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特許7340318遠心式オイルミストセパレータ、レシプロエンジン及び航空機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-30
(45)【発行日】2023-09-07
(54)【発明の名称】遠心式オイルミストセパレータ、レシプロエンジン及び航空機
(51)【国際特許分類】
   F01M 13/00 20060101AFI20230831BHJP
   F01N 5/04 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
F01M13/00 A
F01N5/04 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019230840
(22)【出願日】2019-12-20
(65)【公開番号】P2021099050
(43)【公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100136504
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 毅彦
(72)【発明者】
【氏名】横田 篤
【審査官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-008082(JP,A)
【文献】特開2008-180119(JP,A)
【文献】実開平02-099212(JP,U)
【文献】実開平03-032113(JP,U)
【文献】実開昭59-054705(JP,U)
【文献】国際公開第2016/158854(WO,A1)
【文献】特開2013-204888(JP,A)
【文献】国際公開第2015/145646(WO,A1)
【文献】特表2005-513346(JP,A)
【文献】特開昭54-156910(JP,A)
【文献】特開昭61-285292(JP,A)
【文献】特開2016-061273(JP,A)
【文献】特開2014-211088(JP,A)
【文献】特開平07-158530(JP,A)
【文献】特開2017-201154(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01M 13/00
F01N 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンから排出される、オイルミストを含む第1の排ガスの流路を形成するダクトと、
前記ダクト内に固定されるファンと、
前記エンジンから排出される、前記オイルミストを含まない第2の排ガスのエネルギを利用して前記ダクトとともに前記ファンを回転させる動力伝達機構と、
を有する遠心式オイルミストセパレータ。
【請求項2】
エンジンから排出される、オイルミストを含む第1の排ガスの流路を形成するダクトと、
前記ダクト内に回転可能に配置されるファンと、
前記エンジンから排出される、前記オイルミストを含まない第2の排ガスのエネルギを利用して前記ファンを前記ダクトに対して回転させる動力伝達機構と、
を有する遠心式オイルミストセパレータであって、
湾曲した前記ダクトの管壁から前記ファンの回転シャフトを前記ダクトの外部に突出させ、
前記動力伝達機構前記第2の排ガスのエネルギで回転するタービンの出力シャフトから出力されるトルクを、前記ダクトの外部に突出した前記回転シャフトの部分に伝達するようにした遠心式オイルミストセパレータ。
【請求項3】
前記ダクトの内面及び外面の少なくとも一方にヒートシンクを設けた請求項1又は2記載の遠心式オイルミストセパレータ。
【請求項4】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の遠心式オイルミストセパレータを設けたレシプロエンジン。
【請求項5】
