(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-24
(45)【発行日】2023-09-01
(54)【発明の名称】ドラムのワイヤロープ乱巻防止装置
(51)【国際特許分類】
B66D 1/36 20060101AFI20230825BHJP
【FI】
B66D1/36 C
B66D1/36 A
(21)【出願番号】P 2019134740
(22)【出願日】2019-07-22
【審査請求日】2022-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】506002823
【氏名又は名称】古河ユニック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】鎌形 健市
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-059190(JP,A)
【文献】実開昭57-155190(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66D 1/00- 5/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤロープが巻回されるドラムの軸と自己のローラ軸とが平行となる姿勢で配置された押圧ローラによって、前記ドラムに巻回されたワイヤロープの表面層を押圧するドラムのワイヤロープ乱巻防止装置であって、
複数の押圧ローラを備えており、
前記複数の押圧ローラの各々が、独立して前記ワイヤロープの表面層を押圧するように構成され、
複数の前記押圧ローラのうち少なくとも1つの押圧ローラは、前記ドラムに巻回されたワイヤロープの表面層に沿って、
自身が押圧する位置のワイヤロープと平行な揺動軸回りに揺動可能に構成されて
おり、
前記複数の押圧ローラは、前記ドラムの幅方向に沿って同一直線上に複数個を配置可能なローラ幅である短幅の押圧ローラを含み、
前記複数の押圧ローラのうち前記短幅の押圧ローラが前記揺動軸回りに揺動可能に構成されており、
前記押圧ローラ毎に、基端部が取付対象に回動自在に軸支されたアーム部と、基端部が前記アーム部の先端部に連結され且つ自身先端部に前記押圧ローラが回転自在に取り付けられたローラ取付部と、前記押圧ローラが前記ドラムに巻回されているワイヤロープをドラム側に押圧するように前記アーム部を付勢する付勢部とを有し、
前記短幅の押圧ローラは、更に、前記ローラ取付部と前記アーム部とを連結する揺動装置を有し、
前記揺動装置は、円筒形状のボスと、該ボスの内側に軸受を介して嵌挿された前記押圧ローラの揺動軸とを介して前記ローラ取付部及び前記アーム部を枢支した構造を有し、
前記ボスは、一端部が前記ローラ取付部の基端面及び前記アーム部の先端面のいずれか一方に固着され、
前記揺動軸は、一端部が前記ローラ取付部の基端面及び前記アーム部の先端面のいずれか他方に固着されているドラムのワイヤロープ乱巻防止装置。
【請求項2】
ワイヤロープが巻回されるドラムの軸と自己のローラ軸とが平行となる姿勢で配置された押圧ローラによって、前記ドラムに巻回されたワイヤロープの表面層を押圧するドラムのワイヤロープ乱巻防止装置であって、
複数の押圧ローラを備えており、
前記複数の押圧ローラの各々が、独立して前記ワイヤロープの表面層を押圧するように構成され、
複数の前記押圧ローラのうち少なくとも1つの押圧ローラは、前記ドラムに巻回されたワイヤロープの表面層に沿って、
自身が押圧する位置のワイヤロープと平行な揺動軸回りに揺動可能に構成されて
おり、
前記複数の押圧ローラは、前記ドラムの幅方向に沿って同一直線上に複数個を配置可能なローラ幅である短幅の押圧ローラを含み、
前記複数の押圧ローラのうち前記短幅の押圧ローラが前記揺動軸回りに揺動可能に構成されており、
前記押圧ローラ毎に、基端部が取付対象に回動自在に枢支されたアーム部と、基端部が前記アーム部の先端部に連結され且つ自身先端部に前記押圧ローラが回転自在に取り付けられたローラ取付部と、前記押圧ローラが前記ドラムに巻回されているワイヤロープをドラム側に押圧するように前記アーム部を付勢する付勢部とを有し、
各前記短幅の押圧ローラの取り付けられた前記ローラ取付部の基端面と前記アーム部の先端面とは、巻バネを介して連結されているドラムのワイヤロープ乱巻防止装置。
【請求項3】
複数の前記短幅の押圧ローラが、前記ドラムに巻回されたワイヤロープの表面層に沿って揺動可能な状態で並べて配置されていると共に、前記ドラムの前後方向から見て前記ドラムの内幅の略全域に亘って且つ各ローラ間に幅方向の隙間無く配置されている請求項1又は請求項2に記載のドラムのワイヤロープ乱巻防止装置。
【請求項4】
前記複数の短幅の押圧ローラは、各々のローラ端の片側又は両側が他の押圧ローラのローラ端と前記ドラムの前後方向から見て重なるように配置されていると共に、前記複数の押圧ローラのうち最右端の押圧ローラの右端面と最左端の押圧ローラの左端面との間の幅が、前記ドラムの内幅から、少なくとも前記ドラムの幅方向の両端に位置する押圧ローラの揺動に必要な隙間分を除いた幅に等しくなるように構成されている請求項3に記載のドラムのワイヤロープ乱巻防止装置。
【請求項5】
前記複数の押圧ローラは、前記ドラムの内幅からローラの回転のための隙間分を除いた幅と等しいローラ幅の1つの長幅の押圧ローラと、1つの前記短幅の押圧ローラとから構成されており、
前記短幅の押圧ローラは、ドラムの幅方向の中央に配置されており、
前記長幅の押圧ローラは、前記短幅の押圧ローラとドラムの周方向に位置をずらして配置されており、
前記短幅の押圧ローラに対応する前記アーム部と前記長幅の押圧ローラに対応する前記アーム部とは、互いに反対方向に張り出されている請求項1又は請求項2に記載のドラムのワイヤロープ乱巻防止装置。
【請求項6】
前記複数の押圧ローラは、3つの前記短幅の押圧ローラから構成されており、
前記3つの短幅の押圧ローラは、各々のローラ端の片側又は両側が他の押圧ローラのローラ端と前記ドラムの前後方向から見て重なるように配置されていると共に、前記3つの短幅の押圧ローラのうち最右端の押圧ローラの右端面と最左端の押圧ローラの左端面との間の幅が、前記ドラムの内幅から前記ドラムの幅方向の両端に位置する押圧ローラの揺動に必要な隙間分を除いた幅に等しくなるように構成されており、
前記3つの短幅の押圧ローラのうちの2つの短幅の押圧ローラは、ドラムの幅方向に同一直線上に且つ一方が前記ドラムの内側の幅方向の一端に他方が他端にそれぞれ近接して配置されており、残りの1つは前記2つの短幅の押圧ローラと前記ドラムの周方向に位置をずらして配置されており、
前記3つの短幅の押圧ローラに対応する前記アーム部は、いずれも同一方向に張り出されている請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のドラムのワイヤロープ乱巻防止装置。
【請求項7】
前記複数の押圧ローラは、3つの前記短幅の押圧ローラから構成されており、
前記3つの短幅の押圧ローラは、各々のローラ端の片側又は両側が他の押圧ローラのローラ端と前記ドラムの前後方向から見て重なるように配置されていると共に、前記3つの短幅の押圧ローラのうち最右端の押圧ローラの右端面と最左端の押圧ローラの左端面との間の幅が、前記ドラムの内幅から前記ドラムの幅方向の両端に位置する押圧ローラの揺動に必要な隙間分を除いた幅に等しくなるように構成されており、
前記3つの短幅の押圧ローラのうちの2つの短幅の押圧ローラは、ドラムの幅方向に同一直線上に且つ一方が前記ドラムの内側の幅方向の一端に他方が他端にそれぞれ近接して配置されており、残りの1つは前記2つの短幅の押圧ローラと前記ドラムの周方向に位置をずらして配置されており、
前記2つの短幅の押圧ローラに対応する前記アーム部は、同一方向に張り出されており、残りの1つの前記短幅の押圧ローラに対応する前記アーム部は、前記2つの短幅の押圧ローラに対応する前記アーム部とは反対方向に張り出されている請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のドラムのワイヤロープ乱巻防止装置。
【請求項8】
前記複数の押圧ローラは、前記ドラムの内幅からローラの回転のための隙間分を除いた幅と等しいローラ幅の1つの長幅の押圧ローラと、3つの前記短幅の押圧ローラとから構成されており、
前記3つの短幅の押圧ローラは、各々のローラ端の片側又は両側が他の押圧ローラのローラ端と前記ドラムの前後方向から見て重なるように配置されており、
前記3つの短幅の押圧ローラのうちの2つの短幅の押圧ローラは、ドラムの幅方向に同一直線上に且つ一方がドラム内側の幅方向の一端に他方が他端にそれぞれ近接して配置されており、
前記3つの短幅の押圧ローラのうちの残りの1つは、前記2つの短幅の押圧ローラと前記ドラムの周方向に位置をずらして配置されており、
前記長幅の押圧ローラは、前記3つの短幅の押圧ローラとドラムの周方向に位置をずらして配置されており、
前記3つの短幅の押圧ローラに対応する前記アーム部は、同一方向に張り出されており、前記長幅の押圧ローラに対応する前記アーム部は、前記3つの短幅の押圧ローラに対応する前記アーム部とは反対方向に張り出されている請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のドラムのワイヤロープ乱巻防止装置。
【請求項9】
