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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-29
(45)【発行日】2023-09-06
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
   B60L 7/14 20060101AFI20230830BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20230830BHJP
   B60L 58/12 20190101ALI20230830BHJP
   B60L 58/26 20190101ALI20230830BHJP
【FI】
B60L7/14
B60L50/60
B60L58/12
B60L58/26
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019111687
(22)【出願日】2019-06-17
(65)【公開番号】P2020205687
(43)【公開日】2020-12-24
【審査請求日】2022-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】延本 泰一
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-225402(JP,A)
【文献】特開2016-226116(JP,A)
【文献】特開2018-070033(JP,A)
【文献】特開2012-095443(JP,A)
【文献】特開2013-049359(JP,A)
【文献】特開2011-015515(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00 - 3/12
B60L 7/00 - 13/00
B60L 15/00 - 58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリと、
車輪に接続されるモータジェネレータと、
前記バッテリの電力を変換して前記モータジェネレータに供給可能であり、前記車輪の回転に応じて前記モータジェネレータで発生した電力を変換して前記バッテリに回生可能な電力変換部と、
前記バッテリのSOCを導出するSOC導出部と、
前記バッテリの温度を検出するバッテリ温度検出部と、
前記電力変換部を通じて回生可能なサーボオフ制御と、前記モータジェネレータのトルクがゼロとなるように前記電力変換部を制御するゼロトルク制御とを切り替える閾値となる前記モータジェネレータの回転数である切替回転数を、前記バッテリのSOCおよび前記バッテリの温度に基づいて導出し、前記モータジェネレータの回転数が前記切替回転数以下である場合、前記サーボオフ制御を行い、前記モータジェネレータの回転数が前記切替回転数より高い場合、前記ゼロトルク制御を行う切替制御部と、
を備える車両。
【請求項2】
前記バッテリの電力を消費して前記バッテリを冷却可能な温度調節部をさらに備え、
前記切替制御部は、前記温度調節部を作動させることによる前記バッテリの温度の低下に従った前記切替回転数の増加量と、前記温度調節部を作動させることによる前記バッテリのSOCの低下に従った前記切替回転数の減少量とに基づいて、前記温度調節部を作動させるか否かを判断する請求項1に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機の逆起電力を推定して、シャットダウン制御とゼロトルク制御とを切り替える技術が開示されている(例えば、特許文献1)。かかる技術において、シャットダウン制御では、インバータがシャットダウンされ、ゼロトルク制御では、電動機のトルクがゼロとなるようにインバータが制御される。シャットダウン制御では、電動機(発電機)で発生した電力をバッテリに回生することができるが、ゼロトルク制御では、回生は行われない。なお、シャットダウン制御は、サーボオフ制御とも呼ばれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-70033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、走行中にシフトポジションがNレンジにされた場合、車両を駆動する必要がないため、電力変換部(インバータ)をサーボオフ制御(シャットダウン制御)してモータジェネレータ(電動機)で発生した電力をバッテリに回生することができる。しかし、車両の速度が高い(モータジェネレータの回転数が高い)状態でNレンジにされた場合にサーボオフ制御を行うと、モータジェネレータで発生した電力の電圧(モータジェネレータの誘起電圧)がバッテリ電圧より高くなり、バッテリを破損するおそれがある。そこで、このような場合には、回生を行わず、かつ、駆動力を発生させないように、ゼロトルク制御に切り替えられる。
【0005】
