(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-29
(45)【発行日】2023-09-06
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
B60L 53/12 20190101AFI20230830BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20230830BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20230830BHJP
【FI】
B60L53/12
H02J7/00 P
H02J7/00 301D
H02J50/10
(21)【出願番号】P 2019018857
(22)【出願日】2019-02-05
【審査請求日】2021-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】守屋 史之
(72)【発明者】
【氏名】戸塚 裕太
(72)【発明者】
【氏名】高木 秀寛
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/114522(WO,A1)
【文献】特開2014-230439(JP,A)
【文献】特開2014-075297(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00-58/40
B60W 10/00-20/50
H02J 7/00
H02J 50/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用の電力を蓄積するバッテリと、
外部から充電用の電力を取り込む電力取込部と、
前記バッテリから走行モータ以外の機器に電源を供給可能な電源機能部と、
前記電源機能部のうち優先度の高い電源として設定された優先電源機能部と、
前記電源機能部のうち前記優先電源機能部よりも優先度の低い電源として設定された非優先電源機能部と、
前記バッテリを電源ラインに接続又は切断する第1リレーと、
前記電力取込部を前記電源ラインに接続又は切断する第2リレーと、
前記電力取込部を介した前記バッテリの充電完了の際、前記電源機能部の使用状況及び
前記優先電源機能部の使用状況に基づいて、前記第1リレー及び前記第2リレーの切替手順を変更する制御部と、
前記優先電源機能部の使用可能性を判断する判断部と、
を備え、
前記判断部は、前記充電完了の際、搭乗者が車室に残っている場合に、前記優先電源機能部の使用可能性があると判断し、
前記制御部は、前記充電完了の際、前記電源機能部が使用されていない場合に、前記第1リレー及び前記第2リレーを切断状態に切り替え、
前記制御部は、前記充電完了の際、前記電源機能部が使用中であって、かつ前記優先電源機能部が使用中である又は前記判断部が前記優先電源機能部の使用可能性があると判断した場合に、前記第1リレー及び前記第2リレーの接続を維持し、
前記制御部は、前記充電完了の際、前記電源機能部が使用中であって、かつ前記優先電源機能部が使用されていない又は前記判断部が前記優先電源機能部の使用の可能性がないと判断した場合に、前記第1リレーの接続を維持し、前記第2リレーを切断状態に切り替え、
前記制御部は、前記電力取込部を介した前記バッテリの充電を開始する際、前記第2リレーが切断状態である場合には、前記第1リレーを切断状態に切り替えた後に、前記第2リレーを接続状態に切り替え、その後に前記第1リレーを接続状態に切り替える切替制御を実行した後に、前記充電を開始し、
前記制御部は、前記電力取込部を介した前記バッテリの充電を開始する際、前記第2リレーが接続状態である場合には、前記切替制御を実行せずに、前記充電を開始することを特徴とする車両。
【請求項2】
前記制御部は、
前記充電完了の際に
前記第1リレー及び前記第2リレーの接続を維持した後、シフトレバーのドライブ位置又はリバース位置への操作を検出した場合には、前記第2リレーを切断状態に切り替え、
前記制御部は、
前記充電完了の際に前記第1リレー及び前記第2リレーの接続を維持した後、システム終了の操作があった場合に、前記第2リレーを切断状態に切り替えることを特徴とする請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記優先電源機能部は、前記バッテリの電力をAC電源電圧に変換してコンセントに出力する車載インバータであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両。
【請求項4】
前記判断部は、イモビライザーの電子キーが車室にあるか否か又はカメラによる車室内の撮影映像に基づいて、前記搭乗者が前記車室に残っているか否かを判別することを特徴とする