前記押圧ローラの幅方向の両端に、テーパ部を有している請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のドラムのワイヤロープ乱巻防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーン等におけるウインチのドラムのワイヤロープ乱巻防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
クレーン等のウインチでワイヤロープを巻き上げるときには、ワイヤロープをドラムに順序正しく巻き付ける必要がある。
正常な状態では、ワイヤロープはドラムに層状に巻き付けられ、下部層の隣接するワイヤロープ間に形成される谷部に収まるように、その上部層のワイヤロープが順次巻き付けられて行く。
【0003】
ところが、巻き上げの際に何らかの原因でワイヤロープの張力が一瞬緩められる現象が発生すると、ドラムに巻き付けられるワイヤロープの谷部にずれが生じ、そのずれた部分に上部層側で巻き付けられるワイヤロープが食い込んだり、あるいは本来巻き付けられる谷部から外れたりすることによって、正常な巻き付けが行われず乱巻が発生する。乱巻が発生するとワイヤロープの素線切れが生じる。
このような事態を防止するため、ウインチのドラムの巻付面に接近する方向へばねで付勢された押えローラを設け、この押えローラでワイヤロープをドラムの巻付面へ押し付けることで乱巻を防止する乱巻防止装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の乱巻防止装置の押えローラは、その長手方向の長さ(以下、「ローラ幅」と称す)が、ドラムのフランジの内幅の略全域に渡る長さとなっている。
ドラムに巻取り途中のワイヤロープは、ドラムに巻かれたワイヤロープの現時点で最上となる上部層から一段下部に隣接する下部層との間で、ワイヤロープ1本分弱ほどの「段差」が生じる。しかし、上記従来技術での押えローラは、ドラムの内幅の略全域に渡るローラ幅を有するため、上部層のワイヤロープの表面しか押えることが出来ない。そのため押えローラと下部層のワイヤロープ表面との間には「空間」が生ずる。
この空間内に、下記に説明するワイヤロープの横飛び現象が生じると、巻取り中のワイヤロープが、ドラムの幅方向の空間内へ逃げ込むように乱巻が生じる。
【0006】
ここで、横飛び現象の発生要因としては、次の原因が考えられる。
例えば、
図21に示すように、クレーン100の荷吊用のワイヤロープ6の巻き取り及び繰り出しに用いるドラム5の場合を考える。クレーン100は、コラム7と、コラム7の上端に起伏自在に枢支された伸縮する入れ子式のブーム8とを備え、ドラム5は、コラム7の内側に配置されている。クレーンの構造上、ドラム5から繰り出されるワイヤロープ6は、ブーム8の先端のシーブ11まで直接掛け回され、その後シーブ12を介してフック9を吊下するように構成されている。ドラム5とシーブ11間のワイヤロープ長は、ブーム8のブーム長により、最も縮小した最短時に、フリートアングルが最も大きくなる。
【0007】
つまり、
図22に示すように、ブーム8を上面(
図21のA矢視)からみたときの、ワイヤロープ6をシーブ11及び12に掛け回した状態において、ブーム8先端のシーブ11とドラム5に巻きつけられたワイヤロープ6の相関位置によって、フリートアングル(同図の符号θ
1、θ
2)の増減が生じる。
なお、「フリートアングル」とは、シーブ11の中心からドラム5の胴部5aへと下ろした垂線Lvと、シーブ11の中心とドラム5の両端のフランジ部5b及び5cの内側とを結ぶ線L1及びL2とそれぞれなす角度を指す。なお、シーブ11とドラム5との中間に、ガイド用のシーブが設けられている場合は、最もドラム5に近接したガイド用のシーブが上記説明のシーブ11と置き換わる。
【0008】
ブーム8の先端とフック9との間のワイヤロープ6の掛け数を例えば4本掛けで使用する場合、シーブ11は、ドラム5から繰り出されたワイヤロープ6が最初に掛け回されるシーブである。
図22に示すように、シーブ11となす角度θ
1が大きくなれば、ワイヤロープ6の、シーブ11の中心の垂線Lv方向へ戻すスプリングバック力も強くなる。
特にワイヤロープ6が、角度θ
1側に有り、かつワイヤロープ6の巻付け方向がドラム5の中心へ向かう方向のとき、力の掛かる方向もドラム5の中心方向であり、上記空間方向であるため、横飛びが発生しやすくなる。
【0009】
即ち、ワイヤロープ6は、ドラム5に巻き取られたワイヤロープ6の表面層を押さえつけるだけでなく、横方向にも押さえなければ、乱巻き防止の効果を十分に発揮出来ない。
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、ドラムへのワイヤロープの巻き付け時において乱巻の発生を防止するのに好適なドラムのワイヤロープ乱巻防止装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の一実施形態に係るドラムのワイヤロープ乱巻防止装置は、ワイヤロープが巻回されるドラムの軸と自己のローラ軸とが平行となる姿勢で配置された押圧ローラによって、前記ドラムに巻回されたワイヤロープの表面層を押圧するドラムのワイヤロープ乱巻防止装置であって、複数の押圧ローラを備えており、前記複数の押圧ローラの各々が、独立して前記ワイヤロープの表面層を押圧するように構成され、複数の前記押圧ローラのうち少なくとも1つの押圧ローラは、前記ドラムに巻回された前記ワイヤロープの表面層に沿って、ワイヤロープと平行な揺動軸回りに揺動可能に構成されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ドラムに巻回されたワイヤロープの表面層に沿って、ワイヤロープと平行な揺動軸回りに揺動可能に構成された押圧ローラを少なくとも1つ備える。これによって、複数の押圧ローラがドラムの中心方向に各々が独立して揺動することで、上部層と下部層との段差部に生じる空間を大幅に低減することが可能となる。加えて、新たに巻き取られたワイヤロープの空間側の斜め側面も押さえることが可能となる。その結果、ワイヤロープの浮き上がりによる乱巻の発生に加えて横飛びによる乱巻の発生も防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態に係るワイヤロープ乱巻防止装置を搭載したクレーンのコラム部分のドラムを含む部分縦断面図である。
【
図2】第1実施形態に係るワイヤロープ乱巻防止装置及びドラムをワイヤロープの巻取り面側から視た正面図である。
【
図3】第1実施形態に係るワイヤロープ乱巻防止装置の斜視図である。
【
図4】第1実施形態に係るワイヤロープ乱巻防止装置の支持アームの側面図である。同図では、支持アームの揺動装置及びアーム部と、アーム部を支持するブラケット部とを断面表示している。
【
図5】押圧ローラの回動範囲の一例を示す図である。
【
図6】第1実施形態に係るワイヤロープ乱巻防止装置の押圧ローラの正面図である。
【
図7】第1実施形態に係るワイヤロープ乱巻防止装置の支持アームを前方側から見た斜視図である。同図では、支持アームの押圧ローラ部分を断面表示している。
【
図8】第1実施形態に係るワイヤロープ乱巻防止装置の作用を説明するため同装置を上方から見た図である。
【
図9】(a)~(c)は、ワイヤロープがドラムに巻回されていくときの押圧ローラの動きの一例を順に表した図である。同図ではワイヤロープ部分を断面表示している。
【
図10】第2実施形態に係るワイヤロープ乱巻防止装置を搭載したクレーンのコラム部分のドラムを含む部分縦断面図である。
【
図11】第2実施形態に係るワイヤロープ乱巻防止装置の斜視図である。
【
図12】第2実施形態に係るワイヤロープ乱巻防止装置の作用を説明するため同装置を上方から見た図である。同図ではワイヤロープ部分を断面表示している。
【
図13】第3実施形態に係るワイヤロープ乱巻防止装置を搭載したクレーンのコラム部分のドラムを含む部分縦断面図である。
【
図14】第3実施形態に係るワイヤロープ乱巻防止装置の斜視図である。
【
図15】第3実施形態に係るワイヤロープ乱巻防止装置の作用を説明するため同装置を上方から見た図である。同図ではワイヤロープ部分を断面表示している。
【
図16】第4実施形態に係るワイヤロープ乱巻防止装置を搭載したクレーンのコラム部分のドラムを含む部分縦断面図である。
【
図17】第4実施形態に係るワイヤロープ乱巻防止装置の斜視図である。
【
図18】(a)~(c)は、第4実施形態に係るワイヤロープ乱巻防止装置の作用を説明するため同装置を上方から見た図である。同図ではワイヤロープ部分を断面表示している。
【
図19】第5実施形態に係るワイヤロープ乱巻防止装置の支持アームの側面図である。同図では、支持アームの揺動装置及びアーム部と、アーム部を支持するブラケット部とを断面表示している。
【
図20】第5実施形態に係るワイヤロープ乱巻防止装置の支持アームを前方側から見た斜視図である。同図では、支持アームの押圧ローラ部分を断面表示している。
【
図21】実施形態に係るクレーンのコラム及びブームの一部を側面から見た側面図である。
【
図22】フリートアングルを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の第1~第5実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。なお、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。また、以下に示す第1から第2実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。