しかし、バッテリ電圧がバッテリ温度によって変化するため、ゼロトルク制御に切り替えるべきモータジェネレータの回転数(車両の速度)が温度に依存して変化する。このため、バッテリ温度に拘わらず一義的にゼロトルク制御に切り替えると、本来サーボオフ制御が可能な状況でゼロトルク制御を行ったり、本来ゼロトルク制御をすべき状況でサーボオフ制御を行ったりというように、サーボオフ制御とゼロトルク制御との切り替えを適切に行えないおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、バッテリ温度が変化してもサーボオフ制御とゼロトルク制御とを適切に切り替えることが可能な車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の車両は、バッテリと、車輪に接続されるモータジェネレータと、バッテリの電力を変換してモータジェネレータに供給可能であり、車輪の回転に応じてモータジェネレータで発生した電力を変換してバッテリに回生可能な電力変換部と、バッテリのSOCを導出するSOC導出部と、バッテリの温度を検出するバッテリ温度検出部と、電力変換部を通じて回生可能なサーボオフ制御と、モータジェネレータのトルクがゼロとなるように電力変換部を制御するゼロトルク制御とを切り替える閾値となるモータジェネレータの回転数である切替回転数を、バッテリのSOCおよびバッテリの温度に基づいて導出し、モータジェネレータの回転数が切替回転数以下である場合、サーボオフ制御を行い、モータジェネレータの回転数が切替回転数より高い場合、ゼロトルク制御を行う切替制御部と、を備える。
【0008】
また、バッテリの電力を消費してバッテリを冷却可能な温度調節部をさらに備え、切替制御部は、温度調節部を作動させることによるバッテリの温度の低下に従った切替回転数の増加量と、温度調節部を作動させることによるバッテリのSOCの低下に従った切替回転数の減少量とに基づいて、温度調節部を作動させるか否かを判断してもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、バッテリ温度が変化してもサーボオフ制御とゼロトルク制御とを適切に切り替えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態による車両の構成を示す概略図である。
図2】電力変換部の構成を説明する図である。
図3】切替回転数の導出について説明する図である。
図4】切替マップの一例を示す図である。
図5】温度調節部を作動させると仮定した場合の切替回転数の将来の時間推移の一例を示す図である。
図6】切替回転数の増加量の絶対値と切替回転数の減少量の絶対値との差分がゼロより大きい例を示す切替マップの部分拡大図である。
図7】切替回転数の増加量の絶対値と切替回転数の減少量の絶対値との差分がゼロ以下の例を示す切替マップの部分拡大図である。
図8】切替制御部の動作の流れを説明するフローチャートである。
図9】温調作動制御の流れを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0012】
図1は、本実施形態による車両1の構成を示す概略図である。図1では、制御信号の流れを破線の矢印で示している。以下では、本実施形態に関係する構成や処理について詳細に説明し、本実施形態と無関係の構成や処理については説明を省略する。
【0013】
車両1は、前輪10a、後輪10b、モータジェネレータ12a、12b、ディファレンシャルギヤ14a、14b、ドライブシャフト16a、16b、バッテリ18、電力変換部20a、20b、中央制御部22、バッテリ温度検出部24、温度調節部26、SOC導出部28、外気温検出部30、速度検出部32、シフト検出部34を含んで構成される。
【0014】
車両1は、前輪10aを駆動するモータジェネレータ12aと後輪10bを駆動するモータジェネレータ12bとをそれぞれ駆動源とした電気自動車である。以後、前輪10aおよび後輪10bを総称して、車輪10と呼ぶ場合があり、モータジェネレータ12a、12bを総称して、モータジェネレータ12と呼ぶ場合があり、電力変換部20a、20bを総称して、電力変換部20と呼ぶ場合がある。また、車両1を、自車両と呼ぶ場合がある。
【0015】
なお、ここでは、前輪10aと後輪10bとでそれぞれモータジェネレータ12が設けられる車両1を例示するが、車両1は、例えば、1個のモータジェネレータで前輪10aおよび後輪10bの両方を駆動する電気自動車であってもよい。また、車両1は、エンジンとモータジェネレータ12とが並行して設けられるハイブリッド電気自動車であってもよい。
【0016】
モータジェネレータ12は、例えば、永久磁石形同期モータジェネレータであるが、これに限らず、誘導モータジェネレータなどであってもよい。また、モータジェネレータ12aおよびモータジェネレータ12bは、仕様(例えば、定格出力など)が異なっていてもよいし、同仕様であってもよい。
【0017】
モータジェネレータ12aは、回転軸がディファレンシャルギヤ14aに接続されている。ディファレンシャルギヤ14aは、ドライブシャフト16aを通じて前輪10aに接続されている。
【0018】
モータジェネレータ12bは、回転軸がディファレンシャルギヤ14bに接続されている。ディファレンシャルギヤ14bは、ドライブシャフト16bを通じて後輪10bに接続されている。
【0019】
バッテリ18は、例えば、リチウムイオン電池等の二次電池である。電力変換部20は、例えば、インバータである。
【0020】
