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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】層転写装置
(51)【国際特許分類】
   B65C 9/18 20060101AFI20230829BHJP
   B65H 20/00 20060101ALI20230829BHJP
   G03G 15/01 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
B65C9/18
B65H20/00 Z
G03G15/01 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019175540
(22)【出願日】2019-09-26
(65)【公開番号】P2021051262
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 達也
(72)【発明者】
【氏名】板橋 奈緒
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-045653(JP,A)
【文献】特開平7-290685(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65C 1/00-11/06
G03G15/01
B65H20/00-20/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに転写層を転写する層転写装置であって、
開口を有する筐体本体と、
前記開口を通して前記筐体本体に着脱可能であり、前記転写層と、前記転写層を支持する支持層と、を有する多層フィルムを支持する層転写用フィルムカートリッジと、を備え、
前記層転写用フィルムカートリッジは、前記多層フィルムに接触して、前記多層フィルムの進行方向を変更するフィルム案内部材を備え、
前記筐体本体は、シートに前記転写層が転写された多層フィルムを前記フィルム案内部材とともにシートの搬送方向とは異なる方向に案内することで多層フィルムをシートから剥離させる案内軸であって、多層フィルムをシートから剥離させる第1位置と、前記層転写用フィルムカートリッジが前記筐体本体に装着された状態において前記第1位置よりも前記層転写用フィルムカートリッジの前記フィルム案内部材から遠い第2位置との間で移動可能な案内軸を備え
前記第1位置に位置する前記案内軸は、前記層転写用フィルムカートリッジの着脱方向に投影したときに前記層転写用フィルムカートリッジと重なり、
前記第2位置に位置する前記案内軸は、前記着脱方向に投影したときに前記層転写用フィルムカートリッジとは重ならないことを特徴とする層転写装置。
【請求項2】
前記筐体本体は、前記案内軸を保持する保持部材をさらに備え、
前記保持部材は、前記筐体本体に回動可能に支持されていることを特徴とする請求項に記載の層転写装置。
【請求項3】
前記開口を開閉するカバーをさらに備え、
前記カバーが閉まる場合に、前記案内軸が前記第2位置から前記第1位置に移動することを特徴とする請求項に記載の層転写装置。
【請求項4】
前記カバーが閉まる過程において、前記カバーが前記保持部材を押圧することで、前記案内軸が前記第2位置から前記第1位置に移動することを特徴とする請求項に記載の層転写装置。
【請求項5】
前記保持部材は、
前記筐体本体に回動可能に支持される第1アームであって、前記案内軸の一端を支持する第1アームと、
前記筐体本体に回動可能に支持される第2アームであって、前記案内軸の他端を支持する第2アームと、
前記第1アームに形成される第1レバーであって、前記案内軸に沿った軸方向において、前記第1アームに対して前記第2アームとは反対側に位置する第1レバーと、
前記第2アームに形成される第2レバーであって、前記軸方向において、前記第2アームに対して前記第1アームとは反対側に位置する第2レバーと、を有し、
前記カバーが閉まる過程において、前記カバーが前記第1レバーおよび前記第2レバーを押圧することで、前記案内軸が前記第2位置から前記第1位置に移動することを特徴とする請求項に記載の層転写装置。
【請求項6】
前記筐体本体から前記層転写用フィルムカートリッジが外れる過程において、前記案内軸が前記第1位置から前記第2位置に移動することを特徴とする請求項4または請求項に記載の層転写装置。
【請求項7】
前記筐体本体から前記層転写用フィルムカートリッジが外れる過程において、前記層転写用フィルムカートリッジが前記保持部材を押圧することで、前記案内軸が前記第1位置から前記第2位置に移動することを特徴とする請求項に記載の層転写装置。
【請求項8】
前記案内軸を前記第1位置から前記第2位置に向けて付勢するバネをさらに備えることを特徴とする請求項または請求項に記載の層転写装置。
【請求項9】
前記筐体本体は、
前記多層フィルムに接触して、前記多層フィルムの進行方向を変更する第1案内軸と、
前記第1案内軸で案内された前記多層フィルムに接触して、前記多層フィルムの進行方向を変更する第2案内軸と、を備え、
記案内軸は、前記第2案内軸であことを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の層転写装置。
【請求項10】
前記層転写用フィルムカートリッジは、
前記多層フィルムが巻回される供給リールと、
前記多層フィルムを巻き取るための巻取リールと、を備え、
前記フィルム案内部材は、前記巻取リールの回転軸に沿った軸方向に延びるシャフトであって、前記供給リールとの距離が変わる方向に移動不能なシャフトであることを特徴とする請求項に記載の層転写装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに転写層を転写する層転写装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、層転写装置の筐体に着脱可能な層転写用フィルムカートリッジとして、多層フィルムが巻回された供給リールと、多層フィルムを巻き取るための巻取リールとを備えるものが知られている(特許文献1参照)。この技術では、多層フィルムの進行方向を変更するために多層フィルムを案内する構造が層転写用フィルムカートリッジに設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-290685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、本願発明者は、多層フィルムを案内するための構造の一部を、層転写装置の筐体に設け、多層フィルムを案内する構造の残りを層転写用フィルムカートリッジに設けることで、層転写用フィルムカートリッジの軽量化を図ることを考えている。しかしながら、この場合には、層転写用フィルムカートリッジの着脱時に、層転写用フィルムカートリッジに設けた構造が、筐体に設けた構造と干渉するおそれがあり、設計の自由度が制限されるという問題が生じる。
