(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-06
(45)【発行日】2023-09-14
(54)【発明の名称】原着丸編地
(51)【国際特許分類】
D04B 1/16 20060101AFI20230907BHJP
D01F 1/04 20060101ALI20230907BHJP
B32B 5/02 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
D04B1/16
D01F1/04
B32B5/02 A
(21)【出願番号】P 2019143802
(22)【出願日】2019-08-05
【審査請求日】2022-04-18
(73)【特許権者】
【識別番号】597052053
【氏名又は名称】ミツカワ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏志
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-135968(JP,A)
【文献】特開2009-185401(JP,A)
【文献】特開昭63-145415(JP,A)
【文献】特開2015-120989(JP,A)
【文献】特開平07-119035(JP,A)
【文献】特開2013-116625(JP,A)
【文献】特開2006-328567(JP,A)
【文献】特開2015-071839(JP,A)
【文献】特開2019-052391(JP,A)
【文献】特開2011-074548(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
D01F1/00-6/96
9/00-9/04
D04B1/00-1/28
21/00-21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
50デシテックス以下の合成繊維マルチフィラメント糸条のみで構成された丸編地からなり、前記丸編地が
、色合いおよび/または色の濃さが異なるように原着された合成繊維マルチフィラメント糸条
からなる編目の少なくとも2種から構成されるか、前記原着された合成繊維マルチフィラメント糸条からなる編目の少なくとも1種と未原着の合成繊維マルチフィラメント糸条からなる編目とから構成されてなり、かつ編密度が70コース/2.54cm以上であり、染色加工されていないことを特徴とする原着丸編地。
【請求項2】
前記合成繊維マルチフィラメント糸条が38デシテックス以下であることを特徴とする請求項1に記載の原着丸編地。
【請求項3】
前記丸編地の編密度が85コース/2.54cm以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の原着丸編地。
【請求項4】
前記丸編地100重量%中、前記原着された合成繊維マルチフィラメント糸条を合計で25~100重量%含むことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の原着丸編地。
【請求項5】
前記
色合いおよび/または色の濃さが異なるように原着された合成繊維マルチフィラメント糸条
の2種以上、並びに前記原着された合成繊維マルチフィラメント糸条および前記未原着の合成繊維マルチフィラメント糸条が、
ポリエステル繊維またはポリアミド繊維であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の原着丸編地。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の原着丸編地が、織物、編物、不織布、樹脂フィルムからなる群から選ばれる少なくとも一つの裏面に積層されてなることを特徴とする積層体布帛。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カジュアルウェア、スポーツウェア、ユニホームウェアなどの各種衣料用として用いられる原着丸編地に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、堅牢度の高い生地にするために織物や編物に原着糸が使用されてきた。(例えば特許文献1参照)。しかし、原着糸を使用する場合、生地の色が原着糸の色によって決まるため、生地の色合いや色の濃さなどの変更に対応するには、多種の原着糸を用意しておく必要があるが、原着糸の製造は生産ロットが大きく対応が困難であったため、多様な色を必要とするスポーツウェア、カジュアルウェア、ユニホームウェアなどの生地ではあまり使用されてこなかった。
【0003】
