(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】処理装置、処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01M 17/007 20060101AFI20230822BHJP
【FI】
G01M17/007 Z
(21)【出願番号】P 2022507962
(86)(22)【出願日】2020-03-19
(86)【国際出願番号】 JP2020012306
(87)【国際公開番号】W WO2021186673
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2022-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】山下 哲孝
(72)【発明者】
【氏名】傍田 健治
(72)【発明者】
【氏名】坂田 正行
(72)【発明者】
【氏名】千葉 雄樹
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-219161(JP,A)
【文献】特表2017-522212(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第2246686(EP,A1)
【文献】特開2008-216113(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/00~17/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが車両を利用している時の車両状態及び周辺環境を示すユーザ車両データに基づき所定の車両状態及び周辺環境を決定する決定手段と、
前記所定の車両状態及び周辺環境と、車両走行テストのシナリオで示される車両状態及び周辺環境との類似度を算出する算出手段と、
前記算出手段による算出結果を出力する出力手段と、
を有する処理装置。
【請求項2】
前記所定の車両状態及び周辺環境は、前記ユーザが利用している車両にトラブルが発生した時の車両状態及び周辺環境である請求項1に記載の処理装置。
【請求項3】
前記所定の車両状態及び周辺環境は、前記ユーザ車両データにおける出現頻度が閾値以上である車両状態及び周辺環境である請求項1又は2に記載の処理装置。
【請求項4】
前記出力手段は、前記算出結果として、前記所定の車両状態及び周辺環境との前記類似度が基準値以上である前記車両走行テストのシナリオの有無を出力する請求項1から3のいずれか1項に記載の処理装置。
【請求項5】
前記所定の車両状態及び周辺環境との前記類似度が前記基準値以上である前記車両走行テストのシナリオがない場合、
前記算出手段は、前記類似度が高い方から所定数の前記車両走行テストのシナリオで示される車両状態及び周辺環境の共通点を抽出し、
前記出力手段は、前記算出結果として、前記共通点を出力する請求項4に記載の処理装置。
【請求項6】
前記算出手段は、前記共通点の中から前記所定の車両状態及び周辺環境と相違する点を抽出し、
前記出力手段は、前記算出結果として、前記共通点の中の前記所定の車両状態及び周辺環境と相違する点を出力する請求項5に記載の処理装置。
【請求項7】
前記所定の車両状態及び周辺環境との前記類似度が前記基準値以上である前記車両走行テストのシナリオがある場合、
前記算出手段は、前記所定の車両状態及び周辺環境との前記類似度が前記基準値以上である前記車両走行テストのシナリオで示される車両状態及び周辺環境と、前記所定の車両状態及び周辺環境との相違点を抽出し、
前記出力手段は、前記算出結果として、前記相違点を出力する請求項4から6のいずれか1項に記載の処理装置。
【請求項8】
コンピュータが、
ユーザが車両を利用している時の車両状態及び周辺環境を示すユーザ車両データに基づき所定の車両状態及び周辺環境を決定し、
前記所定の車両状態及び周辺環境と、車両走行テストのシナリオで示される車両状態及び周辺環境との類似度を算出し、
算出結果を出力する処理方法。
【請求項9】
コンピュータを、
ユーザが車両を利用している時の車両状態及び周辺環境を示すユーザ車両データに基づき所定の車両状態及び周辺環境を決定する決定手段、
前記所定の車両状態及び周辺環境と、車両走行テストのシナリオで示される車両状態及び周辺環境との類似度を算出する算出手段、