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行用の電力を蓄積するバッテリと、外部からバッテリの充電用の電力を取り込む電力取込部とを有する車両に関する。
【背景技術】
【0002】
EV(Electric Vehicle)又はPHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)などの車両は、走行用の電力を蓄積する大容量の高電圧バッテリを備える。高電圧バッテリは、エアコン又はナビゲーションシステムなどの車載機器の電源として使用されることがある。さらに、近年、車体の内外に設けられたコンセントからAC電源を供給する利便性機能が実用化され、利便性機能の電源としても高電圧バッテリが用いられている。
【0003】
このような車両は、外部電源から電力を取り込んで、高電圧バッテリの充電を行うことができる。充電の形式には、地上設備の送電コイルから非接触で電力を取り込む非接触充電形式と、充電コネクタを介して有線で電力を取り込む有線充電形式とがある。
【0004】
一般に、高電圧バッテリを備える車両では、高電圧バッテリの電圧が無暗にシステムの電源ラインに出力されないよう、システムメインリレーを介して、電源ラインと高電圧バッテリとが切断可能とされる。また、高電圧バッテリを外部電源から充電可能な車両においては、電力取込部に、高電圧バッテリの電圧が必要なく出力されないよう、電圧取込部と電源ラインとが充電用リレーを介して切断可能とされる。
【0005】
特許文献1には、高電圧バッテリの充電中に車載機器を優先的に駆動する指示があった場合に、充電電流の一部で車載機器を駆動し、充電器の最大出力電流値と車載機器に供給される電流値との差分の電流によってバッテリを充電する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に示されるように、高電圧バッテリの充電中に電気機器が使用されることがある。この場合、満充電になって充電が完了した後も継続的に電気機器が使用されると、高電圧バッテリの充電率が低下するため、その後、高電圧バッテリの充電が再開されることが想定される。
【0008】
充電の開始時、一般的には、電圧取込部のリレーが切断状態から接続状態に切り替えられる。リレーの切替時には、突入電流によりリレーが破壊されないよう、電源ラインから高電圧バッテリが切り離されることが好ましい。しかし、電気機器の使用中に高電圧バッテリが切り離されると、電気機器への電力供給が中断されて利便性が低下する。
【0009】
本発明は、充電完了後、電気機器の使用を継続しつつ充電を再開する場合でも、電気機器を使用する上での利便性の低下を抑制できる車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の発明は、
走行用の電力を蓄積するバッテリと、
外部から充電用の電力を取り込む電力取込部と、
前記バッテリから走行モータ以外の機器に電源を供給可能な電源機能部と、
前記電源機能部のうち優先度の高い電源として設定された優先電源機能部と、
前記電源機能部のうち前記優先電源機能部よりも優先度の低い電源として設定された非優先電源機能部と、
前記バッテリを電源ラインに接続又は切断する第1リレーと、
前記電力取込部を前記電源ラインに接続又は切断する第2リレーと、
前記電力取込部を介した前記バッテリの充電完了の際、前記電源機能部の使用状況及び前記優先電源機能部の使用状況に基づいて、前記第1リレー及び前記第2リレーの切替手順を変更する制御部と、
前記優先電源機能部の使用可能性を判断する判断部と、
を備え、
前記判断部は、前記充電完了の際、搭乗者が車室に残っている場合に、前記優先電源機能部の使用可能性があると判断し、
前記制御部は、前記充電完了の際、前記電源機能部が使用されていない場合に、前記第1リレー及び前記第2リレーを切断状態に切り替え、
前記制御部は、前記充電完了の際、前記電源機能部が使用中であって、かつ前記優先電源機能部が使用中である又は前記判断部が前記優先電源機能部の使用可能性があると判断した場合に、前記第1リレー及び前記第2リレーの接続を維持し、
前記制御部は、前記充電完了の際、前記電源機能部が使用中であって、かつ前記優先電源機能部が使用されていない又は前記判断部が前記優先電源機能部の使用の可能性がないと判断した場合に、前記第1リレーの接続を維持し、前記第2リレーを切断状態に切り替え、
前記制御部は、前記電力取込部を介した前記バッテリの充電を開始する際、前記第2リレーが切断状態である場合には、前記第1リレーを切断状態に切り替えた後に、前記第2リレーを接続状態に切り替え、その後に前記第1リレーを接続状態に切り替える切替制御を実行した後に、前記充電を開始し、
前記制御部は、前記電力取込部を介した前記バッテリの充電を開始する際、前記第2リレーが接続状態である場合には、前記切替制御を実行せずに、前記充電を開始することを特徴とする車両である。
