(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-10
(45)【発行日】2023-08-21
(54)【発明の名称】コネクタ及びワイヤーハーネス
(51)【国際特許分類】
H01R 13/11 20060101AFI20230814BHJP
H01R 13/405 20060101ALI20230814BHJP
【FI】
H01R13/11 C
H01R13/405
(21)【出願番号】P 2019183518
(22)【出願日】2019-10-04
【審査請求日】2022-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000231073
【氏名又は名称】日本航空電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(74)【代理人】
【識別番号】100129953
【氏名又は名称】岩瀬 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100154900
【氏名又は名称】関 京悟
(72)【発明者】
【氏名】田中 理司
【審査官】濱田 莉菜子
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-127611(JP,A)
【文献】米国特許第05306177(US,A)
【文献】実開昭61-101978(JP,U)
【文献】特開2006-164682(JP,A)
【文献】特開2014-235793(JP,A)
【文献】特開2002-203626(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R13/04-13/05
H01R13/10-13/11
H01R13/193
H01R13/40-13/533
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンタクトと、
前記コンタクトを保持するハウジングと、
を備え、
前記ハウジングは、前記コンタクトを弾性変形した状態で保持する、
コネクタであって、
前記コンタクトは、
前記ハウジングに固定される被固定部と、
前記被固定部から離れるように前記被固定部から延びる第1延長部と、
前記被固定部に近づくように前記第1延長部から延びる第2延長部と、
を有し、
前記第2延長部が前記ハウジングと接触することで前記コンタクトが弾性変形して
おり、
前記第2延長部は、前記第1延長部を向く内方面を有し、
前記第2延長部の前記内方面が前記ハウジングと接触することで前記コンタクトが弾性変形しており、
前記第2延長部は、幅広部を有し、
前記コンタクトは、前記幅広部と前記被固定部との間において、前記幅広部よりも幅が狭い幅狭部を有し、
前記幅広部の前記内方面が前記ハウジングと接触することで前記コンタクトが弾性変形しており、
前記ハウジングは、前記コンタクトの幅方向において前記コンタクトと対向するコンタクト対向壁を有し、
前記コンタクト対向壁は、前記幅広部の前記内方面と接触可能な接触面を有し、
前記接触面は、前記コンタクトの幅方向に沿って見ると、前記被固定部に近づくにつれて前記第1延長部に近づくように傾斜するように延びている、
コネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のコネクタであって、
前記ハウジングは、
前記コンタクトの前記被固定部をインサート成形又は圧入により保持するコンタクト保持部と、
前記コンタクト保持部と連結可能に構成され、前記コンタクト対向壁を有するコンタクト収容部と、
を含む、
コネクタ。
【請求項3】
請求項2に記載のコネクタであって、
前記コンタクト収容部は、相手コネクタを受け入れる相手コネクタ収容空間を有し、
前記第2延長部は、前記第1延長部を挟んで前記相手コネクタ収容空間と反対側に配置されている、
コネクタ。
【請求項4】
請求項1から請求項3までの何れか1項に記載のコネクタと、
前記コンタクトに半田結線される電線と、
を備えた、
ワイヤーハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタ及びワイヤーハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(国際公開第2006/062578号)は、本願の
