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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-31
(45)【発行日】2023-09-08
(54)【発明の名称】油性化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/31 20060101AFI20230901BHJP
   A61Q 1/04 20060101ALI20230901BHJP
【FI】
A61K8/31
A61Q1/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019084451
(22)【出願日】2019-04-25
(65)【公開番号】P2020180080
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2022-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田村 英子
(72)【発明者】
【氏名】安森 春子
【審査官】佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-017297(JP,A)
【文献】特開2014-105188(JP,A)
【文献】特開2014-221730(JP,A)
【文献】特開2013-053141(JP,A)
【文献】特開2014-196259(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)、(C)及び(D):
(A)25℃での針入度が6~20の固形炭化水素系ワックス 1.5~5質量%、
(B)25℃での針入度が25~50の固形炭化水素系ワックス 4.5~15質量%、
(C)平均分子量700~4000の炭化水素油 30~60質量%、
(D)25℃での粘度が100mPa・s以下のエステル油 3~20質量%
を含有し、
成分(A)及び(B)の合計量に対する成分(D)の質量割合が、(D)/((A)+(B))=0.3~2であり、
30℃における化粧料の2mmφ冶具での針入硬度が0.09~0.2N/mm2である油性化粧料。
【請求項2】
成分(A)、(B)及び(C)の合計量に対する成分(D)の質量割合が、(D)/((A)+(B)+(C))=0.05~0.35である請求項記載の油性化粧料。
【請求項3】
さらに、(E)ワセリンを、10質量%以下含有する請求項1又は2記載の油性化粧料。
【請求項4】
さらに、(F)平均分子量700未満の炭化水素油 13~32質量%を含有する請求項1~のいずれか1項記載の油性化粧料。
【請求項5】
口唇化粧料である請求項1~のいずれか1項記載の油性化粧料。
【請求項6】
ジャー容器、パレット容器に直接加熱溶融充填して冷却する、流し込み形状であって、化粧料を指で直接取って塗布するものである、請求項1~5のいずれか1項に記載の油性化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油性化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
口唇化粧料等の油性化粧料では、形状として、スティックタイプ(固形状)、金皿や樹脂皿等に直接充填された固形流し込みタイプ、チューブやボトルに充填された液状タイプ(非固形状)等が用いられている。
これらの化粧料において、塗布用具を使用する場合、唇等にきれいに塗布するには、塗布用具への取れ性が重要である。
例えば、特許文献1には、特定の炭化水素系ワックス、液状の油性成分及びデキストリン脂肪酸エステルを含有し、特定の針入硬度の非固形状口唇化粧料が、塗布用具への取れ性に優れ、高温での保存安定性も良好であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-034522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、塗布用具を用いず、油性化粧料を指で直接塗布して使用する場合には、指どれが重要になるが、化粧料に指で触れたときの感触をやわらかくすると、高温で液だれしやすくなり、指どれ性が低下するという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、針入度が異なる2種の固形炭化水素系ワックスと、特定の炭化水素油及びエステル油を組みあわせ、特定の針入硬度となる油性化粧料が、室温で指で触れると適度にやわらかく、指どれ性に優れるのに、高温でも液だれしないことを見出した。
【0006】
本発明は、次の成分(A)、(B)、(C)及び(D):
(A)25℃での針入度が6~20の固形炭化水素系ワックス 1.5~5質量%、
(B)25℃での針入度が25~50の固形炭化水素系ワックス 4.5~15質量%、
