(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】電動車両
(51)【国際特許分類】
B60K 1/04 20190101AFI20230816BHJP
B60K 11/02 20060101ALI20230816BHJP
B62D 25/20 20060101ALI20230816BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20230816BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20230816BHJP
H01M 10/6554 20140101ALI20230816BHJP
H01M 50/249 20210101ALI20230816BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
B60K11/02
B62D25/20 E
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/6554
H01M50/249
(21)【出願番号】P 2020142652
(22)【出願日】2020-08-26
【審査請求日】2022-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】末若 大輔
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-053148(JP,A)
【文献】特開2018-095096(JP,A)
【文献】特開2014-157756(JP,A)
【文献】特開2019-145460(JP,A)
【文献】特開2018-114911(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0044540(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/04
B60K 11/02
B62D 25/20
H01M 10/613
H01M 10/625
H01M 10/6554
H01M 50/249
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロアパネルの下に配置されている電源と、
前記電源の下に配置されている冷却器と、
前記電源と前記冷却器の間に挟まれて圧縮されている伝熱材と、
前記冷却器よりも剛性が高く、前記冷却器を下側から覆うように前記電源の底に取り付けられている防護板と、
前記冷却器と前記防護板の間に挟まれて圧縮されている弾性体と、
前記電源の底板に取り付けられており、下方に突出するように湾曲しているブラケットと、
下から前記防護板と前記ブラケットに挿通されており、前記防護板を前記ブラケットに固定しているボルトと、
を備えており、
前記底板には、前記ブラケットに対向するように上方へ窪んでいる窪みが設けられており、
前記ブラケットを通過した前記ボルトの
先端が前記窪みの空間に位置している、
電動車両。
【請求項2】
前記弾性体は、前記冷却器の縁を前記電源に押し付けている、請求項1に記載の電動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、フロアパネルの下に電源が配置されており、さらに電源の下に冷却器が取り付けられている電動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
電動車両では、走行用のモータに電力を供給する電源がフロアパネルの下に配置される場合がある。特許文献1、2に、そのような電動車両の例が開示されている。特許文献2の電動車両では、電源の下に冷却器が取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-193290号公報
【文献】特開2014-191916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電源と冷却器の間には、伝熱性の高い伝熱材が挟まれる。電源から冷却器への伝熱性を高めるため、伝熱材は電源と冷却器の間で圧縮される。伝熱材を強く圧縮するために冷却器を電源に強く押し付ける必要がある。一方、冷却器は軽いことが望ましいため、薄い金属板で作られており、剛性が低い。それゆえ、伝熱材の全体を圧縮した状態に保持するには、冷却器を多数の箇所で電源に押し付けておく必要がある。冷却器の多数の箇所を固定するのは生産性がよろしくない。本明細書は、車体のフロアパネルの下に電源が配置されており、さらに電源の下に冷却器が取り付けられている電動車両に関し、生産性に優れた構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する電動車両は、フロアパネルの下に配置されている電源と、電源の下に配置されている冷却器と、電源と冷却器の間に挟まれて圧縮されている伝熱材と、冷却器よりも剛性が高く、冷却器を下側から覆うように電源の底に取り付けられている防護板と、冷却器と防護板の間に挟まれて圧縮されている弾性体を備える。防護板は走行中に道路から跳ねあがる小石などから電源と冷却器を保護する。
