(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-22
(45)【発行日】2023-08-30
(54)【発明の名称】発泡性固体浴用剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/362 20060101AFI20230823BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20230823BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20230823BHJP
A61K 8/35 20060101ALI20230823BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20230823BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20230823BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20230823BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
A61K8/362
A61K8/19
A61K8/34
A61K8/35
A61K8/37
A61K8/73
A61K8/86
A61Q19/10
(21)【出願番号】P 2019158606
(22)【出願日】2019-08-30
【審査請求日】2022-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 遼太郎
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-113402(JP,A)
【文献】特開平08-319228(JP,A)
【文献】特開2001-131043(JP,A)
【文献】特開平11-189525(JP,A)
【文献】Dead Sea Mud Aches-Away Bath, Montagne Jeunesse, 2006年3月, Mintel GNPD [online], [検索日 2023.04.17], インターネット<URL:https://www.gnpd.com>, ID#:508242
【文献】Menthol Warming Epsom Rub, CVS Pharmacy, 2015年11月, Mintel GNPD [online], [検索日 2023.04.17], インターネット<URL:https://www.gnpd.com>, ID#:3477637
【文献】Foam Bath, SDV Pharmaceuticals, 2008年11月, Mintel GNPD [online], [検索日 2023.04.17], インターネット<URL:https://www.gnpd.com>, ID#:997672
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)、(B)、(C)、(D)、及び(E):
(A)フマル酸
(B)炭酸塩
(C)l-メントール
、乳酸メンチル、酢酸メンチル、及びメントンからなる群から選ばれる1種以上
(D)サリチル酸メチル
(E)25℃で固体の水溶性高分子
を含有し、成分(D)に対する成分(C)の質量比[(C)/(D)]が0.2以上10以下であり、成分(E)に対する成分(C)及び成分(D)の合計の質量比[{(C)+(D)}/(E)]が0.01以上1.0以下である、発泡性固体浴用剤。
【請求項2】
前記発泡性固体浴用剤中の前記成分(C)の含有量が0.1質量%以上1質量%以下である、請求項1に記載の発泡性固体浴用剤。
【請求項3】
前記発泡性固体浴用剤中の前記成分(D)の含有量が0.01質量%以上1質量%以下である、請求項1又は2に記載の発泡性固体浴用剤。
【請求項4】
前記成分(E)がポリエチレングリコール及びデキストリンからなる群から選ばれる1種又は2種である、請求項1~3のいずれか1項に記載の発泡性固体浴用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性固体浴用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
炭酸塩と有機酸を配合した発泡性浴用剤は、浴水中で炭酸ガスの泡を発生し、発泡感を楽しむことができると共に、炭酸ガスによる温まり感、血行促進効果が得られることが知られている。またこうした浴用剤に、さらに種々の成分を配合することで、付加的効果や相乗的効果をもたらす研究もなされている。
例えば特許文献1には、固形錠剤型浴用剤組成物として、炭酸塩及びフマル酸等の有機酸、更に安息香酸エチル、サリチル酸メチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル又はフタル酸ジオクチル等の芳香族エステル類を配合することで、香り立ちがマイルドであり、水又は湯に対する溶解時間を短く調整することができることが開示されている。