(C)平均分子量700~4000の炭化水素油 30~60質量%、
(D)25℃での粘度が100mPa・s以下のエステル油 3~20質量%
を含有し、
30℃における化粧料の2mmφ冶具での針入硬度が0.09~0.2N/mm2である油性化粧料に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の油性化粧料は、高温で横置きしても液だれせず、室温で指で触れたときの感触がやわらかく、指どれ性に優れたものである。また、潤い性能の高いものである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明で用いる成分(A)は、25℃での針入度が6~20、好ましくは7~15、より好ましくは7~12の固形炭化水素系ワックスである。
本発明において、針入度は、25±0.1℃に保ったワックスの試料に、規定の針(針の質量2.5±0.02g、針保持具の質量47.5±0.02g、おもりの質量50±0.05g)が、5秒間に針入する長さを測定し、その針入距離(mm)を10倍した値を針入度とするものであり、JIS K-2235-5.4(1991年)に準じて測定した値である。
【0009】
また、固形とは、25℃において固体の性状を示し、融点が65℃以上、好ましくは70℃以上のものである。
成分(A)は、融点65~95℃であるのが好ましく、70~85℃がより好ましい。
本発明において、融点は、化粧品原料基準記載一般試験法の第3法により、測定されるものである。すなわち、試料をかき混ぜながら徐々に90~92℃まで加熱して融解し、加熱を止め、試料を融点より8~10℃高い温度まで放冷する。次いで、温度計(日本工業規格B7410に規定するペトロラタム融点用温度計)を5℃に冷却した後、ろ紙で水分をふきとって水銀球の半分を試料中に差し込み、直ちに抜きとり、垂直に保って放冷し、付着した試料が混濁してきたとき、16℃以下の温度の水中に5分間浸す。次に、試験官に温度計を挿入し温度計の下端と試験管の底との間が15mmになるようにコルクを用いて温度計を固定する。この試験管を、約16℃の水を入れた500mLのビーカー中に試験管の底をビーカーの底との距離を15mmになるように固定し、浴の温度が30℃になるまでは1分間に2℃ずつ上がるように加熱する。次いで、1分間に1℃上がるように加熱を続け、温度計から試料の一滴が離れたときの温度を測定する。この試験を3回行い、測定値の差が1℃未満のときは、その平均値をとり、1℃以上のときは、5回測定してその平均値をとり、融点とする。
【0010】
成分(A)の25℃での針入度が6~20の固形炭化水素系ワックスとしては、例えば、オゾケライト、セレシン等の鉱物系ワックス;パラフィン、ペトロラタム等の石油系ワックス;フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス等の合成炭化水素が挙げられる。これらのうち、セレシン、パラフィン、ポリエチレンワックスが好ましく、セレシンがより好ましい。
これらのワックスは、市販品を使用することができ、例えば、セレシンとして、セレシン#810、セレシンB(以上、日興リカ社);パラフィンとして、パラフィンワックス125、130、135、140、150、155、HNP-3、9、SP-0145、0160、0165、1039、3035、3040(以上、日本精鑞社);フィッシャー・トロプシュワックスとして、FT-0070、0165(以上、日本精鑞社);ポリエチレンワックスとして、PERFORMALENE PL POLYETHYLENE、PERFORMA LENE 400、500(以上、NEW PHASE TECHNOLOGIES社)等が挙げられる。
【0011】
成分(A)は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができ、高温で横置きしても液だれを抑制し、潤い性能を付与する点から、含有量は、全組成中に1.5質量%以上であり、2質量%以上が好ましく、5質量%以下であり、4質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましい。また、成分(A)の含有量は、全組成中に1.5~5質量%であり、2~4質量%が好ましく、2~3質量%がより好ましい。
【0012】
成分(B)は、25℃での針入度が25~50、好ましくは28~40の固形炭化水素系ワックスである。
かかるワックスとしては、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス等が挙げられ、マイクロクリスタリンワックスが好ましい。
これらのワックスは、市販品を使用することができ、例えば、マイクロクリスタリンワックスとして、Multiwax W-445(以上、SONNEBORN社)、Hi-Mic-1045、1070(以上、日本精鑞社)、精製マイクロクリスタリンワックス(日興リカ社)等が挙げられる。
