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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-23
(45)【発行日】2023-08-31
(54)【発明の名称】車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 20/00 20160101AFI20230824BHJP
   B60K 6/485 20071001ALI20230824BHJP
   B60K 6/54 20071001ALI20230824BHJP
   B60W 10/26 20060101ALI20230824BHJP
   B60W 20/13 20160101ALI20230824BHJP
   B60L 1/00 20060101ALI20230824BHJP
   B60L 50/16 20190101ALI20230824BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20230824BHJP
   H02M 3/00 20060101ALI20230824BHJP
【FI】
B60W20/00 ZHV
B60K6/485
B60K6/54
B60W10/26 900
B60W20/13
B60L1/00 L
B60L50/16
B60L50/60
H02M3/00 H
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019140324
(22)【出願日】2019-07-30
(65)【公開番号】P2021020657
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 健
(72)【発明者】
【氏名】守屋 史之
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-061182(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0187446(US,A1)
【文献】特開2015-168344(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-20/50
B60K 6/20- 6/547
B60L 1/00-58/40
H02M 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
駆動輪を駆動する動力を出力する駆動用モータと、
前記駆動用モータに供給される電力を蓄電する高電圧バッテリと、
前記高電圧バッテリと補機との間に設けられ、前記高電圧バッテリに蓄電される電力を、当該電力の電圧を下げて、前記補機に供給可能なDCDCコンバータと、
を備え
前記高電圧バッテリは、前記DCDCコンバータを介して、前記補機、および、前記高電圧バッテリよりも低電圧のバッテリである低電圧バッテリと接続されている車両の制御装置であって、
前記エンジンを駆動させた状態で走行するHEV走行モードと、前記エンジンを停止させた状態で前記駆動用モータから出力される動力を用いて走行するEV走行モードとを切り替えて実行可能な制御部を有し、
前記制御部は、
前記DCDCコンバータの出力電流が閾値以上となった場合に、前記DCDCコンバータの出力電圧を低下させることにより前記出力電流を低下させる出力制限制御を実行し、
前記出力制限制御における前記閾値を基準閾値に設定する通常設定と、当該閾値を前記基準閾値よりも大きなブースト閾値に設定するブースト設定とを切り替え可能であり、
前記HEV走行モードの実行中には、前記出力電流が前記基準閾値を超えるブースト状態を維持するための前記DCDCコンバータの耐用限界までの余裕度合いに相当するブースト余力が第1余力値以下になった場合に、前記ブースト設定を禁止し、
前記EV走行モードの実行中には、前記ブースト余力が前記第1余力値と異なる第2余力値以下になった場合に、前記ブースト設定を禁止する、
車両の制御装置。
【請求項2】
前記補機は、前記エンジンを始動する始動用モータを含み、
前記第2余力値は、前記第1余力値よりも大きい、
請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記HEV走行モードの実行中に、前記ブースト余力が前記第2余力値以下になった場合に、前記EV走行モードへの切り替えを禁止する、
請求項2に記載の車両の制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記EV走行モードの実行中の前記ブースト閾値を、前記HEV走行モードの実行中の前記ブースト閾値よりも小さくする、
請求項2または3に記載の車両の制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記EV走行モードから前記HEV走行モードへ切り替わる間の前記エンジンの始動が行われる遷移期間には、前記ブースト余力が前記第1余力値よりも小さな第3余力値以下になった場合に、前記ブースト設定を禁止する、
請求項2~4のいずれか一項に記載の車両の制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記DCDCコンバータの温度に基づいて前記ブースト余力を特定する、
請求項1~5のいずれか一項に記載の車両の制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記ブースト状態の継続時間と、前記ブースト状態における前記基準閾値に対する前記出力電流の超過量とに基づいて前記ブースト余力を特定する、
請求項1~5のいずれか一項に記載の車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エンジンおよび駆動用モータを駆動源として備える車両(つまり、所謂ハイブリッド車両)が広く利用されている。このような車両として、例えば、特許文献1に開示されているように、駆動用モータに供給される電力を蓄電するバッテリ(具体的には、高電圧バッテリ)と、エンジンを始動する始動用モータ等の補機とがDCDCコンバータを介して接続されているものがある。それにより、高電圧バッテリに蓄電される電力をDCDCコンバータにより降圧して(つまり、当該電力の電圧を下げて)補機に供給することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-155439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている車両等の従来の車両では、高電圧バッテリからDCDCコンバータを介して補機へ供給される電力(つまり、DCDCコンバータにより補機側に出力される電力)が、補機の消費電力に対して不足する場合がある。この場合、例えば、補機に供給される電力が不足することにより補機を適切に駆動することが困難となるおそれがある。