Aの凹溝14xの底部の高さ位置よりも高くなるよう形成されている。
【0044】
いずれにしても、バスケット本体6へのインストゥルメント2の収容状態において、シャフト4は略水平に配置されるか、先端側(ハウジング3から離隔する側)へ行くに従ってやや上方へ傾斜するよう配置されるのが好ましい。
【0045】
バスケット本体6および/または蓋材7には、ハウジング3への当接面となる位置に、弾性材16(16A,16B)を設けるのが好ましい。本実施例では、第一ハウジング保持部13Aについて、ここに保持されるハウジング3の上面と蓋材7との間に、第一弾性材16Aが設けられる。具体的には、蓋材7には、バスケット本体6の開口部を閉じた際に下面となる側で、且つハウジング3の上面と少なくとも一部が重なる位置に、第一弾性材16Aが設けられる。
【0046】
また、第二ハウジング保持部13Bについては、ここに保持されるハウジング3の下面とバスケット本体6の下壁6eとの間に、第二弾性材16Bが設けられる。具体的には、バスケット本体6の下壁6eの上面には、ハウジング3の下面と少なくとも一部が重なる位置に、第二弾性材16Bが設けられる。
【0047】
各弾性材16は、弾力性を備えるのであれば、その構成を特に問わない。本実施例では、各弾性材16は、たとえばシリコーン(シリコンゴム)から構成される。また、本実施例では、弾性材16は、図3に示すように、マット状の基材16xの片面に、複数本の柔軟なヒゲ16yが延出して一体形成されている。各ヒゲ16yは、先細りに形成されており、基材16xに等間隔に配置され、互いに同一の構成とされる。そして、弾性材16は、金属製の取付板17に基材16xが重ね合されて固定され、取付板17が蓋材7またはバスケット本体6に固定される。なお、基材16x(および取付板17)には、所望により、適宜の貫通孔が形成されていてもよい。
【0048】
蓋材7には、シャフト保持部14との間でシャフト4の上下動(鉛直方向の動き)を規制する規制材18を設けるのが好ましい。本実施例の場合、規制材18は、蓋材7の第一弾性材16Aと同様の構成で設けられる。具体的には、規制材18は、たとえばシリコーン(シリコンゴム)から構成され、基材18xにヒゲ18yが設けられてなる。そして、基材18xが取付板19に重ね合されて、蓋材7に固定される。規制材18の取付板19に脚部20が設けられ、その脚部20を介して規制材18が蓋材7に設けられる。
【0049】
以下、本実施例の洗浄用バスケット1の使用方法について説明する。
図1図3に示すように、本実施例のバスケット1にインストゥルメント2を収容する際、まずは第一ハウジング保持部13Aに、第一インストゥルメント2Aのハウジング3を保持する。このハウジング3からのシャフト4は、第一シャフト保持部14Aの凹溝14xにはめ込まれて係合され、略水平に保持される。その後、第二ハウジング保持部13Bに、第二インストゥルメント2Bのハウジング3を保持する。このハウジング3からのシャフト4は、第二シャフト保持部14Bの凹溝14xにはめ込まれて係合され、略水平に保持される。
【0050】
第二インストゥルメント2Bは、ハウジング3が第二弾性材16Bの上に保持されると共に、第二シャフト保持部14Bの凹溝14xの底部の高さ(バスケット本体6の下壁6eからの高さ)との関係で、第一インストゥルメント2Aよりもやや上方に配置される。しかも、図示例では、各インストゥルメント2のシャフト4同士は、交差するよう配置される。
【0051】
その状態で蓋材7を閉めると、図4に示すように、第一インストゥルメント2Aのハウジング3の上面には、第一弾性材16Aが配置される。また、第二インストゥルメント2Bのシャフト4の上部には、規制材18が配置される。第二インストゥルメント2Bのシャフト4の上下方向の移動を規制することで、それと交差する第一インストゥルメント2Aのシャフト4の上下方向の移動も規制される。但し、第一インストゥルメント2Aのシャフト4について、別途蓋材7に規制材18を設けて、各シャフト4の上下動を個別に規制してもよい。
