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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-14
(45)【発行日】2023-08-22
(54)【発明の名称】再生樹脂組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/00 20060101AFI20230815BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
C08L23/00
C08J3/20 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019061449
(22)【出願日】2019-03-27
(65)【公開番号】P2020158699
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(74)【代理人】
【識別番号】100187850
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】立浪 忠志
【審査官】宮内 弘剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-012715(JP,A)
【文献】特開2004-204210(JP,A)
【文献】特開2001-131331(JP,A)
【文献】特開2009-197138(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B17/00-17/04
B29C48/00-48/96
C08J 3/00-3/28
11/00-99/00
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂組成物を、せん断速度500sec-1以上9000sec-1以下、300秒以下でせん断する工程、及び相溶化剤を添加する工程を含み、前記熱可塑性樹脂組成物がポリオレフィン樹脂を含む、再生樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂組成物の量に対する前記相溶化剤の量の質量比(相溶化剤/熱可塑性樹脂組成物)が0.0025以上0.3以下である、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記相溶化剤が、極性基とポリオレフィン基を有する化合物である、請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
請求項1~3いずれか記載の製造方法により得られた再生樹脂組成物。
【請求項5】
請求項4記載の再生樹脂組成物を含む成形体。
【請求項6】
熱可塑性樹脂組成物を、せん断速度500sec-1以上9000sec-1以下、300秒以下でせん断する工程、及び相溶化剤を添加する工程を含み、前記熱可塑性樹脂組成物がポリオレフィン樹脂を含む、再生樹脂組成物の成形性向上方法。
【請求項7】
熱可塑性樹脂組成物を、せん断速度500sec-1以上9000sec-1以下、300秒以下でせん断する工程、及び相溶化剤を添加する工程を含み、前記熱可塑性樹脂組成物がポリオレフィン樹脂を含む、成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生樹脂組成物の製造方法、該製造方法により得られた再生樹脂組成物、該再生樹脂組成物を含む成形体及びその製造方法、並びに再生樹脂組成物の成形性向上方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの包装材は、熱可塑性複合材料及び/又は積層材料を用いたものであり、例えば、ボトル容器、詰め替え用パウチなどに成形される。これらの材料は、機能的な理由から、全く異なる種類のフィルムやアルミ等の無機物、インキ等から構成されることがある。よって、これらの材料から成る包装材等を回収して樹脂を再生する場合、インキや無機物などの未溶融物や主成分のポリマーと非相溶なポリマーが存在する材料となる。例えば、パウチを回収再生したポリエチレンは、アルミやインキ、未溶融のポリアミドやPETを含み、またポリアミドやPETは非均質ブレンドを生じるため、バージンポリエチレンと比較してフィルムの成形性が著しく低下するものである。特にアルミやインキ、未溶融のポリアミドやPETなどの異物はポリエチレンとは相溶せず、またサイズが大きいので成形性に大きな影響を与える。
【0003】
成形体の外観が良好である再生樹脂組成物としては、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-071676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、成形性に優れる再生樹脂組成物の製造方法、該製造方法により得られた再生樹脂組成物、該再生樹脂組成物を含む成形体及びその製造方法、並びに再生樹脂組成物の成形性向上方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記[1]~[5]に関する。