前記算出手段による算出結果を出力する出力手段、
として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理装置、処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1乃至4は、車両の走行データ、環境データ等を収集する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-153291号公報
【文献】特開2019-123351号公報
【文献】特開2018-025539号公報
【文献】特開2016-001172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両メーカは、複数のシナリオで車両走行テストを実施する。シナリオは、車両状態や周辺環境等で定義される。あらゆる状況を模擬したシナリオで車両走行テストを行うのが望ましいが、時間や人手等の制約からすべての状況を網羅するのは難しい。このため、優先度が高い状況を模擬したシナリオで車両走行テストを行うのが望ましい。しかしながら、優先度が高く、かつ、既存のシナリオに存在しない状況を人手で見つけるのは容易でない。特許文献1乃至4はいずれも、当該課題を記載も示唆もしていない。
【0005】
本発明は、車両走行テストのシナリオ作成を支援する技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、
ユーザが車両を利用している時の車両状態及び周辺環境を示すユーザ車両データに基づき所定の車両状態及び周辺環境を決定する決定手段と、
前記所定の車両状態及び周辺環境と、車両走行テストのシナリオで示される車両状態及び周辺環境との類似度を算出する算出手段と、
前記算出手段による算出結果を出力する出力手段と、
を有する処理装置が提供される。
【0007】
また、本発明によれば、
コンピュータが、
ユーザが車両を利用している時の車両状態及び周辺環境を示すユーザ車両データに基づき所定の車両状態及び周辺環境を決定し、
前記所定の車両状態及び周辺環境と、車両走行テストのシナリオで示される車両状態及び周辺環境との類似度を算出し、
算出結果を出力する処理方法が提供される。
【0008】
また、本発明によれば、
コンピュータを、
ユーザが車両を利用している時の車両状態及び周辺環境を示すユーザ車両データに基づき所定の車両状態及び周辺環境を決定する決定手段、
前記所定の車両状態及び周辺環境と、車両走行テストのシナリオで示される車両状態及び周辺環境との類似度を算出する算出手段、
前記算出手段による算出結果を出力する出力手段、
として機能させるプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、車両走行テストのシナリオ作成を支援する技術が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態の処理装置のハードウエア構成の一例を示す図である。
【
図2】本実施形態の処理装置の機能ブロック図の一例である。
【
図3】本実施形態の処理装置が処理する情報の一例を模式的に示す図である。
【
図4】本実施形態の処理装置が出力する情報の一例を模式的に示す図である。
【
図5】本実施形態の処理装置が出力する情報の一例を模式的に示す図である。
【
図6】本実施形態の処理装置が出力する情報の一例を模式的に示す図である。
【
図7】本実施形態の処理装置の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図8】本実施形態の処理装置の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図9】本実施形態の処理装置が出力する情報の一例を模式的に示す図である。
【
図10】本実施形態の処理装置が出力する情報の一例を模式的に示す図である。
【
図11】本実施形態の処理装置の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1の実施形態>
「概要」