図16に示すように、主として1000BASE-Tや1000BASE-TXに用いられるCategory 6に対応した通信コネクタのジャック100を開示している。具体的には、ジャック100は、配線板101と複数の接触ワイヤ102を備えている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、コンタクトが弾性変形された状態でハウジングに保持されるコネクタのダウンサイジング技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本願発明の観点によれば、コンタクトと、前記コンタクトを保持するハウジングと、を備え、前記ハウジングは、前記コンタクトを弾性変形した状態で保持する、コネクタであって、前記コンタクトは、前記ハウジングに固定される被固定部と、前記被固定部から離れるように前記被固定部から延びる第1延長部と、前記被固定部に近づくように前記第1延長部から延びる第2延長部と、を有し、前記第2延長部が前記ハウジングと接触することで前記コンタクトが弾性変形している、コネクタが提供される。
好ましくは、前記第2延長部は、前記第1延長部を向く内方面を有し、前記第2延長部の前記内方面が前記ハウジングと接触することで前記コンタクトが弾性変形している。
好ましくは、前記第2延長部は、幅広部を有し、前記コンタクトは、前記幅広部と前記被固定部との間において、前記幅広部よりも幅が狭い幅狭部を有し、前記幅広部の前記内方面が前記ハウジングと接触することで前記コンタクトが弾性変形している。
好ましくは、前記ハウジングは、前記コンタクトの幅方向において前記コンタクトと対向するコンタクト対向壁を有し、前記コンタクト対向壁は、前記幅広部の前記内方面と接触可能な接触面を有し、前記接触面は、前記コンタクトの幅方向に沿って見ると、前記被固定部に近づくにつれて前記第1延長部に近づくように傾斜するように延びている。
好ましくは、前記ハウジングは、前記コンタクトの前記被固定部をインサート成形又は圧入により保持するコンタクト保持部と、前記コンタクト保持部と連結可能に構成され、前記コンタクト対向壁を有するコンタクト収容部と、を含む。
好ましくは、前記コンタクト収容部は、相手コネクタを受け入れる相手コネクタ収容空間を有し、前記第2延長部は、前記第1延長部を挟んで前記相手コネクタ収容空間と反対側に配置されている。
好ましくは、ワイヤーハーネスは、上記のコネクタと、前記コンタクトに半田結線される電線と、を備える。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、コンタクトが弾性変形された状態でハウジングに保持されるコネクタのダウンサイジングが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】産業用I/Oコネクタの嵌合前の状態を示す一部切り欠き斜視図である。
【
図4】コンタクトアセンブリの一部切り欠き斜視図である。
【
図7】コンタクトサブアセンブリの部分側面図である。
【
図8】コンタクトサブアセンブリの部分平面図である。
【
図9】コンタクト収容部の一部切り欠き斜視図である。
【
図11】コンタクトアセンブリの組立前の状態を示す側面断面図である。
【
図12】コンタクトアセンブリの組立後の状態を示す側面断面図である。
【
図14】電線にロケータを取り付けた状態の斜視図である。
【
図15】電線にコンタクトアセンブリを取り付けた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、
図1から
図15を参照して、本願発明の実施形態を説明する。
【0008】
図1には、コネクタ組立体としての産業用I/Oコネクタ1を示している。産業用I/Oコネクタ1は、電線2を基板3に接続する所謂電線対基板接続用コネクタである。本実施形態において、産業用I/Oコネクタ1及び電線2は、Cat5eに準拠した高速データ通信に対応したものである。また、産業用I/Oコネクタ1は、国際規格IEC61076-3-122に準拠したものである。しかしながら、産業用I/Oコネクタ1及び電線2は、Cat5e以外のカテゴリーに準拠したものであってもよく、産業用I/Oコネクタ1は国際規格IEC61076-3-122に準拠したものに限られない。
【0009】
