(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-23
(45)【発行日】2023-08-31
(54)【発明の名称】グリーンタイヤの製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
B29D 30/26 20060101AFI20230824BHJP
B29D 30/30 20060101ALI20230824BHJP
B29D 30/32 20060101ALI20230824BHJP
【FI】
B29D30/26
B29D30/30
B29D30/32
(21)【出願番号】P 2022503528
(86)(22)【出願日】2020-05-26
(86)【国際出願番号】 DE2020100445
(87)【国際公開番号】W WO2021008645
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2022-05-06
(31)【優先権主張番号】102019119474.1
(32)【優先日】2019-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】513044038
【氏名又は名称】ハールブルク・フロイデンベルガー マシーネンバウ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【氏名又は名称】今井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】ベーレンス アヒム
(72)【発明者】
【氏名】ブッシュ ウルリッヒ
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02380728(EP,A1)
【文献】特表2016-512479(JP,A)
【文献】特開2016-088030(JP,A)
【文献】国際公開第2018/228621(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/00-30/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのタイヤ成形ドラム(10)と、プライサーバ(20)と、中子据付け装置(30)と、グリーンタイヤ(100)の中子(103)の周りで少なくとも1つのプライをターンアップするための、及び/又は、前記グリーンタイヤ(100)の前記プライを、前記グリーンタイヤ(100)の残り部分に対して押し付けるための、少なくとも1つのターンアップ装置(15)と、を有するタイヤ成形機として形成され、
前記タイヤ成形ドラム(10)は、ドラムシャフト(13)上に配置
され、中間部分(12)と、2つのドラムハーフ(11)とを有し、当該2つのドラムハーフ(11)は、前記中間部分(12)に関する前記ドラムシャフト(13)の軸方向に、前記中間部分(12)に対して移動可能である、グリーンタイヤの製造装置(1)において、
サイドウォールサーバ(40)を有し、前記サイドウォールサーバ(40)にて、前記グリーンタイヤ(100)の2つのサイドウォール(104)の材料を、前記タイヤ成形ドラム(10)の前記ドラムハーフ(11)の上に同時に移送でき、又は、それらに据え付けできることを特徴とするグリーンタイヤの製造装置(1)。
【請求項2】
前記サイドウォールサーバ(40)は、2つのサイドウォールサーバモジュール(41)を有し、前記2つのサイドウォールサーバモジュール(41)にて、それぞれ、前記サイドウォール(104)の材料を前記タイヤ成形ドラム(10)の前記ドラムハーフ(11)の上に移送できることを特徴とする請求項1に記載のグリーンタイヤの製造装置(1)。
【請求項3】
前記サイドウォールサーバモジュール(41)は、互いに距離を置いて配置され、前記サイドウォールサーバモジュール(41)の間で、前記サイドウォールサーバ(40)の領域に間隔が設けられていることを特徴とする請求項2に記載のグリーンタイヤの製造装置(1)。
【請求項4】
それぞれの前記サイドウォールサーバモジュール(41)は、サイドウォール材料の搬送装置を有することを特徴とする請求項2又は3に記載のグリーンタイヤの製造装置(1)。