請求項記載のレシプロエンジンを備えた航空機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、遠心式オイルミストセパレータ、レシプロエンジン及び航空機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンから漏出するブローバイガスに含まれるエンジンオイルを除去する装置として遠心式オイルミストセパレータが提案されている(例えば特許文献1参照)。遠心式オイルミストセパレータは、オイルミストを含むブローバイガスの流路を形成する管状の容器にファンを設けて容器を回転させ、ブローバイガスに旋回流を発生させることによってオイルミストを分離させるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-540906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来提案されている遠心式オイルミストセパレータでは、回転対象となる管状の容器の長さとして、容器の直径の10倍程度の長さが必要となる。このため、従来の遠心式オイルミストセパレータを、提案されているカムシャフト内に組込んで使用することは可能であるが、例えば、エンジンからの空冷用の空気の排出ダクトのように設置エリアに制限がある場合には、使用することができない。
【0005】
そこで、本発明は、より小型の遠心式オイルミストセパレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係る遠心式オイルミストセパレータは、エンジンから排出される、オイルミストを含む第1の排ガスの流路を形成するダクトと、前記ダクト内に固定されるファンと、前記エンジンから排出される、前記オイルミストを含まない第2の排ガスのエネルギを利用して前記ダクトとともに前記ファンを回転させる動力伝達機構とを有するものである。
また、本発明の実施形態に係る遠心式オイルミストセパレータは、エンジンから排出される、オイルミストを含む第1の排ガスの流路を形成するダクトと、前記ダクト内に回転可能に配置されるファンと、前記エンジンから排出される、前記オイルミストを含まない第2の排ガスのエネルギを利用して前記ファンを前記ダクトに対して回転させる動力伝達機構とを有するものであって、湾曲した前記ダクトの管壁から前記ファンの回転シャフトを前記ダクトの外部に突出させ、前記動力伝達機構で、前記第2の排ガスのエネルギで回転するタービンの出力シャフトから出力されるトルクを、前記ダクトの外部に突出した前記回転シャフトの部分に伝達するようにしたものである。
【0007】
また、本発明の実施形態に係るレシプロエンジンは、上述した遠心式オイルミストセパレータを設けたものである。
【0008】
また、本発明の実施形態に係る航空機は、上述したレシプロエンジンを備えたものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施形態に係る遠心式オイルミストセパレータを備えた航空機のレシプロエンジンの構成図。
図2図1に示すファンの形状例を示すファンの拡大右側面図。
図3図1に示す遠心式オイルミストセパレータのファンを回転させる構成を示すレシプロエンジンの配管図。
図4図1に示す遠心式オイルミストセパレータの回転ダクトの内面にオイルミストを含む第1の排ガスとの接触頻度を向上させるための凹凸を形成した例を示す回転ダクトの拡大縦断面図。
図5図1に示すレシプロエンジンの変形例を示す構成図。
図6】本発明の第2の実施形態に係る航空機のレシプロエンジンに備えられる遠心式オイルミストセパレータ及びタービンの構成図。
図7図6に示す遠心式オイルミストセパレータのファンの形状例を示す拡大右側面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態に係る遠心式オイルミストセパレータ、レシプロエンジン及び航空機について添付図面を参照して説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
(構成及び機能)
図1は本発明の第1の実施形態に係る遠心式オイルミストセパレータを備えた航空機のレシプロエンジンの構成図である。
【0013】
遠心式オイルミストセパレータ1は、エンジンから排出されるオイルミストを含む第1の排ガスG1からオイルミストを分離する除去装置である。このため、遠心式オイルミストセパレータ1は、レシプロエンジン2に代表されるエンジンに設けられる。図1に示す例では、遠心式オイルミストセパレータ1が固定翼航空機や回転翼航空機等の航空機3に備えられるレシプロエンジン2に取付けられる例を示しているが、自動車等のレシプロエンジンに遠心式オイルミストセパレータ1を取付けてオイルミストを回収するようにしても良い。
【0014】
