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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】駆動装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 63/34 20060101AFI20230829BHJP
   F16H 61/32 20060101ALI20230829BHJP
   B60T 1/06 20060101ALI20230829BHJP
   B60T 7/12 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
F16H63/34 ZHV
F16H61/32
B60T1/06 G
B60T7/12 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019036317
(22)【出願日】2019-02-28
(65)【公開番号】P2020139579
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】福永 慶介
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-052321(JP,A)
【文献】特開2015-024478(JP,A)
【文献】特開2018-165528(JP,A)
【文献】特開2018-040461(JP,A)
【文献】国際公開第2011/101973(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 63/34
F16H 61/32
B60T 1/06
B60T 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される駆動装置であって、
第1方向に沿って延びるシャフトを有するモータと、
前記シャフトに固定される第1のギヤと、前記第1のギヤと噛み合う第2のギヤと、を有し、前記モータから出力されるトルクを前記車両の車軸に伝達する伝達機構と、
前記ギヤに固定され、前記車軸に連結されるパークロックギヤと、
前記第1方向に沿って移動する可動部材、および前記可動部材の前記第1方向の移動に伴って前記第1方向と直交する第2方向に移動し、前記パークロックギヤに噛み合うことで前記車軸の回転をロックできるパークロックアームを有するパーキング切替機構と、
前記モータを収容するモータハウジングと
前記モータハウジングの第1方向の一方側に位置し、前記伝達機構、前記パークロックギヤおよび前記パーキング切替機構を収容するギヤハウジングと、
前記車両のシフト操作に基づいて前記可動部材を前記第1方向に移動させるシフトモータ、および前記シフトモータの回転角度を検出するエンコーダを有する電動アクチュエータと、
前記電動アクチュエータを制御する制御部と、
を備え、
前記ギヤハウジングは、前記第1方向の一方側において前記第1方向と直交する方向に延びる側壁部を含み、

前記可動部材は、前記第1方向の一方側において、前記パークロックアームを前記第2方向の一方側から支持する支持部を有し、
前記支持部は、
第1部分と、
前記第1部分の前記第1方向の一方側に繋がり、外径が前記第1方向の一方側に向かうに従って小さくなる第2部分と、
を有し、
前記可動部材の前記第1方向の一方側の端部が前記側壁部の内壁面に前記第1方向の他方側から接触する位置において、前記パークロックアームは、前記第1部分に前記第2方向の一方側から支持されて、前記パークロックギヤに噛み合い、
前記制御部は、
前記パークロックアームと前記パークロックギヤとの噛み合いが外れた非パーキング位置から前記可動部材の前記第1方向の一方側の端部が前記ギヤハウジングの内壁面に前記第1方向の他方側から突き当たるまで移動させた際の前記シフトモータの回転角度である第1回転角度を前記エンコーダによって検出し、
前記第1回転角度に基づいて、前記第1回転角度よりも小さい第2回転角度を算出し、
前記第2回転角度を目標値として前記シフトモータを回転させることで、前記可動部材を前記非パーキング位置から前記パークロックアームが前記パークロックギヤに噛み合うパーキング位置に移動させ
前記パークロックギヤは、前記第2のギヤよりも前記第1方向の一方側に位置する、駆動装置。
【請求項2】
前記シフトモータを前記第1回転角度と前記第2回転角度との差だけ回転させた際における前記可動部材の前記第1方向の移動量は、前記第1部分の前記第1方向の寸法よりも小さい、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第2回転角度よりも小さい第3回転角度を目標値とするオープンループ制御によって前記シフトモータを回転させた後に、前記第2回転角度を目標値とするフィードバック制御によって前記シフトモータを回転させることで、前記可動部材を前記非パーキング位置から前記パークロックアームが前記パークロックギヤに噛み合うパーキング位置に移動させる、請求項1または2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第2回転角度よりも小さい第3回転角度を目標値とするフィードバック制御によって前記シフトモータを回転させた後に、前記第2回転角度を目標値とするフィードバック制御によって前記シフトモータを回転させることで、前記可動部材を前記非パーキング位置から前記パークロックアームが前記パークロックギヤに噛み合うパーキング位置に移動させる、請求項1または2に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記第3回転角度を目標値とするフィードバック制御におけるフィードバックゲインは、前記第2回転角度を目標値とするフィードバック制御におけるフィードバックゲインよりも大きい、請求項4に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記シフトモータを前記第2回転角度と前記第3回転角度との差だけ回転させた際における前記可動部材の前記第1方向の移動量は、前記第2部分の前記第1方向の寸法以上である、請求項3から5のいずれか一項に記載の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載され、パーキングロック装置を備える駆動装置が知られる。例えば、特許文献1には、パーキングロッドと、パーキングロッドに外装されたカムと、パーキングギヤに噛み合い可能なパーキングロックボールと、を備えるパーキングロック装置が記載される。パーキングロックボールは、パーキングロッドとともに移動するカムよって、移動させられてパーキングギヤに噛み合う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-52321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなパーキングロック装置においては、組立公差および各部の寸法公差等によって、パーキングロックボールとカムとの相対位置にずれが生じる場合がある。この場合、パーキングロックボールを十分に移動させることができず、パーキングロックボールとパーキングギヤとが噛み合わない虞があった。そのため、車軸の回転をロックできない虞があった。
【0005】