まず、本実施形態の処理装置の概要を説明する。処理装置は、様々な場面で生成された車両関連データを収集して一元管理し、それらを特徴的な手法で処理して、開発者のサポート等を行う。具体的には、処理装置は、車両走行テストに関する車両関連データ、及び、ユーザ利用時に生成された車両関連データを特徴的な手法で処理することで、車両走行テストのシナリオ作成を支援する。
【0012】
車両走行テストに関する車両関連データは、車両走行テストのシナリオ(以下、単に「シナリオ」という場合がある)を示す情報を含む。車両関連データは、各シナリオでの車両走行テストの結果をさらに含んでもよい。車両走行テストのシナリオは、車両状態や周辺環境で定義される。
【0013】
ユーザ利用時に生成された車両関連データは、ユーザが車両を利用している時の車両状態や周辺環境を示すデータであり、例えば車両に搭載されたセンサー等で生成される。
【0014】
処理装置は、ユーザ利用時に生成された車両関連データに基づき、車両走行テストを行うのが望ましい所定の車両状態及び周辺環境(以下、単に「所定の車両状態及び周辺環境」という場合がある)を決定する。所定の車両状態及び周辺環境は、例えば、車両にトラブルが発生した時(その前後)の車両関連データで示される車両状態及び周辺環境であってもよいし、ユーザが車両を利用している時に頻出する車両状態及び周辺環境であってもよいし、その他であってもよい。
【0015】
そして、処理装置は、「決定した所定の車両状態及び周辺環境」と「車両走行テストのシナリオで示される車両状態及び周辺環境」との類似度を算出し、その結果を出力する。
【0016】
このように、処理装置は、ユーザ利用時に生成された車両関連データに基づき、車両走行テストを行うのが望ましい所定の車両状態及び周辺環境(優先度が高い状況)を決定することができる。そして、処理装置は、決定した所定の車両状態及び周辺環境を示すシナリオ又は類似するシナリオが存在するか確認し、その結果を出力することができる。処理装置は、このような処理で、車両走行テストのシナリオ作成を支援する。
【0017】
「ハードウエア構成」
次に、処理装置のハードウエア構成の一例を説明する。処理装置の各機能部は、任意のコンピュータのCPU(Central Processing Unit)、メモリ、メモリにロードされるプログラム、そのプログラムを格納するハードディスク等の記憶ユニット(あらかじめ装置を出荷する段階から格納されているプログラムのほか、CD(Compact Disc)等の記憶媒体やインターネット上のサーバ等からダウンロードされたプログラムをも格納できる)、ネットワーク接続用インターフェイスを中心にハードウエアとソフトウエアの任意の組合せによって実現される。そして、その実現方法、装置にはいろいろな変形例があることは、当業者には理解されるところである。
【0018】
図1は、処理装置のハードウエア構成を例示するブロック図である。
図1に示すように、処理装置は、プロセッサ1A、メモリ2A、入出力インターフェイス3A、周辺回路4A、バス5Aを有する。周辺回路4Aには、様々なモジュールが含まれる。処理装置は周辺回路4Aを有さなくてもよい。なお、処理装置は物理的及び/又は論理的に分かれた複数の装置で構成されてもよいし、物理的及び/又は論理的に一体となった1つの装置で構成されてもよい。処理装置が物理的及び/又は論理的に分かれた複数の装置で構成される場合、複数の装置各々が上記ハードウエア構成を備えることができる。
【0019】
バス5Aは、プロセッサ1A、メモリ2A、周辺回路4A及び入出力インターフェイス3Aが相互にデータを送受信するためのデータ伝送路である。プロセッサ1Aは、例えばCPU、GPU(Graphics Processing Unit)などの演算処理装置である。メモリ2Aは、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などのメモリである。入出力インターフェイス3Aは、入力装置、外部装置、外部サーバ、外部センサー、カメラ等から情報を取得するためのインターフェイスや、出力装置、外部装置、外部サーバ等に情報を出力するためのインターフェイスなどを含む。入力装置は、例えばキーボード、マウス、マイク、物理ボタン、タッチパネル等である。出力装置は、例えばディスプレイ、スピーカ、プリンター、メーラ等である。プロセッサ1Aは、各モジュールに指令を出し、それらの演算結果をもとに演算を行うことができる。
【0020】
「機能構成」