【0014】
〔第1実施形態〕
〔構成〕
第1実施形態に係るワイヤロープ乱巻防止装置1Aは、
図21に示すクレーン100に搭載され、コラム7に内蔵されたウインチを構成するドラム5に巻き取られるワイヤロープ6の乱巻の発生を防止するものである。
ドラム5は、
図22に示すように、円筒状の胴部5aと、胴部5aの軸方向の両端に設けられたフランジ部5b及び5cとを備えている。このドラム5は、
図1に示すように、ドラム軸51によってフレーム10(取付対象に対応)に立設されたドラム支持部材(図示略)に、回転自在に支持されている。このドラム5は、第1実施形態において、ウインチを構成する油圧モータ(図示略)の発生する動力によって回転する。そして、この油圧モータによる巻取動作によって、ドラム5にはワイヤロープ6が巻き付けられ、この巻き付けられたワイヤロープ6は、油圧モータによる繰出動作によってドラム5から繰り出される。
【0015】
このドラム5のワイヤロープ乱巻防止装置1Aは、
図1~
図4に示すように、フレーム10に設けた支持ブラケット3に枢支ピン34を介してそれぞれ独立して回動自在に枢支された支持アーム2A、2B及び2Cを備える。
支持ブラケット3は、
図3に示すように、矩形板状のベースプレート30と、ベースプレート30の上面の左端部及び右端部にそれぞれ立設されたサイドプレート31及び32と、支持アーム2A~2Cを位置決めするための円筒状のスペーサ35及び36とを備えている。ベースプレート30は、その左端寄り及び右端寄りの位置に板面を貫通してボルト穴がそれぞれ設けられており、フレーム10の対応する位置にもボルト穴が設けられている。そして、ベースプレート30は、これらボルト穴を介して2つのボルト33によってフレーム10に固定されている。
【0016】
サイドプレート31及び32は、その後方側の約半分がベースプレート30上に固定されており、残りの前方側の部分がベースプレート30の前方側に突出している。これら突出部分の左右対向位置には、それぞれ軸穴が設けられており、これら軸穴に挿通して枢支ピン34が設けられている。
支持アーム2Aは、アーム部21Aと、アーム部21Aの先端部とローラブラケット23Aの基端部とを連結する揺動装置22Aと、揺動装置22Aを介してアーム部21Aと連結されたローラブラケット23Aとを備える。更に、ローラブラケット23Aの先端部に回転自在に設けられた押圧ローラ24Aと、スプリング25A(付勢部に対応)とを備える。
【0017】
アーム部21Aは、矩形の板状部材21aと、板状部材21aの一方(
図3の後方側)の面(以下、「後端面」と称す)における左端部に先端部が固着された矩形長板状の長板部材21bと、右端部に先端部が固着された矩形長板状の長板部材21cとを備える。長板部材21b及び21cの先端部は、上方から下方に向かうに連れて後方側から前方側へと傾斜する傾斜部を有している。また、板状部材21aの板面中央には、後述するボス22aの内径と同径のピン挿入穴(図示略)が穿設されている。
【0018】
また、長板部材21b及び21cの基端部はそれぞれスプリング25Aの径よりもやや大径の半円状に丸みを付けられており、この半円の中央にはそれぞれ枢支ピン34を挿通するためのピン穴が穿設されている。そして、長板部材21b及び21cの基端部は、ピン穴を介して挿通された枢支ピン34の左端部に回動自在に枢支されている。加えて、枢支ピン34のアーム部21Aの長板部材21b及び21cの間の位置にはスプリング25Aが装着されている。このスプリング25Aは、第1実施形態では、ねじりスプリングから構成されており、支持アーム2Aの押圧ローラ24Aをドラム5に巻回されたワイヤロープ6の表面層6Fに押し付ける付勢力を付与するものである。
【0019】
更に、長板部材21b及び21cの内側の基端部寄りの位置には、これら長板部材21b及び21cに左右両端部を挟まれた形で、矩形板状の補強板21dが設けられている。この補強板21dは、アーム部21Aに対して、上方から下方に向かうに連れて後方側から前方側に傾斜するように設けられており、下面にはスプリング25Aの一端側が当接し、スプリング25Aのストッパとしての役割も果たす。
揺動装置22Aは、
図4に示すように、アーム部21Aとローラブラケット23Aとを連結する部材であり、円筒形状のボス22aと、揺動軸22bと、ボス22aの内径よりも短径の外径を有する円筒形状のすべり軸受22cとを備えている。
【0020】
ボス22aは、その基端部がアーム部21Aの先端面を構成する板状部材21aの他方(
図3の前方側)の面(以下、「先端面」と称す)の中央に固着されており、内側にすべり軸受22cが嵌挿されている。
揺動軸22bは、すべり軸受22cの内側に嵌挿されており、一端部がボス22aの基端部から突出しており、他端部がローラブラケット23Aの基端面に固着されている。揺動軸22bの突出部分は、アーム部21Aの板状部材21aのピン挿入穴に先端面側から挿入されて一部が後端面側に突き抜けている。そして、この突き抜けた部分には抜け止めのためのスナップリング22dが装着されている。
【0021】
ローラブラケット23Aは、矩形の板状部材23aと、この板状部材23aの揺動軸22bが固着された基端面とは反対側の面の左右方向の中央に立設された板状のローラ取付部23bとを備える。ローラ取付部23bの先端側には、押圧ローラ24Aを回転自在に支持するための回転支軸244(後述)を挿通するための軸穴が設けられている。そして、ローラ取付部23bには、回転支軸244を介して押圧ローラ24Aが回転自在に取り付けられている。ドラム5からワイヤロープ6を巻き付け時又は繰り出し時による回転に伴って、押圧ローラ24Aも回転し、ワイヤロープ6の摩耗を抑える。
以上の構成によって、押圧ローラ24Aは、回転支軸244回りに回転自在に支持されていると共に、揺動軸22b回りに回転(首振り)自在に支持されている。
【0022】
即ち、アーム部21Aによってワイヤロープ6の表面層6Fに押し付けられた状態の押圧ローラ24Aが、自身下部の上部層と下部層との段差部で揺動軸22b回りに首振り動作をすることが可能である。これにより、押圧ローラ24A下部の段差部に生じる空間を低減すると共に、新たに巻き取られたワイヤロープ6の空間側の斜め側面を押さえることが可能となる。その結果、ワイヤロープ6の浮き上がりによる乱巻の発生に加えて横飛びによる乱巻の発生も防止することが可能となり、押圧ローラ24Aが、新たなワイヤ巻付面を容易に乗り越えることが可能となる。
【0023】
一方、
図3に示すように、支持アーム2Cは、アーム部21Cと、揺動装置22Cと、ローラブラケット23Cと、押圧ローラ24Cと、スプリング25Cとを備える。支持アーム2Cは、アーム部21Cの基端部が枢支ピン34の右端部に回動自在に支持されている点が異なるのみで他の構成は支持アーム2Aと同様となる。
また、支持アーム2Bは、アーム部21Bと、揺動装置22Bと、ローラブラケット23Bと、押圧ローラ24Bと、スプリング25Bとを備える。支持アーム2Bは、支持アーム2A及び2Cと次の点で異なり、それ以外の点は同様の構成となる。まず、アーム部21Bの基端部が、枢支ピン34における支持アーム2A及び2Cの基端部との間の部分にそれぞれ設けられた円筒状のスペーサ35及び36を介して枢支ピン34の支持アーム2A及び2Cとの間の中央位置に回動自在に枢支されている。加えて、アーム部21Bは、板状部材21aの後端側の左端部及び右端部に、その長さがアーム部21A及び21Cの長板部材21b及び21cよりも短く構成された長板部材21e及び21fの先端部を固着した構成を有している。
【0024】
なお、
図2に示すように、押圧ローラ24A~24Cは、第1実施形態において、ドラム5の内幅Wiを略等分に3分割した程度の幅を有した短幅ローラとして構成されている。
そして、支持アーム2A及び2Cの押圧ローラ24A及び24Cは、ドラム5の幅方向に同一直線上に配置されている。加えて、押圧ローラ24Aは、ドラム5の内側の幅方向のフランジ部5b側の端部に、押圧ローラ24Cはフランジ部5c側の端部にそれぞれ近接して配置されている。一方、支持アーム2Bの押圧ローラ24Bは、アーム部21Bの長さをアーム部21A及び21Cよりも短くして、支持アーム2A及び2Cの押圧ローラ24A及び24Cとは、ドラム5の周方向にローラ1つ分以上、位置をずらしてドラム5の幅方向の中央に配置されている。
【0025】
また、押圧ローラ24A~24Cは、揺動軸22bを中心に自在に揺動(首振り)するように構成したが、バネを取り付けるなど、特に中立を保つような付勢器具を施す必要が無い。これは、押圧ローラ24A~24Cのローラ面が支持アーム2A~2Cの基端部に装着されたスプリング25A~25Cでドラム5に巻き付けられたワイヤロープ6の表面層6Fに常に押し付けられているためである。
また、首振りの回動範囲については言及していないが、例えば
図5の押圧ローラ24Bに示すように、揺動装置22Bの揺動軸22bの軸心を中心に、両端部がドラム5に巻き付けられたワイヤロープ6の表面層6Fに対して角度α(例えば、45°)の範囲でしか揺動(首振り)できないようにストッパを設ける構成としてもよい。このことは、押圧ローラ24A及び24Cについても同様となる。
【0026】
次に、押圧ローラ24A~24Cの外観構成を説明する。ここで、
図6中の左右の方向表示は、
図3中の左右の方向表示と対応している。
