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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】熱管理装置
(51)【国際特許分類】
   B60L 58/26 20190101AFI20230816BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20230816BHJP
   B60K 11/04 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
B60L58/26
B60K1/04 Z
B60K11/04 G
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020065907
(22)【出願日】2020-04-01
(65)【公開番号】P2021164332
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 吉男
(72)【発明者】
【氏名】田代 広規
(72)【発明者】
【氏名】池上 真
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0107508(US,A1)
【文献】特開2019-119369(JP,A)
【文献】特開2017-065440(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 58/26
B60K 1/04
B60K 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される熱管理装置であって、
熱媒体が循環する熱回路であって、熱交換器経路と、前記熱交換器経路と連通されているラジエータ経路と、前記ラジエータ経路を迂回して前記熱交換器経路と連通されているバッテリ経路と、を有する前記熱回路と、
前記熱交換器経路内の熱媒体を熱交換によって冷却する熱交換器と、
前記バッテリ経路によって冷却されるバッテリと、
前記ラジエータ経路内の熱媒体と外気とを熱交換させるラジエータと、
前記熱回路内の熱媒体の流路を変更する制御弁と、
前記熱回路内の熱媒体を、前記熱交換器経路から前記バッテリ経路に送出可能であるとともに、前記熱交換器経路から前記ラジエータ経路に送出可能である、ポンプと、
制御装置と、を備え、
前記ラジエータ経路は、前記バッテリ経路を迂回して前記熱交換器経路と連通されており、
前記熱交換器経路は、上流端において、直接的に前記バッテリ経路の下流端と接続されているとともに、前記ラジエータ経路の下流端と接続されており、
前記熱交換器経路は、下流端において、前記制御弁を介して、前記バッテリ経路の上流端と接続されているとともに、前記ラジエータ経路の上流端と接続されており、
前記制御装置は、
前記熱交換器経路と前記バッテリ経路との間で前記熱回路内の熱媒体が循環するように前記制御弁及び前記ポンプを制御することによって、前記バッテリによって前記バッテリ経路の熱媒体を加熱する加熱動作と、
前記熱交換器経路と前記ラジエータ経路との間で前記加熱動作によって加熱された熱媒体が循環するように前記制御弁及び前記ポンプを制御する循環動作であって、前記ラジエータによって前記ラジエータ経路内の熱媒体を冷却する前記循環動作と、を実行し、
前記制御装置は、前記熱回路内の熱媒体を、前記熱交換器経路から前記バッテリ経路と前記ラジエータ経路との両方に流れるように、前記制御弁を制御することによって、前記加熱動作と前記循環動作とを並行させる、熱管理装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記バッテリの温度が0度以上の所定範囲外である場合に、前記循環動作を禁止する、請求項1に記載の熱管理装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記バッテリの温度が15度未満である場合に、前記加熱動作を禁止する、請求項2に記載の熱管理装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記熱回路内の熱媒体の温度が0度未満である場合に、前記循環動作を禁止する、請求項1から3のいずれか一項に記載の熱管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、熱管理装置に関する。
【0002】
特許文献1には、車両に搭載される熱管理装置が開示されている。この熱管理装置は、熱媒体が循環する複数の熱回路(ヒータ回路、エンジン回路等)を有している。例えば、熱管理装置は、ヒータ回路内の熱媒体を熱源として利用して、車室内を暖房する。また、熱管理装置は、エンジン回路内の熱媒体によって、エンジンを冷却する。エンジン回路内の熱媒体は、ラジエータによって冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-150352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、外気が低い場合やラジエータ内の熱媒体の温度が低い場合、ラジエータに霜が付着する場合がある。ラジエータに霜が付着すると、ラジエータにおいて、熱媒体の熱交換の障害になり得る。ラジエータに付着した霜を除去するためには、ラジエータを加熱して霜を溶解させる。