また従来から浴用剤においては、入浴することによって冷涼感が得られるようにするためメントールを配合することが行われている。
例えば特許文献2には、入浴剤等の製品に配合された場合に、メントールの香調をやわらげ、冷感効果の強度持続性を改良し、より好ましい清涼感ある冷感組成物として、l-メントール等から選ばれる少なくとも1種からなる冷感物質と、サリチル酸2-ヒドロキシエチル等のサリチル酸エステルを含有する冷感組成物、及び当該冷感組成物を配合した液体入浴剤処方が開示されている。
特許文献3には、安定性に優れるとともに、清涼感の持続性が高く、目鼻への刺激の少ないl-メントール配合の粉末入浴剤組成物として、高度分岐環状デキストリン及びl-メントールを含有する入浴剤用粉末状清涼剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-319228号公報
【文献】国際公開第2003/074622号
【文献】特開2009-203177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、健康志向の高まりから、スポーツ等の運動意識が高まっており、運動後の疲労回復効果がある浴用剤が期待されている。
特許文献1に開示されるような発泡性浴用剤において、l-メントール等の冷感剤を多く配合すると、清涼感や冷涼感を実感できる一方で、冷感剤が炭酸ガスの気泡と共に一気に浴水中に広がるため、入浴時に冷刺激による痛みを感じることがあった。
また、特許文献2及び3に開示されているl-メントール等を配合した液体入浴剤や粉末入浴剤組成物は発泡せず、炭酸ガスによる温まり感、血行促進効果を得ることができない。
更に、l-メントール等とともに消炎化剤として知られるサリチル酸メチル等の油性成分を配合した浴用剤では、浴用剤を包材に封入して保存した場合に包材の膨れが生じ、充分に保存安定性を確保できないおそれがあり、さらなる改善を要する。
【0005】
本発明は、l-メントール等による清涼感は維持されながら冷刺激性を抑制し、包材中に封入して保存した場合にも包材の膨れが起こり難く保存安定性に優れた発泡性固体浴用剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、フマル酸と、炭酸塩と、l-メントール又はその誘導体(以下、l-メントール等ともいう)とを含有する発泡性固体浴用剤において、さらにサリチル酸メチル及び水溶性高分子を所定の範囲で配合することで、上記課題を解決できることを見出した。
すなわち本発明は、
下記成分(A)、(B)、(C)、(D)、及び(E):
(A)フマル酸
(B)炭酸塩
(C)l-メントール又はその誘導体
(D)サリチル酸メチル
(E)25℃で固体の水溶性高分子
を含有し、成分(D)に対する成分(C)の質量比[(C)/(D)]が0.2以上10以下であり、成分(E)に対する成分(C)及び成分(D)の合計の質量比[{(C)+(D)}/(E)]が0.01以上1.0以下である、発泡性固体浴用剤に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、l-メントール等による清涼感は維持されながら冷刺激性を抑制し、包材中に封入して保存した場合にも包材の膨れが起こり難く保存安定性に優れた発泡性固体浴用剤を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[発泡性固体浴用剤]
本発明の発泡性固体浴用剤(以下、単に「固体浴用剤」ともいう)は、下記成分(A)、(B)、(C)、(D)、及び(E):
(A)フマル酸
(B)炭酸塩
(C)l-メントール又はその誘導体
(D)サリチル酸メチル
(E)25℃で固体の水溶性高分子
を含有し、成分(D)に対する成分(C)の質量比[(C)/(D)]が0.2以上10以下であり、成分(E)に対する成分(C)及び成分(D)の合計の質量比[{(C)+(D)}/(E)]が0.01以上1.0以下である。
【0009】
本発明の発泡性固体浴用剤は上記構成とすることにより、l-メントール等による清涼感は維持されながら冷刺激性を抑制し、保存安定性に優れたものとなる。その理由は必ずしも明らかではないが、次のように考えられる。
すなわち、成分(C)であるl-メントール又はその誘導体は、冷感剤として清涼感を付与し、成分(D)であるサリチル酸メチルは、消炎化剤として疲労回復感を付与するものである。一方、l-メントール等は、刺激性があるため冷刺激による痛みを感じる場合があり、特に炭酸発泡浴用剤では、浴水中で炭酸の発泡が刺激性を助長するために刺激性を抑制しつつ、清涼感と疲労回復感を享受することは困難である。