また、例えば、補機と接続されている低電圧バッテリから不足分の電力が持ち出されることにより、低電圧バッテリの充放電の頻度が増大し、低電圧バッテリの劣化が促進されてしまうおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、このような課題に鑑み、補機への電力供給を適切に行うことが可能な車両の制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の車両の制御装置は、エンジンと、駆動輪を駆動する動力を出力する駆動用モータと、駆動用モータに供給される電力を蓄電する高電圧バッテリと、高電圧バッテリと補機との間に設けられ、高電圧バッテリに蓄電される電力を、当該電力の電圧を下げて、補機に供給可能なDCDCコンバータと、を備え、高電圧バッテリは、DCDCコンバータを介して、補機、および、高電圧バッテリよりも低電圧のバッテリである低電圧バッテリと接続されている車両の制御装置であって、エンジンを駆動させた状態で走行するHEV走行モードと、エンジンを停止させた状態で駆動用モータから出力される動力を用いて走行するEV走行モードとを切り替えて実行可能な制御部を有し、制御部は、DCDCコンバータの出力電流が閾値以上となった場合に、DCDCコンバータの出力電圧を低下させることにより出力電流を低下させる出力制限制御を実行し、出力制限制御における閾値を基準閾値に設定する通常設定と、当該閾値を基準閾値よりも大きなブースト閾値に設定するブースト設定とを切り替え可能であり、HEV走行モードの実行中には、出力電流が基準閾値を超えるブースト状態を維持するためのDCDCコンバータの耐用限界までの余裕度合いに相当するブースト余力が第1余力値以下になった場合に、ブースト設定を禁止し、EV走行モードの実行中には、ブースト余力が第1余力値と異なる第2余力値以下になった場合に、ブースト設定を禁止する。
【0007】
補機は、エンジンを始動する始動用モータを含み、第2余力値は、第1余力値よりも大きくてもよい。
【0008】
制御部は、HEV走行モードの実行中に、ブースト余力が第2余力値以下になった場合に、EV走行モードへの切り替えを禁止してもよい。
【0009】
制御部は、EV走行モードの実行中のブースト閾値を、HEV走行モードの実行中のブースト閾値よりも小さくしてもよい。
【0010】
制御部は、EV走行モードからHEV走行モードへ切り替わる間のエンジンの始動が行われる遷移期間には、ブースト余力が第1余力値よりも小さな第3余力値以下になった場合に、ブースト設定を禁止してもよい。
【0011】
制御部は、DCDCコンバータの温度に基づいてブースト余力を特定してもよい。
【0012】
制御部は、ブースト状態の継続時間と、ブースト状態における基準閾値に対する出力電流の超過量とに基づいてブースト余力を特定してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、補機への電力供給を適切に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る車両の概略構成を示す模式図である。
図2】本発明の実施形態に係る制御装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
図3】本発明の実施形態に係る車両におけるHEV走行モード中の動力の流れを示す模式図である。
図4】本発明の実施形態に係る車両におけるEV走行モード中の動力の流れを示す模式図である。
図5】本発明の実施形態に係る制御装置が行うブースト設定の禁止に関する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図6】本発明の実施形態に係る制御装置が行うEV走行モードへの切り替えの禁止に関する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図7】本発明の実施形態に係る制御装置による処理が行われる場合における各種状態量の推移の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0016】
<車両の構成>
まず、図1図4を参照して、本発明の実施形態に係る車両1の構成について説明する。
【0017】
図1は、車両1の概略構成を示す模式図である。
【0018】
車両1は、エンジン11および駆動用モータ41を駆動源として備える所謂ハイブリッド車両である。車両1では、後述するように、エンジン11を駆動させた状態で走行する(具体的には、エンジン11および駆動用モータ41から出力される動力を用いて走行する)HEV走行モードと、エンジン11を停止させた状態で駆動用モータ41から出力される動力を用いて走行するEV走行モードとを切り替えて実行可能となっている。
【0019】
なお、以下で説明する車両1は、あくまでも本発明に係る車両の一例であり、後述するように、本発明に係る車両の構成は車両1の構成に特に限定されない。
【0020】
図1に示されるように、車両1は、エンジン11と、高電圧バッテリ21と、低電圧バッテリ23と、DCDCコンバータ31と、駆動用モータ41と、インバータ43と、変速機51と、駆動輪61と、補機71と、エンジン回転数センサ91と、電流センサ93と、温度センサ95と、制御装置100とを備える。なお、高電圧バッテリ21は、駆動用モータ41に供給される電力を蓄電するバッテリ(つまり、本発明に係るバッテリ)の一例に相当する。また、補機71は、始動用モータ71aと、それ以外の補機71bとを含む。
【0021】
エンジン11は、ガソリン等を燃料として動力を生成する内燃機関であり、車両1の駆動輪61を駆動する動力を出力する。具体的には、エンジン11の出力軸であるクランクシャフトは、図示しないトルクコンバータ又はクラッチ等を介して変速機51と接続されている。変速機51としては、例えば、CVT(Continuously Variable Transmission)等の無段変速機構を有するものが用いられる。エンジン11から出力される動力は、変速機51により変速されて、駆動輪61に伝達される。
【0022】
始動用モータ71aは、エンジン11を始動するモータである。具体的には、始動用モータ71aの出力軸は、ギヤを介してエンジン11のクランクシャフトと接続されており、始動用モータ71aから出力される動力がエンジン11のクランクシャフトに伝達されるようになっている。始動用モータ71aは、DCDCコンバータ31を介して高電圧バッテリ21と接続されており、高電圧バッテリ21から供給される電力を用いて動力を生成することができる。また、始動用モータ71aは、低電圧バッテリ23と接続されており、低電圧バッテリ23から供給される電力を用いて動力を生成することもできる。
【0023】
始動用モータ71aとしては、例えば、直流モータが用いられてもよく、交流モータが用いられてもよい。なお、始動用モータ71aとして交流モータが用いられる場合、始動用モータ71aは、図示しないインバータを介してDCDCコンバータ31および低電圧バッテリ23と接続される。そして、高電圧バッテリ21または低電圧バッテリ23から供給される直流電力が当該インバータによって交流電力に変換されて始動用モータ71aに供給されるようになっている。