【0005】
そこで、本発明は、設計の自由度を高めることができる層転写装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明に係る層転写装置は、シートに転写層を転写する層転写装置であって、開口を有する筐体本体と、前記開口を通して前記筐体本体に着脱可能であり、前記転写層と、前記転写層を支持する支持層と、を有する多層フィルムを支持する層転写用フィルムカートリッジと、を備える。
前記筐体本体は、前記多層フィルムを案内する案内軸であって、第1位置と、前記層転写用フィルムカートリッジが前記筐体本体に装着された状態において前記第1位置よりも前記層転写用フィルムカートリッジの一部から遠い第2位置との間で移動可能な案内軸を備える。
【0007】
この構成によれば、層転写用フィルムカートリッジを着脱する際に、案内軸を第2位置に移動させることで、層転写用フィルムカートリッジが案内軸と干渉するのを抑制することができる。これにより、設計の自由度を高めることができる
【0008】
また、前記第1位置に位置する前記案内軸は、前記案内軸に沿った軸方向に直交する方向に投影したときに前記層転写用フィルムカートリッジの一部と重なり、前記第2位置に位置する前記案内軸は、前記案内軸に沿った軸方向に直交する方向に投影したときに前記層転写用フィルムカートリッジの一部とは重ならないように構成されていてもよい。
【0009】
また、前記筐体本体は、前記案内軸を保持する保持部材をさらに備え、前記保持部材は、前記筐体本体に回動可能に支持されていてもよい。
【0010】
また、前記層転写装置は、前記開口を開閉するカバーをさらに備え、前記カバーが閉まる場合に、前記案内軸が前記第2位置から前記第1位置に移動してもよい。
【0011】
これによれば、カバーが閉まると案内軸が第1位置に移動するので、転写層をシートに転写する際において、案内軸を確実に適正な位置に配置させておくことができる。
【0012】
また、前記カバーが閉まる過程において、前記カバーが前記保持部材を押圧することで、前記案内軸が前記第2位置から前記第1位置に移動してもよい。
【0013】
また、前記保持部材は、前記筐体本体に回動可能に支持される第1アームであって、前記案内軸の一端を支持する第1アームと、前記筐体本体に回動可能に支持される第2アームであって、前記案内軸の他端を支持する第2アームと、前記第1アームに形成される第1レバーであって、前記案内軸に沿った軸方向において、前記第1アームに対して前記第2アームとは反対側に位置する第1レバーと、前記第2アームに形成される第2レバーであって、前記軸方向において、前記第2アームに対して前記第1アームとは反対側に位置する第2レバーと、を有し、前記カバーが閉まる過程において、前記カバーが前記第1レバーおよび前記第2レバーを押圧することで、前記案内軸が前記第2位置から前記第1位置に移動してもよい。
【0014】
また、前記筐体本体から前記層転写用フィルムカートリッジが外れる過程において、前記案内軸が前記第1位置から前記第2位置に移動してもよい。
【0015】
層転写用フィルムカートリッジが外れる過程において案内軸が第2位置に移動するので、次に層転写用フィルムカートリッジを装着する際に、案内軸が邪魔になるのを抑えることができる。
【0016】
また、前記筐体本体から前記層転写用フィルムカートリッジが外れる過程において、前記層転写用フィルムカートリッジが前記保持部材を押圧することで、前記案内軸が前記第1位置から前記第2位置に移動してもよい。
【0017】
また、前記案内軸を前記第1位置から前記第2位置に向けて付勢するバネをさらに備えていてもよい。
【0018】
これによれば、カバーが閉まる際に、カバーが保持部材を押圧すると、案内軸がバネの付勢力に抗して第2位置から第1位置に移動する。そして、カバーが開く際には、カバーが保持部材から離れていくことで、バネの付勢力によって案内軸が第1位置から第2位置に移動する。そのため、層転写用フィルムカートリッジを取り外す際には、案内軸が層転写用フィルムカートリッジの取り外しの邪魔にならない位置に配置されるので、層転写用フィルムカートリッジを取り外す作業を容易に行うことができる。
【0019】
また、前記筐体本体は、前記多層フィルムに接触して、前記多層フィルムの進行方向を変更する第1案内軸と、前記第1案内軸で案内された前記多層フィルムに接触して、前記多層フィルムの進行方向を変更する第2案内軸と、を備え、前記層転写用フィルムカートリッジは、前記第2案内軸で案内された前記多層フィルムに接触して、前記多層フィルムの進行方向を変更するフィルム案内部材を備え、前記案内軸は、前記第2案内軸であり、前記層転写用フィルムカートリッジの前記一部は、前記フィルム案内部材であってもよい。
【0020】
また、前記層転写用フィルムカートリッジは、前記多層フィルムが巻回される供給リールと、前記多層フィルムを巻き取るための巻取リールと、を備え、前記フィルム案内部材は、前記巻取リールの回転軸に沿った軸方向に延びるシャフトであって、前記供給リールとの距離が変わる方向に移動不能なシャフトであってもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、層転写用フィルムカートリッジの着脱時に、層転写用フィルムカートリッジが案内軸に引っかかることを抑えることができるので、設計の自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係る層転写装置を示す図(a)と、多層フィルムの構成を示す断面図(b)である。
図2】層転写装置のカバーを開けた状態を示す図である。
図3】層転写用フィルムカートリッジと筐体本体を示す斜視図である。