【請求項5】
タイヤの製造装置(1)によりグリーンタイヤ(100)が製造される、グリーンタイヤ(100)の製造方法において、
前記グリーンタイヤ(100)の少なくとも1つのプライが、ハイターンアップで形成されること、及び、
前記グリーンタイヤ(100)に押し付けた後、前記グリーンタイヤ(100)の複数のサイドウォール(104)が、前記グリーンタイヤ(100)の残り部分に対して押し付けられたトレッド(106)に重なることで、SOT構造のグリーンタイヤ(100)が製造される
こと、及び
前記複数のサイドウォール(104)は、2つのサイドウォールサーバモジュール(41)によって供給され、当該2つのサイドウォールサーバモジュール(41)は、これらモジュール間に自由作動空間として使用される互いからの距離が実現されるように配置されていることを特徴とするグリーンタイヤ(100)の製造方法。
【請求項6】
1つの方法ステップにおいて、インナーライナ(101)を前記グリーンタイヤ(100)の第1プライとして、タイヤ成形ドラム(10)の中央に配置し、
更なる方法ステップにおいて、ボディプライ(102)として第2プライを前記第1プライの上で、前記タイヤ成形ドラム(10)の中央に配置し、
更なる方法ステップにおいて、前記タイヤ成形ドラム(10)の中間部分(12)を半径方向に拡大し、
更なる方法ステップにおいて、前記グリーンタイヤ(100)の2つの中子(103)を、中子据付け装置(30)によって据え付けること、及び、
1つの方法ステップにおいて、前記据え付けられた中子(103)を、中子クランプ装置(14)によってクランプし、
1つの方法ステップにおいて、前記プライ(101、102)を、少なくとも1つのターンアップ装置(15)によって前記中子(103)の周りにターンアップし、
1つの方法ステップにおいて、前記グリーンタイヤ(100)の前記サイドウォール(104)用の材料を、サイドウォールサーバ(40)によって各ドラムハーフ(11)の上に配置し、前記ドラムハーフ(11)は、前記タイヤ成形ドラム(10)の前記中間部分(12)に対して距離を置いて配置され、
1つの方法ステップにおいて、前記ドラムハーフ(11)を、前記中間部分(12)に向けて移動することで、それぞれの端部領域(104b)における前記サイドウォール(104)の材料が、前記グリーンタイヤ(100)の前記中子(103)の下に配置され、
1つの方法ステップにおいて、前記サイドウォール(104)の材料を、前記中子クランプ装置(14)によって前記中子(103)の下の前記グリーンタイヤ(100)に対して押し付け、
1つの方法ステップにおいて、前記グリーンタイヤ内に空気を導入し、
1つの方法ステップにおいて、ブレーカベルトアセンブリ(105)及び前記トレッド(106)を、押圧装置(51)によって前記グリーンタイヤ(100)の残り部分に対して配置し、押し付け、
1つの方法ステップにおいて、前記サイドウォール(104)を、前記ターンアップ装置(15)によって前記グリーンタイヤ(100)に対して押し付けることで、いくつかの領域において、前記サイドウォール(104)が前記トレッド(106)に重なることを特徴とする、請求項5に記載のグリーンタイヤ(100)の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のグリーンタイヤの製造装置(1)が使用されることを特徴とする請求項5又は6に記載のグリーンタイヤ(100)の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ成形機によって少なくとも1つのタイヤ成形ドラム上で複数のプライからグリーンタイヤを製造する、グリーンタイヤの製造方法に関する。
【0002】
また、本発明は、複数のプライからグリーンタイヤを製造するためのタイヤ成形機という意味でのグリーンタイヤの製造装置に関する。
【背景技術】
【0003】
このようなタイヤ成形機は一般に、少なくとも1つのタイヤ成形ドラムと、いわゆるサーバとを有し、それらサーバにて、グリーンタイヤの様々なプライをタイヤ成形ドラム(複数可)に適用でき、グリーンタイヤをそれらから製造できる。
【0004】
対応するタイヤ成形機は、例えば特許文献1から公知である。
【0005】