これに対して、パーキングロッドおよびカムの移動量を、公差等のずれを考慮して十分に大きくすることも考えられる。しかし、この場合には、パーキングロッドが移動しすぎて、駆動装置のハウジングの内壁面にパーキングロッドが衝突する虞があった。そのため、パーキングロック装置が損傷する虞があった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みて、パーキング切替機構が損傷することを抑制しつつ、車軸の回転をロックできないことを抑制できる構造を有する駆動装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の駆動装置の一つの態様は、車両に搭載される駆動装置であって、第1方向に沿って延びるシャフトを有するモータと、前記シャフトに固定される第1のギヤと、前記第1のギヤと噛み合う第2のギヤを有し、前記モータから出力されるトルクを前記車両の車軸に伝達する伝達機構と、前記ギヤに固定され、前記車軸に連結されるパークロックギヤと、前記第1方向に沿って移動する可動部材、および前記可動部材の前記第1方向の移動に伴って前記第1方向と直交する第2方向に移動し、前記パークロックギヤに噛み合うことで前記車軸の回転をロックできるパークロックアームを有するパーキング切替機構と、前記モータを収容するモータハウジングと前記モータハウジングの第1方向の一方側に位置し、前記伝達機構、前記パークロックギヤおよび前記パーキング切替機構を収容するギヤハウジングと、前記車両のシフト操作に基づいて前記可動部材を前記第1方向に移動させるシフトモータ、および前記シフトモータの回転角度を検出するエンコーダを有する電動アクチュエータと、前記電動アクチュエータを制御する制御部と、を備える。前記ギヤハウジングは、前記第1方向の一方側において前記第1方向と直交する方向に延びる側壁部を含む。前記可動部材は、前記第1方向の一方側において、前記パークロックアームを前記第2方向の一方側から支持する支持部を有する。前記支持部は、第1部分と、前記第1部分の前記第1方向の一方側に繋がり、外径が前記第1方向の一方側に向かうに従って小さくなる第2部分と、を有する。前記可動部材の前記第1方向の一方側の端部が前記ハウジングの内壁面に接触する位置において、前記パークロックアームは、前記第1部分に前記第2方向の一方側から支持されて、前記パークロックギヤに噛み合う。前記制御部は、前記パークロックアームと前記パークロックギヤとの噛み合いが外れた非パーキング位置から前記可動部材の前記第1方向の一方側の端部が前記側壁部の内壁面に前記第1方向の他方側から突き当たるまで移動させた際の前記シフトモータの回転角度である第1回転角度を前記エンコーダによって検出し、前記第1回転角度に基づいて、前記第1回転角度よりも小さい第2回転角度を算出し、前記第2回転角度を目標値として前記シフトモータを回転させることで、前記可動部材を前記非パーキング位置から前記パークロックアームが前記パークロックギヤに噛み合うパーキング位置に移動させる。前記パークロックギヤは、前記第2のギヤよりも前記第1方向の一方側に位置する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一つの態様によれば、駆動装置において、パーキング切替機構が損傷することを抑制しつつ、車軸の回転をロックできないことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態の駆動装置を示す斜視図である。
図2図2は、本実施形態の駆動装置の一部を上側から視た図である。
図3図3は、本実施形態の駆動装置の一部を示す図であって、図2におけるIII-III断面図である。
図4図4は、本実施形態の駆動装置の一部を左側から視た図である。
図5図5は、本実施形態のギヤハウジングの一部を示す斜視図である。
図6図6は、本実施形態のパーキング切替機構を示す斜視図である。
図7図7は、本実施形態のパークロックギヤがアンロック状態における、可動部材の一状態を示す図である。
図8図8は、本実施形態のパークロックギヤがアンロック状態における、可動部材の他の一状態を示す図である。
図9図9は、本実施形態のパークロックギヤがロック状態における、可動部材の一状態を示す斜視図である。
図10図10は、本実施形態の可動部材をハウジングの内壁面に突き当てた状態を示す図である。
図11図11は、本実施形態のパーキング切替機構の一部を示す斜視図である。
図12図12は、本実施形態のシフトモータにおける回転角度の時間変化の一例を示すグラフである。
図13図13は、本実施形態のシフトモータにおける回転角度の時間変化の他の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の説明では、図1に示す本実施形態の駆動装置1が水平な路面上に位置する車両に搭載された場合の位置関係を基に、鉛直方向を規定して説明する。また、図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Z軸方向は、+Z側を上側とし、-Z側を下側とする鉛直方向である。X軸方向は、Z軸方向と直交する方向であって駆動装置1が搭載される車両の前後方向である。本実施形態において、+X側は、車両の前側であり、-X側は、車両の後側である。Y軸方向は、X軸方向とZ軸方向との両方と直交する方向であって、車両の左右方向である。本実施形態において、+Y側は、車両の左側であり、-Y側は、車両の右側である。
【0011】
なお、前後方向の位置関係は、本実施形態の位置関係に限られず、+X側が車両の後側であり、-X側が車両の前側であってもよい。この場合には、+Y側は、車両の右側であり、-Y側は、車両の左側である。
【0012】
本実施形態では、Z軸方向と平行な方向を「鉛直方向Z」と呼び、X軸方向と平行な方向を「前後方向X」と呼び、Y軸方向と平行な方向を「左右方向Y」と呼ぶ。また、Z軸方向の正の側(+Z側)を「上側」と呼び、Z軸方向の負の側(-Z側)を「下側」と呼ぶ。X軸方向の正の側(+X側)を「前側」と呼び、X軸方向の負の側(-X側)を「後側」と呼ぶ。Y軸方向の正の側(+Y側)を「左側」と呼び、Y軸方向の負の側(-Y側)を「右側」と呼ぶ。本実施形態において、左右方向Yは、第1方向に相当する。鉛直方向Zは、第2方向に相当する。左側は、第1方向の一方側に相当する。下側は、第2方向の一方側に相当する。
【0013】
各図に適宜示すモータ軸J1は、Y軸方向、すなわち車両の左右方向に延びる。以下の説明においては、特に断りのない限り、モータ軸J1を中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、モータ軸J1を中心とする周方向、すなわち、モータ軸J1の軸回りを単に「周方向」と呼ぶ。なお、本明細書において、「平行な方向」は略平行な方向も含み、「直交する方向」は略直交する方向も含む。
【0014】
駆動装置1は、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、電気自動車(EV)等、モータを動力源とする車両に搭載され、その動力源として使用される。図1から図4に示すように、駆動装置1は、ハウジング10と、モータ20と、減速装置50および差動装置60を有する伝達機構100と、パークロックギヤ53と、回転検出装置30と、インバータユニット40と、電動アクチュエータ80と、パーキング切替機構70と、を備える。
【0015】
ハウジング10は、モータ20、伝達機構100、パークロックギヤ53、回転検出装置30、およびパーキング切替機構70を収容する。図示は省略するが、ハウジング10の内部には、オイルが収容される。図1および図2に示すように、ハウジング10は、モータハウジング11と、ギヤハウジング12と、モータカバー13と、蓋部14と、を有する。
【0016】
モータハウジング11は、モータハウジング本体部11aと、連結部11bと、を有する。図3に示すように、モータハウジング本体部11aは、モータ軸J1を囲んで左右方向Yに延びる筒状である。モータハウジング本体部11aは、右側に開口する。モータハウジング本体部11aは、モータ20を収容する。図2に示すように、連結部11bは、モータハウジング本体部11aの左側の端部に設けられる。連結部11bは、モータハウジング本体部11aよりも後側に突出する。
【0017】
ギヤハウジング12は、モータハウジング11の左側に固定される。より詳細には、ギヤハウジング12の右側の端部は、連結部11bにネジで固定される。図示は省略するが、ギヤハウジング12は、右側に開口する。ギヤハウジング12は、第1収容部12aと、第2収容部12bと、を有する。第1収容部12aは、モータハウジング本体部11aの左側に位置する。第1収容部12aは、減速装置50およびパークロックギヤ53を収容する。第2収容部12bは、第1収容部12aの後側に繋がる。第2収容部12bは、連結部11bのうちモータハウジング本体部11aよりも後側に突出した部分の左側に位置する。第2収容部12bは、差動装置60を収容する。第1収容部12aは、第2収容部12bよりも左側に突出する。