【0024】
なお、始動用モータ71aは、エンジン11から出力される動力を用いて発電可能であってもよい。この場合、始動用モータ71aにより発電される電力は、低電圧バッテリ23に供給される。それにより、低電圧バッテリ23が充電される。
【0025】
駆動用モータ41は、車両1の駆動輪61を駆動する動力を出力するモータである。具体的には、駆動用モータ41の出力軸は、変速機51と接続されており、駆動用モータ41から出力される動力は、変速機51により変速されて、駆動輪61に伝達される。
【0026】
駆動用モータ41としては、例えば、多相交流式(例えば、三相交流式)のモータが用いられる。駆動用モータ41は、インバータ43を介して高電圧バッテリ21と接続されており、高電圧バッテリ21からインバータ43を介して供給される電力を用いて動力を生成する。この際、高電圧バッテリ21から放電される直流電力は、インバータ43によって交流電力に変換されて駆動用モータ41に供給される。インバータ43は、例えば、多相ブリッジ回路を含み、当該回路に設けられるスイッチング素子の動作が制御されることによりインバータ43による電力変換が制御される。
【0027】
なお、駆動用モータ41は、車両1の減速時に、駆動輪61の回転エネルギを用いて発電する発電機としての機能(つまり、回生機能)を有してもよい。この場合、駆動用モータ41により発電される交流電力は、インバータ43によって直流電力に変換されて高電圧バッテリ21に供給される。それにより、高電圧バッテリ21が充電される。
【0028】
高電圧バッテリ21は、駆動用モータ41に供給される電力を蓄電するバッテリである。高電圧バッテリ21は、具体的には、低電圧バッテリ23よりも高電圧(例えば、100V)のバッテリであり、高電圧バッテリ21としては、例えば、リチウムイオン電池またはニッケル水素電池等の二次電池が用いられる。
【0029】
また、高電圧バッテリ21は、DCDCコンバータ31を介して車両1の各機器(具体的には、始動用モータ71aを含む補機71および低電圧バッテリ23)と接続されており、高電圧バッテリ21に蓄電される電力をDCDCコンバータ31により降圧して(つまり、当該電力の電圧を下げて)各機器に供給することができるようになっている。なお、始動用モータ71a以外の補機71bは、例えば、車両1内の空調機器または音響機器等を含む。
【0030】
DCDCコンバータ31は、上記のように、高電圧バッテリ21と補機71との間に設けられ、高電圧バッテリ21に蓄電される電力を降圧して補機71に供給可能である。さらに、DCDCコンバータ31は、高電圧バッテリ21に蓄電される電力を降圧して低電圧バッテリ23に供給可能である。それにより、低電圧バッテリ23を充電することができる。DCDCコンバータ31は、例えば、チョッパ回路を含み、当該回路に設けられるスイッチング素子の動作が制御されることによって、DCDCコンバータ31による電力変換が制御される。
【0031】
低電圧バッテリ23は、始動用モータ71aおよび補機71bと接続されており、これらの補機71に供給される電力を蓄電するバッテリである。低電圧バッテリ23は、具体的には、高電圧バッテリ21よりも低電圧(例えば、12V)のバッテリであり、低電圧バッテリ23としては、例えば、鉛蓄電池またはリチウムイオン電池等の二次電池が用いられる。
【0032】
エンジン回転数センサ91は、エンジン11の回転数を検出し、検出結果を制御装置100へ出力する。
【0033】
電流センサ93は、DCDCコンバータ31の出力電流(つまり、DCDCコンバータ31により補機71側に出力される電力の電流値)を検出し、検出結果を制御装置100へ出力する。
【0034】
温度センサ95は、DCDCコンバータ31の温度を検出し、検出結果を制御装置100へ出力する。なお、温度センサ95によりDCDCコンバータ31の温度として検出される温度は、例えば、DCDCコンバータ31のスイッチング素子の温度であってもよく、DCDCコンバータ31の筐体の温度であってもよい。
【0035】
制御装置100は、車両1における各装置の動作を制御する。
【0036】
例えば、制御装置100は、演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)、CPUが使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する記憶素子であるROM(Read Only Memory)およびCPUの実行において適宜変化するパラメータ等を一時記憶する記憶素子であるRAM(Random Access Memory)等で構成される。
【0037】
また、制御装置100は、車両1における各装置と通信を行う。制御装置100と各装置との通信は、例えば、CAN(Controller Area Network)通信を用いて実現される。例えば、制御装置100は、エンジン11、始動用モータ71a、DCDCコンバータ31、インバータ43および車両1における各センサと通信を行う。
【0038】
なお、本実施形態に係る制御装置100が有する機能は複数の制御装置により少なくとも部分的に分割されてもよく、複数の機能が1つの制御装置によって実現されてもよい。例えば、エンジン11の動作を制御する機能、駆動用モータ41の動作を制御する機能およびDCDCコンバータ31の動作を制御する機能がそれぞれ別々の制御装置に分割されてもよい。制御装置100が有する機能が複数の制御装置により少なくとも部分的に分割される場合、当該複数の制御装置は、CAN等の通信バスを介して、互いに接続されてもよい。
【0039】
図2は、制御装置100の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0040】
制御装置100は、例えば、図2に示されるように、取得部110と、制御部120とを有する。
【0041】
取得部110は、制御部120が行う処理において用いられる各種情報を取得する。また、取得部110は、取得した情報を制御部120へ出力する。例えば、取得部110は、エンジン回転数センサ91、電流センサ93及び温度センサ95の各センサと通信することによって、各センサから出力される各種情報を取得する。
【0042】
制御部120は、車両1の各装置に動作指令を出力することにより、当該各装置の動作を制御する。例えば、制御部120は、プログラムと協働して機能する、エンジン制御部121と、モータ制御部122と、コンバータ制御部123とを含む。
【0043】
エンジン制御部121は、エンジン11の動作を制御する。具体的には、エンジン制御部121は、エンジン11における各装置の動作を制御することによって、スロットル開度、点火時期および燃料噴射量等を制御する。それにより、エンジン制御部121は、エンジン11の出力を制御することができる。
【0044】