しかし、その理由は定かではないが、成分(D)に対する成分(C)の質量比[(C)/(D)]を上記範囲とすることで、l-メントール等の刺激性を抑制しつつ、サリチル酸メチルの清涼感のある香りにより入浴中の冷涼感を助長することができることがわかった。このため、l-メントール等を冷刺激をもたらすほど多く含有しても、刺激性を抑制しつつ冷涼感を十分に感じることができるものとすることができた。
更に、発泡性固体浴用剤を包材に封入して保存した場合に、l-メントール等及びサリチル酸メチルが寄与してフマル酸である成分(A)および炭酸塩である成分(B)による炭酸ガスの生成反応が起こるために包材の膨れが生じ、充分に保存安定性を確保できないおそれがあるところ、成分(E)である水溶性高分子に対する前記成分(C)及び成分(D)の合計の質量比を上記範囲とすることで、かかる問題を解決することができた。その理由は定かではないが、成分(E)に成分(C)及び成分(D)が安定に担持され、成分(C)と成分(D)の存在下で成分(A)および成分(B)による炭酸ガスの生成反応を抑制し、炭酸ガスの発生が抑えられたためと考えられる。
【0010】
<成分(A):フマル酸>
本発明の固体浴用剤は、成分(A)として、フマル酸を含有する。本発明の固体浴用剤は成分(A)を含有することで、後述する成分(B)との作用により炭酸ガスを発生させ、血行促進効果をもたらすとともに良好な温まり速さを付与することができる。フマル酸は水への溶解度が低い為、有機酸の中でも炭酸塩と組み合わせて発泡性固体浴用剤に用いた場合、入浴時にむせにくいという利点がある。
【0011】
本発明の固体浴用剤中の成分(A)の含有量は、良好な温まり速さ及び発泡性を付与する観点から、好ましくは25質量%以上であり、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは35質量%以上、よりさらに好ましくは40質量%以上である。また、本発明の固体浴用剤中の成分(A)の含有量は、良好な成形性、良好な温まり速さ及び発泡性を付与する観点から、好ましくは70質量%以下、より好ましくは65質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下、よりさらに好ましくは55質量%以下である。
本発明の固体浴用剤に含まれる全有機酸中の成分(A)の含有量は、発泡時のむせ防止、適度な炭酸ガス発生量を確保する等の観点から、85質量%以上であり、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。
【0012】
本発明の固体浴用剤は、本発明の効果を阻害しない範囲で、フマル酸(A)以外の有機酸を含有することができる。かかる有機酸としては、カルボン酸系化合物、有機スルホン酸系化合物、有機リン酸系化合物が挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を用いることができる。なかでも、良好な浴水溶解性を付与する観点からカルボン酸系化合物が好ましい。
当該カルボン酸系化合物は少なくとも1個のカルボキシ基を有する化合物であればよく、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸、複素環式カルボン酸等が挙げられる。脂肪族カルボン酸としては、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、マレイン酸、グルタル酸、アジピン酸等が挙げられ、芳香族カルボン酸としては安息香酸、フタル酸、サリチル酸等が挙げられ、複素環式カルボン酸としてはピロリドンカルボン酸等が挙げられる。
本発明の固体浴用剤に含まれる全有機酸中のフマル酸(A)以外の有機酸の含有量は、発泡時のむせ防止等の観点から、15質量%以下であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは実質0質量%である。
【0013】
<成分(B):炭酸塩>
本発明の固体浴用剤は、成分(B)として、炭酸塩を含有する。成分(B)は、本発明の固体浴用剤を浴水に投入した際に、成分(A)との作用により炭酸ガスを発生させ、血行促進効果をもたらすとともに良好な温まり速さを付与することができる。
成分(B)としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等のアルカリ土類金属炭酸塩;及び、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属重炭酸塩;等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上組み合わせて含有することができる。なかでも、良好な成形性、温まり速さ及び発泡性を付与する観点から、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、及び炭酸カルシウムからなる群から選ばれる1種以上が好ましく、炭酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウムからなる群から選ばれる1種又は2種がより好ましい。