グリーンタイヤは、一般に、2つの環状中子の周りに部分的にめくられた(ターンアップされた)複数のプライから構築され、後の方法ステップで、別途製造されたブレーカベルトアセンブリとトレッドに接続される。さらに、グリーンタイヤはサイドウォールを有し、これらはグリーンタイヤの残り部分に別個の要素として接続される。グリーンタイヤのトレッドがサイドウォールに重なるか、グリーンタイヤのサイドウォールがトレッドに重なるかによって、タイヤは、TOS(トレッド・オーバー・サイドウォール)構造であるか、又はSOT(サイドウォール・オーバー・トレッド)構造であるかに区別される。
【0006】
また、グリーンタイヤに第2の完全なプライを導入する代わりに、少なくとも1つのプライを中子の周りにめくり上げ、サイドウォール領域に二層に敷くことによって、タイヤのサイドウォールを省材料で補強することもできる。このようなタイヤは、少なくとも1つのプライのハイターンアップ(又は、C-プライ)タイヤと呼ばれる。
【0007】
ハイターンアップとして形成された少なくとも1つのプライを有するSOTグリーンタイヤの組み合わせの完全な自動生産は、先行技術によればまだ可能ではない。むしろ、手動介入がこのためにまだ、生産においてかなりの程度必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の1つ目の課題は、ハイターンアップとして形成された少なくとも1つのプライを有するSOTグリーンタイヤの製造を可能とする、タイヤ成形機の意味でのグリーンタイヤの製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、本発明によると、請求項1の特徴を有するタイヤの製造装置によって達成される。
【0011】
本発明の更なる課題は、ハイターンアップとして形成された少なくとも1つのプライを有するSOTグリーンタイヤの製造を可能とする、グリーンタイヤの製造方法を提供することである。
【0012】
この課題は、本発明によると、請求項5の特徴を有するグリーンタイヤの製造方法によって達成される。
【0013】
タイヤ成形機の意味でのタイヤ製造装置の以下に開示される特徴は、個別と、すべての実現可能な組み合わせの両方で、本発明に含まれる。
【0014】
本発明によるタイヤ製造装置は、少なくとも1つのタイヤ成形ドラム、プライサーバ、及びサイドウォールサーバを有するタイヤ成形機として構成されている。
【0015】
本発明の一実施形態では、タイヤ成形ドラムは、中間部分と、2つのドラムハーフとを有し、これらドラムハーフは、軸方向において中間部分に隣接して配置され、中間部分と共に共通のドラムシャフト上に配置されている。
【0016】
本発明の好ましい実施形態では、ドラムハーフは、ドラムシャフト上の軸方向において中間部分に対して移動可能であり、それらを中間部分の真横に配置したり、中間部分から距離を置いて配置したりできる。
【0017】
本発明の一実施形態では、タイヤ成形ドラムの中間部分は、半径方向に拡大可能であり、中間部分の周長及び直径を設定できる。
【0018】
さらに、本発明の好ましい実施形態では、タイヤ成形ドラムの中間部分の幅を設定できる。
【0019】
本発明の一実施形態では、タイヤ成形ドラムの中間部分は、この目的のために2つに分割されており、中間部分のモジュールは、ドラムシャフトの軸方向に互いに移動できる。
【0020】
本発明の特に好ましい実施形態では、中間部分のモジュールは指状のデザインであり、中間部分のモジュールの指は互いに係合して配置されている。
【0021】
本発明の好ましい実施形態では、タイヤ成形ドラムは、グリーンタイヤの中子をタイヤ成形ドラム上でクランプ式に固定可能な中子クランプ装置を有する。
【0022】
本発明の好ましい実施形態では、タイヤ成形ドラムの中子クランプ装置は、この目的のために半径方向に拡大可能な肩部を有し、この肩部によって中子を内側から締め付けできる。
【0023】
本発明の更なる実施形態では、タイヤ成形機は、タイヤ成形ドラムの領域に少なくとも1つのターンアップ装置を有し、この装置でグリーンタイヤのプライを中子の周りにターンアップでき、及び/又はグリーンタイヤの他のプライに押圧できる。
【0024】