【0011】
なお、本明細書において切替手順の変更とは、切替対象の変更、切替内容の変更、切替順序の変更、及び、これらの変更の組み合わせを含む概念である。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の車両であって、
前記制御部は、
前記充電完了の際に前記第1リレー及び前記第2リレーの接続を維持した後、シフトレバーのドライブ位置又はリバース位置への操作を検出した場合には、前記第2リレーを切断状態に切り替え、
前記制御部は、
前記充電完了の際に前記第1リレー及び前記第2リレーの接続を維持した後、システム終了の操作があった場合に、前記第2リレーを切断状態に切り替えることを特徴とする。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の車両であって、
前記優先電源機能部は、前記バッテリの電力をAC電源電圧に変換してコンセントに出力する車載インバータであることを特徴とする。
【0014】
請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の車両であって、
前記判断部は、イモビライザーの電子キーが車室にあるか否か又はカメラによる車室内の撮影映像に基づいて、前記搭乗者が前記車室に残っているか否かを判別することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電源機能部の使用状況に応じて、充電完了時における第1リレーと第2リレーとの切替手順を変更できる。充電中又は充電完了時の電源機能部の使用状況は、充電完了後の電源機能部の使用状況と相関があるので、上記の切替手順の変更により、充電完了後の電源機能部の使用状況に適した第1リレーと第2リレーとの切り替えを実現できる。これにより、例えば、充電完了後、電源機能部の使用により、バッテリの充電率が低下することで、バッテリの充電が再開されるような場合に、電源機能部の電力供給が中断されないような、第1リレー及び第2リレーの切替を実現できる。これにより、充電完了後、電気機器の使用を継続しつつ充電を再開する場合でも、電源機能部の利便性の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両を示すブロック図である。
【
図2】充電制御部が実行する非接触充電終了処理の手順を示すフローチャートである。
【
図3】充電制御部が実行する非接触充電開始処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態の車両を示すブロック図である。
【0019】
本発明の実施形態に係る車両1は、EV又はHEV(Hybrid Electric Vehicle)などであり、走行用の電力を蓄積するバッテリ11と、駆動輪を駆動する走行モータ13と、バッテリ11と走行モータ13との間で電力を変換するインバータ12と、バッテリ11の状態を管理するBCU(Battery Control Unit)14とを備える。バッテリ11は、走行モータ13を駆動する高電圧を出力し、高電圧バッテリと呼んでもよい。バッテリ11は、例えばリチウムイオン蓄電池又はニッケル水素蓄電池などの二次電池である。
【0020】
車両1は、さらに、システムメインリレーR1、プリチャージ部PC及び電源ラインLbを備える。バッテリ11は、システムメインリレーR1及びプリチャージ部PCを介して電源ラインLbに接続される。プリチャージ部PCは、システムメインリレーR1が切断状態のときに、システムメインリレーR1の両端間の電圧を緩やかに近づける機能を有する。バッテリ11を電源ラインLbに接続するには、まず、プリチャージ部PCが接続状態に切り替えられ、これによりシステムメインリレーR1の両端間の電位差が小さくされる。その後、システムメインリレーR1が接続状態に、プリチャージ部PCが切断状態に切り替えられ、これにより、システムメインリレーR1に過大な電流が流れずに、システムメインリレーR1を切断状態から接続状態に切り替えることができる。以下、システムメインリレーR1を接続状態に切り替えると説明したときは、プリチャージ部PCの上記の切り替えの動作が含まれるものとする。システムメインリレーR1は、本発明に係る第1リレーの一例に相当する。
【0021】
車両1は、さらに、走行制御と各部の制御を行う車両制御部15を備える。車両制御部15は、1つのECU(Electronic Control Unit)から構成されてもよいし、互いに連携して動作する複数のECUから構成されてもよい。車両制御部15は、例えば、運転操作部(図示略のペダル、シフトレバー41等)の操作に応じて、インバータ12を駆動し、走行モータ13を力行運転又は回生運転させる。これにより、運転操作に応じた車両1の走行が実現される。加えて、車両制御部15は、電源機能部25の始動制御と、システムメインリレーR1及びプリチャージ部PCの切り替え制御とを行う。