本明細書では、ラジエータを加熱するための熱エネルギーを効率的に取得することができる技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する熱管理装置は、車両に搭載される。この熱管理装置は、熱媒体が循環する熱回路であって、熱交換器経路と、前記熱交換器経路と連通されているラジエータ経路と、前記ラジエータ経路を迂回して前記熱交換器経路と連通されているバッテリ経路と、を有する前記熱回路と、前記熱交換器経路内の熱媒体を熱交換によって冷却する熱交換器と、前記バッテリ経路によって冷却されるバッテリと、前記ラジエータ経路内の熱媒体と外気とを熱交換させるラジエータと、前記熱回路内の熱媒体の流路を変更する制御弁と、前記熱回路内の熱媒体を、前記熱交換器経路から前記バッテリ経路に送出可能であるとともに、前記熱交換器経路から前記ラジエータ経路に送出可能である、ポンプと、制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記熱交換器経路と前記バッテリ経路との間で前記熱回路内の熱媒体が循環するように前記制御弁及び前記ポンプを制御することによって、前記バッテリによって前記バッテリ経路の熱媒体を加熱する加熱動作と、前記熱交換器経路と前記ラジエータ経路との間で前記加熱動作によって加熱された熱媒体が循環するように前記制御弁及び前記ポンプを制御する循環動作であって、前記ラジエータによって前記ラジエータ経路内の熱媒体を冷却する前記循環動作と、を実行してもよい。
【0006】
この構成によれば、バッテリで発生した熱エネルギーを、ラジエータの加熱に利用することができる。これにより、ラジエータを加熱する目的のために、車両において熱エネルギーを発生させずに済む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態の熱管理装置の回路図。
図2】暖房動作を示す回路図。
図3】冷房動作を示す回路図。
図4】バッテリ冷却動作を示す回路図。
図5】電気機器冷却動作を示す回路図。
図6】ラジエータ加熱処理を示す回路図。
図7】ラジエータ加熱判断処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書が開示する熱管理装置の技術要素を、以下に列記する。なお、以下の各技術要素は、それぞれ独立して有用なものである。
【0009】
本明細書が開示する一例の熱管理装置では、前記制御装置は、前記バッテリの温度が0度以上の所定範囲外である場合に、前記加熱動作を禁止してもよい。
【0010】
バッテリの温度によっては、バッテリの熱を利用して、加熱動作を実行するのに不適切な場合がある。例えば、バッテリの温度が低い場合、加熱動作において、熱媒体を十分に加熱することができない。このような場合に、加熱動作が実行されることを回避することができる。
【0011】
本明細書が開示する一例の熱管理装置では、前記制御装置は、前記バッテリの温度が15度未満である場合に、前記加熱動作を禁止してもよい。車両に用いられるバッテリでは、バッテリの温度が15度未満になると、バッテリの性能が低下する場合がある。このため、バッテリの温度が15度未満である場合に、加熱動作を禁止することによって、バッテリの性能低下からの回復を妨げることを回避することができる。
【0012】
本明細書が開示する一例の熱管理装置では、前記制御装置は、前記熱回路内の熱媒体の温度が0度未満である場合に、前記循環動作を禁止してもよい。熱媒体の温度が0度未満である場合、循環動作を実行したとしても、ラジエータに付着する霜を溶解することができない。このため、熱媒体の温度が0度未満である場合、循環動作を禁止することによって、熱管理装置が不必要に動作することを回避することができる。
【0013】
前記制御装置は、前記熱回路内の熱媒体を、前記熱交換器経路から前記バッテリ経路と前記ラジエータ経路との両方に流れるように、前記制御弁を制御することによって、前記加熱動作と前記循環動作とを並行させてもよい。この構成によれば、熱媒体の加熱と冷却とを並行して実行することができる。
【0014】
前記制御装置は、前記制御弁を制御することによって、前記加熱動作と前記循環動作とを、交互に実行させてもよい。この構成によれば、加熱動作と循環動作とを分けることによって、熱媒体の温度等に合わせて、加熱動作と循環動作とを適切に切り換えることができる。
【0015】
(第1実施形態)
図1に示す実施形態の熱管理装置100は、第1熱回路10、第2熱回路20、及び、第3熱回路30を有している。第1熱回路10、第2熱回路20、及び、第3熱回路30のそれぞれの内部に、熱媒体が流れる。第1熱回路10、第2熱回路20、及び、第3熱回路30の間で、熱媒体の流路が独立している。第1熱回路10、第2熱回路20、及び、第3熱回路30内の熱媒体の材料は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。例えば、熱媒体として、ハイドロフルオロカーボンを用いることができる。熱管理装置100は、車両に搭載されている。熱管理装置100は、エバポレータ63を用いて車室内の空気を冷却する冷房動作を実行することができる。また、熱管理装置100は、ヒータコア74を用いて車室内の空気を加熱する暖房動作を実行することができる。また、熱管理装置100は、バッテリ51、トランスアクスル43、PCU(パワーコントロールユニット)47、及び、SPU(スマートパワーユニット)46を冷却することができる。
【0016】
第1熱回路10は、低温ラジエータ経路11、バイパス経路12、電気機器経路13、バッテリ経路14、チラー経路15、接続経路16、及び、接続経路17を有している。