本発明の好ましい実施形態では、タイヤ成形機は、2つのターンアップ装置を有し、この装置でプライをグリーンタイヤの両側の周りにターンアップし、同時にグリーンタイヤの両側に対し押圧できる。
【0025】
本発明の一実施形態では、ターンアップ装置は、膨張可能なブラダとして形成されている。
【0026】
本発明の更なる実施形態では、ターンアップ装置は、ターンアップフィンガー及び/又はローラを有する。
【0027】
本発明の好ましい実施形態では、ターンアップ装置は、タイヤ成形ドラムのドラムハーフの領域に配置されている。
【0028】
本発明の更なる実施形態では、タイヤ成形機は、タイヤ成形ドラムの領域に、グリーンタイヤに空気を導入するための空気導入装置を有する。
【0029】
一実施形態では、タイヤ成形ドラムは、駆動装置によって回転させることができる。
【0030】
本発明の更なる実施形態では、タイヤ成形ドラムは、ドラムシャフトと共にタイヤ成形機の領域において、少なくともドラムシャフトの軸方向に移動でき、タイヤ成形ドラムをタイヤ成形機の様々な機器の作業領域に配置することができる。
【0031】
そのような機器は、例えばプライサーバである。プライサーバを用いて、グリーンタイヤの様々なプライをタイヤ成形ドラムの上に移送できる。
【0032】
本発明の更なる実施形態では、タイヤ成形機は中子据付け装置を有する。中子据付け装置によって、グリーンタイヤの環状中子を据え付けできる。
【0033】
本発明の一実施形態では、中子据付け装置は、タイヤ成形機の更なる機器の領域に配置されている。その機器は、以下よりタイヤ成形リングと称される。
【0034】
本発明の一実施形態では、その結果、タイヤ成形リングの作業領域に中子が据え付けられる。
【0035】
本発明の更なる実施形態では、タイヤ成形リングの作業領域において、グリーンタイヤのブレーカベルトアセンブリ及びトレッドを、タイヤ成形ドラム上で成形されたグリーンタイヤの残り部分のプライに接続できる。
【0036】
本発明の一実施形態では、ブレーカベルトアセンブリ及びトレッドをグリーンタイヤの残り部分に押圧するための圧力付与装置を有する。
【0037】
本発明の好ましい実施形態では、ブレーカベルトアセンブリ及びトレッドのための圧力付与装置は、タイヤ成形リングの作業領域に配置されている。
【0038】
本発明の一実施形態では、ブレーカベルトアセンブリは、ベルトドラム上で別個に製造でき、その上に、ブレーカベルトアセンブリの材料の様々なプライ、及びトレッドを、少なくとも1つのトレッドサーバによって移送できる。
【0039】
本発明の好ましい実施形態では、ベルトドラムは、トレッドサーバの作業領域からトレッド成形リングの作業領域へ移動できる。
【0040】
本発明の好ましい実施形態では、サイドウォールサーバを有し、このサイドウォールサーバにて、グリーンタイヤのサイドウォール用の材料をタイヤ成形ドラムの上に移送できる。
【0041】
本発明の特に有利な実施形態では、サイドウォールサーバは2つに分割されており、グリーンタイヤの両方側のサイドウォール用材料をタイヤ成形ドラムに同時に移送できる。
【0042】
本発明のさらに好ましい実施形態では、この場合のサイドウォールサーバは、1つのサイドウォール用の材料を、タイヤ成形ドラムの1つのドラムハーフにそれぞれ移送できるように構成されている。ここでドラムハーフは、タイヤ成形ドラムの中間部分に対して距離をおいて配置できる。
【0043】
本発明の一実施形態では、サイドウォールサーバは、この目的のために、各々のサイドウォール用のサイドウォールサーバモジュールを有する。これらのサイドウォールサーバモジュールは、材料の搬送方向に対して垂直な方向に互いにほぼ同じ距離にあり、例えば、タイヤ成形ドラムの中央部分から距離をおいて配置されるドラムハーフのように、ドラムシャフトの長手方向の延在方向に対して平行に互いにほぼ同じ距離にある。
【0044】
特に好ましい実施形態では、プライサーバは、サイドウォールサーバモジュールとして使用される。
【0045】
グリーンタイヤを製造する方法の以下に開示される特徴は、個々の本発明、及び全ての実現可能な組み合わせによる本発明の一部分である。
【0046】
グリーンタイヤを製造するための本発明による方法は、以下のステップを備える。
