(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-29
(45)【発行日】2023-09-06
(54)【発明の名称】ステータ
(51)【国際特許分類】
H02K 3/12 20060101AFI20230830BHJP
【FI】
H02K3/12
(21)【出願番号】P 2019174853
(22)【出願日】2019-09-26
【審査請求日】2022-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】花岡 真俊
(72)【発明者】
【氏名】田中 伸彦
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-341656(JP,A)
【文献】国際公開第2008/020471(WO,A1)
【文献】特開2014-212638(JP,A)
【文献】特開2007-228708(JP,A)
【文献】特開2010-239741(JP,A)
【文献】特開2001-037132(JP,A)
【文献】特公昭49-013283(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/12
H02K 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機に設けられるステータであって、
複数のスロットが形成されるステータコアと、
前記複数のスロットのうち一対のスロットに収容されるセグメントコイルを複数備え、前記複数のセグメントコイルが互いに接続される分布巻コイルと、
を有し、
前記分布巻コイルは、前記複数のスロットのうち同じ一対のスロットに収容される複数の前記セグメントコイルが互いに並列接続される並列コイルを複数備え、かつ前記複数の並列コイルが互いに直列接続されるコイル構造を有し、
前記並列コイルの1つを構成す
る複数の
前記セグメントコイルは、前記スロット内において互いに隣り合って配置さ
れており、
前記セグメントコイルは、前記一対のスロットに収容される一対の直線部と、前記ステータコアの一端面から突出して前記一対の直線部を互いに連結する屈曲部と、前記ステータコアの他端面から突出して前記一対の直線部のそれぞれから延びる溶接端部と、を備え、
前記分布巻コイルは、前記ステータコアの一端面から突出する複数の前記屈曲部からなる第1コイルエンドと、前記ステータコアの他端面から突出する複数の前記溶接端部からなる第2コイルエンドと、を備え、
前記直線部が複数収容される前記スロットから突出し、前記ステータコアの周方向の一方に延びる前記屈曲部の本数と、前記ステータコアの周方向の他方に延びる前記屈曲部の本数とは、互いに相違しており、
前記直線部が複数収容される前記スロットから突出し、前記ステータコアの周方向の一方に延びる前記溶接端部の本数と、前記ステータコアの周方向の他方に延びる前記溶接端部の本数とは、互いに一致しており、
前記屈曲部によって構成される前記第1コイルエンドの内径は、前記溶接端部によって構成される前記第2コイルエンドの内径よりも小さい、
ステータ。
【請求項2】
請求項1に記載のステータにおいて
、
前記並列コイルの1つを構成する前記複数のセグメントコイルにおいて、前記一対のスロットの一方では複数の前記直線部が互いに隣り合って配置され、前記一対のスロットの他方では複数の前記直線部が互いに隣り合って配置される、
ステータ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のステータにおいて
、
互いに直列接続される一対の前記並列コイルにおいて、一方の前記並列コイルから延びる複数の前記溶接端部と、他方の前記並列コイルから延びる複数の前記溶接端部とは、互いに一箇所で溶接される、
ステータ。
【請求項4】
請求項
1~3の何れか1項に記載のステータにおいて、
前記第1コイルエンドの内径は、前記ステータコアの内径よりも小さい、
ステータ。
【請求項5】
請求項
1~4の何れか1項に記載のステータにおいて、
前記第1コイルエンドの内径は、前記ステータコアに収容されるロータの外径よりも小さい、
ステータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機に設けられるステータに関する。
【背景技術】
【0002】
電動機や発電機等の回転電機には、磁界を発生させるステータが設けられている。また、回転電機の高トルク化や小型化を達成するため、複数のセグメントコイルからなるステータコイルを採用した回転電機が提案されている(特許文献1~2参照)。このような回転電機においては、略U字状に折り曲げられた複数のセグメントコイルがステータコアのスロットに挿入されており、複数のセグメントコイルが1つの導体として互いに接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4453669号公報