図4】層転写用フィルムカートリッジを筐体本体に装着する動作を示す図である。
図5】第2案内軸が第2位置に位置する状態を示す図(a)と、第2案内軸が第1位置に位置する状態を示す図(b)である。
図6】層転写装置の変形例を示す図であり、第2案内軸が第2位置に位置する状態を示す図(a)と、第2案内軸が第1位置に位置する状態を示す図(b)である。
図7】第2変形例に係る層転写用フィルムカートリッジを示す斜視図(a)と断面図(b)である。
図8】第3変形例に係る層転写用フィルムカートリッジを示す斜視図(a)と断面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の一実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明においては、まず、層転写装置の全体構成を簡単に説明した後、本願発明の特徴部分の構成について説明する。
【0024】
図1(a)に示すように、層転写装置1は、例えばレーザプリンタ等の画像形成装置でシートSにトナー像を形成した後、シートSのトナー像の上にアルミニウム等の箔を有する転写層を転写するための装置である。つまり、層転写装置1は、シートSのトナー像の上に箔を転写することで、シートSに箔の画像を形成している。層転写装置1は、筐体2と、シート搬送部10と、フィルム供給部30と、転写部50とを備えている。
【0025】
筐体2は、樹脂などからなり、筐体本体21と、カバー22とを備えている。筐体本体21は、上部に開口21A(図2参照)を有している。開口21Aは、筐体本体21に後述する層転写用フィルムカートリッジFCを着脱するための開口である。カバー22は、開口21Aを開閉するための部材である。カバー22は、筐体本体21に回動可能に支持されている。カバー22は、開口21Aを閉じる閉位置(図1(a)の位置)と、開口21Aを開放する開位置(図2の位置)との間で回動可能となっている。
【0026】
シート搬送部10は、シート供給機構11と、シート排出機構12とを備えている。シート搬送部10は、後述するメインモータMによって回転駆動される。シート供給機構11は、図示せぬシートトレイ上のシートSを一枚ずつ転写部50に向けて搬送する機構である。
【0027】
シート排出機構12は、転写部50を通過したシートSを筐体2の外部に排出する機構である。
【0028】
フィルム供給部30は、シート供給機構11から搬送されたシートSに重ねるように多層フィルムFを供給する部分である。フィルム供給部30は、層転写用フィルムカートリッジFCと、第1案内軸41と、案内軸の一例としての第2案内軸42と、駆動源としてのメインモータMを備えている。第1案内軸41および第2案内軸42は、筐体本体21に設けられている(図2参照)。
【0029】
層転写用フィルムカートリッジFCは、図2に示すように、開口21Aを通して筐体本体21に着脱可能となっている。層転写用フィルムカートリッジFCは、多層フィルムFを支持するカートリッジであって、供給部310と、巻取部350と、フィルム案内部材の一例としてのシャフト43とを主に備えている。供給部310は、供給リール31を主に有する。巻取部350は、巻取リール35を主に有する。供給リール31には、多層フィルムFが巻回されている。
【0030】
図1(b)に示すように、多層フィルムFは、複数の層からなるフィルムである。詳しくは、多層フィルムFは、支持層F1と、被支持層F2とを有する。支持層F1は、高分子材料からなるテープ状の透明な基材であり、被支持層F2を支持している。被支持層F2は、例えば、剥離層F21と、転写層F22と、接着層F23とを有する。剥離層F21は、支持層F1から転写層F22を剥離しやすくするための層であり、支持層F1と転写層F22との間に配置されている。剥離層F21は、支持層F1から剥離しやすい透明な材料、例えばワックス系樹脂を含んでいる。
【0031】
転写層F22は、トナー像に転写される層であり、箔を含んでいる。箔とは、金、銀、銅、アルミニウム等の金属であって薄く延された金属である。また、転写層F22は、金色、銀色、赤色などの着色材料と、熱可塑性樹脂とを含む。転写層F22は、剥離層F21と接着層F23との間に配置されている。
【0032】
接着層F23は、転写層F22をトナー像に接着しやすくするための層である。接着層F23は、後述する転写部50によって加熱されたトナー像に付着しやすい材料、例えば塩化ビニル系樹脂やアクリル系樹脂を含んでいる。
【0033】
供給リール31は、樹脂などからなり、多層フィルムFが巻回される供給軸部31Aを有している。供給軸部31Aには、多層フィルムFの一端が固定されている。
【0034】
巻取リール35は、樹脂などからなり、多層フィルムFを巻き取るための巻取軸部35Aを有している。巻取軸部35Aには、多層フィルムFの他端が固定されている。巻取軸部35Aは、メインモータMによって回転駆動される。
【0035】
なお、層転写用フィルムカートリッジFCが新品の状態においては、供給リール31に巻回されたロール状の多層フィルムFの径は最大となっており、巻取リール35には多層フィルムFが巻回されていない、もしくは、巻取リール35に巻回されたロール状の多層フィルムFの径は最小となっている。また、層転写用フィルムカートリッジFCの寿命時(多層フィルムFを使い切ったとき)においては、巻取リール35に巻回されたロール状の多層フィルムFの径は最大となり、供給リール31には多層フィルムFが巻回されていない、もしくは、供給リール31に巻回されたロール状の多層フィルムFの径は最小となる。
【0036】
第1案内軸41は、多層フィルムFを案内する軸である。詳しくは、第1案内軸41は、供給リール31から引き出される多層フィルムFに接触して、多層フィルムFの進行方向を変更する。第1案内軸41は、SUS(ステンレス鋼)からなっている。
【0037】
第2案内軸42は、多層フィルムFを案内する軸である。詳しくは、第2案内軸42は、第1案内軸41で案内された多層フィルムFに接触して、多層フィルムFの進行方向を変更する。第2案内軸42は、SUSからなっている。
【0038】