また、エンジン制御部121は、始動用モータ71aの動作を制御する。具体的には、エンジン制御部121は、コンバータ制御部123と協調して、高電圧バッテリ21に蓄電される電力をDCDCコンバータ31により始動用モータ71aに供給させ、始動用モータ71aを駆動させることができる。それにより、エンジン11を始動させることができる。また、エンジン制御部121は、始動用モータ71aと低電圧バッテリ23との間の電力の供給を制御することによって、始動用モータ71aによるエンジン11の始動およびエンジン11から出力される動力を用いた発電を制御することができる。
【0045】
モータ制御部122は、駆動用モータ41の動作を制御する。具体的には、モータ制御部122は、インバータ43のスイッチング素子の動作を制御することによって、駆動用モータ41と高電圧バッテリ21との間の電力の供給を制御する。それにより、モータ制御部122は、駆動用モータ41による動力の生成および発電を制御することができる。
【0046】
コンバータ制御部123は、DCDCコンバータ31の動作を制御する。具体的には、コンバータ制御部123は、DCDCコンバータ31のスイッチング素子の動作を制御することによって、始動用モータ71a、補機71bおよび低電圧バッテリ23と、高電圧バッテリ21との間の電力の供給を制御する。
【0047】
ここで、コンバータ制御部123は、DCDCコンバータ31の出力電流が閾値以上となった場合に、DCDCコンバータ31の出力電圧を低下させることにより出力電流を低下させる出力制限制御を実行する。なお、コンバータ制御部123によるDCDCコンバータ31の出力電圧の調整は、具体的には、DCDCコンバータ31のスイッチング素子のスイッチング動作におけるデューティー比を調整することによって実現され得る。
【0048】
制御部120は、車両1の各装置の動作を上記のように制御することによって、車両1の走行モードとして、HEV走行モードと、EV走行モードとを切り替えて実行可能である。なお、制御部120は、車両1の走行モードとして、HEV走行モードおよびEV走行モード以外の走行モードを実行可能であってもよい。
【0049】
例えば、制御部120は、駆動輪61に伝達される動力の要求値である要求駆動力に基づいて、車両1の走行モードを切り替える。具体的には、制御部120は、要求駆動力が基準駆動力より大きい場合に、車両1の走行モードをHEV走行モードに切り替える。一方、制御部120は、要求駆動力が基準駆動力以下である場合に、車両1の走行モードをEV走行モードに切り替える。基準駆動力は、駆動用モータ41から駆動輪61に伝達可能な動力の最大値より小さい値に設定され、例えば、電費を向上させる観点で、駆動用モータ41の仕様等に応じて設定される。なお、制御部120は、例えば、アクセル開度および車速に基づいて要求駆動力を特定することができる。
【0050】
図3は、車両1におけるHEV走行モード中の動力の流れを示す模式図である。
【0051】
HEV走行モードでは、制御部120のエンジン制御部121およびモータ制御部122は、駆動輪61に伝達される動力が要求駆動力になるように互いに協調して、エンジン11および駆動用モータ41の出力をそれぞれ制御する。それにより、図3に示されるように、エンジン11から出力される動力F1が変速機51を介して駆動輪61に伝達されるとともに、駆動用モータ41から出力される動力F2が変速機51を介して駆動輪61に伝達される。このように、HEV走行モードでは、エンジン11および駆動用モータ41から出力される動力を用いて車両1の走行が行われる。
【0052】
図4は、車両1におけるEV走行モード中の動力の流れを示す模式図である。
【0053】
EV走行モードでは、制御部120のエンジン制御部121は、エンジン11を停止させ、モータ制御部122は、駆動輪61に伝達される動力が要求駆動力になるように駆動用モータ41の出力を制御する。それにより、図4に示されるように、駆動用モータ41から出力される動力F2のみが駆動輪61に伝達される。このように、EV走行モードでは、エンジン11を停止させた状態で駆動用モータ41から出力される動力を用いて車両1の走行が行われる。
【0054】
EV走行モードからHEV走行モードへの切り替えが行われる場合には、エンジン11の始動が行われる。エンジン11の始動では、具体的には、図3に示されるように、高電圧バッテリ21からDCDCコンバータ31を介して始動用モータ71aに電力E5が供給される。そして、電力E5を用いて始動用モータ71aが駆動され、始動用モータ71aから出力される動力F5がエンジン11に伝達される。
【0055】
本実施形態に係る制御装置100では、制御部120は、上述したように、DCDCコンバータ31の出力電流が閾値以上となった場合に、DCDCコンバータ31の出力電圧を低下させることにより出力電流を低下させる出力制限制御を実行する。ここで、制御部120は、出力制限制御における閾値を基準閾値(具体的には、DCDCコンバータ31の定格電流)に設定する通常設定と、当該閾値を基準閾値よりも大きなブースト閾値に設定するブースト設定とを切り替え可能である。ゆえに、DCDCコンバータ31を当該DCDCコンバータ31の出力電流が基準閾値を超えるブースト状態にすること(つまり、通常設定よりも出力電流を大きくすること)ができるので、DCDCコンバータ31により補機71側に出力される電力が補機71の消費電力に対して不足することを抑制することができる。
【0056】
しかしながら、ブースト状態では、DCDCコンバータ31の出力電流が基準電流を超えることに伴い、DCDCコンバータ31の温度が上昇するので、ブースト状態を維持するためのDCDCコンバータ31の耐用限界(例えば、許容温度の上限値)までの余裕度合いに相当するブースト余力が低下してしまう。ブースト余力は、例えば、DCDCコンバータ31の許容温度の上限値とDCDCコンバータ31の温度との差に相当する。ブースト余力が小さくなるほど、ブースト状態を維持しにくくなるので、DCDCコンバータ31により補機71側に出力される電力が補機71の消費電力に対して不足しやすくなってしまう。
【0057】
ここで、車両1の走行モードの切り替えに伴って、補機71の消費電力が大きく増大することがある。例えば、エンジン11の始動時における始動用モータ71aの消費電力は比較的大きいので、EV走行モードからHEV走行モードへの切り替えに伴い、補機71の消費電力が大きく増大する。このように補機71の消費電力が大きく増大する際には、ブースト余力が不足することによって、DCDCコンバータ31により補機71側に出力される電力が補機71の消費電力に対して不足してしまう状況が特に生じやすくなる。
【0058】
そこで、本実施形態に係る制御装置100では、制御部120は、HEV走行モードの実行中には、ブースト余力が第1余力値以下になった場合にブースト設定を禁止し、EV走行モードの実行中には、ブースト余力が第1余力値と異なる第2余力値以下になった場合にブースト設定を禁止する。それにより、DCDCコンバータ31により補機71側に出力される電力が補機71の消費電力に対して不足することを適切に抑制することができるので、補機71への電力供給を適切に行うことが可能となる。このような、補機71への電力供給の適正化のために制御部120が行う処理の詳細については、後述にて説明する。
【0059】
<制御装置の動作>
続いて、図5図7を参照して、本発明の実施形態に係る制御装置100の動作について説明する。
