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特許7342969内燃機関の制御方法及び内燃機関の制御装置
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  • 特許-内燃機関の制御方法及び内燃機関の制御装置 図1
  • 特許-内燃機関の制御方法及び内燃機関の制御装置 図2
  • 特許-内燃機関の制御方法及び内燃機関の制御装置 図3A
  • 特許-内燃機関の制御方法及び内燃機関の制御装置 図3B
  • 特許-内燃機関の制御方法及び内燃機関の制御装置 図4A
  • 特許-内燃機関の制御方法及び内燃機関の制御装置 図4B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】内燃機関の制御方法及び内燃機関の制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 29/06 20060101AFI20230905BHJP
   B60W 20/17 20160101ALI20230905BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20230905BHJP
   B60K 6/46 20071001ALI20230905BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
F02D29/06 D
B60W20/17
B60W10/06 900
B60K6/46
B60W10/08 900
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021554548
(86)(22)【出願日】2019-11-08
(86)【国際出願番号】 JP2019043959
(87)【国際公開番号】W WO2021090493
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2022-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】緒方 誠
(72)【発明者】
【氏名】大谷 将之
(72)【発明者】
【氏名】寺井 美裕
(72)【発明者】
【氏名】一場 司
【審査官】▲高▼木 真顕
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-080930(JP,A)
【文献】特開2016-118272(JP,A)
【文献】特開2018-112223(JP,A)
【文献】特開2019-049303(JP,A)
【文献】特開昭56-052658(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0079785(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 13/00 - 29/06
F02D 41/00 - 45/00
F02N 1/00 - 99/00
B60W 10/00 - 20/50
B60K 6/20 - 6/547
B60L 1/00 - 3/12
B60L 7/00 - 13/00
B60L 15/00 - 58/40
F16F 15/00 - 15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の動力により駆動される発電機と、
動力伝達経路上、前記内燃機関と前記発電機との間に設けられたダンパと、
が設けられ、
前記内燃機関は、気筒で失火が生じた時に生じるトルク変動量の最大値が、前記発電機のカウンタトルクにより前記ダンパの変位を前記ダンパのストッパに当接が生じる変位未満に抑えることが可能な値より大きい内燃機関の制御方法であって、
回転速度に対するトルクを定めたエンジン性能線に基づいて前記内燃機関を運転し、
前記エンジン性能線の、全負荷運転時のトルクに到達する前記回転速度を未制限時に比べて高回転速度側に設定することにより、前記発電機のカウンタトルクにより前記ダンパの変位を前記ストッパに当接が生じる変位未満に制御可能な範囲内に前記内燃機関のトルクを制限する、
ことを含む内燃機関の制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関の制御方法であって、
前記内燃機関が運転していることに応じて、前記内燃機関のトルクを制限する、
内燃機関の制御方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の内燃機関の制御方法であって、