【0018】
図5に示すように、ギヤハウジング12は、側壁部12dと、周壁部12cと、固定部12eと、を有する。側壁部12dは、ギヤハウジング12における左側の壁部である。周壁部12cは、側壁部12dの外周縁部から右側に延びる筒状の壁部である。固定部12eは、側壁部12dから右側に突出する。より詳細には、固定部12eは、側壁部12dのうち下側の端部における前側の端部から右側に突出する。本実施形態において固定部12eは、モータ軸J1と平行な中心軸J6を中心とする円柱状である。
【0019】
固定部12eは、嵌合凹部12fと、雌ネジ穴12gと、を有する。すなわち、ハウジング10は、嵌合凹部12fと、雌ネジ穴12gと、を有する。中心軸J6は、後述する貫通孔75hの中心軸である。なお、以下の説明においては、中心軸J6を中心とする周方向を「周方向θ」と呼び、適宜図において矢印で示す。
【0020】
嵌合凹部12fは、固定部12eの右側の端部から左側に窪む。嵌合凹部12fの外形は、左右方向Yに沿って視て、中心軸J6を中心とする円形状である。雌ネジ穴12gは、嵌合凹部12fの底部に設けられる。雌ネジ穴12gは、嵌合凹部12fの底面から左側に窪む。雌ネジ穴12gの内縁は、左右方向Yに沿って視て、中心軸J6を中心とする円形状である。
【0021】
図3に示すように、モータカバー13は、モータハウジング11の右側に固定される。より詳細には、モータカバー13は、モータハウジング本体部11aの右側の端部にネジで固定される。モータカバー13は、モータハウジング本体部11aの右側の開口を塞ぐ。モータカバー13は、左側に窪む収容凹部16を中央部分に有する。
【0022】
モータカバー13は、複数の取付部15を有する。複数の取付部15は、右側に突出する円柱状である。複数の取付部15は、収容凹部16よりも径方向外側に位置する。取付部15は、ハウジング10を車両本体に固定するためのネジが締め込まれる雌ネジ穴15aを有する。ハウジング10は、取付部15を介して被取付体としての車両本体に固定される。
【0023】
図1に示すように、複数の取付部15は、周方向に沿って配置される。図2に示すように、取付部15の右側の端面は、駆動装置1において最も右側に位置する部分である。すなわち、ハウジング10は、右側の端部に取付部15を有する。図3に示すように、蓋部14は、モータカバー13の右側の面にネジで固定される。蓋部14は、板面が左右方向Yを向く板状である。蓋部14は、収容凹部16の右側の開口を塞ぐ。
【0024】
モータ20は、ロータ21と、ステータ22と、を有する。ロータ21は、モータ軸J1を中心として回転する。ロータ21は、シャフト21aと、ロータ本体21bと、を有する。シャフト21aは、モータ軸J1に沿って左右方向Yに延びる。図示は省略するが、シャフト21aの左右方向Yに沿って視た外形は、モータ軸J1を中心とする円形状である。シャフト21aは、ベアリング25によって回転可能に支持される。ベアリング25は、モータカバー13に保持される。シャフト21aの右側の端部は、収容凹部16の内部に挿入される。図示は省略するが、シャフト21aの左側の端部には、減速装置50が接続される。これにより、減速装置50は、モータ20に接続される。
【0025】
本実施形態においてシャフト21aは、内部に油路21cが設けられた中空シャフトである。油路21cには、ハウジング10の内部に収容されたオイルが供給される。油路21cは、シャフト21aを左右方向Yに貫通する。ロータ本体21bは、シャフト21aの外周面に固定される。図示は省略するが、ロータ本体21bは、ロータコアと、ロータマグネットと、を有する。
【0026】
ステータ22は、モータ軸J1の径方向においてロータ21の外側に位置する。ステータ22は、ステータコア23と、図示しないインシュレータと、複数のコイル24と、を有する。ステータコア23は、モータハウジング本体部11aの内部に固定される。複数のコイル24は、図示しないインシュレータを介してステータコア23に装着される。
【0027】
伝達機構100は、モータ20から出力されるトルクを車両の車軸に伝達する。本実施形態においてモータ20の回転は、伝達機構100の減速装置50によって減速されて、伝達機構100の差動装置60に伝達される。図4に示すように、減速装置50は、第1のギヤ51と、第2のギヤ52と、図示しない第3のギヤと、を有する。すなわち、伝達機構100は、第1のギヤ51と、第2のギヤ52と、図示しない第3のギヤと、を有する。第1のギヤ51は、シャフト21aの左側の端部に固定される。第2のギヤ52は、モータ軸J1と平行な回転軸J3を中心として回転する。差動装置60は、リングギヤ61を有する。モータ20のシャフト21aから出力されるトルクは、第1のギヤ51、第2のギヤ52および第3のギヤをこの順に介して差動装置60のリングギヤ61へと伝達される。
【0028】
差動装置60は、減速装置50に接続され、モータ20から出力されるトルクを車両の車軸に伝達する。差動装置60は、車両の旋回時に、左右の車輪の速度差を吸収しつつ、左右両輪の車軸に同トルクを伝える機能を有する。リングギヤ61は、モータ軸J1と平行な差動軸J2を中心として回転する。リングギヤ61には、モータ20から出力されるトルクが減速装置50を介して伝えられる。
【0029】
パークロックギヤ53は、第2のギヤ52に固定される。すなわち、本実施形態において第2のギヤ52は、パークロックギヤ53が固定されるギヤに相当する。本実施形態においてパークロックギヤ53は、第2のギヤ52の左側(+Y側)に位置する。パークロックギヤ53は、第2のギヤ52と同軸に配置される。パークロックギヤ53は、回転軸J3を中心として回転する。パークロックギヤ53は、図示しない第3のギヤおよび差動装置60を介して、車両の車軸に連結される。パークロックギヤ53は、複数の歯部53aを有する。
【0030】
回転検出装置30は、ロータ21の回転を検出可能である。図3に示すように、回転検出装置30は、収容凹部16に収容される。本実施形態において回転検出装置30は、例えば、レゾルバである。回転検出装置30は、レゾルバロータ31と、レゾルバステータ32と、を有する。レゾルバロータ31は、シャフト21aの右側の端部における外周面に固定される。これにより、回転検出装置30は、ロータ21の右側の端部においてロータ21の回転を検出可能である。レゾルバステータ32は、レゾルバロータ31の径方向外側に位置する。レゾルバステータ32は、収容凹部16の内側面に固定される。
【0031】
図1および図2に示すように、インバータユニット40は、ハウジング10の後側に位置する。インバータユニット40は、インバータケース41と、図示しないインバータと、を有する。図示は省略するが、インバータは、ステータ22と電気的に接続される。
【0032】
インバータケース41は、インバータを収容する。インバータケース41は、ハウジング10に固定される。本実施形態においてインバータケース41は、ハウジング10の径方向外側面に固定される。より詳細には、インバータケース41は、モータハウジング本体部11aの径方向外側面のうち後側の部分に固定される。すなわち、インバータケース41は、左右方向Yと直交する前後方向Xにおいてハウジング10の後側に固定される。
【0033】
図1に示すように、インバータケース41は、左右方向Yに延びる略矩形箱状である。インバータケース41は、インバータケース本体部42と、インバータカバー43と、を有する。インバータケース本体部42は、上側に開口し、左右方向Yに長い略矩形箱状である。インバータカバー43は、インバータケース本体部42の上側の開口を塞ぐ。インバータカバー43は、第1カバー43aと、第2カバー43bと、を有する。第1カバー43aと第2カバー43bとは、互いに別部材である。第1カバー43aは、図示しないインバータの上側を覆う。第2カバー43bは、第1カバー43aの左側に位置する。第2カバー43bは、インバータに接続される図示しないバスバーの上側を覆う。
