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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/26 20060101AFI20230906BHJP
【FI】
E02F9/26 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022554089
(86)(22)【出願日】2021-09-30
(86)【国際出願番号】 JP2021036065
(87)【国際公開番号】W WO2022071476
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】P 2020167127
(32)【優先日】2020-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】椎名 健
(72)【発明者】
【氏名】兼澤 寛
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-222003(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0244101(US,A1)
【文献】国際公開第2017/170651(WO,A1)
【文献】特開昭51-076802(JP,A)
【文献】特開2006-284393(JP,A)
【文献】特開2010-014553(JP,A)
【文献】中国実用新案第203704971(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体の外方に延びる作業装置を備えた作業機械において、
前記作業機械に関する物理量を検出する物理量検出センサと、
所定の情報を表示するモニタと、
前記モニタを制御するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、前記物理量検出センサによって検出される前記作業機械に関する物理量に基づいて前記作業装置に加わる応力の分布を演算する応力演算部と、前記物理量検出センサによって検出される前記作業機械に関する物理量に基づいて前記作業装置の姿勢を演算する姿勢演算部と、前記モニタへの前記所定の情報の表示を制御する表示制御部と、を有し、
前記表示制御部は、前記姿勢演算部によって演算された前記作業装置の姿勢となるように前記作業装置の動作と連動して前記作業装置を模擬的に表す模擬図を形成するとともに、前記応力演算部によって演算される前記作業装置に加わる応力の分布を前記作業装置の動作と連動して前記模擬図に示すように前記モニタの表示を制御し、
前記模擬図は、前記作業装置の操作に応じて変化する前記作業装置の動作と連動して前記作業装置の姿勢の変化および応力の分布の変化が同時に示されるように前記モニタに表示されることを特徴とする作業機械。
【請求項2】
記模擬図は、前記姿勢演算部によって演算される前記作業装置の姿勢が該作業装置の動作と連動する擬似映像である、
ことを特徴とする、請求項に記載の作業機械。
【請求項3】
前記作業装置を撮像する撮像装置を有し、
前記所定の情報の表示には、前記撮像装置によって撮像される前記作業装置の映像が含まれ、
前記模擬図は、前記撮像装置が前記作業装置を撮像する方向に相当する方向から視た場合の前記作業装置の斜視図であり、
前記模擬図に示される応力分布及び前記作業装置の映像は、前記作業装置の動作と連動してなる、
ことを特徴とする、請求項に記載の作業機械。
【請求項4】
前記機体には、該機体を操作するオペレータが搭乗する操縦室が設けられており、
前記モニタは、前記操縦室に配設されてなる、
ことを特徴とする、請求項1に記載の作業機械。
【請求項5】
前記機体と前記モニタとの間で無線通信を行う通信装置を有し、
前記モニタは、前記機体とは別体で備えられてなる、
ことを特徴とする、請求項1に記載の作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は作業機械に係り、特に作業装置の損傷を軽減させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械をはじめとする作業機械は、掘削等の作業により、ブームやアーム等の構造物を有する作業装置に多大な応力が発生することがある。特に応力が集中する箇所は、疲労が蓄積して故障することが考えられる。このような作業装置の故障などによって作業機械を停止せざるを得ない場合、生産性等への影響が生じるため、未然に故障を予知する必要がある。
【0003】