次に、処理装置の機能構成を説明する。
図2に示すように、処理装置10は、記憶部11と、決定部12と、算出部13と、出力部14とを有する。
【0021】
記憶部11は、車両関連データを記憶する。車両関連データは、走行テストデータ及びユーザ車両データを含む。
【0022】
走行テストデータは、車両の走行テストに関するデータであり、各種データを含むことができる。走行テストデータは、車両走行テストの複数のシナリオ各々の内容を示す情報を含む。なお、走行テストデータは、各シナリオでの車両走行テストの結果を示すデータなどをさらに含んでもよい。
【0023】
図3に、車両走行テストの複数のシナリオ各々の内容を示す情報の一例を模式的に示す。図示する情報では、複数のシナリオを互いに識別するシナリオ識別情報と、周辺環境に関する情報と、車両状態に関する情報とが互いに紐づけられている。周辺環境と車両状態とにより、シナリオの内容が定義される。なお、さらにその他の情報を用いてシナリオの内容が定義されてもよい。
【0024】
周辺環境は、テスト実行時の車両の周辺の環境、より具体的にはテスト結果に影響を与える可能性がある因子を示し、例えば、天気、気温、湿度、車両が走行する道路の種類、車両の周囲における所定の対象物(他の車両、歩行者、信号機、電信柱など)の存在や状態等が例示される。
【0025】
車両状態は、テスト実行時の車両の状態、より具体的にはテスト結果に影響を与える可能性がある因子を示し、例えば、図示するように速度、部品Aの温度、入力内容(制御入力、負荷入力等)等が例示される。
【0026】
例えば、
図3に示すシナリオ識別情報「A00001」で識別されるシナリオでは、天気「晴」、気温「20~25℃」、湿度「50~60%」、走行する道路「アスファルト」、車両の速度「50~60km/h」、部品Aの温度「X℃」等の条件下で車両走行テストを行うことが示されている。
【0027】
ユーザ車両データは、ユーザが車両を利用している時の車両状態及び周辺環境を示すデータである。ユーザ車両データは、従来のあらゆる技術を利用して生成することができる。例えば、車両状態を示すデータは、車両に搭載されたセンサー等で生成されてもよい。また、周辺環境を示すデータは、車両に搭載されたセンサー(道路を撮影するカメラ、温度センサー、湿度センサー、周辺情報を取得するライダー等)で生成されてもよいし、他の手法(天気情報を記憶するサーバから取得等)で生成されてもよい。
【0028】
ユーザ車両データは、車両走行テストのシナリオで示される複数のパラメータ(天気、気温、速度、部品A温度等)の中の全部のデータを有することが好ましい。しかし、走行テスト時に車両に搭載されるセンサーの種類と、販売される車両に搭載されるセンサーの種類は異なり得る。また、搭載されるセンサーの種類は車両ごとに異なり得る。このため、ユーザ車両データは、車両走行テストのシナリオで示される複数のパラメータの中の一部のデータのみを有してもよい。
【0029】
ユーザ車両データは、常時インターネットに接続されたコネクテッドカーからインターネット経由で外部装置に送信されたデータであってもよい。コネクテッドカーは、車両にトラブルが発生した時(その前後)のユーザ車両データを外部装置に送信してもよいし、特にトラブルが発生しない時に所定の時間間隔でユーザ車両データを外部装置に送信してもよい。
【0030】
その他、各車両で収集されたユーザ車両データは、各車両内の記憶装置内に蓄積されてもよい。車両にトラブルが発生した時(その前後)のユーザ車両データが車両の記憶装置内に蓄積されてもよいし、特にトラブルが発生しない時に所定の時間間隔でユーザ車両データが車両の記憶装置内に蓄積されてもよい。そして、任意のタイミングかつ任意の手段で、当該ユーザ車両データが処理装置10に入力され、記憶部11に記憶されてもよい。
【0031】
図2に戻り、決定部12は、記憶部11に記憶されているユーザ車両データに基づき、車両走行テストを行うのが望ましい所定の車両状態及び周辺環境を決定する。以下、決定部12による決定処理例を説明する。
【0032】
「決定処理例1」
所定の車両状態及び周辺環境は、例えば、車両にトラブルが発生した時(その前後)の車両関連データで示される車両状態及び周辺環境であってもよい。ここで、決定部12が、記憶部11に記憶されているユーザ車両データの中から車両にトラブルが発生した時(その前後)のデータを抽出する処理の一例を説明する。
