(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-16
(45)【発行日】2023-08-24
(54)【発明の名称】ポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂、その製造方法及び樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 290/06 20060101AFI20230817BHJP
C08G 65/48 20060101ALI20230817BHJP
【FI】
C08F290/06
C08G65/48
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022005712
(22)【出願日】2022-01-18
【審査請求日】2022-01-18
(32)【優先日】2021-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
【住所又は居所原語表記】NO.201,TUNG HWA N.RD.,TAIPEI,TAIWAN
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】李 政中
(72)【発明者】
【氏名】▲ウー▼ 振華
(72)【発明者】
【氏名】彭 郁翔
(72)【発明者】
【氏名】魏 ▲ウェイ▼廷
(72)【発明者】
【氏名】林 建甫
【審査官】岩田 行剛
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第112898561(CN,A)
【文献】特開平06-107629(JP,A)
【文献】特開昭63-255263(JP,A)
【文献】特開平01-226872(JP,A)
【文献】特開平01-238568(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 65/
C08F 290/
C08L 71/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂と、
イソシアヌル酸トリアリルと、
ビスマレイミド樹脂と、
を備え、
前記ポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂は、
【化6】
の構造を有し、
m及びnは、9以上16未満の整数であり、
前記ポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂の量平均分子量は、2800~4500g/molであり、
前記ビスマレイミド樹脂が前記ポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂ではなく、
前記ポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂、前記イソシアヌル酸トリアリル、及び前記ビスマレイミド樹脂の合計重量100重量部に基づいて、前記ビスマレイミド樹脂の含有量は、20~40重量部である、
樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂、前記イソシアヌル酸トリアリル、及び前記ビスマレイミド樹脂の合計重量100重量部に基づいて、前記イソシアヌル酸トリアリルの含有量が10重量部である及び/又は前記ポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂の含有量が50~70重量部である、
請求項
1の樹脂組成物。
【請求項3】
前記樹脂組成物の硬化物の誘電率(3GHz)は、3.5~4.1であり、
前記樹脂組成物の硬化物の誘電正接(3GHz)は、0.0030~0.0050である、請求項
1の樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂、その製造方法及び樹脂組成物に関し、より具体的には、良好な誘電特性及び耐熱性を備えるポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂、その製造方法及び樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
技術の発展と共に、電子部品はより軽く、より薄く、より小型になるようになった。さらに、第5世代移動通信技術の誕生は、高周波伝送、高速信号伝送及び低レイテンシに対する産業的な要求を継続的に増加させている。そのため、現在、関連分野において、電子基板について誘電特性(低誘電率及び低誘電正接)及び耐熱性の要求を満たすために、高ガラス転移温度(Tg)、低誘電率(Dk)、低誘電正接(Df)及び高耐熱性を備える基板材料が研究開発されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ポリフェニレンエーテル樹脂又はシアネート樹脂等の一般的な基板材料は、良好な誘電特性、比較的高い反応性、速い反応速度を備えるが、これらの種類の樹脂は、ゲル化点の判定が難しく、加工性が悪いという欠点がある。
【0004】