1.グリーンタイヤの第1プライ(インナーライナ)をタイヤ成形ドラムの中央に配置する。
2.第2プライ(ボディプライ)を第1プライの上で、タイヤ成形ドラムの中央に配置する。
3.中間部分を半径方向に拡大する。
4.複数の中子を据付ける。
5.中子をクランプする。
6.中子の周りでプライ(複数のプライ)をターンアップする。
7.グリーンタイヤのサイドウォール用の材料を、それぞれのドラムハーフの上に搬送する。ここで、ドラムハーフは、タイヤ成形ドラムの中間部分に対し、距離をおいて配置されている。
8.ドラムハーフを中間部分に向けて移動することで、サイドウォール材料がグリーンタイヤの中子の下のいくつかの領域に配置される。
9.サイドウォール材料を中子の下に押し付ける。
10.グリーンタイヤ(カーカス)に空気を導入する。
11.ブレーカベルトアセンブリとトレッドをグリーンタイヤの残り部分に対して位置決めし、押し付ける。
12.サイドウォールをグリーンタイヤに対して押し付け、幾つかの領域においてそれらがトレッドに重なるようにする。
【0047】
上に与えられたリストは、タイヤを製造するための本発明による方法の方法ステップの非網羅的な列挙である。しかし、列挙された方法ステップを実施することは、1つの例示的な実施形態によるグリーンタイヤの製造に十分である。
【0048】
更なる方法ステップは、特に、タイヤ成形ドラムのタイヤ成形リングへの搬送及び/又はプライ若しくはサイドウォールサーバへの搬送であり、ベルトドラム上のブレーカベルトアセンブリの製造であり、並びにブレーカベルトアセンブリ及びトレッドのタイヤ成形リングへの搬送であってよい。
【0049】
タイヤを製造するための本発明による方法では、少なくとも1つのプライ(ボディプライ)が、ハイターンアップで形成される。この目的のために、対応するプライは、ターンアップの後、ハイターンアップで形成されたプライ(ボディプライ)の下にある同じ内側プライに対して直接押し付けられたとき、サイドウォール材よりも下にあるグリーンタイヤの周囲でさらに接触するように、少なくとも十分に広くされる。
【0050】
グリーンタイヤのハイターンアップで形成されたプライ(ボディプライ)は、タイヤのサイドウォールの補強をもたらす。一方で、それと同時に、ハイターンアップで形成されたプライ(ボディプライ)のターンアップ領域の結果として、グリーンタイヤの中間領域全体がカバーされないことにより、プライ(ボディプライ)の追加に比べ、タイヤの中間領域の材料を節約できる。プライ(ボディプライ)による付加的な補強は、一般に、タイヤの中間領域において必要とされない。
【0051】
タイヤを製造するための本発明による方法の好ましい実施形態では、タイヤを製造するための本発明による装置が使用される。
【0052】
本発明によれば、グリーンタイヤを製造するために、異なる数のプライを使用することもできる。好ましくは、より多くのプライが、グリーンタイヤを製造するために使用される。
【0053】
以下の図には、ハイターンアップのプライを有するSOT構造のグリーンタイヤの可能な構造態様と、グリーンタイヤを製造する方法の本発明による実施形態の方法ステップとが、例として示されている。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1】プライのハイターンアップを有するSOT構造のタイヤの一変形例の部分断面図である。
【
図2】プライのハイターンアップを有するSOT構造のタイヤの更なる変形例の部分断面図である。
【
図3】プライのハイターンアップを有するSOT構造のタイヤの更なる変形例の部分断面図である。
【
図4】タイヤ成形ドラム上の第1プライ(インナーライナ)の配置を示す模式図、及びタイヤ成形ドラムの斜視図である。
【
図5】タイヤ成形ドラム上の第2プライ(ボディプライ)の配置を示す模式図、及びタイヤ成形ドラムの側面図である。
【
図6】
図5に、サイドウォール材の外側端部の位置を示した図である。
【
図7】中子据付け装置の領域におけるタイヤ成形ドラムの詳細な模式図である。
【
図8】中子据付け中の1つの方法ステップにおける、タイヤ成形ドラムの詳細な模式図、及びタイヤ成形ドラムの側面図である。
【
図9】中子据付け中の更なる方法ステップにおける、タイヤ成形ドラムの詳細な模式図である。