【0033】
例えば、コネクテッドカーは、車両にトラブルが発生した時、トラブル発生を示す情報と、その時(その前後)のユーザ車両データとを外部装置に送信してもよい。そして、当該処理でコネクテッドカーが送信したユーザ車両データは、トラブル発生時のデータである旨を示す情報を紐づけて、記憶部11に記憶されてもよい。この場合、決定部12は、記憶部11に記憶されているユーザ車両データの中から、トラブル発生時のデータである旨を示す情報を紐づけられているデータを抽出する。
【0034】
その他、記憶部11に記憶されているユーザ車両データは、データ作成時の日時情報、データ作成時の車両の位置情報、車両識別情報、車両の車種情報等の各種索引情報が紐づけられていてもよい。そして、決定部12は、オペレータが指定したトラブル発生時のデータを特定する検索条件に基づき記憶部11に記憶されているユーザ車両データを検索することで、車両にトラブルが発生した時(その前後)の車両関連データを抽出してもよい。上記検索条件は、例えば上記索引情報を論理演算子で繋いだ式とすることができる。
【0035】
「決定処理例2」
所定の車両状態及び周辺環境は、例えば、ユーザ車両データにおける出現頻度が閾値以上である車両状態及び周辺環境であってもよい。決定部12は、記憶部11に記憶されているユーザ車両データを解析することで、出現頻度が閾値以上である車両状態及び周辺環境を特定することができる。出現頻度は、出現率、出現時間等で示される。出現率は、例えばユーザ車両データの長さT[min]に対する各車両状態及び周辺環境が現れる長さt[min]の割合で示されてもよいし、その他の手法で示されてもよい。出現時間は、その状況(その車両状態及びその周辺環境)が出現している時間の長さで示される。
【0036】
算出部13は、決定部12が決定した所定の車両状態及び周辺環境と、車両走行テストのシナリオで示される車両状態及び周辺環境との類似度を算出する。類似度は、車両状態に関する各種パラメータ(速度、部品A温度等)の値や、周辺環境に関する各種パラメータ(天気、気温等)の値に基づき算出される。類似度を算出するアルゴリズムの詳細は設計的事項である。
【0037】
また、算出部13は、算出した類似度と予め設定された基準値との大小比較により、決定部12が決定した所定の車両状態及び周辺環境との類似度が基準値以上である車両走行テストのシナリオの有無を判断してもよい。なお、「所定の車両状態及び周辺環境との類似度が基準値以上である車両走行テストのシナリオ」は、各シナリオで示される車両状態及び周辺環境と、所定の車両状態及び周辺環境との類似度が基準値以上であるシナリオである(以下同様)。
【0038】
出力部14は、算出部13による算出結果を出力する。出力部14は、ディスプレイ、投影装置、メーラ、プリンター、スピーカ等のあらゆる出力装置を介して、算出結果を出力することができる。
【0039】
出力部14は、例えば
図4に示すように、決定部12が決定した所定の車両状態及び周辺環境と、車両走行テストの複数のシナリオ各々との類似度を表示(一覧表示、順次表示等)してもよい。
【0040】
その他、出力部14は、
図5及び
図6に示すように、決定部12が決定した所定の車両状態及び周辺環境との類似度が基準値以上である車両走行テストのシナリオの有無を示してもよい。なお、
図5に示すように、所定の車両状態及び周辺環境との類似度が基準値以上である車両走行テストのシナリオがある場合、そのシナリオを識別する情報を表示してもよい。図では所定の車両状態及び周辺環境との類似度が基準値以上である車両走行テストのシナリオが1つだけである場合の例を示しているが、条件を満たすシナリオが複数存在し、複数のシナリオ各々を識別する情報が表示されてもよい(一覧表示、順次表示等)。そして、表示されたシナリオの中の1つが選択されると、そのシナリオの詳細情報(車両状態、周辺環境の詳細等)が表示されてもよい。
【0041】
次に、
図7のフローチャートを用いて、処理装置10の処理の流れの一例を説明する。
【0042】