前記ダンパは、メインダンパとプリダンパと有して構成され、
前記ストッパは、前記メインダンパのハブに設けられ、
前記ストッパには動力伝達経路上、前記内燃機関と前記ダンパとの間に設けられた回転部材が当接する、
内燃機関の制御方法。
【請求項4】
請求項1から3いずれか1項に記載の内燃機関の制御方法であって、
前記内燃機関は、
前記発電機で発電した電力により駆動輪を駆動する走行用モータと、
前記走行用モータと前記駆動輪との間で動力を伝達する第1動力伝達経路と、
前記内燃機関と前記発電機との間で動力を伝達する第2動力伝達経路と、を備え、前記ダンパが前記第2動力伝達経路に設けられるシリーズハイブリッド車両、
に搭載される内燃機関の制御方法。
【請求項5】
内燃機関の動力により駆動される発電機と、
動力伝達経路上、前記内燃機関と前記発電機との間に設けられたダンパと、
が設けられ、
前記内燃機関は、気筒で失火が生じた時に生じるトルク変動量の最大値が、前記発電機のカウンタトルクにより前記ダンパの変位を前記ダンパのストッパに当接が生じる変位未満に抑えることが可能な値より大きい内燃機関の制御装置であって、
回転速度に対するトルクを定めたエンジン性能線に基づいて前記内燃機関を運転し、前記エンジン性能線の、全負荷運転時のトルクに到達する前記回転速度を未制限時に比べて高回転速度側に設定することにより、前記発電機のカウンタトルクにより前記ダンパの変位を前記ストッパに当接が生じる変位未満に制御可能な範囲内に前記内燃機関のトルクを制限する制御部を備える、
内燃機関の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
JP2009-281189Aには、トルクリミッタ付きのダンパにより、エンジン失火時等に過大トルクの伝達を制限する技術が開示されている。
【発明の概要】
【0003】
JP2009-281189Aでは、過大トルクの伝達を制限するために、ダンパとしてトルクリミッタ付きのダンパを採用する必要がある。
【0004】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたもので、トルクリミッタを採用せずに過大トルクの伝達を制限し、以てダンパのストッパにかかる負荷を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のある態様の内燃機関の制御方法は、内燃機関の動力により駆動される発電機と、動力伝達経路上、内燃機関と発電機との間に設けられたダンパとが設けられ、内燃機関は、気筒で失火が生じた時に生じるトルク変動量の最大値が、発電機のカウンタトルクによりダンパの変位をダンパのストッパの当接が生じる変位未満に抑えることが可能な値より大きい内燃機関の制御方法であって、回転速度に対するトルクを定めたエンジン性能線に基づいて内燃機関を運転し、エンジン性能線の、全負荷運転時のトルクに到達する回転速度を未制限時に比べて高回転速度側に設定することにより、発電機のカウンタトルクによりダンパの変位をストッパの当接が生じる変位未満に制御可能な範囲内に内燃機関のトルクを制限することを含む。
【0006】
本発明の別の態様によれば、上記内燃機関の制御方法に対応する内燃機関の制御装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、車両の要部を示す概略構成図である。
図2図2は、第2動力伝達経路22の動力伝達系を模式的に示す図である。
図3A図3Aは、ダンパの第1の状態を示す図である。
図3B図3Bは、ダンパの第2の状態を示す図である。
図4A図4Aは、トルク変動を含む内燃機関の運転領域を示す図である。
図4B図4Bは、回転速度に応じたメインダンパの捩じり角を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0009】
図1は、車両1の要部を示す概略構成図である。車両1は、内燃機関3と、発電用モータ4と、バッテリ5と、走行用モータ2と、コントローラ7と、を備える。
【0010】
内燃機関3は、ガソリンエンジンまたはディーゼルエンジンのいずれでもかまわない。内燃機関3の出力軸3aにはフライホイール3bが設けられる。フライホイール3bは、動力伝達経路上、内燃機関3と後述するダンパ30との間に設けられた回転部材を構成する。
【0011】
発電用モータ4は、内燃機関3の動力によって駆動されることで発電する。発電用モータ4は、発電機を構成する。
【0012】
バッテリ5には、発電用モータ4で発電された電力と、後述する走行用モータ2で回生された電力と、が充電される。
【0013】
走行用モータ2は、バッテリ5の電力により駆動されて、駆動輪6を駆動する。また、走行用モータ2は、減速時等に駆動輪6の回転に伴って連れ回されることにより減速エネルギを電力として回生する、いわゆる回生機能も有する。