レシプロエンジン2には、オイルミストを含む第1の排ガスG1の流路を形成する第1の排気ダクト4と、オイルミストを含まない第2の排ガスG2の流路を形成する第2の排気ダクト5が連結される。従って、オイルミストを含む第1の排ガスG1からオイルミストを分離する遠心式オイルミストセパレータ1は、第1の排気ダクト4に設けられる。オイルミストを含む第1の排ガスG1の例としては、エンジンオイルミストを含むブローバイガスの他、エンジンオイルミストを含む空冷用の空気が挙げられる。一方、オイルミストを含まない第2の排ガスG2の例としては、オイルミストが混入しない2次冷却用の空気やオイルミストが混入しないエンジンの燃焼排気ガスが挙げられる。第2の排ガスG2が流れる第2の排気ダクト5には、タービン6が配置される。従って、タービン6は、レシプロエンジン2から排出される第2の排ガスG2のエネルギで回転する。
【0015】
遠心式オイルミストセパレータ1は、回転ダクト7、ファン8、オイル回収容器9、オイル回収タンク10及び動力伝達機構11を有する。回転ダクト7及びオイル回収容器9は、それぞれレシプロエンジン2から排出される第1の排ガスG1の流路を形成する第1の排気ダクト4の一部を構成し、回転ダクト7の出口側にオイル回収容器9が連結される。従って、回転ダクト7の入口は、遠心式オイルミストセパレータ1の入口となり、オイル回収容器9の出口が遠心式オイルミストセパレータ1の出口となる。
【0016】
回転ダクト7は第1の排ガスG1の流路を形成する円筒状のパイプであり、両端がベアリング7A、7Bで回転可能に支持される。回転ダクト7の入口は、第1の排気ダクト4の上流側の一部を構成する固定ダクト4Aの出口と連結される。固定ダクト4Aは、レシプロエンジン2の筐体など航空機3内の所望の位置に固定されるダクトである。一方、回転ダクト7の出口と連結されるオイル回収容器9は、レシプロエンジン2の筐体など航空機3内の所望の位置に固定される。従って、回転ダクト7は、固定ダクト4A及びオイル回収容器9に対して回転する。
【0017】
回転ダクト7内にはファン8が配置される。ファン8は回転ダクト7の内面に固定される。従って、回転ダクト7が回転すると、回転ダクト7とともにファン8も回転する。
【0018】
図2図1に示すファン8の形状例を示すファン8の拡大右側面図である。
【0019】
ファン8は、第1の排ガスG1を吸引して旋回流を発生させる形状のブレード8Aを有する。ファン8を構成する各ブレード8Aは、回転ダクト7の内壁に固定される。
【0020】
従って、回転ダクト7とともにファン8を回転させると、ファン8の下流側には、第1の排ガスG1の旋回流が生じる。また、第1の排ガスG1はファン8で吸引されるため、ファン8の下流側における第1の排ガスG1の圧力の上昇が抑制される。このように旋回流となった第1の排ガスG1に含まれるオイルミストは、遠心力によって回転ダクト7の内壁に衝突し、凝集する。このため、第1の排ガスG1とオイルとを分離することができる。
【0021】
回転ダクト7の内壁に凝集した液体のオイルは、回転ダクト7の内壁を伝って回転ダクト7の出口からオイル回収容器9に流入する。オイル回収容器9は、入口側から出口側に向かって直径が徐々に大きくなる円錐状のパイプである。オイル回収容器9の出口自体の直径は絞られており、オイル回収容器9の出口に、第1の排気ダクト4の下流側の一部を構成する固定ダクト4Bの入口が連結される。固定ダクト4Bは、レシプロエンジン2の筐体など航空機3内の所望の位置に固定されるダクトである。
【0022】
従って、オイル回収容器9に流入した液体のオイルは、重力、界面張力及び第1の排ガスGの流れによってオイル回収容器9の出口付近における直径が大きい部分に溜まることになる。一方、第1の排ガスG1は、第1の排ガスG1の流れ方向に向かってオイル回収容器9の出口から固定ダクト4Bに排出される。このため、遠心式オイルミストセパレータ1の出口であるオイル回収容器9の出口からは、オイルミストが除去された後の第1の排ガスG1が固定ダクト4Bに排出されることになる。
【0023】
オイル回収容器9の最大直径を有する部分の下方に形成される底面には、オイル回収タンク10が配管で連結される。このため、オイル回収容器9に溜まったオイルは、オイル回収タンク10に回収される。オイル回収タンク10に回収されたオイルは再利用することができる。
【0024】
