(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-17
(45)【発行日】2023-08-25
(54)【発明の名称】熱発電装置及び熱発電方法
(51)【国際特許分類】
H02N 11/00 20060101AFI20230818BHJP
B04C 9/00 20060101ALI20230818BHJP
【FI】
H02N11/00 A
B04C9/00
(21)【出願番号】P 2019131658
(22)【出願日】2019-07-17
【審査請求日】2022-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 真之
【審査官】服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-093466(JP,A)
【文献】特開2017-196583(JP,A)
【文献】特表2014-525226(JP,A)
【文献】実開昭63-096398(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 11/00
B04C 9/00
H10N 10/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を所定の基準方向に導いて移動させる基準流路、
基準流路に連通して接続されており、接続部分に位置
し流体が衝突する屈曲案内部を有する修正流路であって、基準方向に沿って移動する流体を、屈曲案内部
への衝突によって基準方向とは異なる所定の修正方向に導いて移動させる修正流路、
修正流路が有する屈曲案内部に向けて配置され、屈曲案内部を通じて移動する流体の熱に基づいて発電を行う熱発電手段、
を備えたことを特徴とする熱発電装置。
【請求項2】
請求項1に係る熱発電装置において、
前記修正方向は、螺旋方向である、
ことを特徴とする熱発電装置。
【請求項3】
流体を所定の基準方向に導いて移動させ、
基準方向に沿って移動する流体を、屈曲案内部
への衝突によって、基準方向とは異なる所定の修正方向に導いて移動させ、
屈曲案内部に向けて配置された熱発電手段によって発電を行う、
ことを特徴とする熱発電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願に係る熱発電装置及び熱発電方法は、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する熱発電の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
熱発電に関する技術としては、後記特許文献1に開示されている構成がある。この技術においては、吸収剤が通るパイプ31に対して、永久磁石32、33と供に熱電素子35、36が設けられている(特許文献1、段落番号0019・
図2)。
【0003】
この熱電素子35、36は、半導体熱電素子42を有しており、パイプ31の外側に位置するフィン45側がバーナー18によって加熱されると、パイプ31内の吸収剤との温度差に応じて半導体熱電素子42に熱気電力が発生する(特許文献1、段落番号0021・
図3・
図4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前述の特許文献1に開示された技術では、半導体熱電素子42が発生させる熱気電力量は、熱電素子35、36が取り付けられたパイプ31内の吸収剤の加熱の程度に依存することになり、この加熱の程度を超える、より効率的な発電を行うことができないという問題がある。
【0006】
そこで本願に係る熱発電装置及び熱発電方法は、これらの問題を解決するため、より効率的に発電を行うことができる熱発電装置及び熱発電方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願に係る熱発電装置は、
流体を所定の基準方向に導いて移動させる基準流路、
基準流路に連通して接続されており、接続部分に位置する屈曲案内部を有する修正流路であって、基準方向に沿って移動する流体を、屈曲案内部によって基準方向とは異なる所定の修正方向に導いて移動させる修正流路、
修正流路が有する屈曲案内部に向けて配置され、屈曲案内部を通じて移動する流体の熱に基づいて発電を行う熱発電手段、
を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、本願に係る熱発電方法は、
流体を所定の基準方向に導いて移動させ、
基準方向に沿って移動する流体を、屈曲案内部を通じて、基準方向とは異なる所定の修正方向に導いて移動させ、
屈曲案内部に向けて配置された熱発電手段によって発電を行う、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本願に係る熱発電装置及び熱発電方法においては、屈曲案内部に向けて配置された熱発電手段によって発電を行う。
【0010】
ここで、屈曲案内部を通じて、流体が基準方向とは異なる所定の修正方向に導かれて移動した際、基準方向から修正方向に移動の方向が変化する部位では、流体の温度が上昇する。このため、温度が上昇した流体の熱に基づいて発電を行うことができ、より効率的に発電を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本願に係る熱発電装置及び熱発電方法の第1の実施形態であるサイクロンセパレータ20の全体構成を示す断面図である。