一般的に、(大部分が脂肪族分子構造である)ビスマレイミド樹脂は、良好な加工性を備えるが、その低誘電特性ゆえに誘電正接について厳しい要求(0.0041未満の誘電正接)がある製品には未だ使用できない。例えば、先行技術において、脂肪族分子構造を含むビスマレイミド樹脂が開示される。しかしながら、脂肪族分子構造を含むビスマレイミド樹脂から作られたプリント回路基板の誘電正接は、0.0041を満たすが、基板のガラス転移温度を大幅に低減させてしまう。そのため、現在市販されるビスマレイミド樹脂は、高ガラス転移温度を維持するために電気特性を向上させ、高周波プリント回路基板に対する要求を満たす必要が依然としてある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、良好な誘電特性及び耐熱性を備えるポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂、その製造方法及び樹脂組成物を提供する。
【0006】
本開示のポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂は、反応物として一級アミン化合物及び無水マレイン酸を縮合重合反応させることにより得ることができる。一級アミン化合物は、ポリフェニレンエーテルジアミンを含む。
【0007】
本開示のポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂の製造方法は、以下の:無水マレイン酸、一級アミン化合物、及び溶媒を混合し、100~130℃で縮合重合してポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂を得るステップを含み、一級アミン化合物は、ポリフェニレンエーテルジアミンを含む。
【発明の効果】
【0008】
上記に基づくと、本開示の、ポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂は、ポリフェニレンエーテルジアミンにより形成される。そのため、ポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂は、良好な誘電特性及び耐熱性を備える。
【0009】
本開示は、さらに、上記のポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂により形成され、良好な誘電特性及び耐熱性を備える樹脂組成物を提供する。
【0010】
本開示の樹脂組成物は、上記のポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂、イソシアヌル酸トリアリル、及びビスマレイミド樹脂を含む。ポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂、イソシアヌル酸トリアリル、及びビスマレイミド樹脂の合計重量100重量部に基づいて、ビスマレイミド樹脂の含有量は、20~40重量部である。
【0011】
上記に基づいて、本開示の樹脂組成物は、本開示のポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂を含む。そのため、樹脂組成物も良好な誘電特性及び耐熱性を備え得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態に係る、ポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂の製造方法の概略部分フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の詳細な説明において、限定ではなく説明のために、本初発明の様々な原理に対する完全な理解を提供するための特定の詳細を開示する実施形態を例示する。しかしながら、本開示の利益を受ける上で、本発明は本明細書に開示される詳細な説明から逸脱せずに他の実施形態により実施可能であることが、当業者にとって明らかである。さらに、既知の装置、方法及び材料の説明は、本発明の様々な原理の説明を曖昧にしないために省略され得る。
【0014】
本明細書において示される範囲は、「約」特定の数値から「約」別の特定の数値であり得る、又は直接的に特定の数値及び/若しくは特定の数値から別の特定の数値であり得る。これらの提示される範囲は、別の実施形態においても当該特定の数値及び/若しくは当該特定の数値から別の特定の数値として含まれる。同様に、「約」の単語により数値が近似される場合、特定の値は、別の実施形態を形成することが理解される。さらに、各範囲の終点は、他の終点と関係して及び独立して有意である。
【0015】
本明細書において、非限定的な用語(得る、可能、例えば、又は他の同様の用語)は、必須ではない又は任意の実装例、含有例、追加例、又は存在例を示す。
【0016】
特段定義されない限り、本明細書において使用される全ての用語(技術的及び科学的な用語を含む)は、本開示が属する分野の当業者にとって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。さらに、(一般的な辞書に定義される用語等の)用語は、関連する技術の文脈における意味と同じ意味を有するものと解釈され、本明細書において明示的に定義されない限り、理想的又は過剰に公式なものであると解釈されるべきではないことが理解される。
