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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】電磁波センサカバー
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/42 20060101AFI20230829BHJP
   H01Q 15/14 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
H01Q1/42
H01Q15/14 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021147021
(22)【出願日】2021-09-09
(65)【公開番号】P2023039748
(43)【公開日】2023-03-22
【審査請求日】2023-04-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】平野 里彩
(72)【発明者】
【氏名】深川 鋼司
(72)【発明者】
【氏名】安藤 宏明
【審査官】赤穂 美香
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/052057(WO,A1)
【文献】特開2020-165943(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/42
H01Q 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波を送信する送信部と前記電磁波を受信する受信部とを有した電磁波センサに適用され、且つ前記送信部及び前記受信部を、前記送信部からの前記電磁波の送信方向における前方から覆うカバー本体部を備える電磁波センサカバーにおいて、
前記カバー本体部は、
合成樹脂によって構成され、且つ前記電磁波の透過性を有した基材層と、
前記電磁波の透過性を有するとともに導電性を有した金属酸化物層と、
前記電磁波の透過性を有するとともに前記金属酸化物層よりも屈折率の低い材料によって構成された低屈折率層と、
前記金属酸化物層に通電して発熱させるべく前記金属酸化物層に接触した状態で配置された一対の電極と、を備え、
前記金属酸化物層及び前記低屈折率層は、前記送信方向における前記基材層の後面に積層されており、
前記低屈折率層は、空気層と前記低屈折率層との境界で反射される前記電磁波の反射波と、前記低屈折率層と前記金属酸化物層との境界で反射される前記電磁波の反射波とが干渉して弱め合うように、前記送信方向における前記金属酸化物層の後面に隣接して積層されていることを特徴とする電磁波センサカバー。
【請求項2】
前記金属酸化物層は、インジウム錫酸化物またはインジウム亜鉛酸化物によって構成されていることを特徴とする請求項に記載の電磁波センサカバー。
【請求項3】
前記低屈折率層は、二酸化珪素によって構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電磁波センサカバー。
【請求項4】
前記電極は、金属によって構成されていることを特徴とする請求項1~請求項のうちいずれか一項に記載の電磁波センサカバー。
【請求項5】
前記カバー本体部は、複数の前記金属酸化物層及び複数の前記低屈折率層を備えており、
複数の前記金属酸化物層及び複数の前記低屈折率層は、交互に積層されていることを特徴とする請求項1~請求項のうちいずれか一項に記載の電磁波センサカバー。
【請求項6】
一対の前記電極は、全ての前記金属酸化物層及び全ての前記低屈折率層を挟むように延びていることを特徴とする請求項1~請求項のうちいずれか一項に記載の電磁波センサカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波センサカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、電磁波センサの一例として赤外線(電磁波)の送受信を行う赤外線センサが搭載されている。この赤外線センサは、赤外線を車外に向けて送信する一方、車外の物体に当たって反射した上記赤外線を受信することにより、こうした赤外線の送受信を通じて車外の物体を検出する。
【0003】
また、赤外線センサにおける赤外線の送信方向の前方側(車外側)には、当該赤外線センサが車外側から直接的に見えないようにするための赤外線センサ用カバー(電磁波センサカバー)が設けられている。
【0004】
こうした赤外線センサ用カバーとしては、従来、例えば特許文献1に示されるものが知られている。このような赤外線センサ用カバーは、赤外線センサによって送受信される赤外線の経路上に位置するカバー基材と、そのカバー基材の表面に設けられて通電によって発熱するヒータ線と、赤外線の反射を抑制するARコート層とを備えている。