【
図10】中子クランプ中のタイヤ成形ドラムの詳細な模式図である。
【
図11】プライのターンアップ中の、タイヤ成形ドラムの詳細な模式図である。
【
図12】プライのターンアップ後の、タイヤ成形ドラムの詳細な模式図である。
【
図13】本発明によるタイヤ成形機の2つのサイドウォールサーバからサイドウォール材を移送する間の、タイヤ成形ドラムの詳細な模式図である。
【
図14】タイヤ成形ドラム上にサイドウォール材を移送した後のタイヤ成形ドラムの詳細な模式図、及びタイヤ成形ドラムの側面図である。
【
図15】グリーンタイヤ製造時のタイヤ成形ドラムの詳細な模式図である。
【
図16】ブレーカベルトアセンブリをグリーンタイヤの残り部分に接続する前の、タイヤ成形ドラムの詳細な配置図である。
【
図17】ブレーカベルトアセンブリをグリーンタイヤの残り部分に接続する間の、タイヤ成形ドラムの詳細な配置図である。
【
図18】サイドウォールをグリーンタイヤの残り部分に押圧する間の、タイヤ成形ドラムの詳細な配置図である。
【
図19】サイドウォールをグリーンタイヤの残り部分に押圧した後の、タイヤ成形ドラムの詳細な配置図である。
【
図20】グリーンタイヤの完成後で、取り出し装置への移送前のタイヤ成形ドラムの詳細な配置図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
図1には、プライのハイターンアップを有するSOT構造のグリーンタイヤ(生タイヤ)100の一変形例の断面部分図が示されている。グリーンタイヤ100は、内側に、インナーライナ101と称される第1プライを有し、その上に、ハイターンアップを有する第2プライとして、ボディプライ102aが適用されたものである。ハイターンアップを有するボディプライ102aは、この場合、中子(core)103の周りにターンアップされており、ハイターンアップを有するボディプライ102aのターンアップ領域は、グリーンタイヤのサイドウォール領域101の全体を通ってグリーンタイヤ100の中間領域まで延びている。そこでは、ハイターンアップを有するボディプライ102aは、一点鎖線で表されるグリーンタイヤ100の対称軸から距離を置いて終端している。
【0056】
この距離は、サイドウォール領域においてタイヤを補強するための更なる完全なボディプライ102の使用と比較して、節約される材料の量を規定する。さらに、グリーンタイヤ100は、サイドウォール104と、ハイターンアップ102aを有するボディプライの上に配置された複数のプライによって提供されるブレーカベルトアセンブリ105と、トレッド106とを備えている。グリーンタイヤ100の示されるSOT構造では、サイドウォール104の材料は、トレッド106の材料と重なり合っている。
【0057】
図2は、プライのハイターンアップを有するSOT構造のグリーンタイヤ100の更なる変形例の断面部分図を示す。
図1に示す変形例と比較して、このグリーンタイヤ100は、ハイターンアップのないボディプライ102によって実現されている追加のプライを有している。
【0058】
図3には、プライのハイターンアップを有するSOT構造のグリーンタイヤ100の更なる変形例の断面部分図が示されている。グリーンタイヤ100は、
図1と比較して、追加のプライを有し、その追加のプライは、その下にあるプライに下向きに押し付けられたボディプライによって実現されている。
【0059】
図4は、タイヤ成形ドラム10上の第1プライとしてのインナーライナ101の位置決め方式としての、グリーンタイヤ100を製造するための本発明による方法の方法ステップの配置図と、その下のタイヤ成形ドラム10の斜視図を示している。タイヤ成形ドラム10は、中間部分12と、中間部分12に隣接して配置された2つのドラムハーフ(drum halves)11とを有し、ドラムシャフト13に取り付けられている。タイヤ成形ドラム10の半径方向の対称軸は、一点鎖線で示されている。インナーライナ101は、図示しないプライサーバ20によって、タイヤ成形ドラム10の中央に適用できる。
【0060】
図5には、タイヤ成形ドラム10上の第2プライとしてのボディプライ102の位置決め配置図と、タイヤ成形ドラム10の側面図とが示されている。ボディプライ102は、プライサーバ20により、インナーライナ101が既にあるタイヤ成形ドラム10の中央に適用できる。