まず、決定部12は、記憶部11に記憶されているユーザ車両データに基づき所定の車両状態及び周辺環境を決定する(S10)。例えば、決定部12は、ユーザが利用している車両にトラブルが発生した時の車両状態及び周辺環境を、所定の車両状態及び周辺環境として決定してもよい。その他、決定部12は、ユーザ車両データにおける出現頻度が閾値以上である車両状態及び周辺環境を、所定の車両状態及び周辺環境として決定してもよい。
【0043】
次いで、算出部13は、S10で決定された所定の車両状態及び周辺環境と、車両走行テストのシナリオで示される車両状態及び周辺環境との類似度を算出する(S11)。
【0044】
そして、出力部14は、S11の算出結果を出力する(S12)。出力部14は、例えば
図4に示すように、決定部12が決定した所定の車両状態及び周辺環境と、車両走行テストの複数のシナリオ各々との類似度を表示する。
【0045】
次に、
図8のフローチャートを用いて、処理装置10の処理の流れの他の一例を説明する。
【0046】
まず、決定部12は、記憶部11に記憶されているユーザ車両データに基づき所定の車両状態及び周辺環境を決定する(S20)。例えば、決定部12は、ユーザが利用している車両にトラブルが発生した時の車両状態及び周辺環境を、所定の車両状態及び周辺環境として決定してもよい。その他、決定部12は、ユーザ車両データにおける出現頻度が閾値以上である車両状態及び周辺環境を、所定の車両状態及び周辺環境として決定してもよい。
【0047】
次いで、算出部13は、S20で決定された所定の車両状態及び周辺環境と、車両走行テストのシナリオで示される車両状態及び周辺環境との類似度を算出する(S21)。次いで、算出部13は、算出した類似度と予め設定された基準値との大小比較により、S20で決定された所定の車両状態及び周辺環境との類似度が基準値以上である車両走行テストのシナリオを抽出する(S22)。
【0048】
そして、出力部14は、S22の抽出結果を出力する(S23)。S20で決定された所定の車両状態及び周辺環境との類似度が基準値以上である車両走行テストのシナリオがある場合、出力部14は、
図5に示すような情報を出力してもよい。当該情報では、抽出されたシナリオの件数と、抽出されたシナリオを識別する情報とが表示されている。そして、表示されたシナリオの中の1つが選択されると、そのシナリオの詳細情報(車両状態、周辺環境の詳細等)が表示される。一方、S20で決定された所定の車両状態及び周辺環境との類似度が基準値以上である車両走行テストのシナリオがない場合、出力部14は、
図6に示すような情報を出力してもよい。当該情報では、抽出されたシナリオがない旨が示されている。
【0049】
「作用効果」
処理装置10は、実際にユーザが車両を利用している時に生成されたユーザ車両データに基づき、車両走行テストを行うのが望ましい所定の車両状態及び周辺環境を決定することができる。このように、処理装置10は、ユーザ車両データに基づき車両走行テストを行うのが望ましい所定の車両状態及び周辺環境を決定することができるので、真に車両走行テストを行うべき車両状態及び周辺環境(優先度が高い状況)を精度よく高効率に決定することができる。
【0050】
また、処理装置10は、例えばユーザが利用している車両にトラブルが発生した時の車両状態及び周辺環境や、ユーザが車両を利用している時に一定確率以上で出現する車両状態及び周辺環境を、所定の車両状態及び周辺環境として決定することができる。このような処理装置10によれば、真に車両走行テストを行うのが望ましい車両状態及び周辺環境を精度よく高効率に決定することができる。
【0051】
また、処理装置10は、車両走行テストを行うのが望ましい所定の車両状態及び周辺環境を決定した後、決定した所定の車両状態及び周辺環境とすでに存在するシナリオとの類似度を算出し、出力することができる。また、処理装置10は、その類似度が基準値以上のシナリオが存在するか判断し、その結果を出力することができる。このような処理装置10によれば、オペレータは、処理装置10が決定した所定の車両状態及び周辺環境を示すシナリオがすでに存在するか否かを容易に認識し、新たなシナリオを追加するか否か等を決定することができる。
【0052】
このように、処理装置10は、車両走行テストのシナリオ作成を支援することができる。
【0053】
<第2の実施形態>