【0005】
そして、上述の赤外線センサ用カバーでは、ヒータ線の発熱を通じて赤外線センサ用カバーに付着した氷雪を融解するようにしている。これにより、赤外線センサ用カバーに対する氷雪の付着によって赤外線の透過が妨げられることが抑制される。これに加えて上述の赤外線センサ用カバーでは、ARコート層によって赤外線の反射が抑制される。したがって、上述の赤外線センサ用カバーでは、赤外線センサの検出精度の低下が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2020-165943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述の赤外線センサ用カバーでは、ARコート層によって赤外線の反射を抑制できるものの、ヒータ線が所定のピッチで蛇行して延びるように配置された構造になっている。このため、ヒータ線を発熱させた際に、赤外線センサ用カバーにおけるヒータ線の有る部分とヒータ線の無い部分との間で温度差が生じる。したがって、赤外線センサ用カバーが均一に発熱しないので、赤外線センサ用カバーに付着した氷雪を効率よく融解させることができない。
【0008】
よって、電磁波の反射を抑制しつつ、均一に発熱させることができる電磁波センサカバーが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する電磁波センサカバーは、電磁波を送信する送信部と前記電磁波を受信する受信部とを有した電磁波センサに適用され、且つ前記送信部及び前記受信部を、前記送信部からの前記電磁波の送信方向における前方から覆うカバー本体部を備える電磁波センサカバーにおいて、前記カバー本体部は、合成樹脂によって構成され、且つ前記電磁波の透過性を有した基材層と、前記電磁波の透過性を有するとともに導電性を有した少なくとも一つの金属酸化物層と、前記電磁波の透過性を有するとともに前記金属酸化物層よりも屈折率の低い材料によって構成された少なくとも一つの低屈折率層と、前記金属酸化物層に通電して発熱させるべく前記金属酸化物層に接触した状態で配置された一対の電極と、を備え、前記金属酸化物層及び前記低屈折率層は、前記送信方向における前記基材層の前面側または後面側に互いに隣接して積層されていることを要旨とする。
【0010】
この構成によれば、金属酸化物層に通電することで、金属酸化物層全体が発熱するので、カバー本体部が均一に発熱する。加えて、金属酸化物層よりも屈折率が低い低屈折率層が金属酸化物層に隣接して積層されるので、電磁波の反射が抑制される。したがって、電磁波の反射を抑制しつつ均一に発熱させることができる。
【0011】
上記電磁波センサカバーにおいて、前記金属酸化物層及び前記低屈折率層は、前記送信方向における前記基材層の後面側に積層されていることが好ましい。
この構成によれば、金属酸化物層及び低屈折率層を基材層によって保護できる。
【0012】
上記電磁波センサカバーにおいて、前記金属酸化物層は、インジウム錫酸化物またはインジウム亜鉛酸化物によって構成されていることが好ましい。
この構成によれば、インジウム錫酸化物及びインジウム亜鉛酸化物は、透明であるため、より一層電磁波が金属酸化物層を透過し易くできる。
【0013】
上記電磁波センサカバーにおいて、前記低屈折率層は、二酸化珪素によって構成されていることが好ましい。
この構成によれば、二酸化珪素は入手し易いので、低屈折率層を容易に製造できる。
【0014】
上記電磁波センサカバーにおいて、前記電極は、金属によって構成されていることが好ましい。
この構成によれば、金属は入手し易いので、電極を容易に製造できる。
【0015】
上記電磁波センサカバーにおいて、前記カバー本体部は、複数の前記金属酸化物層及び複数の前記低屈折率層を備えており、複数の前記金属酸化物層及び複数の前記低屈折率層は、交互に積層されていることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、屈折率が互いに異なる金属酸化物層及び低屈折率層を交互に複数積層することで、カバー本体部を均一に発熱させながらカバー本体部の電磁波に対する反射抑制効果を高めることができる。
【0017】
上記電磁波センサカバーにおいて、一対の前記電極は、全ての前記金属酸化物層及び全ての前記低屈折率層を挟むように延びていることが好ましい。
この構成によれば、一対の電極により、全ての金属酸化物層に通電しながら全ての金属酸化物層及び全ての低屈折率層を保護することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電磁波の反射を抑制しつつ、均一に発熱させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態における赤外線センサカバーを赤外線センサとともに示す側断面模式図である。