押圧ローラ24Aは、
図6に示すように、ローラブラケット23Aのローラ取付部23bを境に、左側に配設された略円筒状の左ローラ部240Aと、右側に配設された略円筒状の右ローラ部241Aとを備える。更に、左ローラ部240Aには、その左端部に左方に向かって先細りとなる左テーパ部242Aが設けられており、右ローラ部241Aには、その右端部に右方に向かって先細りとなる右テーパ部243Aが設けられている。
【0027】
このようにテーパ部を設けるのは、押圧ローラ24Aの端部が、新たにドラム5に巻回されたワイヤロープ6に乗り上げ易くするためである。このことは、押圧ローラ24B及び24Cについても同様となる。
また、右テーパ部243Aのテーパ角はθaとなっており、左テーパ部242Aのテーパ角はθbとなっており、θb<θaの関係となっている。加えて、右テーパ部243Aの左右方向の幅(以下、「テーパ幅」と称す)はWaとなっており、左テーパ部242Aのテーパ幅はWbとなっており、Wa<Wbの関係となっている。更に、右ローラ部241Aの右テーパ部243A以外の円筒状部の左右方向の幅はW1となっており、左ローラ部240Aの左テーパ部242A以外の円筒状部の左右方向の幅はW2となっており、W2<W1の関係となっている。
【0028】
即ち、フランジ部5b側の左テーパ部242Aのテーパ角(θb)を右テーパ部243Aのテーパ角(θa)よりも広角(緩やか)に構成している。加えて、円筒状部の幅(W2)を短くし且つ左テーパ部242Aのテーパ幅(Wb)を右テーパ部243Aのテーパ幅(Wa)よりも長尺に構成している。
これは、
図22で示す「フリートアングル」が左右で異なるため、シーブ11となす角度θ1が大きくなれば、ワイヤロープ6の、シーブ11の中心の垂線Lv方向へ戻すスプリングバック力が強くなる。しかし、シーブ11となす角度θ
2は小さいのでスプリングバック力は弱く、ドラム5に巻き取られたワイヤロープ6を横方向に押える力は弱くて良い。スプリングバック力が弱いと、ワイヤロープ6は整列して巻き取られるはずが、ローラに跳ね返され、いわゆるダンゴ状態にその場で重なり合ってしまい、乱巻き防止の効果を十分に発揮出来ない。よって押圧ローラ24Aのフランジ部5b側である狭角側(θ
2側)に接するローラ端(左テーパ部242A)のテーパ角をゆるやかに且つテーパ幅を長くしている。
【0029】
この構成により、ドラム5に巻回されるワイヤロープ6が下部層を巻き切った後、新たに上部層を形成する段階で、ワイヤロープ6が巻回され易くなる。
押圧ローラ24Bは、ローラブラケット23Bのローラ取付部23bを境に、左側に配設された略円筒状の左ローラ部240Bと、右側に配設された略円筒状の右ローラ部241Bとを備える。左ローラ部240Bは、その左端部に左方に向かって先細りとなる左テーパ部242Bが設けられており、右ローラ部241Bは、その右端部に右方に向かって先細りとなる右テーパ部243Bが設けられている。左テーパ部242B及び右テーパ部243Bのテーパ角は双方ともθaとなっており、且つテーパ幅は双方ともWaとなっている。更に、左ローラ部240B及び右ローラ部241Bの円筒状部の幅は双方ともW3となっている。即ち左右共通である。
【0030】
押圧ローラ24Cは、ローラブラケット23Cのローラ取付部23bを境に、左側に配設された略円筒状の左ローラ部240Cと、右側に配設された略円筒状の右ローラ部241Cとを備える。左ローラ部240Cは、その左端部に左方に向かって先細りとなる左テーパ部242Cが設けられており、右ローラ部241Cは、その右端部に右方に向かって先細りとなる右テーパ部243Cが設けられている。左テーパ部242C及び右テーパ部243Cのテーパ角は双方ともθaとなっており、且つテーパ幅は双方ともWaとなっている。更に、左ローラ部240Cの円筒状部の幅はW1となっており、右ローラ部241Cの円筒状部の幅はW3となっている。
【0031】
また、押圧ローラ24A~24Cは、第1実施形態において、
図2及び
図8に示すように、ドラム5の内幅Wiを略等分に3分割した程度の幅を有した短幅ローラとして構成されている。そして、押圧ローラ24Bの左右テーパ部と押圧ローラ24A及び24Cの一方のテーパ部とがドラム5の前後方向から見て重なるように配置されている。即ち、押圧ローラ24A~24Cは、ドラム5の前後方向から見て各ローラ間に隙間が無いように配置されている。
より具体的には、
図6及び
図8に示すように、押圧ローラ24A~24Cは、押圧ローラ24Aの右テーパ部243Aと押圧ローラ24Bの左テーパ部242Bとがドラム5の周方向に重なるように配置されている。加えて、押圧ローラ24Cの左テーパ部242Cと押圧ローラ24Bの右テーパ部243Bとがドラム5の周方向に重なるように配置されている。
【0032】
押圧ローラ24Aの左テーパ部242Aと押圧ローラ24Cの右テーパ部243Cとは、ワイヤロープ6の巻取り途中において、ドラム端で新たに形成されるワイヤロープ層が巻掛け始めるとき、ともにフランジ部5b又は5cの内壁部に接する最端のワイヤロープ6の表面及び斜め側面を充分に押さえるように構成されている。このとき、最端の新層から乱巻きが発生しない様、押圧ローラ24A及び押圧ローラ24Cと、フランジ部5b及び5cの内壁部との隙間は、狭い方が良い。但し、押圧ローラ24Aの左テーパ部242Aとフランジ部5bの内壁部との間には、押圧ローラ24Aが内壁部側に首振りをしてもぶつからない(左ローラ部240Aが回転できる)程度に隙間を設ける必要がある。同様に、押圧ローラ24Cの右テーパ部243Cとフランジ部5cの内壁部との間には、押圧ローラ24Cが内壁部側に首振りをしてもぶつからない(右ローラ部241Cが回転できる)程度に隙間を設ける必要がある。
即ち、押圧ローラ24A~24Cは、押圧ローラ24Aの左端面と押圧ローラ24Cの右端面との間の幅が、ドラム5の内幅Wiから幅方向の両端に位置する押圧ローラ24A及び24Cの揺動に必要な隙間分を除いた幅も考慮されて構成されている。
【0033】
次に、押圧ローラ24A~24Cの内部構成を説明する。以下、代表して押圧ローラ24Cの内部構成について説明する。
押圧ローラ24Cは、
図7に示すように、左ローラ部240C及び右ローラ部241Cの内側に配設された、回転支軸244と、玉軸受245及び246と、カラー247及び248と、ナット249及び250とを備える。なお、
図7中の左右の方向表示は、
図3及び
図6中の左右の方向表示に対応している。
回転支軸244は、その両端部に雄ねじが切られており、ローラ取付部23bに設けられた軸穴に挿通されている。
【0034】
玉軸受245は、回転支軸244と左ローラ部240Cとの内周部間に嵌め込まれ、回転する左ローラ部240C自身を支えている。この玉軸受245は、円筒状のカラー247によって、右側の端部が丁度雄ねじ部分の手前にくるように配設位置が決められている。
玉軸受246も玉軸受245と左右共通構造となっている。
ナット249は、回転支軸244の左ローラ部240C側の雄ねじ部に螺合され、ナット250は、回転支軸244の右ローラ部241C側の雄ねじ部に螺合されている。これらナット249及び250によって、回転支軸244を固定している。
【0035】
以上の構成によって、押圧ローラ24Cは、玉軸受245及び246を介して、左ローラ部240C及び右ローラ部241Cが、回転支軸244回りに回転自在に支持されている。
なお、第1実施形態において、ローラ部を回転自在に支持する軸受として玉軸受を採用しているが、この構成に限らず、例えばころ軸受などの他の種類の軸受を採用する構成としてもよい。
また、押圧ローラ24A及び24Bの内部構成もローラ部の円筒状部の寸法に応じてカラー247及び248等の寸法が一部異なるのみで同様の構成となる。
【0036】
〔作用〕
次に、
図8及び
図9に基づき第1実施形態の作用を説明する。なお、
図8及び
図9中の左右の方向表示は、
図3及び
図6中の左右の方向表示に対応している。
上記説明した構成によって、第1実施形態に係るワイヤロープ乱巻防止装置1Aは、
図8に示すように、ドラム5の前後方向から見て、押圧ローラ24A~24Cが、各ローラ間に幅方向の隙間無く配置され、且つドラム5の内幅Wiの略全域に渡って配置されている。加えて、スプリング25A~25Cから付加された付勢力によって、各々が独立して各配置位置のローラ押圧面のワイヤロープ6の表面層6Fをドラム5側(径方向中心側)に押圧している。
【0037】
いま、油圧モータによる巻取動作によって、
図9(a)に示すように、押圧ローラ24A及び24Bが、巻き付けが完了した1段下の下部層側のワイヤロープ6の表面層6F上に全体が位置し、押圧ローラ24Cの半分以上が上部層側のワイヤロープ6の表面層6F上に位置した状態になったとする。この場合、押圧ローラ24Cの残りの部分は下部層との間の空間上に位置する。この押圧ローラ24Cと下部層に出来た空間は、押圧ローラ24Bの端面によってすぐに阻害される。この空間が狭小なため、ワイヤロープ6の横飛びは発生しづらい。
この状態では、押圧ローラ24A~24Cが、それぞれのローラ押圧面にあるワイヤロープ6の表面層6Fを表面側から押圧している状態となる。また、押圧ローラ24Cは、ワイヤロープ6上部層にすでに押圧された載置状態であるため、揺動しない状態となる。
【0038】
その後、ドラム5に新たにワイヤロープ6が巻き付けられて、