動力伝達機構11は、回転ダクト7及びファン8に動力を伝達して回転させる装置である。特に、動力伝達機構11は、オイルミストを含まない第2の排ガスG2のエネルギを利用して回転ダクト7及びファン8を回転させるように構成されている。
【0025】
図3図1に示す遠心式オイルミストセパレータ1のファン8を回転させる構成を示すレシプロエンジン2の配管図である。
【0026】
図3に示すように、レシプロエンジン2から排出される第2の排ガスG2のエネルギで回転するタービン6の出力シャフト6Bから出力されるトルクを、動力伝達機構11で回転ダクト7の外面に伝達することができる。そうすると、回転ダクト7は、ファン8のブレード8Aを固定する円環状のリムとして機能し、タービン6の出力シャフト6Bから出力されるトルクを、ファン8に伝達することができる。
【0027】
つまり、レシプロエンジン2から排出される第2の排ガスG2の流路にタービン6を配置して第2の排ガスG2のエネルギを回収し、第2の排ガスG2のエネルギの回生によって遠心式オイルミストセパレータ1のファン8を回転させることができる。
【0028】
このため、回転ダクト7及びファン8は、タービン6の出力シャフト6B以外の動力源からトルクの伝達を受けずに回転することができる。すなわち、モータ等の専用の動力源を新たに設けることなく、タービン6の出力シャフト6Bから伝達されるトルクと、第1の排ガスG1のエネルギのみで回転ダクト7及びファン8を回転させることができる。
【0029】
加えて、第2の排ガスG2のエネルギの回生によってファン8を回転させるので、オイルミストの除去対象となるガス自体のエネルギのみでファンを回転させる従来の遠心式オイルミストセパレータに比べて、回転ダクト7及びファン8の回転数と、発生させる第1の排ガスG1の旋回流のエネルギを増加させることができる。従って、従来の遠心式オイルミストセパレータに比べて、オイルミストの凝集効率が向上し、回転ダクト7の長さを短くすることができる。
【0030】
その結果、遠心式オイルミストセパレータ1の小型化及び軽量化が可能となり、エンジンオイルミストを含む空冷用の空気の排気ダクトのように第1の排気ダクト4の長さが短い場合であっても、遠心式オイルミストセパレータ1を配置することができる。
【0031】
回転ダクト7にトルクを伝達する動力伝達機構11は、タービン6の構造に応じて、ギア、ローラとの間における摩擦力で回転する動力伝達ベルト或いはスプロケットの回転によって移動するチェーンのように、所望の機械要素で構成することができる。
【0032】
図1に示す例では、タービン6のブレード6Aが、第2の排気ダクト5の一部のケーシングを兼ねた環状のリムの内面に固定されている。また、環状のリムは、ベアリング等によって第2の排気ダクト5に回転可能に連結されている。従って、タービン6の出力シャフト6Bは中空構造を有するリムであり、タービン6の回転中心ではなく外周に配置されている。
【0033】
このため、動力伝達機構11は、例えば、タービン6の出力シャフト6Bの外表面に形成される第1のギア12Aと、回転ダクト7の外表面に形成される第2のギア12Bを含む、ギアや動力伝達シャフト等の機械要素で構成することができる。もちろん、ギア12、12Bの代わりに、動力伝達ベルト等でタービン6の出力シャフト6Bから出力されるトルクを回転ダクト7に伝達するようにしても良い。
【0034】
回転ダクト7の長さは、十分な量のオイルミストが内壁に凝集して分離できるように決定される。従って、オイルミストの凝集効率、すなわち回転ダクト7の単位長さ当たりにおけるオイルミストの凝集量を増加させれば、回転ダクト7の長さを短くすることができる。
【0035】
そこで、回転ダクト7の内面及び外面の少なくとも一方に放熱用のヒートシンク13を設けることができる。ヒートシンク13は、表面積ができるだけ広くなるように、図1に例示されるような板状のフィン13Aの他、多数の突起を設けた構造や蛇腹状の構造のような所望の形状を有する凹凸によって構成することができる。図1に示す例では、回転ダクト7の外面に回転ダクト7の長さ方向に向かって螺旋状の構造となるフィン13Aがヒートシンク13として形成されている。
【0036】
回転ダクト7にヒートシンク13を設けると、回転ダクト7を空冷することができる。そうすると、ヒートシンク13が設けられない場合に比べて、回転ダクト7の内壁の温度を低下させることができる。このため、回転ダクト7の内壁に衝突したオイルミストの凝集を効率的に行うことが可能となる。その結果、ヒートシンク13が設けられない場合に比べて、回転ダクト7の長さを短くしても、オイルの分離が可能となる。