図2】第2実施形態における赤外線センサカバーによってカバーが構成された赤外線センサの側断面模式図である。
図3】変更例のカバー本体部の側断面模式図である。
図4】別の変更例のカバー本体部の側断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
以下、電磁波センサカバーを車両用の赤外線センサカバーに具体化した第1実施形態を図面に従って説明する。なお、以下の記載においては、車両の前進方向を前方とし、後進方向を後方として説明する。
【0021】
図1に示すように、車両11の前端部には、電磁波センサの一例としての前方監視用の赤外線センサ12が設置されている。赤外線センサ12は、900nm等の波長を有する赤外線IR(電磁波)を車両11の前方へ向けて送信するとともに、先行車両及び歩行者等を含む車外の物体に当たって反射された赤外線IRを受信する。
【0022】
なお、上述したように、赤外線センサ12が車両11の前方に向けて赤外線IRを送信することから、赤外線センサ12による赤外線IRの送信方向は、車両11の後方から前方へ向かう方向となる。赤外線IRの送信方向における前方は、車両11の前方と概ね合致する。赤外線IRの送信方向における後方は、車両11の後方と概ね合致する。そのため、以後の記載では、赤外線IRの送信方向における前方を単に「前方」、「前」等と言うとともに、赤外線IRの送信方向における後方を単に「後方」、「後」等と言うものとする。
【0023】
図1に示すように、赤外線センサ12の外殻部分の後半部は、有底箱状のケース13によって構成されている。赤外線センサ12の外殻部分の前半部分は、有底箱状のカバー14によって構成されている。ケース13は、筒状をなす周壁部15と、周壁部15の後端部に形成された底壁部16とを備えている。ケース13の全体は、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等の合成樹脂材料によって形成されている。ケース13内における底壁部16の前面には、赤外線IRを送信する送信部17と赤外線IRを受信する受信部18とが配置されている。
【0024】
すなわち、赤外線センサ12は、送信部17及び受信部18が組み付けられたケース13と、ケース13よりも前方に配置されて送信部17及び受信部18を前方から覆うカバー14とによって構成されている。カバー14は、例えば、PC(ポリカーボネート)、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)、COP(シクロオレフィンポリマー)、樹脂ガラス等によって形成されるとともに、赤外線の透過性を有している。
【0025】
赤外線センサ12の前方には、電磁波センサカバーの一例としての赤外線センサカバー19が赤外線センサ12とは別部材として設けられている。赤外線センサカバー19は、板状のカバー本体部20を備えている。カバー本体部20は、カバー14よりも前方に位置しているとともに、送信部17及び受信部18を前方からカバー14を介して間接的に覆っている。カバー本体部20は、固定部材(図示略)によって車両11に固定されている。
【0026】
カバー本体部20は、前後方向に並ぶ4層構造になっている。カバー本体部20は、前側から順に積層されたハードコート層21、基材層22、金属酸化物層23、及び低屈折率層24と、金属酸化物層23を上下方向において挟む一対の電極25と、を備えている。
【0027】
基材層22は、カバー本体部20の骨格部分を構成している。基材層22は、赤外線IRの透過性を有する透明な合成樹脂材料によって形成されている。本実施形態の基材層22は、PC(ポリカーボネート)によって形成されている。基材層22は、PC以外の材料、すなわちPMMA(ポリメタクリル酸メチル)やCOP(シクロオレフィンポリマー)等によって形成してもよい。
【0028】
ハードコート層21は、赤外線IRの透過性を有するとともに、基材層22よりも高い硬度を有している。ハードコート層21は、基材層22の前面に公知の表面処理剤を塗布することにより形成される。この表面処理剤としては、例えば、アクリレート系、オキセタン系、シリコーン系等の有機系ハードコート剤、無機系ハードコート剤、有機無機ハイブリッド系ハードコート剤等が挙げられる。また、ハードコート剤としては、紫外線の照射によって硬化するタイプのものを用いてもよいし、熱が加えられることによって硬化するタイプのものを用いてもよい。
【0029】
ハードコート層21は、カバー本体部20の耐衝撃性を高めるため、カバー本体部20の前面が飛び石等によって傷が付くことを抑制する。また、ハードコート層21は、カバー本体部20の耐候性を高めるため、太陽光、風雨、温度変化等に起因するカバー本体部20の変質や劣化を抑制する。
【0030】