図9(b)に示す状態になったとする。即ち、新たに巻き付けられたワイヤロープ6によって、押圧ローラ24Bは、その右テーパ部243B側の端部がドラム5から離間する方向に持ち上げられ、その左テーパ部242B側の端部が1段下の下部層側に残されたままの状態で、首振りの回転中心となる揺動軸22bの軸心が離間し始めた状態を示している。この状態では、押圧ローラ24A及び24Cが、それぞれのローラ押圧面にあるワイヤロープ6の表面層6Fを表面側から押圧している状態となる。一方、押圧ローラ24Bは、首振りによって、新たに巻き付けられたワイヤロープ6の表面層6Fを表面側から押圧すると共に、ワイヤロープ6を空間6S側の斜め側方からも押圧した状態となる。また、押圧ローラ24Bの揺動効果により、押圧ローラ24Bと下部層に出来た空間6Sは極めて狭小なため、ワイヤロープ6の横飛びも極めて発生しづらくなる。
【0039】
引き続き、新たにワイヤロープ6が巻き付けられて、
図8及び
図9(c)に示す状態になったとする。即ち、新たに巻き付けられたワイヤロープ6によって、押圧ローラ24Bの全体が上部層側のワイヤロープ6の表面層6F上に位置し、押圧ローラ24Aの右テーパ部243A側の端部がドラム5に巻き付けられたワイヤロープ6の表面層6F側から離間する方向に持ち上げられた状態となったとする。この状態では、押圧ローラ24Aは、その左テーパ部242A側の端部が1段下の下部層側に残されたままの状態で、首振りの回転中心となる揺動軸22bの軸心が離間し始めた状態を示している。この首振りによって、押圧ローラ24Aは、新たに巻き付けられたワイヤロープ6の表面層6Fを表面側から押圧すると共に、ワイヤロープ6を空間6S側の斜め側方からも押圧した状態となる。また、押圧ローラ24Aの揺動効果により、押圧ローラ24Aと下部層に出来た空間6Sは極めて狭小なため、ワイヤロープ6の横飛びも極めて発生しづらくなる。
【0040】
ここで、第1実施形態では、
図22に示すように「フリートアングル」が左右で異なるため、シーブ11となす角度θ
2が小さい側は、ワイヤロープ6をシーブ11の中心の垂線Lv方向へ戻すスプリングバック力が弱いため、押圧ローラ24Aのフランジ部5b側である狭角側(θ
2側)に接するローラ端(左テーパ部242A)のテーパ角をゆるやかに且つテーパ幅を長くしている。
この構成により、ドラム5に巻回されるワイヤロープ6が下部層を巻き切った後、新たに上部層を形成する段階で、いわゆるダンゴ状態にワイヤロープ6がその場で重なることなく、ワイヤロープ6は整列して巻回され易くなる。
【0041】
〔第1実施形態の効果〕
第1実施形態に係るワイヤロープ乱巻防止装置1Aは、支持アーム2A~2Cを備えている。これら支持アーム2A~2Cは、ドラム5の幅方向に沿って同一直線上にいずれか複数個を配置可能なローラ幅(第1実施形態ではドラム5の内幅Wiを3分割する程度の幅)の短幅の3つの押圧ローラ24A~24Cを備えている。加えて、各押圧ローラが、独立してワイヤロープ6をドラム5側に押圧するように構成されている。更に、押圧ローラ24A~24Cが、押圧ローラ24A~24C及びドラム5間に挟まれたワイヤロープ6と平行な揺動軸22b回りに揺動可能(首振り可能)に構成されている。
【0042】
具体的に、支持アーム2A~2Cは、基端部が支持ブラケット3を介してフレーム10に回動自在に枢支されたアーム部21A~21Cと、基端部がアーム部21A~21Cの先端部に連結され且つ自身先端部に押圧ローラ24A~24Cが回転自在に取り付けられたローラブラケット23A~23Cと、押圧ローラ24A~24Cがそれぞれ自身下部のドラム5に巻回されているワイヤロープ6の表面層6Fをドラム5側に押圧するようにアーム部21A~21Cを付勢するスプリング25A~25Cとを有する。
そして、押圧ローラ24A~24Cの取り付けられたローラブラケット23A~23Cとアーム部21A~21Cとの揺動装置22A~22Cはそれぞれ、円筒形状のボス22aと、該ボス22aの内側にすべり軸受22cを介して嵌挿された揺動軸22bとを介してローラブラケット23A~23C及びアーム部21A~21Cを枢支した構造を有している。また、ボス22aは、一端部がアーム部21A~21Cの先端面に固着され、揺動軸22bは、一端部がローラブラケット23A~23Cの基端面に固着されている。
【0043】
この構成であれば、短幅で且つ首振り可能な押圧ローラ24A~24Cは、ワイヤロープ6の巻取り途中に、ドラム5に新たに巻回されたワイヤロープ6を容易に乗り越えられるよう、ドラム5に巻き付けられたワイヤロープ6の表面層6F側に付勢しつつ、首振りさせることが可能である。これにより、新たに巻き取られたワイヤロープ6の表面(表面層6F)又は空間6S側の斜め側面からワイヤロープ6の表面を押さえることが可能となる。また、上部層と下部層との段差部に発生する空間6Sを極力小さくすることが可能となる。その結果、ワイヤロープ6の浮き上がりによる乱巻の発生に加えて横飛びによる乱巻の発生も防止することが可能となる。
【0044】
更に、第1実施形態に係るワイヤロープ乱巻防止装置1Aは、押圧ローラ24A~24Cが、ドラム5に巻回されたワイヤロープ6の表面層6Fに沿って首振り可能な状態で並べて配置されていると共に、ドラム5の前後方向から見てドラム5の内幅Wiの略全域に亘って且つ各ローラ間に幅方向の隙間無く配置されている。
この構成であれば、押圧ローラ24A~24Cが、ドラム5の前後方向から見てローラ間の隙間が生じないように配置されていることから、ワイヤロープ6の浮き上がり及び横飛びによる乱巻の発生をより確実に防止することが可能である。
【0045】
また、第1実施形態に係るワイヤロープ乱巻防止装置1Aは、押圧ローラ24A~24Cが、それぞれドラム5の幅方向の両端に、内側から外側へと先細りする左テーパ部242A~242C及び右テーパ部243A~243Cを有している。
この構成であれば、巻付中のワイヤロープ6が押圧ローラ24A~24Cの端部は、新たにドラム5に巻回されたワイヤロープ6に乗り上げ易くなり、横飛びによる乱巻の発生をより確実に防止することが可能である。
また、第1実施形態に係るワイヤロープ乱巻防止装置1Aは、更に、押圧ローラ24A~24Cの各々の左右テーパ部の一方又は両方が他の押圧ローラのテーパ部とドラム5の周方向に重なるように配置されている。具体的に、押圧ローラ24Aの右テーパ部243Aと押圧ローラ24Bの左テーパ部242Bとが周方向に重なるように配置され、押圧ローラ24Cの左テーパ部242Cと押圧ローラ24Bの右テーパ部243Bとが周方向に重なるように配置されている。
【0046】
より具体的には、押圧ローラ24A及び24Cは、ドラム5の幅方向に同一直線上に且つ一方がドラム5の内側の幅方向の一端に他方が他端にそれぞれ近接して配置されている。更に、押圧ローラ24Bは、押圧ローラ24A及び24Cとドラム5の周方向に位置をずらして且つドラム5の前後方向から見て押圧ローラ24A及び24Cの間の幅方向に隙間が生じないように配置されている。
この構成であれば、テーパ部におけるワイヤロープ6の押え抜けの発生を防止することが可能となる。
【0047】
また、第1実施形態に係るワイヤロープ乱巻防止装置1Aは、更に、押圧ローラ24A~24Cの上記重なる部分の一方の幅分を除いたローラ幅の合計が、ドラム5の内幅Wiから幅方向の両端に位置する押圧ローラ24A及び24Cの首振りに必要な隙間分を除いた幅に等しくなるように構成されている。
この構成であれば、ドラム5の内幅Wiの略全域について、ワイヤロープ6の乱巻きの発生を防止することが可能となる。
【0048】
また、第1実施形態に係るワイヤロープ乱巻防止装置1Aは、更に、ドラム5のフランジ部5b側であるフリートアングルの狭角側(
図22のθ
2側)に近接する押圧ローラ24Aの左テーパ部242Aのテーパ角をゆるやかに且つテーパ幅を長く構成した。
この構成であれば、ドラム5に巻回されるワイヤロープ6が下部層を巻き切った後、新たに上部層を形成する段階で、ワイヤロープ6は整列して巻回され易くなり、この位置での乱巻発生等を抑えることが可能となる。
【0049】
〔第2実施形態〕
〔構成〕
第2実施形態は、支持アーム2Bの張り出し方向が支持アーム2A及び2Cとは反対方向になっている点と、支持アーム2Bの長さが支持アーム2A及び2Cと同一の長さになっている点とで上記第1実施形態と異なる。
以下、上記第1実施形態と同様の構成部には同じ符号を付して適宜説明を省略し、異なる部分を詳細に説明する。
【0050】
第2実施形態に係るワイヤロープ乱巻防止装置1Bは、
図10及び
図11に示すように、第1実施形態のワイヤロープ乱巻防止装置1Aにおいて、支持アーム2Bの張り出し方向が支持アーム2A及び2Cとは反対側となるように構成されている。加えて、支持アーム2Bのアーム部21Bが、長板部材21e及び21fに代えて、支持アーム2A及び2Cのアーム部21A及び21Cと同様の長板部材21b及び21cから構成されている。即ち、アーム部21Bが、支持アーム2A及び2Cのアーム部21A及び21Cの長さと同じ長さに構成されている。他の構成については上記第1実施形態と同様となる。
【0051】
第2実施形態に係るワイヤロープ乱巻防止装置1Bは、支持アーム2A~2Cによって、ドラム5を挟持するようにワイヤロープ6の表面層6Fを押えることが出来る構造となっている。また、押圧ローラ24A~24Cのドラム5の幅方向の配置位置は、第1実施形態と同様となっている。