【文献】特許第3864878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、回転電機に設けられるステータの更なる小型化を達成するためには、ステータコイルのコイルエンドを小さくすることが求められている。このため、ステータコアのスロットに対してセグメントコイルを適切に配置することにより、コイルエンドを小さくしてステータの小型化を図ることが求められている。
【0005】
本発明の目的は、ステータの小型化を達成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のステータは、回転電機に設けられるステータであって、複数のスロットが形成されるステータコアと、前記複数のスロットのうち一対のスロットに収容されるセグメントコイルを複数備え、前記複数のセグメントコイルが互いに接続される分布巻コイルと、を有し、前記分布巻コイルは、前記複数のスロットのうち同じ一対のスロットに収容される複数の前記セグメントコイルが互いに並列接続される並列コイルを複数備え、かつ前記複数の並列コイルが互いに直列接続されるコイル構造を有し、前記並列コイルの1つを構成する複数の前記セグメントコイルは、前記スロット内において互いに隣り合って配置されており、前記セグメントコイルは、前記一対のスロットに収容される一対の直線部と、前記ステータコアの一端面から突出して前記一対の直線部を互いに連結する屈曲部と、前記ステータコアの他端面から突出して前記一対の直線部のそれぞれから延びる溶接端部と、を備え、前記分布巻コイルは、前記ステータコアの一端面から突出する複数の前記屈曲部からなる第1コイルエンドと、前記ステータコアの他端面から突出する複数の前記溶接端部からなる第2コイルエンドと、を備え、前記直線部が複数収容される前記スロットから突出し、前記ステータコアの周方向の一方に延びる前記屈曲部の本数と、前記ステータコアの周方向の他方に延びる前記屈曲部の本数とは、互いに相違しており、前記直線部が複数収容される前記スロットから突出し、前記ステータコアの周方向の一方に延びる前記溶接端部の本数と、前記ステータコアの周方向の他方に延びる前記溶接端部の本数とは、互いに一致しており、前記屈曲部によって構成される前記第1コイルエンドの内径は、前記溶接端部によって構成される前記第2コイルエンドの内径よりも小さい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、並列コイルの1つを構成する複数のセグメントコイルは、スロット内において互いに隣り合って配置される。これにより、セグメントコイルを複雑に曲げずに配置することができ、ステータの小型化を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施の形態であるステータを備えた回転電機の一例を示す断面図である。
【
図2】
図1のA-A線に沿ってステータを示す断面図である。
【
図3】一例としてセグメントコイルを示す斜視図である。
【
図4】U相の分布巻コイルを備えたステータコアを示す斜視図である。
【
図5】U相コイルを備えたステータコアを示す断面図である。
【
図9】U相コイルの一部を構成するセグメントコイルの接続関係を示す図である。
【
図10】ステータコアのスロットに対するセグメントコイルの収容位置を示す図である。
【
図11】ステータコアのスロットに対するセグメントコイルの収容位置を示す図である。
【
図12】ステータコアのスロットに対するセグメントコイルの収容位置を拡大して示す図である。
【
図13】ステータとロータとの組立過程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の説明では、本発明の一実施の形態であるステータ10が設けられる回転電機11として、電気自動車やハイブリッド自動車等に搭載される三相同期型のモータジェネレータを例示するが、これに限られることはなく、分布巻コイルが設けられるステータを備えた回転電機であれば、如何なる回転電機であっても良い。
【0010】
[回転電機構造]
図1は本発明の一実施の形態であるステータ10を備えた回転電機11の一例を示す断面図である。
図1に示すように、モータジェネレータである回転電機11は、モータハウジング12を有している。モータハウジング12は、底付き円筒形状のハウジング本体13と、ハウジング本体13の開口端を閉じるエンドカバー14と、を備えている。ハウジング本体13内に固定されるステータ10は、複数枚のケイ素鋼鈑等からなる円筒形状のステータコア15と、ステータコア15に組み付けられる三相のステータコイルSC(以下、三相コイルSCと記載する。)と、を有している。また、エンドカバー14には図示しないインバータ等に接続される高電圧コネクタ16が設けられており、この高電圧コネクタ16には三相コイルSCから延びる動力線端子Pu,Pv,Pwが接続されている。
