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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】自動車の車室構造
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/00 20060101AFI20230829BHJP
   B60R 13/02 20060101ALI20230829BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
B60J5/00 501B
B60J5/00 P
B60R13/02 B
B60J5/04 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019171813
(22)【出願日】2019-09-20
(65)【公開番号】P2021046177
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長澤 勇
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-121114(JP,A)
【文献】特開平10-315905(JP,A)
【文献】特開2006-069397(JP,A)
【文献】特表2001-503696(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/00
B60R 13/02,13/08,21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室の側壁部を構成する側壁パネルと、
前記側壁パネルと係合されるインナトリムと、
前記インナトリムの前記車室側に設けられた肘掛部と、
前記肘掛部よりも上方において前記側壁パネル及び前記インナトリムを係合し、上下方向に配列される第1及び第2係合部からなる第1係合部対と、
前記第1係合部対よりも下方かつ上下方向について前記肘掛部と重なる位置において前記側壁パネル及び前記インナトリムを係合し、上下方向に配列される第3及び第4係合部からなる第2係合部対と、
前記第2係合部対よりも下方かつ前記肘掛部よりも下方において前記側壁パネル及び前記インナトリムを係合し、上下方向に配列される第5及び第6係合部からなる第3係合部対と、
を備え、
前記第1係合部対、前記第2係合部対及び前記第3係合部対は、上下方向に配列され、
前記側壁パネルが、前記インナトリムと係合された部分において前記車室側に向かって突出するように変形し、前記側壁パネルの最も車室側に突出する突出部によって前記インナトリムが前記車室側に押圧された場合に、前記インナトリムは、前記第1係合部対、前記第2係合部対及び前記第3係合部対のうちの上下方向について前記突出部に最も近いもの以外における前記側壁パネルとの間の係合を解除し、前記車室側に平行移動する、
自動車の車室構造。
【請求項2】
前記インナトリムは、前記第1及び第2係合部間に設けられる第1高剛性部、前記第3及び第4係合部間に設けられる第2高剛性部、及び前記第5及び第6係合部間に設けられる第3高剛性部を有し、
前記第1高剛性部、前記第2高剛性部及び前記第3高剛性部は、前記インナトリムの他の部分よりも剛性が高い、
請求項1に記載の自動車の車室構造。
【請求項3】
前記第1係合部対、前記第2係合部対及び前記第3係合部対が上下方向に配列されてなる列を前後方向に複数備える
請求項1又は2に記載の自動車の車室構造。
【請求項4】
前記第1係合部対の上下幅、前記第2係合部対の上下幅及び前記第3係合部対の上下幅は、他車両のバンパ部分の上下幅よりも短い、
請求項1から3のいずれか一項に記載の自動車の車室構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車室構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ドア本体の下側と上側のそれぞれにインパクトバーを設け、バンパーラインに対応する下側のインパクトバーを、上側のインパクトバーよりもドアの外側方向に配置するとともに、後方下がり傾斜状に配置した自動車のドア構造が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