[1]熱可塑性樹脂組成物を、せん断速度500sec-1以上9000sec-1以下、300秒以下でせん断する工程を含む、再生樹脂組成物の製造方法。
[2][1]記載の製造方法により得られた再生樹脂組成物。
[3][2]記載の再生樹脂組成物を含む成形体。
[4]熱可塑性樹脂組成物を、せん断速度500sec-1以上9000sec-1以下、300秒以下でせん断する工程を含む、再生樹脂組成物の成形性向上方法。
[5]熱可塑性樹脂組成物を、せん断速度500sec-1以上9000sec-1以下、300秒以下でせん断する工程を含む、成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、成形性に優れる再生樹脂組成物の製造方法、該製造方法により得られた再生樹脂組成物、該再生樹脂組成物を含む成形体及びその製造方法、並びに再生樹脂組成物の成形性向上方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
上記課題を解決するために、樹脂の再生工程で、未溶融物のサイズを小さくするよう混合することを検討したが、一般的な混錬の強さを表す総せん断ひずみ量のみを高くするような混合方法では、サイズが十分に小さくならないか、または樹脂の劣化が起きてしまう場合があることが分かった。そこで鋭意検討した結果、特定のせん断速度でせん断することで、成形性と外観(樹脂の劣化抑制)を両立できることを見出した。
【0009】
本発明の製造方法は、熱可塑性樹脂組成物を、せん断速度500sec-1以上9000sec-1以下、300秒以下でせん断する工程(せん断工程)を含む。より具体的には、熱可塑性樹脂組成物を、ヘンシェルミキサー等で攪拌する方法、あるいは密閉式ニーダー、1軸もしくは2軸の押出機、オープンロール型混練機等の公知の混練機を用いて溶融混練又は溶媒キャスト法により調製することができる。
【0010】
再生樹脂組成物(以下、単に「再生樹脂」と記載することもある)とは、使用済みの製品から回収された後、溶融混錬して得られた樹脂組成物のことを意味する。
【0011】
本発明のせん断工程において、原料として使用する熱可塑性樹脂組成物としては、特に限定されるものではなく、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ナイロン樹脂、塩化ビニル樹脂、スチレン樹脂、ビニルエーテル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂等が挙げられる。これらのなかでも、包装材料としての樹脂使用量の観点から、少なくとも、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、及びポリアミド樹脂から選ばれる2種以上を構成樹脂として含有するものが好ましく、少なくともポリオレフィン樹脂を含有するものがより好ましい。
【0012】
ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン(PE樹脂)、ポリプロピレン(PP樹脂)等が例示される。これらのなかでも、包装材料としての樹脂使用量として普及している樹脂の再生促進の観点から、ポリエチレンを主成分として含有することが好ましい。原料として使用する熱可塑性樹脂組成物がポリオレフィン樹脂を含有する場合、原料として使用する熱可塑性樹脂組成物におけるポリオレフィン樹脂の含有量は、本発明の製造方法により得られる再生樹脂組成物の成形性を向上させる観点から、好ましくは60質量%以上、より好ましくは65質量%以上、更に好ましくは70質量%以上であり、また、回収工程における分別の容易性の観点から、好ましくは99質量%以下、より好ましくは95質量%以下、更に好ましくは90質量%以下である。ポリオレフィン樹脂を2種類以上含有する場合における含有量は、ポリオレフィン樹脂の合計量である。
【0013】
ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET樹脂)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT樹脂)、ポリブチレンテレフタレート(PBT樹脂)、ポリエチレンナフタレート(PEN樹脂)、ポリブチレンナフタレート(PBN樹脂)等が例示される。原料として使用する熱可塑性樹脂組成物がポリエステル樹脂を含有する場合、原料として使用する熱可塑性樹脂組成物におけるポリエステル樹脂の含有量は、回収工程における分別の容易性の観点から、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上であり、また、再生樹脂組成物の成形性を向上させる観点から、30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。ポリエステル樹脂を2種類以上含有する場合における含有量は、ポリエステル樹脂の合計量である。
【0014】