近年、地球環境への負荷を低減する取り組みが求められており、原着糸を使用することで染色しないで良いという点が評価され、原着生地の需要が高まっている。そのため、原着生地により堅牢度か高く、環境への負担も減らしながら、色合いや色の濃さに柔軟に対応できるようにすることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上述した点に鑑み、衣料用途等に供される生地の分野において、地球環境への負荷を低減し、要求される品位を保持し堅牢度を従来レベル以上に向上し、かつ色合いや色の濃さに柔軟に対応できる原着丸編地を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の原着丸編地は、50デシテックス以下の合成繊維マルチフィラメント糸条のみで構成された丸編地からなり、前記丸編地が、色合いおよび/または色の濃さが異なるように原着された合成繊維マルチフィラメント糸条からなる編目の少なくとも2種から構成されるか、前記原着された合成繊維マルチフィラメント糸条からなる編目の少なくとも1種と未原着の合成繊維マルチフィラメント糸条からなる編目とから構成されてなり、かつ編密度が70コース/2.54cm以上であり、染色加工されていないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の原着丸編地によれば、50デシテックス以下の合成繊維マルチフィラメント糸条のみで構成され、その少なくとも一部に原着された合成繊維マルチフィラメント糸条を含み、染色加工されていないため環境負荷を低減し、堅牢度を従来レベル以上に向上することができる。また編密度を70コース/2.54cm以上にすることにより、1つ以上の原着された合成繊維マルチフィラメント糸条と任意に無着色の合成繊維マルチフィラメント糸条からなる構成を柄のように見えなくし、その布帛の品位を確保することができる。
【0008】
前記合成繊維マルチフィラメント糸条は38デシテックス以下がより好ましい。また原着合成繊維マルチフィラメント糸条が、ナイロン66繊維であるとよい。
【0009】
前記丸編地の編密度が85コース/2.54cm以上であるとよい。また前記丸編地100重量%中、前記原着された合成繊維マルチフィラメント糸条を合計で25~100重量%含むとよい。更に原着丸編地は、好ましくは色合いおよび/または色の濃さが異なる2種以上の原着された合成繊維マルチフィラメント糸条を含むことができ、これら原着された合成繊維マルチフィラメント糸条の使用量を変化させることで色合いや色の濃さを適宜、調整することができる。
【0010】
上述した原着丸編地が、織物、編物、不織布、樹脂フィルムからなる群から選ばれる少なくともいずれか一つの裏面に積層されてなる積層体布帛は、カジュアルウェア、スポーツウェア、ユニホームウェアなどの各種衣料用として好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の原着丸編地の実施形態を例示した模式図である。
【
図2】
図2は、本発明の原着丸編地の他の実施形態を例示した模式図である。
【
図3】
図3は、本発明の原着丸編地を含む積層布帛の一例をモデル的に示した概略側面図である。
【
図4】
図4は、本発明の原着丸編地を含む積層布帛の他の例をモデル的に示した概略側面図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施例1,2、比較例1,2で使用した原着丸編地を示す組織図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施例3,4で使用した原着丸編地を示す組織図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の原着丸編地は、50デシテックス以下、好ましくは38デシテックス以下、より好ましくは26デシテックス以下、更に好ましくは5~20デシテックスの合成繊維マルチフィラメント糸条のみで構成する。合成繊維マルチフィラメント糸条を50デシテックス以下にすることにより、編目の間隔を狭めることができ2色の糸を使用した時に柄に見えにくくすることができ、更に布帛の厚さを薄くし、かつ目付を軽くすることができる。通常、2色の糸を組み合わせると
図1のように1コースごとに使用した場合はボーダー柄、
図2のように一目ごとに使用した場合は市松柄など柄のある生地になる。しかし、50デシテックス以下の合成繊維マルチフィラメント糸条のみを使用し、編密度を70コース/2.54cm以上にすることで色の異なる編目の間隔が狭くなり、柄として見えにくくなるため2色が混ざり合った色を表現することができる。
【0013】
合成繊維マルチフィラメント糸条は、強度、耐久性、加工性、コストの観点からポリエステル繊維またはポリアミド繊維であることが好ましく、より好ましくはナイロン66繊維(ポリアミド66繊維)であるとよい。
【0014】