図1に示すように、産業用I/Oコネクタ1は、電線2に取り付けられる電線側コネクタとしてのプラグ4と、基板3のコネクタ搭載面3Aに搭載される基板側コネクタとしてのレセプタクル5と、により構成されている。
【0010】
国際規格IEC61076-3-122で規定された要求の一例として、プラグ4の各コンタクトとレセプタクル5の各コンタクトは、互いに2点で接触することが求められる。しかしながら、本実施形態では、コンタクト間の接触態様は任意であって、例えば1点のみで接触する接触態様も採用し得る。
【0011】
(レセプタクル5)
図1に示すように、レセプタクル5は、複数のレセプタクルコンタクト10と、複数のレセプタクルコンタクト10を保持するレセプタクルハウジング11と、レセプタクルハウジング11を覆うシールド12と、を備えている。
【0012】
ここで、
図1を参照して、挿抜方向、高さ方向、ピッチ方向を定義する。挿抜方向、高さ方向、ピッチ方向は、互いに直交する方向である。
【0013】
挿抜方向は、プラグ4をレセプタクル5に挿抜する方向である。挿抜方向は、プラグ4をレセプタクル5に嵌合する嵌合方向と、嵌合方向と反対の方向であって、プラグ4をレセプタクル5から抜去する抜去方向と、を含む。
【0014】
高さ方向は、基板3のコネクタ搭載面3Aに対して直交する方向である。高さ方向は、上方と下方を含む。上方は、基板3からレセプタクル5を見る方向である。下方は、レセプタクル5から基板3を見る方向である。
【0015】
ピッチ方向は、挿抜方向及び高さ方向に直交する方向である。
【0016】
複数のレセプタクルコンタクト10は、高さ方向に離れた2列を構成するように配置されている。2列のうち上方の列に含まれる複数のレセプタクルコンタクト10は、ピッチ方向において所定の間隔で配置されている。同様に、2列のうち下方の列に含まれる複数のレセプタクルコンタクト10は、ピッチ方向において所定の間隔で配置されている。所定の間隔は、例えば、1.27mmであるがこれに限定されない。
【0017】
(プラグ4)
図2に示すように、プラグ4は、プラグ本体15、2つのフード16、解除レバー17により構成されている。2つのフード16は、例えばポリアミドなどの絶縁樹脂製であって、プラグ本体15をピッチ方向で挟んだ状態で互いに結合可能に構成されている。解除レバー17は、プラグ4とレセプタクル5の嵌合状態を解除するためのレバーであって、2つのフード16が互いに結合した状態で、プラグ本体15に対して挿抜方向でスライド自在に配置される。ポリアミドは、典型的にはナイロン66(登録商標)である。
【0018】
図3に示すように、プラグ本体15は、コンタクトアセンブリ20、メインシールド21、サブシールド22、ロケータ23、ブーツアセンブリ24を備えている。
【0019】
メインシールド21及びサブシールド22は、例えばSUS304などの金属製であって、コンタクトアセンブリ20を覆うように配置される電磁シールドとして機能する。
【0020】
ロケータ23は、例えばポリアミドなどの絶縁樹脂製であって、電線2が含む複数の信号線P1を整列させるのに用いられる。
【0021】
ブーツアセンブリ24は、例えばPVC製であって、電線2の耐屈曲性を確保する。
【0022】
なお、本実施形態において電線2は、4対の撚対線とされた複数の信号線P1を編組及びシースP2で覆って構成されている。
【0023】
図4及び
図5に示すように、コンタクトアセンブリ20は、コンタクト収容部30とコンタクトサブアセンブリ31により構成されている。コンタクトサブアセンブリ31は、複数のプラグコンタクト32(コンタクト)とコンタクト保持部33により構成されている。
図4に示すように、コンタクト収容部30とコンタクト保持部33は、複数のプラグコンタクト32を保持するハウジングHを構成している。
【0024】
図5に示すように、複数のプラグコンタクト32は、
図1に示すレセプタクル5の複数のレセプタクルコンタクト10と同様、高さ方向に離れた2列を構成するように配置されている。2列のうち上方の列に含まれる複数のプラグコンタクト32は、ピッチ方向において所定の間隔で配置されている。同様に、2列のうち下方の列に含まれる複数のプラグコンタクト32は、ピッチ方向において所定の間隔で配置されている。所定の間隔は、例えば、1.27mmであるがこれに限定されない。
【0025】