【0034】
図2および図4に示すように、電動アクチュエータ80は、ハウジング10の外側面に固定される。より詳細には、電動アクチュエータ80は、ギヤハウジング12における第1収容部12aの径方向外側面のうち前側の部分に固定される。図4に示すように、電動アクチュエータ80は、マニュアルシャフト81と、シフトモータ82と、エンコーダ83と、制御部84と、を有する。すなわち、駆動装置1は、マニュアルシャフト81と、シフトモータ82と、エンコーダ83と、制御部84と、を備える。
【0035】
マニュアルシャフト81は、左右方向Yと直交する前後方向Xに延びる。図6に示すように、本実施形態においてマニュアルシャフト81は、前後方向Xに延びる回転軸J4を中心とする円柱状である。図4に示すように、マニュアルシャフト81は、ギヤハウジング12の周壁部12cを貫通して、ギヤハウジング12の内部に突出する。
【0036】
シフトモータ82は、車両のシフト操作に基づいてマニュアルシャフト81を回転軸J4回りに回転させる。シフトモータ82は、マニュアルシャフト81を回転させることで、パーキング切替機構70の後述する可動部材70aを左右方向Yに移動させる。本実施形態においてシフトモータ82は、図示しない減速機を介してマニュアルシャフト81を回転させる。なお、シフトモータ82は、減速機を介さずにマニュアルシャフト81を回転させてもよい。
【0037】
エンコーダ83は、シフトモータ82の回転角度φを検出する。エンコーダ83は、シフトモータ82の回転角度φを検出できるならば、特に限定されない。エンコーダ83は、例えば、磁気式のエンコーダである。エンコーダ83は、シフトモータ82のシャフトの回転角度φを直接計測してシフトモータ82の回転角度φを検出してもよいし、マニュアルシャフト81の回転角度を計測し、図示しない減速機の減速比から間接的にシフトモータ82の回転角度φを検出してもよい。
【0038】
制御部84は、電動アクチュエータ80を制御する。制御部84には、車両の制御装置からシフト操作の情報が入力される。制御部84は、シフト操作の情報に基づいて、シフトモータ82を所定の回転角度φで回転させて、パーキング切替機構70の後述する可動部材70aを左右方向Yに移動させる。
【0039】
パーキング切替機構70は、電動アクチュエータ80によって、車両のシフト操作に基づいて駆動される。パーキング切替機構70は、パークロックギヤ53をロック状態とアンロック状態との間で切り換える。パーキング切替機構70は、車両のギヤがパーキングである場合に、パークロックギヤ53をロック状態とし、車両のギヤがパーキング以外である場合に、パークロックギヤ53をアンロック状態とする。車両のギヤがパーキング以外である場合とは、例えば、車両のギヤがドライブ、ニュートラル、リバース等である場合を含む。図6に示すように、パーキング切替機構70は、可動部材70aと、パークロックアーム77と、ガイド部材75と、板バネ部材76と、を有する。
【0040】
可動部材70aは、車両のシフト操作に基づいて、左右方向Yに沿って移動する。本実施形態において可動部材70aは、電動アクチュエータ80によって移動させられる。可動部材70aにおける左右方向Yの位置は、少なくともパーキング位置P1と非パーキング位置P2との間で切り替えられる。パーキング位置P1は、車両のギヤがパーキングである場合における可動部材70aの左右方向Yの位置である。非パーキング位置P2は、車両のギヤがパーキング以外である場合における可動部材70aの左右方向Yの位置である。パーキング位置P1は、非パーキング位置P2よりも、左側(+Y側)の位置である。図6においては、パーキング位置P1に位置する可動部材70aを実線で示し、非パーキング位置P2に位置する可動部材70aを二点鎖線で示す。
【0041】
可動部材70aは、ロッド連結部71と、ロッド72と、支持部73と、コイルバネ74と、を有する。ロッド連結部71は、マニュアルシャフト81に固定される。ロッド連結部71は、マニュアルシャフト81の径方向に延びる。本実施形態においてロッド連結部71は、マニュアルシャフト81から下側に延びる。本実施形態においてロッド連結部71は、板面が前後方向Xを向く板状である。ロッド連結部71の幅は、マニュアルシャフト81の径方向において、マニュアルシャフト81から離れるに従って大きくなる。ロッド連結部71は、凹部71a,71bを有する。すなわち、可動部材70aは、凹部71a,71bを有する。
【0042】
凹部71a,71bは、ロッド連結部71の先端部に設けられる。凹部71a,71bは、上側に窪む。より詳細には、本実施形態において凹部71a,71bは、ロッド連結部71の下側の端部から上側に窪む。凹部71a,71bは、ロッド連結部71を前後方向Xに貫通する。凹部71aと凹部71bとは、マニュアルシャフト81の周方向に沿って並んで配置される。本実施形態において凹部71aと凹部71bとは、左右方向Yに並んで配置される。
【0043】
ロッド72は、左右方向Yに沿って移動可能に配置される。ロッド72は、接続部72aと、ロッド本体72bと、を有する。接続部72aは、前後方向Xに延びる棒状である。接続部72aの前側(+X側)の端部は、ロッド連結部71を前後方向Xに貫通し、ロッド連結部71に固定される。これにより、ロッド72は、ロッド連結部71を介してマニュアルシャフト81に連結される。ロッド本体72bは、左右方向Yに延びる棒状である。本実施形態においてロッド本体72bは、接続部72aの後側(-X側)の端部から左側(+Y側)に延びる。ロッド本体72bは、接続部72a寄りの部分に突起部72cを有する。ロッド本体72bの左側の端部には、左右方向Yに延びる筒部材72dが嵌め合わされて固定される。
【0044】
支持部73は、パークロックアーム77を下側から支持する。本実施形態において支持部73は、ロッド本体72bが通される環状である。支持部73は、ロッド本体72bに対して左右方向Yに移動可能である。支持部73は、左右方向Yに延びる。図7から図10に示すように、支持部73は、第1部分73aと、第2部分73bと、を有する。第1部分73aは、支持部73のうち右側の部分である。第1部分73aの外径は、左右方向Yの全体に亘って一様である。第1部分73aの外径は、支持部73の外径のうちで最も大きい。
【0045】
第2部分73bは、支持部73のうち左側の部分である。第2部分73bは、第1部分73aの左側に繋がる。第2部分73bの左側の端部は、コイルバネ74に押されて筒部材72dの右側の端部に接触する。第2部分73bは、外径が左側に向かうに従って小さくなる。第2部分73bの右側の端部における外径は、第1部分73aの左側の端部における外径と同じである。第2部分73bの左側の端部における外径は、筒部材72dの外径よりも大きい。本実施形態において第2部分73bの外周面は、左側に向かうに従って外径が小さくなるテーパ面73cである。
【0046】
なお、図7および図9では、パーキング位置P1に位置する可動部材70aにおける左側の端部の左右方向Yの位置を、一点鎖線および符号「P1」で示す。図7では、非パーキング位置P2に位置する可動部材70aにおける左側の端部の左右方向Yの位置を一点鎖線および符号「P2」で示す。
【0047】
コイルバネ74は、左右方向Yに延びる。図6に示すように、コイルバネ74は、支持部73と突起部72cとの左右方向Yの間に配置される。コイルバネ74には、ロッド本体72bが通される。コイルバネ74の右側(-Y側)の端部は、突起部72cに接触する。コイルバネ74の左側(+Y側)の端部は、支持部73の右側の面に接触する。コイルバネ74は、支持部73がロッド本体72bに対して左右方向Yに相対移動することで伸縮し、支持部73に左右方向Yの弾性力を加える。
【0048】
パークロックアーム77は、可動部材70aの後側(-X側)に位置する。パークロックアーム77は、モータ軸J1と平行な回転軸J5を中心とする支持シャフト78によって、回転可能に支持される。パークロックアーム77は、パークロックアーム本体77aと、噛合部77bと、を有する。
【0049】