原着丸編地は、原着された合成繊維マルチフィラメント糸条を少なくとも1種含むようにしたので、糸条および布帛を染色する代わりに、任意の着色を糸条に施すことができる。原着糸は目的の色を有する着色剤を含有させたポリマーを溶融紡糸することにより製造される繊維であるが、製造方法は通常の原着糸の製造方法で行うことができる。また着色剤は、特に制限されるものではなく、無機顔料、有機顔料のいずれでもよい。また、原着丸編地は、色を調整するために堅牢度に悪影響を及ぼさない範囲で染料を着色剤として使用してもよい。さらに、原着糸条以外に、染色された糸条を発明の目的を阻害しない範囲で含むことができる。本発明の原着丸編地は、布帛を染色加工していないため、地球環境に対する負荷を低減することができる。
【0015】
無機顔料として例えばカーボンブラック(黒色顔料)、亜鉛華、鉛白、リトポン、二酸化チタン、沈降性硫酸バリウム、バライト粉(以上、白色顔料)、鉛丹、酸化鉄赤(以上、赤色顔料)、黄鉛、亜鉛黄(亜鉛黄1種、亜鉛黄2種)(以上、黄色顔料)、ウルトラマリン青、プロシア青(フェロシアン化鉄カリ)(以上、青色顔料)、等を挙げることができる。有機顔料として例えばモノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、縮合ジスアゾ顔料などのアゾ顔料、イソインドリノン、イソインドリン、アゾメチン、アントラキノン、アントロン、キサンテン(以上、黄色顔料)、ジケトピロロピロール、ペリレン、アントラキノン(アントロン)、ペリノン、キナクリドン、インジゴイド(以上、橙色顔料)、キナクリドン、ジケトピロロピロール、アントラキノン、ペリレン、ペリノン、インジゴイド(以上、赤色顔料)、ジオキサジン、キナクリドン、ペリレン、インジゴイド、アントラキノン(アントロン)、キサンテン(以上、紫色顔料)、フタロシアニン、アントラキノン、インジゴイド(以上、青色顔料)、フタロシアニン、アゾメチン、ペリレン(以上、緑色顔料)などの多環顔料、等を挙げることができる。
【0016】
ここで原着された合成繊維マルチフィラメント糸条は、その製造時に色を決めるため、生産ロットが大きくなり、これを使用する布帛の色合いや色の濃さを変更するような自由度が制限されることがある。これに対し、本発明では布帛を原着された合成繊維マルチフィラメント糸条を少なくとも1種含むようにし、任意に明度や色彩が異なる原着された合成繊維マルチフィラメント糸条や原着されていない合成繊維マルチフィラメント糸条を任意の割合で含むようにしたので布帛の色合いや色の濃さを比較的自由に変更することができる。更に好ましくは原着丸編地が、色合いおよび/または色の濃さが異なる2種以上の原着された合成繊維マルチフィラメント糸条を含むとよく、これら原着された合成繊維マルチフィラメント糸条の使用量を変化させることで色合いや色の濃さを適宜、調整し、堅牢度を改良すると共に、環境負荷を低減することができる。
【0017】
本発明の原着丸編地は、原着された合成繊維マルチフィラメント糸条の割合は合計で、原着丸編地100重量%中、好ましくは25~100重量%、より好ましくは30~100重量%、40~100重量%であるとよい。原着された合成繊維マルチフィラメント糸条の割合が合計で25重量%未満、未原着の合成繊維マルチフィラメント糸条の割合が75重量%より多くなると、原着の色が分かりにくくなってしまう。原着された合成繊維マルチフィラメント糸条の割合の増減は、原糸繊度の組合せ、編目長の調整、編み組織の組み合わせですることができ、目的に応じて適切な方法を選択すれば良い。
【0018】
原着丸編地の編密度を特定することにより、複数の原着された合成繊維マルチフィラメント糸条を併せて使用するとき、並びに原着及び未原着の合成繊維マルチフィラメント糸条を併せて使用するとき、布帛に糸条の色目の相違が柄のように現れるのを抑制し、色合いを均質にして品位を高く保つことができる。
【0019】
原着丸編地の編密度は70コース/2.54cm以上であり、好ましくは85コース/2.54cm以上であり、より好ましくは100コース/2.54cm以上である。編密度が70コース/2.54cmより小さいと、色の異なる編目の間隔が広くなり過ぎて柄に見えるようになってしまう。また原着丸編地の編密度は、好ましくは170コース/2.54cm以下、より好ましくは150コース/2.54cm以下であるとよい。編密度が170コース/2.54cmを超えると、編地が重くなり過ぎてしまう。
【0020】
本発明の積層体布帛は、上述した原着丸編地が、織物、編物、不織布、樹脂フィルムからなる群から選ばれる少なくとも一つの裏面に積層されてなる。
積層体布帛は、
図3に示すように表面層1、裏面層2が積層されてなる。表面層1は織物、編物、不織布、樹脂フィルムからなり、裏面層2を構成する布帛は、原着丸編地である。
【0021】