従って、押圧ローラ24Aの右テーパ部243Aと押圧ローラ24Bの左テーパ部242Bとが周方向に重なるように配置され、押圧ローラ24Cの左テーパ部242Cと押圧ローラ24Bの右テーパ部243Bとが周方向に重なるように配置されている。加えて、押圧ローラ24Aの左端面と押圧ローラ24Cの右端面との間の幅が、ドラム5の内幅Wiから幅方向の両端に位置する押圧ローラ24A及び24Cの首振りに必要な隙間分を除いた幅に等しくなるように構成されている。
【0052】
〔作用〕
次に、
図12に基づき第2実施形態の作用を説明する。なお、
図12中の左右の方向表示は、
図11中の左右の方向表示に対応している。
上記説明した構成によって、第2実施形態に係るワイヤロープ乱巻防止装置1Bは、
図12に示すように、ドラム5の前後方向から見て、押圧ローラ24A~24Cが、各ローラ間に幅方向の隙間無く配置され、且つドラム5の内幅Wiの略全域に渡って配置されている。加えて、スプリング25A~25Cから付加された付勢力によって、各々が独立して各配置位置のローラ押圧面のワイヤロープ6の表面層6Fをドラム5側(径方向中心側)に押圧している。
【0053】
押圧ローラ24A~24Cは、支持アーム2Bの張り出し方向及び押圧ローラ24Bの周方向の配置位置が異なるが、いずれも独立に首振り可能であり、上記第1実施形態と同様の作用を有する。
また、押圧ローラ24Aの左テーパ部242Aのテーパ角をゆるやかに且つテーパ幅を長くしているため、ドラム5に巻回されるワイヤロープ6が下部層を巻き切った後、新たに上部層を形成する段階で、ワイヤロープ6は整列して巻回され易くなる。
また、支持アーム2A及び2Cと支持アーム2Bとは、ワイヤロープ6が巻き付けられていくことで、ドラム5の巻き付け径が大きくなるため互いに先端部が離隔するように回動する。そのため、一方の押圧ローラ24A及び24Cと他方の押圧ローラ24Bとの間の距離が増加して、ドラム軸51と押圧ローラ24A~24Dの各回転支軸244とを結ぶ線の夾角θ
3(
図13参照)を広角な状態で維持することが可能である。
【0054】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態に係るワイヤロープ乱巻防止装置1Bは、支持アーム2A~2Cを備えている。これら支持アーム2A~2Cは、3つの短幅の押圧ローラ24A~24Cを備えている。これら押圧ローラ24A~24Cは、各々のローラ端の片側又は両側が他の押圧ローラ端とドラム5の周方向に重なるように配置されている。具体的に、押圧ローラ24Aの右テーパ部243Aと押圧ローラ24Bの左テーパ部242Bとが周方向に重なるように配置され、押圧ローラ24Cの左テーパ部242Cと押圧ローラ24Bの右テーパ部243Bとが周方向に重なるように配置されている。加えて、3つの押圧ローラ24A~24Cのうち押圧ローラ24Aの左端面と押圧ローラ24Cの右端面との間の幅が、ドラム5の内幅Wiからドラム5の幅方向の両端に位置する押圧ローラ24A及び24Cの首振りに必要な隙間分を除いた幅に等しくなるように構成されている。
【0055】
更に、押圧ローラ24A~24Cのうち押圧ローラ24A及び24Cは、ドラム5の幅方向に同一直線上に且つ押圧ローラ24Aがドラム5の内側の幅方向の一端(フランジ部5b側)に、押圧ローラ24Cが他端(フランジ部5c側)にそれぞれ近接して配置されている。そして、押圧ローラ24Dは押圧ローラ24A及び24Cとドラム5の周方向に位置をずらして且つドラム5の前後方向から見て押圧ローラ24A及び24Cの間の幅方向の隙間無く配置されている。なお更に、押圧ローラ24A及び24Cに対応する支持アーム2A及び2Cは、同一方向に張り出されており、押圧ローラ24Bに対応する支持アーム2Bは、支持アーム2A及び2Cとは反対方向に張り出されている。
【0056】
この構成であれば、上記第1実施形態のワイヤロープ乱巻防止装置1Aと同等の作用及び効果が得られる。加えて、支持アーム2A~2Cによって、ドラム5を挟持するようにワイヤロープ6の表面層6Fを押えることが可能である。これにより、一方の押圧ローラ24A及び24Cと他方の押圧ローラ24Bとの間の距離が大きくなる程、浮き上がり防止の効果をより確実に発揮することが可能となる。
【0057】
〔第3実施形態〕
第3実施形態は、支持アーム2A~2Cの張り出し方向が反対方向になっている点と、新たに支持アーム2A~2Cとは逆方向に張り出された長幅の支持アーム2Dを有している点とで上記第1実施形態と異なる。
以下、上記第1実施形態と同様の構成部には同じ符号を付して適宜説明を省略し、異なる部分を詳細に説明する。
【0058】
第3実施形態に係るワイヤロープ乱巻防止装置1Cは、
図13及び
図14に示すように、フレーム10に設けた支持ブラケット3と、支持ブラケット3に枢支ピン34で回動自在に枢支された支持アーム2Dとを備える。加えて、支持アーム2Dの前後方向の略中間位置に、枢支ピン40で回動自在に枢支された支持アーム2A~2Cを備える。
支持アーム2Dは、アーム部21Dと、アーム部21Dの先端部に回転自在に取り付けられた押圧ローラ24Dとを備える。
【0059】
アーム部21Dは、互いに左右方向に対向して配置された矩形板状の長尺の長板部材21g及び21hを備える。長板部材21g及び21hは、それぞれの先端部が押圧ローラ24Dのローラ幅に合わせて左右内側へと僅かに折れ曲がっている。加えて、先端部は上方に向かって僅かに湾曲しており且つ押圧ローラ24Dのローラ径と略同径の円に沿った外形に構成されている。更に、長板部材21g及び21hの先端部の左右対向位置には、押圧ローラ24Dの回転支軸(図示略)を挿通するための軸穴がそれぞれ形成され、長板部材21g及び21hの後端部は、支持ブラケット3に枢支ピン34を介して回動自在に枢支されている。なお更に、長板部材21g及び21hの前後方向の略中間位置に、左右方向に互いに対向する軸穴が穿設されている。
【0060】
押圧ローラ24Dは、そのローラ幅が、ドラム5の内幅Wiから押圧ローラ24Dの回転に必要な隙間分を除いた幅に構成されており、左端部には左方に向かって先細りとなる左テーパ部242Dが設けられている。更に、右端部には右方に向かって先細りとなる右テーパ部243Dが設けられている。第3実施形態では、左テーパ部242D及び右テーパ部243Dは、押圧ローラ24Aの左テーパ部242A及び右テーパ部243Aと同じ形状となっている。
【0061】
支持アーム2A~2Cは、枢支ピン40の左端部に支持アーム2Aが、右端部に支持アーム2Cが、そしてスペーサ35及び36を介して中央に支持アーム2Bがそれぞれ回動自在に且つ支持アーム2Dとは反対側(
図14の後方側)に張り出す形で枢支されている。加えて、枢支ピン40における支持アーム2A~2Cの長板部材21b及び21cの基端部間には、スプリング25A~25Cが装着されており、その一端部は支持アーム2A~2Cの補強板21dの下面に当接されている。
また、支持アーム2Dの内側の前後方向の略中間位置よりも前方寄りの位置に、長板部材21g及び21hに左右両端部を挟まれた形で、矩形板状の補強板21iが設けられている。この補強板21iは、長板部材21g及び21hに対して、上方から下方に向かうに連れて後方側から前方側に傾斜するように設けられており、下面にはスプリング25A~25Cの他端部が当接している。
【0062】
かかる構成によって、共通のスプリング25A~25Cによって、押圧ローラ24A~24Cを、ドラム5の周方向の一方側にてワイヤロープ6の表面層6Fに押し当てる付勢力と、押圧ローラ24Dを、ドラム5の周方向の他方側にて表面層6Fに押し当てる付勢力とを付与している。即ち、支持アーム2A~2C並びに2Dによって、ドラム5を挟持するようにワイヤロープ6の表面層6Fを押えることが出来る構造となっている。
【0063】
〔作用〕
次に、
図15に基づき第3実施形態の作用を説明する。なお、
図15中の左右の方向表示は、
図14中の左右の方向表示に対応している。
上記説明した構成によって、第3実施形態に係るワイヤロープ乱巻防止装置1Cは、
図15に示すように、ドラム5の前後方向から見て、押圧ローラ24A~24Cが、各ローラ間に幅方向の隙間無く配置され、且つドラム5の内幅Wiの略全域に渡って配置されている。加えて、長幅の押圧ローラ24Dが、押圧ローラ24A~24Cとは周方向に位置をずらしてドラム5の内幅Wiの略全域に渡って配置されている。
【0064】
更に、押圧ローラ24A~24Dは、スプリング25A~25Cから付加された付勢力によって、各々が独立して各配置位置のローラ押圧面のワイヤロープ6の表面層6Fをドラム5側(径方向中心側)に押圧している。
押圧ローラ24A~24Cは、第1実施形態とは張り出し方向が異なるが、いずれも独立に首振り可能であり、上記第1実施形態と同様の作用を有する。加えて、押圧ローラ24Dは、ドラム5の内幅Wiの略全域に亘って上部層のワイヤロープ6の表面層6Fを押さえつけることが可能である。
【0065】
また、支持アーム2A~2Cと支持アーム2Dとは、ワイヤロープ6が巻き付けられていくことで、ドラム5の巻き付け径が大きくなるため互いに先端部が離隔するように回動する。そのため、一方の押圧ローラ24A~24Cと他方の押圧ローラ24Dとの間の距離が増加して、ドラム軸51と各押圧ローラ24A~24Dの回転支軸244A~244Dとを結ぶ線の夾角θ
3(
図13参照)を広角な状態で維持することが可能である。
また、押圧ローラ24A及び24Dの左テーパ部242A及び242Dのテーパ角をゆるやかに且つテーパ幅を長くしているため、ドラム5に巻回されるワイヤロープ6が下部層を巻き切った後、新たに上部層を形成する段階で、ワイヤロープ6は整列して巻回され易くなる。
【0066】
〔第3実施形態の効果〕