【0060】
なお、以下では、補機71への電力供給の適正化のために制御部120が行う処理として、図5を参照して、ブースト設定の禁止に関する処理について説明した後に、図6を参照して、EV走行モードへの切り替えの禁止に関する処理について説明する。その後、図7を参照して、制御装置100による処理が行われる場合における各種状態量の推移について説明する。
【0061】
[ブースト設定の禁止に関する処理]
図5は、制御装置100が行うブースト設定の禁止に関する処理の流れの一例を示すフローチャートである。図5に示される制御フローは、具体的には、繰り返し実行される。
【0062】
図5に示される制御フローが開始されると、まず、ステップS501において、制御部120は、HEV走行モードが実行中であるか否かを判定する。HEV走行モードが実行中であると判定された場合(ステップS501/YES)、ステップS502に進む。一方、HEV走行モードが実行中であると判定されなかった場合(ステップS501/NO)、ステップS506に進む。
【0063】
図5に示される制御フローでは、ステップS501でYESと判定された場合に行われるステップS502~ステップS505がHEV走行モードの実行中に行われる処理に相当する。
【0064】
ステップS501でNOと判定された場合、ステップS506において、制御部120は、EV走行モードが実行中であるか否かを判定する。EV走行モードが実行中であると判定された場合(ステップS506/YES)、ステップS507に進む。一方、EV走行モードが実行中であると判定されなかった場合(ステップS506/NO)、ステップS511に進む。
【0065】
図5に示される制御フローでは、ステップS506でYESと判定された場合に行われるステップS507~ステップS510がEV走行モードの実行中に行われる処理に相当する。
【0066】
ステップS506でNOと判定された場合、ステップS511において、制御部120は、HEV走行モードからEV走行モードへ切り替わる間のエンジン11の始動が行われる遷移期間中であるか否かを判定する。遷移期間中であると判定された場合(ステップS511/YES)、ステップS512に進む。一方、遷移期間中であると判定されなかった場合(ステップS511/NO)、図5に示される制御フローは終了する。
【0067】
図5に示される制御フローでは、ステップS511でYESと判定された場合に行われるステップS512~ステップS515が遷移期間中に行われる処理に相当する。
【0068】
なお、制御部120は、EV走行モードからHEV走行モードへ遷移する場合において、例えば、エンジン11の始動が開始した後(つまり、停止していたエンジン11の回転数が上昇し始めた後)、エンジン11の回転数が基準回転数に到達するまでの間の期間を遷移期間であると判断する。基準回転数は、エンジン11が自立運転しているか否かを適切に判断し得る値に設定される。
【0069】
まず、HEV走行モードの実行中に行われる処理(つまり、ステップS502~ステップS505)について説明する。
【0070】
ステップS501でYESと判定された場合、ステップS502において、制御部120は、ブースト余力が第1余力値以下になったか否かを説明する。ブースト余力が第1余力値以下になったと判定された場合(ステップS502/YES)、ステップS503に進む。一方、ブースト余力が第1余力値以下になったと判定されなかった場合(ステップS502/NO)、ステップS505に進み、後述するように、ブースト設定が許可される。
【0071】
なお、走行モードがHEV走行モードに切り替えられた時点で、ブースト余力が第1余力値以下となっている場合には、ステップS502でYESと判定される。
【0072】
上述したように、ブースト余力は、DCDCコンバータ31を当該DCDCコンバータ31の出力電流が基準閾値を超えるブースト状態を維持するためのDCDCコンバータ31の耐用限界までの余裕度合いに相当する指標である。
【0073】
例えば、制御部120は、DCDCコンバータ31の温度に基づいてブースト余力を特定する。詳細には、制御部120は、例えば、DCDCコンバータ31の許容温度の上限値と温度センサ95の検出値との差をブースト余力として特定する。
【0074】
また、例えば、制御部120は、ブースト状態の継続時間と、ブースト状態における基準閾値に対する出力電流の超過量とに基づいてブースト余力を特定する。詳細には、制御部120は、例えば、ブースト余力を、電流センサ93の検出値が基準閾値を継続して超えている時間が長いほど小さくなり(例えば、当該時間に反比例するように)、かつ、基準閾値に対する電流センサ93の検出値の超過量が大きいほどほど小さくなるように(例えば、当該超過量の二乗に反比例するように)、特定する。
【0075】
第1余力値は、後述する基準余力値より小さい。また、第1余力値は、後述する第2余力値より小さく、後述する第3余力値より大きい。
【0076】
ステップS502でYESと判定された場合、ステップS503において、制御部120は、ブースト設定を禁止する。
【0077】
次に、ステップS504において、制御部120は、ブースト余力が基準余力値まで回復したか否かを判定する。ブースト余力が基準余力値まで回復したと判定された場合(ステップS504/YES)、ステップS505に進む。一方、ブースト余力が基準余力値まで回復したと判定されなかった場合(ステップS504/NO)、ステップS504の判定処理が繰り返される。
【0078】
基準余力値は、ブースト設定が禁止された後に、ブースト余力が十分に回復したか否かを判断するために用いられる値であり、具体的には、第1余力値、第2余力値および第3余力値のいずれよりも大きい。なお、ステップS504,S509,S514で用いられる基準余力値は、互いに異なっていてもよい。
【0079】
ステップS504でYESと判定された場合、ステップS505において、制御部120は、ブースト設定を許可し、図5に示される処理は終了する。
【0080】
続いて、EV走行モードの実行中に行われる処理(つまり、ステップS507~ステップS510)について説明する。
【0081】
ステップS506でYESと判定された場合、ステップS507において、制御部120は、ブースト余力が第2余力値以下になったか否かを説明する。ブースト余力が第2余力値以下になったと判定された場合(ステップS507/YES)、ステップS508に進む。一方、ブースト余力が第2余力値以下になったと判定されなかった場合(ステップS507/NO)、ステップS510に進み、後述するように、ブースト設定が許可される。
【0082】
なお、走行モードがEV走行モードに切り替えられた時点で、ブースト余力が第2余力値以下となっている場合には、ステップS507でYESと判定される。
【0083】
第2余力値は、上述したように、基準余力値より小さい。また、第2余力値は、第1余力値および後述する第3余力値のいずれよりも大きい。
【0084】
ステップS507でYESと判定された場合、ステップS508において、制御部120は、ブースト設定を禁止する。