【0017】
低温ラジエータ経路11には、低温ラジエータ41が設置されている。低温ラジエータ41は、低温ラジエータ経路11内の熱媒体と外気(すなわち、車両の外部の空気)とを熱交換させる。外気の温度が低温ラジエータ経路11内の熱媒体の温度よりも低ければ、低温ラジエータ41によって低温ラジエータ経路11内の熱媒体が冷却される。外気の温度が低温ラジエータ経路11内の熱媒体の温度よりも高ければ、低温ラジエータ41によって低温ラジエータ経路11内の熱媒体が加熱される。
【0018】
電気機器経路13の下流端は、三方弁42を介してバイパス経路12の上流端と低温ラジエータ経路11の上流端に接続されている。電気機器経路13の上流端は、バイパス経路12の下流端と低温ラジエータ経路11の下流端に接続されている。電気機器経路13には、ポンプ48が設置されている。ポンプ48は、電気機器経路13内の熱媒体を下流へ送出する。三方弁42は、電気機器経路13から低温ラジエータ経路11に熱媒体が流れる状態と電気機器経路13からバイパス経路12に熱媒体が流れる状態との間で流路を切り換える。三方弁42が電気機器経路13から低温ラジエータ経路11に熱媒体が流れるように制御された状態でポンプ48が作動すると、電気機器経路13と低温ラジエータ経路11により構成される循環流路に熱媒体が循環する。三方弁42が電気機器経路13からバイパス経路12に熱媒体が流れるように制御された状態でポンプ48が作動すると、電気機器経路13とバイパス経路12により構成される循環流路に熱媒体が循環する。
【0019】
電気機器経路13には、SPU46、PCU47、及び、オイルクーラ45が設置されている。SPU46とPCU47はポンプ48の上流に設置されており、オイルクーラ45はポンプ48の下流に設置されている。SPU46とPCU47は、電気機器経路13内の熱媒体との熱交換によって冷却される。オイルクーラ45は、熱交換器である。オイルクーラ45には、オイル循環路18が接続されている。オイルクーラ45は、電気機器経路13内の熱媒体とオイル循環路18内のオイルとの熱交換によって、オイル循環路18内のオイルを冷却する。オイル循環路18は、トランスアクスル43の内部を通るように配設されている。トランスアクスル43は、モータを内蔵している。トランスアクスル43が内蔵するモータは、車両の駆動輪を回転させる走行用モータである。オイル循環路18の一部は、モータの摺動部(すなわち、軸受部)によって構成されている。すなわち、オイル循環路18内のオイルは、モータ内部の潤滑油である。オイル循環路18には、オイルポンプ44が設置されている。オイルポンプ44は、オイル循環路18内のオイルを循環させる。オイルクーラ45で冷却されたオイルがオイル循環路18を循環すると、トランスアクスル43が内蔵するモータが冷却される。SPU46は、バッテリ51の充放電を制御する。PCU47は、バッテリ51から供給される直流電力を交流電力に変換し、交流電力をトランスアクスル43が内蔵するモータに供給する。
【0020】
チラー経路15の下流端は、三方弁49を介してバッテリ経路14の上流端と接続経路16の上流端に接続されている。チラー経路15の上流端は、バッテリ経路14の下流端と接続経路17の下流端に接続されている。すなわち、バッテリ経路14は、チラー経路15に対して、低温ラジエータ経路11を迂回して連通されている。接続経路17の上流端は、低温ラジエータ経路11によって接続経路16の下流端に接続されている。チラー経路15には、ポンプ53が設置されている。ポンプ53は、チラー経路15内の熱媒体を下流へ送出する。三方弁49は、チラー経路15からバッテリ経路14に熱媒体が流れる状態と、チラー経路15から接続経路16に熱媒体が流れる状態と、チラー経路15からバッテリ経路14と接続経路16の両方に熱媒体が流れる状態と、の三つの状態の間で流路を切り換える。三方弁49がチラー経路15からバッテリ経路14に熱媒体が流れるように制御された状態でポンプ53が作動すると、チラー経路15とバッテリ経路14により構成される循環流路に熱媒体が循環する。三方弁49がチラー経路15から接続経路16に熱媒体が流れるように制御された状態でポンプ53が作動すると、チラー経路15、接続経路16、低温ラジエータ経路11、及び、接続経路17により構成される循環流路に熱媒体が循環する。三方弁49がチラー経路15からバッテリ経路14と接続経路16の両方に熱媒体が流れるように制御された状態でポンプ53が作動すると、チラー経路15とバッテリ経路14により構成される循環流路と、チラー経路15、接続経路16、低温ラジエータ経路11、及び、接続経路17により構成される循環流路と、の両方で熱媒体が循環する。
【0021】
チラー経路15には、チラー52が設置されている。チラー52は、ポンプ53の下流に設置されている。チラー52は、チラー経路15内の熱媒体と第2熱回路20内(より詳細には、後述するチラー経路22内)の熱媒体との熱交換によって、チラー経路15内の熱媒体を冷却する。
【0022】
バッテリ経路14には、ヒータ50とバッテリ51が設置されている。バッテリ51は、PCU47に直流電力を供給する。すなわち、バッテリ51は、PCU47を介してトランスアクスル43が内蔵するモータに電力を供給する。バッテリ51は、バッテリ経路14内の熱媒体との熱交換によって冷却される。ヒータ50は、バッテリ51の上流に設置されている。ヒータ50は、電気式のヒータであり、バッテリ経路14内の熱媒体を加熱する。
【0023】