パークロックアーム本体77aは、支持シャフト78から前側(+X側)に延びる。パークロックアーム本体77aの前側の端部77cは、可動部材70aに上側から接触する。より詳細には、端部77cは、支持部73または筒部材72dに上側から接触する。端部77cの下側の面のうち右側(-Y側)の部分は、右側に向かうに従って上側に位置する傾斜部77dである。噛合部77bは、パークロックアーム本体77aから上側に突出する。支持シャフト78には巻きバネ79が装着される。巻きバネ79は、パークロックアーム77に対して、回転軸J5を中心として左側(+Y側)から視て反時計回り向きの弾性力を加える。
【0050】
パークロックアーム77は、可動部材70aの左右方向Yの移動に伴って左右方向Yと直交する鉛直方向Zに移動する。より詳細には、パークロックアーム77は、ロッド72および支持部73の左右方向Yへの移動に伴って、回転軸J5回りに回転することで鉛直方向Zに移動する。なお、本明細書において「パークロックアーム77が鉛直方向Zに移動する」とは、パークロックアーム77の少なくとも一部が鉛直方向Zに移動すればよい。
【0051】
マニュアルシャフト81の回転に伴って、ロッド連結部71が前側(+X側)から視て反時計回りに回転すると、ロッド72および支持部73が左側(+Y側)に移動する。支持部73のテーパ面73cの外径は、左側から右側(-Y側)に向かうに従って大きくなる。そのため、支持部73が左側に移動すると、テーパ面73cによって端部77cが上側に持ち上げられ、パークロックアーム77が回転軸J5を中心として左側(+Y側)から視て時計回りに回転する。これにより、図示は省略するが、噛合部77bが上側に移動してパークロックギヤ53に近づき、パークロックギヤ53の歯部53a同士の間に噛み合う。図6においては、パークロックギヤ53と噛み合う位置に位置するパークロックアーム77を実線で示す。
【0052】
パークロックギヤ53とパークロックアーム77とが噛み合う場合、支持部73もパーキング位置P1に位置する状態となり、可動部材70a全体がパーキング位置P1に位置する状態となる。すなわち、パークロックアーム77は、可動部材70aがパーキング位置P1に位置する場合に、車軸に連結されたパークロックギヤ53に噛み合う。支持部73は、パーキング位置P1において、ガイド部材75における後述する接触部75bとパークロックアーム77とに接触した状態で挟まれる。パークロックアーム77がパークロックギヤ53に噛み合うことで、パークロックギヤ53は、ロック状態となる。このようにして、パークロックアーム77は、パークロックギヤ53に噛み合うことで車軸の回転をロックできる。
【0053】
パークロックアーム77がパークロックギヤ53に近づく際、パークロックギヤ53の歯部53aの位置によっては、噛合部77bが歯部53aに接触する場合がある。この場合、パークロックアーム77は、噛合部77bが歯部53a同士の間に噛み合う位置まで移動できない場合がある。このような場合であっても、本実施形態では、支持部73がロッド72に対して左右方向Yに移動可能であるため、ロッド72はパーキング位置P1に移動しつつ、支持部73がパーキング位置P1よりも右側(-Y側)に位置する状態を許容できる。これにより、マニュアルシャフト81の回転が阻害されることを抑制でき、マニュアルシャフト81を回転させる電動アクチュエータ80に負荷が掛かることを抑制できる。
【0054】
また、ロッド72がパーキング位置P1に位置し、支持部73がパーキング位置P1よりも右側(-Y側)に位置する状態では、コイルバネ74が圧縮変形した状態となる。そのため、コイルバネ74によって支持部73に左向き(+Y向き)の弾性力が加えられる。これにより、支持部73を介して、コイルバネ74からパークロックアーム77に、回転軸J5を中心として左側(+Y側)から視て時計回りに回転する向きの回転モーメントが加えられる。したがって、パークロックギヤ53が回転して歯部53aの位置がずれると、パークロックアーム77が回転して、噛合部77bが歯部53a同士の間に噛み合う。
【0055】
マニュアルシャフト81の回転に伴って、ロッド連結部71がパーキング位置P1から非パーキング位置P2に回転すると、ロッド72および支持部73が右側(-Y側)に移動する。支持部73が右側に移動すると、支持部73によって持ち上げられていた端部77cが自重および巻きバネ79からの弾性力を受けて下側に移動し、パークロックアーム77が回転軸J5を中心として左側(+Y側)から視て反時計回りに回転する。これにより、噛合部77bが下側に移動してパークロックギヤ53から離れ、歯部53a同士の間から外れる。図6においては、パークロックギヤ53から外れた状態のパークロックアーム77を二点鎖線で示す。
【0056】
パークロックアーム77がパークロックギヤ53から外れる場合、支持部73も非パーキング位置P2に位置する状態となり、可動部材70a全体が非パーキング位置P2に位置する状態となる。すなわち、パークロックアーム77は、可動部材70aが非パーキング位置P2に位置する場合にパークロックギヤ53から外れる。支持部73は、非パーキング位置P2において、パークロックアーム77よりも右側(-Y側)に位置する。パークロックアーム77がパークロックギヤ53から外れることで、パークロックギヤ53は、アンロック状態となる。これにより、車軸の回転のロックが解除される。図7に示すように、非パーキング位置P2においてパークロックアーム77は、筒部材72dによって下側から支持される。
【0057】
ここで、図7から図9に示すように、本実施形態においては、支持部73は、非パーキング位置P2からパーキング位置P1に移動する場合、パークロックアーム77よりも右側(-Y側)の位置から左側(+Y側)に移動して、パークロックアーム77とガイド部材75との鉛直方向Zの間に入り込む。このとき、本実施形態によれば、パークロックアーム77の端部77cが傾斜部77dを有するため、パークロックアーム77とガイド部材75との鉛直方向Zの間に支持部73が入り込みやすい。これにより、支持部73によってパークロックアーム77を移動させることが容易である。
【0058】
図6に示すように、ガイド部材75は、可動部材70aを左右方向Yに移動可能に支持する。本実施形態においてガイド部材75は、可動部材70aを下側から支持する。ガイド部材75は、ハウジング10の内側面に固定される。より詳細には、ガイド部材75は、ギヤハウジング12の内側面に固定される。ガイド部材75は、基部75aと、接触部75bと、腕部75cと、嵌合凸部75fと、位置決め部75dと、突起部75eと、を有する。
【0059】
図11に示すように、本実施形態において基部75aは、中心軸J6を中心とする円柱状である。接触部75bは、基部75aから上側に突出する。接触部75bは、可動部材70aに接触して可動部材70aを支持する部分である。本実施形態において接触部75bは、可動部材70aのうち支持部73あるいは筒部材72dに下側から接触して、可動部材70aを下側から支持する。接触部75bにおける可動部材70a側の面は、左右方向Yに沿って視て、可動部材70a側と逆側に凹となる円弧状の曲面75gである。そのため、テーパ面73cを有する支持部73を安定して支持できる。本実施形態において曲面75gは、接触部75bの上側の面であり、左右方向Yに沿って視て、下側に凹となる円弧状である。腕部75cは、中心軸J6を中心とする径方向において基部75aから外側に延びる。本実施形態において腕部75cは、基部75aから前側に延びる。腕部75cは、例えば、四角柱状である。
【0060】
嵌合凸部75fは、基部75aから左右方向Yに突出する。本実施形態において嵌合凸部75fは、基部75aから左側に突出する。嵌合凸部75fは、中心軸J6を中心とする円柱状である。嵌合凸部75fは、嵌合凹部12fに嵌め合わされる。これにより、ガイド部材75が、ハウジング10に対して、中心軸J6を中心とする径方向に位置決めされる。
【0061】