【
図3】本願に係る熱発電装置及び熱発電方法の第1の実施形態で用いる熱発電体30を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施形態における用語説明]
実施形態において示す主な用語は、それぞれ本願に係る熱発電装置及び熱発電方法の下記の要素に対応している。
傾斜壁7及びガイド羽根8・・・屈曲案内部
螺旋流路29・・・修正流路
熱発電体30・・・熱発電手段
流入路61・・・基準流路
矢印91方向・・・基準方向
矢印92方向・・・修正方向、螺旋方向
蒸気、ドレン・・・流体
【0013】
[第1の実施形態]
本願に係る熱発電装置及び熱発電方法の一実施形態を以下に説明する。本実施形態では、配管系統に設置されるサイクロンセパレータに、本願に係る熱発電装置及び熱発電方法を適用した例を掲げる。
【0014】
(サイクロンセパレータ20の構成の説明)
産業プラントには、蒸気やエアー等の流体を各種の機器に向けて移送するための配管系統が設置されていることがある。そして、たとえば飽和蒸気を移送する場合、移送途中の放熱によってその一部が凝縮し、配管内にはドレンが発生する。また、圧縮エアーを移送する場合、露点以下の温度になると結露して配管内にドレンが発生する。
【0015】
発生したこれらのドレンが蒸気やエアー等の流体と共に移送された場合、産業プラントにおける生産物の品質低下や、蒸気による装置の加熱効率の低下といった作動トラブルを生じさせるため、配管内に発生したドレンは可能な限り排除する必要がある。このため、一般に配管系統にはスチームトラップやエアートラップが設けられ、適宜、自動的に配管外にドレンを排出するようになっている。しかし、ドレンの一部は蒸気やエアー等の流体に巻き込まれて飛沫状になり、流体中に一部混入した状態で配管内を移動するため、スチームトラップやエアートラップによってドレンを完全に除去するのは難しい。
【0016】
このために、蒸気やエアー等の流体の供給先である機器の直前個所にサイクロンセパレータが設置されている。サイクロンセパレータは配管系統を流れる流体を取り込み、気相と液相の比重差を利用して、遠心力で流体からドレンの水滴を分離して排出する。これによって、ドレンをほぼ取り除いた乾いた蒸気やエアー等の流体を機器に供給することができる。
【0017】
図1は、本実施形態におけるサイクロンセパレータ20の全体の構成を示している。このサイクロンセパレータ20は、蒸気移送の配管系統に設けられる。サイクロンセパレータ20のボディー管10は、上部及び底部が開口した円筒形状を有している。
【0018】
そして、ボディー管10の上部には、上蓋17が螺着して固定されており、この上蓋17にはボディー管10の略円筒形状の軸方向と直行する方向に沿って流入口11及び流出口12が形成されている。この流入口11及び流出口12は、ボディー10内の空間と連通している。また、流入口11及び流出口12は同軸上に配置され、それぞれ外側に向けて開口している。なお、流入口11から上蓋17内に向かう流路は、流入路61として構成される。また、ボディー管10の開口した底側には、底蓋18が螺着して固定されている。この底蓋18の底部には排出口19が開口して形成されている。
【0019】
ボディー管10内の上部には、サイクロン体2が設けられている。
図2はサイクロン体2の斜視図であり、
図2における矢視断面I-Iが
図1に表れている。サイクロン体2は、内管3及びこの内管3を覆って位置する外管4を備えている。内管3及び外管4は、それぞれ上下方向に開口する円筒形状を有しており、内管3は外管4から上方向に突出して位置している。なお、サイクロン体2が備える内管3の外周には、流入路61に連通する螺旋状の螺旋流路29が形成される。
【0020】
また、外管4の外径はボディー管10の内径とほぼ同じであり、外管4とボディー管10の内壁15との間に流体が流れ込まないようになっている。さらに、外管4の内径は内管3の外形よりも大きく、外管4と内管3との間には周方向に等間隔に配置された5枚のガイド羽根8が介在している。これら5枚のガイド羽根8によって外管4と内管3とは一体的に接続されている。各ガイド羽根8はプレート状であり、外管4から上側に突出するガイド羽根8は、それぞれ上方から下方に向けて幅が漸次大きくなる略三角形状を有している。
【0021】
また、各ガイド羽根8の一方の側面には、それぞれ傾斜壁7が形成されている。傾斜壁7は、ガイド羽根8の上下方向における中央部から下方に向けてなだらかな傾斜を形成しており、傾斜壁7の下端は外管4の上部近傍に位置している。
【0022】
サイクロンセパレータ20の流入口11及び流出口12は、蒸気移送用の配管に接続されて設置される。流出口12側に接続される配管が、蒸気供給先の機器の直前の配管である。なお、排出口19はドレンの排水管に接続される。
【0023】
本実施形態においては、ボディー管10の内壁15の上部に、
図3に示す熱発電体30が貼り付けられている。この熱発電体30は可撓性のシート状に構成されており、内壁15に沿って湾曲した状態で貼り付けられ、固定されている。熱発電体30は、