電力変換部20aは、バッテリ18およびモータジェネレータ12aに接続される。電力変換部20aは、中央制御部22の制御の下、バッテリ18の直流電力を交流電力に変換してモータジェネレータ12aに供給可能である。モータジェネレータ12aは、電力変換部20aを通じて供給される交流電力を消費して回転軸を駆動する。その結果、モータジェネレータ12aは、ディファレンシャルギヤ14aおよびドライブシャフト16aを通じて前輪10aを駆動する。
【0021】
上記のモータジェネレータ12aは、電動機(モータ)として機能することができるだけでなく、前輪10aの回転に応じて発電機(ジェネレータ)として機能することができる。また、上記の電力変換部20aは、前輪10aの回転に応じてモータジェネレータ12aで発生した交流電力を直流電力に変換してバッテリ18に回生可能である。
【0022】
電力変換部20bは、バッテリ18およびモータジェネレータ12bに接続される。電力変換部20bは、中央制御部22の制御の下、バッテリ18の直流電力を交流電力に変換してモータジェネレータ12に供給可能である。モータジェネレータ12は、電力変換部20を通じて供給される交流電力を消費して回転軸を駆動する。その結果、モータジェネレータ12は、ディファレンシャルギヤ14およびドライブシャフト16を通じて輪10を駆動する。
【0023】
上記のモータジェネレータ12bは、電動機(モータ)として機能することができるだけでなく、後輪10bの回転に応じて発電機(ジェネレータ)として機能することができる。また、上記の電力変換部20bは、後輪10bの回転に応じてモータジェネレータ12bで発生した交流電力を直流電力に変換してバッテリ18に回生可能である。
【0024】
図2は、電力変換部20の構成を説明する図である。電力変換部20は、スイッチング素子50、ダイオード52、ゲート駆動回路54、コンデンサ56、ゲート信号制御部58を含む。
【0025】
スイッチング素子50は、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などの半導体スイッチである。電力変換部20では、2個のスイッチング素子50が正側直流母線60と負側直流母線62との間に直列接続されてアームが形成されている。また、電力変換部20では、アームが3組形成され、その3組のアームが正側直流母線60と負側直流母線62との間に並列接続されている。
【0026】
モータジェネレータ12は、各アームにおける2個のスイッチング素子50の接続ノードに接続される。また、正側直流母線60は、バッテリ18の正極に接続され、負側直流母線62は、バッテリ18の負極に接続される。また、正側直流母線60と負側直流母線62との間には、コンデンサ56が接続される。
【0027】
ダイオード52は、スイッチング素子50毎に、スイッチング素子50に並列接続されている。ダイオード52は、カソードが正側直流母線60側に接続され、アノードが負側直流母線62側に接続される。
【0028】
このように、電力変換部20では、6個のスイッチング素子50によってスイッチング素子50のブリッジ回路が構成されるとともに、6個のダイオード52によってダイオードのブリッジ回路が構成される。
【0029】
ゲート駆動回路54は、スイッチング素子50毎に、スイッチング素子50の制御端子(ゲート)に接続される。ゲート駆動回路54は、ゲート信号制御部58から送信されるゲート信号に従ってスイッチング素子50をオンオフさせる。ゲート信号制御部58は、中央制御部22の制御の下、ゲート信号をゲート駆動回路54に送信する。つまり、電力変換部20は、各スイッチング素子50のオンオフが制御されることで、バッテリ18とモータジェネレータ12との間で電力を変換することができる。
【0030】
図1に戻って、バッテリ温度検出部24は、バッテリ18の温度(以後、バッテリ温度という場合がある)を検出する。
【0031】
温度調節部26は、バッテリ温度検出部24が検出したバッテリ温度に基づき、中央制御部22の制御の下、バッテリ18の温度を調節する。なお、バッテリ18の温度の調節には、バッテリ18の電力が消費される。温度調節部26は、例えば、冷却ポンプ(不図示)および熱交換器(不図示)を含む。冷却ポンプは、バッテリ18の電力を消費して、バッテリ18と熱交換器との間で冷却水を循環させる。熱交換器は、外気(車両1外の空気)と冷却水との間で熱交換を行う。その結果、温度調節部26は、温度が高くなったバッテリ18を目標温度となるように冷却することができる。なお、温度調節部26は、電気加熱器などを含み、温度が低くなったバッテリ18を目標温度となるように加熱してもよい。
【0032】
SOC導出部28は、例えば、バッテリ18の電圧(以後、バッテリ電圧という場合がある)に基づいて、バッテリ18のSOC(State Of Charge:充電率)を導出(推定)する。
【0033】
外気温検出部30は、例えば、温度調節部26の熱交換器の近傍に設けられ、熱交換器に供給される外気の温度(以後、外気温という場合がある)を検出する。速度検出部32は、車両1の速度(所謂、車速)を検出する。シフト検出部34は、Dレンジ、Nレンジ、Pレンジなどのシフトポジションを検出する。
【0034】