層転写用フィルムカートリッジFCが筐体本体21に装着された状態において、第1案内軸41および第2案内軸42は、多層フィルムFの面のうち支持層F1によって形成される第1面FA(図1(b)参照)に接触している。また、層転写用フィルムカートリッジFCが筐体本体21に装着された状態において、第1案内軸41と第2案内軸42の間に張架される多層フィルムFの面のうち第1面FAと反対側の面であって、転写層F22を含む被支持層F2によって形成される第2面FB(図1(b)参照)が、シート搬送部10によって搬送されるシートSや、加圧ローラ51と、接触する。
【0039】
シャフト43は、シートSから多層フィルムFを剥離させるときの多層フィルムFの角度を調整するためのSUSなどからなる部材であり、多層フィルムFの第2面FBに接触している。シャフト43は、第2案内軸42で案内された多層フィルムFに接触して、多層フィルムFの進行方向を変更する。シャフト43は、軸方向に延びている。シャフト43が第2案内軸42と巻取リール35の間で張架される多層フィルムFの第2面FBに押し当てられることで、第2案内軸42で案内された多層フィルムFの進行方向が変更され、第2案内軸42を起点に折り曲げられた多層フィルムFの角度(以下、「剥離角度」ともいう。)がより鋭角となるように調整されている。詳しくは、剥離角度は、多層フィルムFのうち、第1案内軸41と第2案内軸42の間で張架される部分と、第2案内軸42とシャフト43の間で張架される部分とのなす角である。剥離角度が鋭角であるほど、すなわち、剥離角度が小さいほど、第2案内軸42を通過したシートSが多層フィルムFから剥離しやすくなる。なお、第1案内軸41および第2案内軸42は、筐体本体21に回転可能に支持されてもよいし、回転不能に支持されてもよい。また、シャフト43は、後述する支持部材90に、回転可能に支持されてもよいし、回転不能に支持されてもよい。
【0040】
第1案内軸41は、トナー像が形成された面を下にした状態で搬送されるシートSに対して、供給リール31から引き出された多層フィルムFを下から重ねるように案内している。第1案内軸41は、供給リール31から引き出された多層フィルムFの搬送方向を変えて、シートSの搬送方向と略平行に多層フィルムFを案内する。
【0041】
第2案内軸42は、転写部50を通過した多層フィルムFと接触し、転写部50を通過した多層フィルムFの搬送方向をシートSの搬送方向とは異なる方向に変更することで、多層フィルムFをシートSから離れる方向に案内する剥離ローラである。転写部50を通過してシートSと重なった状態で搬送された多層フィルムFは、第2案内軸42を通過する際にシートSとは異なる方向に案内され、シートSから剥離される。
【0042】
転写部50は、シートSと多層フィルムFを重ねた状態で加熱および加圧することで、シートSに形成されたトナー像の上に転写層F22を転写するための部分である。転写部50は、加圧ローラ51と、加熱ローラ61とを備えている。転写部50は、加圧ローラ51と加熱ローラ61のニップ部において、シートSと多層フィルムFを重ねて加熱および加圧する。
【0043】
加圧ローラ51は、円筒状の芯金の周囲をシリコンゴムからなるゴム層で被覆したローラである。加圧ローラ51は、多層フィルムFの上側に配置され、シートSの裏面(トナー像が形成された面と反対側の面)と接触可能となっている。
【0044】
加圧ローラ51は、両端部がカバー22に回転可能に支持されている。加圧ローラ51は、加熱ローラ61との間でシートSおよび多層フィルムFを挟み、メインモータMによって回転駆動されることで加熱ローラ61を従動回転させる。このように加圧ローラ51と加熱ローラ61との間でシートSおよび多層フィルムFを挟んだ状態で、加圧ローラ51および加熱ローラ61が回転することで、シートSおよび多層フィルムFが搬送される。
【0045】
加熱ローラ61は、円筒状に形成された金属管の内部にヒータを配置したローラであり、多層フィルムFおよびシートSを加熱している。加熱ローラ61は、多層フィルムFの下側に配置され、多層フィルムFの第1面FAと接触している。
【0046】
このように構成された層転写装置1では、シートSの表面を下向きにして図示せぬシートトレイに載置されたシートSが、シート供給機構11により一枚ずつ転写部50に向けて搬送される。シートSは、転写部50のシート搬送方向における上流側で、供給リール31から供給された多層フィルムFと重ねられ、シートSのトナー像と多層フィルムFが接触した状態で転写部50に搬送される。
【0047】
転写部50においては、シートSと多層フィルムFが加圧ローラ51と加熱ローラ61の間のニップ部を通過する際に、加熱ローラ61と加圧ローラ51により加熱および加圧され、トナー像の上に転写層F22が転写される。なお、以下の説明では、トナー像への転写層F22の転写を、単に「層転写」とも称する。
【0048】
層転写が行われた後、シートSと多層フィルムFは密着した状態で第2案内軸42まで搬送される。シートSと多層フィルムFが第2案内軸42を通過すると、多層フィルムFの搬送方向がシートSの搬送方向と異なる方向に変わるため、シートSから多層フィルムFが剥離される。
【0049】
シートSから剥離された多層フィルムFは、巻取リール35に巻き取られていく。一方、多層フィルムFが剥離されたシートSは、シート排出機構12によって、箔が転写された表面を下に向けた状態で、筐体2の外部に排出される。
【0050】
図3に示すように、層転写用フィルムカートリッジFCは、前述した供給部310、巻取部350およびシャフト43の他、連結部70と、ハンドル80と、支持部材90とを備えている。供給部310は、前述した供給リール31の他、供給ケース32を有している。また、巻取部350は、前述した巻取リール35の他、巻取ケース36を備えている。なお、以下の説明では、供給リール31の回転軸X1に沿った第1軸方向または巻取リール35の回転軸X2に沿った第2軸方向を、単に「軸方向」とも称する。また、以下の説明では、回転軸X1,X2を結ぶ直線に沿った軸間方向を、単に「軸間方向」とも称する。
【0051】
供給ケース32は、供給リール31を収容するケースであり、中空の略円柱状に形成されている。詳しくは、供給ケース32は、供給リール31の供給軸部31Aに巻回された多層フィルムFを内部に収容している。供給リール31の供給軸部31Aは、供給ケース32の軸方向の各端面から外側に突出している。
【0052】