【0037】
回転ダクト7に固定されるフィン13A等のヒートシンク13は、回転ダクト7とともに回転するため、回転ダクト7の放熱を効率的に行うことができる。特に、フィン13Aを螺旋構造とすれば、隣接するフィン13Aの間に形成される空隙に空気の流れを形成し、放熱効率を一層向上させることができる。
【0038】
また、フィン13Aを螺旋構造とせずに簡易な構造とする場合であっても、回転ダクト7の回転軸に垂直な方向を高さ方向とする多数の円盤状のフィンを回転ダクト7の外面に形成すれば、回転ダクト7を回転させた場合に、フィンの間に空気が流れ易くなる効果を得ることができる。或いは、フィンの高さ方向を回転ダクト7の回転軸に対して傾斜させて回転ダクト7の外面に形成しても良い。この場合には、回転ダクト7のサイズの増加を抑制しつつ、空気の流れ易さとフィンの表面積を確保することができる。
【0039】
フィン13A等のヒートシンク13の素材の例としては、熱伝導率が高いアルミニウム、鉄又は銅等の金属が挙げられるが、軽量化の観点からはアルミニウムが好適な例である。
【0040】
図4は、図1に示す遠心式オイルミストセパレータ1の回転ダクト7の内面にオイルミストを含む第1の排ガスG1との接触頻度を向上させるための凹凸14を形成した例を示す回転ダクト7の拡大縦断面図である。
【0041】
図4に例示されるように回転ダクト7の内面には、ヒートシンク13に代えて、或いはヒートシンク13を兼ねた、オイルミストを含む第1の排ガスG1との接触頻度を向上させるための凹凸14を形成することができる。具体例として、図4に示すように、回転ダクト7の長さ方向に向かってファン8の回転方向と逆向きの回転方向を有する螺旋状となる凹凸を、接触頻度を向上させるための凹凸14として回転ダクト7の内壁に形成することができる。
【0042】
このような凹凸14を回転ダクト7の内面に設けると、オイルミストを含む第1の排ガスG1の旋回流が回転ダクト7の内面に接触し易くなるため、オイルミストの凝集効率を向上させることができる。その結果、オイルの回収効率を変えずに、回転ダクト7の長さを短くすることができる。
【0043】
接触頻度を向上させるための凹凸14は、多数の突起や蛇腹状の形状のように螺旋形状以外の形状としても良い。尚、凹凸14を設けた回転ダクト7の内面の表面積は、凹凸14が無い円筒状の曲面の表面積に比べて大きくなるため、回転ダクト7の少なくとも内壁を熱伝導率が高い材料で構成すれば、ヒートシンク13としても機能させることができる。
【0044】
以上のような遠心式オイルミストセパレータ1、レシプロエンジン2及び航空機3は、オイルミストを含む第1の排ガスG1の流路を形成する第1の排気ダクト4内にファン8を配置し、オイルミストを含まない第2の排ガスG2のエネルギを利用して回転ダクト7及びファン8を回転させ、第1の排ガスG1を回転ダクト7の内面に接触させることによってオイルミストを第1の排ガスG1から分離するものである。
【0045】
(効果)
このため、遠心式オイルミストセパレータ1、レシプロエンジン2及び航空機3によれば、装置の簡易化と小型軽量化が可能となる。すなわち、新たな動力源を用いることなく遠心式オイルミストセパレータ1の回転ダクト7及びファン8を回転できるため、遠心式オイルミストセパレータ1の構成の簡易化、小型化及び軽量化を図ることができる。特に、第2の排ガスG2のエネルギの回生によってファン8を回転させるので、対象ガスのエネルギのみでファンを回転させる従来方式に比べてオイルミストの凝集効率及び回収効率が向上し、回転ダクト7の長さを短くすることができる。
【0046】
加えて、回転ダクト7にヒートシンク13を設けたり、回転ダクト7の内面にオイルミストを含む第1の排ガスG1との接触頻度を向上させるための螺旋構造等の凹凸14を設けたりすることによって、オイルの分離効率を一層向上させることができる。その結果、回転ダクト7の長さを一層短くすることができる。
【0047】
しかも、遠心式オイルミストセパレータ1のファン8は、レシプロエンジン2から排気される第2の排ガスG2のエネルギによって回転するため、レシプロエンジン2の出力が上昇して第2の排ガスG2のエネルギが増加すると、ファン8の回転数とともに第1の排ガスG1の流量も増加する。従って、第1の排ガスG1がレシプロエンジン2の空冷用の空気であれば、レシプロエンジン2の出力が増加してレシプロエンジン2の温度が上昇した場合に、空冷用の空気である第1の排ガスG1の流量が増加するため、冷却効果を増加させてレシプロエンジン2の温度上昇に対応することができる。