複数のプラグコンタクト32は、同一の形状を有している。複数のプラグコンタクト32のうち上方に配置された4つのプラグコンタクト32と、下方に配置された4つのプラグコンタクト32は、上下逆となるように配置されている。従って、以下、複数のプラグコンタクト32を説明するに際し、複数のプラグコンタクト32のうち上方に配置された4つのプラグコンタクト32のうち、最も紙面手前側に配置されたプラグコンタクト32についてのみ説明し、他のプラグコンタクト32の説明は省略する。
【0026】
図6に示すように、プラグコンタクト32は、例えばコルソン銅などの銅合金にニッケルと金を順にメッキしたものであって、接触部40、被固定部41、電線接続部42により構成されている。接触部40、被固定部41、電線接続部42は、抜去方向においてこの記載順となるように連なっている。従って、接触部40は被固定部41から嵌合方向に延びている。同様に、電線接続部42は、被固定部41から抜去方向に延びている。
【0027】
接触部40は、レセプタクル5の各レセプタクルコンタクト10と電気的に接触する部分であって、コンタクト保持部33に覆われることなく露出している。接触部40は、被固定部41によって片持梁状に支持されている。
【0028】
被固定部41は、例えばインサート成形によりコンタクト保持部33に保持される部分であって、コンタクト保持部33に埋設されている。なお、被固定部41は、圧入によりコンタクト保持部33に保持されていてもよい。
【0029】
電線接続部42は、電線2が有する各信号線P1(
図3を併せて参照)が例えば自動半田結線装置により半田結線される部分であって、半田結線面42Aが上方に露出するようにコンタクト保持部33に支持されている。
【0030】
図7及び
図8に示すように、接触部40は、第1延長部50と第2延長部51を有する。
【0031】
第1延長部50は、被固定部41から嵌合方向に延びている。第1延長部50は、被固定部41から離れる方向に、被固定部41から延びている。第1延長部50は、嵌合方向における先端50Aを有する。第1延長部50の板厚方向は、ピッチ方向に対して直交している。
【0032】
第2延長部51は、第1延長部50の先端50Aから抜去方向に延びている。第2延長部51は、第1延長部50の先端50Aから被固定部41に近づくように延びている。
【0033】
第1延長部50と第2延長部51は、高さ方向で対向している。従って、接触部40は、
図7に示すようにピッチ方向で見ると、被固定部41に向かって開口するU字状に構成されている。
【0034】
図7には、第1延長部50と第2延長部51の境界線Qを破線で示している。
図7に示すように、第1延長部50と第2延長部51は、境界線Qの近傍において嵌合方向に向かって凸となるように湾曲しながら滑らかに連なっている。
【0035】
第1延長部50は、直線延長部52と湾曲延長部53を有している。直線延長部52と湾曲延長部53は、嵌合方向においてこの記載順に連なっている。
【0036】
直線延長部52は、被固定部41から嵌合方向に向かって延びている。直線延長部52は、プラグコンタクト32の無負荷状態において、実質的に直線状に延びる部分である。直線延長部52は、プラグコンタクト32の無負荷状態において、嵌合方向へ向かうにつれて下方に向かうように若干傾斜している。
【0037】
湾曲延長部53は、直線延長部52から嵌合方向に向かって延びている。湾曲延長部53は、下方に凸となる湾曲している。
【0038】
図7及び
図8に示すように、第2延長部51は、幅狭部55とテーパー部56、幅広部57を有している。幅狭部55とテーパー部56、幅広部57は、抜去方向に向かってこの記載順に連なっている。
【0039】
幅狭部55は、第1延長部50の先端50Aから抜去方向に湾曲しながら延びる部分である。
【0040】
テーパー部56は、幅狭部55から抜去方向に延びると共に、緩やかに拡幅する部分である。
【0041】
幅広部57は、テーパー部56から抜去方向に延びる部分である。
図8に示すように、幅広部57は、幅狭部55よりも幅が広い。即ち、幅広部57のピッチ方向における寸法57Wは、幅狭部55のピッチ方向における寸法55Wよりも大きい。
図7に戻り、幅広部57は、第1延長部50を向く内方面57Aを有している。内方面57Aは、下方を向く面である。
【0042】
そして、第2延長部51は、第1延長部50よりも上方に位置している。即ち、第2延長部51は、第1延長部50を挟んで、当該第2延長部51が属するプラグコンタクト32と高さ方向で対向する他のプラグコンタクト32の反対側に配置されている。