【0013】
また、成分(B)は、融点65~95℃であるのが好ましく、70~85℃がより好ましい。
【0014】
成分(B)は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができ、高温で横置きしても液だれを抑制し、潤い性能を付与する点から、含有量は、全組成中に4.5質量%以上であり、6質量%以上が好ましく、8質量%以上がより好ましく、15質量%以下であり、12質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。また、成分(B)の含有量は、全組成中に4.5~15質量%であり、6~12質量%が好ましく、8~10質量%がより好ましい。
【0015】
本発明において、成分(A)及び(B)の合計含有量は、高温で横置きしても液だれを抑制し、潤い性能を付与する点から、全組成中に6質量%以上であるのが好ましく、8質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましく、20質量%以下が好ましく、16質量%以下がより好ましく、13質量%以下がさらに好ましい。また、成分(A)及び(B)の合計含有量は、全組成中に6~20質量%であるのが好ましく、8~16質量%がより好ましく、10~13質量%がさらに好ましい。
【0016】
本発明において、成分(A)に対する成分(B)の質量割合(B)/(A)は、高温で横置きしても液だれを抑制し、潤い性能を付与する点から、1以上であるのが好ましく、2以上がより好ましく、3以上がさらに好ましく、10以下が好ましく、8以下がより好ましく、5以下がさらに好ましい。また、成分(A)に対する成分(B)の質量割合は、(B)/(A)=1~10であるのが好ましく、2~8がより好ましく、3~5がさらに好ましい。
【0017】
本発明の成分(C)の炭化水素油は、室温で指で触れたときの感触がやわらかくなる点から、平均分子量700~4000、好ましくは700~3500、より好ましくは800~3000の炭化水素油であり、25℃で液状のものである。
本発明において、平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレンを標準試料として測定されるものである。
成分(C)の炭化水素油としては、例えば、スクワラン、流動パラフィン、流動イソパラフィン、重質流動イソパラフィン、ポリブテン、水添ポリイソブテン、水添ポリデセン等が挙げられ、重質流動イソパラフィン、ポリブテン、水添ポリイソブテンが好ましい。
【0018】
成分(C)の炭化水素油は、室温で指で触れたときの感触がやわらかくなる点から、25℃での粘度が10000~100000mPa・sであるのが好ましく、50000~100000mPa・sがより好ましい。
本発明において、粘度は、B型粘度計(東機産業社:TVB-10)で、25℃の条件下、ローターNo.4を回転数6rpmの条件で、回転時間1分で測定したものである。
【0019】
成分(C)は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができ、室温で指で触れたときの感触がやわらかくなる点から、含有量は、全組成中に30質量%以上であり、35質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましく、60質量%以下であり、55質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。また、成分(C)の含有量は、全組成中に30~60質量%であり、35~55質量%が好ましく、40~50質量%がより好ましい。
【0020】
成分(D)は、20℃での粘度が100mPa・s以下、好ましくは1~60mPa・sのエステル油である。
かかるエステル油としては、例えば、ホホバ油、ヒマワリ油、アマニ油、大豆油等の植物油;ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸イソプロピル、イソノナン酸イソノニル(7mPa・s)、ステアリン酸ブチル、イソノナン酸イソトリデシル(11mPa・s)、リシノレイン酸オクチルドデシル、パルミチン酸エチルヘキシル(13mPa・s)、エチルヘキサン酸セチル(14mPa・s)、炭酸プロピレン、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール(19mPa・s)、ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール(14mPa・s)、ジイソステアリン酸プロパンジオール、ジ(カプリン酸/カプリル酸)プロパンジオール、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル(23mPa・s)、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル(30mPa・s)、トリエチルヘキサノイン、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン等の脂肪酸エステルなどが挙げられる。中でも、ホホバ油が好ましい。