中央制御部22は、中央処理装置(CPU)、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含む半導体集積回路から構成される。中央制御部22は、プログラムを実行することで切替制御部40として機能する。
【0035】
切替制御部40は、例えば、車両1のシフトポジションがNレンジの場合、サーボオフ制御およびゼロトルク制御のうちいずれの制御を行うかの切り替えを行い、サーボオフ制御およびゼロトルク制御のうち選択された方の制御を行う。
【0036】
サーボオフ制御とは、電力変換部20をシャットダウンさせる(スイッチング素子50のオンオフ制御をさせないように停止させる)制御である。具体的には、切替制御部40は、電力変換部20をシャットダウンさせるシャットダウン信号を電力変換部20のゲート信号制御部58に送信する。ゲート信号制御部58は、シャットダウン信号に応じてスイッチング素子50のオンオフ制御を停止する。これにより、電力変換部20のブリッジ回路における全てのスイッチング素子50は、オフ状態となる。
【0037】
全てのスイッチング素子50がオフ状態となると、バッテリ18からモータジェネレータ12に電力が供給されず、モータジェネレータ12には、駆動力が発生しなくなる。この際、車両1が走行中であれば、車輪10の回転に応じてモータジェネレータ12が回転し、モータジェネレータ12において交流電力が発生する。モータジェネレータ12で発生した交流電力は、電力変換部20におけるダイオード52のブリッジ回路を通じて三相全波整流され、コンデンサ56を通じて平滑化されることで、直流電力に変換される(図2参照)。変換された直流電力は、バッテリ18に回生される。つまり、サーボオフ制御では、モータジェネレータ12で発生した電力を、電力変換部20を通じてバッテリ18に回生可能となる。
【0038】
ゼロトルク制御とは、モータジェネレータ12のトルクがゼロとなるように電力変換部20を動作させる制御である。具体的には、切替制御部40は、目標トルクの値がゼロを示すトルク指令(ゼロトルク指令)を電力変換部20のゲート信号制御部58に送信する。ゲート信号制御部58は、ゼロトルク指令に応じて、トルクに寄与する電流(q軸電流Iq)がゼロとなるようなゲート信号をスイッチング素子50毎に生成し、各ゲート駆動回路54に送信する。各ゲート駆動回路54は、ゲート信号に従ってスイッチング素子50をオンオフする。
【0039】
これにより、バッテリ18の直流電力は、スイッチング素子50を通じてトルクがゼロとなるような位相の交流電力に変換されてモータジェネレータ12に供給される。その結果、モータジェネレータ12は、トルクがゼロとなるように回転する。ゼロトルク制御では、モータジェネレータ12のトルクがゼロとなるため、車両1を駆動させる駆動力は発生しない。また、ゼロトルク制御では、スイッチング素子50がオンオフ制御されるため、回生は行われない。
【0040】
ここで、例えば、走行中にシフトポジションがNレンジにされた場合、車両1を駆動する必要がないため、電力変換部20をサーボオフ制御してモータジェネレータ12で発生した電力をバッテリ18に回生することができる。しかし、車両1の速度が高い(モータジェネレータ12の回転数が高い)状態でNレンジにされた場合にサーボオフ制御を行うと、モータジェネレータ12で発生した電力の電圧(モータジェネレータ12の誘起電圧)がバッテリ電圧より高くなり、バッテリ18を破損するおそれがある。そこで、このような場合には、回生を行わず、かつ、駆動力を発生させないようにゼロトルク制御に切り替えられる。
【0041】
しかし、バッテリ電圧がバッテリ温度によって変化するため、ゼロトルク制御に切り替えるべきモータジェネレータ12の回転数(車両1の速度)がバッテリ温度に依存して変化する。このため、バッテリ温度に拘わらず一義的にゼロトルク制御に切り替えると、本来サーボオフ制御が可能な状況でゼロトルク制御を行ったり、本来ゼロトルク制御をすべき状況でサーボオフ制御を行ったりというように、サーボオフ制御とゼロトルク制御との切り替えを適切に行えないおそれがある。
【0042】
そこで、本実施形態の切替制御部40は、サーボオフ制御とゼロトルク制御とを切り替える閾値となるモータジェネレータ12の回転数である切替回転数を、バッテリ18のSOCおよびバッテリ18の温度に基づいて導出する。そして、切替制御部40は、現在のモータジェネレータ12の回転数が切替回転数以下である場合、サーボオフ制御を行い、現在のモータジェネレータ12の回転数が切替回転数より高い場合、ゼロトルク制御を行う。
【0043】
図3は、切替回転数の導出について説明する図である。図3の横軸は、モータジェネレータ12の回転数を最大回転数で除算(回転数/最大回転数)して規格化したモータジェネレータ12の規格化回転数である。図3の縦軸では、バッテリ電圧、SOCおよびモータジェネレータ12の誘起電圧を併記している。図3において、二点鎖線70はバッテリ電圧の上限値を示し、二点鎖線72はバッテリ電圧の下限値を示し、実線74はモータジェネレータ12の誘起電圧を示し、一点鎖線76は現在のSOCの一例を示している。
【0044】