【0011】
また、ステータコア15の中央には、円柱形状のロータ20が回転自在に収容されている。このロータ20は、複数枚のケイ素鋼鈑等からなる円筒形状のロータコア21と、ロータコア21に埋め込まれる複数の永久磁石22と、ロータコア21の中央に固定されるロータシャフト23と、を有している。ロータシャフト23の一端部は、ハウジング本体13の壁部13aに設けられる軸受24によって支持されており、ロータシャフト23の他端部は、エンドカバー14に設けられる軸受25によって支持されている。
【0012】
[ステータ構造]
図2は
図1のA-A線に沿ってステータ10を示す断面図であり、
図3は一例としてセグメントコイル30を示す斜視図である。また、
図4はU相の分布巻コイル(以下、U相コイルCuと記載する。)を備えたステータコア15を示す斜視図であり、
図5はU相コイルCuを備えたステータコア15を示す断面図である。さらに、
図6はU相コイルCuを単体で示す斜視図である。なお、U相コイルCuとは、三相コイルSCの1相分を構成する分布巻コイルである。後述するように、三相コイルSCは、U相コイルCuの他に、V相の分布巻コイル(以下、V相コイルCvと記載する。)、およびW相の分布巻コイル(以下、W相コイルCwと記載する。)によって構成されている。
【0013】
図2に示すように、円筒形状のステータコア15の内周部には、周方向に所定間隔で複数のスロットS1~S48が形成されている。各スロットS1~S48には後述するセグメントコイル30が収容されており、複数のセグメントコイル30を互いに接続することで三相コイルSCが構成されている。なお、図示する例では、スロットS1,S2,S7,S8・・・に、U相コイルCuを構成するセグメントコイル30が収容されており、スロットS3,S4,S9,S10・・・に、V相コイルCvを構成するセグメントコイル30が収容されており、スロットS5,S6,S11,S12・・・に、W相コイルCwを構成するセグメントコイル30が収容されている。
【0014】
図3に示すように、略U字状に曲げられるセグメントコイル30は、何れかのスロット(例えばスロットS1)に収容されるコイルサイド(直線部)31と、所定のコイルピッチで他のスロット(例えばスロットS7)に収容されるコイルサイド(直線部)32と、を有している。また、セグメントコイル30は、一対のコイルサイド31,32を互いに連結する屈曲部33と、一対のコイルサイド31,32のそれぞれから延びる溶接端部34,35と、を有している。なお、セグメントコイル30は銅等の導電材料からなる平角線によって構成されており、セグメントコイル30には溶接端部34,35の先端部を除きエナメルや樹脂被膜等の絶縁被膜が設けられている。また、セグメントコイル30が備える屈曲部33は、
図3に示す折り曲げ形状に限られることはなく、ステータコア15への組み付け位置に応じて様々な折り曲げ形状を有している。
【0015】
図4および
図5に示すように、ステータコア15には、所定のコイルピッチ(例えば6スロット)で離れる一対のコイルサイド31,32を備えたセグメントコイル30が複数組み付けられている。また、
図4に示すように、セグメントコイル30の屈曲部33は、ステータコア15の一端面40から突出しており、セグメントコイル30の溶接端部34,35は、ステータコア15の他端面41から突出している。さらに、ステータコア15の他端面41から突出する溶接端部34,35は、U相コイルCuを構成する他のセグメントコイル30の溶接端部34,35に接触するように曲げられた後に、接触する他のセグメントコイル30の溶接端部34,35に対して溶接される。これにより、
図6に示すように、複数のセグメントコイル30は互いに接続されて1つの導体となり、複数のセグメントコイル30によってU相コイルCuが構成される。なお、互いに接合された溶接端部34,35からなる端部群42には、導体を覆うように樹脂被膜等を形成する絶縁被覆処理が施される。
【0016】
図7はU相コイルCuのコイル構造を示す図であり、
図8は三相コイルSCの結線状態を示す図である。以下の説明では、U相コイルCuについて説明するが、V相コイルCvやW相コイルCwについても、同様のコイル構造を有している。なお、前述の説明では、セグメントコイルに「30」の符号を付して説明したが、以下の説明では、個々のセグメントコイルを区別する観点から「A1~A32,B1~B32」の符号を付して説明する。
【0017】
図7に示すように、U相コイルCuは、互いに直列接続される複数の並列コイルP1~P32を有している。また、個々の並列コイル(P1・・・)は、互いに並列接続される一対のセグメントコイル(A1,B1・・・)によって構成されている。さらに、個々の並列コイル(P1・・・)を構成する一対のセグメントコイル(A1,B1・・・)は、同じ一対のスロット(S1,S43・・・)に収容されている。つまり、