【0085】
次に、ステップS509において、制御部120は、ブースト余力が基準余力値まで回復したか否かを判定する。ブースト余力が基準余力値まで回復したと判定された場合(ステップS509/YES)、ステップS510に進む。一方、ブースト余力が基準余力値まで回復したと判定されなかった場合(ステップS509/NO)、ステップS509の判定処理が繰り返される。
【0086】
ステップS509でYESと判定された場合、ステップS510において、制御部120は、ブースト設定を許可し、図5に示される処理は終了する。
【0087】
続いて、遷移期間中に行われる処理(つまり、ステップS512~ステップS515)について説明する。
【0088】
ステップS511でYESと判定された場合、ステップS512において、制御部120は、ブースト余力が第3余力値以下になったか否かを説明する。ブースト余力が第3余力値以下になったと判定された場合(ステップS512/YES)、ステップS513に進む。一方、ブースト余力が第3余力値以下になったと判定されなかった場合(ステップS512/NO)、ステップS515に進み、後述するように、ブースト設定が許可される。
【0089】
第3余力値は、上述したように、基準余力値より小さい。また、第3余力値は、第1余力値および第2余力値のいずれよりも小さい。遷移期間は、EV走行モードからHEV走行モードへの切り替えに伴って始動用モータ71aの消費電力が大きく増大する期間である。ゆえに、遷移期間中にDCDCコンバータ31により補機71側に出力される電力が補機71の消費電力に対して不足することを適切に抑制する観点では、第3余力値は、できるだけ0に近いことが好ましい。
【0090】
ステップS512でYESと判定された場合、ステップS513において、制御部120は、ブースト設定を禁止する。
【0091】
次に、ステップS514において、制御部120は、ブースト余力が基準余力値まで回復したか否かを判定する。ブースト余力が基準余力値まで回復したと判定された場合(ステップS514/YES)、ステップS515に進む。一方、ブースト余力が基準余力値まで回復したと判定されなかった場合(ステップS514/NO)、ステップS514の判定処理が繰り返される。
【0092】
ステップS514でYESと判定された場合、ステップS515において、制御部120は、ブースト設定を許可し、図5に示される処理は終了する。
【0093】
なお、上記では、理解を容易にするために、図5に示される制御フローと走行モードの切り替えに関する処理との関係についての説明を省略したが、詳細には、図5に示される制御フローが終了した場合またはステップS504,S509,S514でNOと判定された場合に、走行モードの切り替えを行うか否かの判定が行われる。なお、ステップS504,S509,S514でNOと判定された場合において、走行モードの切り替えを行うと判定された場合、走行モードの切り替えが行われた上でステップS501に戻る。
【0094】
上記のように、制御部120は、HEV走行モードの実行中には、ブースト余力が第1余力値以下になった場合にブースト設定を禁止し、EV走行モードの実行中には、ブースト余力が第1余力値よりも大きい第2余力値以下になった場合にブースト設定を禁止する。それにより、EV走行モードの実行中に、ブースト余力を第1余力値よりも大きい第2余力値程度以上に維持することができる。ゆえに、EV走行モードからHEV走行モードへの切り替えに伴って始動用モータ71aの消費電力が大きく増大する遷移期間中に、DCDCコンバータ31により補機71側に出力される電力が補機71の消費電力に対して不足することを適切に抑制することができる。
【0095】
なお、上記では、第2余力値が第1余力値よりも大きい例を説明したが、第2余力値は第1余力値よりも小さくてもよい。この場合、HEV走行モードの実行中に、ブースト余力を第2余力値よりも大きい第1余力値程度以上に維持することができる。ここで、車両1における各走行モードでの補機71の消費電力の設定によっては、HEV走行モードからEV走行モードへの切り替えに伴い、補機71の消費電力が大きく増大する場合がある。このような場合に、HEV走行モードの実行中に、ブースト余力が第2余力値よりも大きい第1余力値以下になった場合にブースト設定を禁止することによって、ブースト余力を第2余力値よりも大きい第1余力値程度以上に維持することができる。それにより、HEV走行モードからEV走行モードへの切り替えに伴って補機71の消費電力が大きく増大する際に、DCDCコンバータ31により補機71側に出力される電力が補機71の消費電力に対して不足することを適切に抑制することができる。
【0096】
また、遷移期間中にDCDCコンバータ31により補機71側に出力される電力が補機71の消費電力に対して不足することをより適切に抑制する観点では、図5に示される制御フローのように、制御部120は、EV走行モードからHEV走行モードへ切り替わる間のエンジン11の始動が行われる遷移期間には、ブースト余力が第1余力値よりも小さな第3余力値以下になった場合に、ブースト設定を禁止することが好ましい。
【0097】
[EV走行モードへの切り替えの禁止に関する処理]
図6は、制御装置100が行うEV走行モードへの切り替えの禁止に関する処理の流れの一例を示すフローチャートである。図6に示される制御フローは、具体的には、繰り返し実行される。
【0098】
なお、図6に示される制御フローは、EV走行モードへの切り替えが許可されている状態で開始される。また、図6に示される制御フローは、図5に示される制御フローおよび走行モードの切り替えに関する処理と並行して実行される。
【0099】
図6に示される制御フローが開始されると、まず、ステップS601において、制御部120は、HEV走行モードが実行中であるか否かを判定する。HEV走行モードが実行中であると判定された場合(ステップS601/YES)、ステップS602に進む。一方、HEV走行モードが実行中であると判定されなかった場合(ステップS601/NO)、ステップS601の判定処理が繰り返される。
【0100】
ステップS601でYESと判定された場合、ステップS602において、制御部120は、ブースト余力が第2余力値以下になったか否かを判定する。ブースト余力が第2余力値以下になったと判定された場合(ステップS602/YES)、ステップS603に進む。一方、ブースト余力が第2余力値以下になったと判定されなかった場合(ステップS602/NO)、ステップS605に進み、後述するように、EV走行モードへの切り替えが許可される。
【0101】
なお、走行モードがHEV走行モードに切り替えられた時点で、ブースト余力が第2余力値以下となっている場合には、ステップS602でYESと判定される。
【0102】
ステップS602でYESと判定された場合、ステップS603において、制御部120は、EV走行モードへの切り替えを禁止する。
【0103】
次に、ステップS604において、制御部120は、ブースト余力が基準余力値まで回復したか否かを判定する。ブースト余力が基準余力値まで回復したと判定された場合(ステップS604/YES)、ステップS605に進む。一方、ブースト余力が基準余力値まで回復したと判定されなかった場合(ステップS604/NO)、ステップS604の判定処理が繰り返される。