【0043】
図9に示すように、コンタクト収容部30は、例えばLCP(Liquid Crystal Polymer)などの絶縁樹脂製であって、挿抜方向に延びる角筒状に構成されている。即ち、コンタクト収容部30は、レセプタクル5を受け入れる相手コネクタ収容空間としてのレセプタクル挿入間口60が形成されている。レセプタクル挿入間口60は、コンタクト収容部30を挿抜方向で貫通するように形成されている。
【0044】
コンタクト収容部30は、レセプタクル挿入間口60を高さ方向で区画する2つの高さ方向区画面61を有する。各高さ方向区画面61には、複数のコンタクト受け入れ溝62が形成されている。各コンタクト受け入れ溝62は、各プラグコンタクト32を受け入れる溝である。各コンタクト受け入れ溝62は、レセプタクル挿入間口60に向かって開口すると共に、挿抜方向に開口するように形成されている。従って、コンタクト収容部30は、各コンタクト受け入れ溝62をピッチ方向で区画すると共に、各コンタクト受け入れ溝62に挿入された各プラグコンタクト32とピッチ方向においてその各両側で対向する複数のコンタクト対向壁63(対向壁)を有する。具体的には、ピッチ方向で隣り合う2つのコンタクト対向壁63は、1つのコンタクト受け入れ溝62をピッチ方向で区画すると共に、当該コンタクト受け入れ溝62に挿入されたプラグコンタクト32とピッチ方向で対向する。即ち、ピッチ方向において、コンタクト受け入れ溝62とコンタクト対向壁63が交互に形成されている。換言すれば、2つのコンタクト対向壁63の間に1つのコンタクト受け入れ溝62が形成されており、2つのコンタクト受け入れ溝62の間に1つのコンタクト対向壁63が形成されている。
【0045】
各コンタクト対向壁63は、2つのコンタクト対向面64を有している。各コンタクト対向面64は、ピッチ方向に対して直交する面である。各コンタクト対向面64には、挿抜方向に延びるプリロード凹部65が形成されている。プリロード凹部65は、抜去方向に開口するように形成されている。
【0046】
複数のコンタクト対向壁63のうちレセプタクル挿入間口60よりも上方に配置される複数のコンタクト対向壁63と、下方に配置される複数のコンタクト対向壁63は、上下逆に構成されている。従って、以下、上方に配置される複数のコンタクト対向壁63のうち1つのコンタクト対向壁63について詳細に説明する。
【0047】
図10に示すように、コンタクト対向壁63は、プリロード凹部65を区画するプリロード面70とガイド面71を有している。プリロード面70とガイド面71は、何れも上方を向く平面であって、抜去方向でこの記載順に連なって形成されている。
【0048】
プリロード面70は、高さ方向に直交する平面である。
【0049】
ガイド面71は、抜去方向に向かうにつれて下方に若干傾斜する平面である。
【0050】
本実施形態において、プリロード面70とガイド面71は角を成すように接続しているが、これに代えて、湾曲面を介在させて滑らかに接続してもよい。
【0051】
次に、
図11及び
図12を参照して、コンタクトアセンブリ20の組立方法を説明する。
【0052】
まず、
図11に示すように、コンタクトサブアセンブリ31とコンタクト収容部30を挿抜方向で対向させる。このとき、嵌合方向においてコンタクトサブアセンブリ31とコンタクト収容部30がこの記載順に並ぶように配置する。
【0053】
次に、
図11の状態から、コンタクトサブアセンブリ31をコンタクト収容部30に対して相対的に嵌合方向に移動させる。すると、二点鎖線で示すように、各プラグコンタクト32の接触部40の第2延長部51の幅広部57が対応するプリロード凹部65に捕捉される。具体的には、各プラグコンタクト32の幅広部57の内方面57Aが対応するガイド面71に接触する。更に具体的には、
図8に示す各プラグコンタクト32の幅広部57のうち幅狭部55よりもピッチ方向で外方に突出した2つの側方突出部58の内方面57Aが対応するガイド面71にそれぞれ接触する。
【0054】
この状態から更にコンタクトサブアセンブリ31を嵌合方向に移動させると、各プラグコンタクト32の幅広部57が対応するガイド面71に対して滑りながらガイド面71の傾斜に沿って移動する。このとき、ガイド面71は、嵌合方向に向かうにつれて上方に向かうように傾斜しているので、幅広部57は、主として第1延長部50の弾性変形を伴いながら徐々に上方に変位する。