そこで、複数の運転状況の下において作業機械の部品に蓄積された損傷度(疲労)の分布を表すデータに基づいて、作業機械の部品に蓄積された疲労の分布を、運転状況ごとに、相互に対比可能な状態で、表示画面に画像として表示させることで、油圧ショベルの適切な作業計画やメンテナンス計画を行うことができる技術が開発されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-222003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示される技術では、想定よりも早く作業装置が故障することを予知し、作業装置の交換を行う等の措置を講ずることができるものの、作業装置に蓄積する疲労そのものを軽減することができるわけではない。したがって、作業装置の疲労を軽減させるためには、オペレータのスキルを向上させたり、スキルの均質化を図ることで、作業装置に加わる応力を軽減する必要があった。
【0006】
このようにオペレータのスキルを向上させたりスキルの均質化を図るためには、スキルの高いオペレータ(熟練者)がスキルの低いオペレータ(途上者)を指導することが有効である。しかしながら、当該指導の際に、エンジンや油圧機器の音、振動の変化など、熟練者が経験的に認識している掘削イメージや感覚といった抽象的な情報を途上者に伝えることでは、作業装置の損傷と機体の動作との関係性を途上者に認識させることが良好にはできず、更なる改善の余地があった。
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、作業装置に加わる応力と機体の動作との関係性を具体的に認識することができる作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明の作業機械は、機体の外方に延びる作業装置を備えた作業機械において、前記作業機械に関する物理量を検出する物理量検出センサと、所定の情報を表示するモニタと、前記モニタを制御するコントローラと、を備え、前記コントローラは、前記物理量検出センサによって検出される前記作業機械に関する物理量に基づいて前記作業装置に加わる応力の分布を演算する応力演算部と、前記物理量検出センサによって検出される前記作業機械に関する物理量に基づいて前記作業装置の姿勢を演算する姿勢演算部と、前記モニタへの前記所定の情報の表示を制御する表示制御部と、を有し、前記表示制御部は、前記姿勢演算部によって演算された前記作業装置の姿勢となるように前記作業装置の動作と連動して前記作業装置を模擬的に表す模擬図を形成するとともに、前記応力演算部によって演算される前記作業装置に加わる応力の分布を前記作業装置の動作と連動して前記模擬図に示すように前記モニタの表示を制御し、前記模擬図は、前記作業装置の操作に応じて変化する前記作業装置の動作と連動して前記作業装置の姿勢の変化および応力の分布の変化が同時に示されるように前記モニタに表示されることを特徴とする。
【0009】
これにより、応力演算部によって演算される作業装置に加わる応力の分布を、該作業装置の動作と連動するようにモニタに示すことで、例えばオペレータによる機体の操作が作業装置に疲労が蓄積するような操作である場合に、オペレータによる機体の操作によって動作する作業装置に加わる応力の分布が、該作業装置の動作と連動してモニタに表示されるので、オペレータは、当該操作が作業装置に疲労が蓄積するような操作であることを体感的に理解することが可能とされる。また、作業装置を模した模擬図に作業装置に加わる応力の分布を、該作業装置の動作と連動してモニタに表示することで、例えばオペレータによる機体の操作が、作業装置に疲労が蓄積するような操作であるか否かを視覚的に容易に理解することが可能とされる。さらに、姿勢演算部によって演算される作業装置の姿勢と連動する模擬図に、作業装置の動作と連動する応力分布を表示することで、作業装置の姿勢及び応力分布を同時に視認することが可能とされる。
【0012】
その他の態様として、前記模擬図は、前記姿勢演算部によって演算される前記作業装置の姿勢が該作業装置の動作と連動する擬似映像であるのが好ましい。
【0013】
これにより、姿勢演算部によって演算される作業装置の姿勢と連動する擬似映像に、作業装置の動作と連動する応力分布を表示することで、前記疑似映像により作業装置の姿勢及び応力分布を同時に視認することが可能とされる。
【0014】
その他の態様として、前記作業装置を撮像する撮像装置を有し、前記所定の情報の表示には、前記撮像装置によって撮像される前記作業装置の映像が含まれ、前記模擬図は、前記撮像装置が前記作業装置を撮像する方向に相当する方向から視た場合の前記作業装置の斜視図であり、前記模擬図に示される応力分布及び前記作業装置の映像は、前記作業装置の動作と連動してなるのが好ましい。
【0015】