【0104】
ステップS604でYESと判定された場合、ステップS605において、制御部120は、HEV走行モードからEV走行モードへの切り替えを許可し、図6に示される処理は終了する。
【0105】
ブースト余力が第2余力値を下回った状態でEV走行モードからHEV走行モードへの切り替えが行われることを抑制する観点では、図6に示される制御フローのように、制御部120は、HEV走行モードの実行中に、ブースト余力が第2余力値以下になった場合に、EV走行モードへの切り替えを禁止することが好ましい。
【0106】
[制御装置100による処理が行われる場合における各種状態量の推移]
図7は、制御装置100による処理が行われる場合における各種状態量の推移の一例を示す図である。具体的には、図7では、上述した図5および図6に示される制御フローが実行されている場合における走行モード、出力制限制御における出力電流の閾値、ブースト余力およびEV走行モードへの切り替えの可否の推移の一例が示されている。
【0107】
なお、図7において、各種状態量の推移が一点鎖線で示される例は、各種状態量の推移が実線で示される例と異なり、ブースト閾値を状況に応じて変化させる例であり、このような例の詳細は後述する。
【0108】
図7に示される例では、時刻T1より前において、走行モードはHEV走行モードになっており、出力制限制御の閾値の設定はブースト設定になっており(つまり、当該閾値がブースト閾値になっており)、ブースト余力は基準余力値以上になっており、EV走行モードへの切り替えは許可されている。
【0109】
図7に示されるように、時刻T1において、ブースト余力が第2余力値まで低下したことをトリガとして、EV走行モードへの切り替えが禁止される。その後、時刻T2において、ブースト余力が第1余力値まで低下したことをトリガとして、ブースト設定が禁止されて出力制限制御の閾値の設定が通常設定となる(つまり、当該閾値が基準閾値となる)。時刻T2以後において、出力制限制御の閾値の設定が通常設定となっているので、ブースト余力が回復(つまり、上昇)する。そして、時刻T3において、ブースト余力が基準余力値まで回復したことをトリガとして、ブースト設定が許可されて出力制限制御の閾値の設定がブースト設定になる(つまり、当該閾値がブースト閾値となる)とともに、EV走行モードへの切り替えが許可される。
【0110】
その後、時刻T4において、走行モードがHEV走行モードからEV走行モードに切り替えられる。そして、時刻T5において、ブースト余力が第2余力値まで低下したことをトリガとして、ブースト設定が禁止されて出力制限制御の閾値の設定が通常設定となる。そして、時刻T5以後において、ブースト余力が回復し、時刻T6において、ブースト余力が基準余力値まで回復したことをトリガとして、ブースト設定が許可されて出力制限制御の閾値の設定がブースト設定となる。その後、時刻T5と同様に、時刻T7において、ブースト余力が第2余力値まで低下したことをトリガとして、ブースト設定が禁止されて出力制限制御の閾値の設定が通常設定となる。
【0111】
その後、時刻T8において、EV走行モードからHEV走行モードへの切り替えが開始され、遷移期間となる。この際、ブースト余力が第3余力値よりも大きくなっているので、ブースト設定が許可されて出力制限制御の閾値の設定がブースト設定となる。その後、時刻T9において、HEV走行モードへの切り替えが完了し、遷移期間が終了する。ここで、遷移期間には、ブースト余力が第3余力値まで低下するまでブースト設定が許可されるので、図7に示されるように、時刻T8~T9までの間において、ブースト余力が第1余力値を下回ってもブースト設定が許可された状態が継続する。
【0112】
車両1の走行モードがHEV走行モードになる時刻T9において、ブースト余力が第1余力値以下になっているので、ブースト設定が禁止されて出力制限制御の閾値の設定が通常設定となる。また、時刻T9において、ブースト余力が第2余力値以下になっているので、EV走行モードへの切り替えが禁止される。その後、時刻T10において、ブースト余力が基準余力値まで回復したことをトリガとして、ブースト設定が許可されて出力制限制御の閾値の設定がブースト設定になるとともに、EV走行モードへの切り替えが許可される。
【0113】
上記のように、図7に示される例では、制御装置100による処理が行われることにより、HEV走行モードの実行中に、ブースト余力が第1余力値まで低下した時刻T2にブースト設定が禁止され、EV走行モードの実行中に、ブースト余力が第1余力値よりも大きい第2余力値まで低下した時刻T5,T7にブースト設定が禁止される。それにより、EV走行モードの実行中である時刻T4~時刻T8の間に、ブースト余力を第1余力値よりも大きい第2余力値程度以上に維持することができる。ゆえに、EV走行モードからHEV走行モードへの切り替えに伴って始動用モータ71aの消費電力が大きく増大する遷移期間である時刻T8~時刻T9の間に、DCDCコンバータ31により補機71側に出力される電力が補機71の消費電力に対して不足することを適切に抑制することができる。
【0114】
ここで、EV走行モードの実行中に、ブースト余力を第2余力値程度以上により維持しやすくする観点では、制御部120は、EV走行モードの実行中のブースト閾値を、HEV走行モードの実行中のブースト閾値よりも小さくすることが好ましい。例えば、図7において、一点鎖線で示されるように、EV走行モードの実行中である時刻T4~時刻T8の間に、ブースト閾値を、HEV走行モードの実行中のブースト閾値よりも小さくすることによって、ブースト余力の低下速度を小さくすることができる。ゆえに、EV走行モードの実行中である時刻T4~時刻T8の間に、ブースト余力を第2余力値程度以上により維持しやすくすることができる。
【0115】
なお、制御部120は、遷移期間中のブースト閾値を、HEV走行モードの実行中のブースト閾値よりも大きくしてもよい。例えば、図7において、一点鎖線で示されるように、遷移期間である時刻T8~時刻T9の間に、ブースト閾値を、HEV走行モードの実行中のブースト閾値よりも大きくすることによって、DCDCコンバータ31により補機71側に出力される電力が補機71の消費電力に対して不足することをより適切に抑制することができる。
【0116】
<制御装置の効果>
続いて、本発明の実施形態に係る制御装置100の効果について説明する。
【0117】
本実施形態に係る制御装置100では、制御部120は、DCDCコンバータ31の出力電流が閾値以上となった場合に、DCDCコンバータ31の出力電圧を低下させることにより出力電流を低下させる出力制限制御を実行する。また、制御部120は、出力制限制御における閾値を基準閾値に設定する通常設定と、当該閾値を基準閾値よりも大きなブースト閾値に設定するブースト設定とを切り替え可能である。ここで、HEV走行モードの実行中には、制御部120は、出力電流が基準閾値を超えるブースト状態を維持するためのDCDCコンバータの耐用限界までの余裕度合いに相当するブースト余力が第1余力値以下になった場合に、ブースト設定を禁止する。一方、EV走行モードの実行中には、制御部120は、ブースト余力が第1余力値と異なる第2余力値以下になった場合に、ブースト設定を禁止する。