成分(B)は、良好な成形性を付与する観点からはアルカリ金属炭酸塩を含むことが好ましく、温まり速さ及び良好な発泡性を付与する観点からはアルカリ金属重炭酸塩を含むことが好ましい。すなわち成分(B)としては、アルカリ金属炭酸塩とアルカリ金属重炭酸塩とを含有することが好ましく、炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムとを含有することがより好ましい。
【0014】
成分(B)としてアルカリ金属炭酸塩とアルカリ金属重炭酸塩とを含有する場合、その比率は特に制限されないが、良好な成形性、温まり速さ及び発泡性を付与する観点から、金属塩に対する金属重炭酸塩の質量比として[アルカリ金属重炭酸塩/アルカリ金属炭酸塩]は、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.3以上、さらに好ましくは0.5以上であり、好ましくは4.0以下、より好ましくは2.0以下、さらに好ましくは1.5以下である。
【0015】
本発明の固体浴用剤中の成分(B)の含有量は、良好な温まり速さ及び発泡性を付与する観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上、よりさらに好ましくは25質量%以上、よりさらに好ましくは30質量%以上であり、また、好ましくは65質量%以下、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは55質量%以下、よりさらに好ましくは50質量%以下である。
【0016】
本発明の固体浴用剤中の成分(A)に対する成分(B)の質量比[(B)/(A)]は、良好な温まり速さ及び発泡性を付与する観点から、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.6以上、さらに好ましくは0.8以上である。また、質量比[(B)/(A)]は、良好な温まり速さ及び発泡性を付与する観点から、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.1以下、さらに好ましくは1.0以下、よりさらに好ましくは0.95以下である。
【0017】
<成分(C):l-メントール又はその誘導体>
本発明の固体浴用剤は、成分(C)としてl-メントール又はその誘導体を含有する。かかる成分(C)を含有することにより、良好な冷涼感及び清涼感を付与することができる。l-メントールの誘導体としては、例えば、乳酸メンチル、酢酸メンチル、メントン等が挙げられる。これら成分(C)のl-メントール又はその誘導体は、1種又は2種以上含有することができ、なかでもl-メントールが好ましい。
本発明の固体浴用剤中の成分(C)の含有量は、良好な冷涼感及び清涼感をもたらし、かつこれを持続させる観点から、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.15質量%以上であり、さらに好ましくは0.2質量%以上であり、よりさらに好ましくは0.25質量%以上である。また、成分(C)の含有量は、冷刺激性を抑制する観点から、好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.8質量%以下であり、さらに好ましくは0.7質量%以下であり、よりさらに好ましくは0.5質量%以下である。
【0018】
<成分(D):サリチル酸メチル>
本発明の固体浴用剤は、成分(D)としてサリチル酸メチルを含有する。かかる成分(D)を含有することにより、成分(D)に由来する特有の香りによる清涼感を付与することができ、また鎮静作用及び消炎作用よりスポーツ等の運動後の疲労回復効果が得られることも期待できる。さらには成分(D)と成分(C)とを、特定の割合で含有することによって清涼感を確保しつつ成分(C)による冷刺激性を抑制することができる。
本発明の固体浴用剤中の成分(D)の含有量は、良好な清涼感をもたらす観点から、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上であり、さらに好ましくは0.1質量%以上であり、よりさらに好ましくは0.12質量%以上である。また、成分(D)の含有量は、過度な冷涼感を抑制する観点から、好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.8質量%以下であり、さらに好ましくは0.7質量%以下であり、よりさらに好ましくは0.6質量%以下である。
【0019】
本発明の固体浴用剤中、成分(D)に対する成分(C)の質量比[(C)/(D)]は、清涼感の増強及び持続性の観点から、0.2以上であり、好ましくは0.3以上であり、より好ましくは0.5以上であり、さらに好ましくは0.7以上である。また、成分(D)に対する成分(C)の質量比[(C)/(D)]は、清涼感を確保しつつ成分(C)による冷刺激性を抑制する観点から、10以下であり、好ましくは8以下であり、より好ましくは6.5以下であり、さらに好ましくは4.5以下である。