【0052】
各インストゥルメント2は、ハウジング保持部13とシャフト保持部14とにより、水平面内での移動が規制される。また、バスケット本体6の上部開口が蓋材7で閉じられることで、上下方向の移動が規制される。但し、ハウジング3の上下片面には弾性材16が設けられており、この弾性材16が金網との間のクッション材として機能する。さらに、シャフト4は、シャフト保持部14と規制材18との間で、上下方向の移動を規制される。
【0053】
また、一つのバスケット1に複数個のインストゥルメント2を収容する場合でも、インストゥルメント2の設置高さをずらしたり、バスケット本体6の平面視でシャフト4を斜めに配置して交差させたりすることで、コンパクトに複数のインストゥルメント2を収容することができる。それにより、一回の運転で洗浄できるインストゥルメント2の個数を増加させることができる。
【0054】
このようにしてバスケット1に収容されたインストゥルメント2は、バスケット1ごと洗浄器の洗浄槽内の貯留液に浸漬されて、洗浄を図られる。なお、洗浄には、文字通りの洗浄の他、濯ぎや除染を含んでもよい。典型的には、被洗浄物は、洗浄後、濯ぎがなされ、所望により除染される。洗浄、濯ぎおよび除染は、基本的には同様の処理であるが、浸漬処理時の液体(水に添加する薬液の有無や種類)を変更したり、液体の温度を変更したりする場合がある。
【0055】
図5は、洗浄器21の一例を示す概略縦断面図である。図示例の洗浄器21は、液体が貯留される洗浄槽22と、この洗浄槽22内の貯留液を加熱する加熱手段23と、洗浄槽22内を減圧する減圧手段24と、減圧下の液相部へ外気を導入する液相給気手段25と、減圧下の気相部へ外気を導入する気相給気手段26と、これら各手段を制御する制御手段(図示省略)とを備える。減圧手段24は真空発生装置27を備え、液相給気手段25はフィルタ28および液相給気弁29を備え、気相給気手段26はフィルタ30および気相給気弁31を備える。
【0056】
一または複数のインストゥルメント2が収容されたバスケット1は、洗浄槽22内に格納される。本実施例では、バスケット1は、洗浄槽22内の敷材32に載せられ、洗浄槽22のドア22aが気密に閉じられる。バスケット1は、上下に複数段重ねてもよい。バスケット1の上部には押え材33が配置され、押え材33はドア22aに当接されることで上下動を規制されるので、バスケット1の上下動も規制される。
【0057】
洗浄器21は、バスケット1が浸漬されるまで液体が貯留された状態で、洗浄運転を実行する。洗浄運転では、「貯留液の加熱」および/または「洗浄槽22内の減圧」による貯留液の沸騰を伴って被洗浄物(インストゥルメント2)を洗浄する。また、沸騰中に液相給気手段25や気相給気手段26による給気を伴ってもよい。貯留液の沸騰中に液相部に給気して、突沸を起こすこともできる。
【0058】
前述したとおり、インストゥルメント2は、蓋付きのバスケット1に収容されているので、上下方向の移動が規制される。しかも、インストゥルメント2のハウジング3は、上下少なくとも一方の面に弾性材16が配置されるので、弾性材16の弾性により上下動の衝撃が緩和される。また、インストゥルメント2のシャフト4は、シャフト保持部14と規制材18とに挟まれて、上下動が規制されると共に、規制材18の弾性により上下動の衝撃が緩和される。さらに、インストゥルメント2は、ハウジング保持部13とシャフト保持部14とにより、前後左右の移動も規制される。このようにして、洗浄槽22内の貯留液に沸騰などにより流動が生じても、インストゥルメント2の移動を抑えて、インストゥルメント2の損傷を防止することができる。
【0059】
また、各インストゥルメント2は、洗浄中、主としてハウジング3側から内部に給排水される。ところが、本実施例では、各インストゥルメント2は、シャフト4が水平に配置されるか、先端側をやや上方へ傾けて配置されるので、洗浄槽22内からの排水時にシャフト4内に洗浄液が滞留しにくくなり、シャフト4内の液体の循環効率がよくなるため、洗浄液の残留を削減することができる。