【0017】
[ビスマレイミド樹脂の製造]
【0018】
図1に示されるように、本実施形態において、ポリフェニレンエーテルビスマレイミド(PPE-BMI)樹脂の製造方法は、以下のステップを備えてよい。
【0019】
最初に、一級アミン化合物及び溶媒を60~100℃において混合し、原料混合物を形成する。
【0020】
1つの実施形態において、原料混合物における一級アミン化合物の比率は、約30~60wt%である。
【0021】
1つの実施形態において、溶媒は、トルエン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルエチルケトン(MEK)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、ジメチルホルムアミド(DMF)、及びプロピレングリコールモノメチルエーテル(PM)から成る群から選択される。しかしながら、本開示は、上記の例に限定されない。
【0022】
1つの実施形態において、触媒を原料混合物に添加してよい。触媒は、メタンスルホン酸(MSA)、シュウ酸、p-トルエンスルホン酸(p-TSA)から成る群から選択される。しかしながら、本開示は、上記に例に限定されない。1つの実施形態において、原料混合物における添加された触媒の比率は、7~10wt%である。
【0023】
次に、無水マレイン酸を原料混合物に追加する。無水マレイン酸は、一級アミン化合物と縮合反応を起こし、本実施形態のポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂を形成してよい。通常、追加される無水マレイン酸のモル数は、一級アミン化合物の全アミン群のモル数の1~3倍である。無水マレイン酸は、30~40wt%濃度の無水マレイン酸溶液であってよい。
【0024】
1つの実施形態において、上記の縮合反応は、90~130℃において、5~8時間行われてよい。
【0025】
上記の縮合反応において、追加される無水マレイン酸のモル数が、一級アミン化合物の全アミン群のモル数の等倍未満である場合、取得されるポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂の量平均分子量は、過剰に高く、7000g/mol超になり得る。しかしながら、本開示は、この条件及び/又はこの結果をもたらす条件による効果に限定されない。
【0026】
1つの実施形態において、追加される無水マレイン酸のモル数は、好ましくは、一級アミン化合物の全アミン群のモル数の1,2~2.5倍である。1つの実施形態において、上記のモル数の比は、より良好な反応収率(例えば、よい低い副反応収率)及び/又はより良好な試薬(例えば、反応試薬又は中和試薬であるが、これに限定されない)使用率をもたらしてし得る。例えば、無水マレイン酸の比率が高すぎると、その後の処理(例えば、生成物抽出、廃液処理であるが、これに限定されない)において、酸―アルカリ中和のための必要なアルカリ(例えば、重曹であるが、これに限定されない)の追加量が増加する。
【0027】
1つの実施形態において、上記の方法により得られるポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂の量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定されてよい。また、上記のポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂の量平均分子量は、2800~4500g/molである。ゲル浸透クロマトグラフィーにおいて、標準分子量のポリスチレン(PS)を参照して較正が行われ、流速は1.0ml/minに設定され、移動相としてテトラヒドロフラン(THF)が使用される
【0028】
ポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂の量平均分子量が5000g/molより高い場合、当該ポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂は、他の樹脂と混ざり樹脂組成物を形成する可能性が低くなり、従って、容易に作用しづらくなる。
【0029】
ポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂の量平均分子量が2000g/molより低い場合、当該ポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂は、比較的低い溶解度を有するようになり、より簡単に樹脂沈殿を起こすようになる。
【0030】
上記の方法により形成されたポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂は、以下の式1により表現され得る。
【0031】
【0032】