【0022】
車両1は、さらに、走行モータ13以外の電気機器にバッテリ11の電力を用いて電源電圧を供給する電源機能部25を備える。電源機能部25は、エアコン用インバータ21、車載インバータ23、並びに、図示略のヒータスイッチなどを含む。エアコン用インバータ21は、バッテリ11の電力を変換してエアコン22(コンプレッサ等)に駆動電流を送る。車載インバータ23は、バッテリ11の電力をAC電源電圧に変換し、車内コンセント24に出力する。車両1の搭乗者は、車載インバータ23を駆動させることで、例えば家庭用の電気器具を車内コンセント24に接続して使用することができる。ヒータスイッチには、負荷として、空調用の冷媒又はバッテリ11を温めるPTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータが接続され、オンされることでPCTヒータに電力を供給する。
【0023】
なお、車内コンセント24の代わりに、あるいは、車内コンセント24に加えて、車載インバータ23には、車両1の近傍(車室外)で電気器具を使用できる車外コンセント又は宅内のコンセントが接続されていてもよい。あるいは、電源機能部25は、車載インバータ23の代わりに、外付け用のインバータを接続可能なコネクタ及びリレーを備えていてもよい。そして、コネクタに外付け用のインバータが接続され、リレーがオンにされることで、車両制御部15の制御により、電源ラインLbからインバータへ電力が供給され、外付け用のインバータから車外コンセントへAC電源電圧が出力されるように構成されてもよい。また、外付け用のインバータから家庭のコンセントへAC電源電圧が出力されるように構成されてもよい。車両1から車外へAC電源電圧を供給する構成はV2L(Vehicle to Load)であり、車両1から宅内へAC電源電圧を供給する構成はV2H(Vehicle to Home)である。このような構成により、車両1のユーザは、車両1の近傍又は家庭で、車両1から供給される電力を用いて電気器具を使用することができる。
【0024】
車両1は、さらに、地上設備100から非接触に電力を取り込む非接触充電機構30を備える。非接触充電機構30は、受電コイル31、整流器32、無線通信を行う通信部33、充電制御部34及び充電用リレーR2を備える。受電コイル31は、地上設備100の送電コイル103と対向した状態で、電磁的な結合又は電磁的な共鳴により送電コイル103から電力を受けることができる。整流器32は、受電コイル31から出力される交流電流を整流し、電源ラインLb側へ送る。充電用リレーR2は、整流器32と電源ラインLbとを接続状態と切断状態とに切り替える。充電用リレーR2は、本発明に係る第2リレーの一例に相当する。受電コイル31及び整流器32は、本発明に係る電力取込部の一例を示す。充電制御部34は、本発明に係る制御部及び判断部の一例に相当する。
【0025】
充電制御部34は、通信部33を介して地上設備100と通信を行い、かつ、整流器32から電圧情報を受けて、非接触充電の制御を行う。非接触充電の制御には、充電用リレーR2の切替制御が含まれる。充電制御部34は、通信ラインLcを介した通信を行って、車両制御部15及びBCU14と連携する。すなわち、充電制御部34は、車両制御部15を介してシステムメインリレーR1の切替制御を行うことができ、また、車両制御部15又はBCU14を介して搭乗者による各種運転操作の情報とバッテリ11の状態情報を取り込むことができる。各種運転操作の情報には、シフトレバー41の位置情報(パーキングモード、ドライブモード、リバースモードなど)が含まれる。バッテリ11の状態情報には充電率(SOC:State of Charge)が含まれる。
【0026】
充電制御部34は、CPU(Central Processing Unit)、CPUが実行する制御プログラム及び制御データを格納した記憶部、並びに、CPUがデータを展開するRAM(Random Access Memory)を有するECUである。記憶部には、電源機能部25のうち、電力供給が中断すると支障が生じる場合のある優先電源機能部(例えば車載インバータ23)と、電力供給の中断が許容される非優先電源機能部(例えばエアコン用インバータ21及びヒータスイッチ)とを区分けする優先電源機能設定情報34aが格納されている。優先電源機能部と非優先電源機能部とは、例えば、車両1のメーカ又はディーラの設定者により設定されてもよいし、ユーザにより設定されてもよい。以下では、上記のように車載インバータ23が優先電源機能部として設定され、エアコン用インバータ21と図示略のヒータスイッチが非優先電源機能部として設定された例を示す。車載インバータ23には、電源が中断されると支障のある電気機器が接続される可能性がある。