第3実施形態に係るワイヤロープ乱巻防止装置1Cは、基端部が枢支ピン34を介して支持ブラケット3に回動自在に枢支された支持アーム2Dを備えている。加えて、それぞれの基端部が支持アーム2Dのアーム部21Dに枢支ピン40を介してそれぞれ独立に回動自在に枢支された支持アーム2A~2Cを備えている。支持アーム2Dは、ドラム5の内幅Wiから押圧ローラ24Dの回転のための隙間分を除いた幅と等しいローラ幅の長幅の押圧ローラ24Dを備え、支持アーム2A~2Cは、短幅の押圧ローラ24A~24Cを備えている。
【0067】
そして、押圧ローラ24A及び24Cは、ドラム5の幅方向に同一直線上に且つ一方がドラム5の内側の幅方向の一端に他方が他端にそれぞれ近接して配置されている。加えて、押圧ローラ24Bは、押圧ローラ24A及び24Cとドラム5の周方向に位置をずらして且つドラム5の前後方向から見て押圧ローラ24A及び24Cの間の幅方向の隙間無く配置されている。
具体的に、押圧ローラ24Aの右テーパ部243Aと押圧ローラ24Bの左テーパ部242Bとが周方向に重なるように配置され、押圧ローラ24Cの左テーパ部242Cと押圧ローラ24Bの右テーパ部243Bとが周方向に重なるように配置されている。
【0068】
長幅の押圧ローラ24Dは、押圧ローラ24A~24Cとドラム5の周方向に位置をずらして配置されている。また、押圧ローラ24A~24Cに対応する支持アーム2A~2Cは、同一方向に張り出されており、押圧ローラ24Dに対応する支持アーム2Dは、支持アーム2A~2Cとは反対方向に張り出されている。
この構成であれば、上記第1実施形態のワイヤロープ乱巻防止装置1Aと同等の作用及び効果が得られる。
【0069】
加えて、支持アーム2A~2Cと支持アーム2Dとは、ワイヤロープ6が巻き付けられていくことで、互いに先端部が離隔するように回動する。そのため、一方の押圧ローラ24A~24Cと他方の押圧ローラ24Dとの間の距離が増加して、ドラム軸51と各押圧ローラ24A~24Dの回転支軸244~244Dとを結ぶ線の夾角θ3を広角な状態で維持することが可能である。その結果、ワイヤロープ6の浮き上がり防止の効果が低下することはなく、ワイヤロープ6に張力の変動があっても乱巻の発生を抑え常に正常に巻き取りを行うことが可能である。
更に、支持アーム2A~2Dによって、ドラム5を挟持するようにワイヤロープ6の表面層6Fを押えることが可能である。これにより、一方の押圧ローラ24A~24Cと他方の押圧ローラ24Dとの間の距離が大きくなる程、浮き上がり防止の効果をより確実に発揮することが可能となる。
【0070】
〔第4実施形態〕
第4実施形態は、支持アーム2A~2Cに代えて、短幅の押圧ローラ24Eを有する支持アーム2Eを備えている点が上記第3実施形態と異なる。
以下、上記第3実施形態と同様の構成部には同じ符号を付して適宜説明を省略し、異なる部分を詳細に説明する。
第4実施形態に係るワイヤロープ乱巻防止装置1Dは、
図16及び
図17に示すように、上記第3実施形態と同様の構成の支持アーム2Dと、支持アーム2Dの前後方向の略中間位置に、枢支ピン40で回動自在に枢支された支持アーム2Eとを備える。
支持アーム2Eは、アーム部21Eと、揺動装置22Eと、ローラブラケット23Eと、短幅の押圧ローラ24Eと、4つのスプリング25Eとを備える。
【0071】
アーム部21Eは、矩形長板状の長板部材21jと、長板部材21jの一方(
図17の前方側)の面における左端部に先端部が固着された矩形長板状の長板部材21kと、右端部に先端部が固着された矩形長板状の長板部材21mとを備える。
長板部材21jは、支持アーム2Dの長板部材21g及び21h間の内側の幅と略同じ長さを有しており、その板面中央には、揺動装置22Eのボス22aの内径と同径のピン挿入穴が穿設されている。そして、長板部材21jには、揺動装置22Eの揺動軸22bのボス22aの基端部が、中心位置を合わせて板面中央のピン挿入穴を覆うように固着されている。これにより、ボス22aの基端部側から突出した部分は、ピン挿入穴に先端面側から挿入され、後端面側に突き抜ける。この突き抜けた部分にはスナップリング22dが装着されている。
【0072】
長板部材21k及び21mは、上記第1~第3実施形態の支持アーム2Bの長板部材21b及び21cと同様の構成を有しており、長板部材21k及び21mの基端部は、ピン穴を介して挿通された枢支ピン40の左右端部に回動自在に枢支されている。
更に、長板部材21k及び21mの内側の先端部寄りの位置には、これら長板部材21k及び21mに左右両端部を挟まれた形で、矩形板状の補強板21nが設けられている。この補強板21nは、アーム部21Eに対して、上方から下方に向かうに連れて前方側から後方側に傾斜するように設けられている。
【0073】
4つのスプリング25Eは、第4実施形態ではねじりスプリングから構成されており、枢支ピン40のアーム部21Eの長板部材21k及び21mの基端部間の位置に装着されている。そして、これら4つのスプリング25Eのそれぞれの一端部は、支持アーム2Dの補強板21iの下面に当接し、それぞれの他端部は、支持アーム2Eの補強板21nの下面に当接している。
かかる構成によって、共通の4つのスプリング25Eによって、押圧ローラ24Dを、ドラム5の周方向の一方側にてワイヤロープ6の表面層6Fに押し当てる付勢力と、押圧ローラ24Eを、ドラム5の周方向の他方側にて表面層6Fに押し当てる付勢力とを付与している。即ち、支持アーム2Dと支持アーム2Eとによって、ドラム5を挟持するようにワイヤロープ6の表面層6Fを押えることが出来る構造となっている。
【0074】
〔作用〕
次に、
図18(a)~(c)に基づき第4実施形態の作用を説明する。なお、
図18中の左右の方向表示は、
図17中の左右の方向表示に対応している。
上記説明した構成によって、第4実施形態に係るワイヤロープ乱巻防止装置1Dは、
図18(a)に示すように、押圧ローラ24Dが、ドラム5の内幅Wiの略全域に渡って配置され、且つ、押圧ローラ24Eが、ドラム5の幅方向の中央に配置されている。
更に、押圧ローラ24D及び24Eは、4つのスプリング25Eから付加された付勢力によって、各々が独立して各配置位置のローラ押圧面のワイヤロープ6の表面層6F(接触している部分)をドラム5側(径方向中心側)に押圧している。
【0075】
即ち、油圧モータによる巻取動作によって、
図18(a)に示すように、押圧ローラ24Dの右端側が、上部層側のワイヤロープ6の表面層6F上に位置し、押圧ローラ24Eが、巻き付けが完了した1段下の下部層側のワイヤロープ6の表面層6F上に全体が位置した状態になっている。この場合、押圧ローラ24Dの残りの部分は下部層との間の空間上に位置する。
この状態では、押圧ローラ24D及び24Eが、それぞれのローラ押圧面にあるワイヤロープ6の表面層6Fを表面側から押圧している状態となる。また、押圧ローラ24Eは、ワイヤロープ6上層部にすでに押圧された載置状態であるため、揺動しない状態となる。
【0076】
その後、ドラム5に新たにワイヤロープ6が巻き付けられて、
図18(b)に示す状態になったとする。即ち、新たに巻き付けられたワイヤロープ6によって、押圧ローラ24Eは、その右テーパ部243E側の端部がドラム5から離間する方向に持ち上げられ、その左テーパ部242E側の端部がドラム5に巻回されたワイヤロープ6の表面層6F側に接近する方向に首振りをした状態になったとする。この状態では、押圧ローラ24Dが、そのローラ押圧面にあるワイヤロープ6の表面層6Fを表面側から押圧している状態となる。一方、押圧ローラ24Eは、首振りによって、新たに巻き付けられたワイヤロープ6の表面層6Fを表面側から押圧すると共に、ワイヤロープ6を空間6S側の斜め側方からも押圧した状態となる。
【0077】
引き続き、新たにワイヤロープ6が巻き付けられて、
図18(c)に示す状態になったとする。即ち、新たに巻き付けられたワイヤロープ6によって、押圧ローラ24Dの略全体が上部層側のワイヤロープ6の表面層6F上に位置し、押圧ローラ24Eの全体が上部層側のワイヤロープ6の表面層6F上に位置した状態となったとする。この状態では、押圧ローラ24Eは、首振りできない状態となる。従って、押圧ローラ24D及び24Eは、新たに巻き付けられたワイヤロープ6を含む自身のローラ押圧面の表面層6Fを表面側から押圧した状態となる。
また、押圧ローラ24Dの左テーパ部242Dのテーパ角をゆるやかに且つテーパ幅を長くしているため、ドラム5に巻回されるワイヤロープ6が下部層を巻き切った後、新たに上部層を形成する段階で、ワイヤロープ6は整列して巻回され易くなる。
【0078】
〔第4実施形態の効果〕
第4実施形態に係るワイヤロープ乱巻防止装置1Dは、ドラム5の内幅Wiからローラの回転のための隙間分を除いた幅と等しいローラ幅の1つの長幅の押圧ローラ24Dと、1つの短幅の押圧ローラ24Eとを備える。
そして、押圧ローラ24Dは、ドラム5の幅方向に沿ってその内幅Wiの略全域に亘って配置され、押圧ローラ24Eは、ドラム5の幅方向の中央に配置されている。
押圧ローラ24Dと、押圧ローラ24Eとはドラム5の周方向に位置をずらして配置されている。また、押圧ローラ24Dに対応する支持アーム2Dは、ドラム5の周方向の一方向に張り出されており、押圧ローラ24Eに対応する支持アーム2Eは、支持アーム2Dとは反対方向に張り出されている。
【0079】