これにより、模擬図と撮像装置によって撮像される作業装置の撮像映像とを作業装置の動作と連動してモニタに表示することで、実在する作業装置の撮像映像と模擬図とを見比べながら、作業装置に加わる応力の分布を認識することが可能とされる。
【0016】
その他の態様として、前記機体には、該機体を操作するオペレータが搭乗する操縦室が設けられており、前記モニタは、前記操縦室に配設されてなるのが好ましい。
【0017】
これにより、機体を操作するオペレータが搭乗する操縦室にモニタを配設することで、オペレータは、機体を操作しつつモニタを視認して、自己の操作が作業装置に疲労が蓄積するような操作であるか否かを体感的に理解することが可能とされる。
【0018】
その他の態様として、前記機体と前記モニタとの間で無線通信を行う通信装置を有し、前記モニタは、前記機体とは別体で備えられてなるのが好ましい。
これにより、機体とは別体で備えられるモニタと機体とで無線通信を行う通信装置を有することで、遠隔地等の機体から離れた場所で作業装置に加わる応力の分布を認識することが可能とされる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の作業機械によれば、応力演算部によって演算される作業装置に加わる応力の分布を、該作業装置の動作と連動するようにモニタに示すことにより、例えばオペレータによる機体の操作が作業装置に疲労が蓄積するような操作である場合に、オペレータによる機体の操作によって動作する作業装置に加わる応力の分布が、該作業装置の動作と連動して表示されるので、オペレータは、当該操作が作業装置に疲労が蓄積するような操作であることを体感的に理解することができる。これにより、作業装置に加わる応力と機体の動作との関係性を具体的に認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1実施形態に係る油圧ショベルの側面図である。
図2】第1実施形態の制御に係るコントローラの接続構成が示されたブロック図である。
図3】第1実施形態に係るモニタに表示される情報を説明する説明図である。
図4】第2実施形態の制御に係るコントローラの接続構成が示されたブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1実施形態>
以下、図面に基づき本発明の第1実施形態について説明する。
【0022】
図1を参照すると、第1実施形態に係る油圧ショベル(機体、作業機械)1の側面図が示されている。油圧ショベル1は、鉱山などの現場で稼働する大型の油圧ショベルであり、例えば最大で前後長25m、左右長7m、地上高15mの大きさの機械である。また、油圧ショベル1は、通常、オペレータが1日で3~4人、入れ替わりながら24時間稼働している。この油圧ショベル1は、下部走行体2と上部旋回体3と旋回装置4とを備えている。
【0023】
下部走行体2は油圧ショベル1の走行装置であり、ここではクローラ式の下部走行体2を例示している。上部旋回体3は、上部旋回体3の下側の骨格を形成する旋回フレーム3a及び旋回装置4を介して下部走行体2に連結されている。旋回装置4は、下部走行体2に対して上部旋回体3を相対的に旋回することが可能な装置である。この旋回装置4は、内部に図示しない旋回軸受が設けられており、図示しない旋回油圧モータを駆動することで該旋回軸受を軸にして上部旋回体3を旋回させる旋回動作を行うことができる。
【0024】
上部旋回体3には、旋回フレーム3a上に操縦室5、フロントアタッチメント(作業装置)7及び建屋6等が搭載されている。操縦室5には、油圧ショベル1を操作する各種の操作装置が設けられている。したがって、オペレータは、操縦室5に搭乗することで、旋回装置4を操作する旋回操作やフロントアタッチメント7を操作する作業操作等の油圧ショベル1の各種操作を行うことが可能である。
【0025】
建屋6は、図示しないエンジンや油圧ポンプ等の機械を収容するものであり、操縦室5の後方に配置している。フロントアタッチメント7は、上部旋回体3の前部中央に位置して設けられており、ブーム10、アーム11及びバケット12を備えている。ブーム10は、基端部が旋回フレーム3aに図示しない連結ピンにより軸支されている。これにより、ブーム10は、旋回フレーム3aに対して相対的に揺動可能である。このブーム10の先端には、アーム11が上下方向に回動可能に連結され、アーム11の先端には、バケット12が上下方向に回動可能に連結されている。
【0026】
ここで、ブーム10は、ブームシリンダ10aを油圧により調整して伸縮することにより回動することが可能である。同様に、アーム11は、アームシリンダ11aを、バケット12は、バケットシリンダ12aを油圧により調整して伸縮することにより回動することが可能である。したがって、フロントアタッチメント7は、ブームシリンダ10a、アームシリンダ11a及びバケットシリンダ12aを適宜調整して伸縮することにより、ブーム10、アーム11及びバケット12を適宜回動し、後述する掘削動作等の動作及び作業を行うことが可能である。