布帛を衣服の表側に使用する場合には様々な色が求められるが、それに対応するにはある程度の色の種類が必要となる。しかし衣料の裏側即ち裏地であれば求められる色の種類が少ないため、原着されたマルチフィラメント糸条の種類が多くなり過ぎないため、より効率的に使用することが出来る。例えば、裏地では使い勝手の良さからグレーを求められることが多いが、一般的に販売されているブラックに原着されたマルチフィラメント糸条と着色されていないマルチフィラメント糸条を交編してグレーとしたり、ブラックに原着されたマルチフィラメント糸条の交編率を調整して色の調整をしたりすることができる。
【0022】
積層体布帛の表面層1に使用する生地は、織物、編物、不織布、樹脂フィルムからなる群から選ばれる少なくとも一つである。組織は特に限定されないが、織物の種類としては、平織、綾織、朱子織、ななこ織、急斜文織、よこ二重織、たて二重織などからなるものを使用できる。編物の種類としては、緯編地である平編(天竺)、1×1天竺、鹿の子編、リブ編、両面編(スムース)、パール編、ポンチローマ編、ミラノリブ編、ブリスター編など、縦編地であるシングルデンビ編、シングルコード編、シングルアトラス編、ハーフトリコット編、ダブルデンビ編、サテン編などを使用できる。不織布の種類としては、短繊維不織布、長繊維不織布、フラッシュ紡糸法による不織布、メルトブロー法による不織布などを使用できる。また表面層1に使用する生地を構成する素材は、綿、麻などの天然繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維などの合成繊維などを、積層体布帛が使用される用途に応じて適宜選択することができる。例えば、積層体布帛を、強度、耐久性、軽量性などが重視される登山着に使用する場合は、ポリエステル繊維あるいはポリアミド繊維などから構成された織物を使用することが好ましく、ストレッチ性、軽量性などが重視されるスポーツウェアに使用する場合は、ポリエステル繊維あるいはポリアミド繊維などから構成された編物を使用することが好ましい。また、表面層1に使用する生地に対して、必要に応じて撥水処理加工、あるいは制電処理加工などを施すことができる。樹脂フィルムとしては、衣料用途として十分な可撓性と共に、防風性あるいは防水透湿性を有していればよく、特に限定はされない。樹脂フィルムとして、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリオレフィンなどのポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、合成ゴム、天然ゴム、含フッ素系樹脂などのフィルムを使用することができる。なお、ここでいう「樹脂フィルム」とは、一般的な非通気性である樹脂製の薄膜の他に、後述するように、多孔質構造にされて、そのため適度な通気性や透湿性を有するように形成された樹脂製薄膜などを含む概念である。
【0023】
また表面層1を構成する生地に使用する糸条として、裏面層2の布帛に使用するのと同様に原着された合成繊維マルチフィラメント糸条を使用してもよい。これにより環境負荷をより低減することができる。
【0024】
積層体布帛において、織物、編物、不織布、から選ばれる生地と原着丸編地の積層には、接着剤などで接着するラミネート法を用いることができ、樹脂フィルムと原着丸編地の積層には前記ラミネート法、および原着丸編地の表面に樹脂フィルムを直接コーティングする方法を用いて積層することができる。
【0025】
ラミネート法とは、表面層1もしくは裏面層2のいずれかに接着剤を塗工してもう片方の布帛を積層する方法である。接着剤を塗工する方法としては、一般的にはナイフオーバーロールコーティング、ダイレクトロールコーティング、リバースロールコーティング、グラビアコーティングなどがあり、そのコーティング処方を利用し所望の被覆率となるように塗工すればよい。
【0026】
接着剤は、熱可塑性樹脂接着剤の他、熱や光などにより反応し硬化する硬化性樹脂接着剤などを使用することができる。例えば、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂などを使用することができる。
【0027】
接着剤による被覆率は、高いほど剥離強度が高くなる。被覆率が100%の全面接着にする場合はナイフコーターなどを用い、被覆率を20~80%にコントロールする場合は、グラビアコーターなどを用いて実施することができる。グラビアコーターは、例えば、表面にドット状の凹部を彫刻したロールを用い、その凹部に接着剤を入れ樹脂フィルムに転移して加工する方法であり、該凹部の面積および深さ、隣接する凹部間の間隔を調整することにより被覆率を調整することができる。
【0028】