【0118】
それにより、走行モードの切り替えに伴って補機71の消費電力が大きく増大する際に、ブースト余力をある程度大きな値以上に維持することができるので、DCDCコンバータ31により補機71側に出力される電力が補機71の消費電力に対して不足することを適切に抑制することができる。ゆえに、補機71に供給される電力が不足することを抑制することができる。さらに、補機71と接続されている低電圧バッテリ23から不足分の電力が持ち出されることにより、低電圧バッテリ23の充放電の頻度が増大し、低電圧バッテリ23の劣化が促進されてしまうことを抑制することができる。このように、本実施形態に係る制御装置100によれば、補機71への電力供給を適切に行うことが可能となる。
【0119】
また、本実施形態に係る制御装置100では、補機71は、エンジン11を始動する始動用モータ71aを含み、第2余力値は、第1余力値よりも大きいことが好ましい。それにより、EV走行モードの実行中に、ブースト余力が第1余力値よりも大きい第2余力値以下になった場合にブースト設定を禁止することによって、ブースト余力を第1余力値よりも大きい第2余力値程度以上に維持することができる。ゆえに、EV走行モードからHEV走行モードへの切り替えに伴って始動用モータ71aの消費電力が大きく増大する遷移期間中に、DCDCコンバータ31により補機71側に出力される電力が補機71の消費電力に対して不足することを適切に抑制することができる。
【0120】
また、本実施形態に係る制御装置100では、制御部120は、HEV走行モードの実行中に、ブースト余力が第2余力値以下になった場合に、EV走行モードへの切り替えを禁止することが好ましい。ここで、HEV走行モードからEV走行モードへの切り替えが行われた直後にEV走行モードからHEV走行モードへの切り替えが行われる場合がある。このような場合には、HEV走行モードからEV走行モードへの切り替えが行われた時点からブースト余力の回復が十分に行われない状態でEV走行モードからHEV走行モードへの切り替えが行われてしまう。ゆえに、HEV走行モードの実行中に、ブースト余力が第2余力値以下になった場合にEV走行モードへの切り替えを禁止することによって、ブースト余力が第2余力値を下回った状態でEV走行モードからHEV走行モードへの切り替えが行われることを抑制することができる。ゆえに、EV走行モードからHEV走行モードへ切り替わる間のエンジン11の始動が行われる遷移期間中に、DCDCコンバータ31により補機71側に出力される電力が補機71の消費電力に対して不足することを適切に抑制することができる。
【0121】
また、本実施形態に係る制御装置100では、制御部120は、EV走行モードの実行中のブースト閾値を、HEV走行モードの実行中のブースト閾値よりも小さくすることが好ましい。それにより、EV走行モードの実行中に、ブースト余力の低下速度を小さくすることができる。ゆえに、EV走行モードの実行中に、ブースト余力を第2余力値程度以上により維持しやすくすることができる。
【0122】
また、本実施形態に係る制御装置100では、制御部120は、EV走行モードからHEV走行モードへ切り替わる間のエンジン11の始動が行われる遷移期間には、ブースト余力が第1余力値よりも小さな第3余力値以下になった場合に、ブースト設定を禁止することが好ましい。それにより、始動用モータ71aの消費電力が大きく増大する遷移期間中に、DCDCコンバータ31の出力電流が基準閾値を超えるブースト状態を維持しやすくすることができるので、遷移期間中にDCDCコンバータ31により補機71側に出力される電力が補機71の消費電力に対して不足することをより適切に抑制することができる。
【0123】
また、本実施形態に係る制御装置100では、制御部120は、DCDCコンバータ31の温度に基づいてブースト余力を特定することが好ましい。それにより、出力電流が基準閾値を超えるブースト状態を維持するためのDCDCコンバータ31の耐用限界までの余裕度合いに相当する指標としてのブースト余力をより適切に特定することができる。
【0124】
また、本実施形態に係る制御装置100では、制御部120は、ブースト状態の継続時間と、ブースト状態における基準閾値に対する出力電流の超過量とに基づいてブースト余力を特定することが好ましい。それにより、車両1に温度センサ95が設けられていない場合であっても、出力電流が基準閾値を超えるブースト状態を維持するためのDCDCコンバータ31の耐用限界までの余裕度合いに相当する指標としてのブースト余力を適切に特定することができる。
【0125】
以上、添付図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されないことは勿論であり、特許請求の範囲に記載された範疇における各種の変更例または修正例についても、本発明の技術的範囲に属することは言うまでもない。
【0126】
例えば、上記では、図1を参照して、本発明に係る制御装置が搭載される車両の例として、車両1を説明したが、本発明に係る制御装置が搭載される車両の構成は上記の例に特に限定されない。
【0127】
具体的には、本発明に係る制御装置が搭載される車両の構成は、図1に示される車両1に対して一部の構成要素の削除、追加または変更を加えたものであってもよい。例えば、車両1に対して始動用モータ71aおよび低電圧バッテリ23と補機71bおよびDCDCコンバータ31との間での電流の流れ方向が一方向に制限された状態と双方向に許可された状態とを切り替える機構が設けられていてもよい。
【0128】
また、本発明に係る制御装置は、所謂シリーズハイブリッド方式の車両(具体的には、エンジンから出力される動力が高電圧バッテリに供給される電力を発電する発電装置の駆動のみに用いられる車両)に搭載されてもよい。この場合、HEV走行モードでは、エンジンが発電装置の駆動のために駆動された状態で車両が走行する。
【0129】
また、例えば、本明細書においてフローチャートを用いて説明した処理は、必ずしもフローチャートに示された順序で実行されなくてもよい。また、追加的な処理ステップが採用されてもよく、一部の処理ステップが省略されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明は、車両の制御装置に利用できる。
【符号の説明】
【0131】
1 車両
11 エンジン
21 高電圧バッテリ
23 低電圧バッテリ
31 DCDCコンバータ
41 駆動用モータ
43 インバータ
51 変速機
61 駆動輪
71 補機
71a 始動用モータ
71b 補機
91 エンジン回転数センサ
93 電流センサ
95 温度センサ
100 制御装置
110 取得部
120 制御部
121 エンジン制御部
122 モータ制御部
123 コンバータ制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7