供給ケース32は、連結部70に対して回転軸X1回りに回転しないように、連結部70に係合または固定されている。供給ケース32は、外周面の一部に平面32Bを有している。平面32Bは、軸方向と軸間方向に延びている。平面32Bが筐体本体21の平面部分に接触することで、層転写用フィルムカートリッジFCが筐体本体21に支持される(図1参照)。供給リール31は、供給ケース32および連結部70に回転可能に支持されている。
【0053】
巻取ケース36は、巻取リール35を収容するケースであり、中空の円柱状に形成されている。詳しくは、巻取ケース36は、巻取リール35の巻取軸部35Aに巻回された多層フィルムFを内部に収容している。巻取リール35の巻取軸部35Aは、巻取ケース36の軸方向の各端面から外側に突出している。
【0054】
巻取ケース36は、連結部70に対して回転軸X2回りに回転しないように、連結部70に係合または固定されている。巻取リール35は、巻取ケース36および連結部70に回転可能に支持されている。巻取リール35は、前述した巻取軸部35Aと、巻取ギヤ35Cとを有している。巻取ギヤ35Cは、メインモータMからの駆動力を受けるギヤである。巻取ギヤ35Cは、巻取軸部35Aの軸方向における一端に設けられている。詳しくは、巻取軸部35Aの一部がD形状に成形されていて、巻取ギヤ35Cに開けられたD形状の穴と篏合することにより、巻取ギヤ35Cが巻取軸部35Aに対して回転不能に固定されている。
【0055】
連結部70は、供給部310と巻取部350とを連結する部材である。連結部70は、第1連結部71と、第2連結部72とを有している。第1連結部71および第2連結部72は、軸方向と直交する方向に延びている。詳しくは、第1連結部71および第2連結部72は、供給リール31の回転軸X1と巻取リール35の回転軸X2とを結ぶ直線に沿った軸間方向に長い長尺な板状に形成されている。第1連結部71および第2連結部72は、多層フィルムFから離れた位置に位置する。
【0056】
第1連結部71は、軸方向における供給部310の一端と、軸方向における巻取部350の一端とを連結している。具体的に、第1連結部71は、供給軸部31Aの一端と、巻取軸部35Aの一端とを連結している。詳しくは、第1連結部71は、軸間方向の両端に、供給軸部31Aや巻取軸部35Aが貫通する穴を有する。第1連結部71は、軸方向において、巻取ギヤ35Cと巻取ケース36との間に配置されている。
【0057】
第2連結部72は、軸方向における供給部310の他端と、軸方向における巻取部350の他端とを連結している。具体的に、第2連結部72は、供給軸部31Aの他端と、巻取軸部35Aの他端とを連結している。詳しくは、第2連結部72は、軸間方向の両端に、供給軸部31Aや巻取軸部35Aが貫通する穴を有する。
【0058】
供給ケース32および巻取ケース36は、軸方向において、第1連結部71と第2連結部72との間に配置されている。
【0059】
ハンドル80は、ユーザの指がフックされることを許容する部位である。ハンドル80は、第1ハンドル81と、第1ハンドル81から軸間方向に離れて配置される第2ハンドル82とを有している。
【0060】
第1ハンドル81は、樹脂などからなり、軸方向に延びるように供給部310に配置されている。詳しくは、第1ハンドル81は、供給ケース32に支持されている。第1ハンドル81は、供給ケース32の外周面から、回転軸X1に交差する方向、詳しくは直交する方向に突出している。
【0061】
第2ハンドル82は、樹脂などからなり、軸方向に延びるように巻取部350に配置されている。詳しくは、第2ハンドル82は、巻取ケース36に支持されている。第2ハンドル82は、巻取ケース36の外周面から、回転軸X1に交差する方向、詳しくは直交する方向に突出している。
【0062】
シャフト43は、巻取部350に配置されている。シャフト43は、軸方向に沿って延びる円形の軸形状を有している。シャフト43は、巻取リール35、詳しくは巻取ケース36から離れて配置されている。
【0063】
支持部材90は、シャフト43を支持する部材である。支持部材90は、第1側板91と、第2側板92とを有している。第1側板91および第2側板92は、巻取リール35の回転軸X2から巻取リール35の径方向外側に向けて延びる板状の部材であり、径方向外側に向かうにつれて先細となる略扇状に形成されている。第1側板91および第2側板92は、巻取軸部35Aが貫通する穴を有する。第1側板91および第2側板92は、巻取ケース36または連結部70に固定されている。これにより、シャフト43は、供給リール31との距離が変わる方向に移動不能となっている。
【0064】
第1側板91は、シャフト43の軸方向の一端を支持している。第1側板91は、軸方向において、巻取ケース36と第1連結部71との間に配置されている。
【0065】
第2側板92は、シャフト43の軸方向の他端を支持している。第2側板92は、軸方向において、巻取ケース36と第2連結部72との間に配置されている。
【0066】
層転写用フィルムカートリッジFCは、軸方向および軸間方向に直交する所定方向において、筐体本体21に着脱可能となっている。なお、以下の説明では、所定方向を、「着脱方向」とも称する。本実施形態では、軸方向および軸間方向に直交する方向を、着脱方向とするが、本発明はこれに限定されず、例えば、軸方向および軸間方向に直交する方向に対して多少傾いた角度(例えば、±20°の範囲内の角度)を向く方向を、着脱方向としてもよい。
【0067】
筐体本体21は、第1ガイドGD1と、第2ガイドGD2とを有している。第1ガイドGD1は、層転写用フィルムカートリッジFCが筐体本体21に着脱される際において、供給リール31の供給軸部31Aをガイドする溝である。第1ガイドGD1は、前述した着脱方向に沿って延び、当該着脱方向に供給軸部31Aをガイドしている。第1ガイドGD1は、軸方向において、筐体本体21の一端と他端にそれぞれ設けられている。
【0068】
第2ガイドGD2は、層転写用フィルムカートリッジFCが筐体本体21に着脱される際において、巻取リール35の巻取軸部35Aをガイドする溝である。第2ガイドGD2は、前述した着脱方向に沿って延び、当該着脱方向に巻取軸部35Aをガイドしている。第2ガイドGD2は、軸方向において、筐体本体21の一端と他端にそれぞれ設けられている。
【0069】
筐体本体21は、保持部材H1をさらに備えている。保持部材H1は、第2案内軸42を保持する部材である。ここで、層転写用フィルムカートリッジFCが筐体本体21に装着された状態において、第2案内軸42、加熱ローラ61および第1案内軸41は、軸方向に沿って延びている。