ポリアミド樹脂としては、ポリカプロアミド(ポリアミド6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ポリアミド6/66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ポリアミド46)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリウンデカミド(ポリアミド11)、ポリドデカミド(ポリアミド12)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ポリアミド66/6T)等が例示される。原料として使用する熱可塑性樹脂組成物がポリアミド樹脂を含有する場合、原料として使用する熱可塑性樹脂組成物におけるポリアミド樹脂の含有量は、回収工程における分別の容易性の観点から、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上であり、また、本発明の製造方法により得られる再生樹脂組成物の成形性を向上させる観点から、30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。ポリアミド樹脂を2種類以上含有する場合における含有量は、ポリアミド樹脂の合計量である。
【0015】
原料として使用する熱可塑性樹脂組成物の組成としては、例えば、ポリオレフィン樹脂を60質量%以上99質量%以下、ポリエステル樹脂を0質量%以上30質量%以下、ポリアミド樹脂を0質量%以上30質量%以下、含有する態様が例示される。
【0016】
原料として使用する熱可塑性樹脂組成物は、無機物を含有していてもよい。無機物としては、アルミニウム、酸化アルミナ、酸化ケイ素などが挙げられる。
【0017】
原料として使用する熱可塑性樹脂組成物は、例えば、使用済みの詰め替え用パウチ、食品用レトルトパウチ、洗剤ボトルなどから公知の方法に従って回収された熱可塑性樹脂組成物を好適に用いることができる。回収された熱可塑性樹脂組成物は、回収された後、公知の方法によって成形された樹脂組成物を好適に用いることができる。回収された熱可塑性樹脂組成物は、本発明の再生樹脂組成物の製造にそのまま用いてもよい。また、回収された熱可塑性樹脂組成物を溶融混錬して得られた再生樹脂組成物を、原料として使用する熱可塑性樹脂組成物として本発明の再生樹脂組成物の製造に用いてもよい。また、市販の熱可塑性再生樹脂組成物を、原料として使用する熱可塑性樹脂組成物として本発明の再生樹脂組成物の製造に用いてもよい。
【0018】
本発明の製造方法において、原料として使用する熱可塑性樹脂組成物の使用量は、環境負荷を低減する観点から、本発明の製造方法により得られる再生樹脂組成物中、好ましくは85質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上となる量である。また、本発明の製造方法により得られる再生樹脂組成物の成形性を向上させる観点から、本発明の製造方法により得られる再生樹脂組成物中、好ましくは100質量%以下、より好ましくは99質量%以下、更に好ましくは98質量%以下となる量である。
【0019】
せん断工程における溶融温度は、本発明の製造方法により得られる再生樹脂組成物の成形性を向上させる観点から、好ましくは180℃以上、より好ましくは200℃以上、更に好ましくは220℃以上であり、また、同様の観点から、好ましくは280℃以下、より好ましくは270℃以下、更に好ましくは260℃以下である。
【0020】
せん断工程におけるせん断速度は、本発明の製造方法により得られる再生樹脂組成物の成形性を向上させる観点から、500sec-1以上、好ましくは1000sec-1以上、より好ましくは2000sec-1以上であり、また、せん断工程において、再生樹脂組成物の劣化を抑制する観点から、9000sec-1以下、好ましくは8500sec-1以下、より好ましくは8000sec-1以下である。本発明の製造方法において、せん断速度は下式により求める。
せん断速度(secー1)=π×D×N/60×1/H
D:シリンダー径(mm)
N:回転数(rpm)
H:スクリューとシリンダー内壁との最小間隙距離(mm)
【0021】
せん断工程における滞留時間は、本発明の製造方法により得られる再生樹脂組成物の成形性を向上させる観点から、好ましくは10秒以上、より好ましくは15秒以上、更に好ましくは20秒以上であり、また、せん断工程において、再生樹脂組成物の劣化を抑制する観点から、300秒以下、好ましくは200秒以下、より好ましくは150秒以下、更に好ましくは100秒以下、更に好ましくは50秒以下である。
【0022】
本発明の製造方法は、使用済みの樹脂を回収する工程をさらに含んでいてもよい。使用済みの樹脂を回収する工程は、公知の方法に従って使用済みの製品から樹脂を回収するのであれば特に限定はない。
【0023】
本発明の製造方法において、本発明の製造方法により得られる再生樹脂組成物の成形性を向上させる観点から、好ましくは、相溶化剤を添加する。
相溶化剤は、せん断工程で熱可塑性樹脂組成物と混合されてもよい。
また、本発明の製造方法は、せん断工程で得られた再生樹脂組成物と相溶化剤を混合する工程をさらに含んでいてもよい。
【0024】