【0027】
車両1は、さらに、ダッシュボード等に設けられた非接触充電移行スイッチ36を備える。車両1の搭乗者は、非接触充電移行スイッチ36を操作することで、充電制御部34へ非接触充電への移行の指令を送ることができる。
【0028】
なお、車両制御部15と充電制御部34とは通信ラインLcを介した通信により連携するので、
図1の例に示される車両制御部15の処理の一部(例えばシステムメインリレーR1の切替制御)は、充電制御部34が行ってもよい。逆に、
図1の例に示される充電制御部34の処理の一部(例えば非接触充電移行スイッチ36からの信号入力、充電用リレーR2の切替制御)は、車両制御部15が行ってもよい。また、車両制御部15と充電制御部34とは、別構成とせずに、一組の制御部として統合されてもよい。
【0029】
地上設備100は、非接触に電力を伝送する送電コイル103と、外部電源の電力を変換して送電コイル103へ出力するインバータ102と、車両1の充電制御部34と通信可能な通信部106と、インバータ102を駆動制御する地上設備制御部105とを備える。車両1の充電制御部34は、通信部33、106による無線通信を介して、地上設備制御部105へ、送電コイル103の励磁要求を送ることができる。
【0030】
<非接触充電処理>
まず、通常の非接触充電処理について説明する。非接触充電処理は、車両1が地上設備100の近傍にあるときに、非接触充電移行スイッチ36が操作されることで開始される。非接触充電処理が開始されると、まず、充電制御部34は、車両1を地上設備100から受電可能な状態へ遷移させる非接触充電移行処理を実行する。非接触充電移行処理において、受電コイル31と送電コイル103との位置合わせが未だである場合、充電制御部34は、受電コイル31の位置合わせ処理を開始する。
【0031】
位置合わせ処理では、充電制御部34が地上設備100に位置合わせ用の弱い励磁を要求する。この要求に応じて送電コイル103が弱く励磁される。その後、充電制御部34は、受電コイル31に生じる誘導起電力を確認しながら運転者を誘導して車両を移動させ、これにより、受電コイル31が送電コイル103に対向するように位置合わせを行う。受電コイル31の位置合わせは、システムメインリレーR1が接続状態、充電用リレーR2が切断状態で実行される。
【0032】
受電コイル31の位置合わせが完了し、車両1が停止すると、充電制御部34は、システムメインリレーR1と充電用リレーR2との両方が接続状態となるようにリレーの切替制御を行う。例えば、充電用リレーR2が切断状態にあれば、充電制御部34は、順次、システムメインリレーR1を切断状態に切り替え、充電用リレーR2を接続状態に切り替え、システムメインリレーR1を接続状態に切り替える。このような切替制御により、充電用リレーR2に突入電流など過大な電流が流れることを抑制できる。
【0033】
受電コイル31の位置合わせとリレーの切替制御とが完了したら、充電制御部34は、地上設備100に、充電用の電力伝送を要求し、送電コイル103から受電コイル31に電力伝送が行われる。受電コイル31で受けた電力は、整流器32で整流され、電源ラインLbを介してバッテリ11へ送られる。さらに、このとき、電源機能部25が使用されていれば、電源ラインLbからこれらにも電力が送られる。電力の伝送中、充電制御部34は、充電時間、バッテリ11の充電率、送電の有無等を監視し、例えば所定の充電時間が経過するか、バッテリ11が満充電となったら、電力伝送の終了時と判断する。
【0034】
<非接触充電終了処理>
図2は、充電制御部が実行する非接触充電終了処理の手順を示すフローチャートである。充電制御部34は、電力伝送の終了時と判断したら、
図2の非接触充電終了処理を開始する。そして、充電制御部34は、地上設備100に電力伝送の停止を要求する(ステップS1)。停止要求により、送電コイル103の励磁が停止される。次に、充電制御部34は、車両制御部15へ問い合わせを行って、電源機能部25が使用中か否かを判別する(ステップS2)。判別の結果、電源機能部25が未使用であれば、充電制御部34は、充電用リレーR2を切断状態に切り替え(ステップS3)、車両制御部15を介してシステムメインリレーR1を切断状態に切り替え(ステップS4)、非接触充電終了処理を終了する。なお、ステップS3とステップS4との順番は逆であってもよいし、同時に実行されてもよい。
【0035】