この構成であれば、押圧ローラ24Eによって、ドラム5のフランジ部5b及び5c側から中央へと向かって新たに巻き取られるワイヤロープ6を容易に乗り越えられるよう、ドラム5に巻き回されたワイヤロープ6の表面層6F側に付勢しつつ、首振りさせることが可能である。そして、新たに巻き取られたワイヤロープ6の表面(表面層6F)又は空間6S側の斜め側面からワイヤロープ6の表面を押さえることが可能となる。また、上部層と下部層との段差部に発生する空間を極力抑えることが可能となる。その結果、ワイヤロープ6の浮き上がりによる乱巻だけでなく横飛びによる乱巻の発生も防止することが可能である。
また、押圧ローラ24Dによって、ドラム5の幅方向の略全域について、ワイヤロープ6の浮き上がりによる乱巻の発生を防止することが可能である。
【0080】
〔第5実施形態〕
第5実施形態は、支持アーム2A~2Cの揺動装置22A~22Cがスプリングから構成されている点が上記第1実施形態と異なる。
以下、上記第1実施形態と同様の構成部には同じ符号を付して適宜説明を省略し、異なる部分を詳細に説明する。
第5実施形態に係るワイヤロープ乱巻防止装置1A’は、図示省略するが、上記第1実施形態のワイヤロープ乱巻防止装置1Aにおいて、支持アーム2A~2Cに代えて、支持アーム2A’~2C’を備えた構成となっている。
【0081】
支持アーム2A’は、
図19に示すように、上記第1実施形態の支持アーム2Aにおいて、アーム部21A及び揺動装置22Aに代えて、アーム部21A’及び揺動装置22A’を備えた構成となっている。
アーム部21A’は、上記第1実施形態のアーム部21Aにおいて、板状部材21aに代えて板状部材21a’を備えた構成となっている。この板状部材21a’は、第1実施形態の板状部材21aにおけるピン挿入穴に代えて、揺動装置22A’の基端部を取り付けるための取付部(図示略)を備えた構成となっている。
【0082】
第5実施形態に係る揺動装置22A’は、押圧ローラ24Aを中立に付勢するコイルスプリング(以下、「コイルスプリング22A’」と称す)から構成されている。コイルスプリング22A’の一端部(基端部)は、アーム部21A’の先端面に取り付けられ、他端部(先端部)は、ローラブラケット23Aの基端面に取り付けられている。
なお、中立とは、ドラム5に押しつけられていない状態の押圧ローラ24Aの回転支軸244が、ドラム軸51と平行となる状態である。換言すると、押圧ローラ24Aの全体が、ドラム5に巻き付けられたワイヤロープ6の表面層6Fに押し付けられたとき、巻回されたワイヤロープ6と直交する状態である。
【0083】
また、第5実施形態に係る支持アーム2C’は、
図20に示すように、上記第1実施形態の支持アーム2Cにおいて、アーム部21C及び揺動装置22Cに代えて、アーム部21C’及び揺動装置22C’を備えた構成となっている。なお、アーム部21C’及び揺動装置22C’の構成は、アーム部21A’及び揺動装置22A’と同様となる。
また、第5実施形態に係る支持アーム2B’は、図示省略するが、上記第1実施形態の支持アーム2Bにおいて、アーム部21B及び揺動装置22Bに代えて、アーム部21B’及び揺動装置22B’を備えた構成となっている。なお、アーム部21B’及び揺動装置22B’の構成は、アーム部21A’及び21C’と長板部材21b及び21cの長さが異なるのみで、アーム部21A’及び揺動装置22A’と同様となる。
【0084】
〔作用〕
上記説明した構成によって、第5実施形態に係るワイヤロープ乱巻防止装置1A’は、支持アーム2A’~2C’のスプリング25A~25Cの付勢力によって、押圧ローラ24A~24Cがそれぞれ独立にワイヤロープ6の表面層6Fをドラム5側に常に付勢した状態となる。
加えて、ドラム5側に付勢しつつも、ワイヤロープ6の上部層を乗り越える際に、この付勢力によってコイルスプリング22A’~22C’は、弾性変形(首振り)する。これによって、上記第1実施形態と同様に、ワイヤロープ6の空間6S側の斜め側面も押さえることが可能である。また、上部層と下部層との段差部に発生する空間を極力抑えることが可能となる。
更に、コイルスプリング22A’~22C’は、他の方向(第1実施形態の揺動軸22b回り以外の方向に相当)にも弾性変形可能であるため、横飛び以外の他の要因に起因する、複雑な他方向からの揺動(ロール)要因にも柔軟に追従することが可能である。
【0085】
〔第5実施形態の効果〕
第5実施形態に係るワイヤロープ乱巻防止装置1A’は、短幅の3つの押圧ローラ24A~24Cを有する支持アーム2A’~2C’を備える。支持アーム2A’~2C’は、基端部がフレーム10に支持ブラケット3を介して回動自在に枢支されたアーム部21A’~21C’と、基端部がアーム部21A’~21C’の先端部に連結され且つ自身先端部に押圧ローラ24A~24Cが回転自在に取り付けられたローラブラケット23A~23Cと、押圧ローラ24A~24Cがドラム5に巻回されているワイヤロープ6をドラム5側に押圧するようにアーム部21A’~24C’を付勢するスプリング25A~25Cとを有する。更に、支持アーム2A’~2C’は、ローラブラケット23A~23Cの基端面とアーム部21A’~21C’の先端面とが、コイルスプリング22A’~22C’を介して連結されている。
【0086】
この構成であれば、上部層と下部層との段差部において、押圧ローラ24A~24Cのいずれか1つが、新たに巻き取られたワイヤロープ6の表面(表面層6F)を乗り越える際に、コイルスプリング22A’~22C’の弾性変形によって、首振りを行うことが可能である。これによって、ワイヤロープ6の表面層6Fの表面に加えて空間6S側の斜め側面も押さえることが可能となる。その結果、ワイヤロープ6の浮き上がりによる乱巻の発生に加えて横飛びによる乱巻の発生も防止することが可能となる。
更に、コイルスプリング22A’~22C’は、他の方向にも弾性変形可能であるため、横飛び以外の他の要因に起因する、複雑な他方向からの揺動(ロール)要因にも柔軟に追従することが可能である。その結果、例えば、外部からの衝撃を受けるなどして、通常時には発生しないワイヤロープ6の動きが発生した場合でも乱巻の発生を防止することが可能である。
【0087】
(変形例)
上記第1、第3、第5実施形態では、支持アーム2Bの長さを、支持アーム2A及び2Cの長さよりも短くする構成としたが、この構成に限らず、支持アーム2Bの長さを、支持アーム2A及び2Cの長さよりも長くする構成としてもよい。
また、第1~第3、第5実施形態では、ドラム5の周方向に一方の押圧ローラと他方の押圧ローラとのテーパ部同士が重なる構成としたが、この構成に限らない。例えば、一方の押圧ローラのテーパ部と他方の押圧ローラの円筒状部とが重なる構成とするなど他の構成としてもよい。
【0088】
また、上記第1~第5実施形態では、各押圧ローラの両端部にテーパ部を設ける構成としたが、この構成に限らない。例えば、テーパ部を設けない構成としてもよいし、いずれか一端にのみテーパ部を設ける構成としてもよいし、両方に設ける構成と一方にのみ設ける構成とを組み合わせた構成とするなど他の構成としてもよい。
また、上記第1~第5実施形態では、短幅の押圧ローラ24A~24Cのローラ幅を、ドラム5の内幅Wiを3分割する程度の幅とする構成としたが、この構成に限らない。例えば、2分割する程度の幅又は4分割以上する程度の幅とするなど他のローラ幅として、短幅ローラの個数を2つ又は4つ以上とする構成としてもよい。
【0089】
また、上記第1~第5実施形態では、回転支軸244の両端をおねじ加工し、両端をナット249及び250で固定する構成としたが、この構成に限らない。例えば、回転支軸244をボルトで構成するなど他の構成としてもよい。
また、上記第1~第5実施形態では、回転支軸244とローラ部との間に、玉軸受245及び246を設ける構成としたが、この構成に限らず、ローラ部の転がり抵抗が少ない構成であれば他の構成としてもよい。
【0090】
また、上記第5実施形態では、揺動装置22A’~22C’を、コイルスプリングから構成したが、この構成に限らない。例えば、同様の機能が実現できるのであればコイルスプリング以外の他の種類のスプリングから構成してもよい。また、例えば、押圧ローラ24A~24Cがワイヤロープ6の上部層を乗り越え辛い場合など、押圧ローラ24A~24Cの挙動が不安定となる場合は、コイルスプリングと枢支ピンとを組み合わせた構造としてもよい。これにより、軸心を有するコイルスプリングによる首振り機構となり挙動を安定化することが可能となる。
また、上記第1~第5実施形態では、本発明をクレーンのウインチを構成するドラムに適用したが、クレーンに限らず、他の作業機のウインチや船舶に搭載されたウインチなどの他の機械に搭載されたウインチのドラムに適用してもよい。
【符号の説明】
【0091】
1A~1D,1A’ ワイヤロープ乱巻防止装置
2A~2E,2A’~2C’ 支持アーム
3 支持ブラケット
5 ドラム
5a 胴部
5b,5c フランジ部
6 ワイヤロープ
7 コラム
10 フレーム
11,12 シーブ
21A~21E,21A’~21C’ アーム部
22A~22C,22E,22A’~22C’ 揺動装置
22a ボス
22b 揺動軸
22c すべり軸受
23A~23C,23E ローラブラケット
23b ローラ取付部
24A~24E 押圧ローラ
25A~25C,25E スプリング
34,40 枢支ピン
51 ドラム軸
100 クレーン
240A~240C 左ローラ部
241A~241C 右ローラ部
242A~242D 左テーパ部
243A~243D 右テーパ部
244 回転支軸
245~246 玉軸受
247~248 カラー
249~250 ナット