【0060】
ところで、上記実施例では、二本のインストゥルメント2をバスケット1内に収容する例を示したが、収容する本数は、一本でもよいし、三本以上でもよい。たとえば、図2において、バスケット本体6の左側には、複数のハウジング保持部13(第一ハウジング保持部13A)を前後に離隔して配置してもよい。そして、各ハウジング保持部13に対応して、シャフト保持部14(第一シャフト保持部14A)を設ければよい。これにより、複数のインストゥルメント2を、左側にハウジング3を配置しつつ、右後方へシャフト4を延出させて、平行に配置することができる。
【0061】
同様に、図2において、バスケット本体6の右側には、複数のハウジング保持部13(第二ハウジング保持部13B)を前後に離隔して配置してもよい。そして、各ハウジング保持部13に対応して、シャフト保持部(第二シャフト保持部14B)を設ければよい。これにより、複数のインストゥルメント2を、右側にハウジング3を配置しつつ、左後方へシャフト4を延出させて、平行に配置することができる。この際、右側のハウジング3からの各シャフト4は、左側のハウジング3からの各シャフト4と、上下にずらして配置される。
【0062】
さらに、バスケット1内のスペースの有効活用のため、バスケット本体6内の最後部に配置されるハウジング保持部13は、最前部に配置されるハウジング保持部13と前後対称に配置してもよい。その場合、左側最後部に配置されるハウジング3からのシャフト4は、右前方へ向けて配置され、右側最後部に配置されるハウジング3からのシャフト4は、左前方へ向けて配置される。その際、左側最後部に配置されるハウジング3からのシャフト4は、右側最後部に配置されるハウジング3からのシャフト4と、上下にずらして配置される。バスケット1内に収容するインストゥルメント2に応じて、弾性材16や規制材18を追加してもよいことは言うまでもない。
【0063】
本発明の洗浄用バスケット1は、前記実施例の構成に限らず適宜変更可能である。特に、ハウジング3からシャフト4が延出する手術支援ロボット用インストゥルメント2を被洗浄物として収容して洗浄するために用いられるバスケット1であって、洗浄器21(より具体的にはその洗浄槽22)に格納された状態において、インストゥルメント2の水平面内での移動を規制する被洗浄物保持部8を備えるのであれば、その他の構成は適宜に変更可能である。
【0064】
たとえば、前記実施例では、バスケット本体6および蓋材7は、網状の部材を用いて構成されたが、場合により、多孔板状の部材を用いて構成されてもよい。また、前記実施例では、バスケット本体6は上方へ開口しており、その上部開口を蓋材7で閉じる構成としたが、バスケット1は、上部以外を蓋材7で開閉されてもよい。
【0065】
また、前記実施例では、バスケット本体6の後端部にヒンジ9を介して蓋材7を開閉可能に設けたが、次のようにしてもよい。すなわち、ヒンジ9での接続を止めて、バスケット本体6と蓋材7とを完全に分離可能に構成してもよい。その場合、バスケット1の蓋を閉じるには、バスケット本体6の上部開口に合わせて蓋材7を配置した状態で、バスケット本体6の前後(および/または左右)などにおいて、パチン錠10などの係止具により、バスケット本体6に蓋材7を着脱可能に係止すればよい。たとえば、バスケット本体6の上部開口に蓋材7(バスケット本体6に対し完全分離した構成の蓋材7)を置いて、周囲複数箇所(たとえば四箇所)において、パチン錠10でバスケット本体6に蓋材7を着脱可能に係止すればよい。なお、パチン錠10をバスケット本体6に設ける一方、被係止部11を蓋材7に設けたが、これとは逆に、パチン錠10を蓋材7に設ける一方、被係止部11をバスケット本体6に設けてもよい。このことは、前記実施例でも同様である。
【0066】