【0027】
このフロントアタッチメント7には、各種物理量を検出する複数のセンサが設けられている。具体的には、ブームシリンダ10aにはブーム圧力センサ10bが、アームシリンダ11aにはアーム圧力センサ11bが、バケットシリンダ12aにはバケット圧力センサ12bがそれぞれ設けられている。これら圧力センサは、各シリンダ内の圧力を検出することが可能である。以下、ブーム圧力センサ10b、アーム圧力センサ11b及びバケット圧力センサ12bを総じてシリンダ圧力センサ15ともいう。
【0028】
また、旋回フレーム3a、ブーム10、アーム11及びバケット12の各連結部分には、それぞれ第1角度計21、第2角度計22及び第3角度計23が設けられている。第1角度計21は、旋回フレーム3aとブーム10との相対角度を検出するセンサである。第2角度計22は、ブーム10とアーム11との相対角度を検出するセンサである。第3角度計23は、アーム11とバケット12との相対角度を検出するセンサである。以下、第1角度計21、第2角度計22及び第3角度計23を総じてフロント角度計25ともいう。
【0029】
さらに、上部旋回体3、旋回装置4及び建屋6には、車体傾斜角度計31、旋回角度計33、作動油温度計35、エンジン回転計36、油圧ポンプ吐出圧力計37、油圧モータ入口圧力計38及び加速度計39が設けられている。車体傾斜角度計31は、油圧ショベル1の前後左右方向の傾きを示す傾斜角度を検出するセンサである。旋回角度計33は、上部旋回体3と下部走行体2の相対角度を検出するセンサである。作動油温度計35は、図示しない油圧ポンプによって油圧モータや油圧シリンダ等に供給される作動油の温度を検出するセンサである。
【0030】
エンジン回転計36は、図示しないエンジンの回転速度を検出する回転センサである。
油圧ポンプ吐出圧力計37は、図示しない油圧ポンプから油圧モータや油圧シリンダ等に供給される作動油の圧力を検出する圧力センサである。油圧モータ入口圧力計38は、図示しない旋回油圧モータ等へ供給される作動油の圧力を検出する圧力センサである。加速度計39は、上部旋回体3や下部走行体2に生じる振動加速度を検出する加速度センサである。
【0031】
そして、操縦室5には、カメラ41及びモニタ43が設けられている。カメラ41は、例えば操縦室5内に設置されており、操縦室5の前方を撮像する撮像装置である。モニタ43には、油圧ショベル1の状態や姿勢等、油圧ショベル1に関する各種の情報が表示される。なお、モニタ43に表示される情報については、後述する。
【0032】
図2を参照すると、第1実施形態の制御に係るコントローラ51の接続構成がブロック図で示されている。コントローラ51は、エンジンの運転制御をはじめとして油圧ショベル1の総合的な制御を行うための制御装置であり、入出力装置、記憶装置(ROM、RAM、不揮発性RAM等)、中央処理装置(CPU)等を含んで構成され、例えば上部旋回体3の操縦室5内に配設されている。
【0033】
このコントローラ51の入力側には、シリンダ圧力センサ15、フロント角度計25、車体傾斜角度計31、旋回角度計33、作動油温度計35、エンジン回転計36、油圧ポンプ吐出圧力計37、油圧モータ入口圧力計38及び加速度計39等の機体1に関する物理量を検出するセンサ(物理量検出センサ)並びにカメラ(撮像装置)41が電気的に接続されている。これにより、シリンダ圧力センサ15からはブームシリンダ10a、アームシリンダ11a及びバケットシリンダ12a内の圧力に関する情報が入力され、フロント角度計25からは旋回フレーム3a、ブーム10、アーム11及びバケット12の各連結部分における相対角度に関する情報が入力される。
【0034】
また、コントローラ51の入力側には、車体傾斜角度計31からは油圧ショベル1の傾斜角度に関する情報が入力され、旋回角度計33からは上部旋回体3と下部走行体2の相対角度に関する情報が入力され、作動油温度計35からは作動油の温度に関する情報が入力される。さらに、エンジン回転計36からはエンジン回転速度に関する情報が入力され、油圧ポンプ吐出圧力計37からは油圧ポンプから油圧モータや油圧シリンダ等に供給される作動油の圧力に関する情報が入力され、油圧モータ入口圧力計38からは旋回油圧モータ等へ供給される作動油の圧力に関する情報が入力され、加速度計39からは、上部旋回体3や下部走行体2に生じる振動加速度に関する情報が入力され、カメラ41からは操縦室5の前方の映像に関する情報が入力される。
【0035】