一般的に、バッテリ電圧は、バッテリ18のSOCが低くなるに従って漸減する。また、バッテリ電圧の上限値は、SOCが最大(例えば、SOC100%)のときのバッテリ電圧に相当し、バッテリ電圧の下限値は、SOCが最小(例えば、SOC0%)のときのバッテリ電圧に相当する。また、現在のバッテリ電圧は、現在のSOCに対応する。このことから、バッテリ電圧の上限値と下限値との間の現在のバッテリ電圧に基づいて、現在のSOCを導出(推測)することができる。図3では、現在のSOCの一例を、一点鎖線76の高さで示している。
【0045】
また、図3の実線74で示すように、モータジェネレータ12で発生する誘起電圧(換言すると、起電力)は、モータジェネレータ12の回転数(規格化回転数)が増加するに従って斬増する。
【0046】
また、バッテリ18では、バッテリ温度が高くなるに従って、内部における化学反応が促進され易くなる。バッテリ18内部における化学反応が促進されると、バッテリ18内部の電圧が高くなり、バッテリ電圧(バッテリ18の端子電圧)が高くなる。つまり、バッテリ温度が変化すると、現在のバッテリ電圧、現在のSOC、バッテリ電圧の上限値およびバッテリ電圧の下限値が全体的に変化する。
【0047】
ここで、図3では、バッテリ温度が変化しても、縦軸のうちバッテリ電圧およびSOCを固定的に表現している。そうすると、バッテリ温度が変化すると、モータジェネレータ12の回転数(規格化回転数)との関係において、図3の複数の実線74で示すように、見かけ上、モータジェネレータ12の誘起電圧が変化するように表現される。例えば、図3の複数の実線74で示すように、モータジェネレータ12の誘起電圧は、バッテリ温度が高くなるほど、図3の横軸に対する実線74の傾きが大きくなるように表現され、バッテリ温度が低くなるほど、図3の横軸に対する実線74の傾きが小さくなるように表現される。
【0048】
ここで、現在のバッテリ温度における誘起電圧と規格化回転数との関係が、図3の実線74aで示すものであったとする。また、現在のSOCが、図3の一点鎖線76の高さで示す値であったとする。この場合、切替制御部40は、矢印78a、78bで示すように、一点鎖線76と実線74aとの交点に対応するモータジェネレータ12の回転数(規格化回転数)を、切替回転数(規格化された切替回転数)として導出する。図3の例では、切替回転数は、規格化回転数として0.69となる。
【0049】
そして、図3に示すように、切替制御部40は、導出された切替回転数以下の規格化回転数では、サーボオフ制御を行い、導出された切替回転数よりも高い規格化回転数では、ゼロトルク制御を行う。
【0050】
なお、図3では、モータジェネレータ12の回転数および切替回転数を、規格化回転数で例示しているが、モータジェネレータ12の回転数および切替回転数は、規格化回転数としてではなく、規格化される前の実際の回転数として導出されてもよい。
【0051】
つまり、切替制御部40は、モータジェネレータ12の現在の回転数が切替回転数以下であればサーボオフ制御を行い、モータジェネレータ12の現在の回転数が切替回転数より高ければゼロトルク制御を行う。
【0052】
これにより、車両1では、バッテリ温度に応じてバッテリ電圧(見かけ上、モータジェネレータ12の誘起電圧)が変化したとしても、モータジェネレータ12が現在のバッテリ電圧よりも高い電圧を発生する回転数となったときに、確実にゼロトルク制御を行うことができる。その結果、車両1では、バッテリ温度が変化しても、バッテリ18を破損することを防止できる。
【0053】
また、車両1では、バッテリ温度に応じてバッテリ電圧(見かけ上、モータジェネレータ12の誘起電圧)が変化したとしても、モータジェネレータ12が現在のバッテリ電圧以下の電圧を発生する回転数となったときに、確実にサーボオフ制御を行うことができる。その結果、車両1では、最大限に回生を行うことができ、電費の低下を抑制可能となる。
【0054】
これを実現するために、切替制御部40には、図3の関係(SOC、バッテリ温度、モータジェネレータ12の誘起電圧、モータジェネレータ12の回転数および切替回転数の関係)をまとめたマップである切替マップが予め記憶される。そして、切替制御部40は、切替マップを用いて切替回転数を導出する。
【0055】
図4は、切替マップの一例を示す図である。図4の横軸は、バッテリ温度であり、図4の縦軸は、切替回転数である。図4において、実線80は、バッテリ18のSOCを示している。
【0056】
切替マップでは、バッテリ温度、SOCおよび切替回転数が関連付けられている。図4に示すように、切替マップでは、SOCが高いほど切替回転数が高くなっている。また、切替マップでは、基本的に、バッテリ温度が高くなるに従って切替回転数が低くなっている。また、切替マップでは、SOCが低下するほど、バッテリ温度が高くなるに連れて切替回転数が低下する率が高くなっている。換言すると、切替マップでは、SOCが低下するほど、図4の横軸(バッテリ温度)に対する実線80(SOC)の傾きが大きくなっている。
【0057】
切替制御部40は、現在のバッテリ温度をバッテリ温度検出部24から取得し、現在のSOCをSOC導出部28から取得する。図4では、現在のバッテリ温度を一点鎖線82で例示している。また、図4では、現在のSOCが実線80aで示す50%であったとする。
【0058】