【0055】
そして、やがて、
図12に示すように、幅広部57は、プリロード面70に到達し、プリロード面70に接触する。一方、コンタクト保持部33が複数のコンタクト対向壁63に対して挿抜方向で接触することで、コンタクトサブアセンブリ31の嵌合方向へのそれ以上の移動が禁止される。
【0056】
図12の状態で、幅広部57は、主として第1延長部50の弾性変形を伴って上方に変位した状態にある。即ち、
図12の状態で、プラグコンタクト32の接触部40は、レセプタクル挿入間口60から離れる方向に向かって弾性変形した状態とされている。このようにコンタクトの弾性変形した状態で保持される状態はプリロード状態と呼ばれている。そして、プラグコンタクト32をプリロード状態とすることで、プラグ4とレセプタクル5を嵌合する前において各プラグコンタクト32の位置及び姿勢を所望の位置及び姿勢とすることができる。従って、各プラグコンタクト32が各レセプタクルコンタクト10と接触した際の接触圧がバラつくことなく設計通りに確保され、もって、プラグ4とレセプタクル5の間の高い接続信頼性が実現される。
【0057】
特に、
図6に示す各プラグコンタクト32の電線接続部42の半田結線面42Aに対応する信号線P1を半田結線する場合、各プラグコンタクト32が加熱されることでコンタクト保持部33が若干溶融し、もし各プラグコンタクト32がプリロード状態とされず例えば片持ち梁状に片端を解放してコンタクト保持部33に保持されているとすると、各プラグコンタクト32の位置及び姿勢がいつの間にか変化してしまうことが考えられる。従って、各プラグコンタクト32をプリロード状態とすることは、特に、各プラグコンタクト32に信号線P1を半田結線する場合に特に有益である。
【0058】
次に、
図13から
図15を参照して、プラグ4の製造方法を説明する。
【0059】
まず、
図13に示すように、電線2の末端処理を行う。具体的には、シースP2を所定長切除すると共に、図示しない編組を折返し、折り返された編組に銅箔P3を巻きつける。各信号線P1については、絶縁被覆P4を切除することで導体P5を所定長、露出させておく。
【0060】
次に、
図14に示すように、ロケータ23を用いて複数の信号線P1の導体P5を整列させると共に、ロケータ23と銅箔P3の間において複数の信号線P1を樹脂モールドP6により固定する。
【0061】
そして、
図15に示すように、各信号線P1の導体P5をコンタクトアセンブリ20の対応するプラグコンタクト32の電線接続部42の半田結線面42Aに自動半田結線装置を用いて半田結線する。なお、
図15では、各信号線P1の導体P5が対応する半田結線面42Aから若干浮いて描かれているが、各信号線P1の導体P5は、対応する半田結線面42Aに対して自動半田結線装置により半田結線の際に押し付けられるようになっている。
【0062】
次に、
図3に示すように、メインシールド21及びサブシールド22、ブーツアセンブリ24をコンタクトアセンブリ20や電線2に組み付ける。そして、
図2に示すように、2つのフード16及び解除レバー17をプラグ本体15に対して組み付ける。
【0063】
以上に、本願発明の好適な実施形態を説明したが、上記実施形態は、以下の特徴を有する。
【0064】
図4に示すように、プラグ4(コネクタ)は、プラグコンタクト32(コンタクト)と、プラグコンタクト32を保持するハウジングH(ハウジング)と、を備える。ハウジングHは、プラグコンタクト32を弾性変形した状態で保持する。
図12に示すように、プラグコンタクト32は、コンタクト保持部33(ハウジング)に固定される被固定部41と、被固定部41から離れるように被固定部41から延びる第1延長部50と、被固定部41に近づくように第1延長部50から延びる第2延長部51と、を有する。第2延長部51がコンタクト収容部30(ハウジング)のプリロード面70と接触することでプラグコンタクト32が弾性変形している。以上の構成によれば、プラグコンタクト32が弾性変形された状態でハウジングHに保持されるプラグ4のダウンサイジングが実現される。
【0065】
特に、特許文献1の構成と比較して、被固定部41に向かって延びる第2延長部51がハウジングHに接触してプリロード状態となっているので、プラグ4の挿抜方向におけるダウンサイジングが実現されている。また、接触部40の挿抜方向における長さも抑えられることから、接触部40が上方に撓んだときの撓み量も抑えられ、もって、プラグ4の高さ方向におけるダウンサイジングも同時に実現されている。