樹脂フィルムを直接コーティングする方法とは、表面層1を構成する樹脂を、裏面層2を構成する原着丸編地の一面に均一な薄膜状に直接塗工し皮膜化することであり、水中を通過させ皮膜化する湿式法と、乾燥することによって皮膜化する乾式法がある。樹脂を塗工する方法としては、一般的にはナイフオーバーロールコーティング、ダイレクトロールコーティング、リバースロールコーティング、グラビアコーティングなどがあり、そのコーティング処方を利用し所望の膜厚となるように塗工すればよい。
【0029】
原着丸編地に樹脂フィルムを積層する場合は、原着丸編地と反対側の樹脂フィルムの表面に織物、編物、不織布のいずれか一種を更に積層し、三層積層布帛とすることが好ましい。即ち、
図4に示すように、表面層3に織物、編物、不織布のいずれか一種、中層4に樹脂フィルム、裏面層5に原着丸編地を配置する三層積層体布帛にすることができる。樹脂フィルムの両面に生地があることで樹脂フィルムが傷むことを防ぐことができ、防風性や防水透湿性を保ちやすくなる。
【0030】
樹脂フィルムは、単一の層でもよいが、ある樹脂フィルムの層が複数層で、または異なる樹脂フィルムの複数層が重なって構成してもよい。
【0031】
樹脂フィルムの厚さは、1μm以上300μm以下であることが好ましく、5μm以上100μm以下であることがより好ましい。樹脂フィルムの厚さが1μmより薄いと製造時の取扱性に問題が発生することがあり好ましくない。また、厚さが300μmを越えるとフィルムの柔軟性が損なわれてしまう傾向にあり、衣料用として適さなくなる。厚さの測定は、ダイヤルシックネスゲージで測定した厚さ(テクロック社製SM-1201 1/1000mmダイヤルシックネスゲージを用い、本体バネ荷重以外の荷重をかけない状態で測定する厚さ)による。
【0032】
樹脂フィルムは、防風性フィルムおよび/または防水透湿性フィルムであれば特に限定されないが、ウィンドブレーカーなどのように、特に防風性が要求される用途では、日本工業規格JIS L 1096 A法(フラジール形)により測定された通気度が50cc/cm2・sec以下である樹脂フィルムを使用することが好ましい。通気度は10cc/cm2・sec以下であることがより好ましく、0.1cc/cm2・sec以下であることがさらに好ましい。好ましい範囲の下限は、一般的に、0.00~0.02cc/cm2・secである。
【0033】
一方、雨着などのように、特に防水性が要求される用途では、日本工業規格JIS L 1092 A法により測定される耐水度(防水性)が100cm以上である樹脂フィルムを使用することが好ましい。耐水度は、200cm以上であることがより好ましい。好ましい範囲の上限は、一般的に、1000~5000cmである。
【0034】
さらに、そうした特性を有する優れた雨着に防水透湿性を持たせるには、日本工業規格JIS L 1099 B-2法により測定される透湿度が50g/m2・h以上であることが好ましい。防水透湿性とは、水を防ぐ「防水性」と水蒸気を透過させる「透湿性」とを有することであり、上記「耐水度」と「透湿度」の範囲内にすることにより、所望の防水透湿性能を付与することができる。例えば、積層体布帛を衣類に加工して用いた場合に、着用者の人体から発生する汗の水蒸気が積層体布帛を通過して外部に発散されるため、着用時に蒸れ感を防ぐことが可能になる。透湿度は、100g/m2・h以上であることがより好ましい。透湿度の上限値は、一般に透湿度が高くなりすぎると水が透過する量が増大し、防水性の機能が損なわれるため、一般的に、2000~5000g/m2・hである。
【0035】
本発明において、防水透湿性を満足する樹脂フィルムとしては、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂などの親水性樹脂フィルムや、ポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、含フッ素系樹脂、撥水処理を施したポリウレタン樹脂などの疎水性樹脂からなる多孔質フィルム(以下、単に「疎水性多孔質フィルム」という場合がある)を用いることができる。ここで、「疎水性樹脂」とは、樹脂を用いて滑らかな平坦な板を成形し、かかる板の表面に置かれた水滴の接触角が60度以上(測定温度25℃)、より好ましくは80度以上である樹脂を意味する。
【0036】
上述した疎水性多孔質フィルムは、内部に細孔(連続気孔)を有する多孔質構造によって透湿性を維持しつつ、フィルム基材を構成する疎水性樹脂が、細孔内への水の進入を抑制し、フィルム全体として防水性を発現する。これらの中でも、防水透湿性フィルムとして、含フッ素系樹脂からなる多孔質フィルムが好適であり、前述した多孔質のポリテトラフルオロエチレンフィルムがより好適である。特に、多孔質のポリテトラフルオロエチレンフィルムは、フィルム基材を構成する樹脂成分であるポリテトラフルオロエチレンの疎水性(撥水性)が高いために、優れた防水性と透湿性を両立できるので好ましい。