図7に示すように、並列コイルP1を構成する一対のセグメントコイルA1,B1は、同じ一対のスロットS1,S43に収容されている。また、例えば、並列コイルP10を構成する一対のセグメントコイルA10,B10は、同じ一対のスロットS19,S25に収容されている。また、例えば、並列コイルP20を構成する一対のセグメントコイルA20,B20は、同じ一対のスロットS38,S44に収容されている。
【0018】
図8に示すように、U相コイルCuの一端には、動力線端子Puが接続されており、U相コイルCuの他端には、中性点端子PNが接続されている。同様に、V相コイルCvの一端には、動力線端子Pvが接続されており、V相コイルCvの他端には、中性点端子PNが接続されている。同様に、W相コイルCwの一端には、動力線端子Pwが接続されており、W相コイルCwの他端には、中性点端子PNが接続されている。そして、U相コイルCu、V相コイルCvおよびW相コイルCwは、中性点端子PNを介して互いに接続されており、各相のコイルCu,Cv,Cwによって三相コイルSCが構成されている。
【0019】
前述した
図7に示すように、三相コイルSCの1相分であるU相コイルCuにおいては、個々の並列コイル(P1・・・)を構成する複数のセグメントコイル(A1,B1・・・)が、同じ一対のスロット(S1,S43・・・)に収容されるため、セグメントコイル(A1,B1・・・)間における電位差の発生を防止することができ、個々の並列コイル(P1・・・)内における循環電流の発生を防止することができる。つまり、個々の並列コイルを構成する複数のセグメントコイルにおいては、ロータ回転時に発生する起電力をセグメントコイル間で一致させることができ、個々の並列コイル内における循環電流の発生を防止することができる。なお、同様のコイル構造を有するV相コイルCvおよびW相コイルCwにおいても、個々の並列コイル内における循環電流の発生を防止することが可能である。
【0020】
[U相コイル構造]
続いて、U相コイルCuの構造について詳細に説明する。
図9はU相コイルCuの一部を構成するセグメントコイルA1~A8,B1~B8の接続関係を示す図である。また、
図10は、ステータコア15のスロットS1,S7・・・に対するセグメントコイルA1~A16,B1~B16の収容位置を示す図である。さらに、
図11は、ステータコア15のスロットS2,S8・・・に対するセグメントコイルA17~A32,B17~B32の収容位置を示す図である。また、
図12は、ステータコア15のスロットS1,S37,S43に対するセグメントコイルA1~A7,B1~B7の収容位置を拡大して示す図である。
【0021】
図10~
図12に示される「動力線側」とは、
図1および
図4に示すように、セグメントコイル30の溶接端部34,35が位置する側、つまり動力線端子Pu,Pv,Pwが位置する側である。また、
図10等に示される「反動力線側」とは、
図1および
図4に示すように、動力線側とは反対側、つまりセグメントコイル30の屈曲部33が位置する側である。また、
図10および
図11に示される「内側」とは、
図5に示すように、ステータコア15の径方向内側であり、
図10等に示される「外側」とは、ステータコア15の径方向外側である。
【0022】
まず、
図7に示すように、U相コイルCuは、4つの並列コイル(例えばP1~P4)の接続パターンを繰り返すコイル構造を有している。以下、並列コイルP1~P4の接続パターンについて説明する。
図9および
図10に示すように、並列コイルP1~P3を構成するセグメントコイルA1~A3,B1~B3については、同じ一対のスロットS1,S43に対して挿入されている。また、並列コイルP4を構成するセグメントコイルA4,B4については、並列コイルP1~P3と共通のスロットS43を含む、同じ一対のスロットS43,S37に対して挿入されている。
【0023】
より詳細に説明すると、
図10および
図12に示すように、並列コイルP1のセグメントコイルA1,B1は、スロットS1,S43の1,2番目の位置(外側の位置)に収容されている。また、並列コイルP2のセグメントコイルA2,B2は、スロットS1の3,4番目の位置、およびスロットS43の5,6番目の位置に収容されている。また、並列コイルP3のセグメントコイルA3,B3は、スロットS1,S43の7,8番目の位置(内側の位置)に収容されている。さらに並列コイルP4のセグメントコイルA4,B4は、スロットS43の3,4番目の位置、およびスロットルS37の5,6番目の位置に収容されている。
【0024】
そして、
図9および