【0020】
<成分(E):25℃で固体の水溶性高分子>
本発明の固体浴用剤は、良好な保存安定性を付与する観点から、成分(E)として25℃で固体の水溶性高分子を含有する。なお、本発明において、水溶性高分子とは、25℃の純水100gに対して0.5質量%以上溶解する高分子化合物をいい、25℃で固体であるとは、軟化点又は融点が30℃以上を示すことと同義である。
【0021】
当該水溶性高分子としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ソーダ、ポリエチレンイミン、ポリビニルアルコール等の合成水溶性高分子;にかわ、ゼラチン、コラーゲンタンパク、カゼイン、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、ファーセレラン、タマリンドガム、ペクチン、アラビアガム、グアーガム、キサンタンガム、トラガントガム、ローカストビーンガム、デキストリン、デキストラン、寒天、澱粉等の天然水溶性高分子;カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、アルギン酸プロピレングリコールエステル、酸化澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉、カチオン澱粉等の半合成水溶性高分子;等のうち25℃で固体のものが挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を含有することができる。なかでも、優れた保存安定性を付与する観点から、ポリエチレングリコール及びデキストリンからなる群から選ばれる1種又は2種が好ましく、ポリエチレングリコールがより好ましい。ポリエチレングリコールの分子量は、好ましくは4,000以上10,000以下であり、より好ましくは5,000以上9,000以下である。
【0022】
本発明の固体浴用剤中の成分(E)の含有量は、良好な保存安定性を付与する観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは1.5質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上である。また、炭酸ガス発生量を確保して良好な温まり速さ及び発泡性を付与する観点から、当該含有量は好ましくは20質量%以下、より好ましくは18質量%以下、さらに好ましくは16質量%以下である。
【0023】
成分(E)に対する成分(C)及び成分(D)の合計の質量比[{(C)+(D)}/(E)]は、入浴時に十分な発泡性を保ちつつ冷涼感を増強させる観点から、0.01以上であり、好ましくは0.02以上、より好ましくは0.03以上であり、さらに好ましくは0.065以上である。また、成分(E)に対する成分(C)及び成分(D)の合計の質量比[{(C)+(D)}/(E)]は、成分(E)に成分(C)及び成分(D)が安定に担持されることにより、優れた保存安定性を確保する観点から、1.0以下であり、好ましくは0.8以下であり、より好ましくは0.5以下、さらに好ましくは0.3以下であり、よりさらに好ましくは0.2以下である。
【0024】
本発明の固体浴用剤には、その他の成分として、通常浴用剤に用いられる成分を適宜含有することができる。かかる成分としては、例えば、ショ糖脂肪酸エステルやポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等のノニオン界面活性剤、及びその他の界面活性剤;硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、塩化アンモニウム、硫酸鉄、リン酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム等の、上記成分以外の無機塩;ケイ酸カルシウム、ブドウ糖等の賦形剤;崩壊助剤;生薬等の薬効成分;色素;香料(前記成分(C)及び成分(D)を除く);油剤;等が挙げられる。
【0025】
香料(前記成分(C)及び成分(D)を除く)には浴用剤に用い得るものであれば特に制限されず、種々の香料成分を含有することができる。
かかる香料としては、例えば、「合成香料 化学と商品知識」(印藤元一著、化学工業日報社、2005年増補改定版)に記載の香料等、すなわちミルセン、オシメン、カンフェン、ターピノレン、アルファーターピネン、フェランドレン、アルファフェランドレン、パラサイメン、ファルネセン、セドレン、ロンジフォレン、コパエン、グアイエン、パチョレン、グルジュネン、リモネン、シトラール、テルピネン等のテルペン系炭化水素又はセスキテルペン系炭化水素の香料;