【0070】
保持部材H1は、筐体本体21に回動可能に支持されている。詳しくは、保持部材H1は、軸方向に沿った回動軸X3を中心に回動可能となっている。より詳しくは、本実施形態において、保持部材H1は、回動範囲内において、筐体本体21との摩擦力によってどの位置でも停止可能となっている。つまり、例えばユーザが保持部材H1を指でつまんで回動させて、第2案内軸42が第1位置と第2位置との間に位置する状態で保持部材H1から指を離しても、保持部材H1はその位置を維持する。
【0071】
保持部材H1は、樹脂などからなる。保持部材H1は、第1アームH11と、第2アームH12と、第1レバーH13と、第2レバーH14と、連結壁H15とを有している。
【0072】
第1アームH11は、着脱方向に沿って延びている。第1アームH11は、第2案内軸42の一端を保持している。詳しくは、第1アームH11の延びる方向において、第1アームH11の一端は、第2案内軸42の軸方向の一端を保持している。第1アームH11は、回動軸X3を中心にして筐体本体21に回動可能に支持されている。詳しくは、第1アームH11の延びる方向において、第1アームH11の他端は、回動軸X3を中心にして筐体本体21に回動可能に支持されている。
【0073】
第2アームH12は、着脱方向に沿って延びている。第2アームH12は、第2案内軸42の他端を保持している。詳しくは、第2アームH12の延びる方向において、第2アームH12の一端は、第2案内軸42の軸方向の他端を保持している。第2アームH12は、回動軸X3を中心にして筐体本体21に回動可能に支持されている。詳しくは、第2アームH12の延びる方向において、第2アームH12の他端は、回動軸X3を中心にして筐体本体21に回動可能に支持されている。
【0074】
第1レバーH13は、第1アームH11から第2案内軸42に沿った軸方向に突出するように形成されている。第1レバーH13は、第2案内軸42に沿った軸方向において、第1アームH11に対して第2アームH12とは反対側に位置している。言い換えると、第2案内軸42に沿った軸方向において、第1アームH11は、第1レバーH13と第2アームH12との間に位置している。
【0075】
第2レバーH14は、第2アームH12から第2案内軸42に沿った軸方向に突出するように形成されている。第2レバーH14は、第2案内軸42に沿った軸方向において、第2アームH12に対して第1アームH11とは反対側に位置している。言い換えると、第2案内軸42に沿った軸方向において、第2アームH12は、第2レバーH14と第1アームH11との間に位置している。
【0076】
連結壁H15は、第1アームH11と第2アームH12を連結している。第1アームH11と第2アームH12の延びる方向において、第2案内軸42の軸方向の両端をそれぞれ保持する第1アームH11および第2アームH12の一端は、連結壁H15からそれぞれ突出している。
【0077】
保持部材H1で保持された第2案内軸42は、2点鎖線で示す第1位置と、実線で示す第2位置との間で移動可能となっている。詳しくは、第2案内軸42は、第1位置と、第1位置よりも加熱ローラ61に近い第2位置との間で移動可能となっている。言い換えると、第2案内軸42は、図5(b)に示す第1位置と、層転写用フィルムカートリッジFCが筐体本体21に装着された状態において第1位置よりもシャフト43から遠い、図5(a)に示す第2位置との間で移動可能となっている。なお、筐体本体21には、第2案内軸42の移動範囲を第1位置から第2位置までの範囲に規制する図示せぬ規制部が設けられている。具体的に、規制部は、第2案内軸42が第1位置と第2位置の間でのみ移動できるように、保持部材H1の回動範囲を規制している。規制部は、第2案内軸42が第1位置に位置するときに保持部材H1と当接することにより、第1位置に位置する第2案内軸42が第2位置から第1位置へ向かう方向、すなわち加熱ローラ61から遠ざかる方向にさらに移動するのを止める。また、規制部は、第2案内軸42が第2位置に位置するときにも保持部材H1と当接し、第2位置に位置する第2案内軸42が第1位置から第2位置へ向かう方向、すなわち加熱ローラ61に近づく方向にさらに移動するのを止める。
【0078】
図5(b)に示すように、第1位置に位置する第2案内軸42は、着脱方向に投影したときに層転写用フィルムカートリッジFCの一部、詳しくはシャフト43と重なっている。これにより、第2案内軸42が第1位置に位置するときには、第2案内軸42での多層フィルムFの剥離角度を適正な角度にすることが可能となっている。適正な角度とは、90°未満の角度のことを指す。
【0079】
また、第2案内軸42が第1位置に位置するときには、保持部材H1は、着脱方向に投影したときに、支持部材90と重なっている。これにより、第2案内軸42が第1位置に位置する状態で、層転写用フィルムカートリッジFCを筐体本体21から取り外す場合には、支持部材90で保持部材H1が持ち上げられることで、第2案内軸42が第1位置から第2位置に移動する。つまり、筐体本体21から層転写用フィルムカートリッジFCが外れる過程において、層転写用フィルムカートリッジFCが保持部材H1を押圧することで、第2案内軸42が第1位置から第2位置に向かう方向へ移動する。これにより、層転写用フィルムカートリッジFCを良好に取り外すことが可能となっている。
【0080】
また、図5(a)に示すように、第2位置に位置する第2案内軸42は、着脱方向に投影したときに層転写用フィルムカートリッジFCとは重ならない。さらに、第2案内軸42が第2位置に位置する場合には、第2案内軸42を保持する保持部材H1も、着脱方向に投影したときに層転写用フィルムカートリッジFCとは重ならない。
【0081】
ここで、図3に示すように、第1連結部71と第2連結部72の軸方向の間隔は、第2案内軸42の軸方向の長さおよび保持部材H1の軸方向の最大寸法よりも大きくなっている。そのため、図5(a)に示すように、第2案内軸42が第2位置に位置する場合には、第2案内軸42および保持部材H1は、着脱方向に投影したときに層転写用フィルムカートリッジFCとは重ならない。これにより、第2案内軸42が第2位置に位置するときには、層転写用フィルムカートリッジFCが第2案内軸42および保持部材H1と干渉することなく、層転写用フィルムカートリッジFCを着脱することが可能となっている。