金属酸化物層23は、基材層22の後面に隣接して積層されている。金属酸化物層23は、赤外線IRの透過性を有するとともに導電性を有している。金属酸化物層23は、通電により抵抗加熱される。すなわち、金属酸化物層23は、電流を流したときに発生するジュール熱によって全体が発熱する。したがって、金属酸化物層23は、ヒータとして機能する。
【0031】
本実施形態の金属酸化物層23は、透明導電物であるインジウム亜鉛酸化物(IZO(登録商標))によって構成されている。金属酸化物層23は、IZO(登録商標)以外の透明導電物、すなわちインジウム錫酸化物(ITO)、アルミニウム亜鉛酸化物(AZO)、ガリウム亜鉛酸化物(GZO)、アンチモン錫酸化物(ATO)、フッ素錫酸化物(FTO)等によって構成してもよい。
【0032】
低屈折率層24は、金属酸化物層23の後面に隣接して積層されている。すなわち、金属酸化物層23及び低屈折率層24は、基材層22の後面側に互いに隣接して積層されている。低屈折率層24は、赤外線IRの透過性を有するとともに金属酸化物層23よりも屈折率の低い材料によって構成されている。本実施形態の低屈折率層24は、二酸化珪素(SiO)によって構成されている。二酸化珪素は、絶縁性を有している。このため、低屈折率層24は、金属酸化物層23の後面を覆うことにより通電される金属酸化物層23を絶縁するので、金属酸化物層23と他部材との間での電流の流れを遮断する。
【0033】
一対の電極25は、例えば銅等の金属によって構成されている。一対の電極25は、金属酸化物層23の上端部及び下端部にそれぞれ電気的に接続されるように、金属酸化物層23に接触した状態で配置されている。すなわち、一対の電極25は、金属酸化物層23に通電して発熱させるべく金属酸化物層23を上下方向に挟んで設けられている。
【0034】
この場合、一対の電極25は、基材層22に接触している。さらにこの場合、一対の電極25は、カバー本体部20における赤外線IRの透過領域から外れた位置に配置されている。一対の電極25は、金属酸化物層23よりも厚さが薄くなっている。一対の電極25は、それぞれ電源(図示略)に接続されている。したがって、金属酸化物層23は、電源(図示略)によって一対の電極25を介して通電される。
【0035】
次に、上述のように構成された赤外線センサカバー19の作用について説明する。
赤外線センサ12が設置された車両11において、送信部17から赤外線IRが送信されると、その赤外線IRはカバー本体部20の後部に照射される。このとき、照射された赤外線IRがカバー本体部20の後部で反射されることは、カバー本体部20の後部に位置する低屈折率層24と金属酸化物層23との干渉構造によって抑制される。
【0036】
すなわち、低屈折率層24と金属酸化物層23とは、空気層と低屈折率層24との境界で反射される赤外線IRの反射波と、低屈折率層24と金属酸化物層23との境界で反射される赤外線IRの反射波とが干渉して弱め合うように構成されている。
【0037】
低屈折率層24及び金属酸化物層23を順に透過した赤外線IRは、基材層22及びハードコート層21を順に透過する。上述のようにしてカバー本体部20を透過した赤外線IRは、先行車両及び歩行者等を含む物体に当たって反射される。この反射された赤外線IRは、再びカバー本体部20におけるハードコート層21、基材層22、金属酸化物層23、及び低屈折率層24を順に透過する。
【0038】
そして、カバー本体部20を透過した赤外線IRは、受信部18によって受信される。赤外線センサ12では、送信部17から送信した赤外線IRと受信部18で受信した赤外線IRとに基づき、上記物体が認識されるとともに、車両11と当該物体との距離や相対速度等が検出される。
【0039】
このように、低屈折率層24と金属酸化物層23との干渉構造で赤外線IRの反射が抑制される分、カバー本体部20を透過する赤外線IRの量が多くなる。このため、カバー本体部20は、赤外線IRの透過の妨げとなり難い。したがって、送信部17から送信される赤外線IRのうちカバー本体部20によって減衰される量を許容範囲に収め易くなる。この結果、赤外線センサ12は、上記物体の認識機能及び上記物体と車両11との距離や相対速度等の検出機能を効果的に発揮し易くなる。
【0040】
また、金属酸化物層23は通電されると全体が発熱する。この熱は、カバー本体部20全体に均一に伝達されるので、カバー本体部20全体が均一に発熱する。したがって、車外に露出するカバー本体部20の前面も均一に発熱する。これにより、カバー本体部20の前面のどこに氷雪が付着した場合でも、当該氷雪は金属酸化物層23から伝わる熱によって迅速に融解される。
【0041】
したがって、カバー本体部20の前面に対する氷雪の付着によって赤外線IRの透過が妨げられることが抑制される。この結果、降雪時においても赤外線センサ12に上記物体の認識機能及び上記物体と車両11との距離や相対速度等の検出機能を十分に発揮させることができる。