アルコール系香料、アルデヒド系香料、ケトン系香料、エーテル系香料、オキサイド系香料、エステル系香料、ラクトン系香料等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
また、これらは、所望の香りに合わせて種々の調合香料として含有することもできる。
【0026】
(剤型)
本発明の固体浴用剤の使用時の剤型(製品形態)としては、錠剤が好ましい。錠剤には、打錠剤やブリケット型剤が含まれ、発泡持続性の観点からは打錠剤であることがより好ましい。
本発明の固体浴用剤が打錠剤又はブリケット型剤である場合、プレス打錠機やブリケットマシーンを用いて圧縮成形法等の常法に従って製造することができる。
打錠剤又はブリケット型剤の製造においては、例えば、本発明の固体浴用剤を構成する全成分をドライブレンドして得られた粉末を圧縮成形に供してもよく、成分の一部を予め造粒あるいは成型した後、残りの成分と混合して得られた混合物を圧縮成形に供してもよい。
【0027】
[発泡性固体浴用剤製品]
本発明は、前述した本発明の固体浴用剤を包材に封入した発泡性固体浴用剤製品を提供することができる。本発明の固体浴用剤は、包材中に封入して保存した場合にも炭酸ガスの発生に起因する包材の膨れが起こり難いため、包材に封入した製品形態での保存安定性に優れる。
包材の形状は、浴用剤を封入できる構造を有するものであれば特に制限はなく、例えば袋状、ボトル状、トレー状、カップ状等が挙げられる。これらの中でも袋状の包材が好ましい。
包材を構成する材質も、浴用剤を封入できるものであれば特に制限はない。例えば袋状包材の場合は、樹脂フィルム、又は樹脂フィルム上に金属又は金属酸化物からなる無機薄膜を積層した積層フィルム等を用いることができる。
【実施例】
【0028】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は実施例の範囲に限定されない。
【0029】
実施例1~10、比較例1~4(固体浴用剤の製造及び評価)
表1に示す各成分を混合して得られた粉末を用いて、ロータリー打錠機にて、質量69~71g、錠高19.3~19.5mmのサイズにて、打錠速度20錠/分で打錠を行い、錠剤(打錠剤)型の固体浴用剤を製造した。また、下記方法にて清涼感、冷刺激性、及び保存安定性を評価した。結果を表1に示す。なお、表1に記載の配合量はいずれも有効成分量(質量%)である。
【0030】
<清涼感の評価>
浴槽に40℃の浴水150Lを入れ、各例の固体浴用剤70g(1錠)を投入して、十分撹拌した後に専門パネラー1名を10分間入浴させ、清涼感を下記基準にしたがって評価した。
A:清涼感を非常に感じる
B:清涼感をとても感じる
C:清涼感をわずかに感じる
D:清涼感を全く感じない
【0031】
<冷刺激性の評価>
浴槽に40℃の浴水150Lを入れ、各例の固体浴用剤70g(1錠)を投入して、十分撹拌した後に専門パネラー1名を10分間入浴させ、冷刺激性を下記基準にしたがって評価した。
A:冷刺激を全く感じない
B:冷刺激をわずかに感じる
C:冷刺激をとても感じる
D:冷刺激を非常に強く感じる
【0032】
<保存安定性の評価>
各例の固体浴用剤70g(1錠)をアルミピロー(大日本印刷(株)製、9cm×11cm)に入れて封入した後、50℃に設定したインキュベーダーの中に配置し、配置後1ヶ月経過した時点でのアルミピローの外観を目視により観察し、下記基準にしたがって評価した。
A:アルミピローの外観に変化を認めない
B:アルミピローの外観にごくわずかの膨れを認める
C:アルミピローの外観に明らかな膨れを認める
【0033】
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
表1中、*1~*6は下記のとおりである。
*1:l-メントール、高砂香料工業(株)製「メントール JP COS」、有効成分100%
*2:サリチル酸メチル、(株)井上香料製造所製「Methyl Salicylate」、有効成分100%
*3:ポリエチレングリコール、花王(株)製「K-PEG6000 LA」(分子量6,000)
*4:デキストリン、日澱化学(株)製「デキストリン CZRM-X」
*5:香料成分、前記成分(C)及び成分(D)以外の香料成分(調合香料)
*6:ブドウ糖、日本食品化工(株)製「無水結晶ぶどう糖」
【0038】
表1より、本発明の固体浴用剤はl-メントール等による清涼感は維持されながら冷刺激性を抑制し、包材中に封入して保存した場合にも包材の膨れが起こり難く保存安定性に優れることがわかる。
【0039】
本発明の発泡性固体浴用剤の処方例を表2に示す。
【0040】
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明によれば、l-メントール等による清涼感は維持されながら冷刺激性を抑制し、包材中に封入して保存した場合にも包材の膨れが起こり難く保存安定性に優れる発泡性固体浴用剤を提供できる。