図1に示す取付け個所50に位置するように取り付けられている。なお、本実施形態において、熱発電体30が発電した電力を外部に取り出すための配線や回路については図示及び説明を省略している。
【0024】
本実施形態で示す熱発電体30は、ゼーベック効果を利用して熱エネルギーを電気エネルギーに変換するものであり、熱電材料であるビスマス・テルル材に遷移金属をドーピングして熱発電素子32を形成し、この熱発電素子32をフレキシブル基板31に実装して構成されている。
【0025】
一般に、熱発電素子は、二種類の異種金属や半導体の両端を接続し、その両端に温度差が生じることによって起電力を発生するものであり、この起電力の大きさは、両端の金属や半導体の種類と温度差によって決まる。このため、熱発電体30の材質を一定とした場合、温度差が大きいほど大きな起電力を得ることができる。
【0026】
(サイクロンセパレータ20の動作・発電動作の説明)
以上のように構成されたサイクロンセパレータ20の動作及び発電動作を説明する。サイクロンセパレータ20の流入口11から、蒸気が矢印91方向に沿って流入路61に流入する。そして、流入した蒸気は、サイクロン体2の内管3の円筒形状に沿って内管3の外周を旋回すると共に、ガイド羽根8に衝突し、さらに傾斜壁7に沿って導かれて、螺旋状に内管3と外管4との間に流れ込む。
【0027】
すなわち、矢印91方向に流入した蒸気は、サイクロン体2のガイド羽根8及び傾斜壁7によって矢印92方向が示す螺旋方向に移動方向を修正される。この矢印92方向に蒸気が流れる流路が本実施形態における螺旋流路29である。このとき、上述のようにガイド羽根8は上方から下方に向けて幅が漸次大きくなる略三角形状を有しているため、蒸気は無理なく内管3と外管4との間に流れ込む。
【0028】
サイクロン体2内の螺旋流路29に高速で流入した蒸気は、内管3及び外管4の円筒形状に沿って矢印92方向が示す螺旋方向に旋回し、さらにサイクロン体2の下側に抜け、ボディー管10の円筒形状に従って引き続き矢印92方向に向けて螺旋状に旋回する。
【0029】
この蒸気の螺旋状の旋回よって遠心力が生じ、比重の大きな水についてはより大きな遠心力が働く。この結果、遠心力によって外側に飛ばされた水は水滴となってボディー管10の内壁15に付着する。そして、この水滴は内壁15を伝って流れ落ち、排出口19から排出される。なお、このとき蒸気中の水と同時にゴミやスケールも分離され、水滴と共に排出される。
【0030】
こうして、遠心分離によって水滴がほぼ完全に分離された乾き蒸気は、サイクロン体2の内管3内を下側から上側に向けて通過し、矢印93方向に沿って流出口12から流出する。そして、サイクロンセパレータ20を通過した乾き蒸気が蒸気供給先である機器に供給される。
【0031】
ここで、蒸気の移動方向がサイクロン体2によって矢印91方向から矢印92方向の螺旋方向に変化する部位は、蒸気がガイド羽根8に衝突する影響等に起因して蒸気の温度が上昇し、昇温領域を形成する。そして、この昇温領域に対応する部位が、前述の熱発電体30の取付け個所50である。
【0032】
すなわち、配管系統を流れる蒸気の流路において、特に温度が上昇する昇温領域ではボディー10の内側から外側に向けてより大きな温度差による熱移動が生じる。そして、昇温領域に対応する取付け個所50に取り付けられた熱発電体30は、この大きな温度差に基づいて発電を行う。このため、熱発電体30によってより大きな起電力を得て、効率的な発電を行うことができる。
【0033】
そして、熱発電体30によって得た起電力は接続線(図示せず)を通じて取り出され、電力として必要な機器に供給される。たとえば、スチームトラップやエアートラップの温度又は振動を検出するためのセンサに供給され、センサの電源として用いられる。このセンサによってスチームトラップやエアートラップの温度又は振動を検出し、スチームトラップやエアートラップのドレン排出の詰まりや流体漏れを検出する。
【0034】
[その他の実施形態]
前述の実施形態においては、
図1に示した取付け個所50に向けて単一の熱発電体30(熱発電手段)を取り付けたが、周方向に帯状に延びる範囲に複数の熱発電体(又は周方向に長い単一の熱発電体)を配置することもできる。また、移動する蒸気(流体)の移動方向との関係で蒸気の温度が上昇する昇温領域であれば、他の部位、たとえば前述の実施形態におけるサイクロン体2の外管4に対応する部位に熱発電体を設けてもよい。
【0035】
また、前述の実施形態においては、熱発電体30をボディー10の内壁15に沿って貼り付けた例を示したが、ボディー10の外面に貼り付けることもできる。さらに、熱発電手段として熱発電体30を例示したが、熱に基づいて発電を行うものであれば他の構成を採用することもできる。
【0036】
前述の実施形態においては、サイクロンセパレータを例に掲げたが、基準方向に沿って移動する流体を、屈曲案内部によって基準方向とは異なる所定の修正方向に導いて移動させる構成であれば、他の機器に本願に係る熱発電装置及び熱発電方法を適用することもできる。
【符号の説明】
【0037】
2:サイクロン体 7:傾斜壁 8:ガイド羽根 29:螺旋流路
30:熱発電体 61:流入路