【0048】
(変形例)
図5は、図1に示すレシプロエンジン2の変形例を示す構成図である。
【0049】
図5に示すようにタービン6の出力シャフト6Bをタービン6の回転中心に配置するようにしても良い。換言すれば、タービン6の出力シャフト6Bにブレード6Aを固定するようにしても良い。
【0050】
その場合には、第2の排気ダクト5を湾曲させて、タービン6の出力シャフト6Bを第2の排気ダクト5内から第2の排気ダクト5外に突出させることができる。そして、第2の排気ダクト5外に突出したタービン6の出力シャフト6Bに動力伝達機構11を構成する第1のギア12Aを連結することができる。動力伝達ベルト等を用いて動力伝達機構11を構成する場合も同様である。
尚、タービン6の出力シャフト6Bの両端はベアリング等で回転可能に支持することができる。また、第2の排気ダクト5内に配置されるベアリングは、外輪側をスポークのような第2の排ガスG2をできるだけ遮らない形状を有する支柱で第2の排気ダクト5の内壁に固定することができる。
【0051】
図5に示す例の他、傘歯車を連結したシャフトを用いて動力伝達機構11を構成すれば、シャフトの回転軸方向を変えながらトルクを伝達することができる。このため、例えば、タービン6の出力シャフト6Bに第1の傘歯車を固定し、第1の傘歯車と噛み合う第2の傘歯車を一端に固定したシャフトを第2の排気ダクト5の壁面を貫通するように配置すれば、第2の排気ダクト5を湾曲させずに、タービン6の出力シャフト6Bで生じたトルクを第2の排気ダクト5の外部に伝達することが可能となる。
【0052】
(第2の実施形態)
図6は本発明の第2の実施形態に係る航空機のレシプロエンジンに備えられる遠心式オイルミストセパレータ及びタービンの構成図であり、図7図6に示す遠心式オイルミストセパレータのファンの形状例を示す拡大右側面図である。
【0053】
図6及び図7に示された第2の実施形態における遠心式オイルミストセパレータ1Aは、回転ダクト7に代えて固定ダクト20を設け、ファン8を固定ダクト20に対して回転させるようにした点が第1の実施形態における遠心式オイルミストセパレータ1と相違する。第2の実施形態における遠心式オイルミストセパレータ1Aの他の構成及び作用については第1の実施形態における遠心式オイルミストセパレータ1と実質的に異ならないため遠心式オイルミストセパレータ1Aとタービン6のみ図示し、同一の構成又は対応する構成については同符号を付して説明を省略する。
【0054】
第2の実施形態における遠心式オイルミストセパレータ1Aは、固定ダクト20、ファン8、オイル回収容器9、オイル回収タンク10及び動力伝達機構11を有する。固定ダクト20は、第1の排ガスG1が流れる第1の排気ダクト4の一部を構成するパイプである。固定ダクト20の入口側は、第1の排気ダクト4の一部を構成する上流側の固定ダクト4Aの出口と連結され、固定ダクト20の出口側は、オイル回収容器9の入口と連結される。従って、固定ダクト20の入口が、遠心式オイルミストセパレータ1の入口となり、オイル回収容器9の出口が遠心式オイルミストセパレータ1の出口となる。
【0055】
固定ダクト20は、上流側の固定ダクト4A及び下流側の固定ダクト4Bと同様に、レシプロエンジン2の筐体など航空機3内の所望の位置に固定される。従って、固定ダクト20は回転しない。
【0056】
固定ダクト20内には、ファン8が回転可能に配置される。従って、ファン8の構造は、ブレード8Aを回転シャフト8Bに固定した構造とすることが実用的である。その場合、ファン8の回転シャフト8Bをベアリング21A、21Bで回転可能に支持することができる。ベアリング21A、21Bは、第1の排ガスG1をできるだけ遮らないスポークのような形状を有する支柱で、固定ダクト20を含む第1の排気ダクト4内の所望の位置における内壁に固定することができる。
【0057】
ファン8を回転させるためには、ファン8の回転中心に配置される回転シャフト8Bにトルクを伝達することが必要である。そこで、図5に例示されるタービン6の出力シャフト6Bと同様に、上流側の固定ダクト4A又は下流側の固定ダクト4Bを湾曲させ、ファン8の回転シャフト8Bを湾曲した第1の排気ダクト4の管壁から第1の排気ダクト4の外部に突出させることができる。