このような自動車のドア構造によれば、側面衝突の際に、外側に位置する下側のインパクトバーに衝突荷重が作用し、インパクトバーが変形し始めてから、上側のインパクトバーも変形し始めることとなるので、衝突荷重が時間差をもって作用する。これにより、車室内の乗員に対する衝撃の加速度を小さくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-250370号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した自動車のドア構造は、側面衝突の際に、下側のインパクトバーと、上側のインパクトバーとのそれぞれに対する衝突荷重の作用が異なるため、インナトリムが傾いて乗員に衝突してしまう可能性がある。そうすると、乗員が頭を強打してしまったり、乗員の肩を不必要に押圧してしまったりするため、乗員に対する障害が発生してしまうという問題点があった。
【0006】
本発明は、係る問題点に鑑み、側面衝突の際に、インナトリムが傾いて乗員に衝突することを防止することにより、乗員に対して障害が発生してしまうことを防止する車体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決するために、本発明に係る自動車の車室構造は、車室の側壁部を構成する側壁パネルと、前記側壁パネルと係合されるインナトリムと、前記側壁パネル、及び前記インナトリムを係合し、上下方向に配設される複数の係合部と、を備え、前記複数の係合部の上下幅は、側面衝突に衝撃が入力される入力部の上下幅よりも短いことを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る自動車の車室構造において、前記複数の係合部は、前記インナトリムの上下にわたって列状に配設されるとともに、複数の列が車両の前後方向に設けられていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る自動車の車室構造は、列状に配設される前記複数の係合部に沿って、前記インナトリムよりも剛性の高い高剛性部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、側面衝突の際に、インナトリムが傾いて乗員に衝突することを防止することにより、乗員に対して障害が発生してしまうことを防止する車体構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】車両の構造を示す図である。
図2】車両の車室構造を示す図である。
図3】側面衝突時の側壁パネル、及びインナトリムの第1態様を示す図である。
図4】側面衝突時の側壁パネル、及びインナトリムの第2態様を示す図である。
図5】側面衝突時の側壁パネル、及びインナトリムの第3態様を示す図である。
図6】第2実施形態におけるドアの構造を示す図である。
図7】第3実施形態における車両の車室構造を示す図である。
図8】第4実施形態におけるドアの構造を示す図である。
図9】第5実施形態における車両の車室構造を示す図である。
図10】第6実施形態における車両の車室構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
以下において、図1図5を用いて本発明の第1実施形態について説明を行う。
【0013】
(車両1の構造)
まず、図1を用いて、車両1の構造について説明を行う。なお、図1(A)は、車両1の右側面図である。また、図1(B)は、車両1の左側面図である。
【0014】
図1に示す通り、車両1は、フロントガラス2と、リアガラス3と、フロントドア4と、リアドア5と、フロントドアガラス6と、リアドアガラス7と、を備えている。
【0015】
フロントガラス2は、一定の板厚で形成されており、車両1の幅方向中央部分が、車両1の前方側に突出するように、緩やかに湾曲している。
【0016】
リアガラス3は、一定の板厚で形成されており、車両1の幅方向中央部分が、車両1の後方側に突出するように、緩やかに湾曲している。
【0017】
フロントドア4は、運転者が運転席に乗車するための右フロントドア4aと、乗員が助手席に乗車するための左フロントドア4bとにより構成されている。また、フロントドア4は、ヒンジにより開閉可能となっており、後述の側壁パネル10と、後述のインナトリム11とを備えている。
【0018】
リアドア5は、乗員が右後部座席に乗車するための右リアドア5aと、乗員が左後部座席に乗車するための左リアドア5bとにより構成されている。また、リアドア5は、ヒンジにより開閉可能となっており、後述の側壁パネル10と、後述のインナトリム11とを備えている。なお、以下において、フロントドア4、及びリアドア5を総称して、単に「ドア」という。