基部75aおよび嵌合凸部75fには、基部75aと嵌合凸部75fとを左右方向Yに貫通する貫通孔75hが設けられる。すなわち、ガイド部材75は、貫通孔75hを有する。貫通孔75hは、ガイド部材75を左右方向Yに貫通する。貫通孔75hは、左右方向Yに沿って視て、中心軸J6を中心とする円形状である。貫通孔75hには、右側からネジ90が通される。貫通孔75hに通されたネジ90は、雌ネジ穴12gに締め込まれる。これにより、ガイド部材75は、ハウジング10に対して、左右方向Yに位置決めされて、固定される。
【0062】
ここで、ネジ90が雌ネジ穴12gに締め込まれる向きは、中心軸J6を中心として右側から視て時計回りの向きである。すなわち、ネジ90が雌ネジ穴12gに締め込まれる向きは、周方向θの正の向き、すなわち適宜図に示す周方向θの矢印の向きである。
【0063】
位置決め部75dは、中心軸J6を中心とする径方向において、基部75aよりも外側に位置する。位置決め部75dは、ハウジング10の内側面のうち中心軸J6を中心とする周方向θに対向する部分と接触する。これにより、ガイド部材75は、ハウジング10に対して、周方向θに位置決めされる。
【0064】
このように、本実施形態によれば、ハウジング10の内側面を利用してガイド部材75を、中心軸J6を中心とする周方向θに位置決めできる。そのため、1本のネジ90によってガイド部材75を固定しつつ、ガイド部材75が中心軸J6回りに回転することを抑制できる。したがって、1本のネジ90のみによって、ガイド部材75をハウジング10に対して位置決めしつつ、かつ、強固に固定することができる。そのため、ガイド部材75をハウジング10に固定する際に、複数のネジを締め込む必要がなく、ガイド部材75を固定する手間を低減できる。これにより、駆動装置1において、パーキング切替機構70をハウジング10の内部に配置する手間を低減できる。
【0065】
また、ガイド部材75を複数のネジで固定する場合に比べて、ガイド部材75を小さくしやすい。そのため、ハウジング10の内部においてガイド部材75を配置するための空間を小さくできる。また、ハウジング10にガイド部材75を固定するための固定部12eを複数設ける必要がない。そのため、ハウジング10の形状の自由度を向上させることができる。
【0066】
また、本実施形態によれば、ガイド部材75には、嵌合凹部12fに嵌め合わされる嵌合凸部75fが設けられる。そのため、ガイド部材75が中心軸J6を中心とする径方向に移動することを抑制できる。これにより、1本のネジ90のみによって、ガイド部材75をハウジング10に対して位置精度よく固定できる。
【0067】
本実施形態において位置決め部75dは、腕部75cに設けられる。そのため、位置決め部75dを、中心軸J6を中心とする径方向において基部75aよりも外側に配置することが容易である。本実施形態では、左右方向Yおよび腕部75cが延びる前後方向Xの両方と直交する鉛直方向Zにおいて、位置決め部75dは、腕部75cの下側の面に設けられる。本実施形態において位置決め部75dは、腕部75cから鉛直方向Zに突出する。そのため、位置決め部75dをハウジング10の内側面に接触させやすく、ガイド部材75を、周方向θに位置決めしやすい。本実施形態において位置決め部75dは、腕部75cの先端部から下側に突出する。位置決め部75dの左右方向Yの寸法は、例えば、腕部75cの左右方向Yの寸法と同じである。
【0068】
本実施形態において位置決め部75dが接触するハウジング10の内側面は、位置決め面12hである。位置決め面12hは、周壁部12cの内側面のうち下側に位置する部分における前側の端部である。位置決め面12hは、上側を向く平坦な面である。位置決め面12hは、鉛直方向Zと直交する。位置決め面12hは、左右方向Yに延びる。図4に示すように、位置決め面12hは、周壁部12cの内側面のうち下側に位置する部分の他の部分よりも上側に突出する。
【0069】
図11に示すように、位置決め面12hは、位置決め部75dに対して、周方向θにおけるネジ90が締め込まれる向きの側(+θ側)に位置する。これにより、位置決め部75dは、ハウジング10の内側面のうち、周方向θにおけるネジ90が締め込まれる向きの側に対向する部分と接触する。そのため、ネジ90を締め込む際にガイド部材75が共回りする場合であっても、ガイド部材75が共回りする向きは、位置決め部75dが位置決め面12hに押し付けられる向きとなる。これにより、ネジ90を締め込む際に、位置決め部75dが位置決め面12hから離れることを抑制できる。したがって、ガイド部材75を周方向θに精度よく位置決めしたまま、ネジ90によってガイド部材75を容易に固定できる。また、例えば、ガイド部材75の共回りを利用することで、ネジ90を締め込む際に、同時にガイド部材75を周方向θに位置決めすることもできる。
【0070】
図6に示すように、突起部75eは、腕部75cの先端部から中心軸J6を中心とする径方向の外側に突出する。本実施形態において突起部75eは、腕部75cの前側(+X側)の端部のうち右側(-Y側)の部分から前側に突出する。
【0071】
板バネ部材76は、ガイド部材75に固定される。本実施形態において板バネ部材76は、腕部75cの上側の面に固定される。板バネ部材76は、板バネ本体部76aと、突出部76bと、回り止め部76cと、を有する。
【0072】
板バネ本体部76aは、板面が鉛直方向Zを向く板状である。板バネ本体部76aは、腕部75cから右側(-Y側)に延びる。板バネ本体部76aは、ロッド連結部71の下側まで延びる。板バネ本体部76aの左側(+Y側)の端部は、腕部75cにネジ91で固定される。板バネ本体部76aは、右側の部分にスリット76dを有する。スリット76dは、板バネ本体部76aを鉛直方向Zに貫通する。スリット76dは、左右方向Yに延びる。スリット76dには、ロッド連結部71の下側の端部のうち左側の部分が挿入される。
【0073】
突出部76bは、板バネ本体部76aから上側に突出する。より詳細には、突出部76bは、板バネ本体部76aの右側(-Y側)の端部から上側に突出する。突出部76bは、可動部材70aがパーキング位置P1に位置する場合において、凹部71aに挿入され、凹部71aの内側面に対して左右方向Yに引っ掛けられる。これにより、ロッド連結部71およびロッド72をパーキング位置P1に維持できる。
【0074】
特に、本実施形態のようにコイルバネ74が設けられる場合、噛合部77bが歯部53aに接触してコイルバネ74が圧縮変形することで生じる弾性力による反力が、ロッド72およびロッド連結部71に対して、右向き(-Y向き)に加えられる。本実施形態によれば、このような場合であっても、突出部76bが凹部71aに引っ掛かることで、ロッド連結部71が右側(-Y側)に移動することを抑制できる。したがって、ロッド連結部71およびロッド72を安定してパーキング位置P1に維持できる。
【0075】
一方、電動アクチュエータ80によってマニュアルシャフト81が回転されてロッド連結部71がパーキング位置P1から非パーキング位置P2に移動する際には、板バネ本体部76aは、ロッド連結部71によって下側に押されて弾性変形する。これにより、突出部76bが凹部71aから外れる。ここで、板バネ本体部76aが弾性変形すると、その弾性力による反力が、板バネ本体部76aが固定される腕部75cに加えられる。本実施形態では、板バネ部材76は、腕部75cの上側の面に固定される。そして、板バネ本体部76aの弾性力による反力は、腕部75cの上側の面に対して、下向きに加えられる。
すなわち、板バネ本体部76aの弾性力による反力は、腕部75cの下側の面に設けられた位置決め部75dが位置決め面12hに押し付けられる向きに加えられる。これにより、板バネ部材76が弾性変形しても、ネジ90が緩むことを抑制でき、かつ、位置決め部75dが位置決め面12hから離れることを抑制できる。
【0076】
突出部76bは、可動部材70aが非パーキング位置P2に位置する場合において、凹部71bに挿入され、凹部71bの内側面に対して左右方向Yに引っ掛けられる。これにより、ロッド連結部71およびロッド72を非パーキング位置P2に維持できる。
【0077】