第2熱回路20は、チラー経路22、エバポレータ経路24、及び、コンデンサ経路26を有している。コンデンサ経路26の下流端は、三方弁65を介してチラー経路22の上流端とエバポレータ経路24の上流端に接続されている。コンデンサ経路26の上流端は、チラー経路22の下流端とエバポレータ経路24の下流端に接続されている。コンデンサ経路26には、コンプレッサ66が設置されている。コンプレッサ66は、コンデンサ経路26内の熱媒体を加圧しながら下流へ送出する。三方弁65は、コンデンサ経路26からチラー経路22に熱媒体が流れる状態と、コンデンサ経路26からエバポレータ経路24に熱媒体が流れる状態との間で流路を切り換える。三方弁65がコンデンサ経路26からチラー経路22に熱媒体が流れるように制御された状態でコンプレッサ66が作動すると、コンデンサ経路26とチラー経路22によって構成される循環流路に熱媒体が循環する。三方弁65がコンデンサ経路26からエバポレータ経路24に熱媒体が流れるように制御された状態でコンプレッサ66が作動すると、コンデンサ経路26とエバポレータ経路24によって構成される循環流路に熱媒体が循環する。
【0024】
コンデンサ経路26には、コンデンサ67とモジュレータ68が設置されている。コンデンサ67はコンプレッサ66の下流に設置されており、モジュレータ68はコンデンサ67の下流に設置されている。コンプレッサ66によって送出される熱媒体は、高温の気体である。このため、コンデンサ67には、高温の気体である熱媒体が流入する。コンデンサ67は、コンデンサ経路26内の熱媒体と第3熱回路30内(より詳細には、後述するコンデンサ経路32内)の熱媒体との熱交換によって、コンデンサ経路26内の熱媒体を冷却する。コンデンサ経路26内の熱媒体は、コンデンサ67内で冷却されることで凝縮する。したがって、コンデンサ67を通過した熱媒体は、低温の液体である。したがって、モジュレータ68には、低温の液体である熱媒体が流入する。モジュレータ68は、液体である熱媒体中から気泡を除去する。
【0025】
チラー経路22には、膨張弁61、及び、チラー52が設置されている。膨張弁61の下流にチラー52が設置されている。膨張弁61には、モジュレータ68を通過した熱媒体(すなわち、低温の液体である熱媒体)が流入する。熱媒体は、膨張弁61を通過するときに減圧される。したがって、チラー52には、低圧、低温の液体の熱媒体が流入する。チラー52は、チラー経路22内の熱媒体とチラー経路15内の熱媒体との熱交換によって、チラー経路22内の熱媒体を加熱するとともにチラー経路15内の熱媒体を冷却する。チラー52内では、チラー経路22内の熱媒体が加熱によって蒸発する。このため、チラー経路22内の熱媒体は、チラー経路15内の熱媒体から効率的に吸熱する。これにより、チラー経路15内の熱媒体が効率的に冷却される。チラー52を通過したチラー経路22内の熱媒体(すなわち、高温の気体である熱媒体)は、コンプレッサ66で加圧されて、コンデンサ67へ送られる。
【0026】
エバポレータ経路24には、膨張弁64、エバポレータ63、及び、EPR(エバポレータプレッシャレギュレータ)62が設置されている。膨張弁64の下流にエバポレータ63が設置されており、エバポレータ63の下流にEPR62が設置されている。膨張弁64には、モジュレータ68を通過した熱媒体(すなわち、低温の液体である熱媒体)が流入する。熱媒体は、膨張弁64を通過するときに減圧される。したがって、エバポレータ63には、低圧、低温の液体の熱媒体が流入する。エバポレータ63は、エバポレータ経路24内の熱媒体と車室内の空気との熱交換によって、熱媒体を加熱するとともに車室内の空気を冷却する。すなわち、エバポレータ63によって、車室内の冷房が実行される。エバポレータ63内では、熱交換によって熱媒体が加熱されることで、熱媒体が蒸発する。このため、熱媒体は、車室内の空気から効率的に吸熱する。これにより、車室内の空気が効率的に冷却される。EPR62は、エバポレータ経路24内の熱媒体の流量を制御することで、エバポレータ63内の圧力を略一定に制御する。EPR62を通過した熱媒体(すなわち、高温の気体である熱媒体)は、コンプレッサ66で加圧されて、コンデンサ67へ送られる。
【0027】
第3熱回路30は、コンデンサ経路32、ヒータコア経路34、及び、高温ラジエータ経路36を有している。コンデンサ経路32の下流端は、三方弁73を介してヒータコア経路34の上流端と高温ラジエータ経路36の上流端に接続されている。コンデンサ経路32の上流端は、ヒータコア経路34の下流端と高温ラジエータ経路36の下流端に接続されている。コンデンサ経路32には、ポンプ72が設置されている。ポンプ72は、コンデンサ経路32内の熱媒体を下流へ送出する。三方弁73は、コンデンサ経路32からヒータコア経路34に熱媒体が流れる状態と、コンデンサ経路32から高温ラジエータ経路36に熱媒体が流れる状態との間で流路を切り換える。三方弁73がコンデンサ経路32からヒータコア経路34に熱媒体が流れるように制御された状態でポンプ72が作動すると、コンデンサ経路32とヒータコア経路34により構成される循環流路に熱媒体が循環する。三方弁73がコンデンサ経路32から高温ラジエータ経路36に熱媒体が流れるように制御された状態でポンプ72が作動すると、コンデンサ経路32と高温ラジエータ経路36により構成される循環流路に熱媒体が循環する。
【0028】