相溶化剤は、原料として使用する熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂の種類に左右されるが、例えば、熱可塑性樹脂としてポリオレフィン系樹脂を含む場合の相溶化剤としては、極性基とポリオレフィンを有する化合物が好ましい。極性基とポリオレフィンを有する化合物は、当該ポリオレフィン部分が熱可塑性樹脂と親和性を有する一方で、当該極性基部分がポリアミドなどのポリオレフィン系樹脂と非相溶なポリマーと反応又は相互作用することで親和性を発現することが期待できる。これにより、得られる樹脂組成物がマトリックス内の親和性が高い構造を示すと考えられる。
【0025】
極性基としては、有機イソシアネート基、(無水)カルボン酸基、カルボン酸ハライド基、アミノ基、水酸基、エポキシ基が挙げられる。これらのなかでも、本発明の製造方法により得られる再生樹脂組成物の成形性を向上させる観点から、好ましくは(無水)カルボン酸基、エポキシ基であり、より好ましくは(無水)カルボン酸基である。具体的には、無水マレイン酸基、コハク酸基、グリシジル(メタ)アクリレートが例示される。
【0026】
ポリオレフィンとしては、好ましくはエチレン系重合体[高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エチレンと他の1種以上のビニル化合物(例えばα-オレフィン、酢酸ビニル、メタアクリル酸、アクリル酸等)との共重合体等]、プロピレン系重合体[ポリプロピレン、プロピレンと他の1種以上のビニル化合物との共重合体等]、エチレンプロピレン共重合体、ポリブテン及びポリ-4-メチルペンテン-1等であり、より好ましくはエチレン系重合体、プロピレン系重合体である。
【0027】
かかる化合物としては、無水マレイン酸変性ポリオレフィン等が挙げられる。好適な市販品としては、住友化学工業社製「ボンドファースト 7M」(エポキシ基を有するポリエチレンと(メタ)クリル酸との共重合体)、日本ポリエチレン社製「レクスパール」(エポキシ基を有するポリオレフィン系樹脂)、日本油脂社製「モディパー」(エポキシ基を有するポリオレフィン系樹脂)、三洋化成工業社製「ユーメックス」(無水マレイン酸変性ポリプロピレン)、アルケマ社製「オレヴァック」(無水マレイン酸変性ポリエチレン)、アルケマ社製「ロタダー」(酸無水物を有するポリオレフィン系樹脂)、住友化学工業社製「ボンダイン」(酸無水物を有するポリオレフィン系樹脂)、三井・デュポン・ポリケミカル社製「ニュクレル」(カルボキシ基を有するポリオレフィン系樹脂)、ダウケミカル社製「プリマコール」(カルボキシ基を有するポリオレフィン系樹脂)等が挙げられる。
【0028】
本発明の製造方法における相溶化剤の添加量は、本発明の製造方法により得られる再生樹脂組成物の成形性を向上させる観点の観点から、本発明の製造方法により得られる再生樹脂組成物中、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2質量%以上となる量である。また、同様の観点から、再生樹脂組成物中、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下となる量である。
【0029】
本発明の製造方法における、原料として使用する熱可塑性樹脂組成物の量に対する相溶化剤の量の質量比(相溶化剤/熱可塑性樹脂組成物)は、本発明の製造方法により得られる再生樹脂組成物の成形性を向上させる観点から、好ましくは0.0025以上、より好ましくは0.005以上、更に好ましくは0.01以上、更に好ましくは0.02以上であり、また、同様の観点から、好ましくは0.3以下、より好ましくは0.25以下、更に好ましくは0.2以下、更に好ましくは0.05以下、更に好ましくは0.03以下である。
【0030】
本発明の製造方法は、前記以外の他の成分として、可塑剤;結晶核剤;充填剤(無機充填剤、有機充填剤);加水分解抑制剤;難燃剤;酸化防止剤;炭化水素系ワックス類やアニオン型界面活性剤である滑剤;紫外線吸収剤;帯電防止剤;防曇剤;光安定剤;顔料;防カビ剤;抗菌剤;発泡剤;界面活性剤;でんぷん類、アルギン酸、セルロース繊維等の多糖類;ゼラチン、ニカワ、カゼイン等の天然たんぱく質;タンニン、ゼオライト、セラミックス、金属粉末等の無機化合物;香料;流動調整剤;レべリング剤;導電剤;紫外線分散剤;消臭剤等を、本発明の効果を損なわない範囲で任意に添加することができる。このような任意の添加剤の添加量としては、本発明の製造方法により得られる再生樹脂組成物中、好ましくは20質量%以下となる量であり、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下となる量である。下限値としては、再生樹脂組成物中、0質量%となる量、1質量%以上となる量などが例示され、本発明においては、これらいずれの組み合わせによる範囲としてもよい。
【0031】
本発明の製造方法により得られる再生樹脂組成物は、フィルム成形時の穴や破断を抑制するなど、成形体の成形性に優れたものとなる。従って、本発明は、本発明の製造方法により得られた再生樹脂組成物を提供するものである。また、本発明は、熱可塑性樹脂組成物を、せん断速度500sec-1以上9000sec-1以下、300秒以下でせん断する工程を含む、再生樹脂組成物の成形性向上方法についても提供するものである。
好適なせん断速度及びせん断する工程に要する時間は、本発明の製造方法におけるものと同じである。
【0032】