回り止め部76cは、板バネ本体部76aの左側(+Y側)の端部における前側(+X側)の縁部から下側に突出する。回り止め部76cは、腕部75cの先端部の前側に位置する。回り止め部76cは、左側から突起部75eに引っ掛かる。これにより、板バネ部材76をネジ91で固定する際に、板バネ部材76が共回ることを抑制できる。したがって、板バネ部材76の位置がずれることを抑制できる。
【0078】
パーキング切替機構70の切り替え制御は、電動アクチュエータ80の制御部84によって行われる。制御部84は、パーキング切替機構70の切り替え制御が初めて行われる前に、可動部材70aを非パーキング位置P2からパーキング位置P1に移動させるために必要なシフトモータ82の回転角度φを決定する。本実施形態においてシフトモータ82の回転角度φは、可動部材70aが非パーキング位置P2に位置する際のシフトモータ82の回転位置をゼロとする。
【0079】
制御部84は、図7に示す非パーキング位置P2から図10に示す位置まで可動部材70aを左側に移動させ、可動部材70aの左側の端部をハウジング10の内壁面10aに突き当てる。制御部84は、パークロックアーム77とパークロックギヤ53との噛み合いが外れた非パーキング位置P2から可動部材70aの左側の端部が内壁面10aに突き当たるまで移動させた際のシフトモータ82の回転角度φである第1回転角度φ1をエンコーダ83によって検出する。図10に示すように、可動部材70aの左側の端部がハウジング10の内壁面10aに接触する位置において、パークロックアーム77は、第1部分73aに下側から支持されて、パークロックギヤ53に噛み合う。
【0080】
本実施形態において内壁面10aは、ギヤハウジング12における側壁部12dの内側面である。制御部84は、例えば、図示しないトルクセンサ等によってシフトモータ82に加えられる負荷が増大したことを検出して、可動部材70aが内壁面10aに突き当たったことを検出する。
【0081】
可動部材70aを非パーキング位置P2に位置させるために必要な情報は、例えば、予め制御部84に記憶されている。これにより、制御部84は、シフトモータ82を制御して、可動部材70aを非パーキング位置P2に位置させることができる。可動部材70aを非パーキング位置P2に位置させるために必要な情報は、例えば、シフトモータ82の回転角度φがゼロとなるシフトモータ82の回転位置を含む。なお、駆動装置1が組み立てられる際、パーキング切替機構70は、例えば、可動部材70aが非パーキング位置P2に位置した状態で組み付けられてもよい。
【0082】
制御部84は、検出した第1回転角度φ1に基づいて、第1回転角度φ1よりも小さい第2回転角度φ2を算出する。具体的に制御部84は、制御部84に記憶された所定誤差値と安全率とから第2回転角度φ2を算出する。所定誤差値は、推定される可動部材70aと内壁面10aとの左右方向Yの相対位置の最大ずれ量と同じ量だけ、可動部材70aを左右方向Yに移動させる際のシフトモータ82の回転角度量である。所定誤差値は、駆動装置1の組立公差、駆動装置1の各部の寸法公差、および電動アクチュエータ80による可動部材70aの位置決め公差等に基づいて決定される。第2回転角度φ2は、所定誤差値に安全率を乗じた値を第1回転角度φ1から減じた値である。
【0083】
図7に示すように、本実施形態において、シフトモータ82を第1回転角度φ1と第2回転角度φ2との差だけ回転させた際における可動部材70aの左右方向Yの移動量L3は、第1部分73aの左右方向Yの寸法L1よりも小さい。第1回転角度φ1と第2回転角度φ2との差は、所定誤差値に安全率を乗じた値である。移動量L3は、パーキング位置P1における可動部材70aの左側の端部と内壁面10aとの間の左右方向Yの距離である。
【0084】
制御部84は、第2回転角度φ2を目標値としてシフトモータ82を回転させることで、可動部材70aを非パーキング位置P2からパークロックアーム77がパークロックギヤ53に噛み合うパーキング位置P1に移動させることができる。
【0085】
本実施形態において制御部84は、2段階の制御によってシフトモータ82を第2回転角度φ2まで回転させる。図12に示すように、シフトモータ82をゼロから第2回転角度φ2まで回転させる期間は、第1制御期間CP1と、第2制御期間CP2と、を含む。図12において縦軸は回転角度φであり、横軸は時間tである。図12において時間tは、非パーキング位置P2からパーキング位置P1へと可動部材70aを移動させ始めた開始時刻をゼロとする。
【0086】
第1制御期間CP1において制御部84は、第2回転角度φ2よりも小さい第3回転角度φ3を目標値としてオープンループ制御によってシフトモータ82を回転させる。本実施形態において第3回転角度φ3は、可動部材70aにおける左側の端部の位置が図8に示す位置P3となる場合のシフトモータ82の回転角度φである。図8に示すように、位置P3においてパークロックアーム77は、筒部材72dの右側の端部によって下側から支持される。本実施形態においてシフトモータ82を第2回転角度φ2と第3回転角度φ3との差だけ回転させた際における可動部材70aの左右方向Yの移動量L4は、第2部分73bの左右方向Yの寸法L2以上である。図7に示すように、移動量L4は、可動部材70aの左側の端部における位置P3とパーキング位置P1との間の左右方向Yの距離である。本実施形態において移動量L4は、第2部分73bの左右方向Yの寸法L2よりも大きい。
【0087】
図12に示すように、第1制御期間CP1において回転角度φは、例えば、線形に変化する。制御部84は、エンコーダ83によって回転角度φが第3回転角度φ3になったことを検出した場合に、制御を切り替えて、制御期間を第1制御期間CP1から第2制御期間CP2に移行させる。
【0088】
第2制御期間CP2において制御部84は、第2回転角度φ2を目標値としてフィードバック制御によってシフトモータ82を回転させる。本実施形態において制御部84は、エンコーダ83の測定値を用いてシフトモータ82をフィードバック制御する。第2制御期間CP2のフィードバック制御におけるフィードバックゲインは、比較的小さい。第2制御期間CP2において回転角度φは、例えば、第2回転角度φ2に対してオーバーシュートを起こさず滑らかに曲線的に変化する。制御部84は、エンコーダ83によって回転角度φが第2回転角度φ2になったことを検出した場合に、シフトモータ82の回転を停止する。これにより、制御部84は、可動部材70aをパーキング位置P1に移動させることができる。
【0089】
以上のようにして、本実施形態において制御部84は、第3回転角度φ3を目標値とするオープンループ制御によってシフトモータ82を回転させた後に、第2回転角度φ2を目標値とするフィードバック制御によってシフトモータ82を回転させることで、可動部材70aを非パーキング位置P2からパーキング位置P1に移動させる。
【0090】
なお、上述した可動部材70aを内壁面10aに突き当てて、第2回転角度φ2を算出する制御は、パーキング切替機構70を初めて切り替える前に少なくとも1回行われるならば、行われるタイミングは特に限定されない。第2回転角度φ2を算出する制御は、定期的に行われてもよい。
【0091】
例えば、可動部材70aをパーキング位置P1へと移動させるためのシフトモータ82の回転角度φの所定値が予め制御部84に記憶されている場合について考える。この場合、所定値が小さすぎると、組立公差等によるずれによって可動部材70aが十分に左側に移動しない場合がある。この場合、例えば、パークロックアーム77が支持部73における第2部分73bによって下側から支持された状態となり、パークロックアーム77がパークロックギヤ53と噛み合わない虞がある。一方、所定値が大きすぎると可動部材70aが内壁面10aに衝突して、パーキング切替機構70が損傷する虞がある。
【0092】