【0021】
成分(D)としては、高温で横置きしても液だれせず、室温で指で触れたときの感触がやわらかく、指どれ性に優れる点から、25℃での粘度が60mPa・s以下のエステル油、植物油が好ましい。
【0022】
成分(D)は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができ、高温で横置きしても液だれせず、室温で指で触れたときの感触がやわらかく、指どれ性に優れる点から、含有量は、全組成中に3質量%以上であり、5質量%以上が好ましく、7質量%以上がより好ましく、20質量%以下であり、15質量%以下が好ましく、12質量%以下がより好ましい。また、成分(D)の含有量は、全組成中に3~20質量%であり、5~15質量%が好ましく、7~12質量%がより好ましい。
【0023】
本発明において、成分(A)及び(B)の合計量に対する成分(D)の質量割合(D)/((A)+(B))は、高温で横置きしても液だれせず、室温で指で触れたときの感触がやわらかく、指どれ性に優れ、潤い性能が高い点から、0.3以上が好ましく、0.4以上がより好ましく、0.6以上がさらに好ましく、2以下が好ましく、1.5以下がより好ましく、1以下がさらに好ましい。また、成分(A)及び(B)の合計量に対する成分(D)の質量割合は、(D)/((A)+(B))=0.3~2であるのが好ましく、0.4~1.5がより好ましく、0.6~1がさらに好ましい。
【0024】
本発明において、成分(A)、(B)及び(C)の合計量に対する成分(D)の質量割合(D)/((A)+(B)+(C))は、高温で横置きしても液だれせず、室温で指で触れたときの感触がやわらかく、指どれ性に優れ、潤い性能が高い点から、0.05以上が好ましく、0.06以上がより好ましく、0.07以上がさらに好ましく、0.35以下が好ましく、0.3以下がより好ましく、0.25以下がさらに好ましい。また、成分(A)、(B)及び(C)の合計量に対する成分(D)の質量割合は、(D)/((A)+(B)+(C))=0.05~0.35であるのが好ましく、0.06~0.3がより好ましく、0.07~0.25がさらに好ましい。
【0025】
本発明の油性化粧料は、さらに、(E)ワセリンを含有することができ、指どれにより優れた化粧料を得ることができる。
ワセリンは、融点38~60℃の炭化水素の混合物であり、25℃において、固形のものである。
【0026】
成分(E)のワセリンの含有量は、高温での液だれを抑制する点から、全組成中に10質量%以下であるのが好ましく、8質量%以下がより好ましく、6質量%以下がさらに好ましく、0質量%以下が好ましく、1質量%以上がより好ましく、2質量%以下がさらに好ましい。また、成分(E)のワセリンの含有量は、全組成中に0~10質量%であるのが好ましく、1~8質量%がより好ましく、2~6質量%がさらに好ましい。
【0027】
本発明の油性化粧料は、さらに、(F)平均分子量700未満、好ましくは、100~600の炭化水素油を含有することができ、室温で指で触れたときの感触をよりやわらかくすることができる。
成分(F)の炭化水素油は、25℃で液状のものであり、25℃での粘度が1~10000mPa・s未満であるのが好ましく、2~9000mPa・sがより好ましい。
成分(F)の炭化水素油としては、成分(C)と同様のもので、平均分子量が異なるものが挙げられ、流動パラフィン、ポリイソブテンが好ましい。
【0028】
成分(F)は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができ、室温で指で触れたときの感触をやわらかくする点から、含有量は、全組成中に13質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、17質量%以上がさらに好ましく、32質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、28質量%がさらに好ましい。また、成分(F)の含有量は、全組成中に13~32質量%が好ましく、15~30質量%がより好ましく、17~28質量%がさらに好ましい。
【0029】
本発明において、成分(A)、(B)、(C)、(E)及び(F)の合計含有量は、室温で指で触れたときの感触をやわらかくする点から、全組成中に80質量%以上であるのが好ましく、85質量%以上がより好ましく、88質量%以上がさらに好ましく、97質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましく、93質量%以下がさらに好ましい。また、成分(A)、(B)、(C)、(E)及び(F)の合計含有量は、全組成中に80~97質量%であるのが好ましく、85~95質量%がより好ましく、88~93質量%がさらに好ましい。