コンデンサ経路32には、コンデンサ67とヒータ71が設置されている。ポンプ72の下流にコンデンサ67が設置されており、コンデンサ67の下流にヒータ71が設置されている。コンデンサ67は、コンデンサ経路32内の熱媒体とコンデンサ経路26内の熱媒体との熱交換によって、コンデンサ経路32内の熱媒体を加熱するとともにコンデンサ経路26内の熱媒体を冷却する。ヒータ71は、電気式のヒータであり、コンデンサ経路32内の熱媒体を加熱する。
【0029】
ヒータコア経路34には、ヒータコア74が設置されている。ヒータコア74は、ヒータコア経路34内の熱媒体と車室内の空気との熱交換によって、車室内の空気を加熱する。すなわち、ヒータコア74によって、車室内の暖房が実行される。
【0030】
高温ラジエータ経路36には、高温ラジエータ75が設置されている。高温ラジエータ75は、高温ラジエータ経路36内の熱媒体と外気との熱交換によって、高温ラジエータ経路36内の熱媒体を冷却する。
【0031】
熱管理装置100は、制御装置80を有している。制御装置80は、熱管理装置100の各部を制御する。
【0032】
次に、制御装置80が実行可能な動作について説明する。制御装置80は、暖房動作、冷房動作、バッテリ冷却動作、電気機器冷却動作、及び、ラジエータ加熱動作を実行することができる。
【0033】
(暖房動作)
暖房動作では、制御装置80が、図2に示すように熱管理装置100の各部を制御する。第3熱回路30では、三方弁73がコンデンサ経路32からヒータコア経路34に熱媒体が流れるように制御され、ポンプ72が作動する。したがって、コンデンサ経路32とヒータコア経路34によって構成される循環流路102に熱媒体が循環する。第2熱回路20では、三方弁65がコンデンサ経路26からチラー経路22に熱媒体が流れるように制御され、コンプレッサ66が作動する。したがって、コンデンサ経路26とチラー経路22によって構成される循環流路104に熱媒体が循環する。第1熱回路10では、三方弁49がチラー経路15から接続経路16に熱媒体が流れるように制御され、ポンプ53が作動する。ポンプ48は停止状態とされる。したがって、チラー経路15、接続経路16、低温ラジエータ経路11、及び、接続経路17によって構成される循環流路106に熱媒体が循環する。
【0034】
図2の循環流路106では、低温ラジエータ41に、チラー52で冷却された低温の熱媒体が流入する。したがって、低温ラジエータ41に流入する熱媒体の温度は、外気の温度よりも低い。このため、低温ラジエータ41内で熱媒体が加熱される。その結果、低温ラジエータ41によって加熱された高温の熱媒体がチラー52に流入する。チラー52では、チラー経路15(すなわち、循環流路106)内の熱媒体が冷却され、チラー経路22(すなわち、循環流路104)内の熱媒体が加熱される。したがって、循環流路104では、チラー52によって加熱された高温の熱媒体がコンデンサ67に流入する。コンデンサ67では、コンデンサ経路26(すなわち、循環流路104)内の熱媒体が冷却され、コンデンサ経路32(すなわち、循環流路102)内の熱媒体が加熱される。したがって、循環流路102では、コンデンサ67によって加熱された高温の熱媒体がヒータコア74に流入する。ヒータコア74は、循環流路102内の熱媒体と車室内の空気との熱交換によって、車室内の空気を加熱する。ヒータコア74で加熱された空気は、図示しないファンによって送風される。以上のようにして、車室内の暖房が実行される。なお、上記の説明から明らかなように、ヒータコア74には、循環流路104内の熱媒体(すなわち、第2熱回路20内の熱媒体)を介して熱が供給される。つまり、暖房運転では、ヒータコア74は、第2熱回路20内の熱媒体を熱源として暖房を行う。
【0035】
(冷房動作)
冷房動作では、制御装置80が、図3に示すように熱管理装置100の各部を制御する。第3熱回路30では、三方弁73がコンデンサ経路32から高温ラジエータ経路36に熱媒体が流れるように制御され、ポンプ72が作動する。したがって、コンデンサ経路32と高温ラジエータ経路36によって構成される循環流路108に熱媒体が循環する。第2熱回路20では、三方弁65がコンデンサ経路26からエバポレータ経路24に熱媒体が流れるように制御され、コンプレッサ66が作動する。したがって、コンデンサ経路26とエバポレータ経路24によって構成される循環流路110に熱媒体が循環する。冷房動作には、第1熱回路10は関与しない。
【0036】
図3の循環流路108では、高温ラジエータ75に、コンデンサ67で加熱された高温の熱媒体が流入する。したがって、高温ラジエータ75に流入する熱媒体の温度は、外気の温度よりも高い。このため、高温ラジエータ75内で熱媒体が冷却される。その結果、高温ラジエータ75で冷却された低温の熱媒体がコンデンサ67に流入する。コンデンサ67では、コンデンサ経路32(すなわち、循環流路108)内の熱媒体が加熱され、コンデンサ経路26(すなわち、循環流路110)内の熱媒体が冷却される。したがって、循環流路110では、コンデンサ67によって冷却された低温の熱媒体がエバポレータ63に流入する。エバポレータ63は、循環流路110内の熱媒体と車室内の空気との熱交換によって、車室内の空気を冷却する。エバポレータ63によって冷却された空気は、図示しないファンによって送風される。以上のようにして、車室内の冷房が実行される。
【0037】
(バッテリ冷却動作)