図12に示すように、動力線側におけるスロットS1,S43の間では、スロットS43から突出するセグメントコイルA1,B1の溶接端部a12,b12、およびスロットS1から突出するセグメントコイルA2,B2の溶接端部a21,b21が、端部群W12として互いに重なり合って一箇所で溶接される。同様に、動力線側におけるスロットS1,S43の間では、スロットS43から突出するセグメントコイルA2,B2の溶接端部a22,b22、およびスロットS1から突出するセグメントコイルA3,B3の溶接端部a31,b31が、端部群W23として互いに重なり合って一箇所で溶接される。
【0025】
さらに、動力線側におけるスロットS43,S37の間では、スロットS43から突出するセグメントコイルA3,B3の溶接端部a32,b32、およびスロットS37から突出するセグメントコイルA4,B4の溶接端部a41,b41が、端部群W34として互いに重なり合って一箇所で溶接される。同様に、動力線側におけるスロットS43,S37の間では、スロットS43から突出するセグメントコイルA4,B4の溶接端部a42,b42、およびスロットS37から突出するセグメントコイルA5,B5の溶接端部a51,b51が、端部群W45として互いに重なり合って一箇所で溶接される。
【0026】
このように、端部群W12,W23,W34,W45を介して、各セグメントコイルA1~A5,B1~B5を接続することにより、複数の並列コイルP1~P4を形成することができるとともに、並列コイルP1~P4を互いに直列接続することができる。そして、
図10および
図11に示すように、並列コイルP1~P4の接続パターンを、4つの並列コイル(P5~P8,P9~P12・・・)毎に繰り返すことにより、並列コイルP1~P32からなるU相コイルCuを形成することができる。
【0027】
[コイルエンドの小型化]
図9および
図12を用いて説明したように、端部群W12,W23,W34,W45を介して、各セグメントコイルA1~A5,B1~B5を接続することにより、複数の並列コイルP1~P4を形成することができるとともに、並列コイルP1~P4を互いに直列接続することができる。このように、4つの溶接端部(a12,b12,a21,b21・・・)を1つの端部群(W12・・・)として溶接することにより、溶接箇所である端部群(W12・・・)の数を削減することができ、端部群(W12・・・)が含まれるコイルエンドCe2の小型化を達成することができる。つまり、
図4に示すように、端部群42間においては絶縁距離を確保することが必要であるため、端部群42の数が増加すると端部群42が径方向外側(矢印α方向)に配置され易くなるが、端部群42の数を削減することによってコイルエンドCe2が径方向外側に拡大することを防止することができる。さらに、溶接箇所が大幅に削減されるため、ステータ10の製造コストを下げることができる。
【0028】
また、端部群W12を例に挙げて説明すると、
図12に示すように、並列コイルP1を構成するセグメントコイルA1,B1のコイルサイドは、スロットS43内において互いに隣り合って配置されており、並列コイルP2のセグメントコイルA2,B2のコイルサイドは、スロットS1内において互いに隣り合って配置されている。これにより、セグメントコイルA1,B1によって並列コイルP1を形成する際には、溶接端部a12,b12を簡単に重ね合わせて接続することができ、セグメントコイルA2,B2によって並列コイルP2を形成する際には、溶接端部a21,b21を簡単に重ね合わせて接続することができる。このように、溶接端部a12,b12,a21,b21を簡単に重ね合わせて溶接することができるため、個々の溶接端部a12,b12,a21,b21が複雑に重なり合うことを抑制することができ、コイルエンドCe2の小型化を達成することができる。
【0029】
さらに、端部群W12を例に挙げて説明すると、並列コイルP1のセグメントコイルA1,B1は、スロットS43内の1,2番目に配置されており、並列コイルP2のセグメントコイルA2,B2は、スロットS1内の3,4番目に配置されている。このように、コイルA1,B1とコイルA2,B2とを径方向にずらして配置することにより、溶接端部a12,b12,a21,b21を簡単に重ね合わせて接続することができる。このように、並列コイルP1,P2を互いに直列接続する場合であっても、溶接端部a12,b12,a21,b21を簡単に重ね合わせて溶接することができるため、個々の溶接端部a12,b12,a21,b21が複雑に重なり合うことを抑制することができ、コイルエンドCe2の小型化を達成することができる。
【0030】
[コイルエンドの内径]
図13はステータ10とロータ20との組立過程を示す図である。