【0014】
コントローラ7は、走行用モータ2、内燃機関3及び発電用モータ4の制御を行う。コントローラ7は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。コントローラ7を複数のマイクロコンピュータで構成することも可能である。コントローラ7には、内燃機関3の回転速度Neを検出するための回転速度センサや、アクセル開度APOを検出するためのアクセル開度センサや、車速VSPを検出するための車速センサ等を含む各種センサ・スイッチ類からの信号が入力される。
【0015】
車両1は、第1動力伝達経路21と第2動力伝達経路22とを有する。第1動力伝達経路21は、走行用モータ2と駆動輪6との間で動力を伝達する。第2動力伝達経路22は、内燃機関3と発電用モータ4との間で動力を伝達する。第1動力伝達経路21と第2動力伝達経路22とは、互いに独立した動力伝達経路、つまり第1動力伝達経路21及び第2動力伝達経路22の一方から他方に動力が伝達されない動力伝達経路になっている。
【0016】
第1動力伝達経路21は、走行用モータ2の回転軸2aに設けられた第1減速ギヤ8と、第1減速ギヤ8と噛み合う第2減速ギヤ9と、第2減速ギヤ9と同軸上に設けられてデファレンシャルギヤ12と噛み合う第3減速ギヤ10と、デファレンシャルケース11に設けられたデファレンシャルギヤ12とを有して構成される。
【0017】
第2動力伝達経路22は、内燃機関3の出力軸3aに設けられた第4減速ギヤ16と、第4減速ギヤ16と噛み合う第5減速ギヤ17と、発電用モータ4の回転軸4aに設けられ、第5減速ギヤ17と噛み合う第6減速ギヤ18とを有して構成される。第4減速ギヤ16、第5減速ギヤ17及び第6減速ギヤ18は、内燃機関3及び発電用モータ4間に設けられたギヤ列19を構成する。
【0018】
第2動力伝達経路22には、ダンパ30が設けられる。ダンパ30は、内燃機関3の出力軸3aに設けられ、出力軸3aの捩じり振動を減衰させる。
【0019】
第1動力伝達経路21及び第2動力伝達経路22それぞれは、動力伝達を遮断する要素を備えていない。すなわち、第1動力伝達経路21及び第2動力伝達経路22それぞれは常に動力が伝達される状態になっている。
【0020】
上述した構成の車両1は、内燃機関3の動力により駆動されて発電する発電用モータ4の電力を利用して、走行用モータ2で駆動輪6を駆動するシリーズハイブリッド車両を構成する。
【0021】
図2は、ダンパ30を含む第2動力伝達経路22の動力伝達系を模式的に示す図である。第2動力伝達経路22では、内燃機関3から出力軸3a、フライホイール3b、ダンパ30、出力軸3a、ギヤ列19、発電用モータ4の回転軸4a、発電用モータ4の順に内燃機関3の動力が伝達される。
【0022】
ダンパ30は、メインダンパ30aとプリダンパ30bとを有して構成される。メインダンパ30aは、フライホイール3bから伝達される内燃機関3のトルクTeに対し捩じり振動を減衰させる機能を有する。プリダンパ30bは、第1ハブ31から伝達されるトルクTeに対し捩じり振動を減衰させる機能を有する。
【0023】
メインダンパ30aは、第1ハブ31とメインコイル33とを有して構成される。第1ハブ31は、メインコイル33を介してフライホイール3bと所定の角度範囲で相対回転可能に設けられる。メインコイル33はダンパ30の周方向に複数設けられる。
【0024】
プリダンパ30bは、第2ハブ32とプリコイル34とを有して構成される。第2ハブ32は、プリコイル34を介して第1ハブ31と所定の角度範囲で相対回転可能に設けられる。プリコイル34はダンパ30の周方向に複数設けられる。
【0025】
複数のプリコイル34は、複数のメインコイル33よりも単位長さあたりの圧縮変位に応じたばね力が小さく設定され、プリコイル34には例えばメインコイル33よりもばね定数が低いコイルが用いられる。このため、内燃機関3の動力がダンパ30に入力されると、まずメインダンパ30aに先立ってプリダンパ30bが捩じり振動を減衰させるべく機能し始め、第1ハブ31及び第2ハブ32間で相対回転が発生する。
【0026】
図3Aは、ダンパ30の第1の状態を示す図である。図3Bは、ダンパ30の第2の状態を示す図である。図3A図3Bでは、出力軸3aの軸方向に沿って見たダンパ30の要部を示す。
【0027】