バッテリ冷却動作は、バッテリ51の温度が基準値以上の温度まで上昇したときに実行される。バッテリ冷却動作では、制御装置80が、図4に示すように熱管理装置100の各部を制御する。第3熱回路30では、コンデンサ経路32と高温ラジエータ経路36によって構成される循環流路108に熱媒体が循環するように三方弁73とポンプ72が制御される。第2熱回路20では、コンデンサ経路26とチラー経路22によって構成される循環流路104に熱媒体が循環するように三方弁65とコンプレッサ66が制御される。第1熱回路10では、三方弁49がチラー経路15からバッテリ経路14に熱媒体が流れるように制御され、ポンプ53が作動する。したがって、チラー経路15とバッテリ経路14によって構成される循環流路112に熱媒体が循環する。
【0038】
図4の循環流路108は、図3(すなわち、冷房動作)と同様に動作する。したがって、コンデンサ67によってコンデンサ経路26(すなわち、循環流路104)内の熱媒体が冷却される。したがって、循環流路104では、コンデンサ67によって冷却された低温の熱媒体がチラー52に流入する。チラー52では、チラー経路22(すなわち、循環流路104)内の熱媒体が加熱され、チラー経路15(すなわち、循環流路112)内の熱媒体が冷却される。したがって、循環流路112では、チラー52によって冷却された低温の熱媒体がバッテリ経路14に流入し、バッテリ51が冷却される。以上のようにして、バッテリ51の冷却が実行される。
【0039】
なお、バッテリ冷却動作では、高温ラジエータ経路36に代えて、ヒータコア経路34に熱媒体を流してもよい。この場合、ヒータコア74によって、第3熱回路30内の熱媒体が冷却されるとともに、車室内の空気が加熱される。この動作では、バッテリ51が冷却されるとともに、ヒータコア74においてバッテリ51の排熱を利用して暖房が行われる。
【0040】
(電気機器冷却動作)
電気機器冷却動作は、SPU46、PCU47、及び、トランスアクスル43が内蔵するモータの動作中に実行される。また、電気機器冷却動作は、SPU46、PCU47、及び、モータのいずれかの温度が基準値を超えたときに実行されてもよい。電気機器冷却動作では、制御装置80が、図5に示すように熱管理装置100の各部を制御する。電気機器冷却動作には、第3熱回路30と第2熱回路20は関与しない。第1熱回路10では、三方弁42が電気機器経路13から低温ラジエータ経路11に熱媒体が流れるように制御され、ポンプ48が作動する。したがって、電気機器経路13と低温ラジエータ経路11によって構成される循環流路114に熱媒体が循環する。また、電気機器冷却動作では、オイルポンプ44が作動し、オイル循環路18内のオイルが循環する。
【0041】
循環流路114では、SPU46、PCU47、及び、オイルクーラ45で加熱された高温の熱媒体が低温ラジエータ41に流入する。したがって、低温ラジエータ41に流入する熱媒体の温度は、外気の温度よりも高い。このため、低温ラジエータ41によって低温ラジエータ経路11(すなわち、循環流路114)内の熱媒体が冷却される。したがって、循環流路114では、低温ラジエータ41によって冷却された低温の熱媒体が電気機器経路13に流入し、SPU46とPCU47が冷却される。また、オイルクーラ45は、低温の熱媒体によってオイル循環路18内のオイルを冷却する。その結果、冷却されたオイルが、トランスアクスル43が内蔵するモータに供給され、モータが冷却される。以上のようにして、電気機器(すなわち、SPU46、PCU47、及び、モータ)を冷却する電気機器冷却動作が実行される。
【0042】
上述したように、バッテリ冷却動作において第1熱回路10内に形成される循環流路112は、低温ラジエータ経路11を含まない。すなわち、循環流路112は、低温ラジエータ経路11を迂回する。また、電気機器冷却動作において第1熱回路10内に形成される循環流路114は、チラー経路15を含まない。すなわち、循環流路114は、チラー経路15を迂回する。したがって、循環流路112と循環流路114が干渉せず、バッテリ冷却動作と電気機器冷却動作を独立して実行することができる。例えば、電気機器冷却動作を実行せずにバッテリ冷却動作を実行することが可能であり、バッテリ冷却動作を実行せずに電気機器冷却動作を実行することが可能であり、バッテリ冷却動作と電気機器冷却動作を同時に実行することも可能である。なお、循環流路112が電気機器経路13を迂回し、循環流路114がバッテリ経路14を迂回するので、循環流路112と循環流路114を完全に分離することができる。
【0043】
また、暖房動作において第1熱回路10内に形成される循環流路106は、バッテリ経路14と電気機器経路13を含まない。すなわち、循環流路106は、バッテリ経路14と電気機器経路13を迂回する。このため、暖房動作中に循環流路106内の熱媒体が暖房動作に関係しない機器との熱交換によって温度低下することが抑制される。これによって、より高効率で暖房動作を実行することができる。
【0044】
(ラジエータ加熱処理)
ラジエータ加熱処理は、後述するラジエータ加熱判断処理によって条件が成立する場合に実行される。これにより、低温ラジエータ41の霜が除去される。
【0045】
ラジエータ加熱処理では、制御装置80が、図6に示すように熱管理装置100の各部を制御する。ラジエータ加熱処理には、第2熱回路20及び第3熱回路30は関与しない。第1熱回路10では、三方弁49が、チラー経路15からバッテリ経路14及び接続経路16の両方に熱媒体が流れるように制御され、ポンプ53が作動する。したがって、チラー経路15とバッテリ経路14によって構成される循環流路112に熱媒体が循環する状態と、チラー経路15、接続経路16、低温ラジエータ経路11、及び、接続経路17によって構成される循環流路106に熱媒体が循環する状態と、の両方が並行して実行される。
【0046】