本実施形態の処理装置10は、ユーザ車両データに基づき車両走行テストを行うのが望ましい所定の車両状態及び周辺環境を決定した後、「その所定の車両状態及び周辺環境」と、「既存のシナリオ」との共通点や相違点を解析し、その結果を出力する機能を有する。以下、所定の車両状態及び周辺環境との類似度が基準値以上であるシナリオがある場合とない場合とに分けて、上記解析処理の詳細を説明する。
【0054】
「所定の車両状態及び周辺環境との類似度が基準値以上である車両走行テストのシナリオがある場合」
算出部13は、所定の車両状態及び周辺環境との類似度が基準値以上である車両走行テストのシナリオで示される車両状態及び周辺環境と、所定の車両状態及び周辺環境との相違点を抽出する。相違点は、車両状態や周辺環境のパラメータの中の値が互いに異なる又は値の差が閾値以上のものである。
【0055】
出力部14は、算出部13の算出結果として、算出部13が抽出した上記相違点を出力する。出力部14は、例えば
図9に示すように、決定部12が決定した所定の車両状態及び周辺環境との類似度が基準値以上のシナリオを識別する情報を表示するとともに、各シナリオに対応付けて上記相違点を表示してもよい。図示する例の場合、周辺環境の温度及び湿度と、車両状態の速度とが相違点として表示されている。なお、表示された相違点(パラメータ)の中から1つを選択する入力を受付けると、出力部14は、そのシナリオの選択されたパラメータの値を表示してもよい。
【0056】
「所定の車両状態及び周辺環境との類似度が基準値以上である車両走行テストのシナリオがない場合」
算出部13は、類似度が高い方から所定数のシナリオで示される車両状態及び周辺環境の共通点を抽出する。共通点は、車両状態や周辺環境のパラメータの中の値が互いに一致する、又は、その差が閾値以内のものである。算出部13は、抽出した所定数のシナリオの中の所定割合以上のシナリオに共通するパラメータを共通点として抽出してもよいし、抽出した所定数のシナリオの全部に共通するパラメータを共通点として抽出してもよい。
【0057】
また、算出部13は、抽出した共通点の中から所定の車両状態及び周辺環境と相違する点を抽出してもよい。
【0058】
出力部14は、算出部13の算出結果として、上記共通点を出力する。また、出力部14は、算出部13の算出結果として、上記共通点の中の所定の車両状態及び周辺環境と相違する点を出力することができる。出力部14は、例えば
図10に示すように、決定部12が決定した所定の車両状態及び周辺環境との類似度が高い方から所定数のシナリオを識別する情報を表示するとともに、表示されたシナリオの共通点の中の所定の車両状態及び周辺環境と相違する点を表示してもよい。なお、表示されたパラメータの中から1つを選択する入力を受付けると、出力部14は、表示されたシナリオの選択されたパラメータの値を表示してもよい。
【0059】
次に、
図11のフローチャートを用いて、処理装置10の処理の流れの一例を説明する。
【0060】
まず、決定部12は、記憶部11に記憶されているユーザ車両データに基づき所定の車両状態及び周辺環境を決定する(S30)。例えば、決定部12は、ユーザが利用している車両にトラブルが発生した時の車両状態及び周辺環境を、所定の車両状態及び周辺環境として決定してもよい。その他、決定部12は、ユーザ車両データにおける出現頻度が閾値以上である車両状態及び周辺環境を、所定の車両状態及び周辺環境として決定してもよい。
【0061】
次いで、算出部13は、S30で決定された所定の車両状態及び周辺環境と、車両走行テストのシナリオで示される車両状態及び周辺環境との類似度を算出する(S31)。次いで、算出部13は、算出した類似度と予め設定された基準値との大小比較により、S30で決定された所定の車両状態及び周辺環境との類似度が基準値以上である車両走行テストのシナリオを抽出する(S32)。
【0062】
その後、算出部13は、抽出結果に基づきデータを解析する(S33)。具体的には、算出部13は、所定の車両状態及び周辺環境と、既存のシナリオとの共通点や相違点を解析する。算出部13は、上述の通り、所定の車両状態及び周辺環境との類似度が基準値以上である車両走行テストのシナリオがある場合及びない場合各々に応じた方法で当該解析を行う。
【0063】
そして、出力部14は、S331の算出結果を出力する(S34)。出力部14は、例えば
図9に示すように、所定の車両状態及び周辺環境との類似度が基準値以上のシナリオを識別する情報を表示するとともに、それらの相違点を表示してもよい。また、出力部14は、例えば