【0006】
本明細書が開示する電動車両では、冷却器よりも剛性が高い防護板が弾性体を介して冷却器を電源に押し付ける。剛性の高い防護板で冷却器を電源に押し付けることで、冷却器の多数の箇所を固定せずとも伝熱材を圧縮した状態に保持することができる。すなわち、本明細書が開示する電動車両は生産性に優れる。なお、「冷却器の剛性」、「防護板の剛性」とは、冷却器と防護板の曲げ剛性を意味する。
【0007】
本明細書が開示する技術の詳細とさらなる改良は以下の「発明を実施するための形態」にて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4】
図3のIV-IV線でカットした車体の断面図である。
【
図5】
図3のV-V線でカットした車体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を参照して実施例の電動車両を説明する。実施例の電動車両は電気自動車2である。
図1に、電気自動車2の車体3の分解斜視図を示す。
【0010】
図1は、車体3のフロアパネル4の下に配置されている部品を車体3から分解した図である。
図1、および、以降の図では、フロアパネル4の下に配置されている部品以外、車体3に組み込まれている部品の図示は省略した。フロアパネル4は、一対のロッカ5の間に配置されている。フロアパネル4は、車室の床に相当する。フロアパネル4の下には、電池パック10、冷却器20、防護板30が取り付けられる。電池パック10の側方にはエネルギ吸収メンバ40(後述)が取り付けられている。
【0011】
電池パック10は、電気自動車2の走行用のモータ(不図示)に供給する電力を蓄える。電池パック10は、一対のロッカ5に固定される。電池パック10は、利用中に発熱するため、電池パック10の下に冷却器20が配置される。電池パック10から冷却器20への伝熱性を高めるため、電池パック10と冷却器20の間には伝熱材28が挟まれる。詳しくは後述するが、冷却器20は、冷媒が流れる流路を有しており、伝熱材28は、流路の上方に配置される。
【0012】
走行中に跳ね上がる小石などから冷却器20と電池パック10を保護するために、冷却器20を下側から覆うように、防護板30が取り付けられる。冷却器20と防護板30の間には、弾性体31が挟まれる。弾性体31は、冷却器20の縁に沿った枠形状を有している。
【0013】
図2は、電池パック10、伝熱材28、冷却器20、弾性体31、防護板30を車体3に取り付けた図である。伝熱材28、冷却器20、弾性体31は、防護板30に隠れて見えない。
図2では、電池パック10の側方に取り付けられたエネルギ吸収メンバ40が見えている。エネルギ吸収メンバ40は、ロッカ5に沿って車体3の前後方向に延びている。
【0014】
伝熱材28は、例えば発泡性の樹脂であり、圧縮性(弾性)を有している。伝熱材28は、電池パック10と冷却器20の間に挟まれて圧縮されている。一方、冷却器20は、薄い2枚の金属板で作られており、曲げ剛性が低い。したがって冷却器20のみで伝熱材28を圧縮した状態に保持するには、冷却器20の多数の箇所を電池パック10に固定しなければならない。多数の箇所を固定するのは生産性がよくない。
【0015】
実施例の電気自動車2では、防護板30を利用し、冷却器20の多数の箇所を固定せずとも伝熱材28を圧縮した状態に保持できる。先に述べたように、防護板30は、走行中に跳ね上がる小石などから冷却器20を保護するため、板厚が冷却器20に用いられている金属板よりも厚く、冷却器20よりも曲げ剛性が高い。そこで、冷却器20と防護板30の間に弾性体31を挟む。弾性体31は、例えば発泡性の樹脂であり、冷却器20と防護板30の間に挟まれて圧縮される。冷却器20よりも剛性が高い防護板30が、弾性体31を介して冷却器20を電池パック10に押し付ける。実施例の電気自動車2は、伝熱材29を圧縮した状態に保持するのに冷却器20の多数の箇所を固定する必要がなく、生産性に優れている。
【0016】
図3に、電気自動車2の車体3の底面図を示す。なお、
図3の座標系の「Front」/「Rear」は、車体3の「前」/「後」を示している。
図3の座標系の「Right」は、車体3の後方から前方をみたときの「右」を示している。以降の図でも、座標系の「Front」/「Right」等の意味は同じである。
【0017】
電池パック10、冷却器20、弾性体31は、防護板30に覆われており、破線で描かれている。電池パック10は、一対のロッカ5の間に位置する。また、電池パック10は、一対のロッカ5を連結する前クロスメンバ6aと後クロスメンバ6bの間に位置する。