ラジエータ加熱処理では、循環流路112において、バッテリ経路14を流れる熱媒体がバッテリ51によって加熱される加熱動作が実行される一方、バッテリ51は冷却される。加熱動作後にバッテリ51によって加熱された熱媒体は、三方弁49を通過して、接続経路16に流入する。循環流路106では、バッテリ51によって加熱された熱媒体が低温ラジエータ41に流入する循環動作が実行される。これにより、低温ラジエータ41は、熱媒体によって加熱される一方、熱媒体は冷却される。この結果、低温ラジエータ41に付着していた霜が溶解される。以上のようにして、低温ラジエータ41の除霜が実行される。
【0047】
(ラジエータ加熱判断処理)
次いで、図7を参照して、制御装置80が実行するラジエータ加熱判断処理を説明する。ラジエータ加熱処理は、除霜条件が成立すると実行される。除霜条件は、上述した暖房動作が所定期間以上実行されると成立する。暖房動作では、バッテリ51の電力が利用される。この結果、バッテリ51が発熱し、バッテリ51に蓄熱される。一方、暖房動作では、チラー52によって冷却された熱媒体が循環流路106を流れて、低温ラジエータ41に流入する。この結果、低温ラジエータ41に霜が付着する場合がある。なお、除霜条件は、上記に加え、または、上記に変えて、外気温が所定温度(例えば0度)以下である場合に成立してもよい。
【0048】
除霜条件が成立すると、制御装置80は、まず、S12において、バッテリ51の温度が所定範囲内であるか否かを判断する。バッテリ51は、使用時の温度によって、性能及び耐性が低下する場合がある。このため、バッテリ51の温度が、特定の温度範囲から外れる場合、バッテリ51の電力の入出力に制限が加えられる。所定範囲は、特定の温度範囲であり、例えば、15度以上47度以下である。この構成によれば、バッテリ51に制限が加えられている状況において、バッテリ51が冷却されることによって、バッテリ51に制限が加えられている状況からの回復を妨げることを回避することができる。
【0049】
なお、変形例では、所定範囲は、上記の範囲に限られない。例えば、所定範囲の下限値は、設定されていなくてもよいし、設定されていてもよい。下限値が設定されている場合には、下限値は、0度以上であってもよく、1度、2度、3度、4度、5度、6度、7度、8度、9度、10度、11度、12度、13度、14度、15度のいずれかの温度であってもよい。また、所定範囲の上限値は設定されていなくてもよいし、設定されていてもよい。上限値が設定されている場合には、上限値は、下限値よりも大きい温度であればよく、例えば、40度~60度のいずれかの温度であってもよく、45度、46度、47度、48度、49度、50度、51度、52度、53度、54度、55度、56度、57度、58度、59度、60度のいずれかの温度であってもよい。
【0050】
バッテリ51の温度が所定範囲外である場合(S12でNO)、ラジエータ加熱判断処理は終了する。これにより、バッテリ51の温度が所定範囲でない場合、S14以降の処理が禁止される。これにより、バッテリ加熱処理が禁止される。一方、バッテリ51の温度が所定範囲内である場合(S12でYES)、S14において、制御装置80は、熱媒体の温度が0度以上であるか否かを判断する。熱媒体の温度が0度未満である場合(S14でNO)、ラジエータ加熱判断処理は終了する。これにより、熱媒体の温度が0度未満である場合、S16以降の処理が禁止される。熱媒体の温度が0度未満では、熱媒体が低温ラジエータ41に流入しても、低温ラジエータ41に付着した霜を溶解させることができない。ラジエータ加熱判断処理では、熱媒体の温度が0度未満である場合に、ラジエータ加熱処理が実行されない。この構成によれば、低温ラジエータ41に付着した霜を溶解しづらい状況において、ラジエータ加熱処理を実行せずに済む。なお、変形例では、S14を実行する前に、制御装置80は、三方弁49をチラー経路15からバッテリ経路14に熱媒体が流れるように制御して、循環流路112に熱媒体を所定期間だけ循環させてもよい。これにより、熱媒体がバッテリ51によって加熱された後に、S14の処理を実行してもよい。すなわち、熱媒体の温度が0度未満である場合、循環流路112において、バッテリ経路14を流れる熱媒体がバッテリ51によって加熱される加熱動作が実行される一方、バッテリ51によって加熱された熱媒体が低温ラジエータ41に流入する循環動作が禁止されていてもよい。
【0051】
熱媒体の温度が0度以上である場合(S14でYES)、S16において、制御装置80は、ラジエータ加熱処理を実行する。次いで、S18において、制御装置80は、ラジエータ加熱処理の終了タイミングが到来したか否かを判断する。終了タイミングは、例えば、S16においてラジエータ加熱処理が開始されてから所定期間が経過した場合に、到来する。なお、所定期間は、固定期間であってもよいし、外気温、熱媒体の温度等によって変動する変動期間であってもよい。後者の場合、制御装置80には、実験またはシミュレーションによって予め特定された外気温、熱媒体の温度等と所定期間との関係を表すデータが記録されていてもよい。
【0052】
終了タイミングが到来していない場合(S18でNO)、S12に戻る。一方、終了タイミングが到来した場合(S18でYES)、S20において、制御装置80は、ラジエータ加熱処理を終了して、ラジエータ加熱判断処理が終了される。
【0053】