【実施例】
【0037】
以下、実施例に基づいてさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の各物性は下記の方法により測定したものである。
【0038】
(1)コース数
編地の長さ方向2.54cmあたりの編目の数であるコース数を3ヶ所測定し、それぞれの平均値を算出し整数に丸める。ただし、コース数の測定において編目の数が違うウエルが存在する組織の場合、それぞれの編目の数を測定し、コース数の平均値を算出する。
【0039】
(2)外観品位
外観品位は、男女10名が目視で素材(シングル丸編地または積層体布帛の裏面層)を確認し、次の評価基準で評価した。
≪評価基準≫ ◎:柄感が分からず気にならないレベル。
○:良く見ると柄が分かるが気にならないレベル。
×:柄感が分かり気になるレベル。
【0040】
実施例1
60ゲージのシングル丸編機を用い、
図5に示す編方図の天竺組織に33デシテックス、24フィラメントのナイロン仮撚加工糸と33デシテックス、26フィラメントのカーボンブラックを練り込んだナイロン仮撚加工糸の黒原着糸を1本交互に給糸してシングル丸編地を編成した。
この生機を精練、セットして142コース/インチ、目付90g/m
2である本発明のシングル丸編地を得た。得られたシングル丸編地は、柄として見えず、2色の糸条が混ざり合い、ほぼ一様の色調を有していた。評価した結果を表1に示す。
【0041】
実施例2
60ゲージのシングル丸編機を用い、
図5に示す編方図の天竺組織に22デシテックス、12フィラメントのポリエステル生糸と22デシテックス、6フィラメントのカーボンブラックを練り込んだポリエステル生糸の黒原着糸を1本交互に給糸してシングル丸編地を編成した。
この生機を精練、セットして90コース/インチ、目付30g/m
2である本発明のシングル丸編地を得た。得られたシングル丸編地は、2色の糸条が混ざり合いが、よく見ると認識されるが、気にならないレベルであった。
さらに、上記シングル丸編地を裏層、ポリウレタン系樹脂性の親水性無孔質樹脂フィルム(目付:15g/m
2)を中層、経糸および緯糸ともに33デシテックス、26フィラメントのナイロン生糸原糸で構成された平織組織の織物(目付:40g/m
2)を表層となるようにラミネート法により接着して積層体布帛を得た。評価した結果を表1に示す。
【0042】
実施例3
60ゲージのシングル丸編機を用い、
図6に示す編方図のF1、3に22デシテックス、7フィラメントのナイロン生糸、F2、4に22デシテックス、6フィラメントのカーボンブラックを練り込んだナイロン生糸の黒原着糸を給糸してシングル丸編地を編成した。
この生機を精練、セットして111コース/インチ、目付24g/m
2である本発明のシングル丸編地を得た。得られたシングル丸編地は、柄として見えず、2色の糸条が混ざり合い、ほぼ一様の色調を有していた。
さらに、上記シングル丸編地を裏層、ポリウレタン系樹脂性の親水性無孔質樹脂フィルム(目付:15g/m
2)を中層、経糸および緯糸ともに33デシテックス、26フィラメントのナイロン生糸原糸で構成された平織組織の織物(目付:40g/m
2)を表層となるようにラミネート法により接着して積層体布帛を得た。評価した結果を表1に示す。
【0043】
比較例1
46ゲージのシングル丸編機を用い、
図5に示す編方図の天竺組織に56デシテックス、36フィラメントのポリエステル仮撚加工糸と56デシテックス、36フィラメントのカーボンブラックを練り込んだポリエステル仮撚加工糸の黒原着糸を1本交互に給糸してシングル丸編地を編成した。
この生機を精練、セットして75コース/インチ、目付65g/m
2であるシングル丸編地を得た。得られたシングル丸編地は、2色の糸条からなる柄が見え、見劣りがした。評価した結果を表1に示す。
【0044】
比較例2
46ゲージのシングル丸編機を用い、
図5に示す編方図の天竺組織に22デシテックス、12フィラメントのポリエステル生糸と22デシテックス、6フィラメントのカーボンブラックを練り込んだポリエステル生糸の黒原着糸を1本交互に給糸してシングル丸編地を編成した。
この生機を精練、セットして67コース/インチ、目付23g/m
2であるシングル丸編地を得た。得られたシングル丸編地は、2色の糸条からなる柄が見え、見劣りがした。
さらに、上記シングル丸編地を裏層、ポリウレタン系樹脂性の親水性無孔質樹脂フィルム(目付:15g/m
2)を中層、経糸および緯糸ともに33デシテックス、26フィラメントのナイロン生糸原糸で構成された平織組織の織物(目付:40g/m
2)を表層となるようにラミネート法により接着して積層体布帛を得た。評価した結果を表1に示す。
【0045】
【符号の説明】
【0046】
1、3:積層体布帛の表面層
4 :積層体布帛の中層
2、5:積層体布帛の裏面層