また、前記実施例において、バスケット1内に収容するインストゥルメント2の本数や配置方法は、適宜に変更可能である。たとえば、前記実施例では、第二インストゥルメント2Bのシャフト4を第一インストゥルメント2Aのシャフト4よりも上方にして交差させたが、これとは逆に、第一インストゥルメント2Aのシャフト4を第二インストゥルメント2Bのシャフト4よりも上方にして交差させてもよい。インストゥルメント2の配置高さは、バスケット本体6の下壁6eに設ける弾性材16の有無や高さの他、シャフト保持部14の凹溝14xの底部の高さで調整することができる。
【0067】
また、前記実施例では、バスケット1内に複数のインストゥルメント2を収容する際、各インストゥルメント2のシャフト4を交差させたが、必ずしも交差させる必要はない。たとえば、各インストゥルメント2は、シャフト4を左右へ向けて配置してもよい。
【0068】
また、前記実施例では、各インストゥルメント2について、シャフト保持部14を一つ設けて、一箇所でシャフト4を保持したが、シャフト保持部14を複数設けて、複数箇所でシャフト4を保持してもよい。たとえば、シャフト4の基端部と先端部との二箇所で保持してもよい。その場合において、ハウジング保持部13を構成する部材に凹溝14x(シャフト4の基端部がはめ込まれる凹溝14x)を設けて、シャフト4の基端部を保持するようにしてもよい。
【0069】
また、前記実施例では、各インストゥルメント2は、ハウジング3の上下片面が弾性材16で保持されたが、上下両面(および/または側面)が弾性材16で保持されてもよい。
【0070】
また、前記実施例では、弾性材16および規制材18は、マット状の基材16x,18xにヒゲ16y,18yを設けたが、ヒゲ16y,18yに代えてその他の形状の凸部を設けてもよい。あるいは、場合により、ヒゲ16y,18yの設置を省略して、単なるマット状としてもよい。
【0071】
また、前記実施例では、バスケット1内には、同じ大きさのインストゥルメント2を収容する例を示したが、異なる大きさ、種類のインストゥルメント2を収容可能に構成してもよい。
【0072】
さらに、前記実施例では、沸騰を伴う洗浄器21に本発明を適用した例を示したが、インストゥルメント2を液中に配置して洗浄するのであれば、洗浄器21の構成は特に問わない。たとえば、前記実施例のような減圧沸騰機能の他、超音波洗浄機能、ブロワなどを用いて貯留液に気泡を吹き込む機能、もしくはポンプなどを用いて貯留液を強制的に流動させる機能の内、いずれか複数の機能を備える洗浄器、またはいずれかの機能のみを備える洗浄器にも同様に本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0073】
1 バスケット
2 インストゥルメント(2A:第一インストゥルメント、2B:第二インストゥルメント)
3 ハウジング
4 シャフト
5 先端部
6 バスケット本体(6a:前側壁、6b:後側壁、6c:左側壁、6d:右側壁、6e:下壁)
7 蓋材
8 被洗浄物保持部(8A:第一被洗浄物保持部、8B:第二被洗浄物保持部)
9 ヒンジ
10 パチン錠(10a:係止部、10b:レバー)
11 被係止部
12 取手
13 ハウジング保持部(13A:第一ハウジング保持部、13B:第二ハウジング保持部、13x:一片、13y:他片)
14 シャフト保持部(14A:第一シャフト保持部、14B:第二シャフト保持部、14x:凹溝)
15 取付金具
16 弾性材(16A:第一弾性材、16B:第二弾性材、16x:基材、16y:ヒゲ)
17 取付板
18 規制材(18x:基材、18y:ヒゲ)
19 取付板
20 脚部
21 洗浄器
22 洗浄槽(22a:ドア)
23 加熱手段
24 減圧手段
25 液相給気手段
26 気相給気手段
27 真空発生装置
28 フィルタ
29 液相給気弁
30 フィルタ
31 気相給気弁
32 敷材
33 押え材
図1
図2
図3
図4
図5