内燃機関3の動力がダンパ30に入力されていない場合、メインダンパ30a及びプリダンパ30bはともに図3Aに示す第1の状態になっている。そして、この状態から内燃機関3の動力がダンパ30に入力されると、ばね定数が低い側のプリコイル34に圧縮が生じることにより、第1ハブ31が第2ハブ32に対して相対回転し始める。つまり、メインダンパ30a及びプリダンパ30bのうちまずプリダンパ30bが捩じり振動を減衰すべく機能し始める。そして、第1ハブ31がさらに回転すると、図3Bに示すように、第1ハブ31は第2ハブ32に設けられた第2ストッパ32aに当接する。第2ストッパ32aは、第2ハブ32に対する第1ハブ31の相対回転を規制する。
【0028】
図3Bに示す第2の状態から第2ハブ32が第1ハブ31とともに回転すると、内燃機関3の動力がギヤ列19に伝達される。このとき、メインダンパ30aでメインコイル33が圧縮されると、第1ハブ31とフライホイール3bとの間で相対回転が発生し、メインダンパ30aが機能する。メインダンパ30aの機能は、第1ストッパ31aに当接が生じる状態にまでメインコイル33が圧縮されない限り確保される。第1ストッパ31aは、第1ハブ31に対するフライホイール3bの相対回転を規制する。第1ストッパ31aには、過大入力があった際にフライホイール3bが当接する。フライホイール3bからメインダンパ30aには例えば、円盤状のプレートを介して内燃機関3の動力が伝達されてもよい。ダンパ30はこのようなプレートをさらに備える構成とすることができ、この場合、当該プレートにより第1ストッパ30aに当接する回転部材を構成することができる。
【0029】
ところで、第2動力伝達経路22では、共振点が内燃機関3のアイドル回転速度域よりも低く設定されている。ところが、内燃機関3で失火が発生すると、点火が行われる気筒数の減少により、共振点が内燃機関3の常用運転域に入ってくる。
【0030】
このため、全負荷運転すなわちWOT(Wide Open Throttle)で内燃機関3を発電運転している際に内燃機関3で失火が発生すると、内燃機関3の回転速度Neによっては共振及び発散が生じることにより、過大入力による負荷が第1ストッパ31aにかかることが懸念される。
【0031】
これに対しては例えば、ダンパ30をトルクリミッタ付きのダンパとすることが考えられる。しかしながらこの場合、コスト面で不利になることが懸念される。
【0032】
また例えば、発電用モータ4のカウンタトルクによりメインダンパ30aの変位を第1ストッパ31aに当接が生じる変位未満に抑えることにより、第1ストッパ31aの当接を防止することも考えられる。
【0033】
しかしながら、気筒で失火が生じた時に生じる内燃機関3のトルクTeの変動量の最大値は、発電用モータ4のカウンタトルクによりメインダンパ30aの変位を第1ストッパ31aに当接が生じる変位未満に抑えることが可能な値より大きくなっている。従ってこの場合は、第1ストッパ31aの当接を防止することができない。
【0034】
このほか例えば、捩じり角θに応じたダンパ30のトルクヒステリシスを増加させて共振を防止することも考えられる。しかしながらこの場合、アイドル運転時のプリダンパ30bによる回転抑制機能が影響を受ける結果、内燃機関3の低トルク域で歯打ち音が発生し、ダンパ機能の低下を招くことが懸念される。
【0035】
このような事情に鑑み、本実施形態ではコントローラ7が、発電用モータ4のカウンタトルクによりメインダンパ30aの変位を第1ストッパ31aに当接が生じる変位未満に制御可能な範囲内に内燃機関3のトルクTeを制限する。
【0036】
図4Aは、トルクTeの変動を含む内燃機関3の運転領域を示す図である。図4Bは、回転速度Neに応じたメインダンパ30aの捩じり角θを示す図である。図4A図4Bでは、比較例の場合を破線で併せて示す。比較例は、コントローラ7が内燃機関3のトルクTeを制限しない場合を示す。
【0037】
比較例の場合、図4Aに示すように内燃機関3は予め設定されたエンジン性能線E2に基づき運転される。結果、内燃機関3の運転領域は、トルクTeの変動によりエンジン性能線E2の上下に拡がりを有する領域RA2となる。また、図4Bに示すように捩じり角θは領域RA2に応じた領域RB2内で変動する。
【0038】
比較例の場合、WOTで内燃機関3を発電運転しているときに、発電用モータ4のカウンタトルクによりメインダンパ30aの変位を第1ストッパ31aに当接が生じる変位未満に制御可能な範囲内にトルクTeを制御できなくなる。結果、図4Aに示すように、トルクTeが第1ストッパ31aに当接が生じるストッパトルクTesに到達する。また、図4Bに示すように、捩じり角θが第1ストッパ31aへの当接角度θsに到達する。トルクTeは、エンジン性能線E2に設定されたWOTトルクTewでストッパトルクTesに到達する。
【0039】