【0030】
本発明において、成分(A)、(B)、(C)、(E)及び(F)の合計量に対する成分(D)の質量割合(D)/((A)+(B)+(C)+(E)+(F))は、高温で横置きしても液だれせず、室温で指で触れたときの感触がやわらかく、指どれ性に優れ、潤い性能が高い点から、0.04以上が好ましく、0.05以上がより好ましく、0.06以上がさらに好ましく、0.2以下が好ましく、0.18以下がより好ましく、0.15以下がさらに好ましい。また、成分(A)、(B)、(C)、(E)及び(F)の合計量に対する成分(D)の質量割合は、(D)/((A)+(B)+(C)+(E)+(F))=0.04~0.2であるのが好ましく、0.05~0.18がより好ましく、0.06~0.15がさらに好ましい。
【0031】
本発明の油性化粧料は、さらに、(G)油性ゲル化剤を含有することができ、油性ゲル化剤を少量含有させることで、室温で指で触れたときの感触がやわらかく、指どれ性に優れる油性化粧料を得ることができる。
油性ゲル化剤としては、通常の化粧料に用いられるもので、例えば、金属石鹸、有機変性粘土鉱物、デキストリン脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0032】
金属石鹸としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ミリスチン酸アルミニウム、ミリスチン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩が挙げられる。
【0033】
有機変性粘土鉱物としては、通常の化粧料に用いられるものであれば制限されずに用いることができる。例えば、ベントナイト、ラポナイト、ヘクトライト、モンモリロナイト、ケイ酸アルミニウムマグネシウム等の層状粘土鉱物を第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤で処理して得られるカチオン変性粘土鉱物が好ましい。
ここで、第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤は、下記式(1):
【0034】
【化1】
【0035】
(式中、R1は炭素原子数10~22のアルキル基又はベンジル基を示し、R2はメチル基又は炭素原子数10~22のアルキル基を示し、R3及びR4は炭素原子数1~3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を示し、Xはハロゲン原子又はメチルサルフェート残基を示す)
で表されるものである。
【0036】
具体的には、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ミリスチルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロリド、ミリスチルジメチルエチルアンモニウムクロリド、セチルジメチルエチルアンモニウムクロリド、ステアリルジメチルエチルアンモニウムクロリド、ベヘニルジメチルエチルアンモニウムクロリド、ミリスチルジエチルメチルアンモニウムクロリド、セチルジエチルメチルアンモニウムクロリド、ステアリルジエチルメチルアンモニウムクロリド、ベヘニルジエチルメチルアンモニウムクロリド、ベンジルジメチルミリスチルアンモニウムクロリド、ベンジルジメチルセチルアンモニウムクロリド、ベンジルジメチルステアリルアンモニウムクロリド、ベンジルジメチルベヘニルアンモニウムクロリド、ベンジルメチルエチルセチルアンモニウムクロリド、ベンジルメチルエチルステアリルアンモニウムクロリド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジベヘニルジヒドロキシエチルアンモニウムクロリド、および上記各化合物のクロリドに代えてブロミド化合物としたもの等、さらにジパルミチルプロピルエチルアンモニウムメチルサルフェート等が挙げられる。
【0037】
層状粘土鉱物を第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤で処理して得られるカチオン変性粘土鉱物としては、ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト、ジメチルジステアリルアンモニウムベントナイト、ベンジルジメチルステアリルアンモニウムヘクトライト等が好ましく、ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライトがより好ましい。また、市販品としては、ベントン38、ベントン38VCG、ベントン27(以上、エレメンティスジャパン社製)等が挙げられる。