これに対して、本実施形態によれば、上述したように、制御部84によって可動部材70aを内壁面10aに突き当てることで、可動部材70aをパーキング位置P1へと移動させるために必要なシフトモータ82の回転角度φである第2回転角度φ2を得ることができる。そのため、第2回転角度φ2の値を、可動部材70aの位置がずれた場合であっても可動部材70aが内壁面10aに衝突することを好適に抑制できる範囲内で、かつ、可動部材70aをなるべく内壁面10aに近づけられる値にできる。これにより、可動部材70aの左側への移動が不十分となることを抑制でき、パーキング位置P1において支持部73の第1部分73aによってパークロックアーム77を下側から支持できる。したがって、パーキング切替機構70をロック状態に切り替えた際にパークロックアーム77がパークロックギヤ53に噛み合わないことを抑制できる。また、可動部材70aが左側に移動しすぎて内壁面10aに衝突することを抑制できる。以上により、本実施形態によれば、駆動装置1において、パーキング切替機構70が損傷することを抑制しつつ、車軸の回転をロックできないことを抑制できる。
【0093】
また、本実施形態によれば、シフトモータ82を第1回転角度φ1と第2回転角度φ2との差だけ回転させた際における可動部材70aの左右方向Yの移動量L3は、第1部分73aの左右方向Yの寸法L1よりも小さい。ここで、シフトモータ82を第1回転角度φ1だけ回転させたときの可動部材70aの位置は、可動部材70aの左側の端部が内壁面10aに接触し、パークロックアーム77が第1部分73aに下側から支持される位置である。そのため、第1部分73aの寸法L1よりも小さい移動量であれば、シフトモータ82を第1回転角度φ1だけ回転させたときの可動部材70aの位置から右側に移動させても、パークロックアーム77が第1部分73aによって下側から支持された状態を維持しやすい。したがって、移動量L3が第1部分73aの左右方向Yの寸法L1よりも小さくなる範囲内で第2回転角度φ2を決定することで、シフトモータ82を第2回転角度φ2だけ回転させた際に、よりパークロックアーム77が第1部分73aによって下側から支持される状態としやすい。そのため、パーキング切替機構70をロック状態に切り替えた際にパークロックアーム77がパークロックギヤ53に噛み合わないことをより抑制できる。したがって、車両の車軸の回転をロックできないことをより抑制できる。
【0094】
また、本実施形態によれば、制御部84は、第2回転角度φ2よりも小さい第3回転角度φ3を目標値とするオープンループ制御によってシフトモータ82を回転させた後に、第2回転角度φ2を目標値とするフィードバック制御によってシフトモータ82を回転させることで、可動部材70aを非パーキング位置P2からパーキング位置P1に移動させる。そのため、シフトモータ82の回転角度φが第3回転角度φ3になるまでの間は、オープンループ制御によって、フィードバック制御を行う場合よりも可動部材70aを速く移動させることができる。一方、回転角度φが第3回転角度φ3よりも大きくなった場合には、フィードバック制御によって位置精度よく可動部材70aを移動させることができる。これにより、パーキング切替機構70をアンロック状態からロック状態へと切り替える際の時間を短くしつつ、可動部材70aを位置精度よくパーキング位置P1に移動させることができる。
【0095】
また、本実施形態によれば、シフトモータ82を第2回転角度φ2と第3回転角度φ3との差だけ回転させた際における可動部材70aの左右方向Yの移動量L4は、第2部分73bの左右方向Yの寸法L2以上である。そのため、第3回転角度φ3を比較的小さくでき、第1制御期間CP1から第2制御期間CP2に切り替わるタイミングを比較的早くできる。すなわち、フィードバック制御に切り替わるタイミングを比較的早くすることができる。これにより、フィードバック制御が行われる第2制御期間CP2の長さを比較的長くでき、第2制御期間CP2内でより滑らかに回転角度φを変化させることができる。したがって、オープンループ制御からフィードバック制御に切り替わった際に、急激にシフトモータ82の回転速度が変化することを抑制でき、シフトモータ82の回転速度の急激な変化による衝撃が生じることを抑制できる。
【0096】
本発明は上述の実施形態に限られず、他の構成を採用することもできる。制御部84は、図13に示すようにしてシフトモータ82を制御してもよい。図13の第1制御期間CP1aにおいて制御部84は、第3回転角度φ3を目標値としてフィードバック制御によってシフトモータ82を回転させる。制御部84は、回転角度φの値が第3回転角度φ3に対して±Δφの範囲内となった場合に、制御を切り替えて、制御期間を第1制御期間CP1aから第2制御期間CP2に移行させる。すなわち、図13の制御方法において制御部84は、第3回転角度φ3を目標値とするフィードバック制御によってシフトモータ82を回転させた後に、第2回転角度φ2を目標値とするフィードバック制御によってシフトモータ82を回転させることで、可動部材70aを非パーキング位置P2からパーキング位置P1に移動させる。この構成によれば、可動部材70aを非パーキング位置P2からパーキング位置P1まで移動させる際のシフトモータ82の制御全体をフィードバック制御とできる。そのため、可動部材70aをより位置精度よく移動させることができる。
【0097】
第1制御期間CP1aにおけるフィードバック制御のフィードバックゲインは、第2制御期間CP2におけるフィードバック制御のフィードバックゲインよりも大きい。すなわち、第3回転角度φ3を目標値とするフィードバック制御におけるフィードバックゲインは、第2回転角度φ2を目標値とするフィードバック制御におけるフィードバックゲインよりも大きい。そのため、第1制御期間CP1aの長さを比較的短くできる。これにより、フィードバック制御によって可動部材70aを位置精度よく移動させつつ、パーキング切替機構70をアンロック状態からロック状態へと切り替える際の時間を短くできる。
【0098】
第3回転角度φ3は、可動部材70aを内壁面10aに突き当てる制御によらずに、予め制御部84に記憶されていてもよい。制御部84は、第3回転角度φ3を目標値とする制御を行わずに、初めから第2回転角度φ2を目標値とした制御を行うことで、可動部材70aを非パーキング位置P2からパーキング位置P1に移動させてもよい。制御部84は、パーキング切替機構70を切り替える際に、フィードバック制御を行わずに、オープンループ制御のみでシフトモータ82を回転させてもよい。
【0099】
制御部84は、可動部材70aを内壁面10aに突き当てた際のシフトモータ82の回転位置に基づいて、可動部材70aが非パーキング位置P2となるシフトモータ82の回転位置を算出してもよい。この場合、制御部84は、可動部材70aを内壁面10aに突き当てた際のシフトモータ82の回転位置から所定回転角度だけ逆回転させた位置を回転角度φがゼロとなる位置とし、第1回転角度φ1および第2回転角度φ2を算出する。所定回転角度は、例えば、シフトモータ82を所定回転角度だけ回転させた際の可動部材70aの左右方向Yの移動量が、支持部73の左右方向Yの寸法以上となる値である。所定回転角度は、例えば、予め制御部84に記憶されている。このようにして非パーキング位置P2を算出することで、非パーキング位置P2において車軸がロックされることを抑制できる。
【0100】
第1方向と第2方向とは、互いに直交していれば、特に限定されない。本明細書において説明した各構成は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0101】
1…駆動装置、10…ハウジング、10a…内壁面、20…モータ、52…第2のギヤ(ギヤ)、53…パークロックギヤ、70…パーキング切替機構、70a…可動部材、73…支持部、73a…第1部分、73b…第2部分、77…パークロックアーム、77c…端部、80…電動アクチュエータ、82…シフトモータ、83…エンコーダ、84…制御部、100…伝達機構、P1…パーキング位置、P2…非パーキング位置、φ…回転角度、φ1…第1回転角度、φ2…第2回転角度、φ3…第3回転角度
図1
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図6
図7
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図10
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図13