【0042】
以上のように、本実施形態の赤外線センサカバー19では、金属酸化物層23が、ヒータとしての機能と、低屈折率層24とで赤外線IRの反射を抑制する機能との2つの機能を発揮する。
【0043】
以上詳述した第1実施形態によれば、次のような効果が発揮される。
(1-1)赤外線センサカバー19は、赤外線IRを送信する送信部17と赤外線IRを受信する受信部18とを有した赤外線センサ12に適用され、且つ送信部17及び受信部18を、送信部17からの赤外線IRの送信方向における前方から覆うカバー本体部20を備える。カバー本体部20は、合成樹脂によって構成され、且つ赤外線IRの透過性を有した基材層22と、赤外線IRの透過性を有するとともに導電性を有した少なくとも一つの金属酸化物層23と、赤外線IRの透過性を有するとともに金属酸化物層23よりも屈折率の低い材料によって構成された少なくとも一つの低屈折率層24と、金属酸化物層23に通電して発熱させるべく金属酸化物層23に接触した状態で配置された一対の電極25と、を備える。金属酸化物層23及び低屈折率層24は、赤外線IRの送信方向における基材層22の後面側に互いに隣接して積層されている。
【0044】
この構成によれば、金属酸化物層23に通電することで、金属酸化物層23全体が発熱するので、カバー本体部20が均一に発熱する。加えて、金属酸化物層23よりも屈折率が低い低屈折率層24が金属酸化物層23に隣接して積層されるので、赤外線IRの反射が抑制される。したがって、カバー本体部20での赤外線IRの反射を抑制しつつカバー本体部20を均一に発熱させることができる。
【0045】
(1-2)赤外線センサカバー19において、金属酸化物層23及び低屈折率層24は、赤外線IRの送信方向における基材層22の後面側に積層されている。
この構成によれば、金属酸化物層23及び低屈折率層24を基材層22によって保護できる。
【0046】
(1-3)赤外線センサカバー19において、金属酸化物層23は、インジウム亜鉛酸化物によって構成されている。
この構成によれば、インジウム亜鉛酸化物は、透明であるため、より一層赤外線IRが金属酸化物層23を透過し易くできる。また、金属酸化物層23が透明なインジウム亜鉛酸化物によって構成されることで、外部から見え難くなる。このため、赤外線センサカバー19の意匠性向上に寄与できる。
【0047】
(1-4)赤外線センサカバー19において、低屈折率層24は、二酸化珪素によって構成されている。
この構成によれば、二酸化珪素は入手し易いので、低屈折率層24を容易に製造できる。
【0048】
(1-5)赤外線センサカバー19において、電極25は、金属によって構成されている。
この構成によれば、金属は入手し易いので、電極25を容易に製造できる。
【0049】
(第2実施形態)
次に、電磁波センサカバーを車両用の赤外線センサカバーに具体化した第2実施形態を図面に従って説明する。図2に示すように、この第2実施形態は、赤外線センサカバー31を赤外線センサ12に設けたこと以外、上記第1実施形態と同じである。したがって、第2実施形態では、上記第1実施形態と異なる点のみを説明し、第1実施形態と重複する説明を省略する。また、この第2実施形態では、第1実施形態と同一の部材については同一の符号を付すものとする。
【0050】
図2に示すように、赤外線センサ12は、赤外線センサ12の外殻部分の後半部がケース13によって構成されるとともに前半部分がカバー32によって構成されている。赤外線センサ12におけるカバー32は、電磁波センサカバーの一例としての赤外線センサカバー31によって構成されている。赤外線センサカバー31は、筒状をなす周壁部33と、周壁部33の前端部に形成された板状のカバー本体部34とを備えている。
【0051】
カバー本体部34は、ケース13の前端部を塞ぐ大きさに形成されている。すなわち、カバー本体部34は、上記第1実施形態のカバー本体部20(図1参照)と構成が同じで大きさがカバー本体部20よりも小さくなっている。カバー本体部34は、送信部17及び受信部18を前方から覆っている。
【0052】
以上詳述した第2実施形態によれば、上記(1-1)~(1-5)に記載の効果に加えて次のような効果が発揮される。
(2-1)赤外線センサ12におけるカバー32は、赤外線センサカバー31によって構成されている。すなわち、赤外線センサカバー31は、赤外線センサ12の一部を構成している。このため、上記第1実施形態において赤外線センサカバー19を赤外線センサ12とは別部材として設けた場合に比べて、車両11における省スペース化に寄与できる。
【0053】
(変更例)
上記各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。また、上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0054】