【0038】
有機変性粘土鉱物は、作業性向上の点、油の増粘効果に優れる点から、溶媒によって希釈された分散液として用いることもできる。
具体的には、有機変性粘土鉱物を予め溶媒に分散させたプレミックスゲルを用いることが好ましい。溶媒としては、有機変性粘土鉱物によって増粘可能であれば制限されないが、油の増粘効果の点から、オクチルドデカノール、ミネラルオイル等が好ましい。また、有機変性粘土鉱物を効率良く分散させて増粘効果を発現させる点から、炭酸プロピレン、エタノール、水、各種界面活性剤等の極性添加剤を含むことが好ましい。
プレミックスゲル中の有機変性粘土鉱物の含有量は、作業性向上の点、油の増粘効果、及び増粘した油性ゲル自体の油分離を抑制する点から、5~25質量%が好ましく、8~20質量%がより好ましく、10~18質量%がさらに好ましい。
プレミックスゲルとしては、カチオン変性粘土鉱物を10質量%含有するベントンゲルEUGV、ベントンゲルMIOV、18質量%含有するベントンゲルVS-5 PCV、15質量%含有するベントンゲルPTM(以上、エレメンティスジャパン社製)等の市販品を用いることができる。
【0039】
デキストリン脂肪酸エステルとしては、通常の化粧料に用いられるものであれば制限されず、炭素数8~24の脂肪酸とデキストリンのエステルが好ましく、炭素数14~20の脂肪酸とデキストリンのエステルがより好ましい。また、デキストリンの平均重合度が3~150であるのが好ましい。
具体的には、パルミチン酸デキストリン、ステアリン酸デキストリン、パルミチン酸・ステアリン酸デキストリン、オレイン酸デキストリン、イソパルミチン酸デキストリン、イソステアリン酸デキストリン、ミリスチン酸デキストリン、パルミチン酸・2-エチルヘキサン酸デキストリン等が挙げられる。
【0040】
成分(G)は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができ、室温で指で触れたときの感触がやわらかく、指どれ性に優れる点から、含有量は、全組成中に1質量%以下であるのが好ましく、0.4質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下がさらに好ましく、実質的に含まないのがよりさらに好ましい。
【0041】
本発明の油性化粧料は、さらに、粉体を含有することができる。かかる粉体としては、通常の化粧料に用いられるものであれば制限されず、体質顔料、着色顔料、パール顔料等を用いることができる。
体質顔料としては、例えば、ケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸マグネシウム、タルク、セリサイト、マイカ、カオリン、クレー、ベントナイト、オキシ塩化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の無機顔料及びこれらの複合粉体が挙げられる。
【0042】
着色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、黄酸化鉄、ベンガラ、黒酸化鉄、紺青、群青、酸化クロム、水酸化クロム等の金属酸化物、マンガンバイオレット、チタン酸コバルト等の金属錯体、更にカーボンブラック等の無機顔料、赤色104号、赤色106号、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色227号、赤色228号、赤色230号、赤色401号、赤色405号、赤色505号、橙色203号、橙色204号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、黄色401号、青色1号、青色404号等の合成有機顔料;β-カロチン、カラメル、パプリカ色素等の天然有機色素などが挙げられる。
【0043】
パール顔料としては、雲母、合成金雲母、ガラス等の表面を酸化チタン、酸化鉄、酸化ケイ素、紺青、酸化クロム、カルミン、有機顔料等の着色剤で被覆したものなどを用いることができる。
これらの粉体は、通常の方法により、撥水処理、撥水・撥油化処理等の各種表面処理を施したものを用いることもできる。
【0044】
これらの粉体は、1種又は2種以上を用いることができ、含有量は、全組成中に0質量%以上が好ましく、20質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましい。また、粉体の含有量は、全組成中に0~20質量%が好ましく、0~8質量%がより好ましい。
【0045】
本発明の油性化粧料は、前記成分以外に、通常の化粧料に用いられる成分、例えば、界面活性剤、低級アルコール、多価アルコール、高分子化合物、紫外線吸収剤、酸化防止剤、香料、防汚剤、保湿剤等を含有することができる。
【0046】