そして、コントローラ51の出力側には、モニタ43が電気的に接続されており、モニタ43を制御することで、操縦室5に搭乗するオペレータに油圧ショベル1に関する各種の情報を報知等することができる。なお、各センサ等とコントローラ51との情報の入出力は、コントロールエリアネットワーク(CAN)やローカルエリアネットワーク(LAN)などのネットワークを介して行うようにしてもよい。
【0036】
ここで、コントローラ51は、応力演算部53、姿勢演算部55及び表示制御部57を有している。応力演算部53は、フロントアタッチメント7に加わる応力分布を演算することが可能な演算部である。具体的には,応力演算部53は、シリンダ圧力センサ15、フロント角度計25、車体傾斜角度計31、旋回角度計33、作動油温度計35、エンジン回転計36、油圧ポンプ吐出圧力計37、油圧モータ入口圧力計38及び加速度計39から入力される、物理量に関する情報に基づき、有限要素法等の数値解析手法や回帰分析等の統計学的手法などを用いて、フロントアタッチメント7の各箇所ごとに生じる応力分布を演算する。また、応力演算部53は、少なくとも物理量に関する情報が変化する度に応力分布を演算する。
【0037】
姿勢演算部55は、フロント角度計25から入力される旋回フレーム3a、ブーム10、アーム11及びバケット12の各連結部分における相対角度に関する情報に基づき、フロントアタッチメント7の姿勢を演算することが可能な演算部である。この姿勢演算部55は、フロント角度計25から入力される各連結部分における相対角度に関する情報が変化する度にフロントアタッチメント7の姿勢を演算する。表示制御部57は、応力演算部53によって演算される応力分布、姿勢演算部55によって演算されるフロントアタッチメント7の姿勢及びカメラ41によって撮像される操縦室5の前方の映像に基づき、モニタ43への表示を制御する制御部である。
【0038】
図3を参照すると、第1実施形態に係るモニタ43に表示される情報を説明する説明図が示されている。モニタ43には、表示制御部57に制御されることで、カメラ41によって撮像される操縦室5の前方の映像(以下、フロント映像61という)及びフロントアタッチメント7の斜視図(以下、擬似映像63という)が左右に横並びに表示される。擬似映像63は、例えば姿勢演算部55によって演算されたフロントアタッチメント7の姿勢となるようにフロントアタッチメント7の立体的な斜視図を模擬的に表した図である。
【0039】
この擬似映像63は、カメラ41がフロントアタッチメント7を撮像する方向に相当する方向から視た場合の斜視図である。また、擬似映像63には、応力演算部53によって演算される応力分布63aが例えば4段階で、応力が高いほど色が黒く染まるよう示されている。なお、応力の度合に応じて色彩を変えるようにしてもよい。
【0040】
これにより、フロント角度計25から入力される各連結部分における相対角度に関する情報が変化する度に姿勢演算部55がフロントアタッチメント7の姿勢を演算し、圧力センサ15、フロント角度計25、車体傾斜角度計31、旋回角度計33、作動油温度計35、エンジン回転計36、油圧ポンプ吐出圧力計37、油圧モータ入口圧力計38及び加速度計39から入力される物理量に関する情報が変化する度に応力演算部53が応力分布63aを演算するため、オペレータは、油圧ショベル1の操作に応じて変化するフロントアタッチメント7の応力分布63aを操作と同時に、所謂リアルタイムに認識することができる。また、オペレータは、フロント映像61と擬似映像63とを見比べることで、容易にフロントアタッチメント7における応力分布63aを認識することができる。
【0041】
以上説明したように、第1実施形態に係る作業機械では、油圧ショベル1の外方に延びるフロントアタッチメント7を備えた作業機械において、シリンダ圧力センサ15、フロント角度計25、車体傾斜角度計31、旋回角度計33、作動油温度計35、エンジン回転計36、油圧ポンプ吐出圧力計37、油圧モータ入口圧力計38、加速度計39等の物理量を検出するセンサと、フロント映像61や擬似映像63等の所定の情報を表示するモニタ43と、モニタ43を制御するコントローラ51と、を備える。
【0042】
また、コントローラ51は、シリンダ圧力センサ15、フロント角度計25、車体傾斜角度計31、旋回角度計33、作動油温度計35、エンジン回転計36、油圧ポンプ吐出圧力計37、油圧モータ入口圧力計38、加速度計39等のセンサによって検出される物理量に基づいて該フロントアタッチメント7に加わる応力の分布である応力分布63aを演算する応力演算部53と、モニタ43に表示する所定の情報の表示を制御する表示制御部57と、を有する。
【0043】
そして、表示制御部57は、応力演算部53によって演算されるフロントアタッチメント7における応力分布63aを、該フロントアタッチメント7の動作と連動して示すようにモニタ43の表示を制御する。