【0019】
フロントドアガラス6は、フロントドア4に設けられており、右フロントドア4aに設けられている右フロントドアガラス6aと、左フロントドア4bに設けられている左フロントドアガラス6bとにより構成されている。
【0020】
リアドアガラス7は、リアドア5に設けられており、右リアドア5aに設けられている右リアドアガラス7aと、左リアドア5bに設けられている左リアドアガラス7bとにより構成されている。
【0021】
(車両1の車室構造)
次に、図2を用いて、車両1の車室構造について説明を行う。なお、図2は、車両1の後方から視た背面図でもある。
【0022】
車両1の車室には、車室の床部分を構成するフロア8と、乗員が着座するためのシート9が備えられている。ここで、本実施形態におけるシート9は、運転席9aと、助手席9bと、右後部座席9cと、左後部座席9dとを備えており、図2には、左後部座席9dが図示されている。
【0023】
また、左後部座席9dの車外側には、左リアドア5bが取り付けられている。ここで、左リアドア5bは、側壁パネル10と、インナトリム11とを備えている。
【0024】
側壁パネル10は、車室の側壁部を構成し、ドアの内板を構成するインナパネル12と、ドアの外板を構成するアウタパネル13とを備えている。
【0025】
インナトリム11は、車両1の車室内で使用される内張りを総称したものであって、乗員が肘を掛けるための肘掛部14を備えている。
【0026】
そして、側壁パネル10と、インナトリム11とは、係合部15により係合されている。ここで、係合部15は、上下方向に複数配設されている。具体的には、係合部15は、第1係合部15aと、第1係合部15aの下方に配設された第2係合部15bと、第2係合部15bの下方に配設された第3係合部15cと、第3係合部15cの下方に配設された第4係合部15dと、第4係合部15dの下方に配設された第5係合部15eと、第5係合部15eの下方に配設された第6係合部15fとにより構成されている。
【0027】
(側面衝突時の側壁パネル10、及びインナトリム11の第1態様)
次に、図3を用いて、側面衝突時の側壁パネル10、及びインナトリム11の第1態様について説明を行う。なお、図3は、車両1の後方から視た背面図でもある。
【0028】
図3(A)は、他車両17が車両1の左側面から衝突する前の図を示している。ここで、第3係合部15cの上部から第4係合部15dとの底部までの上下幅V1は、車両1に対して衝突荷重を入力する入力部を構成する他車両17のバンパ部分の上下幅V2よりも短くなっている。なお、第3係合部15cの底部から第4係合部15dとの上部までの上下幅V3もバンパ部分の上下幅V2よりも短くなっている。
【0029】
なお、入力部は、他車両17のバンパ部分を例示して説明したが、これに限定されることはない。例えば、入力部として他車両17のフロント全面を適用することもできる。この場合において、上述した上下幅V1や、上下幅V3は、他車両のフロント全面の上下幅よりも短くなる。
【0030】
そして、他車両17のバンパ部分が車両1の左側面から衝突すると、まず、アウタパネル13に対して衝突荷重が伝達される。次に、衝突荷重が伝達されたアウタパネル13は、インナパネル12に対して衝突荷重を伝達する。そして、衝突荷重が伝達されたインナパネル12は、インナトリム11に対して衝突荷重を伝達する。
【0031】
次に、図3(B)に示す通り、他車両17のバンパ部分が車両1の左側面から衝突すると、係合部15により係合されている側壁パネル10と、インナトリム11とが分離することとなる。
【0032】
具体的には、係合部15により係合されている側壁パネル10と、インナトリム11とのうち、第3係合部15cの上部よりも上方の部分と、第4係合部15dの底部よりも下方の部分とが分離される。一方で、第3係合部15cと、第4係合部15dとの二点間においては、側壁パネル10と、インナトリム11とが係合されたままとなる。そして、インナトリム11は、第3係合部15cと、第4係合部15dとの二点間の面に押圧されて車室側に略平行移動する。これにより、乗員の肩部と腰部を同時に押圧することとなるので、乗員を非衝突側に安定して緩やかに移動させることができる。
【0033】
(側面衝突時の側壁パネル10、及びインナトリム11の第2態様)
次に、図4を用いて、側面衝突時の側壁パネル10、及びインナトリム11の第2態様について説明を行う。なお、図4は、車両1の後方から視た背面図でもある。