図13に示すように、ステータ10のステータコア15には、各相のコイルCu,Cv,Cwからなる三相コイルSCが設けられている。この三相コイルSCつまり各相のコイルCu,Cv,Cwは、ステータコア15の一端面40から突出する複数の屈曲部33からなる第1コイルエンドCe1と、ステータコア15の他端面41から突出する複数の溶接端部34,35からなる第2コイルエンドCe2と、を有している。ここで、反動力線側に設けられる第1コイルエンドCe1の内径D1は、動力線側に設けられる第2コイルエンドCe2の内径D2よりも小さく形成されている。また、第1コイルエンドCe1の内径D1は、ステータコア15の内径D3よりも小さく形成されている。さらに、第1コイルエンドCe1の内径D1は、ロータ20の外径D4よりも小さく形成されている。なお、第2コイルエンドCe2の内径D2は、ロータ20の外径D4よりも大きく形成されている。
【0031】
図10および
図11に示すように、第1コイルエンドCe1を構成する反動力線側においては、スロット間を跨ぐセグメントコイルA1~A32,B1~B32の本数にバラツキがあるのに対し、第2コイルエンドCe2を構成する動力線側においては、スロット間を跨ぐセグメントコイルA1~A32,B1~B32の本数が均一に設定されている。つまり、第1コイルエンドCe1を構成する反動力線側では、セグメントコイルA1~A32,B1~B32が複雑に配置され易いことから、コイルエンドCe1の体積が大きくなり易くなっている。これに対し、第2コイルエンドCe2を構成する動力線側では、セグメントコイルA1~A32,B1~B32を簡潔に配置することができ、コイルエンドCe2の体積を小さくすることができる。
【0032】
そこで、本発明の一実施の形態であるステータ10においては、第1コイルエンドCe1がステータコア15の径方向内側に拡大することを許容しつつ、第2コイルエンドCe2の外径D5を縮小するように体積を小さくしている。これにより、第2コイルエンドCe2が径方向外側に拡がることを回避することができるため、ハウジング本体13との絶縁距離を容易に確保することができる、つまり、ハウジング本体13を小型にすることができるため、回転電機11の体格を小さくすることができる。また、第2コイルエンドCe2を小さくすることの反動から、第1コイルエンドCe1を大きくする場合であっても、第1コイルエンドCe1を径方向内側に拡大することにより、回転電機11の体格を小さく維持することができる。さらに、第1コイルエンドCe1を径方向内側に拡大することにより、第1コイルエンドCe1の内径D1が、ステータコア15の内径D3やロータ20の外径D4より小さくなる場合であっても、
図13に白抜きの矢印で示すように、ステータコア15には第2コイルエンドCe2側からロータ20が挿入されるため、回転電機11を適切に組み立てることが可能である。
【0033】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。前述の説明では、2つのセグメントコイルによって1つの並列コイルを構成しているが、これに限られることはなく、3つ以上のセグメントコイルを並列接続することによって1つの並列コイルを構成しても良い。例えば、3つのセグメントコイルを用いて1つの並列コイルを構成した場合には、同じ一対のスロット内では3つのセグメントコイルが互いに隣り合って配置される。また、3つのセグメントコイルを用いて1つの並列コイルを構成した場合には、6つの溶接端部によって1つの端部群が形成されることになる。
【0034】
前述の説明では、スロット数が48のステータコア15を用いているが、これに限られることはなく、他のスロット数のステータコアを用いても良い。また、前述の説明では、U相コイルCu、V相コイルCvおよびW相コイルCwを所謂Y結線で接続しているが、これに限られることはなく、U相コイルCu、V相コイルCvおよびW相コイルCwを所謂Δ結線で接続しても良い。また、前述の説明では、U相コイルCu、V相コイルCvおよびW相コイルCwによってステータコイルSCを構成しているが、3相の分布巻コイルに限られることはなく、例えば2相の分布巻コイルによってステータコイルを形成しても良い。また、前述の説明では、ステータコア15に三相コイルSCを組み付けてから溶接しているが、これに限られることはなく、ステータコア15が分割されている場合には、組み立てて溶接された三相コイルSCに対してステータコア15を組み付けても良い。
【符号の説明】
【0035】
10 ステータ
11 回転電機
15 ステータコア
20 ロータ
30 セグメントコイル
31 コイルサイド(直線部)
32 コイルサイド(直線部)
33 屈曲部
34,35 溶接端部
40 一端面
41 他端面
S1~S48 スロット
A1~A32 セグメントコイル
B1~B32 セグメントコイル
P1~P32 並列コイル
a12,a21,a22,a31,a32,a41,a42,a51 溶接端部
b12,b21,b22,b31,b32,b41,b42,b51 溶接端部
Ce1 第1コイルエンド
Ce2 第2コイルエンド
SC 三相コイル,ステータコイル
Cu U相コイル(分布巻コイル)
Cv V相コイル(分布巻コイル)
Cw W相コイル(分布巻コイル)