【0044】
従って、応力演算部53によって演算されるフロントアタッチメント7における応力分布63aを、該フロントアタッチメント7の動作と連動するようにモニタ43に示すことで、オペレータによる油圧ショベル1の操作がフロントアタッチメント7に疲労が蓄積するような操作である場合に、オペレータは、当該操作がフロントアタッチメント7に疲労が蓄積するような操作であることを体感的に理解することができる。
【0045】
また、オペレータが例えば未だ油圧ショベル1の操作に不慣れな者(途上者)である場合であって、熟練者の指導の下、油圧ショベル1を操作しているような場合にあっては、フロントアタッチメント7の応力分布63aを見ながら油圧ショベル1を操作し及び当該操作の指導をすることができるので、熟練者の指導による途上者の油圧ショベル1の操作スキルを良好に向上させることができる。
【0046】
そして、表示制御部57によって制御されてモニタ43に表示される所定の情報の表示には、フロントアタッチメント7を模した模擬図が含まれ、模擬図には、応力演算部53によって演算される応力分布63aが、フロントアタッチメント7の動作と連動してモニタ43に示されるので、例えばオペレータによる油圧ショベル1の操作がフロントアタッチメント7に疲労が蓄積するような操作であるか否かを視覚的に容易に理解することができる。
【0047】
さらに、シリンダ圧力センサ15、フロント角度計25、車体傾斜角度計31、旋回角度計33、作動油温度計35、エンジン回転計36、油圧ポンプ吐出圧力計37、油圧モータ入口圧力計38、加速度計39等のセンサによって検出される物理量に基づいてフロントアタッチメント7の姿勢を演算する姿勢演算部55を有し、姿勢演算部55によって演算されるフロントアタッチメント7の姿勢が該フロントアタッチメント7の動作と連動する擬似映像63を模擬図として表示したので、フロントアタッチメント7の姿勢及び応力分布63aを同時に視認することができる。
【0048】
そして、フロントアタッチメント7を撮像するカメラ41を有し、所定の情報の表示には、カメラ41によって撮像されるフロント映像61が含まれ、擬似映像63の応力分布63a及びフロント映像61は、フロントアタッチメント7の動作と連動するので、実在するフロントアタッチメント7の映像であるフロント映像61と模擬図である擬似映像63とを見比べながら、フロントアタッチメント7の応力分布63aを認識することができる。
【0049】
そして、油圧ショベル1には、該油圧ショベル1を操作するオペレータが搭乗する操縦室5が設けられており、モニタ43は、操縦室5に配設されたので、オペレータは、油圧ショベル1を操作しつつモニタ43を視認して、自己の操作がフロントアタッチメント7に疲労が蓄積するような操作であるか否かを体感的に理解することができる。
【0050】
<第2実施形態>
以下、図4に基づき第2実施形態について説明する。
なお、上記第1実施形態と共通の構成、作用効果については説明を省略し、ここでは第1実施形態と異なる部分について説明する。
【0051】
図4を参照すると、第2実施形態の制御に係るコントローラ151の接続構成がブロック図で示されている。第2実施形態に係るコントローラ151は、第1実施形態に係るコントローラ51の出力側に電気的に接続されたモニタ43に代わり、通信装置160が接続されている点で相違する。
【0052】
通信装置160は、第1通信機161及び第2通信機162を含み、第1通信機161と第2通信機162とで相互に情報を無線で送受信することが可能な装置である。具体的には、第1通信機161は、油圧ショベル1に配設され、第2通信機162は、例えば油圧ショベル1の管理をする管理センタ(遠隔地)100に配設されている。また、管理センタ100には、油圧ショベル1の操作や油圧ショベル1の状態等を管理するPC(Personal Computer)143が配設され、PC143は、第2通信機162に情報を入出力可能に電気的に接続されてなる。
【0053】
ここで、第2実施形態に係るコントローラ151は、第1実施形態に係るコントローラ51に相当し、表示制御部57で、フロント映像61及び擬似映像63と同様の映像を形成する。また、コントローラ151は、通信装置160を介してPC143にフロント映像61及び擬似映像63を送信する。そして、PC143は、フロント映像61及び擬似映像63を画面に映し出す。
【0054】
このようにPC143に映し出された映像は、例えば管理センタ100に位置する熟練者や油圧ショベル1を管理センタ100から遠隔操作するオペレータが見ることができる。したがって、PC143に映し出された映像を基に、油圧ショベル1に搭乗して操作をするオペレータに油圧ショベル1の適切な操作方法を、熟練者が管理センタ100から指導することや、油圧ショベル1を遠隔操作するオペレータが自ら油圧ショベル1の操作技術を向上させることができる。