【0034】
図4(A)は、他車両17が車両1の左側面から衝突する前の図を示している。ここで、図4に示す他車両17は、図3を用いて説明した他車両17と比較して車高が低くなっている。そして、第5係合部15eの上部から第6係合部15fとの底部までの上下幅V4は、車両1に対して衝突荷重を入力する入力部を構成する他車両17のバンパ部分の上下幅V2よりも短くなっている。なお、第5係合部15eの底部から第6係合部15fとの上部までの上下幅V5もバンパ部分の上下幅V2よりも短くなっている。
【0035】
そして、他車両17のバンパ部分が車両1の左側面から衝突すると、まず、アウタパネル13に対して衝突荷重が伝達される。次に、衝突荷重が伝達されたアウタパネル13は、インナパネル12を介して、インナトリム11に対して衝突荷重を伝達する。
【0036】
次に、図4(B)に示す通り、他車両17のバンパ部分が車両1の左側面から衝突すると、係合部15により係合されている側壁パネル10と、インナトリム11とが分離することとなる。
【0037】
具体的には、係合部15により係合されている側壁パネル10と、インナトリム11とのうち、第5係合部15eの上部よりも上方の部分と、第6係合部15fの底部よりも下方の部分とが分離される。一方で、第5係合部15eと、第6係合部15fとの二点間においては、側壁パネル10と、インナトリム11とが係合されたままとなる。そして、インナトリム11は、第5係合部15eと、第6係合部15fとの二点間の面に押圧されて車室側に略平行移動することとなる。これにより、乗員の肩部と腰部を同時に押圧することとなるので、乗員を非衝突側に安定して緩やかに移動させることができる。
【0038】
(側面衝突時の側壁パネル10、及びインナトリム11の第3態様)
次に、図5を用いて、側面衝突時の側壁パネル10、及びインナトリム11の第3態様について説明を行う。なお、図5は、車両1の後方から視た背面図でもある。
【0039】
図5(A)は、他車両17が車両1の左側面から衝突する前の図を示している。ここで、図5に示す他車両17は、図3を用いて説明した他車両17や、図4を用いて説明した他車両17と比較して車高が高くなっている。そして、第1係合部15aの上部から第2係合部15bの底部までの上下幅V6は、車両1に対して衝突荷重を入力する入力部を構成する他車両17のバンパ部分の上下幅V2よりも短くなっている。なお、第1係合部15aの底部から第2係合部15bとの上部までの上下幅V7もバンパ部分の上下幅V2よりも短くなっている。
【0040】
そして、他車両17のバンパ部分が車両1の左側面から衝突すると、まず、アウタパネル13に対して衝突荷重が伝達される。次に、衝突荷重が伝達されたアウタパネル13は、インナパネル12を介して、インナトリム11に対して衝突荷重を伝達する。
【0041】
次に、図5(B)に示す通り、他車両17のバンパ部分が車両1の左側面から衝突すると、係合部15により係合されている側壁パネル10と、インナトリム11とが分離することとなる。
【0042】
具体的には、係合部15により係合されている側壁パネル10と、インナトリム11とのうち、第1係合部15aの上部よりも上方の部分と、第2係合部15bの底部よりも下方の部分とが分離される。一方で、第1係合部15aと、第2係合部15bとの二点間においては、側壁パネル10と、インナトリム11とが係合されたままとなる。そして、インナトリム11は、第1係合部15aと、第2係合部15bとの二点間の面に押圧されて車室側に略平行移動することとなる。これにより、乗員の肩部と腰部を同時に押圧することとなるので、乗員を非衝突側に安定して緩やかに移動させることができる。
【0043】
このように、第1実施形態における自動車の車室構造によれば、他車両17が側方から衝突した場合には、インナトリム11が第3係合部15cと、第4係合部15dとの二点間の面に押圧されて車室側に略平行移動することとなる。これにより、インナトリム11は、第3係合部15cと、第4係合部15dとの二点間の面に押圧されて車室側に略平行移動することとで、乗員の肩部と腰部を同時に押圧することとなるので、乗員を非衝突側に安定して緩やかに加速させることができる。
【0044】
また、車高の低い他車両17が側方から衝突した場合には、インナトリム11が第5係合部15eと、第6係合部15fとの二点間の面に押圧されて車室側に略平行移動することとなる。そして、車高の高い他車両17が側方から衝突した場合には、インナトリム11が第1係合部15aと、第2係合部15bとの二点間の面に押圧されて車室側に略平行移動することとなる。これにより、車高の高い他車両17が側方から衝突した場合であっても、車高の低い他車両17が側方から衝突した場合であっても、乗員を非衝突側に安定して緩やかに移動させることができる。