式1において、m及びnは、それぞれ、9以上16未満の整数である。
【0033】
本実施形態において、上記の方法により形成されたポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂は、ポリフェニレンエーテル構造を高割合で含む。そのため、ポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂は、水分吸収性が低く、構造対称性が高い。従って、ポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂は、低誘電率(Dk)及び/又は低誘電正接(Df)を有し得る。1つの実施形態において、約3GHzの電磁波では、ポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂の誘電率は、3.5~4.1である及び/又はポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂の誘電正接は0.0030~0.0050である。
【0034】
さらに。上記の方法により形成されたポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂が銅箔基板の作成に使用される場合、形成される銅箔基板は、より高い剥離強度、より高いガラス転移温度(Tg)、より低い誘電率(Dk)、及び/又はより低い低誘電正接(Df)を有する。従って、銅箔基板は、高速及び/又は高周波伝送用のプリント回路基盤に適用できる。
【0035】
[実施例及び比較例]
【0036】
以下、本開示を具体的に説明するための実施例及び比較例を示すが、本開示はこれらの例に限定されない。
【0037】
ポリフェニレンエーテルアミン化合物の合成方法が以下に詳細に説明される。
【0038】
温調器、加熱パック、電気パグミル、及び復水器を備える1L4つ首ガラス反応フラスコにおいて、約100g(又は約0.06モル)の化合物1に示されるポリフェニレンエーテル構造化合物、約26.2(又は約0.19モル)の4-フルオロニトロベンゼン、及び約2.57g(約0.19モル)の炭酸カリウムを含む反応物を反応槽内に入れ、約60~100℃で約500gのDMA溶媒により完全に溶解させ、約10~24時間、約60~100℃で反応させた。反応が完了した後、1:1のメタノール:水で精製を行った。溶媒を除去した後、化合物2に示される化合物が得られた。約100g(又は約0.06モル)の化合物2及び0.4gのPd/Cを反応槽内に入れ、約60~100℃で約500gのDMA溶媒により完全に溶解させ、約10~24時間、約60~100℃、約18kg/cm2の水素ストレスで反応させた。反応が完了した後、1:1のメタノール:水で精製を行った。溶媒を除去した後、化合物3に示される化合物が得られた。
【0039】
上記の化合物1、化合物2、及び化合物3は、以下に示される、
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
上記の化合物1、化合物2、及び化合物3において、mおよびnの定義は、式1と同様である。
【0044】
ポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂の合成方法が以下に詳細に説明される。
【0045】
温調器、加熱パック、電気パグミル、及び復水器を備える2L4つ首ガラス反応フラスコにおいて、反応物として約47.1gの無水マレイン酸、触媒として約28gのp-トルエンスルホン酸を反応槽内に入れ、約60℃で約170℃のトルエン及び19gのジメチルアセトアミド(DMAC)の溶媒により完全に溶解させた。温度が約113℃に上がり、溶媒が還流した後、約234gの化合物3:ポリフェニレンエーテルアミン化合物溶液(約46~50の固体内容、溶媒はジメチルアセトアミド)を3時間にわたって蠕動ポンプにより滴下して縮合反応させた。滴下の間に循環脱水及び加熱が行われた。滴下が完了した後、温度を100℃から120℃に上昇させ、2時間、120℃で維持して水分を完全に除去した。重炭酸ナトリウムにより系をpH=7±0.5に中和した後、溶媒を除去し、本開示のポリフェニレンエーテルビスマレイミド(PPE-BMI)樹脂を得た。
【0046】
銅箔基板の製造方法が以下に詳細に説明される。
【0047】
[実施例1]
【0048】
上記のポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂及びその他の市販される樹脂を表1に記載される組成割合で混合して樹脂ワニス組成物を形成し、銅箔基板を従来手法で準備した。上記の従来の銅箔基板の製造方法では、2116ガラス繊維布を樹脂ワニス組成物に含侵し、その後、数分間、約170℃(含侵装置の温度)で乾燥させ、乾燥時間を調整及び制御することにより約4000~12000ポアズの溶融粘度を備える乾燥プリプレグを得ることができる。次に、4片のプリプレグを約35μm厚の銅箔2片の間に層ごとに配置し、押圧工程(以下に説明する)を実行することにより、表1の実施例1の銅箔基板が形成されてよい。
【0049】
押圧工程の条件/処理の例は以下の通りである。