また、本発明は、本発明の製造方法により得られる再生樹脂組成物を含む成形体についても提供するものである。成形体としては、フィルム、シート、繊維、フィラメント、射出成形体等が挙げられる。成形体は、本発明の製造方法により得られた再生樹脂組成物の成形体であれば特に限定はなく、例えば、前記再生樹脂組成物を押出成形、射出成形、プレス成形、注型成形又は溶媒キャスト法等の公知の成形方法を適宜用いることによって調製することができる。例えば、パッケージ型や成形型などに注入あるいは塗布した後、乾燥し硬化させることで用途に応じた成形体を得ることができる。即ち、本発明は、熱可塑性樹脂組成物を、せん断速度500sec-1以上9000sec-1以下、300秒以下でせん断する工程を含む、再生樹脂組成物の成形体の製造方法についても提供するものである。
好適なせん断速度及びせん断する工程に要する時間は、本発明の製造方法におけるものと同じである。
【0033】
フィルム状の成形体を調製する場合、その厚さは、加工性の観点から、好ましくは0.01mm以上、より好ましくは0.02mm以上、更に好ましくは0.03mm以上であり、また、環境負荷を低減する観点から、好ましくは0.15mm以下、より好ましくは0.1mm以下、更に好ましくは0.08mm以下である。
【実施例
【0034】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明する。なお、この実施例は、単なる本発明の例示であり、何ら限定を意味するものではない。例中の部は、特記しない限り質量部であり、%は、質量%である。なお、「常圧」とは101.3kPaを、「常温」とは25℃を示す。
【0035】
実施例1~11、比較例1~4
表1~5に示す(A)熱可塑性再生樹脂及び(B)相溶化剤を、二軸押出機(TEX-28V, シリンダー径28mm, スクリュー径27.7mm, L/D=42, 日本製鋼所社製)を用いて表1~5に示す条件で混練してペレットを得た。滞留時間は、熱可塑性再生樹脂及び相溶化剤の混錬中に、樹脂投入口から着色ペレット(黒色)を投入し、投入から着色した樹脂が押出されるまでの時間を実測することで計測した。得られたペレットを、Tダイ押出機(プラスクチック工学研究所社製、300mmTダイ)を用いて0.05mmのフィルムを30分間連続して成形した(成形速度6.9m/min.、ペレット使用量約3kg)。結果を表1~5に示す。
【0036】
表1~5において用いた原料の詳細を以下に示す。
熱可塑性再生樹脂1:再生ポリエチレン樹脂(岩井化成社製、組成:ポリエチレン80%、ポリアミド10%、ポリエステル10%)
熱可塑性樹脂2:ポリプロピレン樹脂組成物(食品用パウチ粉砕品をそのまま用いた、組成:ポリプロピレン72%、ポリアミド16%、ポリエステル12%)
相溶化剤1:ユーメックス1001:三洋化成工業社製、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、溶融粘度15000mPa・s(160℃、BL型粘度計)
相溶化剤2:ボンドファースト 7M:住友化学社製、ポリエチレン-ポリグリシジルメタクリレート-ポリメチルアクリレート共重合体、MFR(190℃×2.16kg)7.0g/10min
相溶化剤3:オレヴァックOE808:アルケマ社製、無水マレイン酸変性ポリエチレン、MFR(190℃×2.16kg)0.6g/10min
【0037】
[成形性の評価方法]
上記のとおりフィルムを30分間成形した際の成形性を5段階で評価した。評価は数値が大きいほど高い。評価が3~5であれば、フィルムの成形性は十分だと判断した。結果を表1~5に示す。
5:穴の形成、破断が全く生じない。
4:穴の形成は全く生じないが、極稀に破断が生じる。
3:稀に穴の形成及び破断が生じる。
2:時々穴の形成、破断が生じる。
1:頻繁に穴の形成、フィルムの破断が生じる。
【0038】
[外観の評価方法]
成形体を目視で判断し、評価した。結果を表1~5に示す。
3:ヤケ物がない(色の変化なし)
2:ヤケ物が少ない(薄茶色に変色)
1:ヤケ物が多い(茶色に変色)
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
【表3】
【0042】
【表4】
【0043】
【表5】
【0044】
表1~5に示すように、せん断速度500sec-1以上9000sec-1以下、滞留時間300秒以下で混合して再生した実施例1~11の再生樹脂組成物は、いずれも成形性、外観に優れるものであった。一方、せん断速度が500sec-1未満の比較例1では成形性に劣り、せん断速度が9000sec-1を超える比較例2では成形性に問題はないものの樹脂が劣化してヤケ物がみられた。またせん断速度が500sec-1より小さく、滞留時間が300秒以上の場合では、成形性が低く、また樹脂が劣化してヤケ物がみられた。これらの結果から最適なせん断速度及び滞留時間が成形性及び成形体の外観に重要であり、せん断速度が低い場合は、成形性が低下し、せん断速度が高いもしくは滞留時間が長い場合は、ヤケ物が発生し外観不良が発生していると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の製造方法は、再生材料として好適な再生樹脂組成物を提供することができる。