【0061】
図6は、プライの据付け量を説明するために、サイドウォール材104の外側端部104aの位置を示した
図5からの配置図を示す。ボディプライ102の材料がサイドウォール材104の外側端部104aの位置よりも突出しているため、ハイターンアップを有するボディプライ102aを実現できる。
【0062】
図7には、中子据付け装置30の領域におけるタイヤ成形ドラム10の詳細な概略図が示されている。この方法ステップでは、中子103の据え付けのための準備が行われる。本発明の示される例示的な実施形態では、中子据付け装置30が、タイヤ成形リング50の領域に配置されており、タイヤ成形ドラム10は、最初にプライサーバ20の領域からタイヤ成形リング50の領域へ移送される。これは、タイヤ成形ドラム10の概略図の下にある矢印にて示されている。これら中子103は、中子据付け装置30によって保持される。
【0063】
図8は、中子103の据付けに関連するグリーンタイヤを製造するための本発明による方法の更なる方法ステップを示す。タイヤ成形ドラム10はまた、タイヤ成形リング50及び中子据付け装置30の領域に配置され、中間部分12は半径方向に拡大される。それら中子は、中子据付け装置30により保持されたままである。
【0064】
図9には、中子103の据付けに関連するグリーンタイヤを製造するための本発明による方法の次の方法ステップが示されている。それら中子103は、タイヤ成形ドラム10の中間部分12上に横たわるプライ101、102aに対して、外側から中子据付け装置30によって持ち込まれる。
【0065】
図10は、
図9に示した方法ステップに続いて、ドラムハーフ11の領域に配置された半径方向に伸縮可能な中子クランプ装置14によって、先に配置された中子103をクランプしている状態を示している。
【0066】
図11には、中子の据付け後に行われる、プライのターンアップの方法ステップが示されている。プライ101、102は、中子103の周りにターンアップ(折り返)され、ドラムハーフ11の領域にそれぞれ配置されたブラダとして形成されたターンアップ装置15によって、中子に押圧される。この目的のために、ブラダ15に空気が導入され、それらが膨張する。中子据付け装置30は、この場合、ブラダとして形成されたターンアップ装置15を成形するために使用される。この目的のために、中子据付け装置30は、それぞれ、膨張中の又は膨張したブラダに外側から近づけることができ、したがって、タイヤ成形ドラム10の中間部分12の方向に作用する力がブラダに及ぼされる。
【0067】
図12は、上述したプライのターンアップ後の部分的に製造されたグリーンタイヤ100を示している。インナーライナ101及びボディプライ102aは、中子103の周りにターンアップ(折り返)され、それらに押し付けられている。中子据付け装置30は、タイヤ成形ドラム10から後退して離れ、ターンアップ装置15は、示される例示的な実施形態では、ブラダから空気を出すことによって元に戻される。タイヤ成形ドラム10は、この程度まで製造されたグリーンタイヤ100と共に、サイドウォールサーバ40に移送される。
【0068】
図13には、本発明によるタイヤ成形機の2分割サイドウォールサーバ40からサイドウォール材料を移送する間のタイヤ成形ドラム10の詳細な配置図が示されている。
サイドウォールサーバモジュール41は、互いに間隔をおいて配置されており、グリーンタイヤ100の各サイドウォール104のサイドウォール材料が、サイドウォールサーバモジュール41によってドラムハーフ11にそれぞれ適用される。また、ドラムハーフ11は、ドラムシャフト13上で、タイヤ成形ドラム10の中間部分12から距離を置いた位置に移動している。
【0069】
図14は、本発明によるタイヤ成形機の2分割サイドウォールサーバ40からサイドウォール材料を移送する間のタイヤ成形ドラム10の詳細な
図13に示した配置図と、その下のタイヤ成形ドラム10の側面図を示している。ドラムハーフ11は、ドラムシャフト13上をタイヤ成形ドラム10の中間部分12から距離を置いた位置に移動され、中子クランプ装置14が移動される。タイヤ成形ドラム10の中間部分12は、依然として半径方向に拡大されている。