切替制御部40は、現在のバッテリ温度および現在のSOCを切替マップに適用し、切替回転数を導出する。例えば、切替制御部40は、矢印84a、84bで示すように、現在のバッテリ温度を示す一点鎖線82と現在のSOCを示す実線8aの交点に対応する切替回転数を導出する。
【0059】
その後、切替制御部40は、速度検出部32から自車両の速度を取得し、自車両の速度に基づいて現在のモータジェネレータ12の回転数を導出する。なお、モータジェネレータ12の回転数は、自車両の速度から導出する態様に限らず、例えば、モータジェネレータ12の回転軸に設けられるエンコーダに基づいて導出されてもよい。
【0060】
そして、切替制御部40は、現在のモータジェネレータ12の回転数が切替回転数以下であれば、サーボオフ制御とし、現在の回転数が切替回転数より高ければゼロトルク制御とする。
【0061】
なお、ここでは、切替マップを用いて切替回転数を導出する例を挙げたが、切替制御部40は、バッテリ温度、SOCおよび切替回転数が関連付けられた関係式などを用いて切替回転数を導出してもよい。
【0062】
上述のように、バッテリ温度が高くなると切替回転数が低下する。切替回転数が低下すると、サーボオフ制御(すなわち、回生)が可能な領域が減少してしまう。そこで、温度が高くなったバッテリ18を、温度調節部26を作動させて冷却すれば、低下した切替回転数を増加(回復)させることが可能である。
【0063】
しかし、温度調節部26を作動させると、バッテリ18の電力を温度調節部26で消費することとなり、温度調節部26で消費される電力分だけSOCが低下する。そうすると、SOCが低下することで、切替回転数が減少することとなる。
【0064】
すなわち、温度調節部26の作動には、バッテリ温度が低下することによる切替回転数の増加と、SOCが低下することによる切替回転数の減少との間にトレードオフの関係がある。このため、バッテリ温度の低下とSOCの低下を総合した結果、最終的に切替回転数が増加するようであれば、バッテリ18を冷却した方がよいが、最終的に切替回転数が減少するようであれば、積極的にはバッテリ18の冷却を行わない方がよい。
【0065】
図5は、温度調節部26を作動させると仮定した場合の切替回転数の将来の時間推移の一例を示す図である。図5において、破線90は、切替回転数が変化しない場合を示す。一点鎖線92は、バッテリ温度が低下することによる切替回転数の増加量を示す。二点鎖線94は、温度調節部26でのSOCの低下による切替回転数の減少量を示す。実線96は、切替回転数の増加量(一点鎖線92)の絶対値と切替回転数の減少量(二点鎖線94)の絶対値との差分(以後、切替回転数の差分という場合がある)を示す。
【0066】
温度調節部26を作動させると仮定した場合に、切替回転数の差分(実線96)がゼロ(破線90)より大きければ、将来において切替回転数が現在よりも高くなる。この場合、温度調節部26を作動させてバッテリ温度を低下させるようにする。これにより、将来において切替回転数を高くすることができ、サーボオフ制御が可能な領域を増加(回復)させることが可能となる。
【0067】
しかし、切替回転数の差分がゼロ以下となるようであれば、将来において切替回転数が現在よりも低くなる。この場合、温度調節部26を作動させると切替回転数がさらに低くなってしまい、逆効果であるため、温度調節部26を作動させないようにする。これにより、切替回転数の無駄な低下を抑制することができる。
【0068】
車両1では、温度調節部26を作動させることで、切替回転数の差分がゼロより高くなる場合と、切替回転数の差分がゼロ以下となる場合との両方が存在する。これは、図4で示す切替マップにおいて、SOCが低下するほど、バッテリ温度が上昇するに連れて切替回転数が低下する率が高くなるからである。
【0069】
具体的には、図4のように、SOCが比較的低い領域では、バッテリ温度に対する切替回転数の変化量が比較的多いため、バッテリ温度を低下させると、切替回転数が増加し易く、切替回転数の減少量よりも切替回転数の増加量の方が多くなり易い。一方、SOCが比較的高い領域では、バッテリ温度に対する切替回転数の変化量が比較的少ないため、バッテリ温度を低下させても、切替回転数が増加し難く、切替回転数の増加量よりも切替回転数の減少量の方が多くなり易い。
【0070】
図6は、切替回転数の増加量の絶対値と切替回転数の減少量の絶対値との差分がゼロより大きい例を示す切替マップの部分拡大図である。ここでは、温度調節部26を作動させて、バッテリ温度を現在のバッテリ温度TB10から目標温度TB12に低下させるとする。実線100は、現在のSOCについてのバッテリ温度と切替回転数の関係を示している。実線102は、バッテリ温度を目標温度TB12に低下させたときに予測されるSOC(予測SOC)についてのバッテリ温度と切替回転数の関係を示している。
【0071】
バッテリ温度が現在のバッテリ温度TB10から目標温度TB12に低下した場合、温度調節部26の消費電力を考慮しなければ、切替回転数は、矢印104で示すように、実線100に沿って、現在のバッテリ温度TB10に対応する現在の切替回転数N10から、目標温度TB12に対応する切替回転数N12に増加する。また、温度調節部26によって電力が消費され、SOCが現在のSOC(実線100)から予測SOC(実線102)に低下した場合、バッテリ温度の変化を考慮しなければ、切替回転数は、矢印106で示すように、縦軸に沿って、切替回転数N12から予測切替回転数N14(温度調節部26を作動させることで予測される切替回転数)に減少する。