【0045】
なお、左リアドア5bに対して衝突荷重が伝達された場合を例示して説明したが、右リアドア5aに対して衝突荷重が伝達された場合についても同様の作用効果を奏する。また、右フロントドア4aや、左フロントドア4bに対して衝突荷重が伝達された場合についても同様の作用効果を奏する。
【0046】
(第2実施形態におけるドアの構造)
次に、図6を用いて、第2実施形態におけるドアの構造について説明を行う。なお、図6は、側壁パネル10と、インナトリム11との斜視図でもある。
【0047】
第2実施形態において、第1係合部15a~第6係合部15fは、インナトリム11の上下にわたって列状に配設されている。また、第1係合部15a~第6係合部15fからなる列は、車両1の前後方向に複数設けられている。
【0048】
ここで、第2実施形態においては、図6に示す通り、第1係合部15a~第6係合部15fからなる列が三列設けられている。具体的には、第1係合部15a~第6係合部15fからなる列は、側壁パネル10の前端と、インナトリム11の前端とを係合する第1の列と、側壁パネル10の後端と、インナトリム11の後端とを係合する第2の列と、第1の列と、第2の列との間に配設されている第3の列とにより構成されている。なお、第1係合部15a~第6係合部15fからなる列の数は、適宜設定可能であり、二列であってもよいし、四列以上であってもよい。
【0049】
(第3実施形態における車両1の車室構造)
次に、図7を用いて、第3実施形態における車両1の車室構造について説明を行う。なお、図7は、車両1の後方から視た背面図でもある。
【0050】
第3実施形態において、インナトリム11には、高剛性部16が設けられている。ここで、高剛性部16は、インナトリム11に沿って設けられており、第1係合部15aと、第2係合部15bとの二点間に設けられる第1高剛性部16aと、第3係合部15cと、第4係合部15dとの二点間に設けられる第2高剛性部16bと、第5係合部15eと、第6係合部15fとの二点間に設けられる第3高剛性部16cとにより構成されている。そして、高剛性部16は、インナトリム11の強度と比較して剛性が高くなっている。
【0051】
ここで、高剛性部16は、インナトリム11の内部に板金を配設することによって、インナトリム11の他の部分の剛性よりも剛性が高くなっている。なお、高剛性部16は、高剛性部16の厚みを他のインナトリム11の厚みよりも厚くすることにより、インナトリム11の他の部分の剛性よりも剛性を高くすることもできる。
【0052】
(第4実施形態におけるドアの構造)
次に、図8を用いて、第4実施形態におけるドアの構造について説明を行う。なお、図8は、側壁パネル10と、インナトリム11の斜視図でもある。
【0053】
第4実施形態において、第1係合部15a~第6係合部15fは、インナトリム11の上下にわたって列状に配設されている。また、第1係合部15a~第6係合部15fからなる列が車両1の前後方向に複数設けられている。
【0054】
そして、第4実施形態においては、図8に示す通り、第1係合部15a~第6係合部15fからなる列のそれぞれに対応して、高剛性部16が設けられている。ここで、第1係合部15a~第6係合部15fからなる列のそれぞれに対応して設けられた高剛性部16は、インナトリム11に沿って設けられており、第1係合部15a~第6係合部15fからなる列よりも車室側に設けられている。
【0055】
なお、第4実施形態において、第1係合部15a~第6係合部15fからなる列は、三列設けられており、各第1係合部15a~第6係合部15fからなる列のそれぞれに対応して、高剛性部16が設けられている。具体的には、第1係合部15a~第6係合部15fからなる列は、側壁パネル10の前端と、インナトリム11の前端とを係合する第1の列と、側壁パネル10の後端と、インナトリム11の後端とを係合する第2の列と、第1の列と、第2の列との間に配設されている第3の列とにより構成されている。そして、第1の列~第3の列のそれぞれに高剛性部16が設けられている。なお、第1係合部15a~第6係合部15fからなる列の数は、適宜設定可能であり、二列であってもよいし、四列以上であってもよい。
【0056】
(第5実施形態における車両1の車室構造)