【0066】
引き続き
図12に示すように、第2延長部51は、第1延長部50を向く内方面57Aを有する。第2延長部51の内方面57AがハウジングHと接触することでプラグコンタクト32が弾性変形している。以上の構成によれば、プラグコンタクト32が第1延長部50から第2延長部51を見る方向である上方に弾性変形した構成が実現される。
【0067】
図8に示すように、第2延長部51は、幅広部57を有する。プラグコンタクト32は、幅広部57と被固定部41との間において、幅広部57よりも幅が狭い幅狭部55を有する。そして、
図12に示すように、幅広部57の内方面57AがハウジングHと接触することでプラグコンタクト32が弾性変形している。以上の構成によれば、第1延長部50が被固定部41から延びる方向である嵌合方向で、プラグコンタクト32をコンタクト収容部30に組み付けることが可能となる。
【0068】
なお、上記実施形態では、第2延長部51が幅狭部55を有することとしたが、これに代えて、第1延長部50が幅狭部55を有するように構成してもよい。
【0069】
図9及び
図10、
図11に示すように、ハウジングHは、プラグコンタクト32の幅方向としてのピッチ方向においてプラグコンタクト32と対向するコンタクト対向壁63を有する。コンタクト対向壁63は、幅広部57の内方面57Aと接触可能なガイド面71(接触面)を有する。
図12に示すように、ガイド面71は、ピッチ方向に沿って見ると、被固定部41に近づくにつれて第1延長部50に近づくように傾斜するように延びている。以上の構成によれば、第1延長部50が被固定部41から延びる方向である嵌合方向でプラグコンタクト32をコンタクト収容部30に組み付けると、幅広部57がガイド面71に沿って移動し、プラグコンタクト32が、第1延長部50から第2延長部51を見る方向である上方に自動的に弾性変形されるようになる。従って、プラグコンタクト32を予め弾性変形させてからコンタクト収容部30に組み付ける必要がなくなり、組付け作業性が向上する。
【0070】
なお、ガイド面71を利用してプラグコンタクト32をプリロード状態とすることに代えて、高さ方向で対向する2つのプラグコンタクト32の間に治具を挿入することで2つのプラグコンタクト32を押し広げた状態で、複数のプラグコンタクト32をコンタクト収容部30に組み付けるようにしてもよい。
【0071】
なお、ハウジングHは、プラグコンタクト32の被固定部41をインサート成形により保持するコンタクト保持部33と、コンタクト保持部33と連結可能に構成され、コンタクト対向壁63を有するコンタクト収容部30と、を含む。
【0072】
コンタクト収容部30は、レセプタクル5(相手コネクタ)を受け入れるレセプタクル挿入間口60(相手コネクタ収容空間)を有する。第2延長部51は、第1延長部50を挟んでレセプタクル挿入間口60と反対側に配置されている。
【0073】
図1に示すように、ワイヤーハーネスEは、プラグ4と電線2を含んで構成されている。
【符号の説明】
【0074】
1 産業用I/Oコネクタ
2 電線
3 基板
3A コネクタ搭載面
4 プラグ(コネクタ)
5 レセプタクル(相手コネクタ)
10 レセプタクルコンタクト
11 レセプタクルハウジング
12 シールド
15 プラグ本体
16 フード
17 解除レバー
20 コンタクトアセンブリ
21 メインシールド
22 サブシールド
23 ロケータ
24 ブーツアセンブリ
30 コンタクト収容部(ハウジング)
31 コンタクトサブアセンブリ
32 プラグコンタクト(コンタクト)
33 コンタクト保持部(ハウジング)
40 接触部
41 被固定部
42 電線接続部
42A 半田結線面
50 第1延長部
50A 先端
51 第2延長部
52 直線延長部
53 湾曲延長部
55 幅狭部
55W 寸法
56 テーパー部
57 幅広部
57A 内方面
57W 寸法
58 側方突出部
60 レセプタクル挿入間口(相手コネクタ収容空間)
61 高さ方向区画面
62 コンタクト受け入れ溝
63 コンタクト対向壁
64 コンタクト対向面
65 プリロード凹部
70 プリロード面
71 ガイド面(接触面)
E ワイヤーハーネス
H ハウジング
P1 信号線
P2 シース
P3 銅箔
P4 絶縁被覆
P5 導体
P6 樹脂モールド
Q 境界線