【0082】
カバー22は、第2案内軸42を、図5(a)に示す第2位置から、図5(b)に示す第1位置に向けて押圧する押圧部材22Aを備えている。押圧部材22Aは、カバー22に固定されており、カバー22が閉まるときに、第2案内軸42を第2位置から第1位置に向けて押圧する。なお、押圧部材22Aは、カバー22自体であってもよく、例えば、カバー22の一部を突出させた突起であってもよい。
【0083】
押圧部材22Aは、軸方向において、保持部材H1の第1レバーH13と第2レバーH14(図3参照)に対応した位置に配置されている。一端側の押圧部材22Aは、第1レバーH13と接触可能な位置に配置されている。また、他端側の押圧部材22A(図示略)は、第2レバーH14(図3参照)と接触可能な位置に配置されている。これにより、各押圧部材22Aは、カバー22が閉まる過程において、第1レバーH13および第2レバーH14を押圧することで、第2案内軸42を第2位置から第1位置へ向けて移動させるように構成されている。
【0084】
次に、本実施形態に係る層転写装置1の作用効果について説明する。
図4に示すように、ユーザが、ハンドル80を掴んで層転写用フィルムカートリッジFCを筐体本体21に上から装着していくと、供給ケース32と巻取ケース36の間で架け渡された多層フィルムF(図2参照)が、筐体本体21の第1案内軸41と第2案内軸42に接触する。その後、さらに層転写用フィルムカートリッジFCを装着位置に向けて移動させると、多層フィルムFは、供給ケース32、第1案内軸41、第2案内軸42および巻取ケース36の各部材間で架け渡される。
【0085】
層転写用フィルムカートリッジFCを筐体本体21に装着した後、カバー22を閉めていくと、図5(a)に示すように、押圧部材22Aが保持部材H1の各レバーH13,H14と接触する。その後、ユーザがカバー22をさらに閉めていくと、押圧部材22Aが各レバーH13,H14を押圧することで、保持部材H1が回動して、図5(b)に示すように、第2案内軸42が第2位置から第1位置に向けて移動する。カバー22が完全に閉まると、押圧部材22Aに押圧されて回動していた保持部材H1が停止するのに伴って第2案内軸42の移動も停止し、第2案内軸42は第1位置で停止する。
【0086】
第1位置に到達した第2案内軸42と、シャフト43とに多層フィルムFが張架されることにより、第2案内軸42における多層フィルムFの剥離角度が適正な角度に規定される。
【0087】
層転写用フィルムカートリッジFCを筐体本体21から取り外す場合には、カバー22を開けた後、ユーザが手で保持部材H1を回動させることで、第2案内軸42を第1位置から第2位置に移動させる。これにより、層転写用フィルムカートリッジFCを取り外す際に、層転写用フィルムカートリッジFCと保持部材H1が干渉するのを抑制することができる。また、ユーザが保持部材H1を回動させることなく層転写用フィルムカートリッジFCを外に引き出した場合には、層転写用フィルムカートリッジFCの支持部材90が保持部材H1と接触することで、保持部材H1が支持部材90によって押圧されて回動する。これにより、第2案内軸42が第1位置から第2位置に向けて移動する。そのため、層転写用フィルムカートリッジFCを取り外す場合において、層転写用フィルムカートリッジFCが保持部材H1(第2案内軸42)で引っ掛かって取り外しにくくなるのを抑制することができる。
【0088】
以上によれば、本実施形態において以下のような効果を得ることができる。
第2案内軸42を第2位置に配置可能にさせることで、層転写用フィルムカートリッジFCが第2案内軸42に干渉したままになりにくく、層転写用フィルムカートリッジFCを着脱方向に着脱することができる。これにより、設計の自由度を高めることができる。なお、「層転写用フィルムカートリッジFCが第2案内軸42に干渉する」とは、層転写用フィルムカートリッジFCが第2案内軸42に直接接触せずに、第2案内軸42を保持する保持部材H1に接触して干渉することも含む。
【0089】
カバー22が閉まると第2案内軸42が第1位置に移動するので、層転写時において、第2案内軸42を確実に適正な位置に配置させておくことができ、第2案内軸42とシャフト43とによって剥離角度を適正な角度にすることができる。
【0090】
層転写用フィルムカートリッジFCが外れる過程において第2案内軸42が第2位置に向けて移動するので、ユーザが第2案内軸42を第2位置に移動させる操作を行っていなくても、フィルムカートリッジFCを筐体本体21から取り外すことができる。
【0091】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。以下の説明においては、前記実施形態と略同様の構造となる部材には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0092】
図6(a),(b)に示すように、筐体本体21は、第2案内軸42を、図6(b)に示す第1位置から、図6(a)に示す第2位置に向けて付勢するバネSPをさらに備えていてもよい。具体的に、この形態では、バネSPは、トーションバネであり、一端が保持部材H1の一部に係合し、他端が筐体本体21の一部に係合している。なお、前記実施形態では、規制部は、第2案内軸42が第1位置に位置するときに保持部材H1と当接することにより、第1位置に位置する第2案内軸42が加熱ローラ61から遠ざかる方向にさらに移動するのを止めることとしたが、この形態では、このように止める必要はない。
【0093】
これによれば、カバー22が閉まる際に、押圧部材22Aが保持部材H1を押圧すると、第2案内軸42がバネSPの付勢力に抗して図6(a)の第2位置から図6(b)の第1位置に移動する。そして、カバー22が開く際には、カバー22が保持部材H1から離れていくことで、バネSPの付勢力によって第2案内軸42が第1位置から第2位置に移動する。そのため、層転写用フィルムカートリッジFCを着脱する際には、第2案内軸42が層転写用フィルムカートリッジFCの着脱の邪魔にならない第2位置に配置されるので、層転写用フィルムカートリッジFCを着脱する作業をより容易に行うことができる。
【0094】