【0072】
これらを総合すると、実際には、温度調節部26を用い、バッテリ温度が現在のバッテリ温度TB10から目標温度TB12に低下した場合、切替回転数は、矢印108で示すように、現在のSOCに対応する現在の切替回転数N10から、予測SOCに対応する予測切替回転数N14に変化する。
【0073】
図6では、現在の切替回転数N10から切替回転数N12への切替回転数の増加量の絶対値が、切替回転数N12から予測切替回転数N14への切替回転数の減少量の絶対値より多くなっている。換言すると、切替回転数の増加量の絶対値と切替回転数の減少量の絶対値との差分がゼロより大きくなっている。これにより、予測切替回転数N14は、現在の切替回転数N10よりも高くなる。この場合、切替制御部40は、温度調節部26を作動させる。
【0074】
図7は、切替回転数の増加量の絶対値と切替回転数の減少量の絶対値との差分がゼロ以下の例を示す切替マップの部分拡大図である。ここでは、温度調節部26を作動させて、バッテリ温度を現在のバッテリ温度TB20から目標温度TB22に低下させるとする。実線110は、現在のSOCについてのバッテリ温度と切替回転数の関係を示している。実線112は、バッテリ温度を目標温度TB22に低下させたときに予測されるSOC(予測SOC)についてのバッテリ温度と切替回転数の関係を示している。
【0075】
バッテリ温度が現在のバッテリ温度TB20から目標温度TB22に低下した場合、温度調節部26の消費電力を考慮しなければ、切替回転数は、矢印114で示すように、実線110に沿って、現在のバッテリ温度TB20に対応する現在の切替回転数N20から、目標温度TB22に対応する切替回転数N22に増加する。また、温度調節部26によって電力が消費され、SOCが現在のSOC(実線110)から予測SOC(実線112)に低下した場合、バッテリ温度の変化を考慮しなければ、切替回転数は、矢印116で示すように、縦軸に沿って、切替回転数N22から予測切替回転数N24(温度調節部26を作動させることで予測される切替回転数)に減少する。
【0076】
これらを総合すると、実際には、温度調節部26を用い、バッテリ温度が現在のバッテリ温度TB20から目標温度TB22に低下した場合、切替回転数は、矢印118で示すように、現在のSOCに対応する現在の切替回転数N20から、予測SOCに対応する予測切替回転数N24に変化する。
【0077】
図7では、現在の切替回転数N20から切替回転数N22への切替回転数の増加量の絶対値が、切替回転数N22から予測切替回転数N24への切替回転数の減少量の絶対値以下となっている。換言すると、切替回転数の増加量の絶対値と切替回転数の減少量の絶対値との差分がゼロ以下となっている。これにより、予測切替回転数N24は、現在の切替回転数N20よりもくなる。この場合、切替制御部40は、温度調節部26を作動させない。
【0078】
これらを実現するために、切替制御部40は、まず、温度調節部26で冷却するバッテリ18の目標温度を設定する。目標温度は、例えば、現在のバッテリ温度に基づいて設定される。例えば、切替制御部40は、現在のバッテリ温度に対して所定温度(例えば、10℃など)だけ低い温度を目標温度に設定する。そして、切替制御部40は、現在のSOC、現在のバッテリ温度および目標温度を切替マップに適用して、切替回転数の増加量を導出する。
【0079】
また、切替制御部40は、現在の外気温、現在のバッテリ温度、目標温度および温度調節部26の冷却能力に基づいて、バッテリ温度が目標温度に到達するまでに必要な時間(温度調節時間)を導出する。切替制御部40は、温度調節部26で消費される単位時間当たりの電力と、温度調節時間とに基づいて、温度調節部26において消費されると予測される使用エネルギー量(電力量)を導出する。切替制御部40は、使用エネルギー量(電力量)および現在のSOCに基づいて、バッテリ温度が目標温度となるときの予測SOCを導出する。切替制御部40は、現在のSOC、予測SOCおよび目標温度を切替マップに適用して、切替回転数の減少量を導出する。
【0080】
そして、切替制御部40は、切替回転数の増加量の絶対値が切替回転数の減少量の絶対値より多ければ、温度調節部26を作動させ、切替回転数の増加量の絶対値が切替回転数の減少量の絶対値以下であれば、温度調節部26を作動させない。
【0081】
図8は、切替制御部40の動作の流れを説明するフローチャートである。切替制御部40は、所定制御周期の割り込み制御として図8の一連の処理を繰り返す。
【0082】
割り込み制御の開始タイミングとなると、切替制御部40は、シフト検出部34からシフトポジションを取得する(S100)。次に、切替制御部40は、取得されたシフトポジションがNレンジであるか否かを判断する(S110)。
【0083】
シフトポジションがNレンジではない場合(S110におけるNO)、切替制御部40は、一連の処理を終了する。
【0084】
シフトポジションがNレンジである場合(S110におけるYES)、切替制御部40は、SOC導出部28によって導出された現在のSOCを取得する(S120)。また、切替制御部40は、バッテリ温度検出部24で検出された現在のバッテリ温度を取得する(S130)。