本発明の油性化粧料は、30℃における化粧料の2mmφ冶具での針入硬度が0.09~0.2N/mm2であり、0.1~0.18N/mm2が好ましく、0.1~0.16N/mm2がより好ましい。この範囲内であれば、室温で指に触れたときにやわらかく、指どれ性に優れ、高温で横置きしても液だれすることがない。
本発明において「針入硬度」とは、不動工業社製のレオメーターを用い、30℃にて、冶具の直径が2mmでtable speedが2mm/sの速さで、冶具が深さ2mmまで針入した時の最大値を、単位面積当たりに換算したものである。
【0047】
本発明の油性化粧料は、通常の方法により、製造することができ、ジャー容器、パレット容器等に充填され、固形状であるのが好ましい。リップクリーム、口紅、リップグロス等の口唇化粧料として好適である。
本発明の油性化粧料は、ジャー容器、パレット容器等に直接加熱溶融充填して、冷却する、流し込み形状とするのが好ましく、化粧料を指で直接取って塗布して使用するのが好ましい。
本発明の油性化粧料は、固形状とした場合であっても、従来にはない、やわらかい感触であるのに、液だれしないという特徴を有するものである。固形状であってもやわらかいので、化粧料を指で直接取って塗布するのに好適であり、また、ジャー容器等に充填して、高温で横置き保存した場合にも、液だれすることがない。
【実施例
【0048】
実施例1~8及び比較例1~4
表1に示す組成の口唇化粧料を製造し、針入硬度を測定するとともに、水分閉塞性、横置き安定性、室温で化粧料に指で触れたときのやわらかさ及び指どれ性を評価した。結果を表1に併せて示す。
【0049】
(製造方法)
表1に示す全成分を100℃で加熱溶解して均一に混合し、口唇化粧料のバルクを得た。そのバルクを80℃にてジャー容器に直接充填し、冷却固化してジャータイプの口唇化粧料を得た。
【0050】
(評価方法)
(1)針入硬度:
測定サンプルは、バルクを90℃に加熱し、直径2.5cmのアルミ製のセルに流し込み20℃で冷却固化させ、30℃に2時間置いたものである。このサンプルを、不動工業社製のレオメーターを用い、30℃にて、直径2mmφの冶具にて測定を行った。Table speedが2mm/sの速さで、冶具が深さ2mmまで針入した時の最大値である。
【0051】
(2)水分閉塞性:
ガラス製試薬瓶(開口部1.5cmφ)に水10ccを入れ、サンプルを25μmの厚みになるように濾紙(東洋濾紙社、メンブランフィルター;細孔径0.2μm)の片面に塗布し、これで開口部を覆う。これを30℃、30%RHの条件に12時間静置したときの試薬瓶の重量減少(水分減少量)を測定する。サンプルを塗布していない濾紙で覆った場合の重量減少と比較し、以下の式で水分閉塞性を求めた。
【0052】
水分閉塞性(%)=(1-[サンプルを塗布した際の水分減少量/サンプルを塗布しない場合の水分減少量])×100
【0053】
(3)横置き安定性:
5gジャー容器に、4gの口唇化粧料を充填し、50℃の環境下で容器を横置きにして保存し、そのまま1週間経過後、蓋を開け、内容物の液だれの状態を、以下の基準で、目視により評価した。
◎:1週間経過後においても保存開始時の状態から変化がなく、容器の底が見えない。
○:1週間経過後、やや液だれし、10%未満の領域で容器の底が見える。
△:1週間経過後、液だれし、10%以上30%未満の領域で容器の底が見える。
×:1週間経過後、液だれし、30%以上の領域で容器の底が見える。
【0054】
(4)室温で化粧料に指で触れたときのやわらかさ:
専門パネラー10名により、室温で各化粧料に指で触れたときのやわらかさを官能評価した。結果を、良好であると評価したパネラーの人数で示した。
【0055】
(5)指どれ性:
専門パネラー10名により、各化粧料を指で取ったときの指どれを官能評価した。結果を、良好であると評価したパネラーの人数で示した。
【0056】
【表1】
【0057】
*1:セレシン#810(日興リカ社製)
*2:MULTIWAX W-445 S(SONNEBORN, INC.社製)
*3:精製キャンデリラワックス特号(セラリカNODA社製)
*4:MULTIWAX W-835(SONNEBORN, INC.社製)
*5:パールリーム18(日本油脂社製)
*6:パールリーム24(日本油脂社製)
*7:精製ホホバ油(香栄興業社製)
*8:サラコス913
*9:コスモール43V
*10:スーパーホワイトプロトペット(SONNEBORN, INC.社製)
*11:モレスコホワイトP-500P(MORESCO社製)
*12:スフィンゴリピッドE(花王社製)
【0058】
実施例9
実施例1~8と同様にして、表2に示す組成の口唇化粧料を製造し、針入硬度を測定した。
得られた口唇化粧料は、水分閉塞性が高く、高温で横置しても液だれせず、室温で化粧料に指で触れたときにやわらかく、指どれ性に優れたものである。
【0059】
【表2】
【0060】
*13:パールリーム46(日本油脂社製)
*14:エルデュウPS-306(味の素社製)
*15:エルデュウPS-203(味の素社製)