【0055】
以上説明したように、第2実施形態に係る作業機械では、油圧ショベル1とPC143との間で無線通信を行う通信装置160を有し、PC143は、油圧ショベル1とは別体で備えられてなるので、管理センタ100等の油圧ショベル1から離れた場所でフロントアタッチメント7の応力分布63aを認識することができる。また、このようにして認識したフロントアタッチメント7の応力分布63aを基に、オペレータは、油圧ショベル1の操作技術を向上させることができる。
【0056】
以上で本発明に係る作業機械の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0057】
例えば、本実施形態では、油圧ショベル1を用いて説明したが、ホイルローダ等の作業装置を有する作業機械であってもよい。
また、本実施形態では、応力演算部53は、シリンダ圧力センサ15、フロント角度計25、車体傾斜角度計31、旋回角度計33、作動油温度計35、エンジン回転計36、油圧ポンプ吐出圧力計37、油圧モータ入口圧力計38及び加速度計39から入力される情報に基づいてフロントアタッチメント7の応力分布63aを演算することとしたが、これらセンサ類以外のセンサを用いるようにしてもよく、また、これらセンサ類の一部を用いないようにしてもよく、フロントアタッチメント7に加わる物理量に基づいて応力分布63aを演算することができればよい。
【0058】
また、本実施形態では、応力演算部53による応力分布63aの演算手法について、有限要素法等の数値解析手法や回帰分析等の統計学的手法を用いることを例示したが、その他の演算手法によって演算するようにしてもよく、フロントアタッチメント7の応力分布63aを演算することができればよい。
【0059】
また、本実施形態では、操縦室5の前方を撮影する撮像装置の設置場所について、操縦室5内を例示したが、操縦室外の上部旋回体3に設置してもよく、機体から離れた位置に設置してもよい。
【0060】
また、本実施形態では、模擬図として立体的な斜視図の擬似映像63を用いて説明したが、展開図や六面図等の他の形式の模擬図でもよい。またさらに、応力分布63aは、フロント映像61に重ねるようにして表示してもよい。
また、本実施形態では、モニタ43にフロント映像61と擬似映像63とを左右に横並びに表示するようにしたが、擬似映像63のみ表示するようにしてもよく、オペレータによる油圧ショベル1の操作の改善具合が比較できるよう、応力分布63aにフロント映像61を重ねたものを1セットとし、過去のセットと現在のセットとを2セット以上、同時に並べるようにしてモニタ43に比較表示するようにしてもよい。
【0061】
また、第2実施形態では、管理センタ100に配設されたPC143を用いて説明したが、タブレット端末にフロント映像61及び擬似映像63を表示し、油圧ショベル1を目視できる作業現場の一角でタブレット端末を用いるようにしてもよい。
【0062】
また、第2実施形態では、油圧ショベル1に配設されたコントローラ151の表示制御部57がフロント映像61及び擬似映像63と同様の映像を形成するよう説明したが、表示制御部57や応力演算部53、姿勢演算部55をPC143に配設して管理センタ100側で映像を形成するようにしてもよい。この場合、各センサやカメラ41による情報を通信装置160を介してPC143に送信すればよい。
【0063】
また、第2実施形態では、フロント映像61及び擬似映像63をPC143に表示するようにしたが、油圧ショベル1にマイクを配設して音情報を取得するようにし、油圧ショベル1に搭乗している時に取得するのと同様の音を管理センタ100で油圧ショベル1を遠隔操作するオペレータに認識させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 油圧ショベル(機体、作業機械)
7 フロントアタッチメント(作業装置)
15 シリンダ圧力センサ(物理量検出センサ)
25 フロント角度計(物理量検出センサ)
31 車体傾斜角度計(物理量検出センサ)
33 旋回角度計(物理量検出センサ)
35 作動油温度計(物理量検出センサ)
36 エンジン回転計(物理量検出センサ)
37 油圧ポンプ吐出圧力計(物理量検出センサ)
38 油圧モータ入口圧力計(物理量検出センサ)
39 加速度計(物理量検出センサ)
41 カメラ(撮像装置)
43 モニタ
51、151 コントローラ
53 応力演算部
55 姿勢演算部
57 表示制御部
63 擬似映像
63a 応力分布
143 PC(モニタ)
160 通信装置

図1
図2
図3
図4