【0050】
工程1:0.5時間で温度を約80℃から約195℃に上昇させた(85→195℃、0.5時間)。
【0051】
工程2:0.5時間で応力を約7kg/cm2から約25kg/cm2に上昇させた(7kg/cm2→25kg/cm2、0.5時間)。
【0052】
工程3:約195℃、約25kg/cm2の応力で、2時間、押圧した(195℃/25kg/cm2、0.5時間)。
【0053】
[実施例2]及び[実施例3]
【0054】
実施例と同一又は同様の方法で、樹脂ワニス組成物における要素の比率(表1に示す)が異なる、対応する銅箔基板を作成した。
【0055】
[比較例1]~[比較例3]
【0056】
比較例として、実施例と同一又は同様の方法で、本開示のポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂の代わりに一般に銅箔基板を作成するために使用される樹脂(例えば、SABICのモデル番号SA-9000の樹脂等)を使用して、対応する銅箔基板を作成した。さらに、使用した樹脂ワニス組成物における要素の各比率を表1に示す。また、使用したビスマレイミド樹脂(非ポリフェニレン系)は、ダイワ化成株式会社(台湾)から市販されるBMI-2300シリーズ及び/又はBMI-5100シリーズの樹脂であってよい。加えて、使用されたイソシアヌル酸トリアリルは、三菱ケミカルから市販されるTAICシリーズのポリシアヌレートであってよい。
【0057】
【0058】
実施例及び比較例の剥離強度を、IPC-TM-650のMethod2.4.8に応じて試験した。
【0059】
試験片のポップコーン及び剥離に必要な時間を記録するために、PCT2hrT288℃(すなわち、2時間のプレシャークッカー試験の後の288℃におけるはんだ耐熱)を、プレシャークッカー試験後の試験片を288±5℃ではんだ炉に浸すことで試験した。
【0060】
銅含有銅箔基板を6.35mm2正方形の試験片にカットし、約2時間、約105℃で、オーブン内で試験片を焼き、その後、熱機械分析機の試験プラットフォーム上に試験片を配置することにより、T-288耐熱性(銅含有)を試験し、熱機械分析により分析した。試験片及び銅箔基板剥離に必要な時間を記録するために、熱機械分析機は、ゼロにリセットされた後、約10℃/minで約288℃まで加熱され、288±5℃で維持した。
【0061】
エッチングされた基盤を5cm×5cm正方形の試験片にカットし、約2時間、約105℃で、オーブン内で試験片を焼き、その後、2atm×120℃の条件でプレシャークッカー内に配置することにより、水吸収試験(2時間のプレシャークッカー試験)を行った。プレシャークッカー内に試験片を120分配置した後、プレシャークッカー配置前後の試験片の重量差÷試験片の初期重量×100%を水吸収率として記録した。
【0062】
熱膨張率試験を、約20℃/minの加熱速度で熱機械分析機(TMA)を使用して行った。
【0063】
ガラス転移温度(Tg)試験を、約20℃/minの加熱速度で示差走査熱量測定器(DSC)を使用して行った。
【0064】
銅箔が除去された銅箔基板を5cm×5cm正方形の試験片にカットし、約2時間、約105℃で、オーブン内で試験片を焼き、その後、すきまゲージを使用して厚さを測定することにより、誘電率試験を行った。次に、試験片をインピーダンス分析機(AgilentE4991A)にクランプし、3点の誘電率(Dk)の平均値を測定した。
【0065】
銅箔が除去された銅箔基板を5cm×5cm正方形の試験片にカットし、約2時間、約105℃で、オーブン内で試験片を焼き、その後、すきまゲージを使用して厚さを測定することにより、誘電正接試験を行った。次に、試験片をインピーダンス分析機(AgilentE4991A)にクランプし、3点の誘電正接(Df)の平均値を測定した。
【0066】
分子量(Mw)を、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により分析し、標準分子量のポリスチレンを参照して較正した。
【0067】
実施例及び比較例の難燃性を、Ul-94規格に従って試験した。
【0068】
表1の実験結果によれば、実施例1~3において、PPE-BMI量が20%から40%に増加すると、剥離強度が4.46lb/inから4.98lb/inに増加し、Dkが4.04から4.01に減少し、Dfが0.00369から0.00361に減少した。
【0069】
同じ比率条件において、実施例2~3及び比較例1~2の実験結果の比較から、本開示のPPE-BMIが使用された場合、
剥離強度、熱膨張率、及びガラス転移温度の全ての特性は増加し、それ以外の特性は、SA-9000を使用した場合と同じ又はその他の対応する標準仕様内であった。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本開示の上記の実施形態のビスマレイミド樹脂の製造方法により形成されたビスマレイミド樹脂は、直接的又は間接的に銅箔基板に適用されてよく、さらに他の家電、産業電気製品、又は好適な適用における電気製品に加工されてよい。
【符号の説明】
【0071】
ステップ S10、S20、S30