一方、ステップS2の判別の結果、電源機能部25が使用中であると判別された場合、充電制御部34は、優先電源機能部(車載インバータ23)の使用可能性が有るか否かを判別する(ステップS5)。具体的には、充電制御部34は、その時点から車両1のシステムが終了する前に、優先電源機能部が使用される可能性があるか否かを判別する。システムの終了とは、搭乗者が車両1の起動ボタンに用いてシステム終了の操作を行うことで、システムメインリレーR1が切断状態に切り替えられ、かつ、車両制御部15が待機モードに移行した状態を意味する。この実施形態では、優先電源機能部としては車載インバータ23が設定されており、搭乗者が車室に残っている場合、車載インバータ23が駆動されて、不特定の電気機器に電源が供給される可能性がある。したがって、充電制御部34は、車両1に搭乗者が残っているか否かによって、ステップS5の優先電源機能部の使用可能性の判別処理を実行する。充電制御部34は、例えばイモビライザーの電子キーが車室にあるか否か、図示しない車重センサの出力、シフトレバー41の操作履歴、サイドブレーキの操作履歴、ドア開閉とシートベール装着の履歴、図示略のカメラによる車室内の撮影映像などから、車両1に搭乗者が残っているか否かを判別できる。
【0036】
また、ステップS5の判別処理において、充電制御部34は、その時点で優先電源機能部(車載インバータ23)が使用されている場合には、当然に使用可能性有りと判断する。
【0037】
その結果、車室に搭乗者が残っておらず、優先電源機能部(車載インバータ23)の使用可能性が無いと判別されたら、充電制御部34は、充電用リレーR2を切断状態に切り替え(ステップS6)、非接触充電終了処理を終了する。
【0038】
一方、ステップS5の判別処理の結果、優先電源機能部(車載インバータ23)の使用可能性が有ると判別されたら、充電制御部34は、システムメインリレーR1及び充電用リレーR2の両方を接続状態としたまま、非接触充電終了処理を終了する。
【0039】
なお、非接触充電終了処理において、システムメインリレーR1が接続状態のまま非接触充電が終了された場合、その後の搭乗者による、車両1のシステム終了の操作があったときに、車両制御部15がシステムメインリレーR1を切断状態に切り替える。また、システムメインリレーR1と充電用リレーR2とが接続状態のまま非接触充電が終了された場合、その後の搭乗者による、車両1のシステム終了の操作があったときに、充電制御部34が充電用リレーR2を切断状態に切り替える。これにより、システム終了後、バッテリ11の高電圧が不必要に電源ラインLb又は受電コイル31等に出力されることを抑制できる。
【0040】
また、非接触充電終了処理において、システムメインリレーR1と充電用リレーR2とが接続状態のまま非接触充電が終了された場合、その後の搭乗者による、シフトレバー41のドライブ位置又はリバース位置への操作に基づいて、充電制御部34が充電用リレーR2を切断状態に切り替える。これにより、車両1が走行する際に、受電コイル31にバッテリ11の高電圧が不必要に出力されることを抑制できる。
【0041】
なお、
図2のステップS5、S6の処理は、所定時間の時間切れまで、優先電源機能部の使用可能性が無い場合に、充電用リレーR2を切断する処理に変更されてもよい。充電終了時に、電源機能部25の使用があり、かつ、車室に搭乗者が残っていない場合、しばらくの期間、車両1の状態に変化が生じないことが想定される。したがって、充電用リレーR2の切断まで遅延時間を設けても、遅延による悪影響は生じない。さらに、このような場合、その後に運転者等が車室に戻ってくることも想定され、所定時間の遅延により、その後に、優先電源機能部(車載インバータ23)の使用可能性が高まるような場合に、それに対応することができる。
【0042】
また、充電制御部34は、ステップS6で充電用リレーR2を切断した後も、優先電源機能部の使用可能性が有るか否かの判別を継続的に繰り返し、使用可能性が無しから有りに変わった場合に、充電用リレーR2を接続状態に切り替える制御を行ってもよい。充電用リレーR2を接続状態に切り替える際には、充電用リレーR2に過大な電流が流れないよう、例えばシステムメインリレーR1を、一旦、切断し、その状態で充電用リレーR2を接続し、その後、システムメインリレーR1を接続するなどの、シーケンスが採用される。システムメインリレーR1が接続状態のまま、充電用リレーR2を保護しつつ充電用リレーR2を切断状態に切り替える方法がある場合、その方法が採用されてもよい。
【0043】
一方、優先電源機能部の使用可能性の有りと無しとが、頻々に切り替わるような場合、上記の制御では、システムメインリレーR1と充電用リレーR2とが頻繁に断続動作し、これにより、リレーの劣化を早める恐れがある。そこで、ステップS6で充電用リレーR2を切断状態に切り替えた場合には、充電制御部34は、優先電源機能部の使用可能性の有無の判別を繰り返すのではなく、優先電源機能部が実際に使用されたか否かの判別を繰り返し、優先電源機能部が実際に使用された場合に、充電用リレーR2を接続状態に切り替える制御を行ってもよい。このような制御により、システムメインリレーR1及び充電用リレーR2が頻繁に断続動作することを抑制できる。また、優先電源機能部の使用の操作が行われた場合には、優先電源機能部の電源電圧の供給を遅延させ、遅延中に、充電用リレーR2の切替の制御を行ってもよい。