図10に示すように、所定の車両状態及び周辺環境との類似度が高い方から所定数のシナリオを識別する情報を表示するとともに、表示されたシナリオの共通点の中の所定の車両状態及び周辺環境と相違する点を表示してもよい。
【0064】
処理装置10のその他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0065】
以上説明した本実施形態の処理装置10によれば、第1の実施形態と同様の作用効果が実現される。また、本実施形態の処理装置10によれば、ユーザ車両データに基づき車両走行テストを行うのが望ましい所定の車両状態及び周辺環境を決定した後、「その所定の車両状態及び周辺環境」と、「既存のシナリオ」との共通点や相違点を解析し、その結果を出力することができる。オペレータは当該情報に基づき、検討対象のシナリオ(所定の車両状態及び周辺環境で定義されるシナリオ)と、既存のシナリオとの相違点や共通点を容易に把握し、検討対象のシナリオを新たなシナリオとして追加するか否か、また、検討対象のシナリオを修正するか否か等を検討することができる。
【0066】
以上、実施形態(及び実施例)を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態(及び実施例)に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0067】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限定されない。
1. ユーザが車両を利用している時の車両状態及び周辺環境を示すユーザ車両データに基づき所定の車両状態及び周辺環境を決定する決定手段と、
前記所定の車両状態及び周辺環境と、車両走行テストのシナリオで示される車両状態及び周辺環境との類似度を算出する算出手段と、
前記算出手段による算出結果を出力する出力手段と、
を有する処理装置。
2. 前記所定の車両状態及び周辺環境は、前記ユーザが利用している車両にトラブルが発生した時の車両状態及び周辺環境である1に記載の処理装置。
3. 前記所定の車両状態及び周辺環境は、前記ユーザ車両データにおける出現頻度が閾値以上である車両状態及び周辺環境である1又は2に記載の処理装置。
4. 前記出力手段は、前記算出結果として、前記所定の車両状態及び周辺環境との前記類似度が基準値以上である前記車両走行テストのシナリオの有無を出力する1から3のいずれかに記載の処理装置。
5. 前記所定の車両状態及び周辺環境との前記類似度が前記基準値以上である前記車両走行テストのシナリオがない場合、
前記算出手段は、前記類似度が高い方から所定数の前記車両走行テストのシナリオで示される車両状態及び周辺環境の共通点を抽出し、
前記出力手段は、前記算出結果として、前記共通点を出力する4に記載の処理装置。
6. 前記算出手段は、前記共通点の中から前記所定の車両状態及び周辺環境と相違する点を抽出し、
前記出力手段は、前記算出結果として、前記共通点の中の前記所定の車両状態及び周辺環境と相違する点を出力する5に記載の処理装置。
7. 前記所定の車両状態及び周辺環境との前記類似度が前記基準値以上である前記車両走行テストのシナリオがある場合、
前記算出手段は、前記所定の車両状態及び周辺環境との前記類似度が前記基準値以上である前記車両走行テストのシナリオで示される車両状態及び周辺環境と、前記所定の車両状態及び周辺環境との相違点を抽出し、
前記出力手段は、前記算出結果として、前記相違点を出力する4から6のいずれかに記載の処理装置。
8. コンピュータが、
ユーザが車両を利用している時の車両状態及び周辺環境を示すユーザ車両データに基づき所定の車両状態及び周辺環境を決定し、
前記所定の車両状態及び周辺環境と、車両走行テストのシナリオで示される車両状態及び周辺環境との類似度を算出し、
算出結果を出力する処理方法。
9. コンピュータを、
ユーザが車両を利用している時の車両状態及び周辺環境を示すユーザ車両データに基づき所定の車両状態及び周辺環境を決定する決定手段、
前記所定の車両状態及び周辺環境と、車両走行テストのシナリオで示される車両状態及び周辺環境との類似度を算出する算出手段、
前記算出手段による算出結果を出力する出力手段、
として機能させるプログラム。