【0058】
これにより、動力伝達機構11からファン8の回転シャフト8Bへの動力伝達によって、ファン8を固定ダクト20に対して回転させることが可能となる。具体的には、タービン6の出力シャフト6Bから出力されるトルクを、第1の排気ダクト4の外部に突出したファン8の回転シャフト8Bの部分に伝達することによって、ファン8を固定ダクト20に対して回転させることができる。
【0059】
そのために、動力伝達機構11は、例えば、タービン6の出力シャフト6Aに固定される第1のギア12Aと、第1の排気ダクト4の外部に突出したファン8の回転シャフト8Bに固定される第2のギア12Bを含む、ギアや動力伝達シャフト等の機械要素で構成することができる。もちろん、ギア12、12Bの代わりに、動力伝達ベルト等でタービン6の出力シャフト6Bから出力されるトルクをファン8の回転シャフト8Bに伝達するようにしても良い。
【0060】
従って、固定ダクト20内に配置されるファン8の回転シャフト8Bは、タービン6の出力シャフト6A以外の動力源からトルクの伝達を受けず、ファン8は第2の排ガスG2のエネルギの回生と、第1の排ガスG1のエネルギのみで回転する。固定ダクト20内でファン8を回転させると第1の排ガスG1の旋回流が形成されるため、固定ダクト20を回転させなくても、オイルミストが固定ダクト20の内壁に衝突して凝集する。その結果、第1の排ガスG1に含まれるオイルを分離して回収することができる。
【0061】
このため、固定ダクト20にも、第1の実施形態における回転ダクト7と同様に、ヒートシンク13を設けたり、固定ダクト20の内面に第1の排ガスG1との接触頻度を向上させるための凹凸14を形成したりすることによって、オイルミストの凝集効率を向上させることができる。その結果、固定ダクト20の長さを短くすることができる。
【0062】
以上の第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様な効果に加え、回転対象がファン8のみであるため安全性を向上することができる。具体的には第1の実施形態における回転ダクト7のような駆動部品の数を減少させることや固定ダクト20の両端からの第1の排ガスG1の漏出を防止することが可能である。
【0063】
また、回転対象がファン8のみであるため第1の実施形態のように回転ダクト7を回転させる場合に比べてベアリングのサイズを小さくすることができる。その結果、遠心式オイルミストセパレータ1Aの軽量化を図ることができる。加えて、回転ダクト7と上流側の固定ダクト4Aを共通のパイプで構成することも可能である。その場合には、レシプロエンジン2の部品点数を削減することができる。
【0064】
尚、第2の実施形態においても、図5に例示されるようにタービン6の回転中心に配置される出力シャフト6Bを湾曲する第2の排気ダクト5から突出させ、突出したタービン6の出力シャフト6Bから出力されるトルクを、第1の排気ダクト4から突出したファン8の回転シャフト8に伝達するようにしても良い。また、傘歯車を用いて動力伝達機構11を構成するようにしても良い。
【0065】
(他の実施形態)
以上、特定の実施形態について記載したが、記載された実施形態は一例に過ぎず、発明の範囲を限定するものではない。ここに記載された新規な方法及び装置は、様々な他の様式で具現化することができる。また、ここに記載された方法及び装置の様式において、発明の要旨から逸脱しない範囲で、種々の省略、置換及び変更を行うことができる。添付された請求の範囲及びその均等物は、発明の範囲及び要旨に包含されているものとして、そのような種々の様式及び変形例を含んでいる。
【符号の説明】
【0066】
1、1A 遠心式オイルミストセパレータ
2 レシプロエンジン
3 航空機
4 第1の排気ダクト
4A 固定ダクト
4B 固定ダクト
5 第2の排気ダクト
6 タービン
6A ブレード
6B 出力シャフト
7 回転ダクト
7A、7B ベアリング
8 ファン
8A ブレード
8B 回転シャフト
9 オイル回収容器
10 オイル回収タンク
11 動力伝達機構
12A、12B ギア
13 ヒートシンク
13A フィン
14 凹凸
20 固定ダクト
21A、21B ベアリング
G1 第1の排ガス
G2 第2の排ガス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7