なお、制御装置80は、上述した動作及びラジエータ加熱処理以外の動作も可能である。例えば、制御装置80は、循環流路112に熱媒体を循環させながらヒータ50によって熱媒体を加熱することで、バッテリ51を加熱する動作を実行することができる。この動作は、寒冷地等においてバッテリ51が過度に低温となった場合に実行される。また、制御装置80は、循環流路112に熱媒体を循環させながらヒータ50によって熱媒体を加熱することで、低温ラジエータ41を加熱して除霜する動作を実行する都ができる。この動作は、ラジエータ加熱処理が実行されない場合(すなわち、S12でNOまたはS14でNOの場合)に実行される。さらに、制御装置80は、循環流路102に熱媒体を循環させながらヒータ71によって熱媒体を加熱することで、ヒータコア74による暖房を実行することができる。この動作は、上述した暖房動作を実行できないときに実行される。また、制御装置80は、電気機器経路13とバイパス経路12によって構成される循環流路に熱媒体を循環させることで、SPU46、PCU47、及び、モータの温度上昇を抑制する動作を実行することができる。
【0054】
熱管理装置100によれば、ラジエータ加熱処理によって、バッテリ51の使用時に発生した熱エネルギーを利用して、低温ラジエータ41を加熱することができる。これにより、低温ラジエータ41の除霜を目的として、わざわざ熱エネルギーを発生させずに済む。車両の走行用のモータに電力を供給するためのバッテリ51では、熱容量が他の車両に搭載される機器(例えばPCU47等)と比較して、大きい。このため、一旦、バッテリ51の温度が上昇すると低下しにくい。このため、例えば、バッテリ51の充電後、車両の高負荷下での走行後等、バッテリ51の温度が上昇した後では、バッテリ51は、除霜のために十分な熱エネルギーを蓄積することができる。熱管理装置100では、バッテリ51に蓄積された熱エネルギーを利用するために、熱エネルギー不足によってラジエータ加熱処理による除霜を実行することができない事態を抑制することができる。
【0055】
(第2実施形態)
第1実施形態と異なる点を説明する。本実施形態の熱管理装置100では、ラジエータ加熱動作において、三方弁49は、チラー経路15からバッテリ経路14に熱媒体が流れる状態と、チラー経路15から接続経路16に熱媒体が流れる状態と、に交互に切り換えられる。これにより、ラジエータ加熱処理では、循環流路112に熱媒体が循環する状態と、循環流路106に熱媒体が循環する状態と、が交互に切り換えられる。これにより、循環流路112に熱媒体が循環することによって、バッテリ51において熱媒体が加熱される加熱動作と、循環流路106に熱媒体が循環することによって、低温ラジエータ41に流入する熱媒体によって熱媒体が冷却されて低温ラジエータ41の霜が溶解される循環動作とが実行される。本実施形態では、三方弁49は、チラー経路15からバッテリ経路14に熱媒体が流れる状態と、チラー経路15から接続経路16に熱媒体が流れる状態と、の間で流路を切り換えてもよく、チラー経路15からバッテリ経路14と接続経路16の両方に熱媒体が流れる状態に切り換えられなくてもよい。
【0056】
(対応関係)
第1熱回路10が「熱回路」の一例である。チラー52が「熱交換器」の一例であり、三方弁49が「制御弁」の一例であり、ポンプ53が「ポンプ」の一例であり、低温ラジエータ41が「ラジエータ」の一例である。
【0057】
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。
【0058】
上記した各実施形態では、第1熱回路10には、三方弁49が配置されている。しかしながら、第1熱回路10には、少なくとも、チラー経路15からバッテリ経路14に熱媒体が流れる状態と、チラー経路15から接続経路16に熱媒体が流れる状態と、を切り換え可能な弁が配置されていればよい。例えば、三方弁49に換えて、バッテリ経路14と接続経路16とのそれぞれに、それぞれの経路を連通状態と閉塞状態とに切り換える開閉弁が配置されていてもよい。この場合、開閉弁が「制御弁」の一例である。制御装置80は、2個の開閉弁を用いて、チラー経路15からバッテリ経路14に熱媒体が流れる状態と、チラー経路15から接続経路16に熱媒体が流れる状態と、を切り換えてもよいし、チラー経路15からバッテリ経路14に熱媒体が流れる状態と、チラー経路15から接続経路16に熱媒体が流れる状態と、チラー経路15からバッテリ経路14と接続経路16の両方に熱媒体が流れる状態と、の三つの状態の間で流路を切り換えてもよい。
【0059】
上述した各実施形態では、第1熱回路10には、ポンプ53が配置され、ラジエータ加熱処理では、ポンプ53を作動させることによって、熱媒体を流している。しかしながら、第1熱回路10には、複数のポンプが配置されていてもよい。例えば、循環流路112に熱媒体を循環させるためのポンプと、循環流路106に熱媒体を循環させるためのポンプと、を個別に配置してもよい。
【0060】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの1つの目的を達成すること自体で技術有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0061】
10 :第1熱回路
11 :低温ラジエータ経路
12 :バイパス経路
13 :電気機器経路
14 :バッテリ経路
15 :チラー経路
16 :接続経路
17 :接続経路
20 :第2熱回路
30 :第3熱回路
41 :低温ラジエータ
49 :三方弁
50 :ヒータ
51 :バッテリ
52 :チラー
53 :ポンプ
100 :熱管理装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7