・カバー本体部20,34は、図3に示すカバー本体部41に変更してもよい。カバー本体部41は、前側から順に積層されたハードコート層21、基材層22、低屈折率層24、金属酸化物層23、低屈折率層24、金属酸化物層23、及び低屈折率層24と、一対の電極25と、を備えた構成になっている。一対の電極25は、3つの低屈折率層24及び2つの金属酸化物層23を上下方向において挟んでいる。つまり、カバー本体部41は、複数(ここでは2つ)の金属酸化物層23及び複数(ここでは3つ)の低屈折率層24を備えるとともに、2つの金属酸化物層23及び3つの低屈折率層24が交互に積層された構成になっている。加えて、カバー本体部41において、一対の電極25は、全ての金属酸化物層23及び全ての低屈折率層24を上下方向に挟んだ状態で前後方向に延びている。
【0055】
この構成によれば、屈折率が互いに異なる金属酸化物層23及び低屈折率層24を交互に複数積層することで、カバー本体部41を均一に発熱させながらカバー本体部41の赤外線IR(電磁波)に対する反射抑制効果を高めることができる。加えて、一対の電極25は、全ての金属酸化物層23及び全ての低屈折率層24を上下方向に挟んだ状態で前後方向に延びている。このため、一対の電極25により、全ての金属酸化物層23に通電しながら全ての金属酸化物層23及び全ての低屈折率層24を保護することができる。
【0056】
図3に示すカバー本体部41において、金属酸化物層23及び低屈折率層24が交互に積層されていれば、金属酸化物層23及び低屈折率層24の数をそれぞれ適宜変更してもよい。この場合、最も後端に低屈折率層24が配置されることが好ましい。さらにこの場合、複数の金属酸化物層23及び複数の低屈折率層24のうちで最も前端に配置される層は、金属酸化物層23であってもよい。
【0057】
図3に示すカバー本体部41において、一対の電極25は、少なくとも一つの金属酸化物層23を上下方向に挟むように構成されていてもよい。すなわち、一対の電極25は、例えば、一つの金属酸化物層23のみを挟んでいてもよいし、一つの金属酸化物層23及び一つの低屈折率層24のみを挟んでいてもよい。あるいは、一対の電極25は、例えば、最も後端に位置する低屈折率層24のみを挟まないように延びていてもよい。
【0058】
・カバー本体部20,34は、図4に示すカバー本体部42に変更してもよい。カバー本体部42は、前側から順に積層されたハードコート層21、低屈折率層24、金属酸化物層23、及び基材層22と、金属酸化物層23を上下方向に挟む一対の電極25と、を備えた構成になっている。つまり、カバー本体部42は、金属酸化物層23及び低屈折率層24が基材層22の前面側に互いに隣接して積層された構成になっている。この場合、金属酸化物層23及び低屈折率層24は、互いに位置を入れ替えてもよい。
【0059】
・一対の電極25は、金属以外の材料によって構成してもよい。
・低屈折率層24は、二酸化珪素以外の材料によって構成してもよい。
・ハードコート層21は省略してもよい。
【0060】
・送信部17及び受信部18が赤外線センサカバー19,31によって覆われる赤外線センサ12としては、900nmの波長以外に、例えば1550nmの波長の赤外線IRを送信及び受信するものであってもよい。
【0061】
・赤外線センサカバー19,31は、赤外線センサ12が車両11の前部とは異なる箇所、例えば後部に設置された場合にも適用可能である。この場合、赤外線センサ12は、車両11の後方に向けて赤外線IR(電磁波)を送信する。さらにこの場合、赤外線センサカバー19,31は、赤外線IRの送信方向における送信部17及び受信部18の前方、すなわち送信部17及び受信部18に対し車両11の後方となる箇所に配置される。同様に、赤外線センサカバー19,31は、赤外線センサ12が車両11の斜め前側部や斜め後側部に設置された場合にも適用可能である。
【0062】
・赤外線センサカバー19,31は、赤外線センサ12が、車両11とは異なる種類の乗物、例えば、電車、航空機、船舶等の乗物に搭載された場合にも適用可能である。
・電磁波センサカバーは、赤外線センサ12以外の電磁波センサ(例えば、ミリ波センサ)にも適用可能である。
【0063】
・第1実施形態の赤外線センサカバー19は、エンブレム、オーナメント、マーク等、車両11を装飾する機能を有した車両用外装品に具体化されてもよい。
【符号の説明】
【0064】
11…車両
12…電磁波センサの一例としての赤外線センサ
13…ケース
14,32…カバー
15,33…周壁部
16…底壁部
17…送信部
18…受信部
19,31…電磁波センサカバーの一例としての赤外線センサカバー
20,34,41,42…カバー本体部
21…ハードコート層
22…基材層
23…金属酸化物層
24…低屈折率層
25…電極
IR…電磁波の一例としての赤外線
図1
図2
図3
図4