【0085】
次に、切替制御部40は、取得された現在のSOCおよび現在のバッテリ温度に基づいて、切替回転数を導出する(S140)。具体的には、切替制御部40は、現在のSOCおよび現在のバッテリ温度を切替マップに適用して切替回転数を導出する。
【0086】
次に、切替制御部40は、速度検出部32から自車両の速度を取得する(S150)。次に、切替制御部40は、取得された自車両の速度に基づいて、現在のモータジェネレータ12の回転数を導出する(S160)。
【0087】
次に、切替制御部40は、現在の回転数が切替回転数以下であるか否かを判断する(S170)。現在の回転数が切替回転数以下である場合(S170におけるYES)、切替制御部40は、サーボオフ制御を行い(S180)、ステップS200の処理に進む。
【0088】
現在の回転数が切替回転数以下ではない場合(S170におけるNO)、切替制御部40は、ゼロトルク制御を行い(S190)、ステップS200の処理に進む。
【0089】
ステップS200において、切替制御部40は、温度調節部26を作動させるか否かを判断する制御である温調作動制御を行い(S200)、一連の処理を終了する。
【0090】
図9は、温調作動制御(S200)の流れを説明するフローチャートである。切替制御部40は、まず、現在のバッテリ温度に基づいて、バッテリ18の目標温度を設定する(S300)。次に、切替制御部40は、現在のSOC、現在のバッテリ温度および目標温度に基づいて切替回転数の増加量を導出する(S310)。
【0091】
次に、切替制御部40は、外気温検出部30から外気温を取得する(S320)。次に、切替制御部40は、現在の外気温、現在のバッテリ温度、目標温度および温度調節部26の冷却能力に基づいて温度調節時間を導出する(S330)。
【0092】
次に、切替制御部40は、温度調節時間に基づいて使用エネルギー量を導出する(S340)。次に、切替制御部40は、使用エネルギー量および現在のSOCに基づいて、予測SOCを導出する(S350)。次に、切替制御部40は、現在のSOC、予測SOCおよび目標温度に基づいて切替回転数の減少量を導出する(S360)。
【0093】
次に、切替制御部40は、切替回転数の増加量の絶対値が切替回転数の減少量の絶対値より多いか否かを判断する(S370)。
【0094】
切替回転数の増加量の絶対値が切替回転数の減少量の絶対値より多い場合(S370におけるYES)、切替制御部40は、温度調節部26を作動させ(S380)、一連の処理を終了する。
【0095】
切替回転数の増加量の絶対値が切替回転数の減少量の絶対値より多くない場合(S370におけるNO)、切替制御部40は、温度調節部26を作動させず(S390)、一連の処理を終了する。
【0096】
以上のように、本実施形態の車両1の切替制御部40は、バッテリ18のSOCおよびバッテリ18の温度に基づいて、サーボオフ制御とゼロトルク制御とを切り替える閾値となるモータジェネレータの回転数である切替回転数を導出する。そして、切替制御部40は、モータジェネレータ12の回転数が切替回転数以下である場合、サーボオフ制御を行い、モータジェネレータ12の回転数が切替回転数より高い場合、ゼロトルク制御を行う。
【0097】
これにより、本実施形態の車両1では、バッテリ温度が変化してもサーボオフ制御とゼロトルク制御とを適切に切り替えることが可能となる。
【0098】
また、本実施形態の車両1の切替制御部40は、温度調節部26を作動させることによるバッテリ18の温度の低下に従った切替回転数の増加量と、温度調節部26を作動させることによるバッテリ18のSOCの低下に従った切替回転数の減少量とに基づいて、温度調節部26を作動させるか否かを判断する。
【0099】
これにより、本実施形態の車両1では、現在の切替回転数より将来における切替回転数が低下することを抑制しつつ、将来における切替回転数を現在の切替回転数以上とすることができる。その結果、本実施形態の車両1では、モータジェネレータ12の回転数における回生可能な領域を多くすることができるため、電費の低下を抑制することが可能となる。
【0100】
なお、本実施形態では、シフトポジションがNレンジの場合に、切替回転数が導出されてサーボオフ制御またはゼロトルク制御が行われる例を挙げていた。しかし、切替制御部40は、切替回転数を導出してサーボオフ制御およびゼロトルク制御を切り替える制御を、Nレンジ以外において行ってもよい。例えば、切替制御部40は、シフトポジションがDレンジであり、アクセルペダルを通じた加速操作が行われていない場合(アクセルペダルの踏込み量がゼロである場合)に、切替回転数を導出してサーボオフ制御およびゼロトルク制御を切り替える制御を行ってもよい。
【0101】
以上、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0102】
1 車両
10 車輪
12 モータジェネレータ
18 バッテリ
20 電力変換部
24 バッテリ温度検出部
26 温度調節部
28 SOC導出部
40 切替制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9