【0018】
冷却器20は、2本の縦流路21aと多数の横流路21bを備えている。
図3では、理解を助けるために、縦流路21aと横流路21b、および、弾性体31をグレーで示してある。多数の横流路21bは、2本の縦流路21aの間に連結されている。一方の縦流路21aに冷却水が供給される。冷却水は多数の横流路21bに分配され、他方の縦流路21aを通じて循環装置に戻る。
図3では、冷却器20の冷媒入口と冷媒出口は図示を省略した。以下では縦流路21aと横流路21bを合わせて流路21と総称する場合がある。複数の流路21のそれぞれと電池パック10の間に伝熱材29が挟まれている。
図3では、流路21の形状が伝熱材29の形状にも相当する。
【0019】
弾性体31は、車体3を下からみて、枠形状を有しており、冷却器20(流路21)を囲むように配置されている。
【0020】
次に、
図4、5を用いて、流路21の近傍における構造を説明する。
図4は、
図3のIV-IV線でカットした車体3の断面を示している。
図4は、車体3の右側のロッカ5の周辺の断面を示している。車体3の左側のロッカ5の周辺も同じ構造を有している。
【0021】
電池パック10は、天板12と底板13で構成されるハウジング14と、ハウジング14に収容される複数の電池セル11で構成されている。
図4(及び
図5)では、複数の電池セル11は単純な1個の矩形で簡略化して表してある。電池セル11は、伝熱材28を介してハウジング14の底板13に固定されている。
【0022】
電池パック10の側面に第1エネルギ吸収メンバ32が取り付けられており、第1エネルギ吸収メンバ32の外側に第2エネルギ吸収メンバ40が取り付けられている。エネルギ吸収メンバ32、40は、車体の前後方向に延びる中空の梁である。エネルギ吸収メンバ32、40は、障害物が車体3の側方から衝突したときに潰れて衝突のエネルギを吸収し、電池パック10を保護する。以下では、説明を簡単にするため、「エネルギ吸収メンバ」を「EAメンバ」と略称する。電池パック10は、第1EAメンバ32と第2EAメンバ40を介してロッカ5に支持される。
【0023】
第1EAメンバ32は、接着剤で電池パック10のハウジング14の側面に接着されているとともに、ボルト45とナット46で電池パック10と防護板30に固定されている。ハウジング14の底面から側方に向けてブラケット15が延びており、そのブラケット15と防護板30がボルト45とナット46で第1EAメンバ32に固定されている。
【0024】
第2EAメンバ40も、ボルト45とナット46で第1EAメンバ32に固定されている。第2EAメンバ40の上板41からフランジ43が延びており、そのフランジ43がボルト45とナット46で第1EAメンバ32に固定されている。先に述べたように、第2EAメンバ40は中空の梁であり、その内部に補強縦板47と筋交48を備えている。補強縦板47は、第2EAメンバ40の上板41と下板42を連結している。
【0025】
第2EAメンバ40は、ボルト51とナット52でロッカ5に固定されている。ロッカ5も車体3の前後方向に延びる中空の梁である。ロッカ5は、角張ったU形状のロッカインナパネル5aとロッカアウタパネル5bで構成されている。ロッカインナパネル5aとロッカアウタパネル5bはともにフランジを有しており、フランジ同士が接合され、中空のロッカ5が形成される。
【0026】
ロッカ5の底面から下方にフランジ5cが延びている。フランジ5cと干渉しないように第2EAメンバ40をロッカ5に固定するため、筒状のスペーサ53が用いられる。スペーサ53は、第2EAメンバ40の上板41を貫通し、スペーサ53の下端が第2EAメンバ40の下板に当接し、スペーサ53の上端がロッカ5の底面に当接している。ボルト51は下側からスペーサ53を通り、ナット52でロッカ5に固定される。スペーサ53によってロッカ5と第2EAメンバ40の間にギャップが確保され、第2EAメンバ40は、フランジ5cと干渉することなくロッカ5に固定される。
【0027】
車室の床に相当するフロアパネル4はロッカ5に固定されている。電池パック10はフロアパネル4の下に配置される。
【0028】
電池パック10のハウジング14の底面にはブラケット15、16が取り付けられている。ブラケット15、16は、下方に突出するように湾曲している。ハウジング14の底面には、ブラケット15、16の突出部に対向するように窪み13aが設けられている。ブラケット15、16の突出した部位に防護板30が固定されている。防護板30は、ボルト17とナット18でブラケット15、16(すなわち電池パック10)に固定される。ハウジング14の底面には窪み13aが設けられており、ブラケット15、16を通過したボルト17の先端は窪み13aの空間に位置する。
【0029】