本実施形態の場合、内燃機関3のトルクTeが上述のように制限される。トルクTeは、エンジン性能線E2におけるWOTトルクTewを回転速度Neが低い側でWOTトルクTewよりも低いトルクに低下させることにより得られるエンジン性能線E1に基づき内燃機関3を運転することにより、上述のように制限される。このようなエンジン性能線E1は換言すれば、WOTトルクTewに到達する回転速度Neがエンジン性能線E2と比較して高回転速度Ne側に設定されたエンジン性能線となっている。
【0040】
エンジン性能線E1に基づき内燃機関3を運転することにより、トルクTeは機関運転中、常時制限される。従って、トルクTeは内燃機関3が運転していることに応じて制限される。結果、本実施形態では図4Aに示すように、内燃機関3の運転領域がストッパトルクTesに到達しない領域RA1となる。また、図4Bに示すように、捩じり角θが領域RA1に応じた領域RB1内で変動し、当接角度θsに到達しなくなる。
【0041】
エンジン性能線E1は、例えばマップデータにより回転速度Ne及びトルクTeに応じて予め設定することができる。上述のようにトルクTeを制限するように構成されたコントローラ7は、制御部を有した構成とされる。
【0042】
次に、本実施形態の主な作用効果について説明する。
【0043】
本実施形態にかかる内燃機関3の制御方法は、内燃機関3の動力により駆動される発電用モータ4と、動力伝達経路上、内燃機関3と発電用モータ4との間に設けられたダンパ30と、が設けられ、内燃機関3は、気筒で失火が生じた時に生じるトルク変動量の最大値が、発電用モータ4のカウンタトルクによりダンパ30のメインダンパ30aの変位を第1ストッパ31aに当接が生じる変位未満に抑えることが可能な値より大きい内燃機関3の制御方法であって、発電用モータ4のカウンタトルクによりメインダンパ30aの変位を第1ストッパ31aに当接が生じる変位未満に制御可能な範囲内に内燃機関3のトルクTeを制限することを含む。
【0044】
このような方法によれば、第1ストッパ31aに当接が生じない範囲内で内燃機関3を運転するので、トルクリミッタ付きのダンパを採用せずに過大トルクの伝達を制限することができる。このためこのような方法によれば、第1ストッパ31aにかかる負荷を軽減することができる。
【0045】
失火を判定してからトルクTeを制限する場合、失火の発生からトルクTeの制限開始までの間に第1ストッパ31aに負荷がかかり得る。
【0046】
本実施形態では、内燃機関3が運転していることに応じて、内燃機関3のトルクTeを制限する。このため、トルクTeを常時制限することで第1ストッパ31aへの負荷の発生を回避することが可能になる。
【0047】
本実施形態では、ダンパ30は、メインダンパ30aとプリダンパ30bとを有して構成される。第1ストッパ31aは第1ハブ31に設けられる。第1ストッパ31aには動力伝達経路上、内燃機関3とダンパ30との間に設けられたフライホイール3bが当接する。
【0048】
本実施形態にかかる方法は、ダンパ30がこのように構成される場合に、共振を防止すべくダンパ30のトルクヒステリシスを増加させることをせずに済ますことができる。結果、トルクヒステリシスを増加させることにより、アイドル運転時のプリダンパ30bによる回転抑制機能が影響を受けてダンパ機能が低下する事態を回避できる。
【0049】
本実施形態では、内燃機関3は、発電用モータ4で発電した電力により駆動輪6を駆動する走行用モータ2と、走行用モータ2と駆動輪6との間で動力を伝達する第1動力伝達経路21と、内燃機関3と発電用モータ4との間で動力を伝達する第2動力伝達経路22と、を備え、ダンパ30が第2動力伝達経路22に設けられるシリーズハイブリッド車両である車両1に搭載される。
【0050】
本実施形態にかかる方法は、内燃機関3がこのようなシリーズハイブリッド車両に搭載される場合に、内燃機関3の失火に起因して共振及び発散が生じることにより第1ストッパ31aにかかる負荷を軽減することができる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0052】
上述した実施形態では、ダンパ30がメインダンパ30a及びプリダンパ30bを備える場合について説明した。しかしながら、ダンパ30にはプリダンパ30bを備えないダンパを用いることも可能である。この場合でも、第1ストッパ31aに当接が生じない範囲内で内燃機関3を運転することにより、第1ストッパ31aへの負荷を軽減できる。
【0053】
上述した実施形態では、内燃機関3の制御方法及び制御部が、単一のコントローラ7により実現される場合について説明した。しかしながら、内燃機関3の制御方法及び制御部は例えば、複数のコントローラの組み合わせにより実現されてもよい。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B