【0044】
<非接触充電移行処理>
図3は、充電制御部が実行する非接触充電移行処理の手順を示すフローチャートである。なお、前述した受電コイル31の位置合わせ処理及びリレー切替制御を含んだ非接触充電移行処理は、
図3のステップS12の通常の非接触充電移行処理に該当する。本実施形態の非接触充電移行処理では、非接触充電の終了時に、充電用リレーR2が接続状態で維持される場合があるため、これに対応するステップが加わる。
【0045】
非接触充電移行スイッチ36が操作されて非接触充電移行処理が開始されると、まず、充電制御部34は、充電用リレーR2が接続状態であるか否かを判別する(ステップS11)。その結果、切断されていれば、前述したとおりの通常の非接触充電移行処理を実行する(ステップS12)。一方、充電用リレーR2が接続状態である場合、充電制御部34は、受電コイル31の位置合わせの処理及びリレーの切替制御を行わずに、地上設備100に電力伝送開始の要求を送り(ステップS13)、バッテリ11の充電を開始する。
【0046】
<比較>
図4は、再充電処理を説明するグラフである。
図4のグラフは、縦軸がバッテリ11の充電率を示し、横軸が時間を示す。例えば、車両1の搭乗者が車室で何らかの作業を行いながら非接触充電を行ったとする。この場合、
図4の期間T1に電源機能部25が使用されながら非接触充電が行われ、満充電となったタイミングt1で非接触充電が終了しても、その後の期間T2において電源機能部25が継続的に使用されることで、再び、バッテリ11の充電率が低下する。そして、搭乗者が、或るタイミングt2で、充電率の低下に気づくと、搭乗者は、再び、非接触充電移行スイッチ36を操作して非接触充電を開始する場合がある。再充電により、その後の期間T3において、バッテリ11の充電率を回復できる。
【0047】
ここで、第1の比較例として、非接触充電の終了時に、システムメインリレーR1と充電用リレーR2とが一律に切断されるような構成について説明する。このような構成では、搭乗者が電源機能部25を使用して車室で作業している場合でも、非接触充電終了のタイミングt1で電源機能部25への電力供給が停止されてしまう。このため、例えば電力供給の中断で停止するような電気機器を使用している場合、予期せずに電気機器が停止することで電源機能部25の利便性が低下する。
【0048】
次に、第2の比較例として、非接触充電の終了時、システムメインリレーR1は切断状態に切り替えられないが、充電用リレーR2が切断状態に切り替えられる構成について説明する。このような構成では、非接触充電中に電源機能部25を使用していても、非接触充電終了時に電力供給が中断することはない。しかし、その後、
図4のタイミングt2で非接触充電が再度行われるような場合に、電源供給の中断が生じる。なぜならば、前述したように、充電用リレーR2を切断状態から接続状態に切り替える場合、電源ラインLbに高電圧が出力されていると、突入電流により過大な電流が充電用リレーR2に流れてしまうため、システムメインリレーR1が、一旦、切断状態に切り替えられるからである。このため、例えば電力供給の中断によりリセットされる、あるいは、電力が中断される場合に動作を終了する必要のあるなどの、電力供給の中断により支障が生じる電気機器を使用している場合、バッテリ11を再充電する際に電力供給が中断し利便性が低下する。
【0049】
一方、本実施形態の非接触充電終了処理(
図2)では、電源機能部25が使用中である場合に、システムメインリレーR1が接続状態のまま、非接触充電が終了される。したがって、上記のように予期せずに電気機器が停止することが回避され、利便性の低下が抑制される。さらに、本実施形態の非接触充電終了処理(
図2)では、優先電源機能部(車載インバータ23)の使用可能性がある場合に、充電用リレーR2が接続状態のまま、非接触充電が終了される。そして、本実施形態の非接触充電移行処理(
図3)では、充電用リレーR2が接続状態である場合に、そのまま電力伝送の開始が要求される。したがって、バッテリ11の再充電の際に、電力供給が中断すると支障のある電気機器を使用していても、電力供給が中断されないので、電源機能部25の利便性の低下が抑制される。
【0050】
以上のように、本実施形態の車両1によれば、充電制御部34は、電源機能部25の使用状況に応じて、非接触充電の完了の際、システムメインリレーR1及び充電用リレーR2の切替手順を変更する。非接触充電中の電源機能部25の使用状況は、非接触充電完了後の電源機能部25の使用状況と相関する。したがって、上記のような制御により、非接触充電の完了後の電源機能部25の使用状況に適した、システムメインリレーR1及び充電用リレーR2の切り替えを実現できる。これにより、非接触充電の完了後も電源機能部25が継続して使用される場合、あるいは、電源機能部25の継続使用中にバッテリ11の再充電が行われる場合などに、電源機能部25の利便性が低減されてしまうことを抑制できる。