次に、図9を用いて、第5実施形態における車両1の車室構造について説明を行う。なお、図9は、車両1の後方から視た背面図でもある。
【0057】
第5実施形態において、高剛性部16は、図9に示す通り、インナトリム11に設けられた第4高剛性部16dと、インナトリム11に設けられ、第4高剛性部16dよりも車室側に設けられる第5高剛性部16eとにより構成されている。また、第4高剛性部16d、及び第5高剛性部16eは、幅方向に重ねて設けられている。
【0058】
このように、第5実施形態において、高剛性部16は、インナトリム11に幅方向に重ねて設けられる。これにより、車両1の側方から衝撃が入力された場合において、衝突荷重の伝達を軽減させることができる。
【0059】
なお、第5実施形態においては、左リアドア5bを例示して説明したが、右リアドア5aについても、第4高剛性部16dと、第5高剛性部16eとを幅方向に重ねて設けられている。また、右フロントドア4aや、左フロントドア4bについても、第4高剛性部16dと、第5高剛性部16eとを幅方向に重ねて設けられている。
【0060】
(第6実施形態における車両1の車室構造)
次に、図10を用いて、第6実施形態における車両1の車室構造について説明を行う。なお、図10は、車両1の後方から視た背面図でもある。
【0061】
第6実施形態において、高剛性部16は、図10に示す通り、インナトリム11に設けられており、肘掛部14の車外側に設けられている。具体的には、高剛性部16は、肘掛部14に対して車外側から、または車室側から螺子が螺合されることにより取り付けられる。
【0062】
(その他の実施形態)
以下において、その他の実施形態について説明を行う。
【0063】
上述した各実施形態において、第1係合部15a~第6係合部15fは、入力部に対応した位置に設けられているが、これに限定されることはなく、入力部に対応しない係合部15を別途設けることとしてもよい。
【0064】
このように、本発明によれば、側壁パネル10と、インナトリム11とを係合する第1係合部15a~第6係合部15fが配設されている。そして、第3係合部15c~第4係合部15dの上下幅V1は、入力部の上下幅V2よりも短くなっている。
【0065】
そして、他車両17のバンパ部分が車両1の側面から衝突した場合に、第3係合部15cの上部よりも上方の部分と、第4係合部15dの底部よりも下方の部分とが分離される。一方で、第3係合部15cと、第4係合部15dとの二点間においては、側壁パネル10と、インナトリム11とが係合されたままとなる。
【0066】
これにより、インナトリム11は、他車両17のバンパ部分が車両1の側面から衝突した場合に、第3係合部15cと、第4係合部15dとの二点間の面に押圧されて車室側に略平行移動することとで、乗員の肩部と腰部を同時に押圧することとなるので、乗員を非衝突側に安定して緩やかに加速させることができる。従って、乗員に対して障害が発生してしまうことを防止する自動車の車室構造を提供することができる。
【0067】
なお、本発明の実施について図面を用いて説明したが、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。また、各図面で示した実施形態は、その目的及び構成等に矛盾や問題がない限り、互いの記載内容を組み合わせることが可能である。また、各図面の記載内容はそれぞれ独立した実施形態になり得るものであり、本発明の実施形態は各図面を組み合わせた一つの実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0068】
1:車両、2:フロントガラス、3:リアガラス、4:フロントドア、4a:右フロントドア、4b:左フロントドア、5:リアドア、5a:右リアドア、5b:左リアドア、6:フロントドアガラス、6a:右フロントドアガラス、6b:左フロントドアガラス、7:リアドアガラス、7a:右リアドアガラス、7b:左リアドアガラス、8:フロア、9:シート、9a:運転席、9b:助手席、9c:右後部座席、9d:左後部座席、10:側壁パネル、11:インナトリム、12:インナパネル、13:アウタパネル、14:肘掛部、15:係合部、15a:第1係合部、15b:第2係合部、15c:第3係合部、15d:第4係合部、15e:第5係合部、15f:第6係合部、16:高剛性部、16a:第1高剛性部、16b:第2高剛性部、16c:第3高剛性部、16d:第4高剛性部、16e:第5高剛性部、17:他車両
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