下方に突出するように湾曲するブラケット15、16を採用するとともに、ブラケット15、16に対向するように窪み13aを設けることで、ハウジング14の底に孔を設けることなく、防護板30を電池パック10に固定することが可能になっている。ハウジング14の底に孔を設ける必要がないので、水がハウジング14内へ浸入することを防止できる。
【0030】
図4には冷却器20の縦流路21aの周辺の拡大図も示してある。先に述べたように、冷却器20は、2枚の金属板を張り合わせて作られており、2枚の金属板の間に縦流路21aが形成されている。冷却器20は伝熱材29で電池パック10の底板13に接着されている。伝熱材29は弾性を有しており、冷却器20と電池パック10の間に圧縮された状態で挟まれている。
【0031】
冷却器20と防護板30の間には弾性体31が挟まれて圧縮されている。弾性体31を介して防護板30が冷却器20を電池パック10のハウジング14の底面に押し付ける。
図4の縦流路21aは、車体3の右側の縦流路である。縦流路21aの右側、すなわち冷却器20の右縁20aが弾性体31を介して電池パック10の底面に押し付けられる。図示は省略するが、冷却器20の左縁も弾性体31を介して電池パック10の底面に押し付けられる。
【0032】
図5は、
図3のV-V線でカットした車体3の断面を示している。
図5は、電池パック10の前端における断面を示している。
図5には、冷却器20の横流路21bの周辺の拡大図も示してある。
【0033】
電池パック10は、車体3の前側のクロスメンバ(前クロスメンバ6a)の後方に位置する。
図5に示されている横流路21bは、複数の横流路21bの中の最前列に位置する。その横流路21bの前側、すなわち、冷却器20の前縁20bが弾性体31を介して電池パック10の底面に押し付けられる。電池パック10の前側でも、底板13には下方に突出するように湾曲しているブラケット16が取り付けられており、防護板30は、ボルト17とナット18によりブラケット16に固定されている。ハウジング14の底面には、ブラケット16の突出部に対向するように窪み13aが設けられている。
図4の場合と同様に、ブラケット15、16を通過したボルト17の先端は窪み13aの空間に位置する。先に述べたように、下方に突出するように湾曲するブラケット16を採用するとともに、ブラケット16に対向するように窪み13aを設けることで、ハウジング14の底に孔を設けることなく、防護板30を電池パック10に固定することができる。図示は省略するが、冷却器20の後縁も弾性体31を介して電池パック10の底面に押し付けられる。
【0034】
図3-
図5に示したように、弾性体31は、車体3を下からみて、冷却器20の縁を囲むように配置されている。防護板30は、枠形状の弾性体31を介して、冷却器20の縁を電池パック10に押し付ける。冷却器20は曲げ剛性の低い金属で作られているが、曲げ剛性の高い防護板30が冷却器20を電池パック10の底面に押し付けることで、伝熱材29は圧縮された状態で冷却器20と電池パック10の間に保持される。枠形状の弾性体31を介することで、冷却器20の全面にわたって伝熱材29は圧縮された状態に保持される。実施例の電気自動車2は、冷却器20の上面に広く分布している伝熱材29を圧縮された状態に保持するのに、剛性の高い防護板30を利用する。剛性の低い冷却器20の多数の箇所を個別に固定する必要がないので、電気自動車2は生産性が高い。
【0035】
実施例で説明した技術に関する留意点を述べる。車体3を下から見て弾性体31は冷却器20を囲むように配置されている。弾性体31は、防護板30と冷却器20の間に水が浸入することを防ぐ。ただし、枠形状の弾性体31は、ところどころで途切れていてもよい。
【0036】
冷却器20と電池パック10の間に配置される伝熱材29は、初期状態はゲル状の接着剤であってもよい。防護板30が冷却器20を電池パック10に押し付けるので、電気自動車2の製造過程において、ゲル状の接着剤は圧縮された状態に保持される。
【0037】
実施例の電池パック10は電源の一例に相当する。電源は、燃料電池であってもよい。本明細書における電動車両には、走行用に電気モータとともにエンジンを備えるハイブリッド車が含まれる。
【0038】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0039】
2 :電気自動車(電動車両)
3 :車体
4 :フロアパネル
5 :ロッカ
5a :ロッカインナパネル
5b :ロッカアウタパネル
5c :フランジ
6a :前クロスメンバ
6b :後クロスメンバ
10 :電池パック
11 :電池セル
12 :天板
13 :底板
13a :窪み
14 :ハウジング
15、16 :ブラケット
17 :ボルト
18 :ナット
20 :冷却器
21 :流路
28、29 :伝熱材
30 :防護板
31 :弾性体
32、40 :エネルギ吸収メンバ