【0070】
図15には、グリーンタイヤ100を製造するための本発明による方法の更なる方法ステップにおけるタイヤ成形ドラム10の詳細な配置図が示されている。タイヤ成形ドラム10は、タイヤ成形リング50の作業領域内に移送されている。サイドウォール104が装填されたドラムハーフ11は、一点鎖線で示すドラムの中央部の方向に移動されるので、端部領域104bにおけるサイドウォール104の材料は、タイヤ成形ドラム10の中間部分12上に保持されたグリーンタイヤ100の残り部分の中子103の下に位置する。続いて、中子103の下に位置するサイドウォール104の端部領域は、中子103の下に延在され、中子クランプ装置14によってグリーンタイヤ100に押圧される。
【0071】
図16は、グリーンタイヤ100を製造するための本発明による方法の更なる方法ステップにおけるタイヤ成形ドラム10の詳細な配置図を示している。タイヤ成形ドラム10は、依然として、タイヤ成形リング50の作業領域内に配置されている。中間部分12のモジュール12aは、中間部分12の幅が縮小するように軸方向に一緒に移動され、ドラムハーフ11は、グリーンタイヤ100の中子103に対するサイドウォール104の位置が変化しないように、一点鎖線で示されるドラムの中央部の方向に同じ程度に移動される。このタイヤ成形ドラム10の位置を成形位置と呼ぶ。グリーンタイヤ100に内側から空気を導入し、グリーンタイヤ100の中央部がタイヤ成形ドラム10の中間部分12から浮き上がるようにする。ブレーカベルトアセンブリ105は、トレッド106と共にグリーンタイヤ100の中間部分の上に位置決めされる。
【0072】
図17には、グリーンタイヤ100を製造するための本発明による方法の
図16に示された方法ステップに続く方法ステップが示されている。ブレーカベルトアセンブリ105及びトレッド106からなる複合体は、押圧装置51によってグリーンタイヤ100の残り部分に対して押圧される。
【0073】
図18は、ブレーカベルトアセンブリ105及びトレッド106で構成される圧接複合体を備えるグリーンタイヤ100を示している。さらに、サイドウォール104は、ターンアップ装置15によってグリーンタイヤ100の残り部分に対して押圧されている。この目的のために、タイヤ成形機の示された実施形態では、ターンアップ装置15のブラダに内側から空気が導入され、それによってそれらが膨張することで、サイドウォール104がドラムハーフ11から持ち上げられ、グリーンタイヤ100の残り部分に対して横方向に押圧される。中子クランプ装置14は、グリーンタイヤ100をタイヤ成形ドラム10上に固定するために作動中である。
【0074】
図19には、サイドウォール104をタイヤに押圧した後の、タイヤ成形ドラム10上のグリーンタイヤ100が示されている。ターンアップ装置15は、空気がまだ内側からグリーンタイヤ100に導入されている間に、ブラダから空気を排出することによって戻される。
【0075】
図20は、タイヤ成形ドラム10上の完成したグリーンタイヤ100を示している。後者は、取り出し装置60の領域内に移送される。取り出し装置60へグリーンタイヤ100を解放するために、タイヤ成形ドラム10の中間部分12のモジュール12aは、中間部分12の幅がさらに減少するように、さらに一緒に移動される。中子クランプ装置14が移動され、グリーンタイヤ100から空気が排出される。
【符号の説明】
【0076】
10 タイヤ成形ドラム
11 ドラムハーフ
12 中間部分
12a モジュール
13 ドラムシャフト
14 中子クランプ装置
15 ターンアップ装置(ブラダ)
20 プライサーバ
30 中子据付け装置
40 サイドウォールサーバ
41 サイドウォールサーバモジュール
50 タイヤ成形リング
51 押圧装置
60 取り出し装置
100 グリーンタイヤ
101 プライ(インナーライナ)
101 サイドウォール領域
102 プライ(ボディプライ)
102a (ハイターンアップを有する)ボディプライ
103 中子
104 サイドウォール
104a 外側端部
104b 端部領域
105 ブレーカベルトアセンブリ
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