【0051】
また、本実施形態の車両1によれば、再度の非接触充電が行われる場合に、システムメインリレーR1と充電用リレーR2の状態を切り替えることなく、充電用の電力伝送が開始される。したがって、従来の再充電時と比較して、短時間で非接触充電を再開することができる。また、再充電の際、システムメインリレーR1と充電用リレーR2との切替が不要な分、システムメインリレーR1とプリチャージ部PCの経時劣化を低減できる。
【0052】
さらに、本実施形態の車両1によれば、充電制御部34は、非接触充電の完了の際、電源機能部25が使用中である場合に、システムメインリレーR1の接続状態を維持する。これにより、非接触充電の完了時に、使用していた電気機器が予期せず停止してしまうといった事態を回避できる。
【0053】
さらに、本実施形態の車両1によれば、充電制御部34は、非接触充電の完了の際、優先電源機能部の使用状況に基づいて、システムメインリレーR1と充電用リレーR2との切替手順を変更する。電源機能部25には、電源供給中断の許容度が高い機器が接続されることが分かっているものと、電源供給中断の許容度が低い機器が接続されるもの、あるいは、このような機器が接続される可能性があるものとがある。そして、電源供給の中断の許容度が高ければ、非接触充電の完了後に、電源供給の中断があっても、搭乗者は利便性の低下を感じない。一方、電源供給中断の許容度が低ければ、非接触充電の完了後に、電源供給の中断があると、搭乗者は利便性の低下を感じやすい。したがって、優先電源機能部の使用状況に基づいて、リレーの切替手順を変更することで、搭乗者の利便性の低下を効率的に抑制することができる。
【0054】
具体的には、充電制御部34は、非接触充電の完了の際、優先電源機能部が使用されている場合に、充電用リレーR2の接続状態を維持する。これにより、非接触充電の完了後に、再度、非接触充電が行われる場合でも、システムメインリレーR1を切断せずに、非接触充電を開始することができ、優先電源機能部からの電源供給を継続させることができる。これにより、電源供給の中断が支障となる機器を使用している場合でも、電源供給の中断がなく、電源機能部25の利便性の低下を抑制できる。
【0055】
さらに、本実施形態の車両1によれば、充電制御部34は、非接触充電の完了の際、優先電源機能部の使用の可能性の有無を判別し、使用の可能性があれば、充電用リレーR2の接続状態を維持する。したがって、非接触充電の完了後に、優先電源機能部が使用され、その後、非接触充電が再度実行されるような場合でも、優先電源機能部からの電源供給の中断がなく、電源機能部25の利便性の低下を抑制できる。
【0056】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限らない。例えば、上記実施形態では、本発明に係る電力取込部として、非接触に電力伝送を行う構成を一例として示した。しかし、本発明に係る電力取込部としては、有線接続により外部電源から電力を伝送する構成が適用されてもよい。例えば、外部からDC電源電圧を取り込んでバッテリを充電する車両においては、DC電源電圧が入力される電力取込部として、非接触充電機構における受電コイル及び整流器が有線の電力線に変わり、通信部が有線方式に変わった構成が適用され、その他の構成要素は、非接触充電機構とほぼ同様である。したがって、DC電源から有線接続によりバッテリを充電する車両においても、実施形態と同様の構成及び制御方法により、
【0057】
また、上記実施形態では、車室に搭乗者が残っている場合に、優先電源機能部の使用の可能性ありと判別する例を示した。しかし、優先電源機能部の使用の可能性の有無は、例えば、充電を行った場所、充電時刻、曜日、天気情報などから、ユーザごとの習慣を学習し、この学習結果に基づいて優先電源機能部の使用の可能性を判別するなど、様々な手法が適用されてもよい。その他、実施形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 車両
11 バッテリ
12 インバータ
13 走行モータ
14 BCU
15 車両制御部
21 エアコン用インバータ(非優先電源機能部)
23 車載インバータ(優先電源機能部)
24 車内コンセント
25 電源機能部
31 受電コイル(電力取込部)
32 整流器(電力取込部)
34 充電制御部
36 非接触充電移行スイッチ
41 シフトレバー
Lb 電源ライン
Lc 通信ライン
R1 システムメインリレー(第1リレー)
R2 充電用リレー(第2リレー)
PC プリチャージ部
100 地上設備
103 送電コイル