なお、バネSPとしては、トーションバネに限らず、例えば、板バネ、コイルバネ、線バネなどであってもよい。
【0095】
前記実施形態では、押圧部材22Aが保持部材H1のレバーH13,H14を押圧することとしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、押圧部材が、保持部材H1の各アームH11,H12を押圧するように構成されていてもよい。つまり、カバーが閉まる過程において、押圧部材が保持部材のいずれかの部位を押圧することで、第2案内軸が第2位置から第1位置に移動してもよい。また、押圧部材が、第2案内軸42を直接押圧してもよい。
【0096】
前記実施形態では、カバーが閉まる過程において第2案内軸が移動する構成を例示したが、本発明はこれに限定されず、カバーが閉まる場合に、第2案内軸が第2位置から第1位置に移動してもよい。例えば、カバーが閉まったことを検知する開閉センサと、第2案内軸を移動させるためのモータ等の駆動源およびギヤ列等の駆動機構と、をさらに備えた構成の場合には、カバーが閉まったことを開閉センサで検知したことを条件として駆動源を駆動して、第2案内軸を第2位置から第1位置に移動させてもよい。
【0097】
前記実施形態では、保持部材H1を押圧する押圧部材22Aをカバー22に設けたが、本発明はこれに限定されず、押圧部材は、筐体本体に設けられていてもよい。具体的には、例えば、押圧部材を筐体本体に対して移動可能に構成するとともに、押圧部材を移動させる駆動源や駆動機構を設けてもよい。また、筐体に押圧部材を設けずに、ユーザが手動で第2案内軸を移動させる構成としてもよい。
【0098】
前記実施形態では、第2案内軸42を回動軸X3を中心にして回動可能に構成したが、本発明はこれに限定されず、例えば、第2案内軸は直線的にスライド移動可能であってもよい。
【0099】
前記実施形態では、案内軸として第2案内軸42を例示し、層転写用フィルムカートリッジの一部としてシャフト43を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、案内軸は第1案内軸であってもよい。また、層転写用フィルムカートリッジの一部は、案内軸の第1位置と第2位置との移動によって、案内軸に対して重なる状態と重ならない状態とが切り替わる部位であればよく、例えば、巻取ケース36であってもよい。
【0100】
前記実施形態では、フィルム案内部材として円柱状のシャフト43を例示したが、本発明はこれに限定されず、フィルム案内部材は、例えば、図7(a),(b)に示すような板状のブレードBD1であってもよい。また、例えば、図8(a),(b)に示すような平べったい筒状のブレードBD2であってもよい。ブレードBD2は、多層フィルムFを通すための孔を有する。言い換えると、ブレードBD2は、多層フィルムFの第1面FA(図1参照)に対向する第1壁BD21と、多層フィルムFの第2面FB(図1参照)に対向する第2壁BD22とを有する。例えば、層転写用フィルムカートリッジFCが筐体本体21から取り外されているとき、供給リール31と巻取リール35とに架け渡された多層フィルムFが張架されておらず少し垂れ下がった状態となっている場合がある。この場合、多層フィルムFは第2壁BD22と接触し、第1壁BD21に対して非接触となる。一方、層転写用フィルムカートリッジFCが筐体本体21に装着されているとき、例えば、層転写の実行中、供給リール31と巻取リール35とに架け渡された多層フィルムFが第1案内軸41、第2案内軸42およびブレードBD2との間で張架されている。このとき、多層フィルムFは第1壁BD21と接触し、第2壁BD22に対して非接触となる。つまり、第1壁BD21は、供給リール31と巻取リール35とに架け渡された多層フィルムFに対して非接触となる状態から接触可能となっている。第1壁BD21は、第2案内軸42で案内された多層フィルムFに接触して、多層フィルムFの進行方向を変更する。
【0101】
前記実施形態では、連結部70を2つの連結部71,72で構成したが、本発明はこれに限定されず、連結部は1つ(例えば第1連結部のみ)であってもよい。また、連結部は、供給部と巻取部を連結していればよく、例えば、供給ケースと巻取ケースを連結していてもよい。
【0102】
前記実施形態では、層転写装置として、シートSのトナー像の上に転写層を転写するための装置を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、層転写装置は、シートに形成されたインク像の上に転写層を転写する装置や、転写層をサーマルヘッドでシートに転写する装置などであってもよい。
【0103】
前記実施形態では、箔を含む転写層F22を例示したが、本発明はこれに限定されず、転写層は、例えば、箔や着色材料を含まず、熱可塑性樹脂から形成されていてもよい。
【0104】
前記実施形態では、多層フィルムFを4層で構成したが、本発明はこれに限定されず、多層フィルムは、転写層と支持層を有していれば、層の数はいくつであってもよい。
【0105】
連結部は、供給ケースや巻取ケースに一体に形成されることで、供給ケースや巻取ケースを介して間接的に供給リールや巻取リールに連結されてもよい。連結部は、板状ではなく、供給ケースと巻取ケースとに固定される棒状でもよい。連結部は、樹脂製でもよいし金属製でもよい。
【0106】
巻取ケースや供給ケースを連結部に固定する構造は、どのような構造であってもよい。例えば、巻取ケースと供給ケースとを連結部に直接固定してもよい。また、例えば、図3における、連結部91,92と巻取ケース36との間を中空の部材でつなぎ、巻取ケース36が連結部91,92に対して回動しないようにし、中空の部材の中に巻取リール35の巻取軸部35Aの端部を通して巻取ギヤ35C等を付けてもよい。この場合、中空の部材によって、巻取リール35は回転可能に支持される。
【0107】
前記した実施形態および変形例で説明した各要素を、任意に組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0108】
1 層転写装置
21 筐体本体
21A 開口
42 第2案内軸
43 シャフト
F 多層フィルム
F1 支持層
F22 転写層
FC 層転写用フィルムカートリッジ
S シート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8